(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176733
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ガス化燃焼炉の排ガスの処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 47/02 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B01D47/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089168
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】岡村 博春
(72)【発明者】
【氏名】武田 翼
【テーマコード(参考)】
4D032
【Fターム(参考)】
4D032AA11
4D032BA05
4D032CA01
(57)【要約】
【課題】AWSを使用した排ガスの処理において、除塵率の急激な変化を抑制し、効率よく除塵する処理方法及び処理装置を提供すること。
【解決手段】ガス化燃焼炉の排ガスを順に冷却塔、アトマイジングウェットスクラバー(AWS)、及びミストコットレルに通過させてばいじんを捕集する処理方法であって、複数基のAWSを並列に設置し、それぞれのAWSに排ガスが通過可能となるように構成し、前記複数基のAWSのうち少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第1風量以上となるように、他のAWSにおける排ガスの通過風量を調整することを含み、前記少なくとも1基のAWSの除塵率は、当該AWSにおける排ガスの通過風量が前記所定の第1風量以上となるとき、55%以上である、排ガスの処理方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化燃焼炉の排ガスを順に冷却塔、アトマイジングウェットスクラバー(AWS)、及びミストコットレルに通過させてばいじんを捕集する処理方法であって、
複数基のAWSを並列に設置し、それぞれのAWSに排ガスが通過可能となるように構成し、
前記複数基のAWSのうち少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第1風量以上となるように、他のAWSにおける排ガスの通過風量を調整することを含み、
前記少なくとも1基のAWSの除塵率は、当該AWSにおける排ガスの通過風量が前記所定の第1風量以上となるとき、55%以上である、排ガスの処理方法。
【請求項2】
前記他のAWSにおける排ガスの通過風量の調整は、調整弁により実施される、請求項1に記載の排ガスの処理方法。
【請求項3】
前記少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第2風量を超えると、前記他のAWSにおける排ガスの通過風量を増加させ、前記少なくとも1基のAWSに設計風量の85%以上の排ガスを通過させつつ、前記他のAWSにも排ガスを通過させて除塵をする、請求項1又は2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項4】
それぞれのAWSにおける排ガスの通過風量の測定は、当該AWSの入口及び出口における排ガスの差圧、又は排ガスの流量に基づき実施される、請求項1又は2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項5】
冷却塔、アトマイジングウェットスクラバー(AWS)、及びミストコットレルを含む排ガスの処理装置であって、
複数基のAWSを並列に設置し、それぞれのAWSに排ガスが通過可能となるように構成し、
前記複数基のAWSのうち少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第1風量以上となるように、他のAWSにおける排ガスの通過風量を調整できるように構成し、
前記少なくとも1基のAWSの除塵率は、当該AWSにおける排ガスの通過風量が前記所定の第1風量以上となるとき、55%以上である、排ガスの処理装置。
【請求項6】
前記他のAWSにおける排ガスの通過風量の調整は、調整弁により実施される、請求項5に記載の排ガスの処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化燃焼炉の排ガスの処理方法及び処理装置に関する。とりわけ、本発明は、ガス化燃焼炉からの排ガスに対して、湿式排ガス処理設備によりばいじんを捕集することを含む処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属類スクラップや電子・電気製品の部品屑などのリサイクル原料、シュレッダーダスト、廃プラスチック類、木くず、紙くず、ゴムくず、繊維くず、動植物性残渣、廃酸、廃アルカリ、廃油、汚泥などの産業廃棄物は、ロータリキルン炉やストーカ炉などのガス化燃焼炉により焼却する処理が従来から行われている。燃焼により発生する排ガスには、ばいじんが含まれるため、大気中に放出する前に、ばいじんを除去する必要がある。
【0003】
排ガスに含まれるばいじんを捕集する設備として、湿式排ガス処理設備がある。湿式排ガス処理設備は、ばいじんを含む排ガスを水と接触させて、ばいじんを水に捕集させる。これにより、湿式排ガス処理設備から出る排ガスに含まれるばいじんの濃度が低下する。湿式排ガス処理設備は例えばアトマイジングウェットスクラバー(以下、単に「AWS」と記載することがある。)などのスクラバー、湿式電気集塵機などがある。
【0004】
AWSは、排ガスを装置内のスロートを高速で通過させ、水を巻き上げ、内部の壁面に激しく衝突させることで、スクラビング部で渦流となり、きわめて効果的な気液混合が発生し、粉塵が水に捕集される装置である。洗浄された排ガスは、水切り板によって、水を分離し、排気される。一方、捕集され浮遊している粉塵はオーバーフローから排出され、沈降する粉塵はホッパー下部から排出される。
【0005】
AWSを使用した従来技術として、例えば、特許文献1(特開2019-030835号公報)に記載されるように、第1の粒子回収機構としてAWSを使用し、第2の粒子回収機構としてミストセパレータを使用して、フィルタを使用せずに、気体中に含有される粒径10μm以下の微粒子、粒径10μm~100μmの中間粒子及び100μm以上の粗粒子からなる粒子群を気体から分離して回収することができる粒子回収方法が開示されている。
【0006】
また、排ガス中に浮遊する微細な粒子や液体のミストなどを静電気力を利用して除去する装置として、ミストコットレル(以下、単に「MC」と記載することがある。)が知られている。ミストコットレルは、湿式電気集塵機として、吸引口から入った排ガスが電気集塵部を通る際、ダストにマイナスの電子が付与され、それによってダストはプラスの電気を持つ集塵極に引き寄せられ、空気から分離し、きれいな排ガスが排出される装置である。運転後、集塵極にシャワーを噴霧することで集められたダストが洗浄・除去される。
【0007】
ミストコットレルを使用した従来技術として、例えば、特許文献2(特開2010-236718号公報)には、ミストコットレルでの洗浄液を排水処理した中和滓から回収したダストをスラリー化して、溶融炉内に吹き込むことを特徴とするガス化溶融炉の操業方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-030835号公報
【特許文献2】特開2010-236718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
AWSを使用した排ガスの処理工程として、排ガスを順に冷却塔、ウェットスクラバー、ミストコットレルに通過させて、排出する手法が考えられる。しかしながら、AWSについては、排ガスの通過風量が所定の値を下回ると、効果的な気液混合が発生せずに、除塵率が悪化することが知られている。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、AWSを使用した排ガスの処理において、除塵率の急激な変化を抑制し、効率よく除塵する処理方法及び処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、AWSを複数基使用して、その中の少なくとも1基における排ガスの通過風量が設計風量の例えば85%以上となるように、他のAWSの風量を調整することにより、AWSを1基のみ使用する場合と比較して、排ガス流量の変化による除塵率の急激な変化を抑制することができることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下に例示される。
【0012】
[1]
ガス化燃焼炉の排ガスを順に冷却塔、アトマイジングウェットスクラバー(AWS)、及びミストコットレルに通過させてばいじんを捕集する処理方法であって、
複数基のAWSを並列に設置し、それぞれのAWSに排ガスが通過可能となるように構成し、
前記複数基のAWSのうち少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第1風量以上となるように、他のAWSにおける排ガスの通過風量を調整することを含み、
前記少なくとも1基のAWSの除塵率は、当該AWSにおける排ガスの通過風量が前記所定の第1風量以上となるとき、55%以上である、排ガスの処理方法。
[2]
前記他のAWSにおける排ガスの通過風量の調整は、調整弁により実施される、[1]に記載の排ガスの処理方法。
[3]
前記少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第2風量を超えると、前記他のAWSにおける排ガスの通過風量を増加させ、前記少なくとも1基のAWSに設計風量の85%以上の排ガスを通過させつつ、前記他のAWSにも排ガスを通過させて除塵をする、[1]又は[2]に記載の排ガスの処理方法。
[4]
それぞれのAWSにおける排ガスの通過風量の測定は、当該AWSの入口及び出口における排ガスの差圧、又は排ガスの流量に基づき実施される、[1]~[3]のいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
[5]
冷却塔、アトマイジングウェットスクラバー(AWS)、及びミストコットレルを含む排ガスの処理装置であって、
複数基のAWSを並列に設置し、それぞれのAWSに排ガスが通過可能となるように構成し、
前記複数基のAWSのうち少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第1風量以上となるように、他のAWSにおける排ガスの通過風量を調整できるように構成し、
前記少なくとも1基のAWSの除塵率は、当該AWSにおける排ガスの通過風量が前記所定の第1風量以上となるとき、55%以上である、排ガスの処理装置。
[6]
前記他のAWSにおける排ガスの通過風量の調整は、調整弁により実施される、[5]に記載の排ガスの処理装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、AWSを使用した排ガスの処理において、除塵率の急激な変化を抑制し、効率よく除塵する処理方法及び処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は従来の排ガスの処理方法のフローの一例を示す。
【
図2】
図2は従来の排ガスの処理方法の処理装置出口の除塵率を模式的に示す。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態において、AWSにおける排ガスの通過風量の調整を実施するフローの一例を示す。
【
図4】
図4は本発明である排ガスの処理方法を用いる場合の処理装置出口の除塵率を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
ガス化燃焼炉の排ガス中のばいじんを捕集する処理方法及び処理装置において、冷却塔、アトマイジングウェットスクラバー(AWS)、及びミストコットレルに排ガスを順に通過させて、排ガス中のダストを除塵する手法が考えられる。除塵する役割は、主にAWSとミストコットレルにより果たされる。
【0017】
AWSは、排ガスの通過風量が一定以上で吹き込まれると、水がアトマイズ化し、ダストをトラップすることにより除塵する装置である。逆に、通過風量が一定以下になると、アトマイジングが発生しなくなり、除塵率が急激に悪化する。排ガスの通過風量は、燃焼設備の操業、即ち、原料の処理量や物性により変動し、例えば、排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%未満の場合には、急にアトマイジングが発生しなくなり、除塵率が急激に悪化することとなる。具体的には、排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%未満の場合、除塵率が70%から15%に急激に悪化する場合があることが実際のAWSの操業実績から確認されている。
【0018】
一方、通過風量が設計風量の110%以上になると、ダスト濃度の濃い液が後段の設備に飛沫し、ガス道の閉塞などのトラブルとなる場合がある。そのため、除塵率を維持するために単純に設計風量の小さいAWSを使用する手法は採り得ない。
【0019】
そこで、本発明は、複数基のAWSを並列に設置し、それぞれのAWSに排ガスの一部又は全部が通過可能となるように構成し、複数基のAWSのうち少なくとも1基のAWSにおける排ガスの通過風量が、所定の第1風量以上となるように、他のAWSにおける排ガスの通過風量を調整する手法を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態として、2基のAWSを採用し、かつ、冷却塔後の排ガス量が、原料条件によって、それぞれの設計風量の1倍~2倍程度の範囲で変動すると想定される例を用いて説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0021】
図1に、従来の排ガスの処理方法のフローの一例を示す。この例では、設計風量が等しい2基のAWSで排ガスの処理を同時に行い、それぞれのAWSにおける排ガスの通過風量を個別に制御せず、2基のAWSに等しい風量の排ガスを通過させる場合を想定している。また、この例では、上記のAWSの操業実績に従い、AWSの除塵率が、排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%以上の場合に70%となり、排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%未満の場合に15%に急激に低下すると仮定している。
【0022】
図2の上のグラフは、AWS風量に対するAWSとMCの除塵率の変化を示す。AWSの除塵率は、2基のAWSを合わせた全体の除塵率を示している。また、横軸は、2基のAWSの設計風量の合計に対する、2基のAWSを通過する合計の通過風量で示している。なお、本明細書では、複数基のAWSで排ガスの処理を行う場合の当該複数基のAWSを通過する合計の通過風量をAWS風量と称す。
【0023】
MCの除塵率は、AWS風量が増すにつれて徐々に低下する。一方、AWSの除塵率は、AWS風量が2基のAWSの設計風量の合計の85%以上となるときに70%であるのに対し、AWS風量が2基のAWSの設計風量の合計の85%未満では15%と急激に悪化する。
図1のフローでは、2基のAWSに等しい風量の排ガスを通過させている。このため、AWS風量が2基のAWSの設計風量の合計の85%以上とならなければ、それぞれのAWSにおいて排ガスの通過風量が当該AWSの設計風量の85%以上とならず、2基のAWSの両方が有効に稼働しない。
図2に示す除塵率の値は上記の仮定をもとにした一例であるが、一般的に、MCの除塵率は、排ガスの通過風量が増すにつれて徐々に低下するのに対し、AWSの除塵率は、排ガスの通過風量が所定の風量を下回ると急激に低下する。
【0024】
図2の下のグラフは、AWSとMCの合計除塵率を示す。AWSとMCの合計除塵率は、AWS風量の変動範囲の中央付近で最も低くなる。その結果、
図2の下のグラフに示す通り、AWS風量の変動範囲の中央付近で排ガス処理装置全体の合計除塵率が最も低くなり、排ガス処理装置の出口のばいじん濃度が基準値(基準値は、法令によるものと、自社基準によるものが考えられる。)をオーバーするリスクが高くなってしまう(
図2の下のグラフの丸で囲まれる部分)。なお、変動範囲の中央付近は、操業頻度としては最も多い範囲である。
【0025】
そこで、
図3に示すように、2基のAWSのいずれか1基に風量調節機構を設置し、当該AWSにおける排ガスの通過風量を調整することにより、もう一方のAWSにおける排ガスの通過風量が所定の第1風量以上となるように稼働させる。風量調節機構は、調整弁(例えば自動調整弁)であり得る。所定の第1風量は、当該AWSの除塵率が55%以上となるように設定される。当該所定の第1風量は、当該AWSの除塵率が60%以上、又は65%以上、又は70%以上となるように設定してもよい。この所定の第1風量は、装置全体の合計除塵率、又は排ガスの処理装置の出口のばいじん濃度の目標値に基づき、設定することができる。排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%未満の場合にAWSの除塵率が55%以上(例えば70%)から急激に低下する場合、第1風量は、AWSの設計風量の85%としてもよい。ここでは、説明の便宜上、風量調節機構を有するAWSをAWS1と称し、風量調節機構を有さないAWSをAWS2と称す。本実施形態でも、AWSの除塵率が、排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%以上の場合に70%となり、排ガスの通過風量がAWSの設計風量の85%未満の場合に15%に急激に低下すると仮定する。また、本実施形態において、第1風量はAWS2の設計風量の85%であるとして、以下説明する。
【0026】
なお、除塵率は、以下の式により計算される。
除塵率=(単位時間あたりのAWS通過前のばいじん量-単位時間あたりのAWS通過後のばいじん量)/単位時間あたりのAWS通過前のばいじん量
ばいじん量は、排ガスの乾きガス量と、当該排ガスのばいじん濃度との積として求められる。ばいじん濃度は、JISZ8808:2013に従って測定することが可能である。
【0027】
2基のAWSについて、排ガスの差圧や流量を測定し、所定の差圧や流量を超えると、AWS1の風量調節機構を開いて排ガスを処理することができる。具体的には、AWS2風量が所定の第2風量(例えば、設計風量の100%、105%、又は110%など)を下回るとき、AWS1の風量調節機構を用いてAWS1の排ガスの通過を遮断し、AWS1を完全に閉鎖する。一方、排ガスの流量の増加によってAWS2風量が上記所定の第2風量を超えると、AWS1の風量調節機構を用いてAWS1に流れる風量を調整し、AWS2にAWS2の設計風量の85%以上の排ガスを通過させつつ、残りの風量の排ガスをAWS1にも通過させる。
【0028】
本実施形態において、AWS2に風量調節機構を設けていないが、本発明の他の実施形態では、AWS2において風量調節機構を設けてもよい。また、それぞれのAWSにおける排ガスの通過風量の測定は、当該AWSの入口及び出口における排ガスの差圧、又は排ガスの流量に基づき実施することができる。AWSの入口及び出口における排ガスの差圧により通過風量を求める場合、まずは流量計(例えばピトー管式の風量計)を使用して通過風量を実測するとともに差圧を記録し、差圧と通過風量の関係を特定することで、差圧の実測値から通過風量を求めることができる。なお、排ガスの差圧又は流量は、任意の差圧計又は流量計により測定できる。
【0029】
図1の従来のフローでは、2基のAWSに等しい風量の排ガスを通過させたため、AWS風量が2基のAWSの設計風量の合計の85%以上とならなければ、2基のAWSの両方が有効に稼働しなかった。一方、本実施形態では、AWS2にAWS2の設計風量の85%以上の排ガスを通過させつつ、残りの風量の排ガスをAWS1に通過させている。このため、AWS風量が2基のAWSの設計風量の合計の85%未満であったとしても、AWS2の設計風量の85%以上であれば、AWS2を70%の除塵率で稼働させることができる。
【0030】
図4の上のグラフは、本実施の形態におけるAWS風量に対するAWSとMCの除塵率の変化を示す。
図2と同様、AWSの除塵率は、2基のAWSを合わせた全体の除塵率を示している。
【0031】
図4の上のグラフに示すAWS風量の範囲では、AWS風量がAWS2の設計風量の85%以上であり、AWS2にはAWS2の設計風量の85%以上の排ガスが通過し、残りの風量の排ガスがAWS1を通過している。AWS1の通過風量がAWS1の設計風量の85%未満である間はAWS1の除塵率は15%なので、出口のばいじん濃度は悪化するが、AWS2は70%の除塵率で稼働するので、AWS全体の除塵率の低下は従来の排ガスの処理方法より緩和される。その結果、処理装置全体の合計除塵率の低下が緩やかになり、排ガス処理装置の出口のばいじん濃度が基準値をオーバーするリスクが低下する(
図4の下のグラフの丸で囲まれる部分)。
【0032】
そして、排ガスの風量がさらに変動して増加し、風量調節機構を有するAWS1の通過風量が設計風量の85%以上になると、両方のAWSにおける除塵率が70%に達するため、AWS全体の除塵率がさらに増加し、その結果、処理装置出口のばいじん濃度がさらに低下する。
【0033】
なお、本実施形態では2基のAWSが使用されるが、より多くのAWSを使用する場合でも、本発明は有効である。
【0034】
2台を超える複数のAWSを使用する場合、前述の実施形態と同様に、1基以外のすべてのAWSに風量調節機構を設置する。そして、風量調節機構を有さないAWSから排ガスを通過させ、当該AWSにおける排ガスの風量が増加し、所定の差圧又は流量を超えた場合には、風量調節機構を有するAWSのうちいずれか1つ以上のAWSの風量調節機構を調整して、風量調節機構を有するAWSの通過風量を増加させる。ただし、風量調節機構を有さないAWSの通過風量がAWSの設計風量の85%以上を維持できるように他のAWSにおける通過風量を調整する。ここまでは、2基の場合と同じである。3基以上の場合は、先に通過風量を増加させたAWS(2基目のAWS)における差圧又は流量が所定の値になるまでは、次のAWS(3基目のAWS)に排ガスを通過させず、差圧又は流量が所定の値を超えたとき、次のAWS(3基目のAWS)に排ガスを通過させるようにする。従って、AWSが2基以上ある場合には、それぞれのAWSに差圧計又は流量計を設置することが好ましい。
【0035】
以上、本発明の排ガスの処理方法を説明したが、本発明の別の側面は、上記方法を実施するために適合された排ガスの処理装置である。排ガスの処理装置に関する構成は、前述の排ガスの処理方法に対応するので、詳細な説明は割愛する。
【実施例0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、ここでの説明は単なる例示を目的とするものであり、それに限定されることを意図するものではない。
【0037】
図3に示されるフローに従い、排ガスの処理装置を構成した場合の除塵率を以下のように計算した。当該排ガスの処理装置には、「AWS1」と「AWS2」と表示される2つのAWSがあり、それぞれの設計風量はXであるとする。両方のAWSには通過風量を測定するための差圧計が設けられており、AWS1には通過風量を調整するための調整弁が設けられているとする。両方のAWSにおいて、通過風量が設計風量の85%以上である場合の除塵率は70%であり、85%未満の場合の除塵率は15%と仮定した。
【0038】
次に、当該処理装置に、ばいじんを含む排ガスを通過させ、当該排ガスの流量を設計風量Xに対して表1に示される数値になるように段階的に増加させた。排ガスの流量が1.7X未満では、AWS2の風量が設計風量の約86%となるように、AWS1の調整弁を調整し、排ガスの流量が1.7Xを超えると、AWS1の調整弁を全開にして、両方のAWSにおける通過風量が同じとなるようにした。それぞれの場合におけるAWS風量(入口)を表1に示す。
【0039】
それぞれの排ガスの通過風量(X/22刻み)の場合において、冷却塔の除塵率、AWS1及びAWS2のそれぞれの除塵率、両方のAWSを合わせた除塵率、及びMCの除塵率を表1に示す。冷却塔の除塵率は10%であると仮定し、MCの除塵率は、風量の増加とともに減少するのが一般的であるため、風量と除塵率の一定の関係式に基づいて計算した。
【0040】
表1から分かるように、AWS1及びAWS2の両方を合わせたAWSの合計除塵率は、最低でも43%であった。より具体的には、AWS1における排ガスの通過風量が設計風量の85%未満である区間では、AWS2における排ガスの通過風量が設計風量の85%以上に維持されるため、AWS2の除塵率が70%となり、結果として、処理設備全体の除塵率が99%以上に維持できた。また、当該モデルに基づき処理装置出口のばいじん濃度をシミュレーションした結果、ばいじん濃度の増加が抑制された。
【0041】