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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176818
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/04 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A61C15/04 501
A61C15/04 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089310
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】倉光 祥平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】清掃効果が高い歯間清掃具を提供する。
【解決手段】歯間清掃具は、所定間隔をおいて配置される一対の支持片21,22と、一対の支持片と連結され、手で把持可能なハンドル部1と、一対の支持片の間で延びる、少なくとも1つの撚られたマルチフィラメント31を有する線材3と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、
前記一対の支持片と連結され、手で把持可能なハンドル部と、
前記一対の支持片の間で延びる、少なくとも1つの撚られたマルチフィラメントを有する線材と、
を備えている、歯間清掃具。
【請求項2】
前記線材は、複数の前記マルチフィラメントを有している、請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記線材は、複数の前記マルチフィラメントの間に隙間が形成されるように、前記一対の支持片の間に配置されている、請求項2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記ハンドル部は、前記線材と直交するように前記一対の支持片と連結されている、請求項1に記載の歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の間に詰まった歯垢を除去する歯間清掃具としては、従来、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1には、所定間隔をおいて配置された支持片、及び両支持片を連結し手で把持可能なハンドル部を有する樹脂製の清掃具本体と、両支持片の間に配置されるフロスと呼ばれる線材と、を備えた歯間清掃具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-244117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の歯間清掃具は、1本のフロスを線材として用いているため、十分な歯垢除去効果が得られにくいという問題があった。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、清掃効果が高い歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点に係る歯間清掃具は、所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、前記一対の支持片と連結され、手で把持可能なハンドル部と、前記一対の支持片の間で延びる、少なくとも1つの撚られたマルチフィラメントを有する線材と、を備えている。
【0006】
第2の観点に係る歯間清掃具は、上記第1の観点に係る歯間清掃具において、前記線材が、複数の前記マルチフィラメントを有している。
【0007】
第3の観点に係る歯間清掃具は、上記第2の観点に係る歯間清掃具において、前記線材が、複数の前記マルチフィラメントの間に隙間が形成されるように、前記一対の支持片の間に配置されている。
【0008】
第4の観点に係る歯間清掃具は、上記第1から第3のいずれかの観点に係る歯間清掃具において、前記ハンドル部が、前記線材と直交するように前記一対の支持片と連結されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る歯間清掃具によれば、清掃効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の側面図である。
図4図1の正面図である。
図5図1の歯間清掃具の製造に用いる成形型を示す図である。
図6図1の歯間清掃具の使用方法を示す図である。
図7図1の歯間清掃具の使用方法を示す図である。
図8図1の歯間清掃具の使用方法を示す図である。
図9】成形型の他の例を示す図である。
図10】本発明の歯間清掃具の他の例を示す平面図である。
図11】人工プラークが塗られた模型の歯を示す写真である。
図12】実施例1の歯間清掃具を用いて歯間の清掃を行う例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る歯間清掃具の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る歯間清掃具の斜視図、図2図1の平面図、図3図1の側面図、図4図1の正面図である。なお、以下では、説明の便宜上、各図の図面内での方向を基準に説明を行う。この方向の中で、図2における上下方向を幅方向、右側を前端側、左側を後端側、図3における上下方向を高さ方向ということもある。但し、本発明はこの方向の規定により限定されるものではない。
【0012】
<1.歯間清掃具の概要>
図1に示すように、この歯間清掃具は、樹脂製の清掃具本体10と、この清掃具本体10に取付けられ、歯間の歯垢を除去するための線材3と、を備えている。清掃具本体10は、手で把持可能な棒状に延びるハンドル部1と、このハンドル部1の前端から分岐するように延びる一対の支持片21、22と、を備えている。ここでは、図4の左側の支持片を第1支持片21と称し、右側の支持片を第2支持片22と称する。また、両支持片21,22の間には、ハンドル部1の延びる方向と直交するように、上述した線材3が配置されている。そして、線材3の両端部は、各支持片21,22にそれぞれ連結されている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0013】
<2.清掃具本体>
ハンドル部1は、前側から後側に向かって並ぶ、第1部位11、第2部位12、第3部位13、及び第4部位14を備えており、これら4つの部位11~14が一体的に連結されている。第1部位11の前端には上述した一対の支持片21,22が連結されている。また、図2に示されるように、第1部位11は、前端から後端にいくにしたがって幅が広くなるように形成されている。
【0014】
図2に示されるように、第2部位12は、第1部位11に連結された前端から中間部に向かって滑らかに幅が狭くなるように形成されるとともに、中間部から後端に向かって滑らかに幅が広くなるように形成されている。すなわち、第2部位12の両側面には円弧状の凹部がそれぞれ形成されている。また、図3に示されるように、第2部位12の上下方向の高さは、前端から中間部に向かって滑らかに高くなり、中間部から後端に向かって滑らかに低くなるように形成されている。すなわち、第2部位12の上面及び下面は、上下各方向に凸となる円弧状に形成されている。そして、第2部位12の両側面には、上下方向に延びる複数のリブ121が所定間隔をおいて前後方向に並んでいる。
【0015】
第2部位12の後端に連結された第3部位13は、図2に示されるように、前端から後端にいくにしたがって幅が狭くなるように形成されるとともに、その後端に第4部位14が連結されている。また、図3に示されるように、第3部位13の上下方向の厚みは第1部位11とほぼ同じである。そして、図2に示されるように、第4部位14は、第2部位12の中間部と概ね同じ幅のまま後方に向かって延びている。
【0016】
以上のような構成により、利用者は、第2部位12の側面を、例えば、親指と人差し指とで把持しやすくなっている。そして、第2部位12の側面に形成されたリブ121は、滑り止めの役割を果たしている。
【0017】
続いて、支持片21,22について説明する。各支持片21,22は、平面視においてハンドル部1の前端からU字型をなすように前方へ向かって円弧状に延びている。また、図3に示されるように、側面視において、各支持片21,22は、前方にいくにしたがって下方に湾曲しており、その結果、各支持片21,22の前端部は、下方を向いている。さらに、各支持片21,22において、互いに向き合う面は、平坦に形成されている。この面を以下、第1面(対向面)211,221と称し、それとは反対側の外側を向く面を第2面212,222と称することとする。そして、各支持片21,22の前端付近の対向面を結ぶように、上述した線材3が配置されている。
【0018】
清掃具本体10を構成するハンドル部1及び2つの支持片21,22は、種々の材料で形成することができるが、例えば、可撓性を有するポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料で一体的に形成することができる。但し、これらを別部材で形成することもできる。
【0019】
<3.線材>
次に、線材3について説明する。線材3は、複数のマルチフィラメント31で構成されたものであるが、複数のマルチフィラメント31の間に隙間が形成されるように、線材3が支持片21,22に支持されている。各マルチフィラメント31は、種々の樹脂材料により形成された複数のモノフィラメントを撚ったものであり、例えば、ポリエチレン、ナイロン、テフロン(登録商標)、ビニロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂で形成することができる。このなかで、特に、ポリエチレンは、摩擦係数が小さいため、歯間を滑りやすく、歯垢を掻き取りやすいという利点がある。
【0020】
各マルチフィラメント31の太さは、特には限定されないが、例えば、70~500デニールとすることが好ましく、100~250デニールとすることがさらに好ましく、100~160デニールであることがさらに好ましい。
【0021】
また、線材3を構成するマルチフィラメント31の数は、特には限定されないが、例えば、2~6本にすることが好ましく、3~5本にすることがさらに好ましく、3~4本にすることが特に好ましい。マルチフィラメント31の数を2本以上にすると、歯垢の掻き取り効果が向上する。一方、6本以下にすると、歯間に入りやすくなり、操作性を向上させ、結果として歯垢の掻き取り効果を向上することができる。
【0022】
各マルチフィラメント31の両端は、束ねられて支持片21,22に固定されているが、支持片21,22の間の部分においては、上記のように、複数のマルチフィラメント31の間に隙間が形成されるように線材3が支持されている。すなわち、複数のマルチフィラメント31は密着して束ねられているのではなく、自由に動くことで隙間が形成されるようになっている。
【0023】
マルチフィラメント31を構成するモノフィラメントの数は、15~120本であることが好ましく、30~60本であることがさらに好ましい。これは、次の理由による。すなわち、モノフィラメントの数が15本以上となると、各マルチフィラメントが太くなり、高い清掃効果を得ることができるからである。一方、モノフィラメントの数が多すぎると、マルチフィラメントが太くなりすぎて、歯間に挿入しにくくなるおそれがため、120本以下であることが好ましい。
【0024】
各マルチフィラメント31は、複数のモノフィラメントを撚ることで構成されている。各マルチフィラメント31の1m当たりの撚り数は、5~500回であることが好ましく、50~400回であることがさらに好ましく、150~350回であることが特に好ましい。これは、撚り数が5回以上となると、高い清掃効果を得ることができるからである。また、50回以上となると複数のマルチフィラメント31がまとまりやすくなり、歯間への挿入性に優れるからである。一方、撚り数が多すぎると、各マルチフィラメント31が細くなるおそれがあり、清掃効果が得られにくくなる可能性があるため、撚り数を500回以下とすることが好ましい。
【0025】
<4.線材と支持片の連結>
続いて、線材3と支持片21、22との連結方法について説明する。図2及び図4に示すように、線材3の両端部は、各支持片21、22を貫通している。具体的に説明すると、線材3の左端部は、第1支持片21の第1面211を通過し、第2面212から突出しており、突出した線材3のマルチフィラメント31が互いに熱溶着されて一体化し、塊32を形成している。同様に、線材3の右端部は、第2支持片22の第1面221を通過し、第2面222から突出しており、突出した線材3のマルチフィラメント31が互いに熱溶着されて一体化し、塊32を形成している。これらの塊32は、束ねられたマルチフィラメント31の外径よりも大きくなっている。
【0026】
また、図4に示すように、支持片21、22における第1面211,221間で延びる線材3を構成する各マルチフィラメント31の長さLは、これら第1面211,221間の距離Wよりも長くなっている。すなわち、各マルチフィラメント31は、第1面211,221間でやや緩んだ状態となっている。このような緩みを緩み度S(%)として、以下の式(1)のように規定することができる。
S=100×(L-W)/W (1)
第1面211,221間の距離Wは、14~17mmであることが好ましい。なお、図4では複数のマルチフィラメントの長さが相違するように図示されているが、全てのマルチフィラメントの長さはほぼ同じであり、図4はマルチフィラメントの間の隙間を強調するためにこのように図示している。
【0027】
そして、この緩み度Sは、0.5~8%であることが好ましく、1~7%であることがさらに好ましい。
【0028】
<5.歯間清掃具の製造方法>
次に、上記のように構成された歯間清掃具の製造方法について、図5を参照しつつ説明する。
【0029】
まず、図5に示すような射出成形用の成形型100を準備する。この成形型100には、複数の清掃具本体10を成形するために、複数のキャビティ101が設けられている。この成形型において、樹脂を注入するためのゲート102は、ハンドル部1に設けられている。そして、射出成形を行う際には、成形型に線材3を配置する。このとき、線材3は、複数のキャビティ101に亘って、各キャビティ101の両支持片21、22に対応する部分の間で延びるように配置される。また、この線材3は、複数のマルチフィラメント31を引き揃えたものである。このとき、後述するように線材3に緩みをもたせるため、線材3の張力を調整しておく。
【0030】
次に、キャビティ101に清掃具本体用の樹脂を注入する。そして、樹脂の注入が完了すると、所定時間経過後に、成形型100から複数の清掃具本体10を取り出す。このとき、各清掃具本体10においては、線材3が両支持片21、22に埋め込まれた状態で一体化されている。また、複数の清掃具本体10は、1の線材3によって連結された状態となっている。そのため、次の工程として、各清掃具本体10の第1支持片21の第2面212側、及び第2支持片22の第2面222側において、線材3を焼き切る。線材3を焼き切る手段は、特には限定されないが、例えば、火炎や加熱した刃物で焼き切ったり、遠赤外線などの熱光線の照射、あるいは電気放電によって焼き切ったりすることができる。これにより、線材3と清掃具本体10とが一体化された複数の歯間清掃具が形成される。
【0031】
このように、線材3が焼き切られると、熱によって線材3を構成する複数のマルチフィラメント31が溶融し、一体化することで塊32が形成される。
【0032】
<6.歯間清掃具の使用方法>
続いて、上述した歯間清掃具の使用方法について説明する。ここでは、一例として、図6図9に示すように、下側の臼歯(奥歯)の歯間を清掃する場合について説明する。まず、利用者は線材3を下側に向けてハンドル部1を把持し、線材3を口腔内に挿入した上で、臼歯51~54の並ぶ方向にハンドル部1を移動させる。以下では、説明の便宜のため、口の外部側から内部側へ並ぶ4つの臼歯を第1~第4臼歯と称することとする。また、口の外部側を近位側、口の内部側を遠位側と称することとする。そして、図6に示すように、線材3を臼歯51~54の上面に接触させながら、臼歯51~54の並ぶ方向に沿って、所望の歯間まで線材3を移動させる。
【0033】
次に、線材3が所望の歯間(例えば、第3臼歯53及び第4臼歯54の間)まで到達すると、利用者はハンドル部1を下方に移動させ、図7に示すように、線材3を歯間に挿入する。そして、歯間において線材3が上下するようにハンドル部1を上下動させ、これによって歯間の歯垢を除去する。
【0034】
<7.特徴>
上記のように構成された歯間清掃具は、次の効果を得ることができる。
(1)線材3が撚られたマルチフィラメント31によって構成されているため、撚られていないマルチフィラメントに比べ歯垢の掻き取り効果が高い。すなわち、撚られていないマルチフィラメントは、モノフィラメントがばらけるため、歯垢の掻き取り量が少ないが、撚られたマルチフィラメント31はある程度の太さになるため、歯垢の掻き取り効果が高い。
【0035】
(2)本実施形態では、複数のマルチフィラメント31が撚られておらず、単に引き揃えた状態(単に束ねられた状態)で支持片21,22の間に配置されている。そのため、複数のマルチフィラメント31の間には隙間が形成される。これにより、複数のマルチフィラメント31は1つの束になって歯間に挿入されるのではなく、これらが離れた状態で歯間に挿入される傾向にある。したがって、束になって歯間に挿入されるよりも挿入に要する力を低減することができる。同様に、歯間から線材3を引き抜く際の要する力も低減することができる。なお、上記のようにマルチフィラメント31を構成するモノフィラメントの数は15~120本であるのに対し、線材3を構成する撚られたマルチフィラメント31の数は2~6本と格段に少ないため、歯間には引っ掛かりにくい。
【0036】
(3)本実施形態の清掃具本体10は、図2に示すようにY字状に形成されているため、ハンドル部1を奥歯に沿わすように口腔内に挿入することで、奥歯の歯間に線材3を容易に挿入することができる。
【0037】
<8.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合せ可能である。
【0038】
(1)上記実施形態では、複数のマルチフィラメント31により線材3を構成しているが、例えば、1本の撚られたマルチフィラメント31により線材3を構成することもできる。この場合、モノフィラメントの数を多くしてマルチフィラメントの太さを大きくすると、歯垢除去の性能が高くなる。
【0039】
(2)線材3に緩みをもたせる方法は、種々の方法があり、上記のように成形型100に線材3を配置するときに張力を調整するほか、次のような方法がある。まず、図9に示すように、成形型100の一方の成形面から垂直に突出する把持部材105を、各キャビティ101の支持片21,22の第2面に対応する部分の外側にそれぞれ配置する(図9では説明の便宜のため、図9の上側のキャビティ101の近傍にのみ把持部材105を配置している)。そして、成形型100に配置した線材3を把持部材105で把持させる。この状態で、成形型100が閉じられたとき、把持部材105が互いに近接する方向に移動するように構成する。これにより、線材3が支持片21,22の間で緩むようにすることができる。
【0040】
また、次のようにすることもできる。すなわち、成形型100の一方の成形面に線材3が配置される溝を形成しておく。この溝は、支持片21,22に対応するキャビティの間で深く形成しておく。また、もう一方の成形面には突部を形成しておき、この突部が支持片21,22の間の溝に嵌まるようにしておく。こうすることで、成形型100が閉じたとき、突部が溝に配置された線材3を押圧し、支持片21,22の間で線材3が引っ張られる。これより、これにより、線材3が支持片21,22の間で緩むようにすることができる。
【0041】
さらに、次のようにすることもできる。すなわち、成形型100において線材3が配置される部分に近接して突部材を設ける。この突部材は、成形型100が閉じられたときに、支持片21,22の間で線材3をハンドル部1側に押圧するように構成されている。これにより、線材3が支持片21,22の間で緩むようにすることができる。
【0042】
(3)上記実施形態では、線材3の両端部において、すべてのマルチフィラメント31を熱溶着し、一体化しているが、これに限定されない。例えば、すべてのマルチフィラメント31のうち、2以上のマルチフィラメント31同士が熱溶着により一体化していればよい。すなわち、熱溶着された塊32が複数存在するようにマルチフィラメント31同士が熱溶着されていればよい。熱による溶着以外に、超音波など、種々の溶着を行うことも可能である。また、塊32を形成せず、単に、線材3の両端部を支持片21,22に固定した態様であってもよい。
【0043】
(4)清掃具本体10の形状は特には限定されず、少なくともハンドル部1と、一対の支持片21,22を有し、これら支持片21,22の間にハンドル部1と直交するように線材3が支持されていればよい。したがって、例えば、図10に示すように、一対の支持片21,22の先端部に線材3を配置し、一対の支持片21,22の後端部を連結するようにハンドル部1を設けた清掃具本体10であってもよい。すなわち、この例では、ハンドル部1と線材3とが平行に延びるような平面視F字状の清掃具本体10となっている。このような清掃具本体においても、1つのマルチフィラメント31で構成された線材3を配置することができる。
【0044】
(5)線材3には、清涼剤、粉末香味成分、虫歯の予防又は治療剤などの薬剤を塗布することができる。また、このような薬剤は、液体状態で線材3に保持されるほか、常温(例えば25℃)において乾燥状態で固着させておくこともできる。
【実施例0045】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0046】
まず、2種類の実施例、1種類の比較例、及び1種類の参考例に係る歯間清掃具を作製した。実施例と比較例に係る清掃具本体の形状はすべて共通であり、図1図4に示すものと同じである。各清掃具本体は、ポリプロピレンにより形成した。さらに、実施例における各清掃具本体の支持片間の距離Wは、15mmである。
【0047】
実施例1に係る線材は、3本の撚ったマルチフィラメントで構成されている。実施例2に係る線材は、1本の撚ったマルチフィラメントで構成されている。但し、実施例2の線材では、実施例1の3本分のマルチフィラメントを構成するモノフィラメントを撚って1本のマルチフィラメントを形成している。また、比較例に係る線材は、撚っていないモノフィラメントを束ねることで構成されている。但し、比較例の線材では、実施例1の3本分のマルチフィラメントを構成するモノフィラメントを束ねている。各マルチフィラメント及びモノフィラメントは、ポリエチレンで形成されたモノフィラメントを撚って形成した。
【0048】
【表1】
【0049】
次に、上記実施例1,2、及び比較例を用いた評価試験について説明する。ここでは、2種類の評価試験を行った。
【0050】
(試験1)
下顎の模型の第一小臼歯と第二小臼歯の歯間に線材が平行になるように50mm/minの速度で挿入する時と抜く時にかかる力のピーク値を、挿入力あるいは引抜力としてプッシュプルゲージで測定した。
【0051】
(試験2)
試験2では、清掃効果を評価した。すなわち、歯の模型の、下側の臼歯に人工歯垢を塗布し、これを上記実施例1,2、及び比較例を用いて清掃したときの、臼歯の歯間を構成する歯のうち、口の内部側の歯の近心側の表面における清掃効果を評価した。使用した器具は、以下の通りである。
(1) NISSIN 模型専用人工歯垢 人工プラーク(株式会社ニッシン)
(2) 顎模型(下顎第一大臼歯(右下6) 近心側)
【0052】
人工プラークの塗布方法は、次の通りである。まず、模型の歯をエタノールでよく拭く。次に、人工プラークのバイアル瓶をよく振った。これに続いて、図11に示すように、刷毛でムラ無く人工プラークを模型の歯に塗った後、60℃の恒温槽で5分間静置した。
【0053】
次に、歯垢除去方法について説明する。まず、上記各歯間清掃具で清掃を行う際、顎模型より歯が抜けないようにネジで留めておく。続いて、各歯間清掃具の線材を歯間と平行に配置した後、図12に示すように、垂直に下ろし人工プラークを塗布した表面を沿わすように3往復させる。これに続いて、模型の、下顎第一大臼歯・右下6の近心側の表面(歯間を構成する歯のうち、口の内部側の臼歯の表面)をマイクロスコープにて撮影し、画像解析により歯垢除去率を算出した。これを各歯間清掃具について、3回ずつ行った。
【0054】
歯垢除去率は、次のように算出した。まず、歯の表面の写真のうち、任意の範囲を歯間部の歯の表面全体の面積とし、歯垢が取れた部分をフリーハンドで範囲指定し、imageJにて面積を算出した。そして、歯垢除去率(%)を以下のように計算した。
歯垢除去率(%)=歯垢の取れた面積/歯間部の全体の面積×100
【0055】
結果は以下の通りである。
【表2】
【0056】
上記試験の結果において、実施例1と比較例とを比較すると、比較例では、撚られていないモノフィラメントがばらけることで歯間に引っ掛かりやすくなっているため、実施例1に比べ挿入力及び引抜力が高くなっている。実施例1と実施例2とを比較すると、上述したように、実施例1は複数のマルチフィラメントが離れた状態で歯間に挿入されるため、実施例2のような1本の太いマルチフィラメントを挿入するのに比べ挿入力及び引抜力が低くなっている。
【0057】
歯垢除去率については、実施例1,2がともに比較例よりも高くなっている。これは、線材の往復時に細いモノフィラメントがばらけるため、モノフィラメントに人工プラークが引っ掛かりにくいためであると考えられる。
【0058】
以上より、本発明の実施例に係る歯間清掃具は、比較例に較べ、歯間の清掃効果が高いことが分かった。
【符号の説明】
【0059】
1 ハンドル部
21,22 支持片
3 線材
31 マルチフィラメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12