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特開2023-176703ゴム組成物、ゴム架橋物、タイヤおよびゴム架橋物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176703
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム架橋物、タイヤおよびゴム架橋物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20231206BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231206BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20231206BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/548
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089134
(22)【出願日】2022-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】317015928
【氏名又は名称】ZSエラストマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐渡 毅
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 崇
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA18
3D131BC01
3D131BC31
4J002AC021
4J002AC061
4J002DJ016
4J002EX087
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリカの分散性に優れ、これにより製品安定性に優れ、かつ、低燃費特性および耐久性に優れたゴム架橋物を与えることができるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を含有し、振動式加硫試験機を用いてJIS K6300-2に従い測定される加硫特性指標であるtc10の値が、下記式(1)を満たすゴム組成物を提供する。
0.8分<tc10<5.0分(1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を含有し、
振動式加硫試験機を用いてJIS K6300-2に従い測定される加硫特性指標であるtc10の値が、下記式(1)を満たすゴム組成物。
0.8分 < tc10 < 5.0分 (1)
【請求項2】
前記共役ジエン系共重合体が、1,3-ブタジエン単位40~96.9重量%、イソプレン単量体単位0.1~10重量%および芳香族ビニル単量体単位3~50重量%を含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン系共重合体が、イソプレン単量体単位を80~100重量%含有するイソプレン含有ブロックを含む請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項5】
請求項4に記載のゴム架橋物を含むタイヤ。
【請求項6】
共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を混合した後、室温で1~21日間静置してゴム組成物を得る工程、および、
前記ゴム組成物を架橋させる工程を備えるゴム架橋物の製造方法。
【請求項7】
前記共役ジエン系共重合体が、1,3-ブタジエン単位40~96.9重量%、イソプレン単量体単位0.1~10重量%および芳香族ビニル単量体単位3~50重量%を含む請求項6に記載のゴム架橋物の製造方法。
【請求項8】
前記共役ジエン系共重合体が、イソプレン単量体単位を80~100重量%含有するイソプレン含有ブロックを含む請求項6または7に記載のゴム架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、ゴム架橋物、タイヤおよびゴム架橋物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車用タイヤに用いる重合体に対して、低燃費特性に優れることが求められている。共役ジエン系重合体に、充填剤としてシリカを配合したゴム組成物を用いて得られるタイヤは、従来使用されているカーボンブラックを配合したゴム組成物を用いて得られるタイヤに比べて、低発熱性が向上しているため、より低燃費特性に優れるタイヤとすることができる。
【0003】
このようなタイヤを与えるための共役ジエン系重合体に関し、特許文献1には、少なくとも一方の端がイソプレン単量体単位を70重量%以上有するイソプレンブロックであり、他方の端が活性末端である共役ジエン系重合体鎖と、エポキシ基およびヒドロカルビルオキシシリル基の少なくとも何れかを1分子中に1以上有し、エポキシ基の1分子中の数およびヒドロカルビルオキシシリル基に含まれるヒドロカルビルオキシ基の1分子中の数の合計が3以上である変性剤と、が反応することにより得られる、3以上の上記共役ジエン系重合体鎖が上記変性剤を介して結合してなる構造体を、5重量%以上含有する、共役ジエン系ゴムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/105362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の自動車用タイヤに対する要求性能の高まりを鑑みると、今後新しく開発されるゴム組成物としては、一層低発熱性に優れるとともに、耐久性にも優れるタイヤを製造できるものが望まれている。また、ゴム組成物には、シリカの分散性に優れ、これにより、製品安定性に優れていることも要求される。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリカの分散性に優れ、これにより製品安定性に優れ、かつ、低燃費特性および耐久性に優れたゴム架橋物を与えることができるゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、共役ジエン系共重合体、シリカおよび架橋剤に加えてスルフィド系シランカップリング剤を含有するとともに、加硫特性指標であるtc10の値を、特定の範囲内に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下のゴム組成物が提供される。
【0009】
[1]共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を含有し、振動式加硫試験機を用いてJIS K6300-2に従い測定される加硫特性指標であるtc10の値が、下記式(1)を満たすゴム組成物。
0.8分 < tc10 < 5.0分 (1)
【0010】
[2]前記共役ジエン系共重合体が、1,3-ブタジエン単位40~96.9重量%、イソプレン単量体単位0.1~10重量%および芳香族ビニル単量体単位3~50重量%を含む[1]に記載のゴム組成物。
[3]前記共役ジエン系共重合体が、イソプレン単量体単位を80~100重量%含有するイソプレン含有ブロックを含む[1]または[2]に記載のゴム組成物。
【0011】
また、本発明によれば、下記のゴム架橋物およびタイヤが提供される。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
[5][5]に記載のゴム架橋物を含むタイヤ。
【0012】
加えて、本発明によれば、下記のゴム架橋物の製造方法が提供される。
[6]共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を混合した後、室温で1~21日間静置してゴム組成物を得る工程、および、前記ゴム組成物を架橋させる工程を備えるゴム架橋物の製造方法。
[7]前記共役ジエン系共重合体が、1,3-ブタジエン単位40~96.9重量%、イソプレン単量体単位0.1~10重量%および芳香族ビニル単量体単位3~50重量%を含む[6]に記載のゴム架橋物の製造方法。
[8]前記共役ジエン系共重合体が、イソプレン単量体単位を80~100重量%含有するイソプレン含有ブロックを含む[6]または[7]に記載のゴム架橋物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリカの分散性に優れ、これにより製品安定性に優れ、かつ、低燃費特性および耐久性に優れたゴム架橋物を与えることができるゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を含有し、振動式加硫試験機を用いてJIS K6300-2に従い測定される加硫特性指標であるtc10の値が、下記式(1)を満たすものである。
0.8分 < tc10 < 5.0分 (1)
【0015】
本発明のゴム組成物によれば、共役ジエン系共重合体、シリカおよび架橋剤に加えてスルフィド系シランカップリング剤を含有するとともに、加硫特性指標であるtc10の値が、上記の特定された範囲内に制御されたものであることにより、シリカの優れた分散性に伴う優れた製品安定性、並びに、得られるゴム架橋物の優れた低燃費特性および耐久性を同時に達成することができるという優れた効果を奏することができる。
【0016】
[共役ジエン系重合体]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、共役ジエン系重合体を含有する。
【0017】
本発明で用いる共役ジエン系重合体は、少なくとも共役ジエン単量体単位を含有する。共役ジエン単量体単位を形成するための共役ジエン化合物としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、および1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明で用いる共役ジエン系重合体が、1,3-ブタジエン単位を含む場合における、1,3-ブタジエン単位の含有量は、特に限定されないが、25~99.9重量%であることが好ましく、40~96.9重量%であることがより好ましく、47~89.8重量%であることがさらに好ましく、53~79.8重量%であることが特に好ましい。1,3-ブタジエン単位の含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0019】
本発明で用いる共役ジエン系重合体が、イソプレン単量体単位を含む場合における、イソプレン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、0.1~15重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましく、0.2~5重量%であることがさらに好ましく、0.2~2重量%であることが特に好ましい。イソプレン単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0020】
共役ジエン系重合体における、共役ジエン単量体単位の含有量(複数の共役ジエン単量体単位を含む場合には、それらの含有量の合計)は、特に限定されないが、40~100重量%であることが好ましく、50~97重量%であることがより好ましく、52~90重量%であることがさらに好ましく、55~80重量%であることが特に好ましい。共役ジエン単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0021】
共役ジエン系重合体における、共役ジエン単量体単位中のビニル結合量は、好ましくは1~90モル%、より好ましくは10~80モル%、さらに好ましくは20~70モル%、さらにより好ましくは24~60モル%、特に好ましくは26~50モル%、最も好ましくは28~44モル%である。共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0022】
また、本発明で用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体単位に加え、芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体であることが好ましい。芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
共役ジエン系重合体における、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、0~60重量%であることが好ましく、3~50重量%であることがより好ましく、10~48重量%であることがさらに好ましく、20~45重量%であることが特に好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0024】
また、本発明で用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体単位、および必要に応じて含有される芳香族ビニル単量体単位に加え、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有してもよい。
【0025】
シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を形成するための、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、シリカに対して相互作用可能な官能基と、ビニル基を含有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、国際公開第2019/073828号に記載の化合物を用いることができる。
【0026】
ここで、シリカに対して相互作用可能な官能基とは、該官能基とシリカ表面との間で共有結合を形成するか、または、共有結合よりも弱い分子間力(たとえば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等)を形成することが可能な官能基である。このようなシリカに対して相互作用可能な官能基としては、特に限定されないが、窒素原子含有官能基、ケイ素原子含有官能基、酸素原子含有官能基などが挙げられ、これらの中でも、シリカとの相互作用が高いという観点より、ケイ素原子含有官能基が好ましい。
【0027】
共役ジエン系重合体中における、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位の含有割合は、全単量体の総量を100重量%として、好ましくは0.001~10.000重量%であり、より好ましくは0.001~3.000重量%である。
【0028】
また、共役ジエン系重合体は、上記の単量体単位以外の、その他の単量体単位を含有していてもよい。このようなその他の単量体単位を構成するその他の化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;などが挙げられる。共役ジエン系重合体中における、その他の単量体単位の含有割合は、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
共役ジエン系重合体における、各単量体単位の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができる。
【0030】
本発明で用いる共役ジエン系重合体は、イソプレン含有ブロック(A)を含むことが好ましく、共役ジエン系重合体の一方の末端にイソプレン含有ブロック(A)を含むこと、または、共役ジエン系重合体の双方の末端にイソプレン含有ブロック(A)を含むことがより好ましく、共役ジエン系重合体の少なくとも一方の末端に、イソプレン含有ブロック(A)を含むことが特に好ましい。
【0031】
イソプレン含有ブロック(A)は、イソプレン単量体単位からなる重合体ブロックでも良く、イソプレン単量体単位を含む重合体ブロックでも良い。イソプレン含有ブロック(A)における、イソプレン単量体単位の含有量は、80~100重量%であれることが好ましく、85~99重量%であることがより好ましく、88~97重量%であることがさらに好ましく、90~95重量%であることが特に好ましい。イソプレン含有ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位の含有割合が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体とシリカとの親和性を一層向上させることができ、シリカの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができるとともに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性を一層向上させることができる。
【0032】
イソプレン含有ブロック(A)における、イソプレン単量体単位中のビニル結合量は、好ましくは1~90モル%、より好ましくは3~80モル%、さらに好ましくは5~70モル%である。イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。なお、本明細書中において、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量とは、イソプレン単量体単位中の、1,2-構造を有するイソプレン単量体単位および3,4-構造を有するイソプレン単量体単位の合計量の割合を指すものとする。
【0033】
イソプレン含有ブロック(A)は、イソプレン単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位を含有することが好ましい。芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル単量体としては、上述したものが挙げられ、これらのなかでも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
イソプレン含有ブロック(A)における、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、0~20重量%であれることが好ましく、1~15重量%であることがより好ましく、3~12重量%であることがさらに好ましく、5~10重量%であることが特に好ましい。イソプレン含有ブロック(A)における芳香族ビニル単量体単位の含有割合が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0035】
イソプレン含有ブロック(A)は、イソプレン単量体単位のみからなる、もしくはイソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが特に好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、所望により、イソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外に、さらに、その他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位を構成するために用いられるその他の単量体としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、および1,3-ヘキサジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン単量体に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物単位を構成するシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物として上述したものや、その他の単量体単位を構成するその他の化合物として上述したものなどが挙げられる。これらのその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。イソプレン含有ブロック(A)中における、その他の単量体単位の含有割合は、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
イソプレン含有ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定されるポリスチレン換算の値として、500~15,000であることが好ましく、1,000~12,000であることがより好ましく、1,500~10,000であることが特に好ましい。イソプレン含有ブロック(A)の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができるとともに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性を一層向上させることができる。
【0037】
また、イソプレン含有ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.0~1.5であることが好ましく、1.0~1.3であることがより好ましい。イソプレン含有ブロック(A)の分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、共役ジエン系重合体の製造がより容易となる。
【0038】
共役ジエン系重合体がイソプレン含有ブロック(A)を含む場合において、共役ジエン系重合体は、さらに、ブタジエン含有ブロック(B)を含むことが好ましく、イソプレン含有ブロック(A)と、ブタジエン含有ブロック(B)とが一続きにして形成されたものを含むことがより好ましい。共役ジエン系重合体として、このようなブロック構造を有するものを用いることにより、共役ジエン系重合体とシリカとの親和性を一層向上させることができ、シリカの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができるとともに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性を一層向上させることができる。
【0039】
ブタジエン含有ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単位を含む重合体ブロックである。ブタジエン含有ブロック(B)における、1,3-ブタジエン単位の含有量は、特に限定されないが、30~100重量%であることが好ましく、35~95重量%であることがより好ましく、40~90重量%であることがさらに好ましく、45~80重量%であることが特に好ましく、50~70重量%であることが最も好ましい。1,3-ブタジエンの含有割合が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0040】
ブタジエン含有ブロック(B)における、1,3-ブタジエン単位中のビニル結合量は、好ましくは1~90モル%、より好ましくは3~80モル%、さらに好ましくは5~70モル%である。1,3-ブタジエン単位中のビニル結合量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0041】
ブタジエン含有ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位および/またはイソプレン単量体単位を含有することが好ましく、芳香族ビニル単量体単位を含有することが特に好ましい。芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル単量体としては、上述したものが挙げられ、これらのなかでも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ブタジエン含有ブロック(B)における、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、0~70重量%であることが好ましく、5~65重量%であることがより好ましく、10~60重量%であることがさらに好ましく、15~55重量%であることが殊更に好ましく、20~55重量%であることが特に好ましく、30~50重量%であることが最も好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0043】
ブタジエン含有ブロック(B)における、イソプレン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、0.1~10重量%であることが好ましく、1~9重量%であることがより好ましく、2~7重量%であることがさらに好ましい。イソプレン単量体単位の含有量が上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0044】
ブタジエン含有ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位のみからなるもの、または、1,3-ブタジエン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位およびイソプレン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが特に好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、所望により、1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外に、さらに、その他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位を構成するために用いられるその他の単量体としては、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、および1,3-ヘキサジエンなどの1,3-ブタジエン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β-不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和力ルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらのその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ブタジエン含有ブロック(B)中における、その他の単量体単位の含有割合は、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明で用いる共役ジエン系重合体が、イソプレン含有ブロック(A)およびブタジエン含有ブロック(B)を含む場合における、イソプレン含有ブロック(A)とブタジエン含有ブロック(B)との重量比(イソプレン含有ブロック(A)、ブタジエン含有ブロック(B)が複数存在する場合は、それぞれの合計重量を基準とした重量比)は、(イソプレン含有ブロック(A)の重量)/(ブタジエン含有ブロック(B)の重量)で、0.001~0.1であることが好ましく、0.003~0.070であることがより好ましく、0.005~0.05であることが特に好ましい。イソプレン含有ブロック(A)とブタジエン含有ブロック(B)との重量比を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、強度と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0046】
また、本発明で用いる共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体の重合体鎖の末端が変性剤によって変性されてなる変性基を含有するものが好ましい。
【0047】
変性基としては、シリカに対する親和性を一層高めることができ、シリカの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができるとともに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性を一層向上させることができるという観点より、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するものが好ましい。ここで、シリカに対して相互作用可能な官能基とは、該官能基とシリカ表面との間で共有結合を形成するか、または、共有結合よりも弱い分子間力(たとえば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等)を形成することが可能な官能基である。このようなシリカに対して相互作用可能な官能基としては、特に限定されないが、窒素原子含有官能基、ケイ素原子含有官能基、酸素原子含有官能基などが挙げられる。
【0048】
変性基を形成するための変性剤としては、シリカとの相互作用が高いという観点より、ケイ素原子含有官能基を有するケイ素原子含有変性剤、および、窒素原子含有官能基を有する窒素原子含有変性剤が好ましく、ケイ素原子含有変性剤がより好ましい。ケイ素原子含有変性剤としては、たとえば、シロキサン化合物、ヒドロカルビルオキシシラン化合物などが挙げられる。窒素原子含有変性剤としては、たとえば、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジエチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノブチルメタクリルアミド、ジエチルアミノブチルメタクリルアミドなどのN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類;[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;N-フェニル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン系化合物;があげられる。
【0049】
シロキサン化合物としては、シロキサン構造(-Si-O-)を主鎖構造として有するものであればよく、特に限定されないが、側鎖に有機基を有するオルガノシロキサンが好ましく、下記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
【化1】
【0050】
上記一般式(4)中、R~R10は、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびX12は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X10は、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、X10が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。X11は、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X11が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは0~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。
【0051】
上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、上記一般式(4)中のR~R10、XおよびX12を構成し得る炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0052】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、X10およびX12を構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0053】
さらに、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、X10およびX12を構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4~12の基としては、たとえば、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
-Z-Z-E (5)
上記一般式(5)中、Zは、炭素数1~10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2~10の炭化水素基である。
【0054】
上記一般式(5)で表される基としては、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数1~3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0055】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、XおよびX12としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基、または、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、X10としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基が好ましい。さらに、XおよびX12が炭素数1~6のアルキル基であり、X10がエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であることがより好ましい。
【0056】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X11、すなわち2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましい。
【化2】
上記一般式(6)中、aは2~20の整数であり、X13は炭素数2~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R11は水素原子またはメチル基であり、X14は炭素数1~10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、aが2~8の整数であり、X13が炭素数3のアルキレン基であり、R11が水素原子であり、かつ、X14がメトキシ基であるものが好ましい。
【0057】
上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは0~200の整数、好ましくは20~150の整数、より好ましくは30~120の整数である。mが200以下であると、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
【0058】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~120の整数である。kは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、2~400であることが好ましく、20~300であることがより好ましく、30~250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、共役ジエン系重合体の製造工程において、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンと、共役ジエン系重合体の活性末端との反応が進行し易く、さらに、m、nおよびkの合計数が400以下であると、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
【0059】
変性基を形成するための変性剤としては、窒素原子含有官能基を有する窒素原子含有変性剤を用いてもよく、たとえば、窒素原子を含有するヒドロカルビルオキシシラン化合物を用いてもよい。
【0060】
窒素原子を含有するヒドロカルビルオキシシラン化合物は、窒素原子を含有する基およびヒドロカルビルオキシ基を、それぞれ少なくとも1つ有するケイ素含有化合物であり、このような窒素原子を含有するヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、特に限定されないが、国際公開第2019/189204号に記載の化合物を用いることができる。
【0061】
本発明で用いる共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値で、好ましくは50,000~5,000,000、より好ましくは75,000~3,000,000、特に好ましくは100,000~1,000,000である。共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることにより、加工性を向上させることができるとともに、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0062】
本発明で用いる共役ジエン系重合体の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.5であることがより好ましく、1.2~2.2であることが特に好ましい。共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内であることにより、加工性を向上させることができるとともに、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0063】
本発明で用いる共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、特に限定されないが、10~200であることが好ましく、15~150であることがより好ましく、20~135であることがさらに好ましく、25~125であることが特に好ましい。ムーニー粘度が上記範囲内であることにより、加工性を向上させることができるとともに、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300-1に従い測定される。
【0064】
本発明で用いる共役ジエン系重合体は、取扱性の観点から、後述する伸展油と混合された状態で好適に用いることができる。共役ジエン系重合体を、伸展油と混合された状態で用いる場合には、伸展油と混合された共役ジエン系重合体(油展共役ジエン系重合体)のムーニー粘度(ML1+4)を、共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4)として求めることができる。この場合におけるムーニー粘度(ML1+4)の好適な範囲および測定条件は、上述したものと同様である。
【0065】
本発明のゴム組成物は、1種単独の共役ジエン系重合体を含有してもよく、2種以上の共役ジエン系重合体を含有してもよい。本発明のゴム組成物は、共役ジエン系重合体として、溶液重合スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合ゴムと、溶液重合スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合ゴム以外の他の共役ジエン系重合体とを含有することが好ましい。なお、溶液重合スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合ゴムは、スチレン,1,3-ブタジエンおよびイソプレンを含む単量体混合物を溶液重合に供することにより得られるものであればよく、特に限定されない。
【0066】
溶液重合スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合ゴム以外の他の共役ジエン系重合体としては、天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴムなどの改質天然ゴムであってもよい。)、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス-BR、低シスBRであってもよい。また、1,2-ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム、ニトリルクロロプレンゴム、およびニトリルイソプレンゴム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリブタジエンゴム、天然ゴムおよびスチレン-ブタジエン共重合ゴムが好ましく、ポリブタジエンゴムがより好ましい。
【0067】
本発明のゴム組成物中における共役ジエン系重合体の含有割合は、好ましくは10~90重量%であり、より好ましくは20~70重量%、さらに好ましくは30~50重量%である。共役ジエン系重合体の含有割合が上記範囲内であることにより、加工性を向上させることができるとともに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0068】
[共役ジエン系重合体の製造方法]
本発明で用いる共役ジエン系重合体は、たとえば、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。本発明で用いる共役ジエン系重合体は、溶液重合法により得られたものであることが好ましい。
【0069】
単量体混合物としては、共役ジエン化合物を含有するものであればよく、目的とする共役ジエン系重合体単量体組成に応じた単量体を用いればよい。
【0070】
重合に用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2-ブテン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、たとえば、1~50重量%であり、好ましくは10~40重量%となる量である。
【0071】
また、重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン系化合物を含む単量体混合物を重合させることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物などが挙げられ、具体的には、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ-t-ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ-t-ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、n-ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの2級アミン化合物と反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。有機アルカリ金属アミド化合物を重合開始剤として用いることにより、得られるゴム架橋物を、より低燃費特性および機械的強度に優れたものとすることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系重合体の分子量分布曲線に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常1~50ミリモル、好ましくは1.5~20ミリモル、より好ましくは2~15ミリモルの範囲である。
【0073】
重合温度は、通常-80~+150℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0074】
また、共役ジエン化合物を含む単量体混合物を重合するにあたり、得られる共役ジエン系重合体における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001~100モル、より好ましくは0.01~10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0075】
本発明で用いる共役ジエン系重合体は、不活性溶媒中で、イソプレンを含む単量体(a)を重合開始剤により重合し、活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)を形成させる工程と、前記活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)と1,3-ブタジエンを含む単量体(b)とを混合して重合反応を継続させ、イソプレン含有ブロック(A)およびブタジエン含有ブロック(B)とを一続きにして形成させる工程と、を備える製造方法によって製造してもよい。
【0076】
イソプレン含有ブロック(A)を形成するための単量体(a)としては、イソプレンを含有するものであればよく、形成するイソプレン含有ブロック(A)の単量体組成に応じた単量体を用いればよい。
【0077】
イソプレン含有ブロック(A)を形成するために用いられる不活性溶媒としては、上述した不活性溶媒と同じものを用いることができる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、好ましくは1~80重量%となる量であり、より好ましくは10~50重量%となる量である。
【0078】
イソプレン含有ブロック(A)を形成するために用いられる重合開始剤としては、イソプレンを含む単量体(a)を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、上述した重合開始剤と同じものを用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、イソプレンを含む単量体(a)100g当り、好ましくは4~250ミリモル、より好ましくは6~200ミリモル、特に好ましくは10~70ミリモルの範囲である。
【0079】
イソプレンを含む単量体(a)を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。また、イソプレン含有ブロック(A)を共重合体鎖とする場合の各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。
【0080】
また、イソプレン含有ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、上述した極性化合物と同じものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、0.01~30モルが好ましく、0.05~10モルがより好ましい。極性化合物の使用量が上記範囲内にあると、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、しかも、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。また、上記範囲内で極性化合物の使用量を増加させることで、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を増加させることができる。
【0081】
ブタジエン含有ブロック(B)は、上述した活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)と、を混合して重合反応を継続させることにより、イソプレン含有ブロック(A)と一続きに形成される。形成されたブタジエン含有ブロック(B)は、活性末端を有するものとなる。一方、イソプレン含有ブロック(A)からは、活性末端が消失する。
【0082】
ブタジエン含有ブロック(B)を形成するために、イソプレン含有ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)との重合に用いられる不活性溶媒としては、特に限定されず、上述した不活性溶媒と同じものを用いることができる。
【0083】
ブタジエン含有ブロック(B)を形成する際における、活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)100g当り、好ましくは0.1~5ミリモル、より好ましくは0.15~2ミリモル、さらに好ましくは0.2~1.5ミリモルの範囲である。
【0084】
イソプレン含有ブロック(A)と1,3-ブタジエンを含む単量体(b)との混合方法は、特に限定されず、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の溶液中に活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)を加えてもよいし、活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)の溶液中に1,3-ブタジエンを含む単量体(b)を加えてもよい。重合の制御の観点より、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の溶液中に活性末端を有するイソプレン含有ブロック(A)を加える方法が好ましい。
【0085】
1,3-ブタジエンを含む単量体(b)を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。ブタジエン含有ブロック(B)を共重合体鎖とする場合には、結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0086】
ブタジエン含有ブロック(B)を共重合体鎖とする場合の各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低燃費特性をより向上させることができる。
【0087】
また、本発明の一態様においては、ブタジエン含有ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、イソプレン含有ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節時と同様に、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。ただし、イソプレン含有ブロック(A)の調製時に、不活性溶媒に、ブタジエン含有ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するのに十分な量の極性化合物を添加している場合は、新たに極性化合物を添加しなくてもよい。ビニル結合含有量を調節するために用いられる極性化合物としては、上述した極性化合物と同じものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、初めの重合反応(1つ目のイソプレン含有ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.1~30mo1の範囲で調節すればよい。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0088】
このようにして、イソプレン含有ブロック(A)およびブタジエン含有ブロック(B)を有する、活性末端を有する重合体鎖を得ることができる。活性末端を有する重合体鎖は、生産性の観点より、イソプレン含有ブロック(A)-ブタジエン含有ブロック(B)で構成され、かつ、ブタジエン含有ブロック(B)の末端が活性末端であることが好ましいが、イソプレン含有ブロック(A)を複数有するものであってもよいし、その他の重合体ブロックを有するものであってもよい。たとえば、イソプレン含有ブロック(A)-ブタジエン含有ブロック(B)-イソプレン含有ブロック(A)などの、活性末端を有する重合体鎖が挙げられる。この場合には、ブタジエン含有ブロック(B)に続いて形成されたイソプレン含有ブロック(A)の末端に、活性末端が形成されることとなる。共役ジエン系重合体の活性末端側にイソプレン含有ブロック(A)を形成させる場合、イソプレンの使用量は、初めの重合反応(1つ目のイソプレン含有ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、10~100モルであることが好ましく、15~70モルであることがより好ましく、20~35モルであることが特に好ましい。
【0089】
以上のようにして、不活性溶媒中に、共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。また、このようにして得られる共役ジエン系重合体鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。
【0090】
活性末端を含む共役ジエン系重合体鎖について、カップリング剤と反応させることにより、カップリング重合体鎖を形成させてもよい。カップリング剤としては、特に限定されないが、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化スズ、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3-ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4-ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5-ビス(トリクロロシリル)ペンタン、1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサンなどが挙げられる。カップリング剤としては、目的とする共役ジエン系重合体の分子量分布曲線に応じて選択すればよいが、3官能以上のカップリング剤を用いることが好ましく、4官能以上のカップリング剤を用いることがさらに好ましい。
【0091】
カップリング剤を用いる場合には、上記の重合方法により得られた活性末端を有する重合体鎖の一部について、カップリング反応を行うことで、カップリング重合体鎖を形成させ、活性末端を有する重合体鎖と、カップリング重合体鎖とを含有する溶液を得ることが好ましい。この場合における、カップリング剤の使用量としては、特に限定されず、目的とする共役ジエン系重合体の分子量分布曲線に応じて選択すればよいが、重合開始時に使用した重合開始剤1モルに対して、カップリング剤の官能基換算で、好ましくは0.01~0.4モル、より好ましくは0.02~0.3モルである。カップリング剤の添加により、活性末端を有する重合体鎖は、活性末端においてカップリング反応し、これにより、カップリング反応した重合体鎖は、活性末端が消失することとなり、活性末端を有しないものとなる一方で、カップリング反応しなかった重合体鎖は活性末端を維持したままとなる。
【0092】
重合により得られた共役ジエン系重合体鎖に含まれる活性末端、または、カップリング反応後の共役ジエン系重合体鎖に含まれ得る活性末端に対し、変性剤を反応させることにより、共役ジエン系重合体を、変性基を有する共役ジエン系重合体とすることが好ましい。変性剤としては、本発明で用いる共役ジエン系重合体が含有し得る変性基を形成するための変性剤として上述したものを用いることができる。
【0093】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端に対し、上記した変性剤を反応させる際における、変性剤の使用量は、特に限定されないが、活性末端を有する重合体鎖の活性末端1モルに対する変性剤の量(重合開始剤として、有機アルカリ金属化合物を使用した場合には、有機アルカリ金属化合物中の金属原子1モルに対する変性剤の量)として、0.01~10.0モルであることが好ましく、0.02~5.0モルであることがより好ましく、0.05~2.0モルであることが特に好ましい。なお、変性剤としては、上述したものを用いることができるが、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0094】
また、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に対し、変性剤を反応させる方法としては、特に限定されないが、活性末端を有する重合体鎖と、変性剤とを、これらを溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系重合体の重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上記にて得られた活性末端を有する重合体鎖を、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに変性剤を添加する方法が簡便であり好ましい。なお、この際において、変性剤は、上述した重合に用いる不活性溶媒に溶解して重合系内に添加してもよく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常、0~120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分~1時間である。
【0095】
活性末端を有する重合体鎖を含有する溶液に、変性剤を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液に変性剤を添加することが望ましい。変性剤の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する重合体鎖と重合系中に含まれる不純物等との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0096】
重合により得られた共役ジエン系重合体鎖の活性末端、または、必要に応じてカップリング剤や変性剤と反応させた後に残存し得る活性末端に対して、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの重合停止剤を添加して、未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0097】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを重合溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより重合溶液から重合溶媒を分離して、共役ジエン系重合体を回収する。なお、重合溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、共役ジエン系重合体を油展共役ジエン系重合体として回収してもよい。
【0098】
共役ジエン系重合体を油展共役ジエン系重合体として回収する場合に用いる伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、植物油、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは1~100重量部、より好ましくは3~60重量部、さらに好ましくは5~40重量部である。
【0099】
[シリカ]
本発明のゴム組成物は、上述した共役ジエン系重合体に加えて、シリカを含有する。
【0100】
シリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される)は、好ましくは20~400m/g、より好ましくは50~220m/g、特に好ましくは80~200m/gである。また、シリカのpHは、5~10であることが好ましい。
【0101】
シリカとしては、たとえば、様々な市販シリカが使用できる。たとえば、PPG Industries社製の「Hi-Sil210」、「Hi-Sil233」、「Hi-Sil243LD」;Solvay社製の「Zeosil 1115MP」、「Zeosil 1165MP」、「Zeosil 165GR」;EVONIK社製の「ULTRASIL VN2」、「ULTRASIL VN3」、「ULTRASIL 7000GR」、「ULTRASIL 9100GR」;東ソー・シリカ社製の「NIPSIL VN3」、「NIPSIL AQ」、「NIPSIL ER」、「NIPSIL RS-150」;などが挙げられる。
【0102】
本発明のゴム組成物中におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは10~200重量部であり、より好ましくは20~150重量部、さらに好ましくは30~100重量部である。シリカの配合量が上記範囲内であることにより、加工性を向上させることができるとともに、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0103】
なお、共役ジエン系重合体に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形の共役ジエン系重合体に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や共役ジエン系重合体を含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0104】
本発明のゴム組成物は、シリカ以外の充填剤を含有してもよい。シリカ以外の充填剤としては、たとえば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、および、マイカなどが挙げられる。これらのなかでも、カーボンブラックが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカ以外の充填剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0105】
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックおよびグラファイトが挙げられる。チャンネルブラックとしては、たとえば、EPC、MPC、およびCCが挙げられる。ファーネスカーボンブラックとしては、たとえば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFが挙げられる。サーマルブラックとしては、たとえば、FTおよびMTが挙げられる。カーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
本発明のゴム組成物において、充填剤の合計の含有量(シリカと、シリカ以外の充填剤との、合計の含有量)に対する、シリカの含有量の割合は、特に限定されないが、30~100重量%であることが好ましく、50~100重量%であることがより好ましく、70~100重量%であることがさらに好ましく、80~100重量%であることが特に好ましい。シリカの含有量の割合が上記範囲内であることにより、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0107】
[スルフィド系シランカップリング剤]
本発明のゴム組成物は、上述した共役ジエン系重合体およびシリカに加えて、スルフィド系シランカップリング剤を含有する。
【0108】
スルフィド系シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)トリスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピル-トリエトキシシラン、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、および、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドが挙げられる。これらの中でも、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、およびビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)トリスルフィドが好ましく、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドがより好ましい。これらのスルフィド系シランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
スルフィド系シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。スルフィド系シランカップリング剤の配合量が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体とシリカとの親和性を一層向上させることができ、シリカの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができるとともに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。
【0110】
[架橋剤]
本発明のゴム組成物は、上述した共役ジエン系重合体、シリカおよびスルフィド系シランカップリング剤に加えて、架橋剤を含有する。
【0111】
架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0112】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0113】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中の共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部、特に好ましくは0.5~15重量部である。
【0114】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。プロセス油としては、石油系軟化剤、植物系軟化剤、植物油、脂肪酸を用いられ、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0115】
[ゴム組成物の加硫特性指標(tc10)]
本発明のゴム組成物は、振動式加硫試験機を用いてJIS K6300-2に従い測定される加硫特性指標であるtc10の値が、下記式(1)を満たすものである。
0.8分 < tc10 < 5.0分 (1)
【0116】
本発明のゴム組成物は、共役ジエン系共重合体、シリカおよび架橋剤に加えてスルフィド系シランカップリング剤を含有するとともに、加硫特性指標であるtc10の値が、上記の特定された範囲内となるように、加硫特性が制御されたものであることにより、シリカの優れた分散性に伴う優れた製品安定性、並びに、得られるゴム架橋物の優れた低燃費特性および優れた耐久性を同時に達成することができる。なお、ゴム組成物のtc10の値は、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0117】
本発明のゴム組成物のtc10の値は、式(1)を満たすものであればよく、特に限定されないが、0.8分 < tc10 < 4.5分を満たすことが好ましく、0.8分 < tc10 < 4.0分を満たすことがより好ましい。tc10の値が、上記範囲内であることにより、シリカの分散性、並びに、得られるゴム架橋物の低燃費特性および耐久性のバランスを一層向上させることができる。また、フィラーの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができる観点からは、0.8分 < tc10 < 3.5分を満たすことが好ましく、0.8分 < tc10 < 3.0分を満たすことがより好ましく、一方で、得られるゴム架橋物の耐久性を一層向上させることができる観点からは、1.0分 < tc10 < 4.0分を満たすことが好ましく、1.5分 < tc10 < 3.8分を満たすことがより好ましく、2.0分 < tc10 < 3.5分を満たすことがさらに好ましい。ゴム組成物のtc10の値は、たとえば、後述するゴム組成物の好適な製造方法において、静置前ゴム組成物を静置してゴム組成物を製造する際における静置期間を調整することにより調整することができる。
【0118】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物は、好適には、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、架橋剤、および、必要に応じて用いられる各種の配合剤を混合した後、室温(20~30℃)で1~21日間静置する製造方法により製造することができる。室温(20~30℃)で1~21日間静置することにより、ゴム組成物が、上述した各成分を含有するとともに、加硫特性指標であるtc10の値が、上記の特定された範囲内となるように、加硫特性が制御されたものとなる。
【0119】
共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、架橋剤、および、必要に応じて用いられる各種の配合剤を混合する際には、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分、具体的には、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤などの各成分を混練した後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合することが好ましい。熱に不安定な成分を除いた各成分を混練する際の混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは110~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒~30分である。また、その混練物と、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分との混合は、通常、60℃以下まで冷却した後に行われる。
【0120】
なお、上記各成分を混練する場合には、ミキサーの温度を所定の温度に設定した場合でも、混練により発生する摩擦力等により、混練物の温度上昇が発生する場合が多い。そのため、本発明においては、このように混練により発生する摩擦力等による温度上昇を加味した上で、混練物の温度が一定なものとなるように、ミキサーの回転数等を調整することにより、混練時の温度を上記範囲に制御することが望ましい。
【0121】
上記のようにして、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、架橋剤、および、必要に応じて用いられる各種の配合剤を混合してなる静置前ゴム組成物を得ることができる。そして、静置前ゴム組成物を得てから、室温(20~30℃)での静置を開始し、室温(20~30℃)での静置を1~21日間継続することにより、本発明のゴム組成物を好適に製造することができる。
【0122】
なお、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分を混練した後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合する際において、後者の混合を、室温よりも高い温度で行う場合には、混合後、1時間以内程度の短時間で室温まで冷却した後、静置前ゴム組成物の室温(20~30℃)での静置を開始する。室温(20~30℃)での静置期間は、1~21日間であればよく、特に限定されないが、フィラーの分散性を一層向上させることができ、これにより製品安定性を一層向上させることができる観点からは、1~18日間であることが好ましく、1~14日間であることがより好ましく、1~10日間であることがさらに好ましく、1~7日間であることが特に好ましく、一方で、得られるゴム架橋物の耐久性を一層向上させることができる観点からは、2~20日間であることが好ましく、3~19日間であることがより好ましく、4~18日間であることがさらに好ましい。
【0123】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム組成物を架橋することにより、本発明のゴム架橋物を得ることができる。本発明のゴム組成物は、好適には、後述する本発明のゴム架橋物の製造方法により製造することができる。
【0124】
本発明のゴム架橋物の製造方法は、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を混合した後、室温で1~21日間静置してゴム組成物を得る工程、および、前記ゴム組成物を架橋させる工程を備える。
【0125】
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0126】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0127】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0128】
<ゴム架橋物の製造方法>
本発明は、ゴム架橋物の製造方法にも関する。
【0129】
本発明のゴム架橋物の製造方法は、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を混合した後、室温で1~21日間静置してゴム組成物を得る工程、および前記ゴム組成物を架橋させる工程を備える。
【0130】
共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を混合した後、室温で1~21日間静置してゴム組成物を得る方法としては、上述した方法を用いることができる。具体的には、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分を混練し、さらに、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合し、必要に応じて短時間で冷却して、静置前ゴム組成物を得た後、静置前ゴム組成物を室温で1~21日間静置する方法が好ましい。
【0131】
また、ゴム組成物を架橋させる方法としては、上述した方法を用いることができる。具体的には、ゴム組成物を用いて、所望の形状に対応した成形機により成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化する方法が好ましい。
【0132】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を用いて得られるものであるため、低燃費特性および耐久性に優れるものである。そのため、本発明のゴム架橋物は、その優れた特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、低燃費特性および耐久性に優れることから、タイヤの材料に好適である。
【実施例0133】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0134】
〔共役ジエン系重合体の重量平均分子量、カップリング率〕
共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC-8320」)
カラム:東ソー社製ポリスチレン系カラム、商品名「GMH-HR-H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折率(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
なお、カップリング率は、上記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより得られた溶出曲線において、最も小さいピークトップ分子量(カップリング反応前の重合体鎖に対応するピークトップ分子量)を有するピークを特定した後、当該ピークのピークトップ分子量の1.5倍以上のピークトップ分子量(カップリング重合体に対応するピークトップ分子量)を有する部分の溶出面積を求め、これを全溶出面積で除し、百分率に変換することにより求めた。
【0135】
〔共役ジエン系重合体の芳香族ビニル単量体単位含有量、ビニル結合含有量〕
共役ジエン系重合体の芳香族ビニル単量体単位含有量、およびビニル結合含有量は、H-NMRにより測定した。
【0136】
〔油展共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)〕
油展共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300-1に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0137】
〔tc10〕
JIS K6300-2に従い、振動式加硫試験機(ALPHA TECHNOLOGIES社製)を用いて、測定温度160℃、測定時間60分、振動数毎分100回、振幅角±1°の条件にて、加硫特性指標であるtc10(単位:分)を測定した。
【0138】
〔(MH-ML)指数〕
ISO6502に従い、振動式加硫試験機(ALPHA TECHNOLOGIES社製)を用いて、測定温度160℃、測定時間60分、振動数毎分100回、振幅角±1°の条件にて、加硫特性指標であるMH-MLを測定した。各実施例・比較例におけるMH-MLについて、比較例2におけるMH-MLを100とする指数を算出し、(MH-ML)指数の値とした。(MH-ML)指数の値が大きいほど、架橋密度が高く、耐久性に優れるゴム架橋物を与えることができることを意味する。
【0139】
〔ゴム架橋物の60℃tanδ指数〕
厚さ2mmのゴム架橋物シートを、幅4mm、長さ40mmの短冊状に打ち抜き、試験片を得た。得られた試験片について、粘弾性測定装置(上島製作所社製)を用いて、周波数10Hz、初期伸張10%、歪振幅2%および温度60℃の条件で、損失正接(tanδ(60℃))を測定した。各実施例・比較例における損失正接(tanδ(60℃))について、比較例2における損失正接(tanδ(60℃))を100とする指数を算出し、低燃費特性の値とした。低燃費特性の値が大きいほど、得られるゴム架橋物が低燃費特性に優れることを意味する。
【0140】
〔ペイン効果指数〕
未架橋ゴム組成物を加工し、3cm四方かつ約6gの試験片を作製した。試験片を100℃にて4分間予熱した後、PREMIER RPA(ALPHA TECHNOLOGIES社製)を用いて、温度40℃、周波数10Hzの条件下で、動的歪0.7%および42%における貯蔵弾性率G‘を測定した。動的歪0.7%における貯蔵弾性率G‘と、動的歪42%における貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値を算出した。比較例2における貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値を、各実施例・比較例における貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値で除して、100倍した値を算出し、各実施例・比較例におけるペイン効果指数の値とした。なお、貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値と、ペイン効果指数の値とは反比例し、貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値が比較例2における値と同値の場合、ペイン効果指数の値は100となり、貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値が小さいほど、ペイン効果指数の値は大きくなり、貯蔵弾性率G‘の差(ΔG’)の絶対値が大きいほど、ペイン効果指数の値は小さくなる。ペイン効果指数の値が大きいほど、未架橋のゴム組成物に含まれるフィラーの分散状態が良好であり、それにより製品安定性に優れることを意味する。
【0141】
〔活性末端を有する重合体ブロック(A)の調製〕
窒素置換された800ml容器に、シクロヘキサン140.8g、およびテトラメチルエチレンジアミン3.0mmolを添加し、さらに、ノルマルブチルリチウム30.0mmolを添加した。次いで、イソプレン113.6g、およびスチレン9.2gをゆっくりと添加し、50℃の容器内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を含む重合溶液を得た。得られた重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は6,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.5%、イソプレン単量体単位含有量は92.5%、およびビニル結合含有量は7.0%であった。
【0142】
(製造例1[油展共役ジエン系重合体P1])
内容積20Lの攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、工業用ヘキサン7,956g、シクロヘキサン1,014g、テトラメチルエチレンジアミン4.25mmol、1,3-ブタジエン408g、およびスチレン680gを仕込んだ。重合の失活に作用する不純物を予め無毒化させるため、スカベンジャーとして少量のノルマルブチルリチウムをオートクレーブに加えた後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロック(A)をリチウム原子含有量に換算して7.08mmol加え、50℃で重合成長反応させた。20分間重合反応を継続したのちに、1,3-ブタジエン612gを80分かけて連続的に添加した。その後重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基の含有量が3.19mmolとなるように添加し、20分間反応させた。その後、重合停止剤として、オートクレーブ内のリチウム総量に対して2当量のメタノールを添加して、共役ジエン系重合体を含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノールを、共役ジエン系重合体100部に対して0.20部添加して、共役ジエン系重合体P1を含む重合溶液を得た。得られた共役ジエン系重合体P1について、上記の方法に従い測定したところ、重量平均分子量(Mw)は724,000、カップリング率は50.7%、スチレン単位含有量は40.7重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は29.1モル%であった。
【0143】
次いで、共役ジエン系重合体P1を含む重合溶液に伸展油としてプロセス油(ENEOS社製、商品名:アロマックスT-DAE)を、共役ジエン系重合体100部に対して10部添加して攪拌し、得られた重合溶液の揮発分の大部分を常温、24時間で蒸発させ、さらに、55℃で12時間減圧乾燥することで、油展共役ジエン系重合体P1を得た。得られた油展共役ジエン系重合体P1について、上記の方法に従い測定したところ、油展共役ジエン系重合体P1のムーニー粘度は117(ML1+4,100℃)であった。
【0144】
【化3】
【0145】
(製造例2[油展共役ジエン系重合体P2])
内容積20Lの攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、工業用ヘキサン7,956g、シクロヘキサン1,014g、テトラメチルエチレンジアミン4.80mmol、1,3-ブタジエン408g、およびスチレン680gを仕込んだ。重合の失活に作用する不純物を予め無毒化させるため、スカベンジャーとして少量のノルマルブチルリチウムをオートクレーブに加えた後、ノルマルブチルリチウム6.67mmol加え、50℃で重合開始反応させた。20分間重合反応を継続したのちに、1,3-ブタジエン612gを80分かけて連続的に添加した。その後重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基の含有量が3.20mmolとなるように添加し、20分間反応させた。その後、重合停止剤として、オートクレーブ内のリチウム総量に対して2当量のメタノールを添加して、共役ジエン系重合体P2を含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノールを、共役ジエン系重合体100部に対して0.20部添加して、共役ジエン系重合体P2を含む重合溶液を得た。得られた共役ジエン系重合体P2について、上記の方法に従い測定したところ、重量平均分子量(Mw)は728,000、カップリング率は53.0%、スチレン単位含有量は41.3重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は28.5モル%であった。
【0146】
次いで、共役ジエン系重合体P2を含む重合溶液に伸展油としてT-DAEを、共役ジエン系重合体100部に対して10部添加して攪拌し、得られた重合溶液の揮発分の大部分を常温、24時間で蒸発させ、さらに、55℃で12時間減圧乾燥することで、油展共役ジエン系重合体P2を得た。得られた油展共役ジエン系重合体P2について、上記の方法に従い測定したところ、油展共役ジエン系重合体P2のムーニー粘度は116(ML1+4,100℃)であった。
【0147】
(実施例1)
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容量600mlのブラベンダータイプミキサー中で、油展共役ジエン系重合体P1を88重量部(ゴム成分としては80重量部)と、ポリブタジエンゴム(日本ゼオン社製、商品名:Nipol BR1220)20重量部とを30秒素練りし、次いでシリカ(Evonik社製、商品名:ULTRASIL 7000GR)80重量部と、プロセス油(ENEOS社製、商品名:アロマックスT-DAE)を22.0重量部と、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(スルフィド系シランカップリング剤、Evonik社製、商品名:Si69)を6.4重量部と、カーボンブラック(キャボットジャパン社製、商品名:N339)を5.0重量部と、酸化亜鉛(正同化学工業社製、商品名:酸化亜鉛 2種)を3.0重量部と、ステアリン酸(新日本理化社製、商品名:ステアリン酸 50S)を2.0重量部と、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名:ノクラック6C)を2.0重量部とを添加し、さらに4.5分間混練し、一次混練後の共役ジエン系重合体組成物をラボプラストミルから放出した。該組成物放出時のラボプラストミルの指示温度は160℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、二次混練後の混錬物をラボプラストミルから放出した。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄(鶴見化学工業社製、商品名:金華印微粉硫黄 200mesh)1.7重量部と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラー CZ-G)を1.8重量部と、1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラーD)1.7重量部とを加えて、これらを50℃に設定されたオープンロールで混練し、シート状にして室温に冷ますことで静置前のゴム組成物を得た。この静置前のゴム組成物を室温で1日経過させることで、ゴム組成物を得た後に、tc10、(MH-ML)指数およびペイン効果指数の測定および評価を行った。また、得られたゴム組成物を160℃で10分間プレス架橋することで、ゴム架橋物の試験片を作製した。この試験片を用いて、60tanδ指数の評価を行なった。評価した結果を表1に示す。
【0148】
(実施例2)
実施例1の静置前のゴム組成物を、室温で1日経過させる代わりに、室温で7日経過させる以外は同様にして、ゴム架橋物を得た。評価した結果を表1に示す。
【0149】
(実施例3)
実施例1の静置前のゴム組成物を、室温で1日経過させる代わりに、室温で14日経過させる以外は同様にして、ゴム架橋物を得た。評価した結果を表1に示す。
【0150】
(比較例1)
実施例1の静置前のゴム組成物を、室温で1日経過させる代わりに、室温で0日経過させる以外は同様にして(すなわち、室温での静置を行わずに、速やかに次の操作を行うことで)、ゴム架橋物を得た。評価した結果を表1に示す。
【0151】
(比較例2)
実施例1の油展共役ジエン系重合体P1の代わりに、油展共役ジエン系重合体P2を用いた以外は同様にして、ゴム架橋物を得た。評価した結果を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1に示すように、共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を含有し、tc10の値が、上記式(1)を満たすゴム組成物は、シリカの分散性に優れ、これにより製品安定性に優れ、かつ、低燃費特性および耐久性に優れたゴム架橋物を与えることができるものであった(実施例1~3)。
【0154】
一方、tc10の値が小さすぎる場合には、得られるゴム架橋物の耐久性に劣る結果となり、さらに、シリカの分散性や低燃費特性に劣る結果となる場合もあった(比較例1~2)。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を含有し、
前記共役ジエン系共重合体が、1,3-ブタジエン単位40~96.9重量%、イソプレン単量体単位0.1~10重量%および芳香族ビニル単量体単位3~50重量%を含み、
振動式加硫試験機を用いてJIS K6300-2に従い測定される加硫特性指標であるtc10の値が、下記式(1)を満たすゴム組成物。
0.8分 < tc10 < 5.0分 (1)
【請求項2】
前記共役ジエン系共重合体が、イソプレン単量体単位を80~100重量%含有するイソプレン含有ブロックを含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項4】
請求項に記載のゴム架橋物を含むタイヤ。
【請求項5】
共役ジエン系共重合体、シリカ、スルフィド系シランカップリング剤、および架橋剤を混合した後、室温で1~21日間静置してゴム組成物を得る工程、および、
前記ゴム組成物を架橋させる工程を備えるゴム架橋物の製造方法。
【請求項6】
前記共役ジエン系共重合体が、1,3-ブタジエン単位40~96.9重量%、イソプレン単量体単位0.1~10重量%および芳香族ビニル単量体単位3~50重量%を含む請求項に記載のゴム架橋物の製造方法。
【請求項7】
前記共役ジエン系共重合体が、イソプレン単量体単位を80~100重量%含有するイソプレン含有ブロックを含む請求項またはに記載のゴム架橋物の製造方法。