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特開2023-176943オクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176943
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】オクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20231206BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20231206BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61K31/704
A61P17/00
A61P1/04
A61P43/00 111
A61K8/63
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089540
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】池岡 佐和子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC01
4C083EE12
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物の中からオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用、クローディン-4産生促進作用又はバリア機能亢進作用を有する物質を見出し、それを有効成分とするオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤を提供する。
【解決手段】オクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤は、グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有することを特徴とするオクルディン産生促進剤。
【請求項2】
グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有することを特徴とするクローディン-1産生促進剤。
【請求項3】
グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有することを特徴とするクローディン-4産生促進剤。
【請求項4】
グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有することを特徴とするバリア機能亢進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体においてその内外を隔てる構造の一つに、上皮細胞から構成される上皮組織がある。上皮組織は、物質透過を制御するバリア機能を有しており、これにより生体において外界とは異なる内部環境を作り上げている。このようなバリア機能は、主に細胞間の接着により形成されるが、かかる接着の一つがタイトジャンクション(以下「TJ」という場合がある。)である。TJは、隣接する上皮細胞同士を密着させるだけでなく、細胞と細胞との隙間をシールすることで物質の透過を制御する細胞間接着構造である。TJを構成しているのは、細胞膜タンパク質であるクローディンやオクルディン、裏打ちタンパク質であるZO-1やZO-2等であり、これらのタンパク質はTJストランドの骨格を構成し、TJのバリア機能を制御すると考えられている(非特許文献1参照)。
【0003】
現在まで、クローディンとしては20種以上のクローディン分子が報告され、クローディンファミリーが形成されている。これらのクローディンが組織特異的な発現パターンを示すことが分かっており、表皮においてはクローディン-1及びクローディン-4が発現している。クローディン-4は、粘膜上皮においても多く発現しており、身体の内外で異物の侵入を防ぐバリアとして機能している。
【0004】
クローディンやオクルディンの発現が何らかの原因で減少した場合、TJの機能低下を引き起こす。例えば、消化管においてTJの機能が低下すると、食物アレルゲンや病原性微生物等が体内へ侵入してしまい、炎症性腸疾患や各種感染症等の一因になると考えられる。また、従来、皮膚のバリア機能は角質層のみが担っていると考えられていたが、近年、表皮顆粒層に存在するTJの構成タンパク質を遺伝子レベルで欠損させると皮膚のバリア機能が崩壊することが見いだされ、TJも皮膚のバリア機能に重要な役割を担うと考えられるようになっている(非特許文献2参照)。クローディンやオクルディン等の発現が何らかの原因で減少した場合、TJの構造的な破壊が起こり、物質の透過バリアとして機能しなくなることによって、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症等の皮膚症状の一因になると考えられる。
【0005】
そのため、クローディンやオクルディンの産生促進等を通じてTJの機能を強化することで、上皮組織におけるバリア機能を強化し、消化管においては炎症性腸疾患や食物アレルギー、各種感染症等を予防又は改善することができ、一方表皮においては乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症等の皮膚症状を予防又は改善することができると考えられる。クローディン産生促進作用及びオクルディン産生促進作用を有するものとして、例えば、アスパラサスリネアリス抽出物(特許文献1参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-256244号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本香粧品科学会誌,2007年,vol.31,pp.296-301
【非特許文献2】J. Cell Biol.,2002年,vol.156,pp.1099-1111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安全性の高い天然物の中からオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用、クローディン-4産生促進作用又はバリア機能亢進作用を有する物質を見出し、それを有効成分とするオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤は、グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れたオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用、クローディン-4産生促進作用又はバリア機能亢進作用を有し、安全性の高いオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤は、いずれも、グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分として含有する。
【0012】
グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸と水酸化カリウム(KOH)等とを反応させることにより得ることができ、グリチルリチン酸は、グリチルリチン酸を含有する植物抽出物から単離・精製することにより得ることができる。なお、グリチルリチン酸を含有する植物抽出物には、グリチルリチン酸を含有する植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0013】
グリチルリチン酸を含有する植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。グリチルリチン酸を含有する植物としては、例えば、甘草等が挙げられる。
【0014】
甘草は、マメ科カンゾウ属に属する多年生草本である。当該甘草としては、例えば、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、グリチルリーザ・アスペラ(Glychyrrhiza aspera)、グリチルリーザ・ユーリカルパ(Glychyrrhiza eurycarpa)、グリチルリーザ・パリディフロラ(Glychyrrhiza pallidiflora)、グリチルリーザ・ユンナネンシス(Glychyrrhiza yunnanensis)、グリチルリーザ・レピドタ(Glychyrrhiza lepidota)、グリチルリーザ・エキナタ(Glychyrrhiza echinata)、グリチルリーザ・アカンソカルパ(Glychyrrhiza acanthocarpa)等の種が存在する。これらのうち、いずれの種類の甘草を抽出原料として使用してもよいが、特にグリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)を抽出原料として使用することが好ましい。
【0015】
抽出原料として使用し得る甘草の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根部である。
【0016】
グリチルリチン酸を含有する植物抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0017】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0018】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0020】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10~90容量部を混合することが好ましい。
【0021】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0022】
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物からグリチルリチン酸を単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、植物抽出物を、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコールの順で溶出させ、アルコールで溶出される画分としてグリチルリチン酸を得ることができる。
【0023】
カラムクロマトグラフィーにて溶出液として使用し得るアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール又はそれらの水溶液等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0024】
さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたアルコール画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液-液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0025】
このようにして得られるグリチルリチン酸を、常法により水酸化カリウム(KOH)等と反応させることで、グリチルリチン酸ジカリウムを得ることができる。
【0026】
以上のようにして得られるグリチルリチン酸ジカリウムは、オクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用及びクローディン-4産生促進作用を有しているため、それらの作用を利用してオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤及びクローディン-4産生促進剤の有効成分として使用することができる。
【0027】
また、グリチルリチン酸ジカリウムは、上記作用を利用してバリア機能亢進剤の有効成分として使用することができる。ここで、グリチルリチン酸ジカリウムが有するバリア機能亢進作用は、オクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用又はクローディン-4産生促進作用に基づいて発揮されることが好ましい。ただし、グリチルリチン酸ジカリウムが有するバリア機能亢進作用は、上記作用に基づいて発揮されるバリア機能亢進作用に限定されるものではない。
【0028】
本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤は、グリチルリチン酸ジカリウムのみからなるものであってもよいし、グリチルリチン酸ジカリウムを製剤化したものであってもよい。
【0029】
グリチルリチン酸ジカリウムは、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。グリチルリチン酸ジカリウムは、他の組成物(例えば、皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0030】
なお、本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤は、必要に応じて、オクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用又はクローディン-4産生促進作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。
【0031】
本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤の投与方法としては、一般に経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0032】
本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤又はクローディン-4産生促進剤は、グリチルリチン酸ジカリウムが有するオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用又はクローディン-4産生促進作用を通じて、上皮組織におけるタイトジャンクションの形成を促すことでバリア機能を亢進し、炎症性腸疾患や食物アレルギー、消化管から感染する各種感染症等;乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎等の皮膚症状や各種感染症等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤又はクローディン-4産生促進剤は、これらの用途以外にもオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用又はクローディン-4産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0033】
本実施形態のバリア機能亢進剤は、有効成分であるグリチルリチン酸ジカリウムが有するバリア機能亢進作用を通じて、上皮組織におけるバリア機能を亢進することができる。例えば、消化管におけるバリア機能を亢進し、炎症性腸疾患や食物アレルギー、消化管から感染する各種感染症等を予防、治療又は改善することができる。また、表皮におけるバリア機能及び水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎等の皮膚症状や各種感染症等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のバリア機能亢進剤は、これらの用途以外にもバリア機能亢進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0034】
また、本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤は、優れたオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用及びクローディン-4産生促進作用を有するため、例えば、皮膚外用剤又は経口組成物に配合するのに好適である。この場合に、グリチルリチン酸ジカリウムをそのまま配合してもよいし、グリチルリチン酸ジカリウムから製剤化したオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤を配合してもよい。
【0035】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0036】
皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸ジカリウムの配合量は、皮膚外用剤の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
【0037】
経口組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「経口組成物」は、経口的に摂取される一般食品、飼料、健康食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。本実施形態における経口組成物は、当該経口組成物又はその包装に、グリチルリチン酸ジカリウムが有する好ましい作用を表示することのできる経口組成物であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品又は医薬品であることが特に好ましい。
【0038】
経口組成物におけるグリチルリチン酸ジカリウムの配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる経口組成物の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象経口組成物が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の場合、グリチルリチン酸ジカリウムの添加量は、添加対象経口組成物に対して通常0.0001~10質量%であり、好ましくは0.001~1質量%である。
【0039】
また、本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤は、優れたオクルディン産生促進作用、クローディン-1産生促進作用又はクローディン-4産生促進作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0040】
なお、本実施形態のオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤又はバリア機能亢進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例0041】
以下、試験例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。なお、下記の試験例においては、試料としてグリチルリチン酸ジカリウム(丸善製薬社製)を使用した。
【0042】
〔試験例1〕オクルディン産生促進作用試験
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を2×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、KGMで溶解した試料溶液(試料濃度は下記表1を参照)を各ウェルに100μL添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したオクルディンの量を、ポリクローナル抗ヒトオクルディン抗体を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式に基づいてオクルディン産生促進率(%)を算出した。
【0043】
オクルディン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度」を表す。
上記試験の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、グリチルリチン酸ジカリウムは、優れたオクルディン産生促進作用を有することが確認された。
【0046】
[試験例2]クローディン-1産生促進作用試験
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を2×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、KGMで溶解した試料(試料濃度は下記表2を参照)を各ウェルに100μL添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したクローディン-1の量を、ポリクローナル抗ヒトクローディン-1抗体を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式に基づいてクローディン-1産生促進率(%)を算出した。
【0047】
クローディン-1産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度」を表す。
上記試験の結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、グリチルリチン酸ジカリウムは、優れたクローディン-1産生促進作用を有することが確認された。
【0050】
[試験例3]クローディン-4産生促進作用試験
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を2×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、KGMで溶解した試料(試料濃度は下記表3を参照)を各ウェルに100μL添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したクローディン-4の量を、モノクローナル抗ヒトクローディン-4抗体を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式に基づいてクローディン-4産生促進率(%)を算出した。
【0051】
クローディン-4産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度」を表す。
上記試験の結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、グリチルリチン酸ジカリウムは、優れたクローディン-4産生促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本実施形態に係るオクルディン産生促進剤、クローディン-1産生促進剤、クローディン-4産生促進剤及びバリア機能亢進剤は、上皮組織におけるバリア機能の亢進(炎症性腸疾患や食物アレルギー、消化管から感染する各種感染症等の予防、治療または改善;乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎等の皮膚症状や各種感染症等の予防、治療又は改善等)に大きく貢献することができる。