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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176914
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20231206BHJP
   C09J 167/06 20060101ALI20231206BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C09J167/00
C09J167/06
C09J167/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089494
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中根 宇之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀昭
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040ED041
4J040ED141
4J040GA25
4J040HB44
4J040HD30
4J040HD36
4J040JA01
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA24
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA06
4J040LA09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】低誘電率及び低誘電正接であり、接着性に優れる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤を提供する。
【解決手段】多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の20モル%以上であり、
ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量が、ポリエステル樹脂(A)全体の50重量%以上であることを特徴とする接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の20モル%以上であり、
ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量が、ポリエステル樹脂(A)全体の50重量%以上であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記ポリエステル系樹脂(A)が、温度23℃、相対湿度50%RH、周波数10GHzにおいて、誘電正接が0.01以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が、―60~60℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が、3mgKOH/g以上であることを特徴と
する請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
多価カルボン酸類及び多価アルコール類の少なくとも一方が、縮合多環式芳香族化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物。
【請求項6】
多価カルボン酸類が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a2-1)類を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル系樹脂(A)が非結晶性であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
更に、硬化剤(B)を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項9】
硬化剤(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、30重量部以下であることを特徴とする請求項8記載の接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物が硬化されてなることを特徴とする接着剤。
【請求項11】
電子材料部材の貼り合せに用いられることを特徴とする請求項10に記載の接着剤。
【請求項12】
電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項11記載の接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化されてなる接着剤に関し、更に詳しくは、低誘電率及び低誘電正接であり、接着性に優れる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れているため、フィルムやペットボトル、繊維、トナー、電機部品、接着剤、粘着剤等、幅広い用途で用いられている。また、ポリエステル系樹脂は、そのポリマー構造ゆえに極性が高いので、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エポキシ樹脂等の極性ポリマー、及び銅、アルミニウム等の金属材料に対して優れた接着性を発現することが知られている。
この特性を利用し、金属とプラスチックの積層体を作製するための接着剤、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板(以下、両者とまとめてFPCということがある。)等を作製するための接着剤としての使用が検討されている。
【0003】
フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板は、プリント基板の一種であり、薄い銅箔と絶縁フイルム(プラスチックフイルム)を貼り合されている。FPCは、柔軟性があり、繰り返し変形させることが可能であり、変形させてもプリント基板としての性能を維持することができる。
FPCは薄く、折り畳みや可動部での使用に適しており、近年のスマートフォン、テレビ、ノートパソコンなどあらゆる電子機器のさらなる小型化、軽量化、薄型化に合わせて、需要が高まっている。
さらに、最近の伝送信号の高速化にあわせて、伝送信号の高周波化に伴い、低誘電率及び低誘電正接といった低誘電特性が求められるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、多環式構造を有する構造部位と、連続して10以上の炭素鎖を有する構造部位とを特定量含有するポリエステル系樹脂が、溶剤溶解性、耐熱性、接着強度に優れ、比誘電率及び誘電正接の低い、誘電特性に優れることが開示されている。
また、特許文献2では、エステル基濃度が5000eq/106g以下であり、かつガラス転移温度が-30℃以上であるポリエステルが、溶剤溶解性、耐熱性、接着強度に優れ、比誘電率及び誘電正接の低い、誘電特性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2021/200715号公報
【特許文献2】国際公開2021/200716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等の電子材料分野においては、そこに用いられる接着層に求められる物性として、更なる低誘電率及び低誘電正接といった低誘電特性が求められている。
【0007】
上記特許文献1及び2の開示技術では、連続して10以上の炭素鎖を有するモノマーを使用することで極性基濃度が下がり、低誘電率化・低誘電正接化しているが、更なる低誘電化を目的に極性基濃度を更に下げると接着性が著しく損なわれる傾向があり、近年求められるハイレベルな低誘電特性と接着性を両立することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明ではこのような背景下において、さらなる低誘電率及び低誘電正接であり、また、硬化後の接着性にも優れる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、下記の接着剤組成物が、本発明の目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の20モル%以上であり、
ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量が、ポリエステル樹脂(A)全体の50重量%以上である接着剤組成物に関する。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]の態様を有する。
[1]
多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の20モル%以上であり、
ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量が、ポリエステル樹脂(A)全体の50重量%以上であることを特徴とする接着剤組成物。
[2]
上記ポリエステル系樹脂(A)が、温度23℃、相対湿度50%RH、周波数10GHzにおいて、誘電正接が0.01以下であることを特徴とする上記[1]に記載の接着剤組成物。
[3]
上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が、―60~60℃であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]
上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が、3mgKOH/g以上であることを特徴と
する上記[1]~[3]いずれかに記載の接着剤組成物。
[5]
多価カルボン酸類及び多価アルコール類の少なくとも一方が、縮合多環式芳香族化合物を含むことを特徴とする上記[1]~[4]いずれかに記載のポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物。
[6]
多価カルボン酸類が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a2-1)類を含むことを特徴とする上記[1]~[5]いずれかに記載のポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物。
[7]
前記ポリエステル系樹脂(A)が非結晶性であることを特徴とする上記[1]~[6]いずれかに記載の接着剤組成物。
[8]
更に、硬化剤(B)を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
[9]
硬化剤(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、30重量部以下であることを特徴とする請求項8記載の接着剤組成物。
[10]
請求項1又は2に記載の接着剤組成物が硬化されてなることを特徴とする接着剤。
[11]
電子材料部材の貼り合せに用いられることを特徴とする請求項10に記載の接着剤。
[12]
電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項11記載の接着剤。
【0011】
上記特許文献1及び2のように、通常、誘電率、誘電正接を低下させるためには長鎖アルキル基を有する多価カルボン酸類や多価アルコールを多量に用い、エステル結合濃度を低くすることが考えられるが、一方で接着力が低下することとなってしまう。また、エステル結合濃度を低くすることでは更なる低誘電特性までを得ることは困難である。
本発明者は、ポリエステル系樹脂にポリブタジエン由来の構造部位を特定量以上含有させることで、低誘電特性を向上させつつ、さらに接着性も向上するという特異な効果を見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物は、低誘電率及び低誘電正接であり、接着性に優れた接着剤組成物を形成するものであり、とりわけかかる接着剤組成物は、金属とプラスチックの積層体を作製するための接着剤、例えば、電子材料部材の貼り合わせ、なかでも、フレキシブル銅張積層板やカバーレイ、ボンディングシート等のフレキシブルプリント配線板等の作製に用いられる接着剤として有効である。
【0013】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂は、ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類由来の構造部位及び芳香族多価カルボン酸類由来の構造部位が特定量以上のため、本発明の効果を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、化合物名の後に付された「類」は当該化合物に加え、当該化合物の誘導体をも包括する概念である。例えば、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
なお、本発明において、「x及び/又はy(x,yは任意の構成又は成分)」とは、xのみ、yのみ、x及びy、という3通りの組合せを意味するものである。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂を少なくとも含有する。まず、ポリエステル系樹脂について説明する。
【0016】
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位と多価アルコール類(a2)由来の構造単位を分子中に含むものであり、芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の20モル%以上であり、
ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)(以下、ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)をポリジエンジオール類(a2-1)ということがある。)以下、由来の構造部位の含有量が、ポリエステル樹脂(A)全体の50重量%以上である。
【0017】
〔多価カルボン酸類(a1)〕
多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位における多価カルボン酸としては、例えば、後述する芳香族多価カルボン酸(a1ー1);後述する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸(a1-2);1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等の脂環族多価カルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸類は1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
芳香族多価カルボン酸類(a1-1)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、オルソフタル酸等の単環式芳香族多価カルボン酸類;ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の多環式芳香族多価カルボン酸類;多環式芳香族多価カルボン酸類の中では、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の縮合多環式芳香族多価カルボン酸類やその誘導体(芳香族ジカルボン酸類)が挙げられる。また、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族オキシカルボン酸類等を挙げることができる。更に、ポリエステル系樹脂に分岐骨格や酸価を付与する目的で導入される3官能以上の芳香族カルボン酸類も上記の芳香族多価カルボン酸類に含まれる。3官能以上の芳香族多価カルボン酸類としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2'-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等が挙げられる。
これらのうちでも誘電特性の観点から、多環式芳香族多価カルボン酸類が好ましく、中でも縮合多環式芳香族多価カルボン酸類が特に好ましく、縮合多環式芳香族多価カルボン酸類の中でも、ナフタレンジカルボン酸ジメチルが特に好ましい。
また、単環式芳香族多価カルボン酸類の中ではテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチルが好ましい。
また、結晶性を下げて溶剤溶解後の安定性を確保するためには、複数種の多価カルボン酸類を使用することが好ましい。
【0019】
多価カルボン酸類(a1)全体に対する芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造単位の含有量は、20モル%以上であり、好ましくは40モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%である。芳香族多価カルボン酸類の含有量が上記の範囲内であると誘電特性に優れ、さらに接着性も両立できる。逆に少なすぎると、湿熱環境下での長期耐久性が不充分となったり、低誘電正接に関して劣る傾向がある。
【0020】
多価カルボン酸類全体に対する芳香族多価カルボン酸類の含有量(モル%)は下記式から求められる。
芳香族多価カルボン酸類の含有量(モル%)=(芳香族多価カルボン酸類(モル)/多価カルボン酸類(モル))×100
【0021】
また、ポリエステル系樹脂全体に対する芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量は1~50重量%であることが好ましく、より好ましくは3~40重量%、更に好ましくは5~30重量%、特に好ましくは10~25重量%である。芳香族多価カルボン酸類の含有量が上記の範囲内であると、誘電特性に優れ、さらに接着性も両立できる。逆に少なすぎると、初期接着性が不充分となったり、過度にタック性が強くなる傾向があり、多すぎると初期接着性が不充分となる傾向がある。
【0022】
ポリエステル系樹脂(A)に酸価を付与する場合、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位として、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位を含有することが接着力の観点から好ましい。上記酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類由来の構造部位におけるカルボキシ基の価数は、好ましくは3~6価であり、より好ましくは3~4価である。かかる酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類由来の構造部位を構成する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類としては、例えば、上記の3価以上の芳香族多価カルボン酸類のうち酸無水物基数が0又は1であるものが挙げられる。例えば、トリメリット酸無水物、トリメリット酸類、トリメシン酸類等が挙げられる。また、上記以外の酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類としては、例えば、水添トリメリット酸無水物が挙げられる。これらの中でも、酸無水物基数が1であるものが好ましく、トリメリット酸無水物由来の構造部位が特に好ましい。
【0023】
上記脂環族多価カルボン酸類由来の構造部位を構成する脂環族多価カルボン酸類としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類等が挙げられる。
【0024】
上記脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位を構成する脂肪族多価カルボン酸類としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0025】
ポリエステル系樹脂(A)に上記脂環族多価カルボン酸類由来の構造部位、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位が含まれる場合は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において、上記脂環族多価カルボン酸類由来の構造部位、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位の合計の含有量が、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。
【0026】
なお、ポリエステル系樹脂(A)には、スルホテレフタル酸由来の構造単位、5-スルホイソフタル酸類由来の構造単位、4-スルホフタル酸類由来の構造単位、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸類由来の構造単位、5(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸類由来の構造単位等のスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸由来の構造単位、及びそれらの金属塩やアンモニウム塩等のスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸塩由来の構造単位が含まれていてもよいが、ポリエステル系樹脂(A)の吸湿性の点や樹脂の相溶性の点から、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位全体に対する含有量が10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下、特に好ましくは3モル%以下、更に好ましくは1モル%以下であり、最も好ましくは0モル%である。
【0027】
〔多価アルコール類(a2)由来の構造部位〕
本発明においては、多価アルコール類(a2)由来の構造部位としてポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造単位を含有するものである。
上記ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位を構成するポリジエンジオール類(a2-1)としては、誘電特性に優れる点から、4~9の炭素を有する共役ジエンから形成されたポリジエンジオール及び/又は4~9の炭素を有する共役ジエンから形成されるポリジエンジオールの水添物であることが好ましく、例えば、両末端が水酸基のポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリヘキサジエンジオール等や、それらの水素添加物が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。なかでもポリエステル系樹脂(A)の製造時におけるゲル化抑制の点から、水添ポリブタジエンジオールが好ましい。
【0028】
上記の両末端の水酸基は、ポリジエン構造に直接結合していても、結合鎖を介して結合していてもよい。
かかる結合鎖としては、例えば、アルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、フェニレン鎖、ナフチレン鎖等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)鎖や、-CO-、-COCO-、-CO(CH2)mCO-(m=1~10)等が挙げられる。なかでも、本発明の効果を阻害しない点で、アルキレン鎖が好ましい。また、上記結合鎖は、単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
【0029】
また、上記ポリジエンジオール類(a2-1)の数平均分子量は、誘電特性及びポリエステルとの相溶性に優れる点から、500~10000であることが好ましく、600~5000であることがより好ましく、700~2800であることが更に好ましく、800~1800であることが特に好ましい。
【0030】
ポリジエンジオール類(a2-1)が水添ポリジエンジオールで場合の水添化比率は、特に限定されないが、好ましくは80%以上水添してあることが好ましく、特には90%以上の水添が好ましい。水添化率が低いと、不飽和基が残っている影響で、ポリエステル系樹脂(A)の外観が悪化したり、ポリエステル系樹脂(A)の製造中にゲル化が起こりやすくなることにより、製造が難しくなる傾向がある。また上限値は通常100%である。
【0031】
前記ポリジエンジオール類は、側鎖を有することが好ましく、ポリジエンジオール類(a2-1)全体に対する側鎖の割合は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、最も好ましくは40%以上である。
かかる全体に対する側鎖の割合は、下記の式1によって求められる。
[式1]
全体に対する側鎖の割合(%)=側鎖の炭素数/全体の炭素数×100
【0032】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)においては、誘電特性及び接着性の観点から、多価アルコール類(a2)由来の構造部位におけるポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量は、10モル%以上が好ましく、より好ましくは15~90モル%、更に好ましくは20~80モル%、特に好ましくは25~70モル%である。ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量が上記の範囲内であると低吸湿性や誘電特性、及び接着性に優れ、多すぎると接着性に劣ったり、過度にタック性が強くなる傾向があり、逆に少なすぎると低吸湿性や誘電特性、及び接着性に劣る傾向がある。
【0033】
また、ポリエステル系樹脂(A)全体に対する、ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量は50重量%以上であり、好ましくは55~95重量%、より好ましくは60~90重量%、さらに好ましくは65~85重量%である。ポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の含有量が上記の範囲内であると低吸湿性や誘電特性、及び接着性に優れる。多すぎると接着性に劣ったり、過度にタック性が強くなる傾向があり、逆に少なすぎると、低吸湿性や誘電特性、及び接着性に劣る傾向がある。
【0034】
ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)以外の構造部位としては、例えば、ダイマージオール類由来の構造部位、ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位、脂肪族多価アルコール由来の構造部位(ただし、ポリジエンジオール類及び/又は水添ポリジエンジオール類(a2-1)を除く。)、脂環族多価アルコール由来の構造部位、芳香族多価アルコール由来の構造部位等が挙げられる。多価アルコール類(a2)由来の構造部位は単独でもしくは2種以上が含まれていてもよい。
【0035】
さらに、本発明においては、低誘電正接の点から、前記芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位とポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の合計を、ポリエステル系樹脂(A)の90重量%以上とすることも好ましい。さらに好ましくは95重量%以上である。
【0036】
上記芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位とポリジエンジオール類(a1-2)由来の構造部位の合計は、下記の式2で求めることができる。
[式2]
多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位とポリジエンジオール類(a2-1)由来の構造部位の合計(重量%)=〔芳香族多価カルボン酸類由来の構造部位(a1-1)の重量+ポリジエンジオール類(a2-1)重量〕/ポリエステル全体の重量×100
【0037】
前記ダイマージオール類由来の構造部位を構成するダイマージオール類としては、例えば、平均炭素数10~26(好ましくは12~24、より好ましくは14~22)の不飽和脂肪酸類二量体のダイマー酸類から誘導されるジオールが挙げられる。具体的には、例えば、オレイン酸類やリノール酸類、リノレン酸類、エルカ酸類等の不飽和脂肪酸類から誘導されるジオールが挙げられる。
【0038】
前記ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位を構成するビスフェノール骨格含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールBP、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールフルオレン等やこれらの水添物、及びビスフェノール類の水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを1~数モル付加して得られるエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等のグリコール類が挙げられる。
【0039】
前記脂肪族多価アルコール由来の構造部位を構成する脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。なかでも、エチレングリコール、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0040】
前記脂環族多価アルコール由来の構造部位を構成する脂環族多価アルコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオ-ル、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール等が挙げられる。
【0041】
前記芳香族多価アルコール由来の構造部位を構成する芳香族多価アルコールとしては、前記ビスフェノール骨格含有モノマーを除くものであり、例えば、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール、1,4-フェニレングリコ-ルのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0042】
さらに、上記芳香族多価アルコールとしては、下記一般式(1)で示されるフルオレン系ジオールも挙げられる。
【0043】
【化1】

式(1)中、R1は炭素数1~5のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。R2、R3、R4及びR5は水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
ポリエステル系樹脂(A)にダイマージオール類由来の構造部位、ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位、脂肪族多価アルコール由来の構造部位、脂環族多価アルコール由来の構造部位、芳香族多価アルコール由来の構造部位が含まれる場合は、多価アルコール類(a2)由来の構造部位における、ダイマージオール類由来の構造部位、ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位、脂肪族多価アルコール由来の構造部位、脂環族多価アルコール由来の構造部位、芳香族多価アルコール由来の構造部位の合計の含有量が、90モル%以下であることが好ましく、より好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。
【0045】
また、ポリエステル系樹脂(A)に脂肪族多価アルコール由来の構造部位が含まれる場合は、多価アルコール類(a2)由来の構造部位における、脂肪族多価アルコール由来の構造部位の含有量は、90モル%以下であることが好ましく、より好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。
【0046】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂(A)は、分岐骨格を導入する目的で、3価以上の芳香族多価カルボン酸類由来の構造部位、及び3価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造部位からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造部位を有すること、すなわち、ポリエステル系樹脂(A)の共重合成分として、前記3価以上の芳香族多価カルボン酸類、及び3価以上の脂肪族多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。特に、後述する硬化剤(B)と反応させて架橋構造を形成する場合、分岐骨格を導入することによって、樹脂の反応点が増え、架橋密度が高い、強度な接着剤層を得ることができる。なかでも、汎用性の点でトリメチロールプロパンが含まれることが好ましい。なお、後述する解重合反応で酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類を用いる場合は、解重合反応で用いる多価カルボン酸類とは、別に3価以上の芳香族多価カルボン酸類を用いてもよい。
【0047】
ポリエステル系樹脂(A)に分岐骨格を導入する目的で3価以上の芳香族多価カルボン酸類、及び3価以上の脂肪族多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも一つを使用する場合は、多価カルボン酸類(a1)全体に対する3価以上の芳香族多価カルボン酸類の含有量、又は多価アルコール類(a2)全体に対する3価以上の多価アルコールの含有量(ただし、解重合反応で使用する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類を除く)は、それぞれ好ましくは0.1~5モル%、より好ましくは0.3~3モル%、さらに好ましくは0.5~2モル%の範囲である。両方又はいずれか一方の含有量が多すぎると、接着剤の塗布により形成された塗膜の破断点伸度等の力学物性が低下することとなり接着力が低下する傾向があり、また重合中にゲル化を起こす傾向もある。
【0048】
さらに、本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)には、オキシカルボン酸化合物由来の構造部位が含まれていてもよい。
上記オキシカルボン酸化合物とは、分子構造中に水酸基とカルボキシ基を有する化合物である。
上記オキシカルボン酸化合物由来の構造部位を構成するオキシカルボン酸化合物としては、例えば、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上が含まれていてもよい。
【0049】
〔ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、―60℃~60℃であることが好ましく、より好ましくは-55~40℃、特に好ましくは-50~20℃、さらに好ましくは-45~0℃、殊に好ましくは-40~-20℃、最も好ましくは-35~-25℃である。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、接着性や誘電特性に劣ったり、過度にタック性が強くなる傾向があり、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、接着性が不充分になる傾向がある。
【0050】
上記ガラス転移温度(Tg)の測定方法は以下のとおりである。
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計を用いて測定することにより求めることができる。なお、測定条件は、測定温度範囲-90~100℃、温度上昇速度10℃/分である。
【0051】
〔ポリエステル系樹脂(A)の酸価〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の酸価は3mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは5~40mgKOH/g、特に好ましくは6~30mgKOH/g、さらに好ましくは7~20mgKOH/gである。
酸価が上記の範囲内であると、後述するエポキシ等の硬化剤(B)で硬化させた際の架橋度が適度となり、接着性、耐熱性、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性、低誘電特性のバランスに優れる。酸価が低すぎると、接着剤組成物にポリエポキシ系化合物等の硬化剤(B)を含有させた場合、硬化剤(B)との架橋点が不足し架橋度が低くなるので、耐熱性が不充分となる。また、酸価が高すぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が低下したり、硬化時に多量の硬化剤(B)を必要とすることから、近年要求されることが多くなった低誘電特性が得にくい傾向がある。
【0052】
酸価の定義や測定方法については以下のとおりである。
酸価(mgKOH/g)は、ポリエステル系樹脂(A)1gをトルエン/メタノールの混合溶剤(例えば、体積比でトルエン/メタノール=9/1)30gに溶解し、JIS K 0070に基づき中和滴定により求めることができる。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、樹脂中におけるカルボキ
シ基の含有量に起因するものである。
【0053】
〔ポリエステル系樹脂(A)の水酸基価〕
また、上記ポリスエテル系樹脂(A)の水酸基価は50mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下、特に好ましくは5mgKOH/g以下である。かかる水酸基価が高すぎると、誘電特性、特には誘電正接が劣る傾向がある。
【0054】
上記ポリエステル系樹脂(A)の水酸基価は、JIS K 0070に基づき中和滴定
により求められるものである。
【0055】
上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度は、4.0ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは1~3.5ミリモル/g、さらに好ましくは1.5~3.0ミリモル/gである。かかるエステル基濃度が小さすぎるとポリエステル系樹脂(A)の極性や弾性率が下がるために、接着性に劣ったり、過度にタック性が強くなる傾向があり、高すぎると誘電特性に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0056】
上記エステル基濃度(ミリモル/g)とは、ポリエステル系樹脂(A)1g中のエステル基のモル数のことであり、例えば、仕込み量からの計算値で求められる。かかる計算方法は、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の仕込みモル数の少ない方のモル数を出来上がりの全体重量で割った値であり、計算式の例を以下に示す。
なお、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の各仕込み量が同モル量の場合には、下記のどちらの計算式を用いてもよい。
また、モノマーとして、カルボン酸と水酸基を両方持ったものを使ったり、カプロラクトン等からポリエステルを調製する場合等は、適宜計算方法を変えることとなる。
【0057】
<多価カルボン酸類(a1)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(A1/α1×m1+A2/α2×m2+A3/α3×m3・・・)/Z〕×1000
A:多価カルボン酸類(a1)の仕込み量(g)
α:多価カルボン酸類(a1)の分子量
m:多価カルボン酸類(a1)の1分子あたりのカルボキシ基の数
Z:出来上がり重量(g)
【0058】
<多価アルコール類(a2)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(B1/β1×n1+B2/β2×n2+B3/β3×n3・・・)/Z〕×1000
B:多価アルコール類(a2)の仕込み量(g)
β:多価アルコール類(a2)の分子量
n:多価アルコール類(a2)の1分子あたりの水酸基の数
Z:出来上がり重量(g)
【0059】
また、上記エステル基濃度は、NMR等を用いて公知の方法で測定することもできる。例えば、ポリエステル樹脂(A)のエステル基濃度や組成及び組成比の決定は共鳴周波数400MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)、13C-NMR測定(カーボン型核磁気共鳴分光測定)にて行うことが出来る。
【0060】
また、ポリエステル系樹脂(A)が有するエステル基や反応性官能基以外のその他極性基濃度は、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性の点から低い方が好ましい。
その他極性基としては、例えば、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、カーボネート基等が挙げられる。
【0061】
ポリエステル系樹脂(A)のアミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の濃度は、それらの合計が3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、特に好ましくは1ミリモル/g以下、さらに好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/g以下である。
【0062】
上記エーテル基としては、例えば、アルキルエーテル基やフェニルエーテル基等が挙げられ、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性の点から特にアルキルエーテル基の濃度を低くすることが好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)のアルキルエーテル基濃度としては、3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、特に好ましくは1.5ミリモル/g以下、さらに好ましくは1ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.5ミリモル/g以下である。
また、ポリエステル系樹脂(A)のフェニルエーテル基濃度としては、5ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは4ミリモル/g以下、特に好ましくは3ミリモル/g以下、さらに好ましくは2.5ミリモル/g以下である。
【0063】
ポリエステル系樹脂(A)のカーボネート基濃度としては、3ミリモル/g以下である
ことが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、特に好ましくは1ミリモル/g以
下、さらに好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/
g以下である。
【0064】
〔ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5000~500000が好ましく、より好ましくは10000~400000、特に好ましくは20000~300000、さらに好ましくは30000~250000であり、殊に好ましくは50000~200000である。
重量平均分子量(Mw)が低すぎると、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性、低誘電特性が不充分となる傾向がある。また、重量平均分子量(Mw)が高すぎると、接着力が不充分となったり、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られ難くなる傾向がある。
【0065】
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のピークトップ分子量(Mp)は、5000~150000が好ましく、より好ましくは10000~120000、特に好ましくは15000~100000、さらに好ましくは20000~80000である。
ピークトップ分子量(Mp)が低すぎると、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性、低誘電特性が不充分となる傾向がある。また、ピークトップ分子量(Mp)が高すぎると、接着力が不充分となったり、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られ難くなる傾向がある。
【0066】
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)の測定方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)は、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体 )」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×10 7 、分離範囲:100~2×10 7 、理論段数 :10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径: 10μm)を3本を直列にして測定し、標準ポリスチレン分子量換算により求めることができる。
【0067】
〔ポリエステル系樹脂(A)の吸水率(重量%)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の吸水率は、2重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下、さらに好ましくは0.6重量%以下である。なお、下限は通常0重量%である。
吸水率が高すぎると湿熱耐久性、絶縁信頼性が低下したり、誘電特性が劣る傾向がある。
【0068】
上記吸水率の測定方法は以下のとおりである。
ポリエステル系樹脂(A)溶液(後述する硬化剤(B)を含まない)を離型フィルム上にアプリケーターで塗布、120℃で10分間乾燥し、ポリエステル系樹脂(A)層の乾燥膜厚が65μmのシートを作製する。このシートを7.5cm×11cmのサイズに切り出し、シートのポリエステル系樹脂(A)層面を、予め重量を測定したガラス板上にラミネートした後、離型フィルムを剥がす。このポリエステル系樹脂(A)層を6枚積層することで、ガラス板上に厚み390μmのポリエステル系樹脂層を有する試験板を得、その重量を測定する。
このようにして得られる試験板を23℃の精製水に24時間浸漬させた後、取り出して表面の水気をふき取り、その重量を測定した後、70℃で2時間乾燥させ、乾燥後の試験板の重量を測定する。これらの各工程において測定した重量から、下記式3に従って吸水率(重量%)を算出する。
[式3]
吸水率(重量%)=(c-d)/(b-a)×100
a:ガラス板単独の重量
b:初期の試験板の重量
c:精製水から取り出して水気をふき取った直後の試験板の重量
d:70℃で2時間乾燥させた後の試験板の重量
【0069】
〔ポリエステル系樹脂(A)の誘電特性〕
(誘電率(Dk))
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける誘電率は、2.6以下が好ましく、より好ましくは2.4以下、特に好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.2以下である。上記誘電率が高すぎると伝送速度が劣ったり伝送損失が大きくなる傾向がある。
【0070】
(誘電正接(Df))
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける誘電正接は、0.01以下が好ましく、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.003以下、特に好ましくは0.0025以下、さらに好ましくは0.002以下、殊に好ましくは0.0018以下、最も好ましくは0.0015以下である。上記誘電正接が高すぎると伝送損失が大きくなる傾向がある。
【0071】
上記誘電率及び誘電正接の測定方法は、ネットワークアナライザを用いた空洞共振器摂動法により求めることができる。なお、ポリエステル系樹脂(A)の粘着性が強く単独での測定サンプルの作製が困難な場合は、フィルムにサンドした状態で測定し、フィルム分を差し引くことでポリエステル系樹脂(A)単独の誘電特性を算出することもできる。
【0072】
〔ポリエステル系樹脂(A)のプローブタック(N)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のプローブタックは、5N以下が好ましく、より好ましくは3N以下、特に好ましくは2N以下、さらに好ましくは1.5N以下である。なお、下限は通常0Nである。
プローブタックが高すぎると、粘着性が強く、接着シートとした際のハンドリング性やリワーク性に劣ったり、フレキシブルプリント配線板の加工プロセスにおいて不具合が生じる傾向がある。
【0073】
上記プローブタックの測定方法は以下のとおりである。
ポリエステル系樹脂(A)溶液(後述する硬化剤(B)を含まない)を厚み38μmのPETフィルム(東レ社製、「ルミラーT60」)上にアプリケーターで塗布、120℃で5分間乾燥し、ポリエステル系樹脂(A)層の乾燥膜厚が25μmのシートを作製する。次いで、上記シートを12mm×12mmの大きさに裁断し、23℃、50%RHの環境下で、プローブタックテスター(テスター産業社製、TE-6001)を用いてプローブ径5mmΦ、押し込み速度10mm/sec、引き上げ速度10mm/sec、加圧時間5秒、貼付圧力1000gf/cmで測定することにより求めることができる。
【0074】
また、本発明においては、ポリエステル系樹脂(A)が、非結晶性のポリエステル系樹脂であることが溶剤溶解性及びその溶液安定性の点で好ましい。
結晶性であると溶剤溶解性やその溶液安定性が不充分となる傾向がある。
非結晶性とは、示差走査熱量計により確認することができ、例えば、測定温度範囲-90~400℃、温度上昇速度10℃/分で測定した際に結晶融解による吸熱ピークが観測されないものをいう。なお、測定温度範囲や昇温速度はサンプルに応じて適宜変更することができる。
【0075】
〔ポリエステル系樹脂(A)の製造〕
本発明のポリエステル系樹脂(A)は、上述した多価カルボン酸類(a1)と上述した多価アルコール類(a2)を原料とし、触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造することができる。すなわち、上記ポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とを重縮合反応して得られるため、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有することとなる。上記重縮合反応に際しては、まずエステル化反応、又はエステル交換反応が行われた後、重縮合反応が行われる。なお、高分子量にする必要がない場合には、エステル化反応、又はエステル交換反応のみで製造することもある。
【0076】
上記多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(a1)1当量あたり、多価アルコール類(a2)が1~3当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~2.2当量であり、さらに好ましくは1.2~1.7当量である。多価アルコール類(a2)の配合割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0077】
[エステル化反応、又はエステル交換反応〕
エステル化反応、又はエステル交換反応においては、通常、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと得られる反応物の色相とのバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
【0078】
上記触媒の配合量は、全共重合成分(重量基準)に対して1~10000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5000ppm、さらに好ましくは20~3000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
【0079】
エステル化反応、又はエステル交換反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、特に好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~260℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧であるが、加圧反応をすることで、反応温度を上げて効率的に反応を進めることも好ましい。
【0080】
上記エステル化反応、又はエステル交換反応が行われた後に行われる重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応、又はエステル交換反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量を配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
【0081】
また、側鎖にカルボキシ基を有するポリエステル系樹脂を得るに際しては、多価カルボン酸無水物を除く多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とを共重合して得られる水酸基含有プレポリマーに、多価カルボン酸無水物を反応させる方法が生産性の点で好ましい。
【0082】
多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とのエステル化反応における温度は、通常180~280℃であり、反応時間は通常60分~8時間である。
【0083】
重縮合における温度は、通常200~280℃であり、反応時間は通常20分~4時間である。また、重縮合は減圧下で行うことが好ましい。
【0084】
また、ポリエステル系樹脂(A)は、上記とは別の周知の方法、例えば、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とを、必要に応じて触媒の存在下で、エステル化反応に付してプレポリマーを得た後、重縮合を行い、さらに解重合を行うことにより製造することができる。
【0085】
解重合は、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類を用いることが接着力の点から好ましい。酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類としては、前記多価カルボン酸類(a1)で説明したものを用いることができる。なかでも、好ましくは、分子量低下を抑制できる点から酸無水物基数が1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類であり、より好ましくはトリメリット酸無水物、水添トリメリット酸無水物であり、特に好ましくは低誘電正接の点からトリメリット酸無水物である。
解重合における温度は、通常200~260℃であり、反応時間は通常10分~3時間である。
【0086】
解重合の際、多価カルボン酸類(a1)全体を100モル%としたとき、酸無水物基数
が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類を、20モル%を超えて用いると、樹脂
の分子量が大きく低下することがある。したがって、多価カルボン酸類(a1)全体を1
00モル%としたとき、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)類を
20モル%以下用いて解重合を行うことが好ましく、より好ましくは1~15モル%、特
に好ましくは2~10モル%、さらに好ましくは3~8モル%である。
【0087】
かくして、従来に比べて、誘電正接の非常に小さいポリエステル系樹脂(A)を得ることができる。
そして、誘電正接の非常に小さいポリエステル系樹脂(A)は、高周波数領域での伝送損失を抑制できる点から、電子材料部材の貼り合わせ等に用いる接着剤の原料として非常に有用となる。
【0088】
また、本発明においては、ポリエステル系樹脂(A)が非ハロゲン系の有機溶剤に可溶であることが後述の接着剤組成物とする点から好ましい。かかる有機溶剤に対する溶解性が不充分であると、接着剤組成物の調製が困難となる傾向がある。
【0089】
上記非ハロゲン系の有機溶剤とは、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソ等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル等エステル系溶剤、セロソルブアセテート、メトキシアセテート等のアセテート系溶剤、又はそれら溶剤の2種類以上の混合物等である。
【0090】
〔硬化剤(B)〕
本発明の接着剤組成物は、硬化剤(B)をさらに含有することが好ましい。硬化剤(B)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(A)中の官能基とかかる官能基と反応する官能基を有する硬化剤(B)とが反応し、硬化して、接着力や耐熱性、耐久性に優れた接着剤を得ることができる。また、多官能アクリレートのように、硬化剤同士が反応し、ポリエステル樹脂(A)との絡み合いを作ることで、疑似架橋する場合もある。
かかる硬化剤(B)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物、多官能(メタ)アクリル系モノマーや多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が好ましく、なかでも、半田耐熱性の点でポリエポキシ系化合物であることが好ましい。
【0091】
上記ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系硬化剤、1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系硬化剤、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系硬化剤、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系硬化剤等の芳香族系イソシアネート系硬化剤;イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート系硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート系硬化剤;上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの多価イソシアネート系化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。なかでも、相溶性の観点から、脂環族系イソシアネート系硬化剤や脂肪族系イソシアネート系硬化剤が好ましく、とりわけ、脂環族イソシアネート系硬化剤が好ましく、さらには、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体やアダクト体が好ましい。
【0092】
水酸基に対するイソシアネート基の当量(官能基モル比)は、0.2~5が好ましく、より好ましくは0.3~3、特に好ましくは0.5~2、さらに好ましくは1.0~1.6である。
当該当量が大きすぎると、接着力や接着シートの経時安定性が不充分となったりする傾向がある。また、小さすぎると、湿熱環境下での長期耐久性、凝集力が不充分となったり、誘電特性に劣る傾向がある。
【0093】
上記ポリエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の2官能グリシジルエーテルタイプ;フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテルタイプ;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ;トリグリシジルイソシアヌレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族又は脂肪族エポキサイド等が挙げられる。これらのポリエポキシ系化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、反応性の点からはグリシジルエーテルタイプ及びグリシジルエステルタイプが好ましく、湿熱耐久性の観点からはグリシジルエーテルタイプが好ましく、耐熱性の観点からは多官能タイプが好ましい。
【0094】
また、ポリエポキシ系化合物のエポキシ当量は500g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは350g/eq以下、特に好ましくは250g/eq以下、さらに好ましくは200g/eq以下である。ポリエポキシ系化合物のエポキシ当量が大きすぎると架橋後の架橋密度が低くなるため耐熱性に劣ったり、架橋密度を稼ぐために多量のポリエポキシ系化合物を添加する必要があるため誘電特性に劣る傾向がある。
【0095】
さらに、ポリエポキシ系化合物として、窒素原子を含有するポリエポキシ系化合物(窒素原子含有ポリエポキシ系化合物)を含有すると、接着剤層の硬化時間を短縮することができ、好ましい。
【0096】
窒素原子含有ポリエポキシ系化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等のグリシジルアミン系化合物等が挙げられる。
【0097】
カルボキシ基に対するエポキシ基の当量(官能基モル比)は、0.5~5が好ましく、より好ましくは0.8~3、特に好ましくは0.9~2、さらに好ましくは1~1.5である。
当該当量が大きすぎると、接着力や低吸湿性が不充分となったり、誘電特性が劣ったりする傾向がある。また、小さすぎると、湿熱環境下での長期耐久性、耐熱性が不充分となる傾向がある。
【0098】
カルボキシ基(COOH)に対するエポキシ基の当量(官能基モル比)は、ポリエステル系樹脂(A)の酸価と、配合したポリエポキシ系化合物のエポキシ当量(g/eq)から、下記式4により求められる。
[式4]
COOHに対するエポキシの当量=(a÷WPE)/(AV÷56.1÷1000×b)
a:配合に用いたポリエポキシ系化合物の重量(g)
WPE:ポリエポキシ系化合物のエポキシ当量(g/eq)
AV:ポリエステル系樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)
b:配合に用いたポリエステル系樹脂(A)の重量(g)
【0099】
〔接着剤組成物〕
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル系樹脂(A)、更に必要に応じて硬化剤(B)やその他成分を含有する。
本発明の接着剤組成物において、ポリエステル系樹脂(A)の含有量は、固形分全体に対して、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。なお、通常上限は99重量%である。
上記の含有量の範囲であると本発明の効果がより得やすくなる。
【0100】
本発明の接着剤組成物が硬化剤(B)を含有する場合、硬化剤(B)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは0.1~20重量部、特に好ましくは0.5~10重量部、更に好ましくは1~5重量部である。硬化剤(B)の含有量が少なすぎると耐熱性接着力、湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向があり、多すぎると接着力や低吸湿性が不充分となったり、誘電特性が劣ったりする傾向がある。
【0101】
〔その他成分〕
本発明の接着剤組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、ポリエステル系樹脂(A)、硬化剤(B)以外のその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、例えば、無機フィラー、シランカップリング剤等のカップリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、レベリング剤、触媒等が挙げられる。
本発明の接着剤組成物がその他成分を含有する場合、その他成分の含有量は、固形分全体に対して、好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは0.05~60重量%、特に好ましくは0.1~50重量%、更に好ましくは0.2~40重量%である。
【0102】
本発明の接着剤組成物は、例えば、上記ポリエステル系樹脂(A)、及び必要な任意成分を準備し、ポリエステル系樹脂(A)の製造時に配合し分散させる、もしくは有機溶剤で溶解させたポリエステル系樹脂(A)の溶液に配合しミキシングローラー等を用いて分散させることにより、得ることができる。
【0103】
また、本発明の接着剤組成物には、接着剤組成物の粘度を適度に調整し、塗膜を形成する際の取り扱いを容易にするために、溶剤を配合してもよい。溶剤は、接着剤組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。
【0104】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。以上に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0105】
<接着剤>
本発明においては、上記接着剤組成物を硬化することにより接着剤を得ることができる。
本発明における「硬化」とは熱及び/又は光等により接着剤組成物を意図的に架橋させることを意味し、その架橋の程度は所望の物性、用途により制御することができる。
【0106】
架橋の程度は接着剤のゲル分率によって確認することができ、好ましくはゲル分率が30重量以上%、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量以上%、さらに好ましくは60重量%以上である。ゲル分率が低すぎると耐熱性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向があり、高すぎると接着力が不充分となる傾向がある。
なお、上記ゲル分率は、硬化度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、PETフィルム等)に接着剤層が形成されてなる接着シート(離型シートを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の接着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0107】
本発明の接着剤組成物を硬化又は半硬化させて接着剤とする際の接着剤組成物の硬化方法は、接着剤組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常80~200℃で1分~10時間の加熱条件が挙げられる。
【0108】
硬化剤を用いて本発明の接着剤組成物を硬化するに際しては触媒を用いてもよい。
そのような触媒としては、例えば、2-メチルイミダゾールや1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、N'-メチル-N-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等の三級アミン類;及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートやジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート等のカチオン触媒;トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。これらのうち、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7や1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等の三級アミン類;及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物が、熱硬化性及び耐熱性、金属への接着性、配合後の保存安定性の点で好ましい。
その際の配合量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.01~1重量部であることが好ましい。この範囲であればポリエステル系樹脂(A)と硬化剤(B)との反応に対する触媒効果が一段と増し、強固な接着性能を得ることができる。
【0109】
〔用途〕
本発明の接着剤は、初期接着性、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性に優れるので、樹脂や金属等の各種材料からなる基材の接着に有効であり、特に、金属層とプラスチック層との積層板を作製するための接着剤、例えば、電子材料部材の貼り合せに用いられる接着剤に好適である。
本発明における「電子材料部材」としては、例えば、フレキシブルプリント基板、カバーレイ、ボンディングシート等が挙げられる。
電子材料部材の貼り合せにより作製されるものとしては、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板が挙げられる。フレキシブル積層板は、例えば、「可撓性を有するフレキシブル基板/接着剤層/銅やアルミニウム、これらの合金等からなる導電性金属層」を順次積層した積層体であり、接着剤層を構成する接着剤として本発明の接着剤を用いることができる。なお、フレキシブル積層板は、上記の各種層以外に、他の絶縁層、他の接着剤層、他の導電性金属層を更に含んでいてもよい。
【実施例0110】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、重
量基準を意味する。
【0111】
<実施例1>
〔ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)としてテレフタル酸ジメチル(a1-1)7.5部(0.039モル)、イソフタル酸ジメチル(a1-1)8.8部(0.045モル)、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(a1-1)9.4部(0.039モル)、無水トリメリット酸(a1-2)1.2部(0.006モル)、多価アルコール類(a2)としてエチレングリコール9.6部(0.155モル)、数平均分子量3870の水添ポリブタジエンジオール(a2-1)(GI-3000(日本曹達社製)473.6部(0.122モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が270℃となるまで2.5時間かけて昇温し、270℃で1.5時間、エステル化反応を行った。
次いで、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を追加し、系内を2.5hPaまで減圧し、2時間かけて重合反応を行った。
その後、内温を230℃まで下げ、トリメリット酸無水物(TMAn)9.9部(0.052モル)を添加し230℃で1時間解重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
【0112】
<実施例2~4及び比較例1>
〔ポリエステル系樹脂(A-2)~(A-4)、(A‘-1)の製造〕
樹脂組成を表1に記載のとおりになるよう変更した以外はポリエステル系樹脂(A-1)と同様にしてポリエステル系樹脂(A-2)~(A-4)、(A‘-1)を得た。
【0113】
<比較例2>
〔ポリエステル系樹脂(A‘-2)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)としてアジピン酸19.3部(0.132モル)、セバシン酸17.1部(0.084モル)、多価アルコール類(a2)としてエチレングリコール13.4部(0.217モル)、数平均分子量2300の水添ポリブタジエンジオール(a2-1)(GI-2000(日本曹達社製))448.2部(0.195モル)、トリメチロールプロパン2.0部(0.015モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が270℃となるまで2.5時間かけて昇温し、270℃で1.5時間、エステル化反応を行った。
次いで、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を追加し、系内を2.5hPaまで減圧し、2時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A‘-2)を得た。
【0114】
<比較例3,4>
〔ポリエステル系樹脂(A‘-3)(A‘-4)の製造〕
樹脂組成を表1に記載のとおりになるよう変更した以外はポリエステル系樹脂(A‘-2)と同様にしてポリエステル系樹脂(A‘-3)(A‘-4)を得た。
【0115】
下記の表1で記載する組成は、出来上がりの組成比(樹脂組成比)であり、得られたポリエステル系樹脂の各構成モノマー量の相対比(モル比)である。なお、表1中、各略称は以下のとおりである。
「IPA」:イソフタル酸(a1-1)
[DMT」:テレフタル酸ジメチル(a1-1)
「DMI」:イソフタル酸ジメチル(a1-1)
「NDCM」:2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル(a1-1)
「TMAn」:無水トリメリット酸(a1-2)
「AdA」:アジピン酸
「SebA」:セバシン酸
「GI-1000」:水添ポリブタジエンジオール(a2-1)(GI-1000 日本曹達社製、Mn1630)
「GI-2000」:水添ポリブタジエンジオール(a2-1)(GI-2000 日本曹達社製、Mn2300)
「GI-3000」:水添ポリブタジエンジオール(a2-1)(GI-3000 日本曹達社製、Mn3870)
「P2033」:水添ダイマージオール(P2033 クローダ社製、分子量538)
「EG」:エチレングリコール
「NPG」:ネオペンチルグリコール
「TMP」:トリメチロールプロパン
【0116】
得られたポリエステル系樹脂の樹脂組成(成分由来の構造部位)を後記の表1に示す。
【0117】
また、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(℃)、酸価(mgKOH/g)、ピークトップ分子量(Mp)、重量平均分子量(Mw)、誘電特性(誘電率Dk、誘電正接Df)、プローブタック(N)、エステル結合濃度(ミリモル/g)、芳香族多価カルボン酸(a1-1)含有量(モル%)、ポリジエン系化合物(a2-1)含有量(重量%)について、本明細書の記載に従って測定を行った。ポリエステル系樹脂の諸物性を下記の表2に示す。
なお、比較例2~4については誘電特性が悪く、本願の課題を解決できるものではなかったため、プローブタックの評価は行わなかった。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)として、以下のものを用意した。
(B-1):テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(三菱ケミカル株式会社製「jER604」)
【0121】
上記で得られたポリエステル系樹脂(A)及び硬化剤(B)を用いて、下記のとおり接着剤組成物を製造した。
【0122】
<実施例5>
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)をトルエンで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液(固形分として100部)に対し、硬化剤(B-1)(固形分)を2.5部配合し、更にトルエンで全体の固形分50%になるように希釈、撹拌、混合することにより、接着剤組成物を得た。
【0123】
<実施例6~12,比較例5,6>
実施例5において、後記の表3に示すとおりの各成分を配合とした以外は同様にして、接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物について、下記の評価を行った。評価結果を後記の表3に示す。
【0124】
〔接着力(剥離強度)(PI/接着剤層/Cu)〕
上記で調製した接着剤組成物を厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200H」(東レ・デュポン社製)にアプリケーターで塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚25μmの接着層を形成した。次に厚み30μmの圧延銅箔を上記接着層付きポリイミドフィルムの接着層面とラミネート(ラミネート条件:170℃、0.2MPa、送り速度1.5m/min)し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで積層体を得た。
上記で得られた積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片を厚み2mmのガラス板に固定し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で剥離試験機を用いて、試験片の引張剥離強度を測定した(剥離速度:50mm/min、剥離角度:180°)。
【0125】
〔ゲル分率〕
上記で調整した接着剤組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)に塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚50μmの接着剤層を形成した。その後、かかる接着剤層に、離型処理されたPETフィルムを貼着してその表面を保護し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで接着シートを得た。
上記で得られた接着シートを4cm×4cmサイズに切り出した。片側の離型フィルムを剥がしたのち、200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤重量に対する金網中に残存した不溶解の接着剤成分の重量百分率をゲル分率とした。
【0126】
〔接着剤層の誘電特性〕
上記で得られた接着シートの接着剤層について、ネットワークアナライザを用いた空洞共振器摂動法により、誘電特性(誘電率Dk、誘電正接Df)を測定した。
【0127】
〔プローブタック〕
上記で調整した接着剤組成物を厚み38μmのPETフィルム(東レ社製、「ルミラーT60」)上にアプリケーターで塗布、120℃で5分間乾燥し、接着剤組成物の乾燥膜厚が25μmのシートを作製した。その後、かかる接着剤層に、離型処理されたPETフィルムを貼着してその表面を保護し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで接着シートを得た。
上記で得られた接着シートを12mm×12mmの大きさに裁断した後、離型処理されたPETフィルムを剥がし、23℃、50%RHの環境下で、プローブタックテスター(テスター産業社製、TE-6001)を用いてプローブ径5mmΦ、押し込み速度10mm/sec、引き上げ速度10mm/sec、加圧時間5秒、貼付圧力1000gf/cmで測定した。
【0128】
【表3】
【0129】
上記表の結果より、実施例1~4のポリエステル系樹脂(A-1)~(A-4)を用いた実施例5~12の接着剤組成物は、誘電特性と接着性(プローブタック)に優れた接着剤組成物であった。
一方、上記の比較例1のポリエステル系樹脂(A’-1)を用いた比較例5、6の接着剤組成物は、接着性に劣るものであった。また、比較例2~4のポリエステル系樹脂(A’-2)~(A’-4)は、誘電正接に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であり、極めて低誘電率及び低誘電正接で、また、接着性にも優れるものである。そのため金属とプラスチックの積層板を作製するための接着剤、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板等に用いられる接着剤として有効である。