(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176498
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】故障検知装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G08G1/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088807
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三橋 唯澄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 凌竹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 若
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】通路上に設置された多数の監視装置に対して作業者が直接出向くことなく、それぞれの監視装置の故障の有無を検知することのできる故障検知装置を提供する。
【解決手段】自らの位置情報を取得可能な故障判定用移動体200から当該位置情報を取得する通信部120と、監視装置10のレーダ20によって検出された故障判定用移動体200の位置情報、および、故障判定用移動体200が取得した故障判定用移動体200の位置情報に基づいてレーダ20を含めた監視装置10全体の故障の可能性の有無を判定する故障判定部113と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する通路における、前記通路上の一の前記移動体から視認が困難となる箇所に位置する他の前記移動体の有無の確認に用いる反射鏡の近傍に配置され、送信波を送信するとともに前記移動体からの反射波を受信することによって、前記通路における所定範囲を移動する前記移動体に関する情報を検出可能なレーダを備え、前記レーダによって検出した複数の前記移動体に関する情報に基づいて、所定の報知を行う監視装置の故障を検知する故障検知装置であって、
自らの位置情報を取得可能な故障判定用移動体から当該位置情報を取得する取得部と、
前記監視装置の前記レーダによって検出された前記故障判定用移動体の位置情報、および、前記取得部が取得した前記故障判定用移動体の位置情報に基づいて前記レーダを含めた前記監視装置全体の故障の可能性の有無を判定する故障判定部と、を備えた
故障検知装置。
【請求項2】
前記監視装置との間で信号の送受信を行う通信部を備え、
前記故障判定部は、前記監視装置との間で信号の送受信が不能な場合に、前記通信部の故障と判定する
請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記レーダから送信される送信波が遮蔽物によって遮られているか否かを判定する遮蔽判定部を有する前記監視装置から、前記レーダから送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定に関する信号を取得する
請求項1または2に記載の故障検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動体が異なる方向から交差する箇所や見通しの悪い箇所などに設置される監視装置の故障検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両や人等の移動体が移動する通路における見通しの悪い交差点等、通路上の移動体から直接的に視認が困難となり、複数の移動体同士が衝突する危険のある個所には、反射鏡を設置することによって、視認が困難となる箇所に位置する移動体の存在の有無を確認可能とし、複数の移動体同士の衝突の防止を図っている。
【0003】
また、通路上における直接的な視認が困難となる箇所に位置する移動体をより正確に認識して複数の移動体同士の衝突を防止するために、従来設置されていた反射鏡の代わりとして、直接的に視認が困難となる箇所を撮像するカメラと、移動体との距離情報を取得する測距部と、カメラによって撮像された画像および測距部によって取得された距離情報を表示する表示部と、を備える交通情報通知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交通情報通知装置は、通路上の見通しの悪い交差点や曲がり角等、通路上の多数の箇所に設置されることになる。このため、交通情報通知装置の故障の有無の点検等のメンテナンス作業は、メンテナンス作業を行う作業者が、多数の交通情報通知装置に対して一台ずつ対応することになり、メンテナンスに必要な時間およびコストが増大するおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、通路上に設置された多数の監視装置に対して作業者が直接出向くことなく、それぞれの監視装置の故障の有無を検知することのできる故障検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る故障検知装置は、移動体が移動する通路における、前記通路上の一の前記移動体から視認が困難となる箇所に位置する他の前記移動体の有無の確認に用いる反射鏡の近傍に配置され、送信波を送信するとともに前記移動体からの反射波を受信することによって、前記通路における所定範囲を移動する前記移動体に関する情報を検出可能なレーダを備え、前記レーダによって検出した複数の前記移動体に関する情報に基づいて、所定の報知を行う監視装置の故障を検知する故障検知装置であって、自らの位置情報を取得可能な故障判定用移動体から当該位置情報を取得する取得部と、前記監視装置の前記レーダによって検出された前記故障判定用移動体の位置情報、および、前記取得部が取得した前記故障判定用移動体の位置情報に基づいて前記レーダを含めた前記監視装置全体の故障の可能性の有無を判定する故障判定部と、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る故障検知装置は、前記監視装置との間で信号の送受信を行う通信部を備え、前記故障判定部が、前記監視装置との間で信号の送受信が不能な場合に、前記通信部の故障と判定する。
【0009】
また、本発明に係る故障検知装置は、前記取得部が、前記レーダから送信される送信波が遮蔽物によって遮られているか否かを判定する遮蔽判定部を有する前記監視装置から、前記レーダから送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定に関する信号を取得する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通路上に設置された多数の監視装置に対して作業者が直接出向くことなく、それぞれの監視装置の故障の有無を検知することが可能となるので、監視装置のメンテナンスに必要な時間およびコストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る監視装置の故障検知システムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る反射鏡に対する監視装置の設置状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る監視装置の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る監視装置の故障検知システムの制御系を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る管理装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
図1は本発明の故障検知システムの概略図であり、
図2は反射鏡に対する監視装置の設置状態を示す斜視図であり、
図3は監視装置の斜視図であり、
図4は故障検知システムの制御系を示すブロック図であり、
図5は管理装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【0013】
本実施形態の故障検知システム1は、見通しの悪い通路としての道路Rを移動する、例えば、車両M1と歩行者M2との衝突等、複数の移動体M同士の衝突の危険を監視する監視装置10の故障の有無を検出するためのものである。
【0014】
故障検知システム1は、監視装置10と、監視装置10の故障の有無の判定を行うための故障検知装置(以下、管理装置と称する)100と、故障判定用移動体200とを備える。故障判定用移動体200とは、監視装置10の故障の有無の判定を行う基準となる自らの位置情報を管理装置100に送信する機能を有する車両である。
【0015】
監視装置10は、例えば、
図1に示すように、第1道路R1に対して第2道路R2が接続される道路Rの交差点Jの近傍に設置される。監視装置10は、道路Rにおける第1道路R1および第2道路R2の一方の道路から他方の道路の直接的に視認が困難となる箇所に位置する移動体Mの存在の有無の確認を行うための反射鏡2と共に用いられる。
【0016】
反射鏡2は、道路反射鏡やカーブミラーなどと称され、
図1および
図2に示すように、例えば、円形状に形成された凸面鏡であり、交差点Jの近傍の第1道路R1の脇の地面から上方に延びる支柱3の上端側に取り付けられる。支柱3は、下端側がコンクリート製の基礎4に支持され、基礎4を地中に埋設することにより、地面から上方に延在する姿勢が保持される。
【0017】
監視装置10は、
図3に示すように、筐体11と、移動体Mに関する情報を検出するためのレーダ20と、交差点Jの周囲の移動体Mに対して衝突の危険を報知するための危険報知部30と、レーダ20から入力された信号に基づいて危険報知部30の動作を制御するための制御部40と、レーダ20、危険報知部30および制御部40に対して電力を供給するためのバッテリ50と、バッテリ50を太陽光によって充電するための太陽電池モジュール60と、を備えている。
【0018】
筐体11は、
図3に示すように、直方体形状の箱体であり、レーダ20から送信される電磁波からなる送信波および移動体Mからの反射波を透過可能な樹脂製の部材からなる。筐体11の内部には、レーダ20、危険報知部30、制御部40およびバッテリ50が収容される。筐体11は、支柱3における反射鏡2の下方に位置する部分に取り付けられている。
【0019】
レーダ20は、例えばミリ波等の電磁波の送受信を行う送受信アンテナを有し、送受信アンテナが、送信波を送信するとともに、送信波が物標によって反射された反射波を受信する。レーダ20は、反射波に基づいて、物標の速度、距離、角度を算出し、所定の検出範囲における物標の位置を検出する。レーダ20は、検出した物標に基づいて、移動体(点群)を特定し、この点群について、クラスタリング処理およびトラッキング処理を行い、移動体Mの移動方向などを算出する。
【0020】
本実施形態において、レーダ20が二次元レーダの場合には、移動体Mの速度、レーダ20から移動体Mまでの距離および移動体Mの水平方位を、移動体Mに関する情報として検出する。
【0021】
また、本実施形態において、レーダ20が三次元レーダの場合には、移動体Mの速度、レーダ20から移動体Mまでの距離、移動体Mの水平方位および移動体Mの垂直方位を、移動体Mに関する情報として検出する。
【0022】
レーダ20は、例えば、第1道路R1における交差点Jから一方側および他方側にそれぞれ50メートルの範囲内、および、第2道路R2における交差点Jから50メートルの範囲内に位置する移動体Mを検出する。
【0023】
ここで、レーダ20は、例えば、水平方向に120度の範囲内の移動体Mを検出可能であり、必要な水平方向の検出範囲が120度以上の場合には、複数のレーダを組み合わせて使用する。
【0024】
危険報知部30は、
図3に示すように、第1道路R1および第2道路R2上の移動体Mに対して、視覚的に衝突の危険を報知する発光部31と、聴覚的に衝突の危険を報知するスピーカ32と、を有している。
【0025】
発光部31は、赤色の発光と青色の発光が切り替え可能なLED等の発光体からなる。発光部31は、筐体11の第1道路R1を臨む面における左側、右側および下側のそれぞれ縁部分に沿って延びる第1発光部31a、第2発光部31bおよび第3発光部31cを有している。発光部31は、制御部40からの指示により次のように発光する。第1発光部31aは、
図1において、第1道路R1を左から右に向かって移動する移動体Mが交差点Jに近づく場合に赤色に発光し、それ以外の場合に青色に発光する。第2発光部31bは、
図1において、第1道路R1を右から左側に向かって移動する移動体Mが交差点Jに近づく場合に赤色に発光し、それ以外の場合に青色に発光する。第3発光部31cは、
図1において、第2道路R2から第1道路R1に合流する方向に移動する移動体Mが交差点Jに近づく場合に赤色に発光し、それ以外の場合に青色に発光する。
【0026】
スピーカ32は、音声または警報音を出力するものであり、交差点Jにおいて衝突の危険のある移動体Mに対して音によって報知する。
【0027】
危険報知部30は、発光部31およびスピーカ32に限られるものではなく、例えば、液晶パネルや有機ELパネル等、衝突の危険を表示するための表示部を筐体11の表面に取り付けてもよいし、反射鏡2の支柱3に直接的に取り付けてもよい。
【0028】
また、危険報知部30は、発光部31およびスピーカ32を同時に設ける必要はなく、発光部31、スピーカ32および衝突の危険を表示する表示部の少なくとも1つから構成されていればよい。
【0029】
制御部40は、CPU、ROM、RAM等を有する。制御部40は、入力側に接続された装置から入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。制御部40は、
図4に示すように、入力側にレーダ20が接続され、出力側に危険報知部30を構成する発光部31およびスピーカ32が接続されている。また、制御部40には、管理装置100との間で信号の送受信を行うための通信部70が接続されている。
【0030】
また、制御部40は、レーダ20によって検出した移動体Mに関する情報に基づいて移動体Mの移動状態を取得するための移動状態取得部41と、レーダ20によって複数の移動体Mに関する状態が同時に検出され、移動状態取得部41によって取得した複数の移動体Mのそれぞれの移動状態に基づいて、複数の移動体M同士の衝突の危険の有無を判定するための危険判定部42と、レーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているか否かを判定する遮蔽判定部43と、を有している。
【0031】
移動状態取得部41は、レーダ20によって検出された移動体Mに関する情報に基づいて、移動体Mの少なくとも位置、移動方向および移動速度を取得する。
【0032】
移動状態取得部41は、レーダ20が二次元レーダの場合に、レーダ20によって検出された移動体Mに関する情報に基づいて、検出した移動体Mの位置、移動方向、移動速度および水平方向の大きさを取得する。
【0033】
また、移動状態取得部41は、レーダ20が三次元レーダの場合に、レーダ20によって検出された移動体Mに関する情報に基づいて、検出した移動体Mの位置、移動方向、移動速度、水平方向の大きさおよび上下方向の大きさを取得する。
【0034】
危険判定部42は、移動状態取得部41によって取得した複数の移動体Mのそれぞれの移動状態に基づいて、複数の移動体M同士の衝突の危険の有無を判定する。例えば、危険判定部42は、所定位置(監視装置10の設置場所)までの複数の移動体Mそれぞれの到達予想時刻を算出し、この算出結果から所定の時間内に複数の移動体Mが所定位置に到達すると判定した場合に、複数の移動体M同士の衝突の危険が有ると判定してもよい。
【0035】
遮蔽判定部43は、レーダ20が受信する反射波、または、レーダ20から送信される送信波が遮蔽された状態を検出する専用のソナーが受信する反射波に基づいて、レーダ20から送信される送信波が、例えば、道路Rの脇に停止した車両や木の枝葉等の遮蔽物によって遮られていると判定する。遮蔽判定部43は、例えば、レーダ20または専用のソナーが、例えば、5m以下の範囲内の反射波のみを受信する場合に、レーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られていると判定する。
【0036】
バッテリ50は、例えば、リチウムイオン電池からなり、繰り返しの充電および放電が可能である。
【0037】
太陽電池モジュール60は、例えば、単結晶シリコンからなる矩形状に形成された複数のセルを直列接続して一体に構成したものであり、
図1および
図2に示すように、反射鏡2の支柱3の上端部に取り付けられている。太陽電池モジュール60は、ケーブルを介してバッテリ50に接続されている。
【0038】
上記の構成を有する監視装置10は、交差点Jを含む第1道路R1および第2道路R2の所定範囲内を移動する移動体Mをレーダ20によって検出し、移動状態取得部41によって複数の移動体Mの移動状態を取得した場合に、危険判定部42によって複数の移動体M同士の衝突の危険の有無を判定し、衝突の危険が有る場合に危険報知部30によって移動体Mに対して衝突の危険を報知する。
【0039】
管理装置100は、道路Rの脇等に設置され、例えば、半径1kmの管理範囲内を移動する移動体Mとしての車両M1の車載器または歩行者M2の所持する携帯端末との間で無線通信が可能であり、さらに、管理範囲内に位置する監視装置10との間で無線通信が可能な路側機である。
【0040】
管理装置100は、監視装置10の故障判定に関する動作を制御するための制御部110と、監視装置10および故障判定用移動体200のそれぞれとの間で信号の送受信を行うための取得部としての通信部120と、を有している。
【0041】
制御部110は、監視装置10から取得した故障判定用移動体200の位置情報を記憶するレーダ検出情報記憶部111と、故障判定用移動体200から取得した故障判定用移動体200の位置情報を記憶する測位情報記憶部112と、監視装置10が故障しているか否かを判定する故障判定部113と、を有している。
【0042】
レーダ検出情報記憶部111は、レーダ20によって検出された移動体M(故障判定用移動体200)の位置情報を記憶する。レーダ検出情報記憶部111は、移動体Mの位置情報を、レーダ20によって検出される交差点Jの所定の点を基準とする座標系から、緯度、経度および高さで表される、例えばITRF系(国際地球基準座標系)に変換して記憶する。レーダ検出情報記憶部111には、移動体M(故障判定用移動体200)の位置情報とともに、レーダ20によって移動体M(故障判定用移動体200)を検出した日時に関する情報が記憶されている。
【0043】
測位情報記憶部112は、故障判定用移動体200が有する後述する測位装置によって測定された故障判定用移動体200の緯度、経度および高さで表される、例えばITRF系の位置情報を記憶する。測位情報記憶部112は、故障判定用移動体200の位置情報とともに、故障判定用移動体200の固有の識別番号および故障判定用移動体200の走行している位置を測定した日時に関する情報が記憶されている。
【0044】
故障判定部113は、レーダ検出情報記憶部111に記憶された故障判定用移動体200を含む移動体Mの位置情報と、測位情報記憶部112に記憶された故障判定用移動体200の位置情報と、に基づいて、レーダ20の故障の有無を判定する。
【0045】
故障判定用移動体200は、管理装置100と通信するための通信部210と、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の機能を用いて自車の位置を測定する測位装置220と、を有している。測位装置220は、10cm未満の誤差の精度で故障判定用移動体200の位置を測定可能である。
【0046】
以上のように構成された故障検知システム1において、管理装置100の制御部110は、管理範囲内に位置する監視装置10のレーダ20によって検出された移動体M(故障判定用移動体200)の位置情報を取得し、レーダ検出情報記憶部111に記憶する。また、制御部110は、管理範囲内を走行する故障判定用移動体200の測位装置220において測定した故障判定用移動体200自体の位置情報を取得し、測位情報記憶部112に記憶する。故障判定部113は、レーダ検出情報記憶部111に記憶された情報と、測位情報記憶部112に記憶された情報と、に基づいて、レーダ20の故障の有無を判定する。
【0047】
詳細に説明すると、まず、故障判定部113は、測位情報記憶部112に記憶された故障判定用移動体200の位置情報、および、位置情報と共に記憶された故障判定用移動体200を検出した日時に基づいて、レーダ検出情報記憶部111に記憶された移動体Mの位置情報から故障判定用移動体200を特定する。次に、故障判定部113は、測位情報記憶部112に記憶された故障判定用移動体200の位置情報と、故障判定用移動体200として特定された移動体Mの位置情報と、を比較し、レーダ20の故障の有無を判定する。ここで、故障判定用移動体200として複数の移動体Mの位置情報がレーダ検出情報記憶部111に記憶されている場合には、レーダ20によって故障判定用移動体200と共に他の移動体Mが検出されていることになる。このため、故障判定用移動体200として複数の移動体Mの位置情報がレーダ検出情報記憶部111に記憶されている場合には、再度、故障判定用移動体200を走行させ、レーダ検出情報記憶部111に故障判定用移動体200の位置情報を記憶させ、測位情報記憶部112に故障判定用移動体200の位置情報を記憶させる。
【0048】
レーダ20の故障の有無の判定は、測位情報記憶部112に記憶された故障判定用移動体200の位置情報と、故障判定用移動体200として特定された移動体Mの位置情報と、の間に、所定以上の差異(例えば、50cm以上)を有する場合にレーダ20の故障と判定する。
【0049】
それぞれの位置情報に差異がある場合とは、レーダ20自体が故障している場合の他、例えば、レーダ20が収容されている筐体11が支柱3に対して取付状態が変化したり、筐体11が取り付けられている支柱3が曲がったりすることにより、レーダ20の送信波の照射方向が変化する場合が考えられる。
【0050】
管理装置100の制御部110は、監視装置10のレーダ20および通信部70のそれぞれの故障を検知する故障検知処理を行う。このときの制御部110の動作を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
(ステップS1)
ステップS1において制御部110は、監視装置10と通信が可能であるか否かを判定し、監視装置10と通信が可能であると判定した場合にはステップS2に処理を移し、監視装置10と通信が可能であると判定しなかった場合にはステップS7に処理を移す。
【0052】
ここで、監視装置10と通信が可能であると判定しなかった場合とは、管理装置100が、監視装置10において検出された移動体Mの位置情報を所定時間以上取得できない場合などが考えられる。また、監視装置10と通信が可能であると判定しなかった場合とは、移動状態取得部41により移動体Mについての情報の取得はできているが、通信部70,120の故障により、監視装置10から所定時間以上、情報の受信ができない場合なども考えられる。
【0053】
(ステップS2)
ステップS1において監視装置10と通信が可能であると判定した場合、または、ステップS5において所定時間が経過したと判定した場合に、ステップS2において制御部110は、監視装置10のレーダ20によって検出された移動体M(故障判定用移動体200)の位置情報を取得してITRF系に変換した位置情報をレーダ検出情報記憶部111に記憶するとともに、故障判定用移動体200の測位装置220によって測定された故障判定用移動体200の位置情報を測位情報記憶部112に記憶し、ステップS3に処理を移す。
【0054】
(ステップS3)
ステップS3において制御部110は、レーダ検出情報記憶部111に記憶された故障判定用移動体200の位置情報と、測位情報記憶部112に記憶された故障判定用移動体200の位置情報と、を比較し、それぞれの位置情報に所定以上の差異を有するか否かを判定し、それぞれの位置情報に所定以上の差異を有すると判定した場合にはステップS4に処理を移し、それぞれの位置情報に所定以上の差異を有すると判定しなかった場合には故障検知処理を終了する。
【0055】
(ステップS4)
ステップS3においてそれぞれの位置情報に所定以上の差異を有すると判定した場合に、ステップS4において制御部110は、監視装置10の遮蔽判定部43においてレーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られている判定がなされているか否かの判定結果に関する信号を監視装置10から受信し、レーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定結果を受信した場合にはステップS5に処理を移し、レーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定結果を受信しなかった場合にはステップS6に処理を移す。
【0056】
(ステップS5)
ステップS4においてレーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定結果を受信した場合に、ステップS5において制御部110は、所定時間(例えば、10分)が経過したか否かを判定し、所定時間が経過したと判定した場合にステップS2に処理を移し、所定時間が経過したと判定しなかった場合にステップS5を繰り返す。
【0057】
(ステップS6)
ステップS4においてレーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定結果を受信しなかった場合に、ステップS6において制御部110は、レーダ20の故障に関する信号を、管理装置100を使用する使用者に報知する表示部等の報知手段に発信して故障検知処理を終了する。
【0058】
(ステップS7)
ステップS1において監視装置10と通信が可能であると判定しなかった場合に、ステップS8において制御部110は、通信部70,120の故障に関する信号を、管理装置100を使用する使用者に報知する表示部等の報知手段に発信して故障検知処理を終了する。
【0059】
このように、本実施形態の故障検知装置によれば、移動体Mが移動する道路Rにおける、道路R上の一の移動体Mから視認が困難となる箇所に位置する他の移動体Mの有無に用いる反射鏡2の近傍に配置され、送信波を送信するとともに移動体Mからの反射波を受信することによって、道路Rにおける所定範囲を移動する移動体Mに関する情報を検出可能なレーダ20を備え、レーダ20によって検出した複数の移動体Mに関する情報に基づいて、所定の報知を行う監視装置10の故障を検知する故障検知装置100であって、自らの位置情報を取得可能な故障判定用移動体200から当該位置情報を取得する通信部120と、監視装置10のレーダ20によって検出された故障判定用移動体200の位置情報、および、故障判定用移動体200が取得した故障判定用移動体200の位置情報に基づいてレーダ20を含めた監視装置10全体の故障の可能性の有無を判定する故障判定部113と、を備えている。
【0060】
これにより、道路R上に設置された多数の監視装置10に対して作業者が直接出向くことなく、それぞれの監視装置10の故障の有無を検知することが可能となるので、監視装置10のメンテナンスに必要な時間およびコストの低減を図ることが可能となる。
【0061】
また、監視装置10との間で信号の送受信を行う通信部120を備え、故障判定部113は、監視装置10との間で信号の送受信が不能な場合に、通信部120の故障と判定する、ことが好ましい。
【0062】
これにより、通信部120の故障の有無を検知することが可能となるので、通信部120の故障に対して修理等の対応を迅速に行うことが可能となる。
【0063】
また、通信部120は、レーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているか否かを判定する遮蔽判定部43を有する監視装置10から、レーダ20から送信される送信波が遮蔽物によって遮られているとの判定に関する信号を取得する、ことが好ましい。
【0064】
これにより、レーダ20から送信される送信波が、一時的に停止している車両によって遮られている場合に、所定時間経過後に再度、監視装置10のレーダ20によって検出した故障判定用移動体200の位置情報、および、故障判定用移動体200が取得した故障判定用移動体200の位置情報を取得することによって、レーダ20の故障の有無を検知することが可能となるので、修理のために作業者が監視装置10に直接的に出向く頻度を低減することが可能となる。
【0065】
尚、前記実施形態では、監視装置10として、道路Rにおける移動体M同士の衝突の危険を報知するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。本発明の監視装置は、例えば、反射鏡が設置されている工場等の施設内における車両同士または車両と歩行者との衝突の危険を監視するために適用することも可能である。
【0066】
また、前記実施形態では、監視装置10を、反射鏡2が設置される支柱3に取り付けるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。監視装置10は、レーダ20が、反射鏡2を中心とする例えば2mの範囲等、反射鏡2の近傍に配置されていればよく、専用の支柱に取り付けてもよいし、その他の構造物に取り付けてもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、故障判定用移動体として測位装置220を有する故障判定用移動体200を示したが、これに限られるものではなく、位置情報を取得する機能を有する携帯端末を所持している歩行者を、故障判定用移動体としてもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、自らの位置情報を高い精度で取得することが可能な専用の故障判定用移動体200の位置情報を基準として、レーダ20の故障の有無を判定するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。道路を移動する全ての移動体が、自らの位置情報を高い精度で取得可能であれば、専用の故障判定用移動体を用いることなく、いずれかの移動体の位置情報を利用して、レーダの故障の有無を判定することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 故障検知システム
2 反射鏡
10 監視装置
20 レーダ
43 遮蔽判定部
70 通信部
100 管理装置
113 故障判定部
200 故障判定用移動体
220 測位装置
J 交差点
M 移動体
R 道路