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特開2023-176596ニッケル酸化鉱石の製錬方法及びペレットの製造方法
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  • 特開-ニッケル酸化鉱石の製錬方法及びペレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176596
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ニッケル酸化鉱石の製錬方法及びペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/02 20060101AFI20231206BHJP
   C22B 5/10 20060101ALI20231206BHJP
   C22B 1/14 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C22B23/02
C22B5/10
C22B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088959
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】井関 隆士
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA10
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA03
4K001CA04
4K001CA26
4K001CA27
4K001CA28
4K001CA29
4K001CA31
4K001DA05
4K001GA07
4K001GA19
4K001HA01
4K001KA02
4K001KA06
4K001KA13
(57)【要約】
【課題】ニッケル酸化鉱石を含むペレットを還元することで有価メタルを製造する製錬方法において、高品質(高品位)の有価メタルを効率よく製造することができるニッケル酸化鉱石の製錬方法及び、当該製錬方法に用いられるペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ペレットを用いるニッケル酸化鉱石の製錬方法であり、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する混合物調製工程と、混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、混合物成形工程で得られたペレットを加熱還元してニッケルを含有する有価メタルとスラグとを得る還元処理工程と、還元処理工程で得られる有価メタルとスラグとを分離し有価メタルを回収する回収工程と、を含み、前記ペレットの固相線温度を1250℃以上還元処理工程における加熱還元温度以下にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレットを用いるニッケル酸化鉱石の製錬方法であり、
ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する混合物調製工程と、
該混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、
該混合物成形工程で得られたペレットを加熱還元してニッケルを含有する有価メタルとスラグとを得る還元処理工程と、
該還元処理工程で得られる有価メタルとスラグとを分離し有価メタルを回収する回収工程と、を含み、
前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上前記還元処理工程における加熱還元温度以下である
ことを特徴とするニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項2】
前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上1380℃以下である
ことを特徴とする請求項1記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項3】
ニッケル酸化鉱石の製錬方法に用いられるペレットの製造方法であり、
ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する混合物調製工程と、
該混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、を含み、
前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上前記製錬方法における加熱還元温度以下となるように調整する
ことを特徴とするペレットの製造方法。
【請求項4】
前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上1380℃以下となるように調整する
ことを特徴とする請求項3記載のペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法及びペレットの製造方法に関する。さらに詳しくはペレットを用いたニッケル酸化鉱石の製錬方法及び当該ニッケル酸化鉱石の製錬方法に用いられるペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱石の製錬方法には、熔錬炉を使用して硫黄と共に硫化焙焼してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用し炭素質還元剤を用いて還元することによってニッケルを含有する合金を製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用して硫酸でニッケルやコバルトを浸出して得た浸出液に硫化剤を添加して混合硫化物(ミックスサルファイド)を製造する湿式製錬方法等が知られている。
【0003】
上述した種々の製錬方法の中で、炭素源と共にキルンや炉に装入して還元処理することでニッケル酸化鉱石を製錬(乾式製錬方法)しようとする場合、還元で生成するニッケルメタルは粗大な方が生産性の観点から好ましい。これは、ニッケルメタルが、例えば数10μm程度の細かな大きさであった場合、同時に生成するスラグと分離することが困難となり、ニッケルの回収率(収率)が大きく低下するためである。
粗大なニッケルメタルを得るには、ニッケル品位の高い鉱石を処理することが最も簡単な方法ではある。しかし、近年は世界的に資源事情が厳しく、高ニッケル品位の鉱石を得ることは容易でない。
【0004】
そこで、品位の低い鉱石(例えば、ニッケルの品位が1.0質量%以下の鉱石)から粗大なニッケルメタルを得るための研究が行われている。例えば、特許文献1には、金属酸化物と炭素質還元剤とを含むペレットを還元溶融炉で加熱して金属酸化物を還元溶融してニッケルメタル(粒状金属)を製造するにあたり、炉床上に供給するペレットの平均直径を19.5mm以上、32mm以下とし、炉床上でペレットを加熱するときのペレットの炉床への投影面積率から算出される敷密度を0.5以上、0.8以下に制御することにより、ニッケルメタルの生産性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-256414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ペレットの作製にコストがかかったり、炉内におけるペレットの敷密度を所定の値に調整する必要があることなどから、結果的に生産性が向上しないためニッケルメタルの製造コストが高くなるという問題が生じている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、ニッケル酸化鉱石を含むペレットを還元することで有価メタルを製造する製錬方法において、高品質(高品位)の有価メタルを効率よく製造することができるニッケル酸化鉱石の製錬方法、当該製錬方法に用いられるペレットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、ペレットの固相線温度をコントロールすることにより、有価メタルを効率的に得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
第1発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ペレットを用いるニッケル酸化鉱石の製錬方法であり、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する混合物調製工程と、該混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、該混合物成形工程で得られたペレットを加熱還元してニッケルを含有する有価メタルとスラグとを得る還元処理工程と、該還元処理工程で得られる有価メタルとスラグとを分離し有価メタルを回収する回収工程と、を含み、前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上前記還元処理工程における加熱還元温度以下であることを特徴とする。
第2発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、第1発明において、前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上1380℃以下であることを特徴とする。
第3発明のペレットの製造方法は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法に用いられるペレットの製造方法であり、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する混合物調製工程と、該混合物からペレットを成形する混合物成形工程と、を含み、前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上前記製錬方法における加熱還元温度以下となるように調整することを特徴とする。
第4発明のペレットの製造方法は、第3発明において、前記ペレットの固相線温度が、1250℃以上1380℃以下となるように調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法によれば、固相線温度が所定の範囲内のペレットを用いるので粒径の大きな有価メタルを得ることができる。このため、有価メタルを効率よく製造することができる。
本発明のペレットの製造方法によれば、固相線温度が所定の範囲内にすることにより、ニッケル酸化鉱石の製錬方法に用いれば、粒径の大きな有価メタルが得られるペレットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法の概略フロー図ある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケルを含む有価メタルを得る乾式製錬方法であり、所定の範囲の固相線温度を有するペレットを用いることにより、大きな粒径を有する有価メタルを製造できるようにしたことに特徴を有している。また、本発明のペレットの製造方法は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法に用いることにより、大きな粒径を有する有価メタルが得られるペレットを製造できるようにしたことに特徴を有している。
【0013】
以下、本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のニッケル酸化鉱石の製錬方法(以下、本製錬方法という)は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石と還元剤である炭素質還元剤とを含有する混合物を調製する混合物調製工程S1と、得られた混合物からペレットを成形する混合物成形工程S2と、ペレットを還元炉内において所定の還元温度で加熱還元する還元処理工程S3と、還元処理工程後の還元物からスラグを分離して有価メタルを回収する回収工程S4と、を含む。
なお、還元処理工程S3において、ペレットを還元炉内において所定の還元温度で加熱還元する温度が、特許請求の範囲の「加熱還元温度」に相当する。以下では、この温度を単に還元温度と称することもある。
【0014】
(混合物調製工程S1)
本製錬方法の混合物調製工程S1は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石と、還元剤である炭素質還元剤と、を含有する混合物を調製する工程である。
例えば、混合物調製工程S1は、粉状のニッケル酸化鉱石と、粉状の炭素質還元剤と、を適量の水を添加しながら混合して混合物を調製する工程である。なお、混合物には、後述する任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等を粉末状にしたものを含有させてもよい。
【0015】
なお、混合物中のニッケル酸化鉱石や炭素質還元剤、任意成分の添加剤等の組成や混合割合は、後述するペレットの固相線温度が所定の範囲内となるように調整されていれば、とくに限定されない。
例えば、混合物から予備的にペレットを調製し、調製したペレットの固相線温度を熱重量示差熱分析装置(TG-TDA)を用いて測定する。そして、測定値に基づいて、混合物中のニッケル酸化鉱石等の含有量や組成比等を調整することができる。また、測定に基づいて、固相線温度の調整が必要な場合には、例えば、酸化マグネシウム(MgO)や、酸化カルシウム(CaO)、二酸化珪素(SiO)などを含む成分を用いて調整してもよい。とくに経済的観点では、SiOを含有するものは安価であるため好ましい。
【0016】
混合物調製工程S1において、ニッケル酸化鉱石等を混合する方法は、とくに限定されず、例えば、市販の混合機を用いることができる。また、ニッケル酸化鉱石等を混合する際には、混合性を高めるために混練を同時に行ってもよく、混合後に混練を行ってもよい。
混合物調製工程S1において、混練を行う場合には、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸混練機、二軸混練機等を用いて行うことができる。混合物は混練されることによって、混合物に対してせん断力を加えることができるので、炭素質還元剤や粉状のニッケル酸化鉱石等の凝集を解いて均一に混合することができる。しかも、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができる。
このため、混合物調製工程S1において混練操作を行うことにより、還元処理工程S3において、混合物から成形されるペレット内での還元反応が起りやすくなり、しかもその反応を均一に進行させることができる。すると、還元処理工程S3における還元反応の反応時間を短縮することができるので、操作性を向上させることができる。
しかも、ペレット内の成分を均質にできるので、回収工程S4後の有価メタルの品質のばらつきを抑制することができるようになる。
【0017】
表1には、混合物の調製に用いられる原料の組成(質量%)の一例を示す。なお、表に示した組成は、あくまで一例に過ぎず、ニッケル酸化鉱石等が表に示した組成以外の組成を含有してもよい。
【0018】
【表1】
【0019】
(ニッケル酸化鉱石)
ニッケル酸化鉱石は、ニッケルを酸化ニッケル(NiO)として含有する鉱石であれば、とくに限定されない。例えば、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、代表的な構成成分として酸化鉄(Fe)を含有する。
【0020】
なお、「~」の表記は、「以上以下」を意味し、例えば、表1のニッケル酸化鉱石中のニッケル1質量%~2質量%は、ニッケル酸化鉱石中にNiを1質量%以上2質量%以下含有することを意味する。
【0021】
(炭素質還元剤)
炭素質還元剤としては、例えば、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。なお、その一部または全てを植物由来成分、例えば澱粉等で構成してもよい。
この炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石の粒度や粒度分布と同等の大きさのものを用いるのが好ましい。このような大きさであると、混合する際に均一に混合し易く、還元反応も均一に進みやすくなる。
【0022】
なお、混合物調製工程S1における炭素質還元剤の混合割合は、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケル、酸化コバルト、及び酸化鉄と、を過不足なく還元するのに必要な炭素質還元剤の量を100%としたとき、50%以下となるように混合するのが好ましく、より好ましくは40%以下である。一方、炭素質還元剤の混合量の下限値は、とくに限定されないが、例えば、以下に説明する化学当量の合計値を100%としたときに、20%以上とすることが好ましく、より好ましくは23%以上とする。
つまり、混合物調製工程S1において、炭素質還元剤を混合する割合(混合割合)は、ペレットに含まれる炭素質還元剤の量(炭素質還元剤の混合量)を、化学当量の合計値を100%としたとき、20%以上50%以下とすれば、後述する還元処理工程S3における還元反応を効率的に進行させることができるので、ニッケル品位(質量%)の高い有価メタルを効率的に製造することができる。
【0023】
なお、炭素質還元剤の混合割合(%)の単位は、モル比であっても質量比であってもよい。つまり、炭素質還元剤の混合割合(%)は、モル比または質量比において、上記範囲内であればよい。
また、酸化ニッケル、酸化コバルト、及び酸化鉄と、を過不足なく還元するのに必要な炭素質還元剤の量とは、還元処理工程S3において、混合物を成形して得られたペレットに含まれる酸化ニッケルの全量をニッケルメタルに還元するのに必要な化学当量と、ペレットに含まれる酸化鉄を鉄メタルに還元するのに必要な化学当量との合計値(以下、「化学当量の合計値」ともいう)と定義する。
【0024】
(その他の成分)
なお、混合物には、上記のニッケル酸化鉱石及び炭素質還元剤のほかに、鉄鉱石や、フラックス成分、バインダーを含有させてもよい。
鉄鉱石としては、例えば、鉄品位が50質量%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化珪素(SiO)等を挙げることができる。
バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。
【0025】
また、混合物に含有させるニッケル酸化鉱石、鉄鉱石、フラックス成分などの大きさは、混合物の成形に影響を与えない程度の大きさであれば、とくに限定されない。例えば、粒径が0.01mm~20mmのものが好ましく、より好ましくは0.01mm~10mmであり、さらに好ましくは0.2mm~0.8mmである。
【0026】
ニッケル酸化鉱石等の粒径は、単一粒子の粒子径であってもよいし、単一粒子が凝集した凝集粒子の粒子径であってもよい。例えば、ニッケル酸化鉱石を粉砕したものを篩(目開き0.1mm)にかければ、篩を通過した粉状のニッケル酸化鉱石(粒子の長径がおおよそ0.03mm~0.3mm)を得ることができる。
【0027】
(混合物成形工程S2)
混合物調製工程S1で調製した混合物は、次工程の混合物成形工程S2に供される。
本製錬方法の混合物成形工程S2は、供給された混合物を成形してペレットを形成する工程である。
【0028】
(ペレットの固相線温度)
形成されるペレットは、固相線温度が所定の範囲内となるように混合物中の組成や混合割合が調整されている。具体的には、ペレットの固相線温度が1250℃以上となるように調整されている。
ペレットの固相線温度が1250℃未満では、後述する還元処理工程S3における還元処理時に液相割合が高くなりすぎてペレットが熔融し炉床と反応してしまい炉の寿命を極端に短くしたり、有価メタルの回収率が低下することがある。
一方、ペレットの固相線温度は、あまり高くなりすぎると、後述する還元処理工程S3における還元処理時に還元反応が十分に進まなかったり、ペレットの液相割合が低くなってしまい有価メタルが粗大化しなかったりすることがある。このため、ペレットの固相線温度の上限は、還元処理工程S3における還元処理時の温度(つまり還元温度)以下となるように調整するのが好ましい。例えば、ペレットの固相線温度の上限は、還元温度が1400℃の場合、1400℃以下が好ましく、より好ましくは1380℃以下であり、さらにより好ましくは1350℃以下であり、よりさらに好ましくは1330℃以下である。
【0029】
したがって、混合物成形工程S2により調製されるペレットは、固相線温度が1250℃以上、還元処理工程S3における還元処理時の還元温度以下となるように調製されている。例えば、還元温度が1400℃の場合には、ペレットの固相線温度は、1250℃以上1400℃以下となるように調整されているのが好ましく、より好ましくは1250℃以上1380℃以下であり、さらに好ましくは1250℃以上1350℃以下であり、よりさらに好ましくは1250℃以上1330℃以下となるように調整されている。
【0030】
ペレットの固相線温度は、後述する実施例に記載の熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定することができる。
【0031】
なお、固相線温度とは、ペレットがこれ以下の温度では固体の状態で安定して存在し、それ以上の温度では液相が混在したり、液体の状態になる温度のことをいう。
【0032】
ペレットの形状としては、還元炉の炉床に積層できる形状であれば、とくに限定されない。
例えば、楕円状、立方体状、直方体状、円柱状、又は球状等とすることができる。このような形状は、簡易な形状であって複雑なものではないため、成形コストを抑制することができる。しかも、不良品の発生を抑制することができ、得られる成形物の品質も均一にできるので、歩留り低下を抑制することができる。さらに、強度も維持し易くなる。
とくに、ペレットの形状としは、球状が好ましい。ペレットが球状であることにより還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。ペレットの形状を球状とする場合には、直径が10mm以上30mm以下程度となるように成形することができる。また、直方体状、立方体状、円柱状等とする場合には、概ね、縦、横の内寸が500mm以下程度となるように成形することができる。
【0033】
ペレットの大きさとしては、とくに限定されない。例えば、ペレットの体積が8000mm以上であることが好ましい。ペレットの体積が8000mm以上であることにより、成形コストが抑制され、さらに、ペレット全体に占める表面積の割合が低くなるため、還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。
【0034】
混合物成形工程S2において、混合物からペレットを成形することができれば、手段はとくに限定されない。
例えば、ブリケット装置、ペレタイザーや押出機などの成形装置を用いて混合物から成形物を成形することができる。成形装置としては、例えば、高圧、高せん断力で混合物を混練して成形できる装置が好ましい。高圧、高せん断で混合物を混練することにより、混合物の凝集を解くことができ、また効果的に混練することができるうえ、得られる成形物の強度を高めることができる。
また、ブリケットプレスを用いて成形することも可能である。設備や成形物強度、収率等を考慮して適宜、装置選定を行えばよい。
【0035】
(ペレットの乾燥処理)
なお、混合物成形工程S2は、成形したペレットを乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
一般手的に、ペレットに含まれる水分は、例えば50質量%程度と過剰に含まれることがある。このようにペレットが過剰の水分を含む場合、急激に加熱すると、内部の水分が一気に気化し、膨張して破壊することがある。
そこで、成形したペレットを乾燥工程に供給し乾燥処理を行う。乾燥条件としては、ペレットの固形分が60質量%程度、水分が40質量%程度以下となるようにペレットを乾燥処理する。なお、ペレットの水分は30質量%程度もしくはそれ以下となるように乾燥するのが好ましい。つまり、ペレットの固形分が70質量%程度、水分が30質量%程度となるように乾燥する。
【0036】
ペレットの水分含有量を低減することにより、次工程の還元処理工程S3における還元処理においてペレットが崩壊することを抑制することができるので、還元炉から取り出し易くなる。なお、還元処理工程S3における還元処理のことを還元加熱処理と称することもある。
また、ペレットは、過剰な水分によりベタベタした状態となっていることが多いため、乾燥処理を施すことで、取り扱いを容易にできる。
さらに、次工程の還元処理工程S3において、還元炉内におけるペレットに起因する水分混入を抑制することができる。これにより、還元炉内の雰囲気気体に含まれる水分量をより効果的に減らすことができ、還元物に含まれるメタルの酸化をより効果的に抑制することができる。
【0037】
乾燥工程における乾燥処理は、ペレットの水分含有量が上記範囲となるように処理できれば、とく限定されない。
例えば、乾燥工程における乾燥処理としては、70℃~400℃の熱風をペレットに対して吹き付けて乾燥させることができる。
とくに、乾燥処理を行う際のペレットの温度を100℃未満に維持すれば、乾燥処理中のペレットが処理中に破壊されるのを適切に抑制することができる。
【0038】
なお、体積の大きなペレットを乾燥させる場合には、乾燥前や乾燥後にひびや割れが入っていてもよい。ペレットの体積が大きい場合には、還元時に溶融して収縮するため、ひびや割れが生じることが多いが、ひびや割れによって生じる表面積の増加等の影響は僅かであるため大きな問題は生じ難い。一方、ペレットに破壊が生じない態様となっていれば、乾燥処理を省略してもよいのはいうまでもない。
【0039】
ペレットの乾燥処理は、連続して一度に行ってもよいし複数回に分けて行ってもよい。乾燥処理を複数回に分けて行うことによりペレットの破裂をより効果的に抑制することができる。なお、乾燥処理を複数回に分けて行った場合において、2回目以降の乾燥温度としては、150℃以上400℃以下が好ましい。この範囲で乾燥することにより、還元反応が進むことなく乾燥することが可能となる。
【0040】
表2には、乾燥処理後のペレットの固形分組成(炭素を除く)の一例を示す。なお、表に示した組成は、あくまで一例に過ぎず、ペレットが表に示した組成以外の組成を含有してもよい。
固形分組成の測定には、ICP発光分光分析装置(SHIMAZU S-8100型)を用いて測定することができる。
【0041】
【表2】
【0042】
(還元処理工程S3)
本製錬方法の還元処理工程S3は、混合物成形工程S2で得られたペレットを還元炉(精錬炉)に装入し、所定の温度まで昇温することによって加熱して還元処理(還元加熱処理)する工程である。この還元加熱処理により、ニッケルを含有するニッケル系合金である有価メタルとスラグとを含む還元物を得ることができる。
【0043】
還元処理工程S3において、還元炉に装入したペレットを加熱する方法はとくに限定されない。例えば、ニッケル酸化鉱石などを含むペレットを還元炉の床敷材を敷いた炉床上に積層し、そのペレットの積層体を加熱する。なお、ペレットと炉床との反応を抑制するために炉床にアルミナ粒等を敷いた上にペレットを配置するようにしてもよい。
【0044】
還元処理工程S3における加熱温度は、とくに限定されない。例えば、1250℃~1450℃の温度、より好ましくは1300℃~1400℃程度とすることができる。
【0045】
還元加熱処理の時間(処理時間)は、とくに限定されない。
例えば、還元炉の温度に応じて設定することができる。例えば、10分以上が好ましく、より好ましくは15分以上とする。一方で、処理時間の上限としては、製造コストの上昇を抑える観点から、50分以下が好ましく、より好ましくは40分以下である。
【0046】
なお、還元処理工程S3において、還元加熱処理が施されたペレット積層体は、大きな塊のメタルとスラグとの混成物(還元物)になる。見かけ上の体積の大きなペレットに対して還元加熱処理を行うことで、大きな塊のメタルが形成され易くなる。このため、還元炉から回収する際における回収の手間を低減させることができるので、メタル回収率の低下を有効に抑えることができる。なお、得られる混成物の体積は、装入するペレット積層体と比較すると、50体積%~60体積%程度に収縮する。
【0047】
また、還元処理工程S3において、還元剤である炭素質還元剤を追加的に添加してもよい。この追加的に添加する炭素質還元剤の割合は、とくに限定されない。
例えば、還元処理に供するペレットに含まれる炭素質還元剤を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下程度の範囲とすることが好ましい。このような範囲で追加添加することで、効率的に酸化の抑制をできるとともに過還元となることも防ぐことができる。
【0048】
また、還元処理工程S3に用いられる還元炉は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、回転炉床炉や移動炉床炉などを還元炉として用いることができる。
【0049】
例えば、還元炉として移動炉床炉を使用する場合、ペレットを還元炉でより効率的に処理することができる。また、移動炉床炉を使用することにより、連続的に還元反応が進行し、一つの設備で反応を完結させることができ、各工程における処理を別々の炉を用いて行うよりも処理温度の制御を的確に行うことができる。
また、移動炉床炉を使用する場合、各処理の間でのヒートロスが低減し、より効率的な操業が可能となる。つまり、別々の炉を使用して反応を行った場合、ペレット積層体を炉と炉との間で移動させる際に、温度が低下してヒートロスが生じ、また反応雰囲気に変化を生じさせてしまうため、炉に再装入したときに即座に反応が進まない。これに対して、移動炉床炉を使用する場合には一つの設備で各処理を行うことができるので、ヒートロスが低減されるとともに炉内雰囲気も的確に制御できる。このため、還元反応をより効果的に進行させることができるから、より効果的に、ニッケル品位が高い有価メタルを得ることができる。
【0050】
(回収工程S4)
本製錬方法の回収工程S4は、還元処理工程S3にて生成した有価メタルとスラグとを分離して有価メタルを回収する工程である。具体的には、ペレットに対する還元加熱処理によって得られた、有価メタル相(有価メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混在物(還元物)から、有価メタル相を分離して回収する。
【0051】
回収工程S4において、還元物から有価メタルを分離し回収することができれば、その回収方法は、とくに限定されない。
例えば、固体として得られた有価メタル相とスラグ相との混在物から有価メタル相とスラグ相とを分離する方法としては、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。
とくに、本製錬方法では、平均粒径が大きな有価メタルを得ることができるので、還元物に対して、衝撃を付与することにより、有価メタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。
しかも、得られる有価メタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから両者を容易に分離することができる。このような振動付与方法としては、例えば、所定の落差を設けて還元物を落下させたり、篩い分けの際に所定の振動を与える等の方法を採用することができる。
【0052】
以上のごとく、本製錬方法では、固相線温度が所定の範囲内となるように調整されたペレットを用いることにより、還元処理工程S3において、ペレット内の液相が適切な状態となるようにしつつ、還元反応を適切に進行させることができるようになる。つまり、還元処理工程S3におけるペレット内において、液相のスラグと液相の有価メタルを適切に共存させることができるので、温度を下げれば平均粒径が大きな粗大な有価メタルを形成させることができる。しかも、粗大な有価メタルを形成できるようになるので、スラグとの分離性を向上させることができるから、有価メタルの回収率を向上させることができる。したがって、本製錬方法を用いれば、ニッケルを含有する有価メタルの生産性を向上させることができる。
【0053】
ここで、一般的な乾式製錬方法を用いたニッケル酸化鉱石の製錬方法では、ニッケルメタルの平均粒径もある程度の大きさ以上(例えば、50μm以上)にすることはできないとされている。しかしながら、本製錬方法を用いれば、平均粒径が50μm以上の有価メタルを適切に製造することができる。なお、有価メタルの平均粒径は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0054】
本製錬方法における粗大な有価メタルの生成メカニズムの概略を説明する。
本製錬方法の還元処理工程S3において還元処理を行った際、ペレットの表層部では、ニッケル酸化物(酸化ニッケル)の還元反応とともに鉄酸化物(酸化鉄)の還元反応が進行していく。そして、反応開始から僅か1分~数分程度の処理時間で、ペレット表層部において、ペレットに含まれる酸化ニッケル及び一部の酸化鉄が還元されメタル化が進んでニッケルメタルあるいは鉄とニッケルの合金であるシェル(以下、「殻」ともいう)が形成される。
一方で、ペレット内部(つまり、殻の中)では、その殻の形成に伴って、ペレットの固相線温度が還元温度以下(加熱還元温度以下)であるので、ペレット中のスラグ成分が徐々に熔融して液相のスラグが生成する。これにより、1個のペレットの中で、鉄とニッケルの有価メタル(例えば、鉄-ニッケル合金)と、酸化物からなる液相のスラグ(以下、単に「スラグ」という)が分かれて生成する。そして、例えば、反応開始から10分程度を経過すると、還元反応に関与しない余剰の炭素質還元剤の炭素成分が、鉄-ニッケル合金に取り込まれて融点を低下させる。その結果、鉄-ニッケル合金は溶融して液相となる。つまり、還元処理工程S3において、ペレットの殻の中に、液相のスラグと液相の有価メタルを適切に共存させることができる。
このため、本製造方法では、還元加理工程S3で固相線温度が適切に調整されたペレットを用いることにより、ペレット中において、一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法と比べて、より大きな粒径を有する有価メタルを形成させることができる。
【0055】
(本実施形態のペレットの製造方法)
また、本実施形態のペレットの製造方法は、本製錬方法に用いられるペレットの製造方法と同様である。つまり、本実施形態のペレットの製造方法は、本製錬方法の混合物調製工程S1と混合物形成工程S2とを含む方法である。そして、本実施形態のペレットの製造方法により製造されるペレットは、固相線温度が上記のごとく所定の範囲内となるように調整されているので、ニッケル酸化鉱石の製錬方法に用いれば、粗大な有価メタルを得ることができる。
なお、各工程における詳細な説明は、本製錬方法に関する箇所で記載しているため割愛する。
【0056】
なお、本製錬方法で製造した有価メタルは、後工程で不純物を分離する湿式処理を行うことにより、純度の高い有価金属を分離して回収することができる。この不純物を分離する湿式処理としては、例えば、酸に熔解する中和や溶媒抽出、電解採取などの方法を例示できる。
【実施例0057】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
【0058】
<混合物調製工程>
各試料(試料1~6)について原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂(主成分がSiO)及び石灰石(主成分がCaCO)、バインダー、及び炭素質還元剤と、を適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を調製した。
【0059】
ニッケル酸化鉱石には、平均粒径が0.085mm、ニッケル品位が1±0.1質量%のものを使用した。
なお、ニッケル酸化鉱石の平均粒径の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた。
【0060】
鉄鉱石は、平均粒径が0.75mmのものを使用した。
なお、鉄鉱石の平均粒径の測定には、ニッケル酸化鉱石と同様の装置を用いた。
【0061】
炭素質還元剤には、平均粒径が約145μmの石炭粉(炭素含有量:52質量%)を用いた。
なお、炭素質還元剤の平均粒径の測定方法には、ニッケル酸化鉱石と同様の装置を用いた。
【0062】
(炭素質還元剤の混合割合)
炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe)とを過不足なく還元するのに必要な量を100%としたときに、34%の割合となるように混合した。
【0063】
<混合物成形工程>
調製した混合物を混合物成形工程に供して、円柱形状のペレットを成形した。
成形には、ペレタイザーを用いた。得られたペレットは篩別処理に供して直径が16±2mmのペレットを調製した。
【0064】
調製したペレットは、固形分が70質量%程度、水分が25質量%程度となるように、150℃~200℃の窒素の熱風を吹き付けて乾燥処理した。
【0065】
乾燥処理後のペレットの固形分組成(炭素を除く)の代表例を下記表3に示す。
固形分組成の測定には、ICP発光分光分析装置(SHIMAZU S-8100型)を用いた。
【0066】
【表3】
【0067】
(ペレットの固相線温度)
各試料(試料1~6)の固相線温度を表3に示す。
ペレットの固相線温度は、熱重量示差熱分析装置(TG-TDA、株式会社リガク製、型番:Thermo plus EVO2 TG-DTA8122)を用いて測定した。
測定条件は、試料量:0.20g、温度:室温~1500℃、雰囲気:アルゴンガス、とした。
【0068】
比較例は、ペレットの固相線温度が還元処理工程における還元温度以上となるように調製した以外(例えば、ペレット中の固形分組成において、二酸化珪素(SiO)が25質量%、酸化カルシウム(CaO)が3質量%、酸化アルミニウム(Al)が3質量%)、酸化マグネシウム(MgO)が30質量%)は実施例と同様とした。
【0069】
<還元処理工程>
調製したペレットを還元処理工程に供した。
乾燥処理後のペレットを、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした還元炉に装入した。なお、還元炉内の装入時の温度は500±20℃とした。
次に、炉床にアルミナ粒を敷き詰め、その上にペレットを載置した。アルミナ粒を敷き詰めることによりペレットと炉床の反応を抑制することができる。
【0070】
ペレットの還元処理は、下記表3に示す温度(表3では還元温度)及び時間(表3では還元時間)で行った。還元処理後は、窒素雰囲気中で速やかに室温まで冷却して、試料を炉から大気中へ取り出した。
【0071】
(ニッケルメタル化率)
炉から取り出した還元処理物のニッケルメタル化率は、ICP発光分光分析装置(SHIMAZU S-8100型)を用いて測定し、下記(1)式により算出した。

ニッケルメタル化率(%)=(ペレット中のメタル化したNiの量/ペレット中の全てのNi量)×100 ・・・(1)
【0072】
(メタル中のNi含有率)
ペレット中のメタル化した有価メタルのニッケル品位は、ICP発光分光分析装置(SHIMAZU S-8100型)を用いて測定し、下記(2)式により算出した。

有価メタル中のニッケル含有率(%)=(ペレット中のメタル化したNiの量/ペレット中のメタル化したNiとFeの合計量)×100 ・・・(2)
【0073】
(有価メタルの回収工程)
還元処理物には、有価メタルとスラグが含まれている。このため、還元処理物から有価メタルを分離選別し回収するため、還元処理物を有価メタルの回収工程に供した。
この回収工程では、還元処理物を湿式処理よる粉砕処理工程に供した後、得られた粉砕物を粉砕後、磁力選別によってメタルを回収した。磁選選別は、4.5kg/分の供給速度で供給した破砕物を3000Gで磁力選別を行い、鉄などを含むスラグを磁着物として、ニッケルなどの有価成分を含む有価メタルを非磁着物として、選別し回収した。
【0074】
還元炉に装入したペレット積層体における原料の量と、原料におけるNiの含有率と、回収された有価メタル量と、から有価メタル回収率を、下記(3)式により算出した。

有価メタル回収率(%)={ 回収された有価メタル量/(装入した原料の量×酸化鉱石中の有価金属含有率) }×100(%) ・・・(3)
【0075】
(有価メタルの平均粒径)
回収した有価メタルの平均粒径は、X線CT(株式会社リガク製)を用いて測定した。
【0076】
(実験結果)
表4には、各試料(試料1~6)及び比較例における、ペレットの固相線温度(℃)、還元処理工程における還元温度(℃)、還元時間(分)、有価メタルの平均粒径(μm)、ニッケルメタル化率(%)、有価メタル中のニッケル含有率(%)及び有価メタルの回収率(%)を示す。
【0077】
【表4】
【0078】
表4の結果に示されるように、実施例である試料No.1~No.6では、固相線温度が1250℃以上1380℃以下(還元温度の1400℃以下)のペレットを用いたことにより、生成した有価メタルの平均粒径が比較例と比べて大きくなることが確認できた。しかも、その平均粒径は全て50μm以上であり、従来、ニッケル酸化鉱石の製錬方法では平均粒径が50μm以上のニッケルメタルを製造することが困難とされていた大きさよりも大きな有価メタルを製造することができることが確認できた。
また、またNiメタル化率、有価メタル中ニッケル含有率及び有価ニッケルメタル回収率も比較例と比べて向上することが確認できた。
また、表4の結果から、ペレットの固相線温度と還元温度との差が大きくなるにつれて、有価メタルの平均粒径が大きくなる傾向にあることが確認できた。さらに、ペレットの固相線温度と還元温度との差が大きくなるにつれて、ニッケルメタル化率も向上することが確認できた。
これに対して、ペレットの固相線温度が還元温度よりも高くなるように調製した比較例(試料No.7)では、全ての項目においても実施例に比べて低い値であり、とくに有価メタルの平均粒径は実施例の1/3程度と小さくなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石から有価メタルを製造する方法として適している。また、本発明のペレットの製造方法は、ニッケル酸化鉱石から有価メタルを製造する方法に用いられるペレットを製造する方法として適している。
【符号の説明】
【0080】
S1 混合物調製工程
S2 混合物成形工程
S3 還元処理工程
S4 回収工程
図1