(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176761
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ドライペットフード
(51)【国際特許分類】
A23K 50/42 20160101AFI20231206BHJP
【FI】
A23K50/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089220
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】山口 純平
(72)【発明者】
【氏名】塩田 将貴
【テーマコード(参考)】
2B005
【Fターム(参考)】
2B005AA02
2B005EA04
2B005JA04
2B005LA01
2B005LA06
2B005LA07
2B005LB01
2B005LB02
2B005LB06
2B005MA01
2B005MA03
(57)【要約】
【課題】生肉原料を多く含み、嗜好性が良好なドライペットフードの提供。
【解決手段】粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料と、油脂原料とを含む原料混合物の粒状物を含有するドライペットフードであって、前記生肉原料の含有量が、前記原料混合物の全量に対して36%超であり、前記粉体原料が大豆たんぱくを含む、ドライペットフード。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料と、油脂原料とを含む原料混合物の粒状物を含有するドライペットフードであって、
前記生肉原料の含有量が、前記原料混合物の全量に対して36%超であり、
前記粉体原料が大豆たんぱくを含む、ドライペットフード。
【請求項2】
前記生肉原料が、前記原料混合物の主原料である、請求項1に記載のドライペットフード。
【請求項3】
前記大豆たんぱくの含有量が、前記原料混合物の全量に対して5~30%である、請求項1に記載のドライペットフード。
【請求項4】
前記原料混合物中、食物繊維の含有量が、前記原料混合物の全量に対して10%以下である、請求項1に記載のドライペットフード。
【請求項5】
前記粉体原料は、穀物原料としてトウモロコシを含む、請求項1に記載のドライペットフード。
【請求項6】
前記油脂原料の含有量が、前記原料混合物の全量に対して3.5%以上である、請求項1に記載のドライペットフード。
【請求項7】
粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料と、油脂原料とを含む第1原料混合物の第1粒状物と、
前記第1原料混合物中の生肉原料の含有量より生肉原料の含有量が少ない若しくは生肉原料を含まない第2原料混合物の第2粒状物とを含有するドライペットフードであって、
前記第1原料混合物中の前記生肉原料の含有量が、前記第1原料混合物の全量に対して36%超である、ドライペットフード。
【請求項8】
前記第1粒状物の含有割合が、前記第1粒状物及び前記第2粒状物の合計量に対して25%未満である、請求項7に記載のドライペットフード。
【請求項9】
前記第1粒状物が、弧形の角部を有し、前記第2粒状物が、異形断面を有する、請求項7に記載のドライペットフード。
【請求項10】
前記第1原料混合物が生肉原料として魚肉を含み、前記第2原料混合物が前記第1原料混合物に含まれる魚肉以外の魚肉を含む、請求項7に記載のドライペットフード。
【請求項11】
前記第1粒状物が、前記第2粒状物よりも濃い色を呈している、請求項7に記載のドライペットフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライペットフードは、取り扱い易さ、保存性の良さなどの観点から、日常的に給餌するペットフードとして需要が高い。しかしながら、ドライペットフードは、ソフトドライフード、セミモイストフード、ウェットフード等の水分含量の高いペットフードに対して粉体原料の割合が高い場合が多く、嗜好性が劣ることがある。
【0003】
近年、良質な素材を用いた、健康的かつ嗜好性の高いドライペットフードの需要が高まっている。そのようなドライペットフードの原材料として、動物肉、魚肉等の生肉原料が注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、トウモロコシ30~65重量%、米5~20重量%、食肉15~35重量%、食物繊維10~30重量%、無機塩類0.15~2.0重量%、ビタミン類0.01~0.2重量%、ミネラル類0.01~5.2重量%を含有する混合物を均一に粉砕し加熱処理して成形したドライフードが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、少なくとも約40重量%の肉、および当該組成物の押出しおよび押出機通過後に切断するのに効果的な量のセルロース性材料を含んでなる、ペット用食餌組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-274868号公報
【特許文献2】特表2003-518373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、人間用食品業界では、原材料の素材や質にこだわった商品が増加している。これに伴い、ペットの飼い主も、大切なペットにも良質な素材のペットフードを与えたいとの要求が増えており、素材として生原料そのものをより多く含むことが求められている。
【0008】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、ドライフードの製造において生肉原料の配合量を増やすと、フード粒自体を造粒出来ない、あるいは造粒出来ても歩留まりが大きく低下する等の問題があった。また、製造されたフード粒が不安定で、食感が劣る場合があったり、フード粒自体の形状を維持出来ない場合があった。
【0009】
一方、特許文献2のように40%以上の生肉原料を含む場合であっても、セルロース性材料等の食物繊維を配合すれば上記問題点は解決出来る場合があるが、嗜好性が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、生肉原料を多く含み、嗜好性が良好なドライペットフードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の態様を有する。
(1)粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料と、油脂原料とを含む原料混合物の粒状物を含有するドライペットフードであって、前記生肉原料の含有量が、前記原料混合物の全量に対して36%超であり、前記粉体原料が大豆たんぱくを含む、ドライペットフード。
(2)前記生肉原料が、前記原料混合物の主原料である、前記(1)に記載のドライペットフード。
(3)前記大豆たんぱくの含有量が、前記原料混合物の全量に対して5~30%である、前記(1)又は(2)に記載のドライペットフード。
(4)前記原料混合物中、食物繊維の含有量が、前記原料混合物の全量に対して10%以下である、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載のドライペットフード。
(5)前記粉体原料は、穀物原料としてトウモロコシを含む、前記(1)~(4)のいずれか一つに記載のドライペットフード。
(6)前記油脂原料の含有量が、前記原料混合物の全量に対して3.5%以上である、前記(1)~(5)のいずれか一つに記載のドライペットフード。
(7)粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料と、油脂原料とを含む第1原料混合物の第1粒状物と、前記第1原料混合物中の生肉原料の含有量より生肉原料の含有量が少ない若しくは生肉原料を含まない第2原料混合物の第2粒状物とを含有するドライペットフードであって、前記第1原料混合物中の前記生肉原料の含有量が、前記第1原料混合物の全量に対して36%超である、ドライペットフード。
(8)前記第1粒状物の含有割合が、前記第1粒状物及び前記第2粒状物の合計量に対して25%未満である、前記(7)に記載のドライペットフード。
(9)前記第1粒状物が、弧形の角部を有し、前記第2粒状物が、異形断面を有する、前記(7)又は(8)に記載のドライペットフード。
(10)前記第1原料混合物が生肉原料として魚肉を含み、前記第2原料混合物が前記第1原料混合物に含まれる魚肉以外の魚肉を含む、前記(7)~(9)のいずれか一つに記載のドライペットフード。
(11)前記第1粒状物が、前記第2粒状物よりも濃い色を呈している、前記(7)~(10)のいずれか一つに記載のドライペットフード。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生肉原料を多く含み、嗜好性が良好なドライペットフードが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「ペット」とは人に飼育されている動物をいう。より狭義の意味では、ペットは飼い主に愛玩される動物である。また、「ペットフード」とは、ペット用の飼料をいう。本発明にかかるペットフードを「動物用飼料」又は「動物の餌」として販売することが可能である。
【0014】
本明細書において「嗜好性」とは、ペットに好まれて食されるか否かの指標であり、食感、食味、におい等に起因する。
【0015】
本明細書において、ペットフードの水分含有率(重量%)は常圧加熱乾燥法で求められる。この方法で求められる水分含有率には具材中の水分も含まれる。
(常圧加熱乾燥法)
アルミ秤量缶の重量(W1グラム)を恒量値として予め測定する。このアルミ秤量缶に
試料を入れて重量(W2グラム)を秤量する。つぎに強制循環式の温風乾燥器を使用して
、135℃、2時間の条件で試料を乾燥させる。乾燥雰囲気中(シリカゲルデシケーター
中)で放冷した後、重量(W3グラム)を秤量する。得られた各重量から下記式を用いて
水分含有率を求める。
水分含有率(単位:重量%)=(W2-W3)÷(W2-W1)×100
【0016】
[硬さの測定方法]
本明細書において、フード粒の硬さ(破断硬さ)は以下の測定方法で得られる値である。
圧縮試験機(TEXTUROMETER、型番:GTX-2、全研製)を用い、乾燥肉小片を一定の圧縮速度で圧縮したときの破断応力を下記の条件で測定する。
プランジャー:直径3mmの円柱状のプランジャー、プラットフォーム:平皿、圧縮速度:LOW、出力:1V、プランジャーの最下点:2mm(平皿とプランジャーの間隙)、測定温度:25℃。
具体的には、平皿の上に、測定対象の乾燥肉小片を1個置き、小片の真上から垂直にプランジャーを一定速度で押し付けながら応力を測定する。応力のピーク値(最大値)を破断応力の値として読み取る。10個の小片について測定を繰り返して平均値を求める。
上記圧縮試験機で測定される破断応力(単位:kgw)の数値に9.8を掛け算する(乗じる)ことによって、破断硬さの数値単位をニュートン(N)に変換する。
乾燥肉小片の硬さは、ペットフード製品を、製造日から30日以内に開封した直後に測定した値、またはこれと同等の条件で測定した値とする。
【0017】
<第1の態様:ドライペットフード>
本実施形態に係るドライペットフードは、粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料(以下、単に「生肉原料」ともいう)と、油脂原料とを含む原料混合物の粒状物(以下、「フード粒」ともいう)を含有する。
ここで、「原料混合物の粒状物」とは、原料混合物をエクストルーダー等の押出成形機で造粒して得られるフード粒を意味する。本実施形態に係るドライペットフードの製造方法の詳細については後述する。
【0018】
(粉体原料)
粉体原料は特に限定されず、公知の原料を用いることが出来る。具体的には、穀類(トウモロコシ、小麦、米、大麦、燕麦、ライ麦等)、豆類(脱脂大豆、丸大豆等)、デンプン類(小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン等)、植物性タンパク質源原料(コーングルテンミール、小麦グルテン、大豆タンパク等)、肉類(鶏肉、牛肉、豚肉、鹿肉、ミール類(チキンミール、ポークミール、ビーフミール、これらの混合ミール)等)、魚介類(魚肉、ミール類(フィッシュミール)等)、野菜類、粉状の添加物(ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、フレーバー原料、繊維、着色料、嗜好剤等)が挙げられる。
ミール類とは肉類または魚介類を圧縮させ細かく砕いた粉体を意味する。
嗜好剤としては、動物原料エキス、植物原料エキス、酵母エキス(ビール酵母エキス、パン酵母エキス、トルラ酵母エキス)、酵母(ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母等)の乾燥物等が挙げられる。
【0019】
本実施形態において、粉体原料は、大豆タンパクを含む。粉体原料が、大豆タンパクを含むことにより、生肉原料に含まれる水を吸収しやすく、原料を均一に混合しやすい。そのため、原料混合物に生肉原料を多く含みながら、原料混合物の成形性を高めやすい。
【0020】
大豆タンパクとしては、分離大豆タンパク、濃縮大豆タンパク等が挙げられる。
【0021】
大豆タンパクは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粉体原料に大豆タンパクを含む場合、大豆タンパクの含有量は、原料混合物の原料に対して5~30%が好ましく、7~25%がより好ましく、10~20%が更に好ましい。
大豆タンパクの含有量が上記の好ましい範囲内であると、ドライペットフード中のタンパク質量を適切な範囲内に調整しやすく、かつ、原料を均一に混合しやすい。
【0022】
本実施形態において、粉体原料は、穀物原料としてトウモロコシを含むことが好ましい。穀物原料としては、トウモロコシのドライミリング製品、トウモロコシのウェットミリング製品のいずれであってもよいが、トウモロコシのドライミリング製品が好ましい。
「トウモロコシのドライミリング製品」とは、水をほとんど使用しないで加工して得られたトウモロコシの粉砕品を意味する。トウモロコシのドライミリング製品は、コーンスターチ等のトウモロコシの一部を抽出したウェットミリング製品に比べてデンプンの含有量が少ない。そのため、造粒工程において粒同士が結着することを防止しやすく、所望の形状のフード粒を得やすくなるので、歩留まりを高めやすい。
トウモロコシのドライミリング製品としては、例えば、コーングリッツ、コーンミール、リダクションフラワー、コーンフラワー、コーンジャーム、ホミニーフィード等が挙げられる。なかでも、トウモロコシのドライミリング製品としては、原料混合物のダマ発生防止及び粒の結着防止の観点から、リダクションフラワー、コーンフラワーが好ましい。
【0023】
トウモロコシのドライミリング製品は、1種単独で用いてもく、2種以上を併用してもよい。
粉体原料にトウモロコシのドライミリング製品を含む場合、トウモロコシのドライミリング製品の含有量は、原料混合物の原料に対して10~40%が好ましく、15~35%がより好ましく、20~30%が更に好ましい。
トウモロコシのドライミリング製品の含有量が上記の好ましい範囲内であると、ドライペットフード中のタンパク質量を適切な範囲内に調整しやすく、かつ、造粒工程において粒同士が結着することを防止しやすい。
【0024】
粉体原料は、1種単独で用いてもく、2種以上を併用してもよい。なかでも、粉体原料は、大豆タンパク及びトウモロコシのドライミリング製品を含有することが好ましい。
【0025】
粉体原料の含有量は、原料混合物の全量に対し、原料混合物の原料に対して40%~60%が好ましく、50%~60%がより好ましく、55%~60%が更に好ましい。
粉体原料の含有量が上記の好ましい範囲内であると、嗜好性がより向上しやすい。
【0026】
(生肉原料)
生肉原料としては動物肉及び/又は魚肉であれば特に限定されず、公知の原料を用いることが出来る。
動物肉としては、牛、豚、羊、鹿、ウサギ、鶏、七面鳥、ウズラ等の生肉が挙げられる。
魚肉としては、まぐろ、かつお、あじ、サバ、サンマ、イワシ等の魚肉が挙げられる。
生肉原料の形態は特に限定されず、ペースト、スラリー、ミンチ等が挙げられる。なかでも、生肉原料の形態は、原料を均一に混合しやすくする観点から、スラリー、ペーストが好ましい。
【0027】
本実施形態において、生肉原料は、魚肉であることが好ましい。生肉原料として魚肉を用いると、原料混合物に生肉を多く含みながら、成形性を高めやすい。また、ペット(特に猫)に対する嗜好性を高めやすい。また、本実施形態において、生肉原料の含有量が、原料混合物の全量に対して36%超と多く含むため、ペットフード公正取引協議会が定める基準量以上の生肉原料がドライペットフードに含めることができる場合がある。その場合、ドライペットフードを収容する包装体に、当該ドライペットフードが生肉を含むことを表記出来るので、需要者への訴求力が高まりやすい。
【0028】
生肉原料は、1種単独で用いてもく、2種以上を併用してもよい。
生肉原料の含有量は、原料混合物の原料に対して36%超であり、36%超~60%が好ましく、36超~55%がより好ましく、36超~50%が更に好ましい。
生肉原料の含有量が36%超であると、ドライペットフードの嗜好性が高めやすい。また、ペットフード公正取引協議会が定める基準量以上の生肉原料がドライペットフードに含める場合がある。その場合、ドライペットフードを収容する包装体に、当該ドライペットフードが生肉を含むことを表記出来るので、需要者への訴求力が高まりやすい。
一方、生肉原料の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であると、原料を均一に混合しやすく、他の原料との配合のバランスを取りやすく、ドライペットフードの栄養バランスを調整しやすい。また、原料混合物の成形性を高めやすい。
【0029】
本実施形態において、生肉原料が原料混合物の主原料であることが好ましい。ここで、「主原料」とは、原料混合物の全量に対して、最も配合量の多い原料を指す。
生肉原料が原料混合物の主原料であると、嗜好性をより高めやすい。
【0030】
(油脂原料)
油脂原料としては特に限定されず、公知の原料を用いることが出来る。具体的には、鶏油(チキンオイル)、豚脂(ラード)、牛脂(タロー)、乳性脂肪、魚油等の動物性油脂;オリーブ油、カカオ油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、ヤシ油、つばき油、大豆油、菜種油等の植物性油脂等が挙げられる。
なかでも、融点が高く取り扱い性が高いことから、常温で液体の油脂が好ましく、大豆油がより好ましい。
【0031】
油脂原料は、1種単独で用いてもく、2種以上を併用してもよい。
油脂原料の含有量は、原料混合物の原料に対して2.5%以上が好ましく、3%以上ががより好ましく、3.5%以上が更に好ましい。
油脂原料の含有量の上限値は特に限定されないが、8%以下が好ましく、6.5%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。
油脂原料の含有量が上記の好ましい範囲内であると、原料混合物に生肉を多く含みながら、粒同士の形状のバラツキを抑え、安定した食感を実現しやすい。
【0032】
(その他の原料)
原料混合物は、粉体原料、生肉原料及び油脂原料以外の他の原料を含んでもよい。
他の原料としては、水、液糖、食物繊維(セルロース等);ハーブ;ビタミン類;ミネラル類;アミノ酸類;甘味料;着色料;保存料;増粘安定剤;加工でん粉;酸化防止剤;pH調整剤;調味料;乳化剤;膨張剤;香料等が挙げられる。
【0033】
本実施形態において、原料混合物中、食物繊維の含有量が、原料混合物の全量に対して10%以下であることが好ましく、9%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。
食物繊維の含有量の下限値は特に限定されないが、0%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。
食物繊維の含有量が上記の好ましい範囲内であると、嗜好性が低下しにくく、原料を均一に混合しやすい。
【0034】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、原料混合物の粒状物(フード粒)の硬さは、60~100Nが好ましく、70~90Nがより好ましく、75-85Nが更に好ましい。
フード粒の硬さが上記の好ましい範囲内であると、嗜好性が向上しやすい。
【0035】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、フード粒の形状は、ペットが食するのに好適な形状であればよく、特に制限されないが、フード粒の形状維持の観点から、弧形の角部を有する形状が好ましく、球状又は楕円形状が好ましい。ここで、「弧形」とは、円周やそれに似た曲線の一部分といえる形であり、フード粒の角部が丸みを帯びている形状であることを意味する。
【0036】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、フード粒の大きさは、ペットが食するのに好適な大きさであればよく、特に制限されないが、フード粒の大きさが、長径6.0~9.0mm、短径5.5~8.5mm、厚み2.5~4.5mmであることが好ましい。フード粒の大きさが前記範囲内である場合、ペットが食しやすい。
【0037】
本実施形態に係る製造方法により得られたドライペットフードの水分含量は、イヌ用のペットフードの場合は3.0~12質量%が好ましく、5.0~12質量%がより好ましく、8.0~12質量%がさらに好ましい。ネコ用のペットフードの場合は、2.0~10質量%が好ましく、3.0~9.0質量%がより好ましく、4.0~8.0質量%がさらに好ましい。
水分含量が前記範囲内であると、十分な嗜好性が得られる。
【0038】
本実施形態に係るドライペットフードは、そのまま包装体に収容してペットフード製品としてもよいし、他のドライペットフードと混ぜて混合ペットフードとしてから包装体に収容してペットフード製品としてもよい。具体的には、本実施形態に係るドライペットフードをトッピング粒とし、他のドライペットフードをメイン粒とした混合ペットフードとすることができる。
【0039】
上記混合ペットフードにおける他のドライペットフード(メイン粒)は特に限定されず、総合栄養食基準を満たす公知のドライペットフードを採用できる。
【0040】
混合ペットフードとする場合、トッピング粒が弧形の角部を有し、メイン粒が異形断面を有する形状であることが好ましい。
メイン粒の異形断面を有する形状としては、ハート形、クローバー形、星形、十字形、ドーナッツ形などが挙げられる。
トッピング粒及びメイン粒がそれぞれ上記形状を有する場合、混合ペットフードに異なるフード粒が含まれることを視認しやすい。また、トッピング粒とメイン粒とを混合した際に、トッピング粒が形崩れしにくい。
なお、メイン粒の形状は異形断面を有する形状には限定されず、円形、楕円形、多角形等の形状であってもよい。
【0041】
メイン粒の硬さは特に限定されないが、40~60Nであることが好ましい。トッピング粒の硬さが上記の好ましい範囲内であり、かつ、メイン粒の硬さが上記の好ましい範囲内であると、トッピング粒とメイン粒の食感が異なるので、嗜好性が向上しやすい。
【0042】
メイン粒の大きさは、ペットが食するのに好適な大きさであればよく、特に制限されないが、メイン粒の大きさが、長径5~15mm、短径5~15mm、厚み2~5mmであることが好ましく、長径7~10mm、短径7~10mm、厚み2~3mmであることが更に好ましい。
【0043】
上記混合ペットフードにおいて、メイン粒:トッピング粒の比率は、95:5~50:50が好ましく、70:30~90:10がより好ましく、90:10~80:20が更に好ましい。
メイン粒:トッピング粒の比率が上記の好ましい範囲内であると、嗜好性を高めやすい。
【0044】
<ドライペットフードの製造方法>
本実施形態に係るペットフードを製造する方法は、公知の方法を用いることができ、上述の本実施形態の構成を満たせば、特に限定されない。公知の方法としては、下記、造粒工程、乾燥工程、コーティング工程の順でペットフードを製造する方法が挙げられる。
[造粒工程]
造粒工程では、原料混合物を造粒してフード粒を得る。原料を混合して原料混合物とする方法、および該原料混合物を粒状に成形(造粒)する方法は、公知の方法を用いることができる。
例えばエクストルーダーを用いて膨化粒を製造する方法を好適に用いることができる。
エクストルーダーを用いて膨化粒を製造する方法は、例えば「小動物の臨床栄養学 第5版」(Michael S. Hand、Craig D. Thatcher, Rebecca L. Remillard, Philip Roudebusg、Bruce J. Novotny 編集、Mark Morris Associates 発行;2014年;p.209~p.215)に記載されている方法等が適用できる。
【0045】
エクストルーダーを用いて膨化粒を製造する方法の例を説明する。まず、膨化粒の原料のうち外添剤以外の原料を、必要に応じて粉砕した後、混合する。グラインダー等を用いて粉砕しつつ混合してもよい。また必要に応じて水(原料組成には含まれない。)を加えて原料混合物を得る。
得られた原料混合物をエクストルーダーに投入し、加熱、加圧した後、出口から押し出す。出口には所定の形状の穴が形成されたプレートと、該プレートから押し出された原料混合物を所定の長さ(厚さ)に切断するカッターが設けられている。原料混合物は該プレートの穴から押し出され、カッターで切断されることにより所定の形状に成形されると同時に、加圧状態から常圧に開放されることによって原料混合物中の水蒸気が膨張し、これによって原料混合物が膨化して多孔質の粒が得られる。
【0046】
[乾燥工程]
こうして得られる粒を、所定の水分含量となるまで必要に応じて乾燥して膨化粒(フード粒)を得る。ドライタイプのフード粒を製造する場合、乾燥工程は必須である。
例えば、エクストルーダーから排出される粒の水分含量は10~30質量%である。この程度の水分を含んでいると良好な成形性が得られやすい。
エクストルーダーから排出される粒の温度は、エクストルーダー内での加熱温度に依存する。例えば90~150℃である。
エクストルーダーから排出された粒を乾燥する方法は公知の方法を適宜用いることができる。例えば、粒に熱風を吹き付けて乾燥させる熱風乾燥法、減圧乾燥法、油中でフライする方法等が挙げられる。例えばコンベア式の熱風乾燥機を用いた熱風乾燥法が好ましい。
乾燥条件(温度、時間)は、粒の成分の熱変性を生じさせずに、粒の温度を100℃以上に昇温させて粒中の水分を蒸発させ、所望の水分含量に調整できる条件であればよい。
例えば、熱風乾燥機で乾燥させる場合、粒に接触させる熱風の温度は100~140℃が好ましく、100~110℃がより好ましい。乾燥時間は特に限定されず、例えば5~20分間程度で行われる。
【0047】
乾燥後に、さらに油脂類、調味料又は香料等を含むコーティング剤で、ペットフードをコーティングしてもよい。
コーティング方法は特に制限されず、例えば真空コート法により行うことができる。
前記真空コート法は、加温したフード粒と前記コート剤を接触又は付着させた状態で、減圧し、その後ゆっくりと大気開放する方法である。前記コート剤は、液状であっても粉末状であってもよい。前記コーティングによりペットの嗜好性(食いつき)を向上させることができる。
【0048】
<第2の態様:ドライペットフード>
本実施形態に係るドライペットフードは、粉体原料と、動物肉及び魚肉からなる群より選ばれる少なくとも1種の生肉原料と、油脂原料とを含む第1原料混合物の第1粒状物(以下、「第1フード粒」ともいう)と、前記第1原料混合物中の生肉原料の含有量より生肉原料の含有量が少ない若しくは生肉原料を含まない第2原料混合物の第2粒状物(以下、「第2フード粒」ともいう)とを含有する。
【0049】
(第1フード粒)
第1フード粒の原料である第1原料混合物における粉体原料、生肉原料及び油脂原料は、前記第1の態様に係るドライペットフードにおける粉体原料、生肉原料及び油脂原料と同様である。ただし、第1原料混合物における粉体原料は、大豆タンパクを含んでもよいし含まなくてもよいが、大豆たんぱくを含むことが好ましい。
【0050】
第1原料混合物において、第1原料混合物中の前記生肉原料の含有量が、前記第1原料混合物の全量に対して36%超であり、36%超~60%が好ましく、36超~55%がより好ましく、36超~50%が更に好ましい。
生肉原料の含有量が36%超であると、ドライペットフードの嗜好性が高めやすい。また、ペットフード公正取引協議会が定める基準量以上の生肉原料がドライペットフードに含まれることとなる。そのため、ドライペットフードを収容する包装体に、当該ドライペットフードが生肉を含むことを表記出来るので、需要者への訴求力が高まりやすい。
一方、生肉原料の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であると、原料を均一に混合しやすく、他の原料との配合のバランスを取りやすく、ドライペットフードの栄養バランスを調整しやすい。また、原料混合物の成形性を高めやすい。
【0051】
(第2フード粒)
第2フード粒は、第1原料混合物中の生肉原料の含有量より生肉原料の含有量が少ない若しくは生肉原料を含まない第2原料混合物の粒状物であれば特に限定されず、総合栄養食基準を満たす公知のドライペットフードを採用できる。
【0052】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、第1フード粒が弧形の角部を有し、第2フード粒が異形断面を有する形状であることが好ましい。
第2フード粒の異形断面を有する形状としては、ハート形、クローバー形、星形、十字形、ドーナッツ形などが挙げられる。なお、メイン粒の形状は異形断面を有する形状には限定されず、円形、楕円形、多角形等の形状であってもよい。
第1フード粒及び第2フード粒がそれぞれ上記形状を有する場合、ドライペットフードに異なるフード粒が含まれることを視認しやすい。また、第1フード粒と第2フード粒とを混合した際に、第1フード粒が形崩れしにくい。
また、第1フード粒が弧形の角部を有すると、第1原料混合物に多く生肉原料を含むことにより第1原料混合物が不均一になりがちな場合でも、第1フード粒の形状を維持しやすい。
【0053】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、第1フード粒の含有割合が、第1フード粒及び第2フード粒の合計量に対して25%未満であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることが更に好ましい。
第1フード粒の含有割合が上記の好ましい範囲内であると、嗜好性を高めやすい。
【0054】
上記混合ペットフードにおいて、第2フード粒:第1フード粒の比率は、95:5~50:50が好ましく、70:30~90:10がより好ましく、90:10~80:20が更に好ましい。
第2フード粒:第1フード粒の比率が上記の好ましい範囲内であると、嗜好性を高めやすい。
【0055】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、第1原料混合物が生肉原料として魚肉を含み、第2原料混合物が第1原料混合物に含まれる魚肉以外の魚肉を含むことが好ましい。この場合、第1フード粒及び第2フード粒のいずれにも魚肉原料が含まれることとなり、ドライペットフード全体として統一感を出しやすい。また。第1フード粒と第2フード粒とで異なる魚肉原料を含むことにより、例えば第1フード粒に香り立ち効果の高い魚肉原料を用いた場合、第1フード粒を際立たせ、誘因性を高めやすい。
【0056】
本実施形態に係るドライペットフードにおいて、第1フード粒が、第2フード粒よりも濃い色を呈していることが好ましい。この場合、香り立ちの高い第1フード粒をより目立たせやすい。
【0057】
本実施形態において、第1フード粒の硬さ、形状及び大きさは、前記第1の態様におけるフード粒の硬さ、形状及び大きさと同様である。
【0058】
<ドライペットフードの製造方法>
本実施形態に係るペットフードを製造する方法は、公知の方法を用いることができ、上述の本実施形態の構成を満たせば、特に限定されない。公知の方法としては、下記、造粒工程、乾燥工程、コーティング工程の順でペットフードを製造する方法が挙げらる。
具体的には、前記第1の態様に係るペットフードの製造方法と同様にして第1フード粒及び第2フード粒を得て、第1フード粒及び第2フード粒を混合することにより本実施形態に係るドライペットフードが得られる。
【0059】
本実施形態においては、ペットフード公正取引協議会が定める基準量以上の生肉原料がドライペットフードに含まれることとなる。そのため、ドライペットフードを収容する包装体に、当該ドライペットフードが生肉を含むことを表記出来るので、需要者への訴求力が高まりやすい。具体的には、包装体に、魚の写真若しくは精緻なイラストを包装体に付すことができるので、当該ペットフード製品が魚肉を含んでおり、健康的かつ嗜好性の高いドライペットフードであることを需要者に対して訴求できる。
【実施例0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0061】
[実施例1~3:ドライペットフード(トッピング粒)の製造]
表1に示す原料を混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を試作用エクストルーダーに投入し、混練しながら加熱処理を施し、試作用エクストルーダーの出口で粒状に押出造粒すると同時に膨化させた。得られたフード粒を乾燥機を用いて乾燥処理を行い、実施例1~3のドライペットフード(トッピング粒)を得た。
【0062】
【0063】
(原料混合物のダマ有無の評価)
原料を混合した際に、原料混合物のダマの有無を目視で下記基準にしたがって評価した。結果を「原料混合(ダマ有無)」として表1に示す。
◎:きれいに分散している。
○:問題なく後工程へ進める。
【0064】
(造粒可否の評価)
造粒可否を下記基準にしたがって評価した。結果を「造粒可否」として表1に示す。
◎:結着がなくきれいに成形できる。
○:一部結着はあるが問題なく生産できる。
【0065】
(粒の結着の有無の評価)
粒の結着の有無を下記基準にしたがって評価した。結果を「粒の結着の有無」として表1に示す。
◎:結着がなくきれいに成形できる。
〇:一部結着はあるが問題なく生産できる。
【0066】
(嗜好性評価)
総合栄養食基準を満たす配合の原料混合物をエクストルーダーに投入し、混練しながら加熱処理を施し、エクストルーダーの出口で粒状に押出造粒すると同時に膨化させた。得られたフード粒を乾燥機を用いて乾燥処理を行い、メイン粒とするドライペットフードを得た。
得られたメイン粒を各試験例のドライペットフード(トッピング粒)と表1に比率で混合し、混合ペットフードを得た。
各混合ペットフードPと、メイン粒のペットフードQに対して、摂食量を比較する方法で嗜好性を評価した。20頭の猫をモニターとして2日間でテストを行った。
第1日は、ペットフードPおよびQのうち、一方を左から、他方を右から、猫1頭に対して所定の給餌量で同時に与え、猫がどちらか一方を完食した時点で又は30分後に、猫が食べたペットフード量を測定した。
該猫1頭が第1日に食べた合計のペットフードの質量に対して、ペットフードQの摂食量とペットフードPの摂食量の比率(P:Q、P+Q=100%)を百分率で求めた。モニターとした猫の数に基づいて、得られた百分率を平均して、第1日の結果とした。
第2日は、ペットフードPおよびQのうち、第1日とは反対に、一方を右から、他方を左から同時に与えた。猫1頭に対して第1日と同量の給餌量で与え、猫がどちらか一方を完食した時点で又は1時間後に、猫が食べたペットフード量を測定した。第1日と同様の算出方法で第2日の結果を得た。
最後に、第1日と第2日の結果を平均して、最終結果であるペットフードP:ペットフードQの摂食量の比「P:Q」を求めた。PまたはQの数値が高いほどモニターである猫が好んで摂食したことを示す。Pの値が50%より高いと、ペットフードQよりも嗜好性が向上したことを意味する。結果を「嗜好性評価結果」として表1に示す。
【0067】
表1に示す結果から、実施例1~3では、原料混合物のダマ発生が抑制され、造粒も可能で、エクストルーダーから押し出した後の粒同士の結着も抑制出来ていることが確認された。また、実施例1~3で得られたドライペットフードをトッピング粒として混合した混合ペットフードは、メイン粒のみからなるペットフードに比べて嗜好性が向上していることが確認された。特に、実施例3では、原料混合物のダマ発生の抑制及びエクストルーダーから押し出した後の粒同士の結着の抑制の効果が高いことが確認された。
【0068】
[実施例4~6:ドライペットフード(トッピング粒)の製造]
表2に示す原料を混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物をエクストルーダーに投入し、混練しながら加熱処理を施し、エクストルーダーの出口で粒状に押出造粒すると同時に膨化させた。得られたフード粒を乾燥機を用いて乾燥処理を行い、実施例4~6のドライペットフード(トッピング粒)を得た。
【0069】
【0070】
実施例4~6について、実施例1~3と同様にして、「原料混合物のダマ有無の評価」、「造粒可否の評価」、「粒の結着の有無の評価」、「嗜好性評価」を行った。結果を表2に示す。
【0071】
表2に示す結果から、実施例4~6では、原料混合物のダマ発生が抑制され、造粒も可能で、エクストルーダーから押し出した後の粒同士の結着も抑制出来ていることが確認された。また、実施例4~6で得られたドライペットフードをトッピング粒として混合した混合ペットフードは、メイン粒のみからなるペットフードに比べて嗜好性が向上していることが確認された。