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特開2023-176363土壌微生物の観察デバイス及び観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176363
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】土壌微生物の観察デバイス及び観察方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20231206BHJP
   C12M 1/38 20060101ALI20231206BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20231206BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20231206BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/38 Z
C12M1/42
C12M1/12
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088605
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】今村 壮輔
(72)【発明者】
【氏名】高谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】瀧ノ上 正浩
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA27
4B029BB02
4B029BB06
4B029CC01
4B029DG06
4B029DG10
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B063QA20
4B063QQ06
4B063QQ07
4B063QQ19
4B063QR75
4B063QR76
4B063QS07
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】複数の培養部の間を接続する流路を交換することなく、土壌微生物同士の相互作用の時間変化を模擬可能な土壌微生物の観察デバイスを提供すること。
【解決手段】実施形態では、土壌微生物の観察デバイスは、複数の培養部、流路及び制御部を備える。複数の培養部のそれぞれにおいて、土壌微生物が培養され、複数の培養部は、互いに対して隔離される。流路は、複数の培養部の間を接続し、流路に媒体を流すことが可能である。制御部は、複数の培養部のそれぞれからの流路を通しての物質の拡散状態を制御することにより、複数の培養部のそれぞれからの流路を通しての物質の拡散状態を経時的に変化させることが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌微生物がそれぞれにおいて培養され、互いに対して隔離される複数の培養部と、
前記複数の培養部の間を接続し、媒体を流すことが可能な流路と、
前記複数の培養部のそれぞれからの前記流路を通しての物質の拡散状態を制御することにより、前記複数の培養部のそれぞれからの前記流路を通しての前記物質の前記拡散状態を経時的に変化させることが可能な制御部と、
を具備する、土壌微生物の観察デバイス。
【請求項2】
前記流路には、溶液及び空気のそれぞれを前記媒体として流すことが可能であり、
前記制御部は、前記流路における前記溶液の流速、及び、前記流路に流れる前記媒体の種類の少なくとも一方を変化させることにより、前記複数の培養部のそれぞれからの前記流路を通しての前記物質の前記拡散状態を変化させる、
請求項1の観察デバイス。
【請求項3】
前記複数の培養部のそれぞれに対して1つずつ設けられ、作動されることにより、前記複数の培養部の対応する1つと前記流路との接続部分にそれぞれが電場を発生させる複数の電場発生部をさらに具備し、
前記流路には、脂質膜に溶液が包まれた油中水滴を前記媒体として流すことが可能であり、
前記複数の培養部のそれぞれには、脂質膜に溶液が包まれた油中水滴が存在し、
前記制御部は、前記複数の電場発生部のそれぞれの作動を制御することにより、前記複数の培養部のそれぞれの前記油中水滴に対する前記流路を流れる前記油中水滴の融合状態を制御し、前記複数の培養部のそれぞれからの前記流路を通しての前記物質の前記拡散状態を制御する、
請求項1の観察デバイス。
【請求項4】
前記複数の培養部のそれぞれに対して1つずつ設けられ、前記複数の培養部の対応する1つと前記流路との間にそれぞれが配置される複数のフィルタ部をさらに具備し、
前記複数のフィルタ部の少なくとも1つは、第1のフィルタ層と、前記流路が位置する側とは反対側に前記第1のフィルタ層に対して積層され、透過部分が前記第1のフィルタ層に対してずれて形成される第2のフィルタ層と、を備える、
請求項1乃至3のいずれか1項の観察デバイス。
【請求項5】
互いに対して隔離される複数の培養部のそれぞれにおいて土壌微生物を培養することと、
前記複数の培養部の間を接続する流路に、媒体を流すことと、
前記複数の培養部のそれぞれからの前記流路を通しての物質の拡散状態を制御することにより、前記複数の培養部のそれぞれからの前記流路を通しての前記物質の前記拡散状態を経時的に変化させることと、
を具備する、土壌微生物の観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、土壌微生物の観察デバイス及び観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌は、可視光を通さないため、土壌に存在する土壌微生物同士の相互作用を直接的に観察することは、難しい。このため、施肥等の土壌に与える操作が微生物活動及び植物成長に与える影響等を把握することが、難しい。このような事情から、土壌に存在する土壌微生物同士の相互作用を模擬可能な観察デバイスが開発されている。
【0003】
土壌微生物同士の相互作用を模擬した観察デバイスでは、互いに対して隔離された複数の培養部(チャンバ)が、流路を間に介して接続される。そして、複数の培養部の間の流路を通しての離間距離が互いに対して異なる複数の観察デバイスを用いることにより、複数の培養部の間での物質の交換状態を、すなわち、複数の培養部の間での土壌微生物同士の相互作用の度合いを、観察デバイスごとに異ならせて、観察が行われる。
【0004】
ここで、土壌は、雨等によって湿った状態になったり、乾いた状態になったりするため、土壌の状態は経時的に変化する。このため、土壌の状態の経時的な変化に対応して、土壌微生物同士の相互作用の度合いが経時的に変化する。観察デバイスでは、複数の培養部の間を接続する流路を交換することなく、土壌微生物同士の相互作用の時間変化を1つの観察デバイスで模擬可能なことが、求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Eyal Karzbrun, Alexandra M. Tayar, Vincent Noireaux, and Roy H. Bar‐Ziv. 2014. “Synthetic Biology. Programmable on‐chip DNA compartments as artificial cells.” Science 345 (6198): 829‐832
【非特許文献2】Felix J. H. Hol, Or Rotem, Edouard Jurkevitch, Cees Dekker, and Daniel A. Koster. 2016. “Bacterial Predator‐prey dynamics in microscale patchy landscapes.” Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 283 (1824): 20152154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複数の培養部の間を接続する流路を交換することなく、土壌微生物同士の相互作用の時間変化を模擬可能な土壌微生物の観察デバイス及び観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態では、土壌微生物の観察デバイスは、複数の培養部、流路及び制御部を備える。複数の培養部のそれぞれにおいて、土壌微生物が培養され、複数の培養部は、互いに対して隔離される。流路は、複数の培養部の間を接続し、流路に媒体を流すことが可能である。制御部は、複数の培養部のそれぞれからの流路を通しての物質の拡散状態を制御することにより、複数の培養部のそれぞれからの流路を通しての物質の拡散状態を経時的に変化させることが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の培養部の間を接続する流路を交換することなく、土壌微生物同士の相互作用の時間変化を模擬可能な土壌微生物の観察デバイス及び観察方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る観察デバイスを示す概略図である。
図2図2は、第2の実施形態に係る観察デバイスを示す概略図である。
図3図3は、第2の実施形態に係る観察デバイスにおいて、複数の培養部及びこれらの近傍を、流路に媒体が流れている状態で、概略的に示す断面図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る制御部によって行われる、定期的に撮影された撮影画像を含む画像データの画像処理の一例を説明する概略図である。
図5図5は、ある変形例に係る観察デバイスにおいて、複数の培養部のある1つ及びその近傍を、流路に溶液が流れている状態で、概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、実施形態の一例として第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る観察デバイス1を示す概略図である。観察デバイス1は、複数の培養部2及び流路3を備える。観察デバイス1では、培養部2及び流路3は、培養プレート5の内部に形成される。培養プレート5は、可視光を透過可能であり、培養部2及び流路3を培養プレート5の外部から観察可能(視認可能)である。培養プレート5を形成する材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及びガラス等が挙げられる。
【0012】
複数の培養部2のそれぞれは、培養プレート5の内部のチャンバから形成され、培養部2のそれぞれでは、土壌微生物6及び培養液を含む懸濁液が収容され、培養液を用いて土壌微生物が培養される。培養液は、土壌微生物の栄養源を含有する液体である。培養プレート5の内部では、複数の培養部2は、互いに対して隔離される。なお、図1の一例では、培養部2が2つ設けられる構成が示されるが、培養部2が複数設けられる構成であればよい。ある一例では、培養部2が3つ以上設けられてもよい。
【0013】
流路3には、流体等の媒体を流すことが可能である。複数の培養部2は、流路3を間に介して、互いに対して接続される。ここで、培養プレート5において、培養部2及び流路3のそれぞれは、マイクロ加工技術を利用して形成される。また、培養部2及び流路3のそれぞれの寸法及び形状等は、特に限定されるものではない。ある一例では、流路3の幅が、20μm程度に形成される。
【0014】
また、培養プレート5には、溶液流入口11、空気流入口12及び排出口13が形成され、流路3は、溶液流入口11、空気流入口12及び排出口13のそれぞれにおいて、培養プレート5の外部に対して開口する。流路3には、メイン流路部15、供給流路部16,17及び合流部18が形成される。流路3では、供給流路部16が、溶液流入口11から合流部18まで延設され、供給流路部17が空気流入口12から合流部18まで延設される。そして、供給流路部16,17が、合流部18において合流する。そして、メイン流路部15は、合流部18から排出口13まで延設される。培養プレート5の内部では、メイン流路部15が、複数の培養部2のそれぞれに接続される。なお、流路3では、溶液流入口11及び空気流入口12が位置する側が、上流側となり、排出口13が位置する側が、下流側となる。
【0015】
また、観察デバイス1には、溶液供給部21及び空気供給部22が設けられる。溶液供給部21は、1つ以上のチューブ部材(図示しない)を介して、流路3の溶液流入口11に接続される。溶液供給部21は、例えば、培養液を含む溶液が溜められるタンク、及び、マイクロポンプ等の供給作動部から構成される。溶液供給部21では、マイクロポンプ等の供給作動部が作動されることにより、タンクに溜められた溶液が、流路3へ供給される。溶液供給部21から供給された溶液は、溶液流入口11から流路3へ流入し、供給流路部16、合流部18及びメイン流路部15を順に通って、上流側から下流側へ流れる。
【0016】
空気供給部22は、1つ以上のチューブ部材(図示しない)を介して、流路3の空気流入口12に接続される。空気供給部22は、例えば、空気が溜められるタンク、コンプレッサ、及び、開閉弁等から構成される。空気供給部22では、タンクに溜められた空気が、コンプレッサによって圧縮される。そして、開閉弁を開くことにより、圧縮された空気が、流路へ供給される。空気供給部22から供給された空気は、溶液流入口11から流路3へ流入し、供給流路部16、合流部18及びメイン流路部15を順に通って、上流側から下流側へ流れる。
【0017】
排出口13には、チューブ部材(図示しない)が接続される。流路3を前述のように流れた溶液及び空気のそれぞれは、排出口13から排出される。この際、排出口13に接続されるチューブ部材の内部通って、溶液及び空気のそれぞれが、排出される。前述のような構成であるため、流路3には、培養液を含む溶液、及び、空気のそれぞれを、媒体(流体)として流すことが可能である。なお、図1では、溶液供給部21から流路3へ供給される溶液の流れ、空気供給部22から流路3へ供給される空気の流れ、及び、流路3から排出される溶液及び空気のそれぞれの流れは、破線の矢印で示す。
【0018】
また、培養プレート5では、培養部2と同一の数のフィルタ部23が設けられ、複数の培養部2のそれぞれに対して1つずつフィルタ部23が設けられる。フィルタ部23のそれぞれは、培養部2の対応する1つと流路3のメイン流路部15との間に配置される。フィルタ部23のそれぞれには、透過部分となる隙間25が多数形成される。このため、フィルタ部23のそれぞれは、透過部分を通してのみ、培養液を含む溶液及び空気等が流体を透過させることが可能である。このため、培養部2のそれぞれでは、対応するフィルタ部23の透過部分を通してのみ、流路3から流体が流入可能であり、流路3へ流体を流出可能である。ある一例では、フィルタ部23のそれぞれは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から形成され、フィルタ部23のそれぞれにおいて、透過部分となる隙間25のそれぞれは、0.6μm程度の幅(直径)となる。
【0019】
また、観察デバイス1は、撮影部27を備える。撮影部27は、カメラ又は撮影機能を搭載した機器等から構成され、撮影範囲Tを撮影する。この際、撮影部27は、顕微鏡を用いて顕微鏡画像を撮影する。撮影範囲Tには、複数の培養部2の全て、及び、培養部2のそれぞれの流路3への接続部分が含まれる。培養プレート5が可視光を透過可能であるため、培養部2等の培養プレート5の内部を撮影可能となる。撮影部27は、所定の時間間隔で定期的に、撮影範囲Tを撮影する。
【0020】
観察デバイス1は、制御部31及びユーザインタフェース32を備える。制御部31は、観察デバイス1が設けられるシステム全体を制御する。制御部31は、例えば、コンピュータ等の処理装置から構成され、制御部31を構成する処理装置は、プロセッサ又は集積回路、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。プロセッサ又は集積回路は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)、及び、DSP(Digital Signal processor)等のいずれかを含む。制御部31を構成する処理装置は、集積回路等を1つのみ備えてもよく、集積回路等を複数備えてもよい。制御部31を構成する処理装置は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。
【0021】
なお、ある一例では、制御部31は、複数のコンピュータ、すなわち、複数の処理装置から構成されてもよい。この場合、複数の処理装置が協働して、制御部31による処理を行う。また、別のある一例では、制御部31は、クラウド環境のサーバによって構成されてもよい。この場合、仮想CPU等の仮想プロセッサによって、制御部31による処理が行われる。ユーザインタフェース32では、観察デバイス1の使用者等によって、各種の操作が行われる。また、ユーザインタフェース32では、観察デバイス1の使用者等に各種の情報を告知可能である。ユーザインタフェース32では、画面表示及び音声等のいずれかによって、情報が告知される。
【0022】
制御部31は、撮影部27が所定の時間間隔で定期的に撮影した画像を含む画像データを、取得する。制御部31は、画像データを画像処理する等して、撮影範囲Tの状態の時間変化等を検出する。例えば、制御部31は、撮影部27が撮影した画像等に基づいて、流路3を流れている媒体の種類、及び、流路を流れている溶液の流速等を検出可能である。また、制御部31には、観察デバイス1の使用者等によってユーザインタフェース32で行われた操作に基づいて操作指令が、入力される。制御部31は、撮影部27からの画像データの画像処理による処理結果、及び、ユーザインタフェース32からの操作指令等に基づいて、溶液供給部21におけるマイクロポンプ等の供給作動部の作動、及び、空気供給部22におけるコンプレッサ及び開閉弁等の作動を制御する。なお、図1では、制御部31に入力されるデータ、及び、制御部31からの制御指令等の伝送は、実線の矢印で示す。
【0023】
制御部31は、例えば、溶液供給部21の供給作動部を作動させることにより、流路3へ溶液を供給させ、溶液供給部21の供給作動部の作動を停止することにより、流路3への溶液の供給を停止させる。このため、制御部31は、溶液供給部21の作動を制御することにより、流路3への溶液の供給の有無を切替え可能である。また、制御部31は、例えば、空気供給部22の開閉弁を開くことにより、流路3へ空気を供給させ、空気供給部22の開閉弁を閉じることにより、流路3への空気の供給を停止させる。このため、制御部31は、空気供給部22の作動を制御することにより、流路3への空気の供給の有無を切替え可能である。
【0024】
前述のように溶液供給部21及び空気供給部22のそれぞれの作動が制御されるため、制御部31は、流路3に流れる媒体(流体)の種類を制御及び調整可能であり、流路3に流れる媒体の種類を変化させることが可能である。すなわち、制御部31によって、流路3に溶液が流れる状態と流路3に空気が流れる状態との間を、切替え可能である。また、流路3に溶液が供給されている状態では、制御部31は、溶液供給部21供給作動部の作動を制御することにより、流路3に流れる溶液の流速を制御する。この際、溶液供給部21においてマイクロポンプからの溶液の吐出圧力及び吐出量等を調整することにより、流路3における溶液の流速が調整される。したがって、制御部31は、流路3における溶液の流速を変化させることが可能である。
【0025】
観察デバイス1では、流路3に流れる媒体の種類、及び、流路3における溶液の流速の少なくとも一方が変化することにより、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態が変化する。このため、制御部31は、流路3に流れる媒体の種類、及び、流路3における溶液の流速を前述のように制御することにより、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態を制御する。そして、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態が制御部31によって調整されることにより、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いが、調整される。
【0026】
例えば、流路3に溶液が流れ、かつ、流路3における溶液の流速がゼロ又は略ゼロになる状態では、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散の度合いは、単純拡散と同程度となる。そして、流路3において溶液に流速が発生すると、溶液の流速がゼロの場合に比べて、培養部2のそれぞれから物質が、特に下流側へ、流路3を通して拡散し易くなる。そして、流路3における溶液の流速が速くなるほど、培養部2のそれぞれから物質が、流路3を通して拡散し易くなる。このため、流路3に溶液が流れている状態では、流路3における溶液の流速が速くなるほど、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いが大きくなる。
【0027】
また、流路3に空気が流れている状態では、培養部2のそれぞれから流路3を通して、物質が拡散しない、又は、ほとんど拡散しない。このため、流路3に空気が流れている状態では、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いは、ゼロ又は略ゼロになる。
【0028】
前述のように本実施形態では、制御部31によって、流路3における溶液の流速、及び、流路3に流れる媒体の種類の少なくとも一方を経時的に変化させることにより、複数の培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態を経時的に変化させることが、可能となる。これにより、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いを経時的に変化させることが可能になり、1つの観察デバイス1において、土壌微生物6同士の相互作用の時間変化を模擬可能となる。したがって、土壌の状態の経時的な変化に対応した土壌微生物6同士の相互作用の時間変化を、観察デバイス1を用いて観察可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、流路3における溶液の流速、及び、流路3に流れる媒体の種類の少なくとも一方を変化させることにより、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態を変化させる。このため、土壌微生物6同士の相互作用の時間変化の観察において、複数の培養部2の間を接続する流路3を交換する必要はなく、培養部2の間の流路3を通しての離間距離が互いに対して異なる複数の観察デバイスを用いる必要もない。したがって、土壌微生物6同士の相互作用の時間変化の観察において、手間等が低減される。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、実施形態の別の一例として第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態を以下のように変更した変形例である。このため、以下の第2の実施形態の説明では、第1の実施形態から変更された構成要素及び処理等について説明し、第1の実施形態と同様の構成要素及び処理等については、説明を省略する。
【0031】
図2は、第2の実施形態に係る観察デバイス1を示す概略図である。図2に示すように、本実施形態では、培養プレート5に、流入口41及び排出口42が形成され、流路3は、流入口41及び排出口42のそれぞれにおいて、培養プレート5の外部に対して開口する。本実施形態でも、培養プレート5の内部において、流路3が、複数の培養部2のそれぞれに接続される。本実施形態では、流路3において、流入口41が位置する側が、上流側となり、排出口42が位置する側が、下流側となる。
【0032】
また、観察デバイス1には、供給部43が設けられる。供給部43は、1つ以上のチューブ部材(図示しない)を介して、流路3の流入口41に接続される。供給部43は、例えば、後述する媒体を生成する媒体生成部、及び、マイクロポンプ等の供給作動部から構成される。供給部43では、マイクロポンプ等の供給作動部が作動されることにより、媒体生成部によって生成された媒体が、流路3へ供給される。供給部43から供給された媒体(流体)は、流入口41から流路3へ流入し、上流側から下流側へ流路3を流れる。
【0033】
排出口42には、チューブ部材(図示しない)が接続される。流路3を前述のように流れた媒体は、排出口42から排出される。この際、排出口42に接続されるチューブ部材の内部通って、媒体が排出される。なお、図2では、供給部43から流路3へ供給される媒体の流れ、及び、流路3から排出される媒体の流れは、破線の矢印で示す。
【0034】
本実施形態の培養プレート5では、培養部2と同一の数の電場発生部45が設けられ、複数の培養部2のそれぞれに対して1つずつ電場発生部45が設けられる。電場発生部45のそれぞれは、一対の電極46,47を備える。電場発生部45のそれぞれでは、一対の電極46,47は、培養部2の対応1つ及び流路3を間に挟む状態で、配置される。したがって、電場発生部45のそれぞれでは、一対の電極46,47の間に、複数の培養部2の対応する1つと流路3との接続部分が位置する。
【0035】
観察デバイス1では、培養部2及び電場発生部45のそれぞれと同一の数の電源部48が設けられ、電場発生部45のそれぞれに対して1つずつ電源部48が設けられる。電場発生部45のそれぞれでは、電極46が電源部48に電気的に接続され、電極47が接地される。電場発生部45のそれぞれでは、電源部48の対応する1つから電力が供給されることにより、一対の電極46,47の間に電圧が印加される。これにより、電場発生部45のそれぞれでは、一対の電極46,47の間の領域に電場が発生する。したがって、電場発生部45のそれぞれは、電力が供給されることにより、培養部2の対応する1つ、及び、培養部2の対応する1つと流路3との接続部分に、電場を発生させる。
【0036】
図3は、本実施形態の観察デバイス1において、複数の培養部2及びこれらの近傍を、流路3に媒体が流れている状態で、概略的に示す断面図である。図3に示すように、本実施形態では、油51、及び、油51に存在する油中水滴52が、媒体として、供給部43から流路3へ供給される。ある一例では、供給部43から流路3に媒体が供給されている状態において、複数の油中水滴52が流路3を流れ、複数の油中水滴52は、流路3での流れの方向に、互いに対して所定の間隔を有する。油中水滴52のそれぞれは、培養液を含む溶液であり、界面活性剤によって形成される脂質膜53によって包まれる。
【0037】
また、本実施形態では、培養部2のそれぞれに、油54が溜められ、培養部2のそれぞれでは、溜められた油54に油中水滴55が存在する。油中水滴55のそれぞれでも、油中水滴52と同様に、界面活性剤によって形成される脂質膜56によって、培養液を含む溶液が包まれる。培養部2のそれぞれでは、油中水滴55の内部、すなわち、油中水滴55の溶液の部分において、土壌微生物6が培養される。
【0038】
電場発生部45の対応する1つによる電場が発生していない状態では、培養部2のそれぞれの油中水滴55は、流路3に流れる油中水滴52と融合しない。一方、電場発生部45の対応する1つによって電場が発生すると、培養部2のそれぞれの油中水滴55は、流路3に流れる油中水滴52と融合可能になる。このため、培養部2のそれぞれの流路3との接続部分では、電場発生部45の対応する1つの作動状態、すなわち、電場発生部45の対応する1つによる電場の発生状態に対応して、流路3を流れる油中水滴52への油中水滴55の融合状態が変化する。
【0039】
図2に示すように、本実施形態では、制御部31は、撮影部27からの画像データの画像処理による処理結果、及び、ユーザインタフェース32からの操作指令等に基づいて、供給部43におけるマイクロポンプ等の供給作動部の作動、及び、複数の電源部48のそれぞれからの電場発生部45の対応する1つへの電力の供給を制御する。制御部31は、電場発生部45のそれぞれへの電力の供給を制御することにより、電場発生部45のそれぞれの作動を制御し、電場発生部45のそれぞれによる電場の発生状態を制御する。なお、図2では、制御部31に入力されるデータ、及び、制御部31からの制御指令等の伝送は、実線の矢印で示す。
【0040】
本実施形態では、制御部31は、電場発生部45のそれぞれの作動を前述のように制御することにより、培養部2のそれぞれの油中水滴55に対する流路3を流れる油中水滴52の融合状態を、制御する。このため、制御部31による制御によって電場発生部45のそれぞれによる電場の発生状態が変化することにより、培養部2の対応する1つに存在する油中水滴55に対する流路3に流れる油中水滴52の融合状態が、変化する。
【0041】
観察デバイス1の培養部2でのそれぞれでは、油中水滴55に対する流路3を流れる油中水滴52の融合状態が変化することにより、その培養部2からの流路3を通しての物質の拡散状態が変化する。このため、制御部31は、培養部2でのそれぞれの油中水滴55に対する流路3を流れる油中水滴52の融合状態を前述のように制御することにより、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態を制御する。そして、本実施形態でも、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態が制御部31によって調整されることにより、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いが、調整される。
【0042】
ここで、電場発生部45のそれぞれについて、電場を発生している状態をオン状態とし、電場を発生していない状態をオフ状態とする。例えば、培養部2のそれぞれでは、電場発生部45の対応する1つがオン状態になる頻度、及び、電場発生部45の対応する1つが単位時間当たりにオン状態になる時間等が基準レベルになる場合、その培養部2からの流路を通しての物質の拡散の度合いは、単純拡散と同程度となる。そして、培養部2のそれぞれでは、電場発生部45の対応する1つがオン状態になる頻度が高いほど、その培養部2からの物質が、流路3を通して拡散し易くなる。また、培養部2のそれぞれでは、電場発生部45の対応する1つが単位時間当たりにオン状態になる時間が長いほど、その培養部2からの物質が、流路3を通して拡散し易くなる。
【0043】
したがって、流路3に媒体が流れている状態では、電場発生部45のそれぞれがオン状態になる頻度、及び、電場発生部45のそれぞれが単位時間当たりにオン状態になる時間等に対応して、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いが変化する。また、流路3に媒体が流れている状態でも、電場発生部45のそれぞれが経時的に継続してオフ状態の場合は、培養部2のそれぞれから流路3を通して、物質が拡散しない、又は、ほとんど拡散しない。このため、電場発生部45が継続してオフ状態で維持される間は、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いは、ゼロ又は略ゼロになる。
【0044】
また、制御部31は、撮影部27からの画像データを画像処理することにより、撮影画像において油中水滴52,55のそれぞれを検出する。ここで、撮影範囲Tの撮影画像等では、光の屈折率の関係で、油中水滴52を包む脂質膜53、及び、油中水滴55を包む脂質膜56のそれぞれは、他の部分に比べて暗くなる。ある一例では、制御部31は、撮影範囲Tの撮影画像を二値化処理することにより、撮影画像の二値化画像を生成する。そして、制御部31は、二値化画像における閾値より暗い画素の位置等に基づいて、脂質膜53,56のそれぞれ、すなわち、油中水滴52のそれぞれと油51と境界、及び、油中水滴55のそれぞれと油54との境界を、撮影画像において検出する。
【0045】
前述のように撮影画像から脂質膜53,56が検出されることにより、制御部31は、撮影画像において検出した脂質膜53のそれぞれが包む部分を、油中水滴52として検出する。そして、制御部31は、撮影画像において検出した脂質膜56のそれぞれが包む部分を、油中水滴55として検出する。また、制御部31は、撮影画像において検出した油中水滴52のそれぞれについて、位置情報を算出し、例えば、検出した油中水滴52のそれぞれについて、上流端及び下流端のそれぞれの位置を算出する。また、撮影部27による撮影は、所定の時間間隔で定期的に行われる。このため、制御部31は、定期的に撮影された撮影画像のそれぞれについて、その撮影画像において検出した油中水滴52のそれぞれの位置情報を算出することにより、油中水滴52のそれぞれについての位置情報の時間変化を算出する。
【0046】
制御部31は、油中水滴52のそれぞれについての位置情報及び位置情報の時間変化に基づいて、電場発生部45のそれぞれの作動を制御する。ここで、流路3を流れる油中水滴52のある1つの油中水滴52Aとする。油中水滴52Aを培養部2のそれぞれの油中水滴55と融合する場合、制御部31は、油中水滴52Aの位置情報及び位置情報の時間変化に基づいて、油中水滴52Aが培養部2のそれぞれの油中水滴55に対して融合可能な位置に位置するか否かを、判定する。そして、制御部31は、油中水滴52Aが培養部2のそれぞれの油中水滴55に対して融合可能な位置に位置するタイミングにおいて、電場発生部45の対応する1つをオン状態にする。
【0047】
また、複数の培養部2において、ある1つを培養部2Aとし、培養部2Aに対して流路3の下流側に隣り合って位置する1つを培養部2Bとする。制御部31は、定期的に撮影された撮影画像を含む画像データを画像処理することにより、培養部2Aの油中水滴55に融合可能な位置を油中水滴52Aが通過した後において、流路3を下流側へ流れる油中水滴52Aをトラッキングする。油中水滴52Aをトラッキングすることにより、制御部31は、培養部2Aの油中水滴55に融合可能な位置を油中水滴52Aが通過した後において、培養部2Bの油中水滴55に融合可能な位置に油中水滴52Aが到達したか否かを、判定する。
【0048】
図4は、本実施形態の制御部31によって行われる、定期的に撮影された撮影画像を含む画像データの画像処理の一例を説明する概略図である。ここで、時間tを変数として規定すると、図4の一例では、時間t1の時点、及び、時間t1より後の時間t2の時点を含む複数の時点のそれぞれにおいて、撮影範囲Tが撮影部27によって撮影される。また、制御部31は、複数の培養部2のそれぞれについて、流路3を流れる油中水滴52に対する油中水滴55の融合領域Eを設定する。例えば、培養部2Aについては、融合領域Eaが設定され、培養部2Bについては、融合領域Ebが設定される。
【0049】
制御部31は、撮影部27による撮影画像を二値化処理した前述の二値化画像のそれぞれについて、構成する画素のそれぞれの画素値を取得する。二値化画像のそれぞれでは、閾値より明るい画素については画素値が0となり、閾値より暗い画素については画素値が1となる。また、油中水滴52Aに対して1つだけ上流側の油中水滴52を、油中水滴52Bとする。
【0050】
制御部31は、定期的に取得される二値化画像のそれぞれにおいて、融合領域Ea,EBのそれぞれでの画素値の総和が基準値以上であるか否かを判定する。そして、培養部2Aについての融合領域Eaを油中水滴52Bが通過すると、制御部31は、二値化画像における融合領域Eaでの画素値の総和が基準値より小さい状態から基準値以上に切替わるタイミングを、検出する。そして、制御部31は、融合領域Eaでの画素値の総和が基準値以上に切替わったことに基づいて、油中水滴52Aの上流端Uaが、培養部2Aについての融合領域Eaに到達したと判定する。
【0051】
そして、制御部31は、油中水滴52Aの上流端Uaが融合領域Eaに到達したタイミング又はその直後において、電場発生部45の中の培養部2Aに対応する1つをオン状態にする。これにより、培養部2Aの油中水滴55に油中水滴52Aが適切に融合する。図4の一例では、時間t1における二値化画像I1において、融合領域Eaでの画素値の総和が基準値以上に切替わったと判定される。そして、二値化画像I1に基づいて、油中水滴52Aの上流端Uaが、培養部2Aについての融合領域Eaに到達したと、判定される。なお、図4の二値化画像I1,I2のそれぞれでは、閾値より明るい部分は白色で、閾値より暗い部分は黒色で示される。
【0052】
油中水滴52Aの上流端Uaが融合領域Eaに到達した後における油中水滴52Aのトラッキングでは、制御部31は、時間t1における二値化画像I1と時間t2における二値化画像I2との間での画素値の差分値を、画素のそれぞれについて算出する。この際、画素値の差分値は、絶対値で算出される。そして、制御部31は、二値化画像I1,I2の間での画素値の差分値が画素ごとに示される差分値画像I3を、生成する。図4の差分値画像I3では、画素値の差分値が基準値より小さい部分は白色で、画素値の差分値が基準値以上の部分は黒色で示される。
【0053】
制御部31は、時間t1(二値化画像I1)における油中水滴52Aの上流端Uaの位置Ua(t=t1)、及び、差分値画像I3に基づいて、時間t2における油中水滴52Aの上流端Uaの位置Ua(t=t2)を算出する。この際、制御部31は、位置Ua(t=t1)に対して流路3の下流側において、差分値画像I3での差分値が基準値以上となる部分を検出する。そして、制御部31は、位置Ua(t=t1)に対して下流側で差分値が基準値以上となる部分の中から、位置Ua(t=t1)に最も近い部分を、時間t2における油中水滴52Aの上流端Uaの位置Ua(t=t2)として特定する。
【0054】
図4の一例では、制御部31は、流路3に沿う仮想線Cを設定する。そして、制御部31は、融合領域Eのそれぞれと同一の面積を囲む枠を、差分値画像I3において、時間t1での上流端Uaの位置Ua(t=t1)から、仮想線Cに沿って下流側へ徐々に移動させる。この際、制御部31は、枠を移動させるたびに、枠で囲まれた範囲の差分値の総和が基準値以上であるか否かを判定する。このような判定を行うことにより、制御部31は、位置Ua(t=t1)に対して流路3の下流側において、差分値が基準値以上となる部分を検出可能となり、時間t2における油中水滴52Aの上流端Uaの位置Ua(t=t2)を特定可能となる。
【0055】
時間t2より後においても、時間t2における油中水滴52Aの上流端Uaの位置Ua(t=t2)の特定と同様にして、制御部31は、油中水滴52Aの上流端Uaの位置を特定する。したがって、油中水滴52Aの上流端Uaが融合領域Eaに到達した後において、油中水滴52Aの上流端Uaが適切にトラッキングされ、油中水滴52Aが適切にトラッキングされる。
【0056】
制御部31は、油中水滴52Aの上流端Uaが融合領域Eaに到達した後において、前述のように油中水滴52Aをトラッキングすることにより、油中水滴52Aの上流端Uaが、培養部2Bについての融合領域Ebに到達したか否かを判定する。そして、制御部31は、油中水滴52Aの上流端Uaが融合領域Ebに到達したタイミング又はその直後において、電場発生部45の中の培養部2Bに対応する1つをオン状態にする。これにより、培養部2Aの油中水滴55と融合した油中水滴52Aが、培養部2Bの油中水滴55と適切に融合する。また、油中水滴52A以外の油中水滴52についても、前述した制御と同様の制御が制御部31によって行われることにより、培養部2Aの油中水滴55と融合した後において、培養部2Bの油中水滴55と融合させることが可能である。
【0057】
前述のように、本実施形態では、制御部31によって、複数の電場発生部45のそれぞれの作動を制御することにより、複数の培養部2のそれぞれの油中水滴55に対する流路3を流れる油中水滴52の融合状態が、制御される。これにより、複数の培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態を経時的に変化させることが、可能となる。したがって、本実施形態でも、複数の培養部2の間での土壌微生物6同士の相互作用の度合いを経時的に変化させることが可能になり、1つの観察デバイス1において、土壌微生物6同士の相互作用の時間変化を模擬可能となる。したがって、本実施形態でも、土壌の状態の経時的な変化に対応した土壌微生物6同士の相互作用の時間変化を、観察デバイス1を用いて観察可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、電場発生部45のそれぞれの作動状態を変化させることにより、培養部2のそれぞれからの流路3を通しての物質の拡散状態を変化させる。このため、土壌微生物6同士の相互作用の時間変化の観察において、複数の培養部2の間を接続する流路3を交換する必要はなく、培養部2の間の流路3を通しての離間距離が互いに対して異なる複数の観察デバイスを用いる必要もない。したがって、本実施形態でも、土壌微生物6同士の相互作用の時間変化の観察において、手間等が低減される。
【0059】
(変形例)
なお、ある変形例では、複数のフィルタ部23のいずれか1つ以上が、以下のように形成される。図5は、ある変形例の観察デバイス1において、複数の培養部2のある1つ及びその近傍を、流路3に前述の溶液が流れている状態で、概略的に示す断面図である。図5に示すように、本変形例では、フィルタ部23の少なくとも1つは、複数層構造(複数段構造)に形成される。複数層構造のフィルタ部23は、第1のフィルタ層61及び第2のフィルタ層62を備える。第2のフィルタ層62は、第1のフィルタ層61に対して、流路3が位置する側とは反対側に積層される。
【0060】
本変形例では、複数層構造のフィルタ部23において、第1のフィルタ層61及び第2のフィルタ層62のそれぞれに、透過部分となる隙間25が多数形成される。第2のフィルタ層62の隙間25は、第1のフィルタ層61の隙間25に対して、ずれて形成される。ただし、第2のフィルタ層62の隙間25のそれぞれは、第1のフィルタ層61の隙間25のいずれか1つ以上と連通する。このため、流路3から複数層構造のフィルタ部23を通して対応する培養部2に流体が流入可能であり、対応する培養部2から複数層構造のフィルタ部23を通して流体を流路へ流出可能である。対応する培養部2と流路3との間で複数層構造のフィルタ部23を通して流体が流れる際には、第1のフィルタ層61及び第2のフィルタ層62のそれぞれにおいて、透過部分となる隙間25を流体が通過する。
【0061】
本変形例では、複数層構造のフィルタ部23の第1のフィルタ層61及び第2のフィルタ層62のそれぞれにおいて、透過部分となる隙間25のそれぞれの幅(直径)をある程度大きくしても、流路3から対応する流路3へ流体が過度に流入すること等が、適切に抑制される。第1のフィルタ層61及び第2のフィルタ層62のそれぞれにおいて、隙間25のそれぞれの幅をある程度大きくすることにより、複数層構造のフィルタ部23の製造における手間及びコスト等を削減可能となる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…観察デバイス
2(2A,2B)…培養部
3…流路
5…培養プレート
6…土壌微生物
11…溶液流入口
12…空気流入口
13…排出口
15…メイン流路部
16,17…供給流路部
18…合流部
21…溶液供給部
22…空気供給部
23…フィルタ部
25…隙間
27…撮影部
31…制御部
32…ユーザインタフェース
41…流入口
42…排出口
43…供給部
45…電場発生部
46,47…電極
48…電源部
51,54…油
52(52A,52B),55…油中水滴
53,56…脂質膜
図1
図2
図3
図4
図5