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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176885
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】化学処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/16 20060101AFI20231206BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20231206BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B65H20/16
C25D7/06 E
C25D17/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089441
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 鉄平
【テーマコード(参考)】
3F103
4K024
【Fターム(参考)】
3F103AA03
3F103BD01
3F103BD12
3F103EA15
4K024BB11
4K024BC01
4K024CB02
4K024CB24
4K024CB26
4K024EA04
(57)【要約】
【課題】上側エンドレスベルト(上側ベルト)の上側折り返しプーリーと下側エンドレスベルト(下側ベルト)の下側折り返しプーリー14の位置関係を簡便に調整できるワーク搬送装置が組み込まれた化学処理装置を提供する。
【解決手段】長尺ワークを供給するワーク供給装置とワーク巻取装置および化学処理槽と、ワーク上端と下端をクランプする上下端搬送クランプ群を有しこれ等クランプ群は上側ベルトと下側ベルトに取付けられてワークを搬送かつ終了時にクランプ群が順次開放されるワーク搬送装置を備え、上側ベルトは上側駆動プーリーと上側折り返しプーリーに巻架され、下側ベルトは下側駆動プーリーと下側折り返しプーリー14に巻架されて上側ベルトと下側ベルトが同期搬送される化学処理装置において、下側折り返しプーリー14が該折り返しプーリーをX軸方向とY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シート状ワークを連続的に供給するワーク供給装置と、
上記ワークを連続的に巻き取るワーク巻取装置と、
上記ワーク供給装置から供給されるワークの上端および下端をそれぞれクランプする上下端搬送クランプ群を有し、該上下端搬送クランプ群は上側エンドレスベルトと下側エンドレスベルトにそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワークをクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送し、かつ、搬送終了時に上記上下端搬送クランプが順次開放されて上記ワークを上記ワーク巻取装置に巻き取らせるワーク搬送装置と、
上記ワーク供給装置と上記ワーク巻取装置との間に配置されかつ上記ワーク搬送装置によりその幅方向を上下方向にして搬送される上記ワークに対し化学処理を行う化学処理槽を備え、
上記上側エンドレスベルトは上側駆動プーリーと単数若しくは複数の上側折り返しプーリーに巻架され、上記下側エンドレスベルトは下側駆動プーリーと単数若しくは複数の下側折り返しプーリーに巻架されて上記上側エンドレスベルトと上記下側エンドレスベルトが同期搬送される化学処理装置において、
対峙する少なくとも一組の上記上側折り返しプーリーと上記下側折り返しプーリーにおける一方の折り返しプーリーが、その中心軸に垂直な平面に沿って該折り返しプーリーをX軸方向と該X軸方向と直交するY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有することを特徴とする化学処理装置。
【請求項2】
上記折り返しプーリーのX-Y移動機構が、
上記折り返しプーリーの中心軸に垂直な平面を有しかつ該折り返しプーリーを回転可能に支持する第2可動板と、
上記第2可動板の平面と平行な平面を有しかつ該第2可動板を支持する第1可動板と、
上記第1可動板の平面と平行な平面を有しかつ該第1可動板を支持するベースと、
上記第2可動板をX軸方向若しくはY軸方向へ移動させる移動手段と、
上記第1可動板をY軸方向若しくはX軸方向へ移動させる移動手段とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の化学処理装置。
【請求項3】
上記第2可動板を移動させる移動手段が、上記第1可動板上に設けられたガイドシャフトと該ガイドシャフトに移動可能に取り付けられかつ上記第2可動板が固定されるシフトテーブルとを有する一対のスライドガイドシャフトと、上記第1可動板上に設けられかつ上記ガイドシャフトと平行に配置された送りネジと該送りネジに螺合されかつ上記第2可動板が固定されるテーブルとを有する送り機構とで構成され、
上記第1可動板を移動させる移動手段が、上記ベース上に設けられたガイドシャフトと該ガイドシャフトに移動可能に取り付けられかつ上記第1可動板が固定されるシフトテーブルとを有する一対のスライドガイドシャフトと、上記ベース上に設けられかつ上記ガイドシャフトと平行に配置された送りネジと該送りネジに螺合されかつ上記第1可動板が固定されるテーブルとを有する送り機構とで構成されることを特徴とする請求項2に記載の化学処理装置。
【請求項4】
上記第2可動板と上記第1可動板の送り機構における送りネジに摘み部が設けられ、かつ、各摘み部がエンドレスベルトの外側に向け配置されるように上記折り返しプーリーにおけるX-Y移動機構の向きが設定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の化学処理装置。
【請求項5】
上記第2可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第2可動板の移動量計測手段と、上記第1可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第1可動板の移動量計測手段とを有することを特徴とする請求項2または3に記載の化学処理装置。
【請求項6】
上記第2可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第2可動板の移動量計測手段と、上記第1可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第1可動板の移動量計測手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の化学処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COF(Chip On Flexible)等に用いられるフレキシブル回路基板のように極めて薄く柔軟性のある長尺シート状ワークを一定速度で搬送しながらめっき等の化学処理を施す化学処理装置に係り、特に、上側エンドレスベルトの上側折り返しプーリーと下側エンドレスベルトの下側折り返しプーリーの位置関係を簡便に調整できるワーク搬送装置が組み込まれた化学処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路基板の製造に用いられるこの種の化学処理装置には、従来、長尺シート状ワークを一定速度で搬送させるワーク搬送装置が組み込まれている(特許文献1~特許文献2参照)。
【0003】
すなわち、この種の化学処理装置は、図12に示すように長尺シート状ワーク10を連続的に供給するワーク供給装置(図示せず)と、上記ワーク10を連続的に巻き取るワーク巻取装置(図示せず)と、ワーク供給装置から供給されるワーク10の上端をクランプする上端搬送クランプ7群と下端をクランプする下端搬送クランプ9群を有し、上下端搬送クランプ7、9群は上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8にそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワーク10をクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送しかつ搬送終了時に上下端搬送クランプ7、9が順次開放されて上記ワーク10をワーク巻取装置に巻き取らせるワーク搬送装置と、ワーク供給装置とワーク巻取装置との間に配置されかつワーク搬送装置によりその幅方向を上下方向にして搬送されるワーク10に対し化学処理を行う化学処理槽(図示せず)を備え、上側エンドレスベルト6は上側駆動プーリー11と上側折り返しプーリー13に巻架されかつ下側エンドレスベルト8は下側駆動プーリー12と下側折り返しプーリー14に巻架されて上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が同期搬送されるようになっている。
【0004】
尚、図12に示す化学処理装置においては上側折り返しプーリーと下側折り返しプーリーがそれぞれ2個以上組み込まれ、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が占める設置面を略正方形状に近づけて化学処理装置の小型化が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-120889号公報
【特許文献2】特開2012-251182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記化学処理装置に組み込まれるワーク搬送装置においては、図12に示すように、独立駆動する上下独立したサーボモータ41、42と、これ等サーボモータ41、42に直結されかつ外周面にゴムを被覆した上側駆動プーリー11並びに下側駆動プーリー12によって上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が滑り無く搬送され、かつ、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8に設けられたマークが光電センサー(共に図示せず)により検出されて各エンドレスベルトの移動量に変換され、この移動量に基づき上下独立したサーボモータ41、42により上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の搬送速度を制御して上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が同期搬送されるため、通常、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の同期がずれることは無い。
【0007】
しかし、上側エンドレスベルト6と上側駆動プーリー11間に滑りが生じ、あるいは、下側エンドレスベルト8と下側駆動プーリー12間に滑りが生じて上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の同期がずれ(例えば、2~3mmの搬送ずれ)、かつ、この同期ずれがサーボモータ41、42による制御では対応困難な場合、厚みが25μm以下の薄い長尺シート状ワークでは破断され、あるいは、皺を生ずる等の問題が生ずる。
【0008】
そして、ワーク切れや皺を生じたワークは不良品になってしまうが、従来の化学処理装置においてはワーク切れや皺を装置内で確認できないため、化学処理終了後において品質確認した際、不良ワークの長さが数十mに及ぶことになる。
【0009】
また、従来の化学処理装置においては、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が占める設置面を略正方形に近づけて装置の小型化を図るような場合も含め、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14等を介してワーク10を上下端搬送クランプ7、9群にクランプさせたまま折り返し搬送している。しかし、薄物の長尺シート状ワーク、特に厚さが25μm以下のワーク搬送では、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係が重要となり、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14における上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の各搬入側と搬出側間にておいてワーク10がずれないように調整する必要がある。
【0010】
そして、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を調整する場合、従来、各プーリーの芯出しを行って各プーリーの中心軸が同軸上に揃うように調整した後、試験搬送を行ってワーク10の皺、切れの状態等を確認しながら経験的に上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置合わせを行っているが、経験に基づく調整作業には非常に時間がかかる問題があった。
【0011】
また、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係が調整されたワーク搬送装置を継続使用した場合、上側折り返しプーリー13および/または下側折り返しプーリー14の外径が僅かに変化し、あるいは、上側折り返しプーリー13および/または下側折り返しプーリー14の中心軸の位置が僅かに変化して上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係が微妙に変化し、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14における上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の各搬入側と搬出側間においてワークずれを引き起こすことがあった。このワークずれは、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を再調整する(例えば、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の中心軸が同軸上に揃うように再調整する)ことで改善されるが、この調整作業にも非常に時間がかかる問題が存在した。
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、上側エンドレスベルトの上側折り返しプーリーと下側エンドレスベルトの下側折り返しプーリーの位置関係を簡便に調整できるワーク搬送装置が組み込まれた化学処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
長尺シート状ワークを連続的に供給するワーク供給装置と、
上記ワークを連続的に巻き取るワーク巻取装置と、
上記ワーク供給装置から供給されるワークの上端および下端をそれぞれクランプする上下端搬送クランプ群を有し、該上下端搬送クランプ群は上側エンドレスベルトと下側エンドレスベルトにそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワークをクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送し、かつ、搬送終了時に上記上下端搬送クランプが順次開放されて上記ワークを上記ワーク巻取装置に巻き取らせるワーク搬送装置と、
上記ワーク供給装置と上記ワーク巻取装置との間に配置されかつ上記ワーク搬送装置によりその幅方向を上下方向にして搬送される上記ワークに対し化学処理を行う化学処理槽を備え、
上記上側エンドレスベルトは上側駆動プーリーと単数若しくは複数の上側折り返しプーリーに巻架され、上記下側エンドレスベルトは下側駆動プーリーと単数若しくは複数の下側折り返しプーリーに巻架されて上記上側エンドレスベルトと上記下側エンドレスベルトが同期搬送される化学処理装置において、
対峙する少なくとも一組の上記上側折り返しプーリーと上記下側折り返しプーリーにおける一方の折り返しプーリーが、その中心軸に垂直な平面に沿って該折り返しプーリーをX軸方向と該X軸方向と直交するY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有することを特徴とする。
【0014】
次に、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載の化学処理装置において、
上記折り返しプーリーのX-Y移動機構が、
上記折り返しプーリーの中心軸に垂直な平面を有しかつ該折り返しプーリーを回転可能に支持する第2可動板と、
上記第2可動板の平面と平行な平面を有しかつ該第2可動板を支持する第1可動板と、
上記第1可動板の平面と平行な平面を有しかつ該第1可動板を支持するベースと、
上記第2可動板をX軸方向若しくはY軸方向へ移動させる移動手段と、
上記第1可動板をY軸方向若しくはX軸方向へ移動させる移動手段とで構成されることを特徴とし、
第3の発明は、
第2の発明に記載の化学処理装置において、
上記第2可動板を移動させる移動手段が、上記第1可動板上に設けられたガイドシャフトと該ガイドシャフトに移動可能に取り付けられかつ上記第2可動板が固定されるシフトテーブルとを有する一対のスライドガイドシャフトと、上記第1可動板上に設けられかつ上記ガイドシャフトと平行に配置された送りネジと該送りネジに螺合されかつ上記第2可動板が固定されるテーブルとを有する送り機構とで構成され、
上記第1可動板を移動させる移動手段が、上記ベース上に設けられたガイドシャフトと該ガイドシャフトに移動可能に取り付けられかつ上記第1可動板が固定されるシフトテーブルとを有する一対のスライドガイドシャフトと、上記ベース上に設けられかつ上記ガイドシャフトと平行に配置された送りネジと該送りネジに螺合されかつ上記第1可動板が固定されるテーブルとを有する送り機構とで構成されることを特徴とし、
第4の発明は、
第2の発明または第3の発明に記載の化学処理装置において、
上記第2可動板と上記第1可動板の送り機構における送りネジに摘み部が設けられ、かつ、各摘み部がエンドレスベルトの外側に向け配置されるように上記折り返しプーリーにおけるX-Y移動機構の向きが設定されていることを特徴とし、
第5の発明は、
第2の発明または第3の発明に記載の化学処理装置において、
上記第2可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第2可動板の移動量計測手段と、上記第1可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第1可動板の移動量計測手段とを有することを特徴とし、
また、第6の発明は、
第4の発明に記載の化学処理装置において、
上記第2可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第2可動板の移動量計測手段と、上記第1可動板の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片と該板状片と対向する上記ベース面上に設けられた目盛り板とで構成される第1可動板の移動量計測手段とを有することを特徴する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置によれば、
対峙する少なくとも一組の上側折り返しプーリーと下側折り返しプーリーにおける一方の折り返しプーリーが、その中心軸に垂直な平面に沿って該折り返しプーリーをX軸方向と該X軸方向と直交するY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有するため、
作業経験の少ない初心者でも、上側エンドレスベルトの上側折り返しプーリーと下側エンドレスベルトの下側折り返しプーリーの位置関係を簡単に調整することが可能となり、調整作業に要する時間を短縮できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置を上側エンドレスベルトと下側エンドレスベルト側から眺めた斜視図。
図2】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置を上側エンドレスベルトと下側エンドレスベルトとは反対側から眺めた斜視図。
図3】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置におけるX-Y移動機構を有する折り返しプーリーの斜視図。
図4】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置における第2可動板を移動させる移動手段の構成斜視図。
図5】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置における第1可動板を移動させる移動手段の構成斜視図。
図6】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置における対峙する一組の上側折り返しプーリーと下側折り返しプーリーについて上側折り返しプーリー側から眺めた平面図。
図7図6の矢印A方向から眺めた上側エンドレスベルト、上側折り返しプーリー、上端搬送クランプ群、ワーク、下端搬送クランプ群、下側エンドレスベルト、および、X-Y移動機構を有する下側折り返しプーリーの側面図。
図8図6の矢印B方向から眺めた上側エンドレスベルト、上側折り返しプーリー、上端搬送クランプ群、ワーク、下端搬送クランプ群、下側エンドレスベルト、および、X-Y移動機構を有する下側折り返しプーリーの側面図。
図9図6の矢印C方向から眺めた上側折り返しプーリー、上側エンドレスベルト、上端搬送クランプ群、ワーク、下端搬送クランプ群、下側エンドレスベルト、および、X-Y移動機構を有する下側折り返しプーリーの斜視図。
図10図10(A)は本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置の一部の構成を示す正面図、図10(B)は図10(A)の部分拡大図、図10(C)は図10(A)の側面図。
図11】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置における上側折り返しプーリーとX-Y移動機構を有する下側折り返しプーリー、および、各折り返しプーリーにおけるエンドレスベルトの搬入側と搬出側に設けられたセンサーを示す斜視図。
図12】従来の化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置を上側エンドレスベルトと下側エンドレスベルトとは反対側から眺めた斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
尚、本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置を説明する際、従来の化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置と同一の構成は同一符号を用いている。
【0019】
1.本発明に係るワーク搬送装置が組み込まれた化学処理装置
(1)化学処理装置
本発明に係る化学処理装置は、長尺シート状ワークを連続的に供給するワーク供給装置と、上記ワークを連続的に巻き取るワーク巻取装置と、ワーク供給装置とワーク巻取装置との間に配置されかつ上記ワークに対しめっき等の化学処理を行う化学処理槽と、この化学処理槽内に未処理のワークをその幅方向を上下方向にして搬入しかつ処理後のワークをその幅方向を上下方向にして搬出するワーク搬送装置とでその主要部が構成されている。
【0020】
(2)ワーク搬送装置
本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置は、図1図2に示すようにワーク10の上端をクランプする複数の上端搬送クランプ7並びにワーク10の下端をクランプする複数の下端搬送クランプ9と、外周面にゴムが被覆された上側駆動プーリー11と単数若しくは複数の上側折り返しプーリー13との間に巻架され上記上端搬送クランプ7群が取付けられた上側エンドレスベルト6と、外周面にゴムが被覆された下側駆動プーリー12と単数若しくは複数の下側折り返しプーリー14との間に巻架され上記下端搬送クランプ9群が取付けられた下側エンドレスベルト8と、上記上側駆動プーリー11と下側駆動プーリー12にそれぞれ設けられて上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8を独立駆動する上下独立した一対のサーボモータ41、42と、上記上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の近傍に付設されかつ上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8に設けられたマークを検知して各エンドレスベルトの移動量をそれぞれ検出する光電センサー(共に図示せず)を備えており、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8は同期搬送されるようになっている。また、上記上下端搬送クランプ7、9群は、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8にそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワーク10をクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送し、かつ、搬送終了時に上下端搬送クランプ7、9が順次開放されて上記ワーク10をワーク巻取装置に巻き取らせるように構成されている。
【0021】
尚、上記上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8はそれぞれステンレス鋼材により構成されている。
【0022】
そして、本発明に係るワーク搬送装置においては、対峙する少なくとも一組の上側折り返しプーリーと下側折り返しプーリーにおける一方の折り返しプーリー(本実施形態に係るワーク搬送装置においては図2に示す下側折り返しプーリー14)が、その中心軸に垂直な平面に沿って該折り返しプーリー(下側折り返しプーリー14)をX軸方向と該X軸方向と直交するY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有することを特徴とする。
【0023】
(2-1)X-Y移動機構
対峙する少なくとも一組の上側折り返しプーリーと下側折り返しプーリーにおける一方の折り返しプーリー(下側折り返しプーリー14)が備えるX-Y移動機構は、図3に示すように下側折り返しプーリー14の中心軸(図示せず)に垂直な平面を有しかつ下側折り返しプーリー14を回転可能に支持する第2可動板2と、第2可動板2の上記平面と平行な平面を有しかつ第2可動板2を支持する第1可動板3と、第1可動板3の上記平面と平行な平面を有しかつ第1可動板3を支持するベース5と、第1可動板3上に設けられかつ第2可動板2をX軸方向へ移動させる移動手段と、ベース5上に設けられかつ第1可動板3をY軸方向へ移動させる移動手段とで構成されている。
【0024】
ここで、ベース5は、ワーク搬送装置の被取付け部(図示せず)に取付けを行うための接続具であって、その上面が、第2可動板2と第1可動板3の各平面に対し平行となる姿勢でワーク搬送装置の被取付け部(図示せず)に取付けられている。尚、第2可動板2および第1可動板3は、図3に示すように、それぞれの縁部の向きが上記ベース5の縁部の向きに揃う姿勢で、後述するスライドガイドシャフトを介し第1可動板3およびベース5に支持されている。
【0025】
(2-2)第2可動板と第1可動板の移動手段
上記第2可動板の移動手段30は、図4に示すように第1可動板3上に設けられた一対のスライドガイドシャフト31と、該スライドガイドシャフト31と平行に設けられた送り機構35とで構成されており、上記スライドガイドシャフト31は、両端がシャフトホルダー32で支持され第1可動板3の縁部に沿って一方向へ伸びるガイドシャフト33と、内側にガイドシャフト33を挿通させて移動可能に取り付けられかつ第2可動板(図示せず)が固定される2つのシフトテーブル34とで構成され、上記送り機構35は、両端がホルダー36で支持されガイドシャフト33と平行に配置されると共に第1可動板3の縁部側に摘み部39が設けられた送りネジ37と、該送りネジ37に螺合されかつ送りネジ37が回転されたときにその回転を受けてネジの軸方向へ移動すると共に第2可動板(図示せず)が固定されるテーブル38とで構成されている。
【0026】
そして、送り機構35の摘み部39により送りネジ37を右回転若しくは左回転させることで送り機構35のテーブル38がネジの軸方向へ前進若しくは後退するため、上記テーブル38およびスライドガイドシャフト31のシフトテーブル34に固定された第2可動板(図示せず)をX軸方向へ移動させることが可能となる。
【0027】
また、上記第1可動板の移動手段50は、図5に示すようにベース5上に設けられた一対のスライドガイドシャフト31と、該スライドガイドシャフト31と平行に設けられた送り機構35とで構成されており、上記スライドガイドシャフト31は、両端がシャフトホルダー32で支持されベース5の縁部に沿って一方向へ伸びるガイドシャフト33と、内側にガイドシャフト33を挿通させて移動可能に取り付けられかつ第1可動板(図示せず)が固定される2つのシフトテーブル34とで構成され、上記送り機構35は、両端がホルダー36で支持され上記ガイドシャフト33と平行に配置されると共にベース5の縁部側に摘み部39が設けられた送りネジ37と、該送りネジ37に螺合されかつ送りネジ37が回転されたときにその回転を受けてネジの軸方向へ移動すると共に第1可動板(図示せず)が固定されるテーブル38とで構成されている。
【0028】
そして、送り機構35の摘み部39により送りネジ37を右回転若しくは左回転させることで送り機構35のテーブル38がネジの軸方向へ前進若しくは後退するため、上記テーブル38およびスライドガイドシャフト31のシフトテーブル34に固定された第1可動板(図示せず)をY軸方向へ移動させることが可能となる。
【0029】
(2-3)X-Y移動機構の作用
図3の折り返しプーリー(下側折り返しプーリー14)が備えるX-Y移動機構によれば、第1可動板3に設けられた送り機構35の摘み部39を回転させることで下側折り返しプーリー14を回転可能に支持する第2可動板2をX軸方向へ移動させることが可能となり、かつ、ベース5に設けられた送り機構35の摘み部39を回転させることで第2可動板2を支持する第1可動板3をY軸方向へ移動させることが可能になるため、例えば、図2に示す上側折り返しプーリー13の中心軸を基準とした場合、上記X-Y移動機構を作用させることにより、基準とする上側折り返しプーリー13の中心軸に下側折り返しプーリー14の中心軸を同軸上に揃える位置調整を容易に行うことが可能となる。
【0030】
すなわち、X-Y移動機構を作用させることで、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置調整を容易に行えると共に、この調整が行われた後、更に、上側折り返しプーリー13の中心軸を基準にして下側折り返しプーリー14の中心軸を微調整することも可能になる。
【0031】
このため、ワーク搬送装置の継続使用により上側折り返しプーリー13および/または下側折り返しプーリー14の外径が僅かに変化した場合、あるいは、上側折り返しプーリー13および/または下側折り返しプーリー14の中心軸の位置が僅かに変化して上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係が微妙に変化した場合、下側折り返しプーリー14のX-Y移動機構により上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を容易に再調整することが可能となり、更に、上側エンドレスベルト6と上側駆動プーリー11間および下側エンドレスベルト8と下側駆動プーリー12間の滑りに起因して同期搬送に異常が生じた場合においても、下側折り返しプーリー14のX-Y移動機構により上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を再調整することでその軽減を図ることが可能となる。
【0032】
(2-4)移動量計測手段
上記折り返しプーリー(下側折り返しプーリー14)のX-Y移動機構には、第2可動板2と第1可動板3の各移動量を計測する移動量計測手段を付設してもよい。
【0033】
例えば、図3に示すように第2可動板2の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片51と該板状片51と対向するベース5面上に設けられた目盛り板52とで構成される第2可動板の移動量計測手段、および、第1可動板3の外縁部に取り付けられかつ先端に矢印を有する板状片51と該板状片51と対向するベース5面上に設けられた目盛り板52とで構成される第1可動板の移動量計測手段を付設してもよい。
【0034】
このような移動量計測手段が付設されることで、移動前後における目盛り板52の指示値に基づいて第2可動板2と第1可動板3の移動量を正確に計測できることに加え、例えば、ワーク搬送装置の継続使用により上側折り返しプーリー13および/または下側折り返しプーリー14の外径が僅かに変化した場合、あるいは、上側折り返しプーリー13および/または下側折り返しプーリー14の中心軸の位置が僅かに変化して上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係が微妙に変化した場合において、上記X-Y移動機構により上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を再調整する際、第2可動板2と第1可動板3における移動量の参考データとして利用できる利点を有する。
【0035】
(2-5)X-Y移動機構を構成する可動板と移動手段等の接合
上記ワーク搬送装置の折り返しプーリー(下側折り返しプーリー14)、X-Y移動機構を構成する可動板、および、移動手段等相互の接合はボルトを介して行われる。
【0036】
例えば、図4に示すライドガイドシャフト31において、シャフトホルダー32のフランジおよびシフトテーブル34の上面にはネジを内側に挿通できる貫通孔が開設されており、かつ、第2可動板2と第1可動板3およびベース5における上記シャフトホルダー32とシフトテーブル34の取り付け箇所にも上記と同様な貫通孔が開設されている。
【0037】
このため、シャフトホルダー32等に設けられた貫通孔と第1可動板3等に設けられた貫通孔の位置合わせを行い、その状態でボルトを挿通しかつ端部においてナット締めを行えばスライドガイドシャフト31を第1可動板3とベース5のそれぞれに簡単に取り付けることができる。しかも、この取り付けにおいては、シャフトホルダー32等の貫通孔と第1可動板3等の貫通孔の位置合わせが行われるため、スライドガイドシャフト31と、第2可動板2、第1可動板3およびベース5との位置関係を一義的に定めることが可能となる。すなわち、ベース5に対して第2可動板2および第1可動板3の位置関係を一義的に定めることができる。尚、取り外すときは、逆の手順で行えばよい。
【0038】
従って、ワーク搬送装置の折り返しプーリー(下側折り返しプーリー14)およびX-Y移動機構を構成する可動板と移動手段等の着脱を伴う整備が容易に行え、かつ、移動手段等の着脱を伴う整備がなされた場合においても、着脱の前後において組立精度を維持し易くなる利点を有する。
【0039】
(2-6)X-Y移動機構を有する下側折り返しプーリーの配置例
図6図9は、上記ワーク搬送装置の上側折り返しプーリー13とX-Y移動機構を有する下側折り返しプーリー14の配置例を示している。
【0040】
すなわち、本実施形態に係るワーク搬送装置においては、図7に示すように第1可動板3をY軸方向へ移動させる摘み部39が下側エンドレスベルト8の外側に向け配置され、かつ、図8に示すように第2可動板2をX軸方向へ移動させる摘み部39が下側エンドレスベルト8の外側に向け配置されるようにX-Y移動機構の向きが設定されている。
【0041】
このため、第1可動板3をY軸方向へ移動させる摘み部39が下側エンドレスベルト8の内側に向け配置され、かつ、第2可動板2をX軸方向へ移動させる摘み部39が下側エンドレスベルトの内側に向け配置される場合に較べて下側エンドレスベルト8の外側から摘み部39を操作できる(すなわち、作業者が下側エンドレスベルト8の内側に入らなくても操作が可能になる)分、作業の簡便化が図れる。
【0042】
そして、このワーク搬送装置においては、下側エンドレスベルト8の外側に向け配置された図7に示す摘み部39と下側エンドレスベルト8の外側に向け配置された図8に示す摘み部39を操作することで、上側エンドレスベルト6の上側折り返しプーリー13と下側エンドレスベルト8の下側折り返しプーリー14の位置関係を簡単に調整できるため、調整作業に要する時間を著しく短縮させることが可能となる。
【0043】
2.同期搬送の異常を検知する手段
本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置では、上側駆動プーリー11と下側駆動プーリー12に設けられかつ上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8を独立駆動する上下独立した一対のサーボモータ41、42により上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が同期搬送されるため、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が滑り無く搬送されている場合は、上述したように上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の同期がずれることはない。
【0044】
しかし、上側エンドレスベルト6と上側駆動プーリー11間若しくは下側エンドレスベルト8と下側駆動プーリー12間に滑り(スリップ)が生じた場合、あるいは、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8が経時劣化で大きく伸びた場合、上下独立した一対のサーボモータ41、42による上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の同期搬送では修復できなくなることがある。
【0045】
このため、本発明に係る化学処理装置に組み込まれるワーク搬送装置には、下側折り返しプーリー14の上記X-Y移動機構に加え、上側エンドレスベルト6と上側駆動プーリー11間並びに下側エンドレスベルト8と下側駆動プーリー12間の滑り等に起因して同期搬送に異常が生じたときにその異常を検知する手段を備えていることが好ましい。
【0046】
例えば、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8のそれぞれにその搬送方向に亘り図10(A)~(B)に示すような検知マークを等間隔で連続して設け、かつ、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の近傍位置に上記検知マークを検出する図10(C)に示すような光電センサー15、16をそれぞれ設け、光電センサー15、16による検知マークの測定結果に基づいて同期搬送の異常を検知する下記手段を備えていることが好ましい。
【0047】
すなわち、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8に設けられた各検知マーク(例えば開孔)から任意に選ばれた「一番目測定用検知マーク」に対して光電センサー15、16を作動させ、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の各「一番目測定用検知マーク」をそれぞれ検出した時点における「一番目マーク検出時間差」をワーク搬送装置の制御部(図示せず)に記憶させ、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の各「n番目(例えば一番目検知マークから数えて100個目)測定用検知マーク」をそれぞれ検出した時点における「n番目マーク検出時間差」をワーク搬送装置の制御部に記憶させると共に、「n番目マーク検出時間差」から「一番目マーク検出時間差」を差し引いた値が「許容差分値」を越えたときを基準にして警報を出し、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8のずれを作業者に知らせるようにした手段を備えていることが好ましい。
【0048】
尚、一対のサーボモータ41、42による上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の同期搬送では修復が困難な場合にのみ警報がなされるようにするため、「許容差分値」の作動基準について予めプログラムしておくことが必要である。また、警報を出して作業者に知らせる上記手段に代えて「許容差分値」を越えたときにワーク搬送装置を停止させる手段にしてもよい。
【0049】
そして、これら手段を備えることにより、ワーク搬送装置のエンドレスベルトと駆動プーリー間に発生した滑り(スリップ)等で上側エンドレスベルトと下側エンドレスベルトにおける同期搬送の継続が困難になった場合、その異常を瞬時に検知できるため、即時に対応することが可能となる。
【0050】
更に、本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置においては、下側折り返しプーリー14がその中心軸に垂直な平面に沿って該下側折り返しプーリー14をX軸方向とY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有しており、作業経験の少ない初心者でも上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を容易に再調整することができるため、従来よりも短時間でワーク搬送装置を復旧させることが可能となる。
【0051】
ところで、図10(A)~(B)においては検知マークを開孔で構成しているが、上記開孔に代えて、例えば、センサーにより検出可能な反射部を上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8に連続して設けてもよい。具体的には、上記開孔と略同形状を有する複数の反射テープを上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8に連続して貼り付けあるいはめっきにより反射部を形成してもよく、検知マークの構成は任意である。
【0052】
また、上記光電センサーの設置部位と設置個数は基本的に任意であるが、図11に示すように上側折り返しプーリー13における上側エンドレスベルト6の搬入側と搬出側近傍に二組の光電センサー(上側センサー)18、20を設け、かつ、下側折り返しプーリー14における下側エンドレスベルト8の搬入側と搬出側近傍に二組の光電センサー(下側センサー)19、21を設けた場合、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14における位置関係の調整作業を更に簡略化できる別な利点を有している。
【0053】
すなわち、従来同様、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の芯出しを行って上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の中心軸が同軸上に揃うように調整した後、試験搬送により折り返し前における特定の測定用検知マークについて、光電センサー(上側センサー)18と光電センサー(下側センサー)19(すなわち、搬入側の上側センサー並びに下側センサー)によりそれぞれ検出した時点における「搬入側マーク検出時間差」をワーク搬送装置の制御部(図示せず)に記憶させ、かつ、同一の測定用検知マークについて光電センサー(上側センサー)20と光電センサー(下側センサー)21(すなわち、搬出側の上側センサー並びに下側センサー)によりそれぞれ検出した時点における「搬出側マーク検出時間差」をワーク搬送装置の制御部に記憶させると共に、上記「搬出側マーク検出時間差」から「搬入側マーク検出時間差」を差し引いた値が「許容差分値」を越えたときを基準にして上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8のずれを確認することができる。
【0054】
このような方法を採用することで、今までは経験に頼っていた折り返し部におけるエンドレスベルトのずれを機械的に確認でき、上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14における位置関係の調整作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【実施例0055】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0056】
本発明に係る化学処理装置に組み込まれた図1図3および図10図11に示すワーク搬送装置を用いて以下の確認実験を行った。
【0057】
尚、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8はステンレス鋼材で構成されており、各ベルトに設けた開孔の大きさを5mm、隣り合う開孔の間隔を10mmに設定し、かつ、上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の搬送速度は5m/分である。
【0058】
また、同期搬送では修復困難な条件として「100番目マーク検出時間差」から「一番目マーク検出時間差」を差し引いた値の「許容差分値」が「±0.03秒以内」のずれとしている。
【0059】
そして、確認実験を行ったところ、エンドレスベルトと駆動プーリー間に発生した滑り(スリップ)、あるいは、エンドレスベルトの伸び等が原因となって上側エンドレスベルト6と下側エンドレスベルト8の搬送ずれが顕著になったとき警報が鳴り、ワークの破断や皺の発生を防止できることが確認された。
【0060】
更に、このワーク搬送装置においては、下側折り返しプーリー14がその中心軸に垂直な平面に沿って該下側折り返しプーリー14をX軸方向とY軸方向へ移動させるX-Y移動機構を有しており、作業経験の少ない初心者でも上側折り返しプーリー13と下側折り返しプーリー14の位置関係を容易に再調整することができるため、従来よりも短時間でワーク搬送装置を復旧させられることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置によれば、作業経験の少ない初心者でも上側エンドレスベルトの上側折り返しプーリーと下側エンドレスベルトの下側折り返しプーリーの位置関係を簡単に調整できるため、フレキシブル基板のめっき等化学処理装置に用いられる産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0062】
2 第2可動板
3 第1可動板
5 ベース
6 上側エンドレスベルト
7 上端搬送クランプ
8 下側エンドレスベルト
9 下端搬送クランプ
10 ワーク
11 上側駆動プーリー
12 下側駆動プーリー
13 上側折り返しプーリー
14 下側折り返しプーリー
15 光電センサー(上側センサー)
16 光電センサー(下側センサー)
18 光電センサー(上側センサー)
19 光電センサー(下側センサー)
20 光電センサー(上側センサー)
21 光電センサー(下側センサー)
30 移動手段
31 スライドガイドシャフト
32 シャフトホルダー
33 ガイドシャフト
34 シフトテーブル
35 送り機構
36 ホルダー
37 送りネジ
38 テーブル
39 摘み部
41 サーボモータ
42 サーボモータ
50 移動手段
51 板状片
52 目盛り板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12