(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176508
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H01L21/52 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088828
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】板垣 圭
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047BA34
5F047BA52
5F047BB19
(57)【要約】
【課題】導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層を硬化する際に発生する不具合を抑制することが可能な半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体装置の製造方法が開示される。当該半導体装置の製造方法は、支持部材80と、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層Daと、半導体チップWaとをこの順に備える積層体100を2段階以上の多段階で加熱し、接着剤層Dcの反応率が70~80%である第1の硬化体110を得る第1の硬化工程と、第1の硬化体110をさらに加熱し、接着剤層Dccの反応率が80%を超える第2の硬化体120を得る第2の硬化工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層と、半導体チップとをこの順に備える積層体を2段階以上の多段階で加熱し、前記接着剤層の反応率が70~80%である第1の硬化体を得る第1の硬化工程と、
前記第1の硬化体をさらに加熱し、前記接着剤層の反応率が80%を超える第2の硬化体を得る第2の硬化工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の硬化工程が、前記積層体を100~160℃の範囲にて2段階以上の多段階で加熱する工程である、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の硬化工程が、前記積層体を100℃以上140℃未満の範囲にて加熱する段階及び140℃以上160℃未満の範囲にて加熱する段階の2段階を含む多段階で加熱する工程である、
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法としては、例えば、半導体チップを接着剤層でリードフレーム等の支持部材に固定するダイボンディング工程と、接着剤層を加熱して硬化させる第1の硬化工程と、半導体チップと支持部材とをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続するワイヤーボンディング工程と、半導体チップを封止樹脂で覆いながら封止樹脂とともに接着剤層を加熱して接着剤層をさらに硬化させる第2の硬化工程とを備える方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、電力の制御等を行うパワー半導体装置と称されるデバイスが普及している。パワー半導体装置は供給される電流に起因して熱が発生し易く、優れた放熱性が求められる。特許文献2には、接着剤層として使用することが可能な、導電性粒子を含むフィルム状接着剤及びフィルム状接着剤付きダイシングテープ(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-053190号公報
【特許文献2】特開2016-103524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らの検討によると、半導体装置の製造方法において、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層を用いると、接着剤層を硬化する際に、接着剤層内にクラックが発生する、接着剤層内で導電性粒子と樹脂成分との分離が発生する、支持部材と接着剤層と半導体チップとを備える積層体において、支持部材及び半導体チップに反りが発生する等の不具合が発生する場合があることが見出された。
【0006】
そこで、本開示は、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層を硬化する際に発生する不具合を抑制することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ダイボンディング工程後の第1の硬化工程において、接着剤層を2段階以上の多段階で加熱すること、第1の硬化体の接着剤層の反応率が所定の範囲にあること、及びワイヤーボンディング工程後の第2の硬化工程において、第2の硬化体の接着剤層の反応率が所定の範囲にあることによって、接着剤層を硬化する際に発生する不具合が抑制されることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【0008】
本開示の一側面は、半導体装置の製造方法に関する。当該半導体装置の製造方法は、支持部材と、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層と、半導体チップとをこの順に備える積層体を2段階以上の多段階で加熱し、接着剤層の反応率が70~80%である第1の硬化体を得る第1の硬化工程と、第1の硬化体をさらに加熱し、接着剤層の反応率が80%を超える第2の硬化体を得る第2の硬化工程とを備える。
【0009】
第1の硬化工程は、積層体を100~160℃の範囲にて2段階以上の多段階で加熱する工程であってよく、積層体を100℃以上140℃未満の範囲にて加熱する段階及び140以上160℃未満の範囲にて加熱する段階を含む多段階で加熱する工程であってよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層を硬化する際に発生する不具合を抑制することが可能な半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図であり、
図1(a)、(b)、及び(c)は、半導体装置の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、積層体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図であり、
図2(a)及び(b)は、積層体の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、積層体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図であり、
図3(a)、(b)、及び(c)は、積層体の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0013】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0016】
本明細書中、以下で例示する材料は、特に断らない限り、条件に該当する範囲で、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
[半導体装置の製造方法]
図1は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。半導体装置の製造方法は、支持部材80と、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層Daと、半導体チップWaとをこの順に備える積層体100を2段階以上の多段階で加熱し、接着剤層Dcの反応率が70~80%である第1の硬化体110を得る第1の硬化工程と、第1の硬化体110をさらに加熱し、接着剤層Dccの反応率が80%を超える第2の硬化体120を得る第2の硬化工程とを備える。このような半導体装置の製造方法によれば、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層を硬化する際に発生する不具合を抑制することが可能となる。
【0018】
<第1の硬化工程>
本工程は、支持部材と、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層と、半導体チップとをこの順に備える積層体を2段階以上の多段階で加熱し、接着剤層の反応率が70~80%である第1の硬化体を得る工程である。
【0019】
積層体は、支持部材と、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層と、半導体チップとをこの順に備える。
図2及び
図3は、積層体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。積層体100は、例えば、基材層2aと、粘着剤層2bと、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有するダイボンディングフィルムDとを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10を準備する工程(準備工程)と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10のダイボンディングフィルムDに半導体ウェハWを貼り付けて個片化用積層体20を作製する工程(ウェハラミネート工程、
図2(a)参照)と、ダイボンディングフィルムDを貼り付けた半導体ウェハWをダイシングすることによって、複数の個片化された接着剤層付き半導体チップ60(ダイボンディングフィルム片付き半導体チップ)を作製する工程(ダイシング工程、
図2(b)参照)と、接着剤層付き半導体チップ60を支持部材80に接着剤層Da(ダイボンディングフィルム片)を介して接着する工程(ダイボンディング工程、
図3(c)参照))とを備える製造方法によって得ることができる。積層体100の製造方法は、ダイシング工程とダイボンディング工程との間に、必要に応じて、粘着剤層2bに対して(基材層2aを介して)紫外線を照射する工程(紫外線照射工程、
図3(a)参照)と、粘着剤層2baから接着剤層Daが付着した半導体チップWa(接着剤層付き半導体チップ60)をピックアップする工程(ピックアップ工程、
図3(b)参照)とをさらに備えていてもよい。
【0020】
・準備工程
本工程では、基材層2aと、粘着剤層2bと、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有するダイボンディングフィルムDとを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10を準備する。なお、ダイボンディングフィルムは、半導体チップと支持部材との接着又は半導体チップ同士の接着に使用されるフィルムを意味する。また、基材層2aと、基材層2a上に設けられた粘着剤層2bとを有する積層フィルムを「ダイシングフィルム2」という場合がある。以下では、ダイボンディングフィルムの一例について、詳細に説明する。
【0021】
ダイボンディングフィルムDは、導電性粒子(以下、「(A)成分」という場合がある。)及び熱硬化性樹脂成分(以下、「(B)成分」という場合がある。)を含有する。(B)成分は、熱硬化性樹脂(以下、「(B1)成分」という場合がある。)と、硬化剤(以下、「(B2)成分」という場合がある。)と、エラストマー(以下、「(B3)成分」という場合がある。)とを含んでいてもよい。ダイボンディングフィルムDは、カップリング剤(以下、「(C)成分」という場合がある。)、硬化促進剤(以下、「(D)成分」という場合がある。)等をさらに含有していてもよい。
【0022】
ダイボンディングフィルムDは、少なくとも一部が硬化した、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後に加熱処理によって硬化物(Cステージ)状態となり得るものであってよい。
【0023】
(A)成分:導電性粒子
(A)成分としての導電性粒子は、ダイボンディングフィルムを半導体装置に適用したときに放熱性を高めるための成分である。
【0024】
(A)成分としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、錫、ビスマス、インジウム、亜鉛、鉄、銅、銀、金、パラジウム、白金等の金属を含む粒子が挙げられる。(A)成分は、1種の金属から構成される導電性粒子であってもよく、2種以上の金属から構成される導電性粒子であってもよい。2種以上の金属から構成される導電性粒子は、導電性粒子の表面を当該導電性粒子とは異なる金属で被覆した金属被覆導電性粒子であってもよい。
【0025】
(A)成分は、例えば、電気伝導率(0℃)が40×106S/m以上である金属から構成される導電性粒子であってよい。このような(A)成分を用いることによって、放熱性をより一層向上させることができる。電気伝導率(0℃)が40×106S/m以上である金属としては、例えば、金(49×106S/m)、銀(67×106S/m)、銅(65×106S/m)等が挙げられる。電気伝導率(0℃)は、45×106S/m以上又は50×106S/m以上であってもよい。すなわち、(A)成分は、銀及び/又は銅から構成されている導電性粒子であることが好ましい。
【0026】
(A)成分は、例えば、熱伝導率(20℃)が250W/m・K以上である金属から構成される導電性粒子であってよい。このような(A)成分を用いることによって、放熱性をより一層向上させることができる。熱伝導率(20℃)が250W/m・K以上である金属としては、例えば、金(295W/m・K)、銀(418W/m・K)、銅(372W/m・K)等が挙げられる。熱伝導率(20℃)は、300W/m・K以上又は350W/m・K以上であってもよい。すなわち、(A)成分は、銀及び/又は銅から構成されている導電性粒子であることが好ましい。
【0027】
(A)成分は、電気伝導率及び熱伝導率の点に優れ、酸化され難いことから、銀粒子であってよい。銀粒子は、例えば、銀から構成される粒子(銀単独で構成される粒子)又は金属粒子(銅粒子等)の表面を銀で被覆した銀被覆金属粒子であってもよい。銀被覆導電性粒子としては、例えば、銀被覆銅粒子等が挙げられる。(A)成分は、銀から構成される粒子であってよい。
【0028】
(A)成分としての銀粒子は、特に制限されないが、例えば、還元法によって製造された銀粒子(還元剤を用いた液相(湿式)還元法によって製造された銀粒子)、アトマイズ法によって製造された銀粒子等が挙げられる。(A)成分としての銀粒子は、還元法によって製造された銀粒子であってよい。
【0029】
還元剤を用いた液相(湿式)還元法においては、通常、粒径制御、凝集・融着防止の観点から表面処理剤(滑剤)が添加されており、還元剤を用いた液相(湿式)還元法によって製造された銀粒子は、表面処理剤(滑剤)によって表面が被覆されている。そのため、還元法によって製造された銀粒子は、表面処理剤で表面処理された銀粒子ということもできる。表面処理剤は、オレイン酸(融点:13.4℃)、ミリスチン酸(融点:54.4℃)、パルミチン酸(融点:62.9℃)、ステアリン酸(融点:69.9℃)等の脂肪酸化合物、オレイン酸アミド(融点:76℃)、ステアリン酸アミド(融点:100℃)等の脂肪酸アミド化合物、ペンタノール(融点:-78℃)、ヘキサノール(融点:-51.6℃)、オレイルアルコール(融点:16℃)、ステアリルアルコール(融点:59.4℃)等の脂肪族アルコール化合物、オレアニトリル(融点:-1℃)等の脂肪族ニトリル化合物などが挙げられる。表面処理剤は、融点が低く(例えば、融点100℃以下)、有機溶媒への溶解性が高い表面処理剤であってよい。
【0030】
(A)成分の形状は、特に制限されず、例えば、フレーク状、樹脂状、球状等であってよく、球状であってもよい。(A)成分の形状が球状であると、ダイボンディングフィルムの表面粗さ(Ra)が改善され易い傾向にある。
【0031】
(A)成分の平均粒径は、0.01~10μmであってよい。(A)成分の平均粒径が0.01μm以上であると、接着剤ワニスを作製したときの粘度上昇を防ぎことができる、所望の量の(A)成分をダイボンディングフィルムに含有させることができる、ダイボンディングフィルムの被着体への濡れ性を確保してより良好な接着性を発揮させることができる等の効果が奏される傾向にある。(A)成分の平均粒径が10μm以下であると、フィルム成形性により優れ、(A)成分の添加による放熱性をより向上させることができる傾向にある。また、(A)成分の平均粒径が10μm以下であることによって、ダイボンディングフィルムの厚さをより薄くすることができ、さらに半導体チップを高積層化することができるとともに、ダイボンディングフィルムから(A)成分が突き出すことによる半導体チップのクラックの発生を防止することができる傾向にある。(A)成分の平均粒径は、0.1μm以上、0.3μm以上、又は0.5μm以上であってもよく、8.0μm以下、7.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、4.0μm以下、又は3.0μm以下であってもよい。
【0032】
なお、本明細書において、(A)成分の平均粒径は、(A)成分全体の体積に対する比率(体積分率)が50%のときの粒径(レーザー50%粒径(D50))を意味する。平均粒径(D50)は、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて、水中に(A)成分を懸濁させた懸濁液をレーザー散乱法によって測定することによって求めることができる。
【0033】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、70.0質量%以上であってよく、71.0質量%以上、72.0質量%以上、73.0質量%以上、74.0質量%以上、74.5質量%以上、75.0質量%以上、又は75.5質量%以上であってもよい。(A)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、70.0質量%以上であると、ダイボンディングフィルムの熱伝導率を向上させて、半導体装置の放熱性をより向上させることができる傾向にある。(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、例えば、85.0質量%以下、82.0質量%以下、81.0質量%以下、又は80.0質量%以下であってよい。(A)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、85.0質量%以下であると、ダイボンディングフィルムに他の成分をより充分に含有させることができる。これによって、ダイボンディングフィルムのずり粘度、貯蔵弾性率等の物性を所定の範囲に調整し易くなり、例えば、ダイボンディングフィルムの段差埋込性を向上させることができる。
【0034】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、20.0体積%以上であってよく、21.0体積%以上、22.0体積%以上、22.5体積%以上、23.0体積%以上、23.5体積%以上、24.0体積%以上、24.5体積%以上、24.8体積%以上、又は25.0体積%以上であってもよい。(A)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、20.0体積%以上であると、ダイボンディングフィルムの熱伝導率を向上させて、半導体装置の放熱性をより向上させることができる傾向にある。(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、例えば、33.0体積%以下、31.0体積%以下、30.0体積%以下、又は29.0体積%以下であってよい。(A)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、33.0体積%以下であると、ダイボンディングフィルムに他の成分をより充分に含有させることができる。これによって、ダイボンディングフィルムのずり粘度、貯蔵弾性率等の物性を所定の範囲に調整し易くなり、例えば、ダイボンディングフィルムの段差埋込性を向上させることができる。
【0035】
(A)成分の含有量(体積%)は、例えば、ダイボンディングフィルムの密度をx(g/cm3)、(A)成分の密度をy(g/cm3)、ダイボンディングフィルム中の(A)成分の質量割合をz(質量%)としたとき、下記式(I)から算出することができる。なお、ダイボンディングフィルム中の(A)成分の質量割合は、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて、熱重量分析を行うことによって求めることができる。また、ダイボンディングフィルムの密度及び(A)成分の密度は、比重計を用いて、質量と比重とを測定することで求めることができる。
(A)成分の含有量(体積%)=(x/y)×z (I)
TG-DTAの測定条件:温度範囲30~600℃(昇温速度30℃/分)、600℃で20分維持
Air流量:300mL/分
熱重量示差熱分析装置:セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA220
比重計:アルファーミラージュ株式会社製、EW-300SG
【0036】
(B)成分:熱硬化性樹脂成分
(B)成分は、特に制限されないが、(B1)成分と、(B2)成分と、(B3)成分との組み合わせであってよい。
【0037】
(B1)成分:熱硬化性樹脂
(B1)成分は、加熱等によって、分子間で三次元的な結合を形成し硬化する性質を有する成分であり、硬化後に接着作用を示す成分である。(B1)成分は、エポキシ樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を有しているものであってよい。
【0038】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類、アントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
【0039】
エポキシ樹脂は、軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂を含んでいてもよい。なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K7234に準拠し、環球法によって測定される値を意味する。
【0040】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されないが、90~300g/eq又は110~290g/eqであってよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量がこのような範囲にあると、ダイボンディングフィルムのバルク強度を維持しつつ、ダイボンディングフィルムを形成する際の接着剤ワニスの流動性を確保し易い傾向にある。
【0041】
(B1)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、又は7.0質量%以上であってよく、15.0質量%以下、14.0質量%以下、13.0質量%以下、12.0質量%以下、又は11.0質量%以下であってよい。
【0042】
(B2)成分:硬化剤
(B2)成分は、(B1)成分の硬化剤として作用する成分である。(B1)成分がエポキシ樹脂である場合、(B2)成分は、エポキシ樹脂硬化剤であってよい。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂(フェノール系硬化剤)、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ホスフィン系硬化剤、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤は、取り扱い性、保存安定性、及び硬化性の観点から、フェノール樹脂であってよい。
【0043】
フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ナフタレンジオール、フェノールノボラック、フェノール等のフェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、フェニルアラルキル型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0044】
フェノール樹脂は、軟化点が90℃以下であるフェノール樹脂を含んでいてもよい。軟化点が90℃以下であるフェノール樹脂を含むことによって、110℃においてフェノール樹脂が充分に液状化することから、ダイボンディングフィルムのずり粘度、貯蔵弾性率等の物性を所定の範囲に調整し易くなる傾向にある。
【0045】
フェノール樹脂の水酸基当量は、40~300g/eq、70~290g/eq、又は100~280g/eqであってよい。フェノール樹脂の水酸基当量が40g/eq以上であると、ダイボンディングフィルムの貯蔵弾性率がより向上する傾向にあり、300g/eq以下であると、発泡、アウトガス等の発生による不具合を防ぐことが可能となる。
【0046】
(B1)成分であるエポキシ樹脂のエポキシ当量と(B2)成分であるフェノール樹脂の水酸基当量との比((B1)成分であるエポキシ樹脂のエポキシ当量/(B2)成分であるフェノール樹脂の水酸基当量)は、硬化性の観点から、0.30/0.70~0.70/0.30、0.35/0.65~0.65/0.35、0.40/0.60~0.60/0.40、又は0.45/0.55~0.55/0.45であってよい。当該当量比が0.30/0.70以上であると、より充分な硬化性が得られる傾向にある。当該当量比が0.70/0.30以下であると、粘度が高くなり過ぎることを防ぐことができ、より充分な流動性を得ることができる。
【0047】
(B2)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、1.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、又は9.0質量%以下であってよい。
【0048】
(B1)成分及び(B2)成分の合計の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、13.0質量%以上であってよい。(B1)成分及び(B2)成分の合計の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、13.0質量%以上であると、ダイボンディングフィルムのずり粘度、貯蔵弾性率等の物性を所定の範囲に調整し易くなり、例えば、ダイボンディングフィルムの段差埋込性を向上させることができる。(B1)成分及び(B2)成分の合計の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、13.2質量%以上、13.5質量%以上、14.0質量%以上、14.5質量%以上、15.0質量%以上、又は15.5質量%以上であってもよい。(B1)成分及び(B2)成分の合計の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、30.0質量%以下、25.0質量%以下、23.0質量%以下、22.0質量%以下、21.0質量%以下、20.0質量%以下、又は18.0質量%以下であってもよい。
【0049】
(B3)成分:エラストマー
(B3)成分としては、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。(B3)成分は、これらの樹脂であって、架橋性官能基を有する樹脂であってよく、架橋性官能基を有するアクリル樹脂であってもよい。ここで、アクリル樹脂とは、(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸エステル)に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル(共)重合体を意味する。アクリル樹脂は、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシ基等の架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル(共)重合体であってよい。また、アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートとアクリルニトリルとの共重合体等のアクリルゴムであってもよい。
【0050】
アクリル樹脂の市販品としては、例えば、SG-P3、SG-70L、SG-708-6、WS-023 EK30、SG-280 EK23、HTR-860P-3、HTR-860P-3CSP、HTR-860P-3CSP-3DB(いずれもナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
(B3)成分としてのエラストマーのガラス転移温度(Tg)は、-50~50℃又は-30~20℃であってよい。Tgが-50℃以上であると、ダイボンディングフィルムのタック性が低くなるため取り扱い性がより向上する傾向にある。Tgが50℃以下であると、ダイボンディングフィルムを形成する際の接着剤ワニスの流動性をより充分に確保できる傾向にある。ここで、(B3)成分としてのエラストマーのTgは、DSC(熱示差走査熱量計)(例えば、株式会社リガク製、商品名:Thermo Plus 2)を用いて測定した値を意味する。
【0052】
(B3)成分としてのエラストマーの重量平均分子量(Mw)は、5万~160万、10万~140万、又は30万~120万であってよい。(B3)成分としてのエラストマーのガラス転移温度が5万以上であると、成膜性により優れる傾向にある。(B3)成分の重量平均分子量が160万以下であると、ダイボンディングフィルムを形成する際の接着剤ワニスの流動性により優れる傾向にある。ここで、(B3)成分としてのエラストマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。
【0053】
(B3)成分としてのエラストマーのMwの測定装置、測定条件等は、例えば、以下のとおりである。
ポンプ:L-6000(株式会社日立製作所製)
カラム:ゲルパック(Gelpack)GL-R440(昭和電工マテリアルズ株式会社製)、ゲルパック(Gelpack)GL-R450(昭和電工マテリアルズ株式会社製)、及びゲルパックGL-R400M(昭和電工マテリアルズ株式会社製)(各10.7mm(直径)×300mm)をこの順に連結したカラム
溶離液:テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)
サンプル:試料120mgをTHF5mLに溶解させた溶液
流速:1.75mL/分
【0054】
(B3)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、又は9.0質量%以下であってよい。(B3)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、15.0質量%以下であると、粘度が高くなり過ぎて、例えば、段差埋込性が低下することを防ぐことができる。(B3)成分の含有量の下限は、フィルム加工性の観点から、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は2.8質量%以上であってよい。
【0055】
(A)成分及び(B)成分は、ダイボンディングフィルムD(接着剤層)の主成分であり得る。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、ダイボンディングフィルムD(接着剤層)の全量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってよい。
【0056】
(C)成分:カップリング剤
(C)成分は、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
(D)成分:硬化促進剤
(D)成分としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第2級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、(D)成分は、イミダゾール類及びその誘導体であってもよい。
【0058】
イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
ダイボンディングフィルムは、その他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、顔料、イオン補捉剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0060】
(C)成分、(D)成分、及びその他の成分の合計の含有量は、ダイボンディングフィルムの全量を基準として、0.005~10質量%であってよい。
【0061】
ダイボンディングフィルムDは、(A)成分及び(B)成分、並びに、必要に応じて、(C)成分、(D)成分、及びその他の成分を含有する接着剤組成物をフィルム状に形成することによって作製することができる。このようなダイボンディングフィルムDは、接着剤組成物を支持フィルムに塗布することによって形成することができる。接着剤組成物は、有機溶媒で希釈された接着剤ワニスとして用いることができる。接着剤ワニスは、接着剤組成物と有機溶媒とを混合することによって得ることができる。接着剤ワニスを用いる場合は接着剤ワニスを支持フィルムに塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによってダイボンディングフィルムDを形成することができる。
【0062】
有機溶媒は、(A)成分以外の成分を溶解できるものであれば特に制限されない。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド、ブチルカルビトール、エチルカルビトール等のアルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、有機溶媒は、表面処理剤の溶解性及び沸点の観点から、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、又はシクロヘキサノンであってもよい。接着剤ワニス中の固形成分(有機溶媒以外の成分)濃度は、接着剤ワニスの全量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0063】
混合は、ホモディスパー、スリーワンモーター、ミキシングローター、プラネタリー、らいかい機等の通常の撹拌機を適宜組み合わせて行うことができる。撹拌機は、原料ワニス又は接着剤ワニスの温度条件を管理できるヒーターユニット等の加温設備を備えていてもよい。混合にホモディスパーを用いる場合、ホモディスパーの回転数は、4000回転/分以上であってよい。
【0064】
混合の条件は、特に制限されないが、加熱しながら行ってもよく、必要に応じて、加温設備等で加温してもよい。混合工程の混合温度は、50℃以上又は60℃以上であってもよい。混合工程の混合温度の上限は、例えば、100℃以下又は80℃以下であってよい。混合工程の混合時間は、例えば、1分以上又は5分以上であってよく、60分以下又は40分以下であってよい。
【0065】
接着剤ワニスを支持フィルムに塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0066】
接着剤ワニスを支持フィルムに塗布した後、必要に応じて、有機溶媒を加熱乾燥してもよい。加熱乾燥は、使用した有機溶媒が充分に揮発する条件であれば特に制限はないが、例えば、加熱乾燥温度は50~200℃であってよく、加熱乾燥時間は0.1~30分であってよい。加熱乾燥は、異なる加熱乾燥温度又は加熱乾燥時間で段階的に行ってもよい。
【0067】
このようにして、ダイボンディングフィルムDを得ることができる。ダイボンディングフィルムDの厚さは、用途に合わせて適宜調整することができるが、例えば、3μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0068】
ダイシングフィルム2における基材層2aとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基材層2aは、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0069】
ダイシングフィルム2における粘着剤層2bは、ダイシング時には半導体チップが飛散しない充分な粘着力を有し、その後の半導体チップのピックアップ工程においては半導体チップを傷つけない程度の低い粘着力を有するものであれば特に制限されず、ダイシングフィルムの分野で従来公知のものを使用することができる。粘着剤層2bは、紫外線非硬化型粘着剤からなる粘着剤層(紫外線非硬化型粘着剤層)であっても、紫外線硬化型の粘着剤からなる粘着剤層(紫外線硬化型粘着剤層)であってもよい。粘着剤層2bが紫外線硬化型粘着剤層である場合、粘着剤層2bに対して紫外線を照射することによって粘着剤層2bの粘着性を低下させることができる。
【0070】
ダイシングフィルム2(基材層2a及び粘着剤層2b)の厚さは、経済性及びフィルムの取扱い性の観点から、60~150μm又は70~130μmであってよい。
【0071】
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10は、ダイボンディングフィルムD、並びに、基材層2a及び基材層2a上に設けられた粘着剤層2bを備えるダイシングフィルム2を準備する工程と、ダイボンディングフィルムDとダイシングフィルム2の粘着剤層2bとを貼り合わせる工程とを備える製造方法によって得ることができる。ダイボンディングフィルムDとダイシングフィルム2の粘着剤層2bとを貼り合わせる方法は、公知の方法を用いることができる。
【0072】
・ウェハラミネート工程
本工程では、まず、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10を所定の装置に配置する。続いて、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10のダイボンディングフィルムDに半導体ウェハWを貼り付けて個片化用積層体20を作製する(
図2(a)参照)。
【0073】
半導体ウェハWとしては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、各種セラミック、ガリウムヒ素等の化合物半導体などが挙げられる。半導体ウェハWの回路面は、ダイボンディングフィルムD側の表面とは反対側の面に設けられていてもよい。
【0074】
半導体ウェハW(半導体チップWa)の厚さは、例えば、10~200μmであり、20~100μmであってもよい。
【0075】
このようにして、ダイシングフィルム2(基材層2a及び粘着剤層2b)と、ダイボンディングフィルムDと、半導体ウェハWとをこの順に備える個片化用積層体20を得ることができる(
図2(a)参照)。
【0076】
・ダイシング工程
本工程では、半導体ウェハW及びダイボンディングフィルムDをダイシングして、複数の個片化された接着剤層付き半導体チップ60(ダイボンディングフィルム片付き半導体チップ)を作製する(
図2(b)参照)。このとき、粘着剤層2bの一部、又は、粘着剤層2bの全部及び基材層2aの一部がダイシングされて個片化されていてもよい。ダイシング工程におけるダイシング方法は、公知のダイシング方法を使用することができる。このように、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10は、ダイシングフィルムとしても機能する。
【0077】
・紫外線照射工程
粘着剤層2bが紫外線硬化型粘着剤層である場合、積層体の製造方法は、紫外線照射工程を備えていてもよい。本工程では、粘着剤層2bに対して(基材層2aを介して)紫外線を照射する(
図3(a)参照)。紫外線照射において、紫外線の波長は200~400nmであってよい。紫外線照射条件は、照度及び照射量をそれぞれ30~240mW/cm
2の範囲及び50~500mJ/cm
2の範囲であってよい。
【0078】
・ピックアップ工程
本工程では、基材層2aをエキスパンドすることによって、個片化された接着剤層付き半導体チップ60を互いに離間させつつ、基材層2a側からニードル72で突き上げられた接着剤層付き半導体チップ60を吸引コレット74で吸引して粘着剤層2baからピックアップする(
図3(b)参照)。なお、接着剤層付き半導体チップ60は、半導体チップWa及び接着剤層Daを有する。半導体チップWaは、半導体ウェハWが個片化されたものであり、接着剤層Daは、ダイボンディングフィルムDが個片化されたものである。また、粘着剤層2baは、粘着剤層2bが個片化されたものである。粘着剤層2baは、接着剤層付き半導体チップ60をピックアップした後に基材層2a上に残存し得る。本工程では、必ずしも基材層2aをエキスパンドすることは必要ないが、基材層2aをエキスパンドすることによってピックアップ性をより向上させることができる。
【0079】
ニードル72による突き上げ量は、適宜設定することができる。さらに、極薄ウェハに対しても充分なピックアップ性を確保する観点から、例えば、2段又は3段の突き上げを行ってもよい。また、吸引コレット74を用いる方法以外の方法で接着剤層付き半導体チップ60をピックアップしてもよい。
【0080】
・ダイボンディング工程
本工程では、ピックアップされた接着剤層付き半導体チップ60を熱圧着によって、接着剤層Daを介して支持部材80の表面80A上に接着する(
図3(c)参照)。このようにして、積層体100を得ることができる。支持部材80には、複数の接着剤層付き半導体チップ60を接着してもよい。
【0081】
支持部材80としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム;ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を含むプラスチックフィルム;ガラス不織布等の基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックを含浸、硬化させた変性プラスチックフィルム;アルミナ等を含むセラミックフィルム;封止材料(絶縁材料)を含むフィルム;熱伝導材料(TIM材料)を含むフィルムなどが挙げられる。支持部材80は、半導体チップ、半導体ウェハ、半導体パッケージ等の半導体部材であってもよい。
【0082】
熱圧着における加熱温度は、例えば、80~160℃であってよい。熱圧着における荷重は、例えば、5~15Nであってよい。熱圧着における加熱時間は、例えば、0.5~10秒であってよい。
【0083】
続いて、得られた積層体100を2段階以上の多段階で加熱し、接着剤層Dcの反応率が70~80%である第1の硬化体110(
図1(b)参照)を得る。第1の硬化体110における接着剤層Dcは、ダイボンディングフィルムDの硬化物を含む。積層体100を2段階以上の多段階で加熱することによって、接着剤層を硬化する際に発生する不具合を抑制することが可能となる。第1の硬化工程は、積層体を100~160℃の範囲にて2段階以上の多段階で加熱する工程であってもよい。より具体的には、第1の硬化工程は、積層体を100℃以上140℃未満の範囲にて加熱する段階(段階(A))及び140℃以上160℃未満の範囲にて加熱する段階(段階(B))を含む多段階で加熱する工程であってよい。第1の硬化工程は、積層体を60℃以上100℃未満の範囲にて加熱する段階(段階(C))を加えて、段階(C)、段階(A)、及び段階(B)を含む多段階で加熱する工程であってよい。第1の硬化工程は、段階(C)、段階(A)、及び段階(B)の順等のように、段階的に昇温して加熱する工程であることが好ましい。
【0084】
段階(A)の加熱温度は、100℃以上140℃未満であり、110℃以上、115℃以上、又は120℃であってもよく、135℃以下、132℃以下、又は130℃以下であってもよい。段階(A)の加熱時間は、10~180分であり、20分以上、30分以上、又は40分以上であってもよく、150分以下、120分以下、又は90分以下であってもよい。
【0085】
段階(B)の加熱温度は、140℃以上160℃未満であり、142℃以上又は145℃以上であってもよく、158℃以下又は155℃以下であってもよい。段階(B)の加熱時間は、10~180分であり、20分以上、30分以上、又は40分以上であってもよく、150分以下、120分以下、又は90分以下であってもよい。
【0086】
段階(C)の加熱温度は、60℃以上100℃未満であり、62℃以上又は65℃であってもよく、90℃以下、80℃以下、又は75℃以下であってもよい。段階(C)の加熱時間は、10~180分であり、20分以上、30分以上、又は40分以上であってもよく、150分以下、120分以下、又は90分以下であってもよい。
【0087】
第1の硬化工程は、積層体100の半導体チップWaを加圧しながら加熱してもよい。加圧条件は、例えば、0.1~1.0MPaであってよい。
【0088】
積層体100の加熱は、特に制限されないが、温度制御、加圧制御等が容易であることから、加圧設備を備える加熱装置(例えば、加圧オーブン)内で実施することが好ましい。
【0089】
第1の硬化体110における接着剤層Dcの反応率は、70~80%である。接着剤層Dcの反応率が80%以下であると、第1の硬化工程の接着剤層の硬化において、不具合の発生を抑制できる傾向にあり、接着剤層Dcの反応率が70%以上であると、第2の硬化工程の接着剤層の硬化において、不具合の発生を抑制できる傾向にある。接着剤層Dcの反応率は、72%以上又は73%以上であってもよく、78%以下又は75%以下であってもよい。接着剤層Dcの反応率の調整は、加熱温度及び加熱時間を調整することによって行うことができる。
【0090】
接着剤層Dcの反応率は、以下の測定方法によって求められる値を意味する。接着剤層に使用されるダイボンディングフィルムから、加熱処理前のサンプル10mgを2個作製する。次いで、加熱処理前のサンプルの1個に対して、所定の加熱処理を施し、第1の硬化工程の加熱処理後のサンプルを得る。次いで、加熱処理前のサンプル及び加熱処理後のサンプルのそれぞれについて、示差走査熱量計(Thermo plus EVO2 DSC8231、株式会社リガク製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲30~300℃でDSC発熱量を測定する。DSC発熱量は、部分面積の解析方法を用いて、DSC曲線の170~270℃の温度範囲で解析することにより、解析温度範囲のベースライン指定及びピーク面積の積分を行うことで求めることができる。求められたDSC発熱量に基づき、下記式(1)から、接着剤層の反応率を求める。
接着剤層Dcの反応率=(C0-C1)/C0×100 (1)
[式中、C0は、加熱処理前のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表し、C1は、加熱処理後のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表す。]
【0091】
<第2の硬化工程>
本工程は、第1の硬化体110をさらに加熱し、接着剤層Dccの反応率が80%を超える第2の硬化体120(
図1(c)参照)を得る工程である。本工程は、封止工程で用いた封止樹脂とともに、接着剤層を加熱して接着剤層をさらに硬化させる工程であってよい。第1の硬化体110をさらに加熱することによって、接着剤層を硬化する際に発生する不具合をより一層抑制することが可能となる。第2の硬化工程は、第1の硬化体110を160℃以上の範囲にて加熱する工程であってもよい。
【0092】
第2の硬化工程の加熱温度は、160℃以上であり、170℃以上、180℃以上、又は190℃であってもよい。第2の硬化工程の加熱温度の上限は、例えば、240℃以下であってよく、230℃以下、220℃以下、又は210℃以下であってもよい。第2の硬化工程の加熱時間は、1~40分であり、3分以上、5分以上、又は10分以上であってもよく、30分以下、25分以下、又は20分以下であってもよい。
【0093】
第2の硬化工程は、第1の硬化体110の半導体チップWaを加圧しながら加熱する必要はなく、大気圧下で加熱することが好ましい。第1の硬化体110の加熱は、特に制限されないが、温度制御等が容易であることから、加熱オーブン、ホットプレート等を用いて実施することが好ましい。
【0094】
第2の硬化体120における接着剤層Dccの反応率は、80%を超える。第2の硬化体120における接着剤層Dccは、ダイボンディングフィルムDの硬化物を含む。接着剤層Dcの反応率が80%を超えると、第2の硬化工程の接着剤層の硬化において、不具合の発生をより一層抑制できる傾向にある。接着剤層Dcの反応率の上限は、例えば、100%以下、98%以下、95%以下、92%以下、90%以下、又は85%以下であってもよい。接着剤層Dccの反応率の調整は、加熱温度及び加熱時間を調整することによって行うことができる。
【0095】
接着剤層Dccの反応率は、以下の測定方法によって求められる値を意味する。接着剤層に使用されるダイボンディングフィルムから、加熱処理前のサンプル10mgを2個作製する。次いで、加熱処理前のサンプルの1個に対して、所定の加熱処理を施し、第1の硬化工程及び第2の硬化工程の加熱処理後のサンプルを得る。次いで、加熱処理前のサンプル及び加熱処理後のサンプルのそれぞれについて、示差走査熱量計(Thermo plus EVO2 DSC8231、株式会社リガク製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲30~300℃でDSC発熱量を測定する。DSC発熱量は、部分面積の解析方法を用いて、DSC曲線の170~270℃の温度範囲で解析することにより、解析温度範囲のベースライン指定及びピーク面積の積分を行うことで求めることができる。求められたDSC発熱量に基づき、下記式(2)から、接着剤層の反応率を求める。
接着剤層Dccの反応率=(C0-C2)/C0×100 (2)
[式中、C0は、加熱処理前のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表し、C2は、加熱処理後のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表す。]
【0096】
<ワイヤーボンディング工程>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第1の硬化工程と第2の硬化工程との間に、必要に応じて、支持部材80の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップWa上の電極パッドとをボンディングワイヤーで電気的に接続する工程(ワイヤーボンディング工程)を備えていてもよい。ボンディングワイヤーとしては、例えば、金線、アルミニウム線、銅線、銀線等を用いることができる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80~250℃又は80~220℃の範囲内であってよい。加熱時間は数秒~数分であってよい。ワイヤーボンディングは、上記温度範囲内で加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーとの併用によって行ってもよい。
【0097】
<封止工程>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第1の硬化工程と第2の硬化工程との間に、必要に応じて、封止樹脂によって半導体チップWaを封止する工程(封止工程)を備えていてもよい。本工程は、支持部材80に搭載された半導体チップWa又はボンディングワイヤーを保護するために行われる。本工程は、封止樹脂を金型で成型することによって行うことができる。封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂であってよい。封止時の熱及び圧力によって支持部材80及び残渣が埋め込まれ、接着界面での気泡による剥離を防止することができる。
【0098】
これらの工程を経て、半導体装置(第2の硬化体120等)を得ることができる。
【0099】
[半導体装置]
図4は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図4に示される半導体装置200は、半導体チップWaと、半導体チップWaを搭載する支持部材80と、接着部材90(接着剤層Dcc、上記のダイボンディングフィルムの硬化物)とを備えている。接着部材90(接着剤層Dcc)は、半導体チップWa及び支持部材80の間に設けられ、半導体チップWaと支持部材80とを接着している。半導体チップWaの接続端子(図示せず)はワイヤ70を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続されていてもよい。半導体チップWaは、封止材から形成される封止材層92によって封止されていてもよい。支持部材80の表面80Aと反対側の面に、外部基板(マザーボード)(図示せず)との電気的な接続用として、はんだボール94が形成されていてもよい。
【0100】
半導体装置200は、接着部材90として、上記のダイボンディングフィルムの硬化物を備えることから、優れた放熱性を有する。
【実施例0101】
以下に、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0102】
(製造例1)
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製及び積層体の作製]
<接着剤ワニスの調製>
表1に示す記号及び組成比(単位:質量部)で、(B)成分に、有機溶媒としてのシクロヘキサノンを加えて撹拌して混合液を調製した。各成分が溶解した後、当該混合液に(A)成分を加え、ホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K.HOMO MIXER MARK II)を用いて、4000回転/分で20分撹拌した。次いで、混合液に(C)成分及び(D)成分をさらに添加し、スリーワンモーターを用いて250回転/分で終夜撹拌した。このようにして、(A)成分及び(B)成分の合計の含有量が、61質量%の製造例1の接着剤ワニスを調製した。
【0103】
なお、表1の各成分の記号は下記のものを意味する。
【0104】
(A)成分:導電性粒子
(A-1)銀粒子AG-3-1F(商品名、DOWAエレクトロニクス株式会社製、形状:球状、平均粒径(レーザー50%粒径(D50)):1.5μm)
【0105】
(B)成分:熱硬化性樹脂成分
(B1)成分:熱硬化性樹脂
(B1-1)N-500P-10(商品名、DIC株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:204g/eq、軟化点:84℃、25℃で固形)
(B1-2)EXA-830CRP(商品名、DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:159g/eq、25℃で液状)
【0106】
(B2)成分:硬化剤
(B2-1)MEH-7800M(商品名、明和化学株式会社製、フェニルアラルキル型フェノール樹脂、水酸基当量:174g/eq、軟化点:80℃)
【0107】
(B3)成分:エラストマー
(B3-1)HTR-860P-3CSP(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、アクリルゴム、重量平均分子量:100万、軟化点:-7℃)
【0108】
(C)成分:カップリング剤
(C-1)Z-6119(商品名、ダウ・東レ株式会社製、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン)
【0109】
(D)成分:硬化促進剤
(D-1)2PZ-CN(商品名、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)
【0110】
【0111】
<ダイボンディングフィルムの作製>
ダイボンディングフィルムの作製に、製造例1の接着剤ワニスを用いた。真空脱泡した製造例1の接着剤ワニスを、支持フィルムである離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)上に塗布した。塗布したワニスを、90℃で3分間、続いて130℃で3分間の2段階で加熱乾燥し、支持フィルム上に、Bステージ状態にある厚さ25μmの製造例1のダイボンディングフィルムを作製した。
【0112】
<ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製>
基材層と粘着剤層とを備えるダイシングテープ(昭和電工マテリアルズ株式会社製、厚さ110μm)を用意し、製造例1のダイボンディングフィルムに、ダイシングテープの粘着剤層をゴムロールにて張り合わせて、基材層、粘着剤層、及び接着剤層(ダイボンディングフィルム)をこの順に備える製造例1のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを作製した。
【0113】
<積層体の作製>
12インチ半導体ウェハ(厚さ150μm)に、製造例1のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの接着剤層(ダイボンディングフィルム)をフルオートマルチフィルムマウンタ(DFM-2800、株式会社ディスコ製)を用いて、70℃、テンションレベル5、貼り付け速度10mm/秒の条件で貼り付けた。その後、フルオートダイサ(DFD-6362、株式会社ディスコ製)にて6.45×6.58mmのチップサイズに個片化し、個片化された接着剤層付き半導体チップを得た。得られた接着剤層付き半導体チップを、ダイボンダ(DB-830Plus+、ファスフォードテクノロジ株式会社製)を用いて、支持部材としてのリードフレームに温度120℃、時間1.0秒、荷重10Nの条件で圧着することによって、支持部材と、接着剤層と、半導体チップとをこの順に備える、製造例1の積層体を得た。なお、接着剤層付き半導体チップを圧着する前に、ダイボンダでのステージ吸着が充分となるように、リードフレームの裏面に一括封止成形用テープ(RTシリーズ、昭和電工マテリアルズ株式会社製)を貼り付けた。
【0114】
(実施例1)
[第2の硬化体の作製]
<第1の硬化体の作製>
製造例1の積層体を、全自動加圧オーブン(PCOA-01T、NTTアドバンステクノロジ株式会社製)にて、1段階目(70℃/1時間)、2段階目(120℃/1時間)、及び3段階目(150℃/1時間)の加熱条件で加熱し、実施例1の第1の硬化体を得た。なお、ここで、(温度/時間)は、当該温度にて当該時間で加熱したことを意味し、以下、同様である。加熱は、加圧しながら行い、圧力を0.7MPaで一定に保って行った。また、各設定温度に到達するまでの時間は30分間とした。第1の硬化体は、後述の第2の硬化体の作製に使用するために、及び、各種の評価に用いるために、複数の第1の硬化体を準備した。
【0115】
<第2の硬化体の作製>
続いて、得られた実施例1の第1の硬化体を、ホットプレート(TH-900、アズワン株式会社製)を用いて、(200℃/15分)の条件で加熱し、実施例1の第2の硬化体を得た。
【0116】
(実施例2)
第1の硬化体の作製において、1段階目(130℃/1時間)及び2段階目(150℃/1時間)の加熱条件で加熱した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の第1の硬化体及び第2の硬化体を得た。
【0117】
(比較例1)
第1の硬化体の作製において、(175℃/1時間)の加熱条件で加熱した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の第1の硬化体及び第2の硬化体を得た。
【0118】
(比較例2)
第1の硬化体の作製において、1段階目(120℃/1時間)及び2段階目(170℃/2時間)の加熱条件で加熱した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の第1の硬化体及び第2の硬化体を得た。
【0119】
(比較例3)
第1の硬化体の作製において、(120℃/2時間)の加熱条件で加熱した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の第1の硬化体及び第2の硬化体を得た。
【0120】
(比較例4)
第1の硬化体の作製において、1段階目(70℃/1時間)及び2段階目(120℃/1時間)の加熱条件で加熱した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の第1の硬化体及び第2の硬化体を得た。
【0121】
[各種評価]
<第1の硬化体の接着剤層の反応率>
第1の硬化体の接着剤層の反応率は、以下の測定方法によって測定した。まず、接着剤層に使用されるダイボンディングフィルムから、加熱処理前のサンプル10mgを2個作製した。次いで、加熱処理前のサンプルの1個に対して、所定の加熱処理を施し、第1の硬化工程の加熱処理後のサンプルを得た。次いで、加熱処理前のサンプル及び加熱処理後のサンプルのそれぞれについて、示差走査熱量計(Thermo plus EVO2 DSC8231、株式会社リガク製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲30~300℃でDSC発熱量を測定した。DSC発熱量は、部分面積の解析方法を用いて、DSC曲線の170~270℃の温度範囲で解析することにより、解析温度範囲のベースライン指定及びピーク面積の積分を行うことで求めた。求められたDSC発熱量に基づき、下記式(1)から、接着剤層の反応率を求めた。結果を表2に示す。
第1の硬化体の接着剤層の反応率=(C0-C1)/C0×100 (1)
[式中、C0は、加熱処理前のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表し、C1は、加熱処理後のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表す。]
【0122】
<第2の硬化体の接着剤層の反応率>
第2の硬化体の接着剤層の反応率は、以下の測定方法によって測定した。まず、接着剤層に使用されるダイボンディングフィルムから、加熱処理前のサンプル10mgを2個作製した。次いで、加熱処理前のサンプルの1個に対して、所定の加熱処理を施し、第1の硬化工程及び第2の硬化工程の加熱処理後のサンプルを得た。次いで、加熱処理前のサンプル及び加熱処理後のサンプルのそれぞれについて、示差走査熱量計(Thermo plus EVO2 DSC8231、株式会社リガク製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲30~300℃でDSC発熱量を測定した。DSC発熱量は、部分面積の解析方法を用いて、DSC曲線の170~270℃の温度範囲で解析することにより、解析温度範囲のベースライン指定及びピーク面積の積分を行うことで求めた。求められたDSC発熱量に基づき、下記式(2)から、接着剤層の反応率を求めた。結果を表2に示す。
第2の硬化体の接着剤層の反応率=(C0-C2)/C0×100 (2)
[式中、C0は、加熱処理前のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表し、C2は、加熱処理後のサンプルのDSC発熱量(J/g)を表す。]
【0123】
<接着剤層の観察>
実施例1、2及び比較例1~4の第1の硬化体の接着剤層及び第2の硬化体の接着剤層を評価サンプルとして、超音波デジタル画像診断装置(IS-350、インサイト株式会社製)を用いて接着剤層を観察した。探傷モードの探傷方法は透過法で行い、送信側プローブの周波数を35MHz、受信側プローブの周波数を25MHzとした。透過法による観察において、通常、ボイド、剥離等の異常部は、最も濃い色(白黒画像の場合、黒色)で観察されるが、今回の観察においては、最も濃い色ではなく、半導体チップの表面に、少々薄くなった色(白黒画像の場合、灰色)の円形の影として観測された。これは、評価サンプルの支持部材及び半導体チップの反りによって、信号の受信タイミングのずれ、超音波の入射角度のずれ等が生じたためであると考えられる。そこで、本接着剤層の観察において、影が観測されなかった場合を不具合が抑制されているとして「A」、影がわすかに観測された場合を「B」、影がはっきり観測された場合を「C」と評価した。結果を表2に示す。
【0124】
<樹脂分離及びクラックの評価>
実施例1、2及び比較例1~4の第1の硬化体及び第2の硬化体を用いて、樹脂分離の発生及びクラックの発生を評価した。ここで、樹脂分離とは、接着剤層内において、導電性粒子と樹脂成分との分離が発生し、導電性粒子の分散性が著しく低下している箇所が存在することを意味する。評価サンプルは、リードフレームから1パッケージ分をニッパーにて切り離し、接着剤層の厚さ方向において、中央部までポリッシャー(RPO-128K、リファインテック株式会社製)を用いて研磨することによって得た。研磨は、#600、#1200、#2000、#4000の順で研磨紙を用いて行い、最後にアルミナ液(0.3μm、リファインテック株式会社製)を用いてバフ研磨を行った。次いで、研磨した評価サンプルを走査型電子顕微鏡(SU1510、株式会社日立ハイテク製)にて、二次電子像モード、倍率3000倍で観察した。樹脂分離及びクラックの評価は、研磨した断面を均等に5分割し、倍率3000倍の視野で確認できる範囲にて行った。このとき、樹脂分離に関しては、5分割の全ての断面において、樹脂分離が確認されなかった場合を樹脂分離が抑制されているとして「A」、5分割の断面のうち、2、3の断面において、樹脂分離が確認された場合を「B」、5分割の全ての断面において、樹脂分離が確認された場合を「C」と評価した。また、クラックに関しても、同様に、5分割の全ての断面において、クラックが確認されなかった場合をクラックが抑制されているとして「A」、5分割の断面のうち、2、3の断面において、クラックが確認された場合を「B」、5分割の全ての断面において、クラックが確認された場合を「C」と評価した。結果を表2に示す。
【0125】
<反りの評価>
実施例1、2及び比較例1~4の第1の硬化体及び第2の硬化体を評価サンプルとして、3D測定レーザー顕微鏡(OLS4100、オリンパス株式会社製)を用いて、半導体チップの表面を観察した。支持部材と、接着剤層と、半導体チップとをこの順に備える硬化体(評価サンプル)を、半導体チップが上面になるように配置し、半導体チップの真上から20倍の倍率にてマッピング機能を使用して画像を撮影した。得られた画像から半導体チップ中央部と端部との高さの差(単位μm)を算出し、これを半導体チップの反りとした。反りが30μm以下であった場合を反りが抑制されているとして「A」、反りが30μm超50μm以下であった場合を「B」、反りが50μm超であった場合を「C」と評価した。結果を表2に示す。
【0126】
【0127】
表2に示すとおり、ダイボンディング工程後の第1の硬化工程において、接着剤層を2段階以上の多段階で加熱すること、第1の硬化体の接着剤層の反応率が所定の範囲にあること、及びワイヤーボンディング工程後の第2の硬化工程において、第2の硬化体の接着剤層の反応率が所定の範囲にあることの条件を満たす、実施例1、2は、接着剤層を硬化する際に発生する不具合が充分に抑制されていた。これに対して、接着剤層を多段階で加熱しなかった比較例1、3、及び、接着剤層の反応率が所定の範囲になかった比較例2、4は、接着剤層を硬化する際に発生する不具合が抑制されなかった。これらの結果から、本開示の半導体装置の製造方法は、導電性粒子及び熱硬化性樹脂成分を含有する接着剤層を硬化する際に発生する不具合を抑制することが可能であることが確認された。
2…ダイシングフィルム、2a…基材層、2b,2ba…粘着剤層、10…ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、20…個片化用積層体、60…接着剤層付き半導体チップ、70…ワイヤ、72…ニードル、74…吸引コレット、80…支持部材、92…封止材層、94…はんだボール、100…積層体、110…第1の硬化体、120…第2の硬化体、200…半導体装置、D…ダイボンディングフィルム、Da,Dc,Dcc…接着剤層、W…半導体ウェハ、Wa…半導体チップ。