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特開2023-176735日射遮蔽材料、日射遮蔽材料分散体、日射遮蔽透明基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176735
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】日射遮蔽材料、日射遮蔽材料分散体、日射遮蔽透明基材
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231206BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20231206BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231206BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20231206BHJP
   C09K 23/54 20220101ALI20231206BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/38
B32B7/023
C09K23/52
C09K23/54
C09K3/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089170
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 里司
(72)【発明者】
【氏名】町田 佳輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA31
4F100AA31A
4F100AR00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE01
4F100DE01A
4F100JD10
4F100JD10A
4F100JN01
4F100JN01B
4F100JN02
4F100JN02A
4J002BB031
4J002BB061
4J002BC021
4J002BD041
4J002BD121
4J002BE061
4J002BG041
4J002CD001
4J002CF061
4J002CG001
4J002CL001
4J002CM041
4J002DK006
4J002FD020
4J002FD206
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できる日射遮蔽材料を提供することを目的とする。
【解決手段】六ホウ化カリウム粒子を含む日射遮蔽材料であって、
前記六ホウ化カリウム粒子の長軸の長さの、前記長軸と直交する短軸の長さに対する比であるアスペクト比が3以上7以下である日射遮蔽材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六ホウ化カリウム粒子を含む日射遮蔽材料であって、
前記六ホウ化カリウム粒子の長軸の長さの、前記長軸と直交する短軸の長さに対する比であるアスペクト比が3以上7以下である日射遮蔽材料。
【請求項2】
六ホウ化ランタン粒子と六ホウ化カリウム粒子とを含む日射遮蔽材料であって、
前記六ホウ化ランタン粒子および前記六ホウ化カリウム粒子の少なくともいずれか一方の粒子において、長軸の長さの、前記長軸と直交する短軸の長さに対する比であるアスペクト比が4以上7以下である日射遮蔽材料。
【請求項3】
固体媒体と、
前記固体媒体中に配置された請求項1または請求項2に記載の日射遮蔽材料と、を含み、
前記固体媒体が樹脂またはガラスである日射遮蔽材料分散体。
【請求項4】
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面上に配置された日射遮蔽層と、を有し、
前記日射遮蔽層が、請求項3に記載の日射遮蔽材料分散体である日射遮蔽透明基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射遮蔽材料、日射遮蔽材料分散体、日射遮蔽透明基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車やビルの窓ガラスに熱線(近赤外線)吸収機能を有する微粒子を塗布することで、車内や室内の温度上昇を抑制することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には平均粒径が100nm以下の酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子、窒化タンタル微粒子、珪化チタン微粒子、珪化モリブテン微粒子、ホウ化ランタン微粒子、酸化鉄微粒子、酸化水酸化鉄(III)微粒子のうち少なくとも1種を分散したことを特徴とする選択透過膜用塗布液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-181336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、六ホウ化ランタン等の六ホウ化物は近赤外領域での高い吸収係数を持ち、非常に高い遮熱特性を有するため、少ない使用量で良好な遮熱特性を示す。一方、可視光領域の吸収係数が低いため、可視光透過性を損なうことなく遮熱することができる。さらに、耐候性、原料入手性の観点でも優れており、工業的に広く利用されている。
【0006】
しかしながら、近年では日射遮蔽材料についてさらなる性能の向上が求められている。このため、六ホウ化ランタン等の六ホウ化物は、上述のように可視光領域の吸収係数は小さいものの、近年はより透明性の高い材料が好まれ、求められてきている。
そこで、本発明の一側面では、可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できる日射遮蔽材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面では、六ホウ化カリウム粒子を含む日射遮蔽材料であって、
前記六ホウ化カリウム粒子の長軸の長さの、前記長軸と直交する短軸の長さに対する比であるアスペクト比が3以上7以下である日射遮蔽材料を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面では、可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できる日射遮蔽材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、回転楕円体がロッド状楕円体の場合の説明図である。
図2図2は、回転楕円体がディスク状楕円体の場合の説明図である。
図3図3は、日射遮蔽材料分散液の説明図である。
図4図4は、日射遮蔽材料分散体の説明図である。
図5図5は、日射遮蔽積層体の説明図である。
図6図6は、日射遮蔽透明基材の説明図である。
図7図7は、実施例1~実施例3、比較例1で測定、算出した吸収曲線である。
図8図8は、実施例4で測定、算出した吸収曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。
[日射遮蔽材料]
本実施形態の日射遮蔽材料は、六ホウ化物粒子を含むことができる。本実施形態の日射遮蔽材料は六ホウ化物粒子から構成することもできるが、係る場合でも不可避不純物を含有することを排除するものではない。
【0011】
本実施形態の日射遮蔽材料が含有する六ホウ化物粒子としては、近赤外領域においてプラズモン吸収による光の吸収を発現する六ホウ化物の粒子を用いることができる。
【0012】
本実施形態の日射遮蔽材料が含有する六ホウ化物粒子としては、例えば六ホウ化ランタン(LaB)、六ホウ化カリウム(KB)から選択された1種類以上の粒子が挙げられる。
【0013】
本実施形態の日射遮蔽材料が含有する六ホウ化物粒子は、後述する日射遮蔽材料分散体等とした場合のヘイズ等を抑制する観点から、粒径が小さい微粒子であることが好ましい。なお、六ホウ化物粒子を微粒子とした場合、後述する日射遮蔽材料分散液や、日射遮蔽材料分散体とするために、分散工程等を行う際に、粒子表面の酸化が起る場合があるが、通常僅かであるため、近赤外線の遮蔽効果に大きな影響を与えるものではない。
本実施形態の日射遮蔽材料は、六ホウ化物粒子を複数個、すなわち集合体として含有できる。従って、本実施形態の日射遮蔽材料は、六ホウ化物粉末を含むということもできる。
【0014】
六ホウ化物粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい近赤外線遮蔽効果が得られる。しかしながら、結晶性が低く、X線回折パターンでブロードな回折ピークを生じるような場合でも、粒子内部の基本的な結合が各金属とホウ素との結合から成り立っているものであれば、十分な近赤外線遮蔽効果を発揮でき、各種用途に用いることが可能である。
【0015】
六ホウ化物粒子が含有する、六ホウ化物は、例えば一般式:MeBと表記できる。Meは、上述のようにランタン(La)や、カリウム(K)等の金属を表している。上記一般式におけるx、すなわち金属(Me)に対するホウ素(B)の物質量比は厳密に6である必要はなく、例えば5.8≦x≦6.2とすることができる。
【0016】
本発明の発明者らは、可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できる日射遮蔽材料について検討を行った。その結果、六ホウ化物粒子の可視光透過率や、近赤外線吸収特性に、該粒子の形状が大きく影響していることを見出した。そして、さらなる検討を行ったところ、六ホウ化物粒子が所定のアスペクト比を有することで、可視光透過率を高め、近赤外線の透過率を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本実施形態の日射遮蔽材料が、六ホウ化カリウム粒子を含む場合、該六ホウ化カリウム粒子の長軸の長さLLの、長軸と直交する短軸の長さLSに対する比であるアスペクト比LL/LSが3以上7以下であることが好ましく、4以上7以下であることがより好ましい。
【0018】
六ホウ化カリウム粒子の上記アスペクト比を3以上とすることで、該六ホウ化カリウム粒子の近赤外線の吸収効率を高められる。また、六ホウ化カリウム粒子の上記アスペクト比を7以下とすることで、より可視光に近い波長における近赤外線の吸収の効率を高められるため好ましい。
【0019】
本実施形態の日射遮蔽材料は、複数個の六ホウ化カリウム粒子を含有できる。そして、本実施形態の日射遮蔽材料は、既述の長軸の長さと、短軸の長さとの比であるアスペクト比を充足する六ホウ化カリウム粒子を1個でも含有していればよいが、その比率は高いことが好ましい。例えば本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化カリウム粒子のうち、上記アスペクト比を充足する六ホウ化カリウム粒子を個数割合で60%以上含有していることが好ましく、70%以上含有していることがより好ましい。
【0020】
全ての六ホウ化カリウム粒子が上記アスペクト比を充足する粒子とすることもできるため、本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化カリウム粒子のうち、上記アスペクト比を充足する六ホウ化カリウム粒子を個数割合で100%以下含有できる。ただし、生産性等の観点から該個数割合は90%以下であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態の日射遮蔽材料が含有する六ホウ化物粒子は、回転楕円体とみなせる形状を有し、上述の所定範囲内のアスペクト比を有することが好ましい。
【0022】
本明細書において、六ホウ化物粒子を回転楕円体とみなすとは、評価する六ホウ化物粒子について、外表面を平滑な面でなぞることで、外接する、表面がスムーズな回転楕円体を描き、該六ホウ化物粒子が、係る回転楕円体形状を有するものとすることを意味する。
【0023】
六ホウ化物粒子の粒子形状は回転楕円体とみなした際、図1に示すように、該回転楕円体10の回転軸に沿う軸であるa軸に沿った長さLaが、他の軸であるb軸、c軸に沿った長さLb、Lcよりも長い長軸であるロッド状楕円体となる場合がある。六ホウ化物粒子がロッド状楕円体とみなせる場合、該粒子のアスペクト比は短軸の長さに対する、長軸の長さの比である、La/Lb、La/Lcになる。なお、La>Lb、La>Lc、Lb=Lcの関係になる。
【0024】
また、図2に示すように、該回転楕円体10の回転軸に沿う軸であるa軸に沿った長さLaが、他の軸であるb軸、c軸に沿った長さLb、Lcよりも短い短軸であるディスク状楕円体となる場合がある。六ホウ化物粒子がディスク状楕円体とみなせる場合、該粒子のアスペクト比はLb/La、Lc/Laになる。なお、La<Lb、La<Lc、Lb=Lcの関係になる。
【0025】
本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化カリウム粒子について、回転楕円体の形状を有しているとみなすことができる場合に、該回転楕円体として、ディスク状楕円体と、ロッド状楕円体とのいずれか一方の形状の粒子のみを含んでも良く、両方の形状の粒子を含んでも良い。
ただし、本実施形態の日射遮蔽材料が含有する六ホウ化カリウム粒子について、ディスク状楕円体と、ロッド状楕円体とのいずれの回転楕円体の形状を有しているとみなせる場合でも、既述の範囲のアスペクト比を充足することが好ましい。特に、本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化カリウム粒子について、回転楕円体の形状を有するとみなすことができる場合に、回転楕円体の形状の上記分類によらず所定のアスペクト比を充足する六ホウ化カリウム粒子の個数割合が、既述の範囲を充足することが好ましい。
【0026】
例えば本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化カリウム粒子のうち、ディスク状楕円体とみなすことができ、かつ既述のアスペクト比を充足する粒子の数と、ロッド状楕円体とみなすことができ、かつ既述のアスペクト比を充足する粒子の数の合計の割合が、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化カリウム粒子のうち、ディスク状楕円体とみなすことができ、かつ既述のアスペクト比を充足する粒子の数と、ロッド状楕円体とみなすことができ、かつ既述のアスペクト比を充足する粒子の数との合計の割合が、100%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0027】
ここまで、日射遮蔽材料が六ホウ化カリウム粒子を含有する場合を例に説明したが、日射遮蔽材料粒子が、六ホウ化カリウム粒子に変えて、六ホウ化ランタン粒子等の他の六ホウ化物粒子を含有しても良い。この場合でも、日射遮蔽材料は、アスペクト比が3以上7以下の六ホウ化物粒子を含有することが好ましく、アスペクト比が4以上7以下の六ホウ化物粒子を含有することがより好ましい。
【0028】
また、本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化物粒子のうち、上記アスペクト比を充足する六ホウ化物粒子を個数割合で60%以上含有していることが好ましく、70%以上含有していることがより好ましい。
【0029】
本実施形態の日射遮蔽材料は、上記アスペクト比を充足する六ホウ化物粒子を個数割合で100%以下含有でき、90%以下であることがより好ましい。
それぞれの数値範囲が好適な理由は、六ホウ化カリウム粒子の場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0030】
本実施形態の日射遮蔽材料が、六ホウ化ランタン粒子と六ホウ化カリウム粒子とを含む場合に、六ホウ化ランタン粒子および六ホウ化カリウム粒子の少なくともいずれか一方の粒子において、長軸の長さLLの、長軸と直交する短軸の長さLSに対する比であるアスペクト比LL/LSが4以上7以下であることが好ましい。LL/LSを4以上7以下とすることで、近赤外線の吸収効率を高められる。
六ホウ化ランタン粒子および六ホウ化カリウム粒子の両方の粒子において、上記アスペクト比が4以上7以下であっても良い。また、六ホウ化ランタン粒子と六ホウ化カリウム粒子との少なくとも一方の粒子について、既述のように回転楕円体とみなせる形状を有し、上述の所定の範囲のアスペクト比を有していても良い。
【0031】
本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化ランタン粒子、および六ホウ化カリウム粒子のうち、上記アスペクト比LL/LSが4以上7以下を満たす粒子を個数割合で60%以上含有していることが好ましく、70%以上含有していることがより好ましい。
【0032】
全ての六ホウ化ランタン粒子と六ホウ化カリウム粒子が上記アスペクト比を充足する粒子とすることもできる。このため、本実施形態の日射遮蔽材料は、含有する六ホウ化ランタン粒子と六ホウ化カリウム粒子のうち、上記アスペクト比LL/LSが4以上7以下の粒子を個数割合で100%以下含有できる。ただし、生産性等の観点から該個数割合は90%以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、本実施形態の日射遮蔽材料が、六ホウ化ランタン粒子と六ホウ化カリウム粒子を含有する場合、六ホウ化ランタン粒子または六ホウ化カリウム粒子を回転楕円体とみなした際に、該回転楕円体10は、図1に示したロッド状楕円体であることが好ましい。図1に示したロッド状楕円体の場合、a軸に沿った回転楕円体10の長さLaが長軸の長さLL、b軸またはc軸に沿った回転楕円体の長さLb、Lcが短軸の長さLSとなる。
【0034】
六ホウ化物粒子のアスペクト比は、TEM(Transmission Electron Microscope)トモグラフィー法によって得られる3次元画像から算出できる。具体的には、該3次元画像から、個々の六ホウ化物粒子を識別し、3次元画像の長さスケールと粒子の具体的な形状を比較することで、個々の六ホウ化物粒子についてアスペクト比[(長軸の長さ)/(短軸の長さ)]を算出することで求められる。
【0035】
例えば、3次元画像から100個以上、好ましくは200個以上の六ホウ化物粒子を識別する。識別された個々の六ホウ化物粒子について、長軸と短軸との方向を決定し、長短両軸の長さを測定し、当該測定値からアスペクト比を算出できる。なお、互いに直交する最長の軸を長軸、最短の軸を短軸とすることができる。
[日射遮蔽材料の製造方法]
次に、本実施形態の日射遮蔽材料の製造方法について説明する。本実施形態の日射遮蔽材料の製造方法によれば、既述の日射遮蔽材料を製造できるため、既に説明した事項については説明を省略する。
【0036】
本実施形態の日射遮蔽材料の製造方法は、例えば平均粒子径が0.5μm以上5μm以下の六ホウ化物粒子を、該六ホウ化物粒子より硬度の低い粉砕メディア(以下、単にビーズと称する)、分散媒体、および分散剤とともに、ミル(例えば、溶媒拡散ミル)へ装填してビーズミル粉砕を行う粉砕工程を有することができる。なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法を用いた測定による体積基準の50%積算粒径であるD50を意味する。
粉砕工程におけるビーズミル粉砕ではミルの周速を、通常の粉砕時、例えば従来日射遮蔽材料用の六ホウ化物粒子を粉砕する際よりも下げて運転し、低いせん断力による粉砕を行うようにすることが好ましい。例えば、通常運転時の0.3倍以上0.8倍以下程度とすることが好ましい。
【0037】
低いせん断力による湿式粉砕の場合、既述のアスペクト比が3以上7以下の範囲の六ホウ化物粒子がより多く含まれるために好ましい。より硬度の高いメディアを用いると、既述のアスペクト比が1.5未満、より具体的にはほぼ球形の粒子が多く含まれてしまうため好ましくない。六ホウ化物粒子のビッカース硬度に対して1/3以上1/2以下程度のビッカース硬度をもつビーズを用いることで、所定のアスペクト比を有する六ホウ化物粒子の集合体を効率よく製造できる。
【0038】
分散媒体としては特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n-ブチルなどの有機溶媒が挙げられる。分散剤は必要に応じて利用すればよいが、例えば、高分子系分散剤などを用いることができる。
【0039】
なお、これらは一例であり、形状を制御した湿式法により製造された六ホウ化物粒子を用いたり、形状を制御できるプラズマトーチ法で製造された六ホウ化物粒子を用いたりすることもできる。
[日射遮蔽材料を含む分散液とその製造方法]
次に、本実施形態の日射遮蔽材料を含む分散液である日射遮蔽材料分散液(以下、「分散液」とも記載する)とその製造方法について説明する。
【0040】
本実施形態の日射遮蔽材料分散液は、液体媒体と、液体媒体中に配置された既述の日射遮蔽材料と、を含有できる。例えば図3に示した様に、本実施形態の分散液30は、既述の六ホウ化物粒子31と、液体媒体32とを含むことができる。六ホウ化物粒子31は、上記液体媒体32中に分散していることが好ましい。
【0041】
なお、図3は模式的に示した図であり、本実施形態の分散液は、係る形態に限定されるものではない。分散液30は、六ホウ化物粒子31、液体媒体32以外に、必要に応じて以下に説明するカップリング剤等その他添加剤を含むこともできる。
【0042】
分散液は、六ホウ化物粒子の集合体を液状の媒体である液体媒体中に分散させることで得られる。より具体的には例えば、六ホウ化物粒子の集合体、適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、液状の媒体へ添加し分散処理を行うことで得ることができる。
【0043】
(1)含有する成分について
以下、本実施形態の分散液が含有できる成分について説明する。
【0044】
(1-1)液体媒体
液体媒体としては水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状のプラスチック用可塑剤から選択された1種、あるいはこれらから選択される2種以上の混合物を選択し用いることができる。
【0045】
有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、エステル系、グリコール系、アミド系、炭化水素系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3-メチル-メトキシ-プロピオネート、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N-メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。
【0046】
有機溶媒としては、これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n-ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
油脂としては、特に限定されないが、植物油または植物油由来の化合物を好ましく用いることができる。
【0048】
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0049】
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0050】
また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることが出来る。
【0051】
市販の石油系溶剤として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)(以下同じ)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル製)等を使用できる。
【0052】
液状樹脂としては、メタクリル酸メチル等を好ましく用いることができる。
【0053】
液状のプラスチック用可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤などが好ましい例として挙げられる。なかでもトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサオネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサオネートは、加水分解性が低い為、さらに好ましい。
(1-2)分散剤、カップリング剤、界面活性剤
分散剤、カップリング剤、界面活性剤(以下、「分散剤等」とも記載する)は用途に合わせて選定可能である。分散剤等は、例えば、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、またはエポキシ基を官能基として有することが好ましい。これらの官能基は、六ホウ化物粒子の表面に吸着し、六ホウ化物粒子の凝集を防ぐことができる。また、六ホウ化物粒子分散体中でも六ホウ化物粒子を均一に分散させることができる。
【0054】
分散剤等として、より具体的には、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0055】
高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
【0056】
分散剤等の添加量は、六ホウ化物粒子100質量部に対し10質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは20質量部以上200質量部以下の範囲である。分散剤等の添加量が上記範囲にあれば、六ホウ化物粒子集合体が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
【0057】
更に分散液中における六ホウ化物粒子の含有量は0.02質量%以上20質量%以下であることが好ましい。0.02質量%以上であれば後述するコーティング膜やプラスチック成型体などの製造に好適に用いることができ、20質量%以下であれば工業的な生産が容易である。上記六ホウ化物粒子の含有量は、さらに好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0058】
このような分散液について、該分散液を適当な透明容器に入れ、分光光度計を用いることで、光の透過率を波長の関数として測定することができる。本実施形態に係る分散液は、波長780nm以上1300nm以下の近辺において主要な吸収ピークを持つ。また、本実施形態の分散液の透過率の調整は、その液状溶媒または液状溶媒と相溶性を有する適宜な溶媒で希釈することにより、容易になされる。
(2)分散液の製造方法について
本実施形態の分散液の製造方法は、日射遮蔽材料を、液体媒体中に分散する分散工程を有することができる。なお、日射遮蔽材料は、既述の六ホウ化物粒子を含有するため、分散工程では六ホウ化物粒子を液体媒体中に分散するということもできる。
【0059】
分散工程における分散処理の方法は六ホウ化物粒子が均一に液体媒体中へ分散する方法であれば特に限定されず、例えば公知の方法から任意に選択できる。分散方法としては、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。六ホウ化物粒子が均一に分散された分散液を得るために、分散液に各種添加剤や分散剤等を添加したり、pH調整したりすることもできる。
[日射遮蔽材料を含む分散体とその製造方法]
次に、本実施形態の日射遮蔽材料を含む分散体である日射遮蔽材料分散体(以下、「分散体」とも記載する)とその製造方法について説明する。
(1)日射遮蔽材料分散体について
本実施形態の日射遮蔽材料分散体は、固体媒体と、固体媒体中に配置された既述の日射遮蔽材料と、を含有できる。具体的には例えば、図4に模式的に示すように、本実施形態の分散体40は、既述の六ホウ化物粒子41と、固体媒体42と、を含むことができ、六ホウ化物粒子41は、固体媒体42中に配置できる。六ホウ化物粒子41は、上記固体媒体42中に分散していることが好ましい。なお、図4は模式的に示した図であり、本実施形態の分散体は、係る形態に限定されるものではない。分散体40は、六ホウ化物粒子41、固体媒体42以外に、必要に応じてその他添加剤を含むこともできる。
【0060】
固体媒体とは、使用する温度において固体状の媒体を意味し、特に室温(27℃)において固体状の媒体であることが好ましい。固体媒体としては、樹脂またはガラスを用いることが好ましい。
【0061】
樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂を用いることができる。
【0062】
熱可塑性樹脂としては特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、または、上記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または、上記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることが好ましい。
【0063】
また、UV硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂)としては特に制限はないが、例えばアクリル系UV硬化性樹脂を好適に用いることができる。
【0064】
また、分散体中に含まれる六ホウ化物粒子の量は、例えば0.001質量%以上80.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
例えば、六ホウ化物粒子の含有量を0.001質量%以上とすることで、分散体が必要な近赤外線遮蔽効果が得るために要する厚さを薄くできる。このため、分散体の取り扱い性を高め、光透過性を高めることができる。
【0066】
また、六ホウ化物粒子の含有割合を80質量%以下とすることで、分散体における固体媒体の割合を一定割合以上にすることができ、該分散体の強度を高めることができる。
分散体の形状は特に限定されないが、例えばシート形状、ボード形状またはフィルム形状を有することができる。
【0067】
分散体に含まれる単位投影面積あたりの六ホウ化物粒子の含有量は、0.01g/m2以上0.5g/m2以下であることが好ましい。なお、「単位投影面積あたりの含有量」とは、本実施形態の分散体において、光が通過する単位面積(m2)あたりの、その厚み方向に含有されている六ホウ化物粒子の質量(g)である。
(2)分散体の製造方法について
本実施形態の分散体の製造方法は特に限定されないが、例えば六ホウ化物粒子、分散液、またはマスターバッチを、透明樹脂等の固体媒体と混練する(混練工程)ことにより製造できる。混練工程では、必要に応じて可塑剤や、その他添加剤を添加し、あわせて混練することもできる。
【0068】
必要に応じて混練工程で六ホウ化物粒子等と、固体媒体とを混合後、所望の形状に成形する(成形工程)ことができる。成形工程において成形する形状は特に限定されないが、例えばシート形状、ボード形状またはフィルム形状とすることができる。シート形状等に成形する方法は特に限定されないが、例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。
【0069】
六ホウ化物粒子としては、既述の分散液から液体媒体を除去して得られた分散粉を用いることもできる。
【0070】
なお、混練工程の際や、分散粉を調製する際、必要に応じて分散液に含まれていた液体媒体を除去することができる(除去工程)。液体媒体を除去する方法は特に限定されないが、例えば、分散液等を撹拌しながら減圧乾燥することが好ましい。具体的には、分散液等を撹拌しながら減圧乾燥し、日射遮蔽材料である六ホウ化物粒子と液体媒体の成分とを分離する。当該減圧乾燥に用いる装置としては、真空撹拌型の乾燥機が挙げられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。また、除去工程の減圧の際の圧力値は適宜選択される。
【0071】
除去工程で、減圧乾燥法を用いることで、分散液に由来する液体媒体等の除去効率が向上するとともに、減圧乾燥後に得られる分散粉や、原料である分散液が長時間高温に曝されることがないので、分散粉や、分散液中に分散している六ホウ化物粒子の凝集が起こらず好ましい。さらに分散粉等の生産性も上がり、蒸発した液体媒体等の溶媒を回収することも容易で、環境的配慮からも好ましい。
【0072】
得られた分散体中に残留する液体媒体は5質量%以下であることが好ましい。残留する液体媒体が5質量%以下であれば、分散体を透明基材等に加工した際に気泡の発生を抑制できるため、光学特性を高められる。
【0073】
マスターバッチは六ホウ化物粒子を高濃度で含有する分散体であり、例えば以下の手順により製造できる。上記分散体の製造方法の場合と同様に、六ホウ化物粒子や、分散液と、固体媒体の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に混合、混練して固体媒体中に六ホウ化物粒子が分散した混合物を調製する(混合物調製工程)。次いで、該混合物をペレット状に加工する(形状加工工程)。
【0074】
混合物をペレット状に加工する方法は特に限定されないが、例えばベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、溶融押出されたストランドをカットする方法により、円柱状や角柱状のペレットを製造できる。また、ペレットを作製する際、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。この場合には球状に近い形状のペレットとすることが可能である。
【0075】
既述の成形工程において、分散体について、シート形状、ボード形状またはフィルム形状に成形した場合、該分散体を単独で日射遮蔽体として用いることもできるが、該分散体を用いて、後述する日射遮蔽積層体や、日射遮蔽透明基材等を製造することもできる。
【0076】
シート形状、ボード形状またはフィルム形状の分散体をフィルム、ガラス等の基材の中間層として用いる場合、すなわち後述する日射遮蔽積層体(合わせ透明基材)とする場合、該分散体には可塑剤を添加することが好ましい。例えば、ポリビニルアセタール樹脂など、熱可塑性樹脂が単独では柔軟性や透明基材との密着性を十分に有しない場合、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤を用いて、密着性、柔軟性を高めることができる。可塑剤としては、より好ましくは、室温で液状であることが好ましく、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
[日射遮蔽積層体]
次に、本実施形態の日射遮蔽積層体の構成例について説明する。
【0077】
本実施形態の日射遮蔽積層体としては、例えば2枚以上の複数枚の透明基材と、上述の分散体とを積層した例が挙げられる。この場合、分散体は、例えば透明基材の間に配置し、中間膜として用いることができる。
【0078】
この場合、具体的には、透明基材と、分散体との積層方向に沿った断面模式図である図5に示すように、日射遮蔽積層体50は、複数枚の透明基材511、512と、分散体52とを有することができる。そして、分散体52は複数枚の透明基材511、512の間に配置できる。図5においては、透明基材511、512を2枚有する例を示したが、係る形態に限定されるものではない。
【0079】
この場合、分散体52は、シート形状、ボード形状、およびフィルム形状のいずれかの形状を有することが好ましい。
【0080】
透明基材は、可視光領域において透明な板ガラス、シート状のプラスチック、ボード状のプラスチック、フィルム状のプラスチック等から選択された1種類以上を好適に用いることができる。なお、透明基材が、可視光領域において透明であるとは、可視光領域の光を透過する基材であることを意味する。透明基材の可視光領域の光の透過の程度は日射遮蔽積層体の用途等に応じて任意に選択できる。
【0081】
透明基材として、プラスチックを用いる場合、プラスチックの材質は、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であり、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アイオノマー樹脂、フッ素樹脂等から選択された1種類以上を使用可能である。なお、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂を好適に用いることができる。
【0082】
なお、分散体を挟持して対向する複数枚の透明基材を、公知の方法で貼り合わせ、一体化することで、上述の日射遮蔽積層体とすることもできる。
【0083】
本実施形態の日射遮蔽積層体は、上述のような、透明基材間に分散体を配置した形態に限定されるものではなく、分散体と、透明基材とを含む積層構造を有するものであれば、任意の構成を採ることができる。
【0084】
シート形状、ボード形状またはフィルム形状の分散体、または日射遮蔽積層体の光学特性は特に限定されない。例えば、上記分散体や、日射遮蔽積層体は、可視光透過率が70%のときに、波長850nm以上1300nm以下の光波長領域の透過率における最小値(最小透過率)が35%以下であることが好ましい。ここで、可視光透過率を70%に調整することは、分散液、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチに含有される六ホウ化物粒子の濃度、分散体等を調製する際の分散粉、分散液、またはマスターバッチの添加量、分散体の膜厚等を調整することで可能である。
[日射遮蔽透明基材]
本実施形態の日射遮蔽透明基材は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に配置された日射遮蔽層と、を有し、該日射遮蔽層として、既述の分散体を用いることができる。具体的には、透明基材と、日射遮蔽層である分散体との積層方向に沿った断面模式図である図6に示すように、日射遮蔽透明基材60は、透明基材61と、分散体62とを有することができる。分散体62は、透明基材61の少なくとも一方の面61Aに配置できる。
【0085】
フィルム基材、ガラス基材等の透明基材の少なくとも一方の面上へ、六ホウ化物粒子を含む分散液を塗布し、コーティング層である分散体を形成することで、日射遮蔽透明基材を製造することが出来る。
【0086】
コーティング層を形成するための塗布液は、六ホウ化物粒子を含む分散液とプラスチックまたはモノマーとを混合して得られる。例えば、分散液にプラスチックまたはモノマー等の媒体樹脂を添加し、塗布液を得る。この塗布液をフィルム基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させ所定の方法で樹脂を硬化させればよい。
【0087】
媒体樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。
【0088】
また、金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが挙げられる。これらのバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜からなるコーティング層を形成することが可能である。また、六ホウ化物粒子を含む分散液を透明基材の上に塗布した後、さらに媒体樹脂や金属アルコキシドを用いたバインダーを塗布してコーティング層を形成してもよい。
【0089】
なおフィルム基材は、フィルム形状に限定されることはなく、例えば、ボード状でもシート状でも良い。基材材料としては特に限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等から選択された1種類以上を、各種目的に応じて使用可能である。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を好適に用いることができる。ポリエステルフィルムや、PETフィルムであると、延性や柔軟性を保持できることからより好ましい。
【0090】
また、フィルム基材の表面は、コーティング層である分散体との接着の容易さを実現するため、表面処理がなされていることが好ましい。また、ガラス基材もしくはフィルム基材とコーティング層との接着性を向上させるために、ガラス基材上もしくはフィルム基材上に中間層を形成し、中間層上にコーティング層を形成してもよい。中間層としては、例えばポリマフィルム、金属層、無機層(例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物層)、有機/無機複合層等を用いることができる。
【0091】
フィルム基材上またはガラス基材上へコーティング層を設ける方法は、例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等を挙げることができる。
例えばUV硬化性樹脂を用いたバーコート法の場合、まず適度なレベリング性を持つように濃度および添加剤を調整した塗布液を調製できる。そして、コーティング膜の厚みおよび六ホウ化物粒子の含有量が所望の範囲内になるようなバー番号のワイヤーバーを用いてフィルム基材またはガラス基材上に塗布膜の塗膜を形成する。その後、塗布液中に含まれる溶媒を乾燥により除去したのち紫外線を照射し硬化させることで、フィルム基材またはガラス基材上にコーティング層を形成できる。塗膜の乾燥条件は特に限定されないが、60℃以上140℃以下の温度で20秒間以上10分間以下程度である。紫外線の照射についても特に制限はなく、例えば超高圧水銀灯などのUV露光機を好適に用いることができる。
【0092】
コーティング層の形成の前後工程により、透明基材とコーティング層の密着性、コーティング時の塗膜の平滑性、有機溶媒の乾燥性などを操作することもできる。前後工程としては、例えば透明基材の表面処理工程、プリベーク(透明基材の前加熱)工程、ポストベーク(透明基材の後加熱)工程などが挙げられ、適宜選択することができる。プリベーク工程や、ポストベーク工程における加熱温度は80℃以上200℃以下、加熱時間は30秒間以上240秒間以下であることが好ましい。
【0093】
フィルム基材上またはガラス基材上におけるコーティング層である分散体の厚みは、特に限定されないが、実用上は10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。これは分散体の厚みが10μm以下であれば、耐擦過性を有することができる。また、分散体における溶媒の揮散およびバインダーの硬化の際に、フィルム基材の反り発生等の工程異常発生を回避出来る。
【0094】
製造された日射遮蔽透明基材の光学特性は特に限定されない。日射遮蔽透明基材は、可視光透過率が70%のときに、波長850nm以上1300nm以下の光波長領域の透過率における最小値(最小透過率)が35%以下であることが好ましい。可視光透過率を70%に調整するとは、コーティング液中の六ホウ化物粒子濃度、またはコーティング層である分散体の膜厚の調整により可能である。コーティング層に含まれる単位投影面積あたりの前記六ホウ化物粒子の含有量は0.01g/m2以上0.5g/m2以下であることが好ましい。
【実施例0095】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実施例、比較例における評価方法について説明する。
(1)光学特性
本実施例で作製した分散液の光学特性は、波長1600nmまでの範囲における光の透過率を、分光光度計(日立製作所(株)製U-4100)を用い5nm刻みで測定して評価した。
【0096】
後述する方法で算出された吸光度曲線を用い、波長200nm以上1600nm以下の範囲において、吸光度が最大となる波長と、当該吸収ピーク波長を有する吸収ピークの半値全幅とを求めた。
(2)六ホウ化物粒子のアスペクト比
以下の実施例、比較例で作製した分散液に含まれる六ホウ化物粒子のアスペクト比は、TEM(Transmission Electron Microscope)トモグラフィー法によって得られる3次元画像から算出した。具体的には、該3次元画像から、個々の六ホウ化物粒子を識別し、3次元画像の長さスケールと粒子の具体的な形状を比較することで、個々の六ホウ化物粒子についてアスペクト比[(長軸の長さ)/(短軸の長さ)]を算出した。
【0097】
例えば、3次元画像から200個の六ホウ化物粒子を識別し、識別された個々の六ホウ化物粒子について、長軸と短軸との方向を決定し、長短両軸の長さを測定し、当該測定値からアスペクト比を算出した。また、評価した六ホウ化物粒子に占める、所定のアスペクト比の六ホウ化物粒子の個数割合を算出した。
(3)平均分散粒子径
六ホウ化物粒子の平均分散粒子径は粒度分布計(日機装(株)製ナノトラックUPA)で測定を行い、体積基準の50%積算粒径であるD50を平均粒子径として算出した。
(実施例1)
六ホウ化カリウム(KB)(平均粒子径2.5μm)粒子10質量部、トルエン80質量部、分散剤(アミノ基を有するアクリル系高分子分散剤)10質量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。スラリーをビーズと共にビーズミルへ投入し、スラリーを循環させて、30時間粉砕分散処理を行った。
【0098】
使用したビーズミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)であり、ベッセル内壁とローター(回転撹拌部)の材質はZrOとした。また、ビーズは、直径0.3mmのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。スラリー流量1kg/分として粉砕分散処理を行った。
【0099】
なお、ローターの回転速度は8m/秒とし、通常の製造条件よりも遅くすることで、六ホウ化物粒子の破壊態様を制御した。
【0100】
その結果、得られた分散液中の六ホウ化カリウム粒子は、回転楕円体の形状を有しているとみなすことができ、回転楕円体の回転軸に沿う軸が長軸であり、該回転楕円体はロッド状楕円体であった。六ホウ化カリウム粒子は、該回転楕円体の短軸の長さに対する長軸の長さに当たる、アスペクト比が3以上7以下である粒子を含むことを確認できた。また、該アスペクト比が3以上7以下の粒子の個数割合が9割以上であることを確認できた。上記個数割合は、一部の粒子についての評価結果ではあるものの、試料を変えて複数回評価を行っても上記アスペクト比を充足する粒子の個数割合は同じ範囲となったことから、分散液に含まれる六ホウ化カリウム粒子に占める割合ということができる。以下の他の実施例、比較例でも同様である。
【0101】
また、得られた六ホウ化カリウム粒子の分散液中における平均分散粒子径を測定したところ20nmであった。
【0102】
次に、分散液の光学特性を測定した。分散液において、六ホウ化カリウム粒子の濃度が0.002質量%となるようにトルエン添加して希釈混合し、よく振盪した。その後、光路長1cmのガラスセルに当該希釈液を入れ、その透過率曲線を光学特性について既述の条件で分光光度計を用いて測定した。この際、分光器のベースラインは同一のガラスセルにトルエンを満たした試料で引いた。そして透過率曲線を以下の式1で吸収曲線に変換した。
A(λ)=-log10(T(λ)/100)・・・式1
ただしA(λ):吸光度Aの波長λ依存性を示す吸収曲線、T(λ):透過率の波長λ依存性を示す透過率曲線である。
【0103】
その結果、実施例1で得られた分散液の吸収曲線を図7に示す。該吸収曲線において、吸収ピーク波長は874nm、吸収ピークの半値全幅は200nmであった。
図7に示した吸収曲線から、所定のアスペクト比の六ホウ化カリウム粒子を含む分散液によれば、波長400nm以上760nm以下の領域における可視光の透過率が高く、かつ波長800nm以上1600nm以下の領域における近赤外線の透過率を抑制できることを確認できた。
(実施例2)
ローター回転速度を6m/秒とし、その他の条件は実施例1と同様に行った。
【0104】
その結果、得られた分散液中の六ホウ化カリウム粒子は、回転楕円体の形状を有しているとみなすことができ、回転楕円体の回転軸に沿う軸が長軸であり、該回転楕円体はロッド状楕円体であった。六ホウ化カリウム粒子は、該回転楕円体の短軸の長さに対する長軸の長さに当たる、アスペクト比が4以上7以下である粒子を含むことを確認できた。また、該アスペクト比が4以上7以下の粒子の個数割合が8割以上であることを確認できた。
【0105】
そして、実施例2で得られた分散液の吸収曲線を図7に示す。該吸収曲線おいて、吸収ピーク波長は802nm、吸収ピークの半値全幅は200nmであった。
図7に示した吸収曲線から、所定のアスペクト比の六ホウ化カリウム粒子を含む分散液によれば、可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できることを確認できた。
(実施例3)
ローター回転速度を4m/秒とし、その他の項目は実施例1と同様に行った。
【0106】
その結果、得られた分散液中の六ホウ化カリウム粒子は、回転楕円体の形状を有しているとみなすことができ、回転楕円体の回転軸に沿う軸が長軸であり、該回転楕円体はロッド状楕円体であった。六ホウ化カリウム粒子は、該回転楕円体の短軸の長さに対する長軸の長さに当たる、アスペクト比が5以上7以下である粒子を含むことを確認できた。また、該アスペクト比が5以上7以下の粒子の個数割合が8割以上であることを確認できた。
【0107】
そして、実施例3で得られた分散液の吸収曲線を図7に示す。該吸収曲線において、吸収ピーク波長は1148nm、吸収ピークの半値全幅は400nmであった。
図7に示した吸収曲線から、所定のアスペクト比の六ホウ化カリウム粒子を含む分散液によれば、可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できることを確認できた。
(比較例1)
ローター回転速度を10m/秒とし、その他の項目は実施例1と同様に行った。
【0108】
その結果、得られた分散液中の六ホウ化カリウム粒子は、アスペクト比が1である粒子の個数割合が8割以上であることを確認できた。なお、得られた分散液中の六ホウ化カリウム粒子は、いずれもアスペクト比が3未満であることを確認できている。
【0109】
そして、比較例1で得られた分散液の吸収曲線を図7に示す。該吸収曲線において、吸収ピーク波長は665nm、吸収ピークの半値全幅は200nmであった。
図7に示した吸収曲線から、比較例1で得られた分散液は、可視光域に吸収ピークがあり、上記実施例1~実施例3と比較して、可視光の透過率が低く、かつ近赤外線の透過率が高くなることを確認できた。
(実施例4)
実施例1で原料とした用いたものと同じ六ホウ化カリウム粒子と六ホウ化ランタン粒子(LB;平均粒子径2.5μm)とを質量比で1:1として混合した。混合した粒子10質量部、トルエン80質量部、分散剤(アミノ基を有するアクリル系高分子分散剤)10質量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。スラリーをビーズと共にビーズミルへ投入し、スラリーを循環させて、30時間粉砕分散処理を行った。
【0110】
破砕分散処理の際に用いたビーズミルの構成、およびスラリー流量は実施例1と同じ条件とした。
【0111】
なお、ローターの回転速度は6m/秒とし、通常の製造条件よりも遅くすることで、六ホウ化物粒子の破壊態様を制御した。
【0112】
六ホウ化ランタン粒子および六ホウ化カリウム粒子は、それぞれ回転楕円体の形状を有しているとみなすことができ、回転楕円体の回転軸に沿う軸が長軸であり、該回転楕円体はロッド状楕円体であった。六ホウ化ランタン粒子および六ホウ化カリウム粒子は、該回転楕円体の短軸の長さに対する長軸の長さに当たる、アスペクト比が4以上7以下である粒子を含むことを確認できた。また、該アスペクト比が4以上7以下の粒子の個数割合が、9割以上になることを確認できた。上記個数割合は、一部の粒子についての評価結果ではあるものの、試料を変えて複数回評価を行っても上記アスペクト比を充足する粒子の個数割合は同じ範囲となったことから、分散液に含まれる六ホウ化ランタン粒子および六ホウ化カリウム粒子に占める割合ということができる。
【0113】
また、得られた六ホウ化カリウム粒子および六ホウ化ランタン粒子の分散液中における平均分散粒子径を測定したところ20nmであった。
【0114】
得られた分散液の光学特性を実施例1と同じ手順、条件により測定した。得られた分散液の吸収曲線を図8に示す。該吸収曲線において、吸収ピーク波長は835nm、吸収ピークの半値全幅は200nmであった。
図8に示した吸収曲線から、所定のアスペクト比の六ホウ化カリウム粒子、六ホウ化ランタン粒子を含む分散液によれば、可視光の透過率が高く、かつ近赤外線の透過率を抑制できることを確認できた。
【符号の説明】
【0115】
10 回転楕円体
La a軸に沿った長さ
Lb b軸に沿った長さ
Lc c軸に沿った長さ
30 分散液
31 六ホウ化物粒子
32 液体媒体
40 分散体
41 六ホウ化物粒子
42 固体媒体
50 日射遮蔽積層体
511、512 透明基材
52 分散体
60 日射遮蔽透明基材
61 透明基材
61A 一方の面
62 分散体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8