(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176346
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】回路接続構造体の製造方法及び回路接続装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231206BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20231206BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231206BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H05K3/36 B
H01B13/00 501B
H01B1/24 A
H01B1/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088582
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】森尻 智樹
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真弓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由佳
【テーマコード(参考)】
5E344
5F044
5G301
【Fターム(参考)】
5E344AA01
5E344AA22
5E344BB02
5E344BB08
5E344BB10
5E344CC24
5E344CC25
5E344CD06
5E344CD09
5E344CD12
5E344DD02
5E344DD10
5E344DD16
5E344EE26
5E344EE30
5F044KK02
5F044KK03
5F044KK04
5F044KK05
5F044KK06
5F044KK17
5F044KK18
5F044LL01
5F044LL05
5F044LL11
5F044RR17
5F044RR18
5F044RR19
5G301DA13
5G301DA59
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回路部材同士を熱圧着することにより対向電極間の接続材料にはんだを使用する際に発生する電極間接続部のクラックを低減する回路接続構造体を製造する方法を提供する。
【解決手段】回路接続構造体40の製造方法は、第一の電極12を有する第一の回路部材10の第一の電極が形成されている面上にはんだ接続材1及び接着剤を備える回路接続材を配置する工程(a)と、第二の電極22を有する第二の回路部材20を、第一の電極と第二の電極とが相対向するように、第一の回路部材上に配置する工程(b)と、第一の電極と第二の電極との間にはんだ接続材が介在する状態で、第一の回路部材と第二の回路部材とをはんだ接続材の融点以上の温度で熱圧着する工程と、第一の電極と第二の電極との間の温度がはんだ接続材の融点以上の温度からはんだ接続材の融点以下の温度となるまで、第一の電極と第二の電極との間を加圧しながら冷却する工程と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路接続構造体の製造方法であって、
第一の電極を有する第一の回路部材の前記第一の電極が形成されている面上にはんだ接続材及び接着剤を備える回路接続材を配置する工程(a)と、
第二の電極を有する第二の回路部材を、前記第一の電極と前記第二の電極とが相対向するように、前記第一の回路部材上に配置する工程(b)と、
前記第一の電極と前記第二の電極との間にはんだ接続材が介在する状態で、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを前記はんだ接続材の融点以上の温度で熱圧着する工程(c)と、
前記第一の電極と前記第二の電極との間の温度が前記はんだ接続材の融点以上の温度から前記はんだ接続材の融点以下の温度となるまで、前記第一の電極と前記第二の電極との間を加圧しながら冷却する工程(d)と、を備える、回路接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記はんだ接続材がはんだ粒子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)では、前記回路接続材を、前記はんだ粒子と前記接着剤とを含むフィルムの状態で前記第一の回路部材上に配置する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)では、前記回路接続材を、前記はんだ粒子と前記接着剤とを含むペーストの状態で前記第一の回路部材上に配置する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記はんだ接続材の融点が300℃以下であり、
前記工程(c)における熱圧着温度が330℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法に用いられる回路接続装置であって、
前記第一の回路部材又は前記第二の回路部材を載置するステージと、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を相対向する方向に加圧する加圧手段と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
前記工程(d)において、前記第一の電極と前記第二の電極との間を冷却する冷却手段とを備える、回路接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続構造体の製造方法及び回路接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体、液晶ディスプレイ等の分野において、半導体チップ、回路基板等の回路部材の電極間を接続する接続材料としてはんだが使用されている。例えば、特許文献1には、半導体デバイスをフリップチップ実装等により基板に接続するために用いられるはんだバンプを形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
はんだによる回路接続は、リフロー炉等を使用してはんだを高温に加熱することにより溶融させ共晶させる方法により行われている。しかしながら、昨今のカーボンニュートラル、グリーン志向、SDGS等の循環型社会に向けた世界的な意識の高まりと環境関連投資の推進により、より低エネルギーな回路接続方法のニーズが高まっている。
【0005】
はんだによる回路接続をより低エネルギーで実施する方法の一つとして、はんだを介して対向配置された回路部材同士を加熱しながら圧着する(すなわち、熱圧着する)ことにより回路接続構造体を製造する方法がある。この方法によれば、より低温で回路部材同士を接続することができる。
【0006】
しかしながら、上記方法では、回路接続構造体の電極間接続部(はんだ接続部)に微小なクラックが発生しやすく、このクラックが原因となって接続信頼性の低下等の不具合が生じやすい。
【0007】
そこで、本発明の一側面は、回路部材同士を熱圧着することにより回路接続構造体を製造する方法において、対向電極間の接続材料にはんだを使用する際に発生する電極間接続部のクラックを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のいくつかの側面は、下記[1]~[6]を提供する。
【0009】
[1]
回路接続構造体の製造方法であって、
第一の電極を有する第一の回路部材の前記第一の電極が形成されている面上にはんだ接続材及び接着剤を備える回路接続材を配置する工程(a)と、
第二の電極を有する第二の回路部材を、前記第一の電極と前記第二の電極とが相対向するように、前記第一の回路部材上に配置する工程(b)と、
前記第一の電極と前記第二の電極との間にはんだ接続材が介在する状態で、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを前記はんだ接続材の融点以上の温度で熱圧着する工程(c)と、
前記第一の電極と前記第二の電極との間の温度が前記はんだ接続材の融点以上の温度から前記はんだ接続材の融点以下の温度となるまで、前記第一の電極と前記第二の電極との間を加圧しながら冷却する工程(d)と、を備える、回路接続構造体の製造方法。
【0010】
[2]
前記はんだ接続材がはんだ粒子である、[1]に記載の製造方法。
【0011】
[3]
前記工程(a)では、前記回路接続材を、前記はんだ粒子と前記接着剤とを含むフィルムの状態で前記第一の回路部材上に配置する、[2]に記載の製造方法。
【0012】
[4]
前記工程(a)では、前記回路接続材を、前記はんだ粒子と前記接着剤とを含むペーストの状態で前記第一の回路部材上に配置する、[2]に記載の製造方法。
【0013】
[5]
前記はんだ接続材の融点が300℃以下であり、
前記工程(c)における熱圧着温度が330℃以下である、[1]に記載の製造方法。
【0014】
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法に用いられる回路接続装置であって、
前記第一の回路部材又は前記第二の回路部材を載置するステージと、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を相対向する方向に加圧する加圧手段と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
前記工程(d)において、前記第一の電極と前記第二の電極との間を冷却する冷却手段とを備える、回路接続装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、回路部材同士を熱圧着することにより回路接続構造体を製造する方法において、対向電極間の接続材料にはんだを使用する際に発生する電極間接続部のクラックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る回路接続構造体の製造方法の工程(a)~工程(c)を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る回路接続構造体の製造方法の工程(d)を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、他の一実施形態に係る回路接続構造体の製造方法を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の温度-圧力プロファイルを示す図である。
【
図5】
図5は、比較例1の温度-圧力プロファイルを示す図である。
【
図6】
図6は、比較例2の温度-圧力プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、具体的に明示する場合を除き、「~」の前後に記載される数値の単位は同じである。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
実施形態の回路接続構造体の製造方法は、第一の電極を有する第一の回路部材の第一の電極が形成されている面上にはんだ接続材及び接着剤を備える回路接続材を配置する工程(a)と、第二の電極を有する第二の回路部材を、第一の電極と第二の電極とが相対向するように、第一の回路部材上に配置する工程(b)と、第一の電極と第二の電極との間にはんだ接続材が介在する状態で、第一の回路部材と第二の回路部材とをはんだ接続材の融点以上の温度(熱圧着温度)で熱圧着する工程(c)と、第一の電極と第二の電極との間の温度がはんだ接続材の融点以上の温度からはんだ接続材の融点以下の温度となるまで、第一の電極と第二の電極との間を加圧しながら冷却する工程(d)と、を備える。回路接続構造体の製造方法は、工程(d)の後、第一の電極と第二の電極との間を加圧することなく冷却する工程(e)を更に備えていてもよい。
【0020】
上記製造方法では、電極間のクラック、すなわち、溶融したはんだ接続材が冷却固化されてなるはんだ接続部におけるクラックが低減された回路接続構造体が得られる。この理由は、以下のように推察される。
【0021】
まず、はんだ接続材を使用する従来の方法では、加熱加圧ツールを回路部材に押し当て、回路部材を加熱すると同時に加圧して熱圧着した後、加熱加圧ツールを回路部材から引き離すことで、電極間への加圧及び加熱を実質的に同時に終了させていた。この方法では、熱圧着によって溶融したはんだ接続材が冷却固化される前に電極間へ加えられていた圧力が解放されるため、圧力解放時に溶融したはんだ接続材に対向方向とは逆方向の応力が加わりクラックが生じていたと推察される。一方、上記製造方法によれば、熱圧着によって溶融したはんだ接続材が冷却固化した後に電極間への圧力が解放されることとなるため、上記クラックの発生が低減されると推察される。
【0022】
また、上記製造方法によれば、比較的低温で(例えば330℃以下、300℃以下、240℃以下、200℃以下、160℃以下、100℃以下などの温度で)はんだ接続を行うこともできる。そのため、例えば、300℃以下、280℃以下、220℃以下、180℃以下、140℃以下、80℃以下などの低い融点を有するはんだ接続材を使用することも可能である。また、上記製造方法によれば、比較的短時間で(例えば3分以下、1分以下、30秒以下、15秒以下、10秒以下などの短時間で)はんだ接続を行うこともできる。すなわち、上記製造方法によれば、より低エネルギーで回路接続を行うことができる。
【0023】
上記製造方法で使用されるはんだ接続材としては、はんだとして使用される公知の材料を広く使用可能である。はんだ接続材は、例えば、スズ、スズ合金、インジウム及びインジウム合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0024】
スズ合金としては、例えば、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金等を用いることができる。これらのスズ合金の具体例としては、下記の例が挙げられる。
・In-Sn(In52質量%、Bi48質量% 融点118℃)
・In-Sn-Ag(In20質量%、Sn77.2質量%、Ag2.8質量% 融点175℃)
・Sn-Bi(Sn43質量%、Bi57質量% 融点138℃)
・Sn-Bi-Ag(Sn42質量%、Bi57質量%、Ag1質量% 融点139℃)
・Sn-Ag-Cu(Sn96.5質量%、Ag3質量%、Cu0.5質量% 融点217℃)
・Sn-Cu(Sn99.3質量%、Cu0.7質量% 融点227℃)
・Sn-Au(Sn21.0質量%、Au79.0質量% 融点278℃)
【0025】
インジウム合金としては、例えば、In-Bi合金、In-Ag合金等を用いることができる。これらのインジウム合金の具体例としては、下記の例が挙げられる。
・In-Bi(In66.3質量%、Bi33.7質量% 融点72℃)
・In-Bi(In33.0質量%、Bi67.0質量% 融点109℃)
・In-Ag(In97.0質量%、Ag3.0質量% 融点145℃)
なお、上述したスズを含むインジウム合金は、スズ合金に分類されるものとする。
【0026】
はんだ接続材は、高温高湿試験時及び熱衝撃試験時により高い信頼性が得られる観点では、In-Bi合金、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金及びSn-Cu合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
【0027】
上記スズ合金又はインジウム合金は、はんだ接続材の用途(使用時の温度)等に応じて選択してもよい。例えば、In-Sn合金、Sn-Bi合金を採用すれば、150℃以下で電極同士を融着させることができる。Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金等の融点の高い材料を採用した場合、高温放置後においても高い信頼性を維持することができる。
【0028】
はんだ接続材は、Ag、Cu、Ni、Bi、Zn、Pd、Pb、Au、P及びBから選ばれる一種以上を含んでもよい。はんだ接続材がAg又はCuを含む場合、はんだ接続材の融点を220℃程度まで低下させることができ、且つ、電極との接合強度がより向上するため、より良好な導通信頼性が得られ易くなる。
【0029】
はんだ接続材の融点は、低温での実装が可能となる観点から、例えば、300℃以下、280℃以下、220℃以下、180℃以下、160℃以下、140℃以下又は80℃以下であってよい。はんだ接続材の融点は、例えば、70℃以上である。なお、本明細書中、はんだ接続材の融点とは、DSC(示差走査熱量計)を用いて、昇温速度10℃/minで、Heガスフロー中でのDSC測定を行った際に、最初に吸熱ピーク(第一吸熱ピーク)が発生する温度(第一吸熱ピーク温度)をいう。
【0030】
はんだ接続材は、例えば、はんだ粒子であってよい。はんだ粒子の平均粒子径は、例えば、1~500μmであってよい。はんだ粒子の平均粒子径は、優れた導電性が得られやすい観点から、2μm以上、又は3μm以上、又は4μm以上、又は5μm以上、であってもよい。はんだ粒子の平均粒子径は、微小サイズの電極へのより良好な接続信頼性が得られやすい観点から、400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下、又は100μm以下であってもよい。これらの観点から、はんだ粒子の平均粒子径は、2~400μm、又は3~300μm、又は4~200μm、又は5~100μmであってもよい。
【0031】
はんだ粒子の平均粒子径は、サイズに合わせた各種方法を用いて測定することができる。例えば、動的光散乱法、レーザー回折法、遠心沈降法、電気的検知帯法、共振式質量測定法等の方法を利用できる。さらに、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって得られる画像から、粒子サイズを測定する方法を利用できる。具体的な装置としては、フロー式粒子像分析装置、マイクロトラック、コールターカウンター等が挙げられる。なお、真球形ではないはんだ粒子の粒子径は、SEMの画像におけるはんだ粒子に外接する円の直径であってよい。
【0032】
接着剤は、例えば、絶縁性を有する熱硬化性接着剤である。絶縁性の接着剤を使用することにより、第一の回路部材と第二の回路部材とを互いに接着させるとともに、はんだ接続部の周囲を絶縁性材料によって封止することができる。したがって、絶縁性の接着剤は、封止剤ということもできる。接着剤は、例えば、熱硬化性成分(例えば、熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は、重合性化合物と熱重合開始剤との組み合わせ等)を含む。接着剤は、リン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、安息香酸、リンゴ酸等のフラックス成分を更に含んでいてもよい。
【0033】
第一の回路部材及び第二の回路部材は、互いに同じであっても異なっていてもよい。第一の回路部材及び第二の回路部材は、回路電極が形成されているガラス基板又はプラスチック基板(ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー等の有機物からなるプラスチック基板);プリント配線板;セラミック配線板;フレキシブル配線板;駆動用IC等のICチップなどであってよい。具体的には、例えば、FR-4基板等のプリント配線板(PWB)であってよく、フレキシブル回路基板(FPC)であってもよい。フレキシブル回路基板は、COF実装方式に用いられるフレキシブル回路基板(COF用FPC)であってもよい。第一の回路部材と第二の回路部材の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、第一の回路部材がプリント配線板(PWB)又はフレキシブル回路基板(FPC)であり、第二の回路部材がフレキシブル回路基板(FPC)(COF用FPCを含む)である組み合わせであってよい。
【0034】
第一の電極は、第一の回路部材を構成する基板(第一の基板)上に形成されており、第二の電極は、第二の回路部材を構成する基板(第二の基板)上に形成されている。第一の基板及び第二の基板は、例えば、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等の複合物などで形成された基板である。具体的には、例えば、第一の回路部材がプリント配線板である場合、第一の基板は、ガラス基板であってよく、第一の回路部材がフレキシブル回路基板である場合、第一の基板は、ポリイミドフィルム基板であってよい。同様に、第二の回路部材がプリント配線板である場合、第二の基板は、ガラス基板であってよく、第二の回路部材がフレキシブル回路基板である場合、第二の基板は、ポリイミドフィルム基板であってよい。また、第一の基板の一面(第一の電極が設けられている面)上及び/又は第二の基板の一面(第二の電極が設けられている面)上には、場合により絶縁層が配置されることもある。
【0035】
第一の電極及び第二の電極は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミ、モリブデン、チタン、ニッケル等の金属、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)等の酸化物などを含む電極であってよい。第一の電極及び第二の電極はこれら金属、酸化物等の2種以上を積層してなる電極であってもよい。この場合、第一の電極及び第二の電極は、2層構成であっても3層以上の構成であってもよい。具体的には、例えば、第一の電極及び第二の電極の一方又は両方が、銅回路(銅箔回路)上にNi(ニッケル)めっき層及びAu(金)めっき層がこの順で積層された電極(回路電極)、または、銅回路(銅箔回路)上にAu(金)めっき層が積層された電極(回路電極)であってよい。また、第一の電極及び第二の電極の一方が、銅回路(銅箔回路)上にNi(ニッケル)めっき層及びAu(金)めっき層がこの順で積層された電極(回路電極)であり、他方が、銅回路(銅箔回路)上にSnめっき層が形成された、Snめっき層を最表面に有する電極であってもよい。このようなSnめっき層を最表面に有する電極は、COF用FPCの電極として使用してよい。
【0036】
上記実施形態の回路接続構造体の製造方法は、例えば、第一の回路部材又は第二の回路部材を載置するステージと、第一の回路部材及び第二の回路部材を相対向する方向に加圧する加圧手段と、第一の回路部材及び第二の回路部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、工程(d)において、第一の電極と第二の電極との間を冷却する冷却手段とを備える、回路接続装置を使用して実施することができる。加圧手段と加熱手段とは一体であってよく、例えば、加熱加圧ツールであってよい。加熱加圧ツールは、従来回路接続に使用される公知の加熱加圧ツールを使用することができる。冷却手段は、例えば、空冷装置であってよく、加熱加圧ツール自体に冷却機能があってもよい。
【0037】
以下では、はんだ接続材がはんだ粒子である態様を例に挙げて、
図1及び
図2を参照しつつ、一実施形態の回路接続構造体の製造方法における各工程をより詳細に説明する。
【0038】
(工程(a))
工程(a)では、第一の基材11と第一の電極12とを有する第一の回路部材10と、はんだ粒子(はんだ接続材)1及び接着剤2を含む回路接続材3と、を用意し、第一の回路部材10の第一の電極12が形成されている面(第一の基材11の表面11a)上に回路接続材3を配置する(
図1の(a)参照。)。
【0039】
工程(a)では、回路接続材3を、はんだ粒子1と接着剤2とを含むフィルムの状態で第一の回路部材10上に配置してよく、はんだ粒子1と接着剤2とを含むペーストの状態で第一の回路部材10上に配置してもよい。回路接続材3がはんだ粒子1及び接着剤2を含むフィルム(例えば、異方導電性接着剤フィルム)である場合、ラミネートによって第一の回路部材10上に回路接続材3を配置することができる。また、フィルム状の回路接続材3を第一の回路部材10上に配置した後に、回路接続材3に圧力を加えて回路接続材3と回路部材10とを圧着してもよい。この際、接着剤2の硬化が進行しない程度に低い温度で回路接続材3を加熱してもよい。
【0040】
回路接続材3は、25℃でペースト状(液状)であっても固体状であってもよい。ここで、回路接続材3が25℃でペースト状であるとは、E型粘度計で測定した25℃における回路接続材3の粘度が400Pa・s以下であることをいう。回路接続材3が25℃でペースト状である場合には、回路接続材3をそのまま第一の回路部材上に塗布することで、第一の回路部材10上に回路接続材3を配置することができる。回路接続材3が25℃で固体状である場合には、加熱してペースト状にしてから使用する他、溶剤を使用してペースト状にしてから使用してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤中の成分に対して反応性がなく、且つ、充分な溶解性を示す溶剤であれば、特に制限はない。
【0041】
(工程(b))
工程(b)では、第一の回路部材10をステージ51上に配置し、第二の基材21と第二の電極22とを有する第二の回路部材20を、第一の電極12と第二の電極22とが相対向するように、第一の回路部材10上に配置する(
図1の(b)参照。)。この際、第二の回路部材20をステージ51上に配置し、第一の回路部材10を、第一の電極12と第二の電極22とが相対向するように、第二の回路部材20上に配置してもよい。
【0042】
図1の(b)では、回路接続材3と第二の回路部材20とが互いに離間しているが、回路接続材3と第二の回路部材20とを接触させて積層体を得てもよい。また、
図1では工程(a)の後に工程(b)が実施されているが、工程(a)と工程(b)の実施順序は特に限定されない。
【0043】
(工程(c))
工程(c)では、第一の電極12と第二の電極22との間にはんだ粒子1が介在する状態で、第一の回路部材10と第二の回路部材20とをはんだ粒子の融点以上の温度で熱圧着する(
図1の(b)及び(c)参照)。
【0044】
工程(c)は、例えば、第一の電極12と第二の電極22との間をはんだ粒子の融点以上に加熱することと、第一の電極12と第二の電極22との間をこれらの対向方向に加圧することとを含む。第一の電極12と第二の電極22との間が、はんだ粒子の融点以上の温度で、且つ、加圧された状態で保持されることにより、第一の回路部材10と第二の回路部材20とが熱圧着され、圧着体30が得られる。
【0045】
上記加熱及び加圧は、第一の回路部材10及び/又は第二の回路部材20を加熱及び加圧することにより行ってよい。例えば、
図1の(c)に示されるように、加熱加圧ツール52を第二の回路部材20に押し当て、第二の回路部材20を第一の回路部材10側に(
図1の(c)の矢印で示す方向に)押圧することで加熱と加圧とを行ってもよいし、加熱加圧ツール52を第一の回路部材10に押し当て、第一の回路部材10を第二の回路部材20側に押圧することで加熱と加圧とを行ってもよい。
【0046】
加熱及び加圧のタイミングは特に限定されず、加熱と加圧を同時に開始してもよく、加熱を開始する前から加圧を開始してもよく、加熱を開始した後に加圧を開始してもよい。工程(c)では、上述した積層体を得る前に加熱を開始してもよい。例えば、工程(a)の後、ステージ上に配置された回路部材の加熱を開始してから工程(b)を実施してもよい。
【0047】
熱圧着時の温度は、はんだ接続材の融点に応じて設定してよい。例えば、はんだ接続材の融点が300℃以下、280℃以下、240℃以下、200℃以下、160℃以下又は80℃以下である場合、熱圧着時の温度は、それぞれ、330℃以下、300℃以下、280℃以下、240℃以下、200℃以下、又は100℃以下とすることができる。熱圧着温度の下限値は、例えば、はんだ接続材の融点よりも10℃以上高い温度であってよい。熱圧着温度は、例えば、80~330℃であってよく、100~270℃又は140~230℃又は140~200℃であってもよい。ここで、熱圧着温度は、所定秒数の熱圧着を行った際の第一の電極12と第二の電極22との間の到達温度であり、実施例に記載の方法により確認される値である。
【0048】
熱圧着時の加圧力は、0.01~100MPaであってよく、0.1~20MPa又は0.5~10MPaであってもよい。ここで、熱圧着時の加圧力は、所定秒数の熱圧着を行った際の単位面積あたりの加圧力であり、圧着装置の設定値により確認される値である。なお、熱圧着時の加圧力は必ずしも一定である必要はなく、上記範囲内で変動してよい。
【0049】
熱圧着時間は、1~1800秒間であってよく、2~60秒間又は3~30秒間であってもよい。ここで、熱圧着時間は、加熱及び加圧の両方が開始されてから工程(d)の冷却を開始するまでの時間である。なお、工程(d)の冷却開始時とは、工程(d)において冷却手段を用いて冷却を開始したときを意味し、工程(d)の冷却が自然冷却である場合には、加熱を停止したときを意味する。また、工程(d)の冷却が、熱圧着ツールの設定温度を、冷却終了時にはんだ接続材の温度がはんだ接続材の融点以下の温度になるように変更することにより行う場合は、熱圧着ツールの設定温度を変更したときを意味する。熱圧着ツールの設定温度の変更と冷却手段を用いた冷却とを併用する場合には、いずれか一方の冷却が開始された時点を冷却開始時とする。
【0050】
工程(c)で得られる圧着体30は、第一の電極12と第二の電極22との間にはんだ粒子の溶融物4を含む。また、圧着体30は、第一の回路部材10と第二の回路部材20との間に、接着剤2の硬化からなる領域(硬化物領域)5を含む。図示しないが、硬化物領域5には、未硬化の接着剤2が含まれていてもよい。接着剤は、工程(c)で完全に硬化させる必要はなく、後述の工程(d)又は工程(e)において接着剤の硬化を完了させてもよい。
【0051】
(工程(d))
工程(d)では、第一の電極12と第二の電極22との間の温度がはんだ粒子1の融点以上の温度からはんだ粒子1の融点以下の温度となるまで、第一の電極12と第二の電極22との間を加圧しながら冷却する(
図2の(a)参照。)。
【0052】
冷却は、第一の電極12と第二の電極22との間の加熱(圧着体30への加熱)を停止し、第一の電極12と第二の電極22との間を自然冷却することにより行ってもよいが、生産効率の観点では、冷却手段を用いてよい。具体的には、例えば、
図2の(a)に示されるように、空冷装置53を用いて第一の電極12と第二の電極22との間を空冷してよい。
【0053】
冷却時間は、冷却方法に依存するが、例えば、0.5~1800秒間であってよく、1.0~600秒間又は2~150秒間であってもよい。
【0054】
工程(d)は、工程(c)から連続して実施してよい。すなわち、工程(c)において第一の電極12と第二の電極22との間に圧力を加えた後、該圧力を解放することなく保持したまま、工程(d)における冷却を実施してよい。例えば、加熱加圧ツール52を用いて工程(c)における加圧を行う場合には、加熱加圧ツール52を回路部材(第一の回路部材10又は第二の回路部材20)に押し当てた後、第一の電極12と第二の電極22との間の温度がはんだ粒子1の融点以下の温度となるまで加熱加圧ツール52により回路部材を押圧し続けることで、第一の電極12と第二の電極22との間を加圧状態に保持してよい。
【0055】
工程(d)における加圧力は、工程(c)における熱圧着時の加圧力として例示した範囲と同じであってよい。工程(d)における加圧は、工程(c)における熱圧着時の加圧力よりも低い加圧力で実施してもよい。工程(d)における加圧力は、例えば、0.01~100MPaであってもよい。
【0056】
工程(d)における加圧は、第一の電極12と第二の電極22との間の温度がはんだ接続材の融点以下の温度となった直後に終了してよく、第一の電極12と第二の電極22との間の温度が常温に近い温度(例えば50℃以下)となるまで継続してもよい。常温より充分に高い温度(例えば100~270℃)で加圧を終了する場合、第一の電極12と第二の電極22との間を加圧することなく冷却する工程(e)を実施してよい。
【0057】
工程(e)における冷却は、工程(d)における冷却と同様にして実施してよい。
【0058】
以上の方法によれば、
図2の(b)に示す回路接続構造体40が得られる。回路接続構造体40は、第一の回路部材10と、第二の回路部材20と、第一の回路部材10及び第二の回路部材20の間に配置され、第一の回路部材10及び第二の回路部材20を互いに接着するとともに第一の電極12及び第二の電極22を互いに電気的に接続する回路接続部7と、を備える。回路接続構造体40は、例えば、ディスプレイ入力用回路用、半導体パッケージ又は半導体センサ用の回路接続構造体であってよく、コネクタ代替回路としての回路接続構造体であってもよい。
【0059】
回路接続部7は、接着剤2の硬化物からなる領域(硬化物領域)5と、対向電極間の電極接続部としてはんだ接続部6と、を有する。はんだ接続部6は、はんだ粒子1が溶融固化することにより形成されており、第一の電極12及び第二の電極22の表面と密接かつ広範囲で物理的に接触して部分的な金属接合を形成している。回路接続部7において、はんだ接続部6の周りには硬化物領域5が形成されており、はんだ接続部6が接着剤2の硬化物によって封止されている。
図2の(b)に示されるように、硬化物領域5中には、接続に使用されなかったはんだ粒子1(又はその溶融固化物)が含まれていてよい。
【0060】
以上、はんだ接続材としてはんだ粒子を用いた回路接続構造体の製造方法を例に挙げて一実施形態の回路接続構造体の製造方法を説明したが、本発明の回路接続構造体の製造方法を上記に限定されない。
【0061】
例えば、はんだ接続材は、はんだバンプであってもよい。
図3は、はんだ接続材としてはんだバンプを用いた回路接続構造体の製造方法を模式的に示す断面図である。はんだ接続材としてはんだバンプを用いる方法では、まず、第一の回路部材110の第一の電極112上にはんだバンプ101が形成されてなるはんだバンプ付き回路部材115を用意する(
図3の(a)参照。)。次いで、はんだバンプ付き回路部材115のはんだバンプ101が形成されている面上に接着剤102及び第二の回路部材120を配置する(
図3の(b)参照。)。この際、第一の電極112と第二の電極122とが接着剤102を介して相対向するように第二の回路部材120を配置する。これにより、第一の回路部材110の第一の電極112が形成されている面(第一の基材111の表面111a)上にはんだ接続材であるはんだバンプ101及び接着剤102を備える回路接続材103を配置する工程(a)と、第二の回路部材120を、第一の電極112と第二の電極122とが相対向するように、第一の回路部材110上に配置する工程(b)とが完了する。次に、はんだ粒子を用いる場合と同様にして、工程(c)、工程(d)及び場合により工程(e)を実施して、
図3の(c)に示される回路接続構造体140を得る。
【0062】
はんだバンプ101は、例えば、はんだ粒子を第一の電極112上で加熱(場合により加熱及び加圧)することにより溶融させてから冷却し固化させることで形成することができる。
【0063】
接着剤102は、フィルム状で使用されてよく、ペースト状で使用されてもよい。接着剤102を第一の回路部材110上に配置する方法は特に限定されない。例えば、接着剤102がフィルム状である場合、ラミネートによってはんだバンプ付き回路部材115上に接着剤102を配置してよい。また、接着剤102が25℃でペースト状である場合には、接着剤102をそのままはんだバンプ付き回路部材115上に塗布することで、第一の回路部材10上に接着剤102を配置してよい。接着剤102が25℃で固体状である場合には、加熱してペースト状にしてから使用する他、溶剤を使用してペースト状にしてから使用してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤中の成分に対して反応性がなく、且つ、充分な溶解性を示す溶剤であれば、特に制限はない。
【0064】
接着剤102は、第二の回路部材120の第二の電極122が形成されている面(第二の基材121の表面121a)上にあらかじめ配置されていてもよい。この場合、工程(b)を実施することで工程(a)が完了する。
【0065】
図3に示される方法では、はんだバンプ付き回路部材115上に接着剤102を配置しているが、第一の回路部材110上に接着剤102を配置してから、はんだバンプ101を形成してもよい。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0067】
<実施例1>
(準備工程)
[はんだ粒子の準備]
三井金属鉱業株式会社製のはんだ粒子(商品名:Sn72Bi28 Type5)に対して分級操作を行い、粒子径が15μm以下のはんだ粒子及び粒子径が25μm以上のはんだ粒子を除去することで、はんだ粒子A(Bi含有量:28質量%、Sn含有量:72質量%、平均粒径:20μm、融点:139℃)を得た。はんだ粒子Aの平均粒径は、はんだ粒子AのD50値をマイクロトラック測定装置で測定して確認した。はんだ粒子の融点は、DSCにおける第一吸熱ピークの値から算出した。はんだ粒子のDSC測定は、ティー・エイ・インスツルメント社製の示差走査熱量計(商品名:Q-1000)を用いて、昇温速度10℃/minで、Heガスフロー中で、30~200℃の範囲で行った。
【0068】
[塗工液の調製]
ラジカル重合性化合物である、ウレタンアクリレート(製品名:UN-952、根上工業株式会社製)5質量部及びイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(製品名:M-215、東亞合成株式会社製)10質量部と、リン酸エステル系有機化合物である、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの6-ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物(製品名:PM-21、日本化薬株式会社製)2質量部と、熱ラジカル発生剤である、パーオキシエステル(製品名:パーヘキサ25O、日油株式会社製)3質量部と、無機充填材である、シリカフィラー(製品名:AEROSIL R202、日本アエロジル株式会社)15質量部と、フィルム形成材であるポリエステルウレタン樹脂(製品名:UR8240、東洋紡株式会社製)35質量部と、をメチルエチルケトン中で混合し、攪拌して、溶液Aを得た。
【0069】
上記で得られたはんだ粒子Aを溶液Aに分散させた。この際、はんだ粒子Aの添加量は、溶液A中の不揮発分(メチルエチルケトン以外の成分)100質量部に対し、30質量部とした。これにより、フィルム状回路接続材形成用の塗工液を得た。
【0070】
[フィルム状回路接続材の形成]
上記で得られた塗工液を、片面を離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)に、塗工装置を用いて塗布した。塗膜を70℃の熱風乾燥により乾燥して、PETフィルム上に異方導電性のフィルム状回路接続材(厚さ:25μm)を形成し、剥離性基材付きフィルム状回路接続材を得た。なお、フィルム状回路接続材の厚さは、レーザー顕微鏡を用いて測定した。具体的には、PETフィルム上のフィルム状接着剤の一部を除去し、PETフィルムの表面の露出部分からフィルム状接着剤の表面までの高さを計測することでフィルム状回路接続材の厚さを求めた。
【0071】
(工程(a))
回路部材を模した被着体として、セラミック基板の表面に金電極(10mm×5mm、単一電極)が設けられた第一の回路部材を準備した。次いで、上記で得られた剥離性基材付きフィルム状回路接続材を1.5mm幅にカットし、フィルム状回路接続材側から、第一の回路部材の金電極上に貼り付けた。次いで、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、日化設備エンジニアリング株式会社製)を用いて、フィルム状回路接続材と第一の回路部材とを熱圧着し、第一の回路部材上にフィルム状回路接続材が設けられてなる積層体を得た。具体的には、剥離性基材付きフィルム状回路接続材が貼り付けられた第一の回路部材を、PETフィルム側を上に向けてステージ上に配置し、PETフィルムに加熱加圧ツールを押し当てることで、フィルム状回路接続材を加熱しながら加圧した。熱圧着時間(加圧時間)は1秒間とし、加圧力は、フィルム状回路接続材の総面積(接着部分の面積)あたりで1MPaとした。加熱加圧ツールの温度は、フィルム状回路接続材の到達温度が70℃となるように調整した。フィルム状回路接続材の到達温度は、フィルム状回路接続材中に熱電対を挿入して測定した。PETフィルムは、積層体が常温(25℃)に戻った後に剥離した。
【0072】
(工程(b))
第二の回路部材として、ライン幅100μm、ピッチ200μm、厚さ35μmの銅回路にNi/Auめっき処理が施された回路電極を有するフレキシブル回路基板(FPC)を準備した。次いで、上記で得られた積層体における第一の回路部材の金電極と、第二の回路部材の回路電極とが相対向するように、第二の回路部材を積層体上に載置し、第一の回路部材上にフィルム状回路接続材及び第二の回路部材が設けられてなる積層体を得た。
【0073】
(工程(c))
次いで、熱圧着装置(加熱方式:パルスヒート型、株式会社大橋製作所製)を用いて、第一の回路部材と第二の回路部材とを熱圧着した。具体的には、工程(b)で得られた積層体を、第二の回路部材側を上に向けてステージ上に配置し、第二の回路部材に加熱加圧ツールを押し当てることで、第二回路部材を加熱しながら加圧した。熱圧着時間(加熱加圧ツールが第二の回路部材に接触してから工程(d)の冷却を開始するまでの時間)は8秒間とし、加圧力は、フィルム状回路接続材の総面積(接着部分の面積)あたりで1MPaとした。加熱加圧ツールの温度は、対向電極間の到達温度が155℃となるように調整した。対向電極間の到達温度は、フィルム状回路接続材中に熱電対を挿入して測定した。
【0074】
(工程(d))
次いで、第二の回路部材に加熱加圧ツールを押し当てたまま、加熱加圧ツールによる加熱を停止し圧着体を冷却(空冷)した。冷却時の加圧力は、フィルム状回路接続材の総面積(接着部分の面積)あたりで1MPaとした。対向電極間の温度が120℃まで冷却された時点で加熱加圧ツールを第二の回路部材から引き離した。冷却を開始してから対向電極間の温度が120℃となるまでに要した時間は50秒であった。
【0075】
(工程(e))
対向電極間の温度が常温に近い温度(50℃以下)となるまで工程(d)における冷却を継続し、実施例1の回路接続構造体を得た。工程(c)における加熱加圧の開始から回路接続構造体が得られるまでの、時間と電極間温度及び加圧力との関係を示すグラフ(温度-圧力プロファイル)を
図4に示す。なお、
図4における温度プロファイルは実測値、圧力プロファイルは装置設定値を示している。
【0076】
<比較例1>
実施例1と同様にして準備工程から工程(c)まで実施した後、工程(d)及び工程(e)を実施せず、加熱加圧ツールが第二の回路部材に接触してから8秒経過した後に加熱加圧ツールを第二の回路部材から引き離して熱圧着を終了させ、圧着体を常温(25℃)で放置することで冷却し、比較例1の回路接続構造体を得た。工程(c)における加熱加圧の開始から回路接続構造体が得られるまでの、時間と電極間温度及び加圧力との関係を示すグラフ(温度-圧力プロファイル)を
図5に示す。
【0077】
<比較例2>
工程(c)における熱圧着時間(加熱加圧ツールを第二の回路部材に接触させる時間)を60秒間に変更したことを除き、比較例1と同様にして、比較例2の回路接続構造体を得た。工程(c)における加熱加圧の開始から回路接続構造体が得られるまでの、時間と電極間温度及び加圧力との関係を示すグラフ(温度-圧力プロファイル)を
図6に示す。
【0078】
<評価>
実施例1及び比較例1~2で作製した回路接続構造体における電極間接続部(はんだ接続部)のクラックの有無を確認した。具体的には、まず、回路接続構造体を2枚のガラス(厚み:1mm程度)で挟み込み、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER811、三菱ケミカル株式会社製)100gと、硬化剤(商品名:エポマウント硬化剤、リファインテック株式会社製)10gとからなる樹脂組成物で注型した。次いで、研磨機を用いて注型物を研磨することで、回路接続構造体の接続方向に平行な電極間接続部を含む断面を露出させた。次いで、露出した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:SE-8020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて観察し、電極間接続部におけるクラックの有無を観察した。断面観察にて観察されたはんだ粒子の粒子径に対して30%以上の長さの亀裂がある場合、クラック有と判定した。その結果、比較例1~2ではクラックが観察されたが、実施例1ではクラックが観察されなかった。
1…はんだ粒子(はんだ接続材)、2,102…接着剤、3,103…回路接続材、5…硬化物領域、6…はんだ接続部、10,110…第一の回路部材、11,111…第一の基材、11a,111a…第一の基材の表面(第一の回路部材の第一の電極が形成されている面)、12,112…第一の電極、20,120…第二の回路部材、21,121…第二の基材、22,122…第二の電極、30…圧着体、40,140…回路接続構造体、51…ステージ、52…加熱加圧ツール、53…冷却装置、101…はんだバンプ(はんだ接続材)、115…はんだバンプ付き回路部材。