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特開2023-177038化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177038
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231206BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20231206BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20231206BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/09 501
G03F7/004 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089720
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増永 恵一
(72)【発明者】
【氏名】福島 将大
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正晃
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197AA26
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197DB06
2H197GA01
2H197HA03
2H197HA10
2H197JA22
2H225AF11P
2H225AF15P
2H225AF23P
2H225AF24P
2H225AF25P
2H225AF28P
2H225AF29P
2H225AF41P
2H225AF48P
2H225AF56P
2H225AF62P
2H225AF64P
2H225AF71P
2H225AF94P
2H225AF99P
2H225AH03
2H225AH14
2H225AH19
2H225AH38
2H225AH40
2H225AJ04
2H225AJ13
2H225AJ42
2H225AJ44
2H225AJ45
2H225AJ47
2H225AJ48
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ58
2H225AM15P
2H225AM22P
2H225AM27P
2H225AM38P
2H225AM91P
2H225AM93P
2H225AM99P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN57P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225BA29P
2H225CA08
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
2H225DA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】適度な酸強度を有し、かつ拡散の小さい酸を発生することができる酸発生剤を含む化学増幅ポジ型レジスト組成物を提供する。
【解決手段】(A1)または(A2)の酸発生剤、及びフェノール骨格を有する繰り返し単位を含み、酸によりアルカリ現像液への溶解性が増すポリマーを含むレジスト組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(A1)で表されるスルホニウム塩及び下記式(A2)で表されるヨードニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む酸発生剤、並びに(B)下記式(B1)で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマーを含む化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】
(式中、mは、0又は1である。pは、1~3の整数である。qは、1~5の整数である。rは、0~3の整数である。
1は、単結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
2は、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
1は、pが1のときは単結合又は炭素数1~20のヒドロカルビレン基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の(p+1)価炭化水素基であり、該ヒドロカルビレン基及び(p+1)価炭化水素基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート結合、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
Rf1及びRf2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アミノ基、-N(R1A)-C(=O)-R1B又は-N(R1A)-C(=O)-O-R1Bであり、R1Aは、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基であり、R1Bは、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基である。
2は、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビレン基又は炭素数6~14のアリーレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよく、該アリーレン基の水素原子の一部又は全部が、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、ハロゲン原子及びヒドロキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
3~R7は、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。また、R3とR4とが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【化2】
(式中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数である。a3は、0≦a3≦5+2a2-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
11は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
【請求項2】
(A)成分が、下記式(A3)で表されるオニウム塩である請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化3】
(式中、p、q、r、X1、R1、R3、R4及びR5は、前記と同じ。
nは、1~4の整数である。
2Aは、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基である。)
【請求項3】
前記ポリマーが、更に、下記式(B2-1)で表される繰り返し単位を含むものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数である。b3は、0≦b3≦5+2b2-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。
12は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。
Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2以上のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【請求項4】
前記ポリマーが、更に、下記式(B2-2)で表される繰り返し単位を含むものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、c1は、0~2の整数である。c2は、0~2の整数である。c3は、0~5の整数である。c4は、0~2の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
3は、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-A31-である。A31は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~20の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。
13及びR14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
15は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルコキシ基である。
16は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。)
【請求項5】
前記ポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、d及びeは、それぞれ独立に、0~4の整数である。f1は、0又は1である。f2は、0~5の整数である。f3は、0~2の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
21及びR22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
23は、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基又はスルホニル基である。
4は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
【請求項6】
前記ポリマーが、更に、下記式(B6)~(B13)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Y11-、-C(=O)-O-Y11-又は-C(=O)-NH-Y11-であり、Y11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又は-Y21-C(=O)-O-であり、Y21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Y31-、-C(=O)-O-Y31-又は-C(=O)-NH-Y31-であり、Y31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。g1及びg2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Y4が単結合のとき、g1及びg2は、0である。
31~R48は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項7】
前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有率が60モル%以上である請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
更に、(C)クエンチャーを含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
(C)クエンチャーに対する(A)酸発生剤の含有比率が、質量比で6未満である請求項8記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
更に、(D)下記式(D1)で表される繰り返し単位、下記式(D2)で表される繰り返し単位、下記式(D3)で表される繰り返し単位及び下記式(D4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含み、更に下記式(D5)で表される繰り返し単位及び下記式(D6)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいフッ素原子含有ポリマーを含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、RCは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Dは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
101、R102、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。
103、R106、R107及びR108は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R103、R106、R107及びR108がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
109は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
110は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
111は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基であり、前記飽和ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エステル結合又はエーテル結合で置換されていてもよい。
xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。hは、1~3の整数である。
1は、炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基である。
2は、単結合、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
3は、単結合、-O-、*-C(=O)-O-Z31-Z32-又は*-C(=O)-NH-Z31-Z32-である。Z31は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基である。Z32は、単結合、エステル結合、エーテル結合又はスルホンアミド結合である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。)
【請求項11】
更に、(E)有機溶剤を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項13】
前記高エネルギー線が、極端紫外線又は電子線である請求項12記載のレジストパターン形成方法。
【請求項14】
前記基板の最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1種を含む材料からなる請求項12記載のレジストパターン形成方法。
【請求項15】
前記基板が、透過型又は反射型マスクブランクである請求項12記載のレジストパターン形成方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布した透過型又は反射型マスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。このうち、0.2μm以下のパターンの加工では、もっぱら酸を触媒とした化学増幅レジスト組成物が使用されている。また、露光源として紫外線、遠紫外線、電子線(EB)等の高エネルギー線が用いられており、特に超微細加工技術として利用されているEBリソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。
【0003】
酸性側鎖を有する芳香族骨格を多量に有するポリマー、例えばポリヒドロキシスチレンは、KrFエキシマレーザーを用いるKrFリソグラフィー用レジスト組成物の材料として有用であるが、波長200nm付近の光に対して大きな吸収を示すため、ArFエキシマレーザーを用いるArFリソグラフィー用レジスト組成物の材料としては使用されなかった。しかし、ArFエキシマレーザーによる加工限界よりも小さなパターンを形成するための有力な技術であるEBリソグラフィー用レジスト組成物や、極端紫外線(EUV)リソグラフィー用レジスト組成物の材料としては高いエッチング耐性が得られる点で重要な材料となっている。
【0004】
通常、ポジ型のEBリソグラフィー用レジスト組成物やEUVリソグラフィー用レジスト組成物のベースポリマーとしては、高エネルギー線を照射することで光酸発生剤より発生した酸を触媒として、ベースポリマーが持つフェノール側鎖の酸性官能基をマスクしている酸分解性保護基(酸不安定基)を脱保護させて、アルカリ現像液に可溶化する材料が主に用いられている。
【0005】
前記酸分解性保護基として、第3級アルキル基、tert-ブトキシカルボニル基、アセタール基等が主として用いられてきた。ここで、アセタール基のような脱保護に必要な活性化エネルギーが比較的小さい保護基を用いると、高感度のレジスト膜が得られるという利点があるものの、発生する酸の拡散の抑制が十分でないと、レジスト膜中の露光していない部分においても脱保護反応が起きてしまい、ラインエッジラフネス(LER)の劣化やパターン線幅の寸法均一性(CDU)の低下を招くという問題があった。また、特に重要な用途であるフォトマスクブランクの加工では、フォトマスク基板に成膜された酸化クロムをはじめとするクロム化合物膜等、化学増幅レジスト膜のパターン形状に影響を与えやすい表面材料を持つものがあり、高解像性やエッチング後の形状を保つためには基板の種類に依存せずレジスト膜のパターンプロファイルを矩形に保つことも重要な性能の1つとなっている。また、近年では、微細化を達成するためにマスクブランクの加工にMBMW(マルチビームマスクライティング)描画プロセスを用いる場合があり、その際、レジスト組成物としてはラフネスに有利な低感度レジスト組成物(高ドーズ領域)を使用するが、この高ドーズ領域におけるレジスト組成物の最適化も脚光を浴びてきた。
【0006】
感度やパターンプロファイルの制御について、レジスト組成物に使用する材料の選択や組み合わせ、プロセス条件等によって種々の改良がなされてきた。その改良の1つとして、酸の拡散の問題がある。この酸の拡散については、化学増幅レジスト組成物の感度と解像性に大きな影響を与えることから多くの検討がされてきた。
【0007】
特許文献1や特許文献2には、露光により光酸発生剤から発生するベンゼンスルホン酸を嵩高くすることで酸拡散を抑制し、ラフネスを低減する例が記載されている。しかし、前記酸発生剤では酸拡散の抑制が未だ不十分であるので、より拡散の小さい酸発生剤の開発が望まれていた。
【0008】
特許文献3には、露光により発生するスルホン酸をレジスト組成物に使用するポリマーに結合させて拡散を抑制することで、酸拡散を制御する例が記載されている。このような露光により酸を発生する繰り返し単位をベースポリマーに含ませて酸拡散を抑える方法は、LERの小さなパターンを得るのに有効である。しかし、このような繰り返し単位の構造や導入率によっては、露光により酸を発生する繰り返し単位を結合させたベースポリマーの有機溶剤に対する溶解性に問題が生じることがあった。
【0009】
また、特許文献4に記載されている、フッ素化アルカンスルホン酸のような酸強度の高い酸を発生させるスルホニウム塩と、アセタール基を有する繰り返し単位を含むポリマーとを用いた場合には、LERの大きなパターンが形成される問題があった。脱保護の活性化エネルギーが比較的小さいアセタール基の脱保護にはフッ素化アルカンスルホン酸の酸強度は高すぎるため、酸の拡散を抑えたとしても未露光部に拡散した微量の酸により脱保護反応が進行してしまうからである。このことは、特許文献1や2に記載されているベンゼンスルホン酸を発生させるスルホニウム塩においても同様である。そこで、アセタール基の脱保護に、より好適な強度の酸を発生する酸発生剤の開発が望まれている。
【0010】
酸発生剤の1つとして、特許文献5に記載されているヨウ素原子を含む芳香族基を有するスルホン酸を発生させるスルホニウム塩があるが、EUVリソグラフィーにおける感度の増感効果を狙ったものであり、役割としても、フッ素化アルカンスルホン酸に対するクエンチャーとしての取り扱いが主であり、酸発生剤、特にマスクブランク加工においてEB描画プロセスに用いるポリヒドロキシスチレンをベースポリマーとするレジスト組成物に用いる酸発生剤としては、十分な検討がなされてこなかった。
【0011】
酸の拡散を抑制するには、前述の発生酸を嵩高くする方法のほかに、クエンチャー(酸拡散制御剤)を改良する方法も考えられる。クエンチャーは、酸拡散を抑制するものであり、レジスト組成物の性能を向上させるためには事実上必須成分である。クエンチャーは、これまで様々な検討がなされており、一般的にアミン類や弱酸オニウム塩が用いられている。弱酸オニウム塩の例として、特許文献6には、トリフェニルスルホニウムアセテートの添加により、T-トップの形成、孤立パターンと密集パターンとの線幅の差及びスタンディングウエーブのない良好なレジストパターンを形成できることが記載されている。特許文献7には、スルホン酸アンモニウム塩又はカルボン酸アンモニウム塩の添加により、感度、解像性及び露光マージンが改善されたことが記載されている。また、特許文献8には、フッ素原子含有カルボン酸を発生する光酸発生剤を含む組み合わせのKrFリソグラフィー及びEBリソグラフィー用レジスト組成物が解像力に優れ、露光マージン、焦点深度等のプロセス許容性が改善されたことが記載されている。これらは、KrFリソグラフィー、EBリソグラフィー又はF2リソグラフィーに用いられているものである。
【0012】
特許文献9には、カルボン酸オニウム塩を含むArFリソグラフィー用ポジ型感光性組成物が記載されている。これらは、露光によって光酸発生剤から生じた強酸(スルホン酸)が弱酸オニウム塩と交換し、弱酸及び強酸オニウム塩を形成することで酸性度の高い強酸(スルホン酸)から弱酸(カルボン酸)に置き換わることによって酸不安定基の酸分解反応を抑制し、酸拡散距離を小さくする(制御する)ものであり、見かけ上クエンチャーとして機能する。
【0013】
しかしながら、近年はラフネスの更なる改善のみならず、ラインアンドスペース(LS)、アイソライン(IL)、アイソスペース(IS)に加え、ホールパターン形状にも優れるレジスト組成物が求められている。特許文献10に記載されている、発生酸が嵩高く、酸の拡散を抑制した光酸発生剤では、解像性、ラフネス共に良好なパターンが得られたが、ホールパターンにおいては、コーナーラウンディングが見られるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009-53518号公報
【特許文献2】特開2010-100604号公報
【特許文献3】特開2011-22564号公報
【特許文献4】特許第5083528号公報
【特許文献5】特許第6645464号公報
【特許文献6】特許第3955384号公報
【特許文献7】特開平11-327143号公報
【特許文献8】特許第4231622号公報
【特許文献9】特許第4226803号公報
【特許文献10】特許第6248882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、適度な酸強度を有し、かつ拡散の小さい酸を発生することができる酸発生剤を含む化学増幅ポジ型レジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記式(A1)で表されるスルホニウム塩及び下記式(A2)で表されるヨードニウム塩から選ばれる少なくとも1種をレジスト組成物に導入した場合、発生酸が最適な構造を有するため酸の拡散が抑制され、これによりLERの小さなパターンが得られ、さらにホールパターンにおいては、適度な溶解阻止性により、良好な矩形性のパターンが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、下記化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
1.(A)下記式(A1)で表されるスルホニウム塩及び下記式(A2)で表されるヨードニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む酸発生剤、並びに(B)下記式(B1)で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマーを含む化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】
(式中、mは、0又は1である。pは、1~3の整数である。qは、1~5の整数である。rは、0~3の整数である。
1は、単結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
2は、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
1は、pが1のときは単結合又は炭素数1~20のヒドロカルビレン基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の(p+1)価炭化水素基であり、該ヒドロカルビレン基及び(p+1)価炭化水素基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート結合、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
Rf1及びRf2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アミノ基、-N(R1A)-C(=O)-R1B又は-N(R1A)-C(=O)-O-R1Bであり、R1Aは、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基であり、R1Bは、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基である。
2は、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビレン基又は炭素数6~14のアリーレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよく、該アリーレン基の水素原子の一部又は全部が、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、ハロゲン原子及びヒドロキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
3~R7は、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。また、R3とR4とが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【化2】
(式中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数である。a3は、0≦a3≦5+2a2-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
11は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
2.(A)成分が、下記式(A3)で表されるオニウム塩である1の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化3】
(式中、p、q、r、X1、R1、R3、R4及びR5は、前記と同じ。
nは、1~4の整数である。
2Aは、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基である。)
3.前記ポリマーが、更に、下記式(B2-1)で表される繰り返し単位を含むものである1又は2の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数である。b3は、0≦b3≦5+2b2-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。
12は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。
Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2以上のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
4.前記ポリマーが、更に、下記式(B2-2)で表される繰り返し単位を含むものである1~3のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、c1は、0~2の整数である。c2は、0~2の整数である。c3は、0~5の整数である。c4は、0~2の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
3は、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-A31-である。A31は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~20の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。
13及びR14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
15は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルコキシ基である。
16は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。)
5.前記ポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む1~4のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、d及びeは、それぞれ独立に、0~4の整数である。f1は、0又は1である。f2は、0~5の整数である。f3は、0~2の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
21及びR22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
23は、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基又はスルホニル基である。
4は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
6.前記ポリマーが、更に、下記式(B6)~(B13)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む1~5のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Y11-、-C(=O)-O-Y11-又は-C(=O)-NH-Y11-であり、Y11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又は-Y21-C(=O)-O-であり、Y21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Y31-、-C(=O)-O-Y31-又は-C(=O)-NH-Y31-であり、Y31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。g1及びg2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Y4が単結合のとき、g1及びg2は、0である。
31~R48は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
7.前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有率が60モル%以上である1~6のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
8.更に、(C)クエンチャーを含む1~7のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
9.(C)クエンチャーに対する(A)酸発生剤の含有比率が、質量比で6未満である8の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
10.更に、(D)下記式(D1)で表される繰り返し単位、下記式(D2)で表される繰り返し単位、下記式(D3)で表される繰り返し単位及び下記式(D4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含み、更に下記式(D5)で表される繰り返し単位及び下記式(D6)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいフッ素原子含有ポリマーを含む1~9のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、RCは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Dは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
101、R102、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。
103、R106、R107及びR108は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R103、R106、R107及びR108がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
109は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
110は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
111は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基であり、前記飽和ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エステル結合又はエーテル結合で置換されていてもよい。
xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。hは、1~3の整数である。
1は、炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基である。
2は、単結合、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
3は、単結合、-O-、*-C(=O)-O-Z31-Z32-又は*-C(=O)-NH-Z31-Z32-である。Z31は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基である。Z32は、単結合、エステル結合、エーテル結合又はスルホンアミド結合である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。)
11.更に、(E)有機溶剤を含む1~10のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
12.1~11のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
13.前記高エネルギー線が、EUV又はEBである12のレジストパターン形成方法。
14.前記基板の最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1種を含む材料からなる12又は13のレジストパターン形成方法。
15.前記基板が、透過型又は反射型マスクブランクである12~14のいずれかのレジストパターン形成方法。
16.1~11のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布した透過型又は反射型マスクブランク。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、式(A1)で表されるスルホニウム塩及び/又は式(A2)で表されるヨードニウム塩の作用により、パターン形成時の露光による酸拡散を効果的に制御することができ、これを用いてレジスト膜を成膜してパターンを形成する際に、極めて高い解像性を有し、LERが小さく、矩形性に優れ、パターン忠実性に優れたパターンを得ることができる。また、式(B1)で表される繰り返し単位の作用により、アルカリ現像液に対して良好な溶解性を示すものとなるほか、レジスト膜を成膜する際の基板への密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は、1種単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0020】
[化学増幅ポジ型レジスト組成物]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(A)所定のスルホニウム塩及びヨードニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む酸発生剤、及び(B)所定のポリマーを含むベースポリマーを含むことを特徴とする。
【0021】
[(A)酸発生剤]
(A)成分の酸発生剤は、下記式(A1)で表されるスルホニウム塩及び下記式(A2)で表されるヨードニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【化9】
【0022】
式(A1)及び(A2)中、mは、0又は1である。pは、1~3の整数である。qは、1~5の整数である。rは、0~3の整数である。
【0023】
式(A1)及び(A2)中、L1は、単結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
【0024】
式(A1)及び(A2)中、L2は、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
【0025】
式(A1)及び(A2)中、X1は、pが1のときは単結合又は炭素数1~20のヒドロカルビレン基であり、pが2又は3のときは炭素数1~20の(p+1)価炭化水素基であり、該ヒドロカルビレン基及び(p+1)価炭化水素基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート結合、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0026】
1で表される炭素数1~20のヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メタンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基等の炭素数1~20のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビレン基;ビニレン基、プロペン-1,3-ジイル基等の炭素数2~20の不飽和脂肪族ヒドロカルビレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、X1で表される炭素数1~20の(p+1)価炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、前述した炭素数1~20のヒドロカルビレン基の具体例から更に水素原子を1個又は2個取り除いて得られる基が挙げられる。
【0027】
式(A1)及び(A2)中、Rf1及びRf2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0028】
式(A1)及び(A2)中、R1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アミノ基、-N(R1A)-C(=O)-R1B又は-N(R1A)-C(=O)-O-R1Bであり、R1Aは、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基であり、R1Bは、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0029】
1、R1A及びR1Bで表される炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6の環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。また、R1で表される炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部としては、前述した飽和ヒドロカルビル基の具体例と同様のものが挙げられ、R1で表される炭素数2~6の炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部としては、前述した炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基の具体例のうち炭素数1~5のものが挙げられる。
【0030】
1Bで表される炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~8のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の炭素数2~8のアルキニル基;シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等の炭素数3~8の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基等が挙げられる。
【0031】
式(A1)及び(A2)中、R2は、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビレン基又は炭素数6~14のアリーレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよく、該アリーレン基の水素原子の一部又は全部が、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、ハロゲン原子及びヒドロキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
【0032】
2で表される炭素数1~20のヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、X1で表される炭素数1~20のヒドロカルビレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
2で表される炭素数6~14のアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基等が挙げられる。前記アリーレン基の置換基である炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基及び炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基のヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。前記アリーレン基の置換基である炭素数6~14のアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基等が挙げられる。
【0034】
式(A1)及び(A2)中、R3~R7は、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0035】
3~R7で表される炭素数1~20のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等の炭素数3~20の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の炭素数2~20のアルキニル基;フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、n-プロピルナフチル基、イソプロピルナフチル基、n-ブチルナフチル基、イソブチルナフチル基、sec-ブチルナフチル基、tert-ブチルナフチル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~20のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0036】
また、R3及びR4が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、以下に示すもの等が挙げられる。
【化10】
(式中、破線は、結合手である。)
【0037】
(A)成分の酸発生剤としては、下記式(A3)で表されるオニウム塩が好ましい。
【化11】
【0038】
式(A3)中、p、q、r、X1、R1、R3、R4及びR5は、前記と同じ。nは、1~4の整数である。R2Aは、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基である。なお、nが2~4のとき、各R2Aは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
式(A1)で表されるスルホニウム塩及び式(A2)で表されるヨードニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
【化15】
【0043】
【化16】
【0044】
【化17】
【0045】
【化18】
【0046】
【化19】
【0047】
【化20】
【0048】
【化21】
【0049】
【化22】
【0050】
【化23】
【0051】
【化24】
【0052】
【化25】
【0053】
【化26】
【0054】
【化27】
【0055】
【化28】
【0056】
【化29】
【0057】
【化30】
【0058】
【化31】
【0059】
【化32】
【0060】
【化33】
【0061】
【化34】
【0062】
【化35】
【0063】
【化36】
【0064】
【化37】
【0065】
【化38】
【0066】
【化39】
【0067】
式(A1)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化40】
【0068】
【化41】
【0069】
【化42】
【0070】
【化43】
【0071】
【化44】
【0072】
【化45】
【0073】
【化46】
【0074】
【化47】
【0075】
【化48】
【0076】
【化49】
【0077】
【化50】
【0078】
【化51】
【0079】
【化52】
【0080】
【化53】
【0081】
【化54】
【0082】
【化55】
【0083】
【化56】
【0084】
【化57】
【0085】
【化58】
【0086】
【化59】
【0087】
【化60】
【0088】
【化61】
【0089】
式(A2)で表されるヨードニウム塩のカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化62】
【0090】
【化63】
【0091】
式(A1)で表されるスルホニウム塩及び式(A2)で表されるヨードニウム塩は、化学増幅ポジ型レジスト組成物に適用することで、最適な酸発生剤(光酸発生剤)として極めて有効に機能する。
【0092】
式(A1)で表されるスルホニウム塩及び式(A2)で表されるヨードニウム塩の合成方法としては、特開2010-155824号公報に記載された方法が挙げられる。例えば、イセチオン酸のようなヒドロキシ基を有するスルホン酸のスルホニウム塩又はヨードニウム塩のヒドロキシ基を、ヨウ素化安息香酸とエステル化することによって合成することができる。
【0093】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(A)式(A1)で表されるスルホニウム塩及び/又は式(A2)で表されるヨードニウム塩の含有量は、後述する(B)ベースポリマー80質量部に対し、感度と酸拡散抑制効果の点から0.001~50質量部が好ましく、0.01~40質量部がより好ましい。
【0094】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物では、パターンの形状補正等を目的として、更に式(A1)で表されるスルホニウム塩及び式(A2)で表されるヨードニウム塩以外の酸発生剤(以下、その他の酸発生剤ともいう。)を含んでもよい。その他の酸発生剤としては、レジスト組成物用の酸発生剤として公知のものを使用することができる。その他の酸発生剤の含有量は、後述する(B)ベースポリマー80質量部に対し、感度と酸拡散抑制効果の点から0~30質量部が好ましく、0~20質量部がより好ましい。その他の酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
[(B)ベースポリマー]
(B)成分のベースポリマーは、下記式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1ともいう。)を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むものである。
【化64】
【0096】
式(B1)中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。a3は、0≦a3≦5+2a2-a4を満たす整数であり、a4は、1~3の整数である。a2が0の場合、好ましくは、a3は0~3の整数であり、a4は1~3の整数であり、a2が1又は2の場合、好ましくは、a3は0~4の整数であり、a4は1~3の整数である。
【0097】
式(B1)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0098】
式(B1)中、R11は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。a3が2以上のとき、各R11は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0099】
式(B1)中、A1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B1)中のa1が1のときはエステル酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、a1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0100】
a1が0かつA1が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合している(すなわち、リンカー(-C(=O)-O-A1-)を有しない)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。特に、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化65】
(式中、RA及びa4は、前記と同じ。)
【0101】
また、a1が1である(すなわち、リンカーとして-C(=O)-O-A1-を有する)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化66】
(式中、RAは、前記と同じ。)
【0102】
繰り返し単位B1の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、10~95モル%が好ましく、40~90モル%がより好ましい。ただし、後述する本発明で使用するポリマーにより高いエッチング耐性を与える式(B3)で表される繰り返し単位及び式(B4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種を含み、その単位が置換基としてフェノール性ヒドロキシ基を有する場合には、その比率も加えて前記範囲内とされることが好ましい。繰り返し単位B1は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0103】
前記ポリマーは、ポジ型レジスト組成物として露光部がアルカリ水溶液に溶解する特性を与えるため、酸不安定基により保護された酸性官能基を有する繰り返し単位(酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる繰り返し単位)が含まれることが好ましい。この場合、前記繰り返し単位中の酸不安定基(保護基)が酸の作用により脱保護反応を起こすため、前記ポリマーがアルカリ現像液に対してより良好な溶解性を示すものとなる。
【0104】
このような繰り返し単位の最も好ましいものとしては、下記式(B2-1)で表されるもの(以下、繰り返し単位B2-1ともいう。)が挙げられる。
【化67】
【0105】
式(B2-1)中、RAは、前記と同じ。b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。b3は、0≦b3≦5+2b2-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。b2が0の場合、好ましくは、b3は0~3の整数であり、b4は1~3の整数であり、b2が1又は2の場合、好ましくは、b3は0~4の整数であり、b4は1~3の整数である。
【0106】
式(B2-1)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0107】
式(B2-1)中、R12は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。b3が2以上のとき、各R12は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0108】
式(B2-1)中、A2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B2-1)中のb1が1のときはエステル酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、b1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0109】
式(B2-1)中、Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2以上のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。すなわち、繰り返し単位B2-1は、芳香環に結合したフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも1つが酸不安定基で保護されたもの、あるいは芳香環に結合したカルボキシ基が酸不安定基で保護されたものである。このような酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅ポジ型レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものであれば、特に限定されることなくいずれも使用することができる。
【0110】
前記酸不安定基として第3級飽和ヒドロカルビル基を選択すると、レジスト膜厚が、例えば、10~100nmになるように成膜され、45nm以下の線幅を持つような微細パターンを形成した場合にも、LERが小さなパターンを与えるため好ましい。前記第3級アルキル基としては、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4~18のものであることが好ましい。また、前記第3級飽和ヒドロカルビル基の第3級炭素原子に結合する基としては、エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基が挙げられ、前記第3級炭素原子に結合する基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0111】
前記第3級炭素原子に結合する基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン-2-イル基、7-オキサノルボルナン-2-イル基、シクロペンチル基、2-テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3-オキソ-1-シクロヘキシル基が挙げられる。
【0112】
また、これらを置換基として有する第3級飽和ヒドロカルビル基としては、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-アダマンチル-1-メチルエチル基、1-メチル-1-(2-ノルボルニル)エチル基、1-メチル-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)エチル基、1-メチル-1-(7-オキサノルボルナン-2-イル)エチル基、1-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロペンチル基、1-プロピルシクロペンチル基、1-イソプロピルシクロペンチル基、1-シクロペンチルシクロペンチル基、1-シクロヘキシルシクロペンチル基、1-(2-テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1-(7-オキサノルボルナン-2-イル)シクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-エチルシクロヘキシル基、1-シクロペンチルシクロヘキシル基、1-シクロヘキシルシクロヘキシル基、2-メチル-2-ノルボニル基、2-エチル-2-ノルボニル基、8-メチル-8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8-エチル-8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3-メチル-3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3-エチル-3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基、1-メチル-3-オキソ-1-シクロヘキシル基、1-メチル-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)エチル基、5-ヒドロキシ-2-メチル-2-アダマンチル基、5-ヒドロキシ-2-エチル-2-アダマンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
また、前記酸不安定基として、下記式(B2-1')で表される基が挙げられる。式(B2-1')で表される基は、酸不安定基としてよく利用され、パターンと基板の界面が比較的矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。Xが式(B2-1')で表される基である場合、アセタール構造が形成される。
【化68】
【0114】
式(B2-1')中、RL1は、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。RL2は、炭素数1~30の飽和ヒドロカルビル基である。前記飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0115】
L1は、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば、比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば、直鎖状アルキル基が選択される。レジスト組成物に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、RL2として末端に比較的大きなアルキル基が選択され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、RL1としては、アセタール炭素と結合する炭素原子が第2級炭素原子であるものが好ましい。第2級炭素原子によってアセタール炭素と結合するRL1の例としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0116】
前記アセタール基のうち、より高い解像性を得るためには、RL2は、炭素数7~30の多環式アルキル基であることが好ましい。また、RL2が多環式アルキル基である場合、該多環式環構造を構成する第2級炭素原子とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。環構造の第2級炭素原子上で結合している場合、第3級炭素原子上で結合している場合に比べて、ポリマーが安定な化合物となり、レジスト組成物として保存安定性が良好となり、解像力も劣化することがない。また、RL2が炭素数1以上の直鎖状アルキル基を介在した第1級炭素原子上で結合している場合と比べても、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が良好なものとなり、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがない。
【0117】
式(B2-1')で表される基の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RL1は、前記と同じである。
【化69】
【0118】
また、前記酸不安定基により保護された酸性官能基を有する繰り返し単位として、下記式(B2-2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2-2ともいう。)も挙げられる。式(B2-2)で表される繰り返し単位は、露光部の溶解速度が高くなるため、現像ローディングにおける線幅変動に対して良好な性能を与える酸不安定基含有単位として有用な選択肢である。
【化70】
【0119】
式(B2-2)中、c1は、0~2の整数である。c2は、0~2の整数である。c3は、0~5の整数である。c4は、0~2の整数である。
【0120】
式(B2-2)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0121】
式(B2-2)中、A3は、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-A31-である。A31は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~20の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。
【0122】
式(B2-2)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0123】
式(B2-2)中、R15は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルコキシ基である。
【0124】
式(B2-2)中、R16は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
【0125】
繰り返し単位B2-2の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化71】
【0126】
その他の酸不安定基としては、フェノール性ヒドロキシ基の水素原子が-CH2COO-(第3級飽和ヒドロカルビル基)で置換されたものを使用することもできる。このとき前記第3級飽和ヒドロカルビル基としては、前述したフェノール性ヒドロキシ基の保護に用いる第3級飽和ヒドロカルビル基と同じものを使用することができる。
【0127】
繰り返し単位B2-1及びB2-2の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、5~50モル%が好ましい。繰り返し単位B2-1及びB2-2は、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
前記ポリマーは、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B3ともいう。)、下記式(B4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B4ともいう。)及び下記式(B5)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B5ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【化72】
【0129】
式(B3)及び(B4)中、d及びeは、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0130】
式(B3)及び(B4)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。dが2以上のとき、各R21は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。eが2以上のとき、各R22は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0131】
式(B5)中、f1は、0又は1である。f2は、0~5の整数である。f3は、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。f3が0の場合、f2は、好ましくは0~3の整数であり、f3が1又は2の場合、f2は、好ましくは0~4の整数である。
【0132】
式(B5)中、RAは、前記と同じ。R23は、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基又はスルホニル基である。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基及び飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。f2が2以上のとき、各R23は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0133】
23としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、これらの構造異性体等の飽和ヒドロカルビル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、これらの炭化水素部の構造異性体等の飽和ヒドロカルビルオキシ基が好ましい。これらのうち、特にメトキシ基及びエトキシ基が有用である。
【0134】
また、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に用いることができる。前記飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、これらの炭化水素部の構造異性体等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベースポリマーとしてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。
【0135】
前述した好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備しやすく、有用に用いられる置換基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基等が挙げられる。
【0136】
式(B5)中、A4は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B5)中のf1が1のときはエステル酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、f1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0137】
f1が0かつA4が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した(すなわち、リンカー(-C(=O)-O-A4-)を有しない)場合、繰り返し単位B5の好ましい例としては、スチレン、4-クロロスチレン、4-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ブロモスチレン、4-アセトキシスチレン、2-ヒドロキシプロピルスチレン、2-ビニルナフタレン、3-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。
【0138】
また、f1が1である場合(すなわち、リンカーとして-C(=O)-O-A4-を有する場合)、繰り返し単位B5の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化73】
【0139】
【化74】
【0140】
繰り返し単位B3~B5のうち少なくとも1種を構成単位として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチング耐性やパターン検査の際のEB照射耐性を高めるという効果が得られる。
【0141】
繰り返し単位B3~B5の含有量は、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、5モル%以上が好ましい。また、繰り返し単位B3~B5の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が35モル%以下であれば、現像欠陥が発生するおそれがないために好ましい。繰り返し単位B3~B5は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0142】
前記ポリマーは、構成単位として、繰り返し単位B1と、繰り返し単位B2-1及び/又はB2-2と、繰り返し単位B3~B5から選ばれる少なくとも1種とを含むことが、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れるという点から好ましい。このとき、これらの繰り返し単位が、全繰り返し単位中、60モル%以上含まれることが好ましく、70モル%以上含まれることがより好ましく、80モル%以上含まれることが更に好ましい。
【0143】
前記ポリマーは、更に、下記式(B6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B6ともいう。)、下記式(B7)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B7ともいう。)、下記式(B8)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B8ともいう。)、下記式(B9)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B9ともいう。)、下記式(B10)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B10ともいう。)、下記式(B11)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B11ともいう。)、下記式(B12)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B12ともいう。)及び下記式(B13)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B13ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。この場合、酸拡散を効果的に抑制することができ、解像性が向上し、かつ、LERの低減されたパターンを得ることができる。
【化75】
【0144】
式(B6)~(B13)中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Y1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Y11-、-C(=O)-O-Y11-又は-C(=O)-NH-Y11-であり、Y11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Y2は、単結合又は-Y21-C(=O)-O-であり、Y21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Y3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Y31-、-C(=O)-O-Y31-又は-C(=O)-NH-Y31-であり、Y31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Y4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。g1及びg2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Y4が単結合のとき、g1及びg2は、0である。
【0145】
式(B7)及び(B11)中、Y2が-Y21-C(=O)-O-のとき、Y21で表されるヘテロ原子を含んでいてもよいヒドロカルビレン基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化76】
(式中、破線は、結合手である。)
【0146】
式(B7)及び(B11)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。繰り返し単位B7及びB11において、RHFが水素原子である場合の具体例としては、特開2010-116550号公報に記載されたものが挙げられ、RHFがトリフルオロメチル基である場合の具体例としては、特開2010-77404号公報に記載されたものが挙げられる。繰り返し単位B8及びB12としては、特開2012-246265号公報や特開2012-246426号公報に記載されたものが挙げられる。
【0147】
式(B6)及び(B10)中、Xa-は、非求核性対向イオンである。Xa-で表される非求核性対向イオンの例としては、特開2010-113209号公報や特開2007-145797号公報に記載されたものが挙げられる。
【0148】
繰り返し単位B9及びB13を与えるモノマーのアニオンの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化77】
【0149】
【化78】
【0150】
式(B6)~(B13)中、R31~R48は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(A1)の説明においてR3、R4及びR5で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0151】
また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、式(A1)の説明においてR3及びR4が互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に形成し得る環として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0152】
また、繰り返し単位B7~B9のスルホニウムカチオンの具体例としては、式(A1)で表されるスルホニウム塩のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。繰り返し単位B11~B13のヨードニウムカチオンの具体例としては、式(A2)で表されるヨードニウム塩のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0153】
繰り返し単位B6~B13は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に含まれることで、酸拡散が適度に抑制され、LER及びCDUが改善されたパターンを得ることができると考えられる。また、これらの単位がポリマーに含まれていることで、真空中でのベーク時に、露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するという現象が抑制され、LER及びCDUの改善や、未露光部での望まない脱保護化反応抑制によるパターン欠陥の低減等に効果的であると考えられる。繰り返し単位B6~B13を含む場合、その含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、0.5~30モル%が好ましい。繰り返し単位B6~B13は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0154】
(B)ベースポリマーは、繰り返し単位B1に加えて繰り返し単位B6~B13から選ばれる少なくとも1種を含むポリマーと、繰り返し単位B1を含み、繰り返し単位B6~B13を含まないポリマーとの混合物であってもよい。このとき、繰り返し単位B6~B13を含まないポリマーの含有量は、繰り返し単位B6~B13を含むポリマー100質量部に対し、2~5000質量部が好ましく、10~1000質量部がより好ましい。
【0155】
前記ポリマーは、常用される、酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を含んでもよい。これらの繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行うことができるが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0156】
前記密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位の例として、下記式(B14)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B14ともいう。)、下記式(B15)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B15ともいう。)及び下記式(B16)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B16ともいう。)が挙げられる。これらの単位は、酸性を示さず、基板に対する密着性を与える単位や溶解性を調整する単位として補助的に用いることができる。
【化79】
【0157】
式(B14)~(B16)中、RAは、前記と同じである。R51は、-O-又はメチレン基である。R52は、水素原子又はヒドロキシ基である。R53は、炭素数1~4の飽和ヒドロカルビル基である。kは、0~3の整数である。
【0158】
繰り返し単位B14~B16を含む場合、その含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、0~30モル%が好ましく、0~20モル%がより好ましい。繰り返し単位B14~B16は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0159】
前記ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各モノマーを共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0160】
前記ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1000~50000であることが好ましく、2000~20000であることが更に好ましい。Mwが1000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下するとともに、LER及びCDUが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、Mwが50000以下であれば、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合においてLER及びCDUが劣化するおそれがない。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフラン(THF)又はジメチルホルムアミド(DMF)を溶剤として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0161】
前記ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.0、特に1.0~1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散である場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0162】
[(C)クエンチャー]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(C)成分としてクエンチャーを含むことが好ましい。前記クエンチャーとしては、従来型の塩基性化合物が挙げられる。従来型の塩基性化合物としては、第1級、第2級、第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。好ましいものとしては、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン-N-オキシド、ジブチルアミノ安息香酸、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体等が挙げられる。このような塩基性化合物を添加することによって、例えば、レジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができる。
【0163】
また、前記クエンチャーとして、特開2008-158339号公報に記載されたα位がフッ素化されていないカルボン酸の、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸又はメチド酸は、酸不安定基を脱保護させるのに必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないカルボン酸は、脱保護反応を殆ど起こさないため、クエンチャーとして機能する。
【0164】
α位がフッ素化されていないカルボン酸のオニウム塩としては、例えば、下記式(C1)で表されるものが挙げられる。
【化80】
【0165】
式(C1)中、R61は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基であるが、カルボキシ基のα位の炭素原子に結合する水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
【0166】
前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~40のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数3~40の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~40のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の炭素数3~40の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アルキルフェニル基(2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基等)、ジアルキルフェニル基(2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基等)、アルキルナフチル基(メチルナフチル基、エチルナフチル基等)、ジアルキルナフチル基(ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等)等の炭素数6~40のアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等の炭素数7~40のアラルキル基等が挙げられる。
【0167】
また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含むヒドロカルビル基としては、チエニル基等のヘテロアリール基;4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基;2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等のアリールオキソアルキル基等が挙げられる。
【0168】
式(C1)中、Mq+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンが好ましく、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンがより好ましい。前記スルホニウムカチオンの具体例としては、式(A1)で表されるスルホニウム塩のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。前記ヨードニウムカチオンの具体例としては、式(A2)で表されるヨードニウム塩のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0169】
式(C1)で表されるオニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化81】
【0170】
【化82】
【0171】
【化83】
【0172】
前記クエンチャーとして、下記式(C2)で表されるヨウ素化ベンゼン環含有カルボン酸のスルホニウム塩も好適に使用できる。
【化84】
【0173】
式(C2)中、sは、1~5の整数である。tは、0~3の整数である。uは、1~3の整数である。
【0174】
式(C2)中、R71は、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、若しくは水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基若しくは炭素数1~4の飽和ヒドロカルビルスルホニルオキシ基、又は-N(R71A)-C(=O)-R71B若しくは-N(R71A)-C(=O)-O-R71Bである。R71Aは、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基である。R71Bは、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基である。t及び/又はuが2以上のとき、各R71は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0175】
式(C2)中、L11は、単結合又は炭素数1~20の(u+1)価の連結基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート結合、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルスルホニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0176】
式(C2)中、R72、R73及びR74は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、スルトン環、スルホ基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、カーボネート結合又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。また、R72及びR73が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0177】
式(C2)で表される化合物の具体例としては、特開2017-219836号公報に記載されたものが挙げられる。式(C2)で表される化合物は、高吸収で増感効果が高く、酸拡散制御効果も高い。
【0178】
前記クエンチャーとして、下記式(C3)で表される窒素原子含有カルボン酸塩型化合物を使用することもできる。
【化85】
【0179】
式(C3)中、R81~R84は、それぞれ独立に、水素原子、-L12-CO2 -、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。R81とR82と、R82とR83と、又はR83とR84とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。L12は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。R85は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。
【0180】
式(C3)中、環Rは、式中の炭素原子及び窒素原子を含む炭素数2~6の環であり、該環の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部が、炭素数1~20のヒドロカルビル基、又は-L12-CO2 -で置換されていてもよく、該環の炭素原子の一部が、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい。前記環は、脂環でも芳香環でもよく、また、5員環又は6員環であることが好ましく、その具体例としては、ピリジン環、ピロール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピラゾール環、イミダゾリン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、イミダゾリン環、オキサゾール環、チアゾール環、モルホリン環、チアジン環、トリアゾール環等が挙げられる。
【0181】
式(C3)で表されるカルボン酸オニウム塩は、少なくとも1つの-L12-CO2 -基を有する。すなわち、R81~R84のうち少なくとも1つが-L12-CO2 -である、及び/又は環Rの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが-L12-CO2 -で置換されたものである。
【0182】
式(C3)中、Q+は、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであるが、スルホニウムカチオンが好ましい。前記スルホニウムカチオンの具体例としては、式(A1)で表されるスルホニウム塩のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0183】
式(C3)で表される化合物のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化86】
【0184】
【化87】
【0185】
【化88】
【0186】
【化89】
【0187】
【化90】
【0188】
【化91】
【0189】
また、前記クエンチャーとして、弱酸のベタイン型化合物を使用することもできる。その具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化92】
【0190】
前記クエンチャーとしては、更に、特開2008-239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーが挙げられる。これは、レジスト膜の表面に配向することによってレジストパターンの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0191】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(C)クエンチャーを含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0~50質量部が好ましく、0.1~40質量部がより好ましい。(C)クエンチャーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0192】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(A)成分の酸発生剤及び(C)成分のクエンチャーをともに含む場合、クエンチャーに対する光酸発生剤の含有比率((A)/(C)が、質量比で6未満となるように含まれることが好ましく、5未満となるように含まれることがより好ましく、4未満となるように含まれることが更に好ましい。前記化学増幅ポジ型レジスト組成物に含まれるクエンチャーに対する酸発生剤の含有比率が前記範囲であれば、酸拡散を十分に抑制することが可能になり、優れた解像性や寸法均一性を得ることができる。
【0193】
[(D)フッ素原子含有ポリマー]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、高コントラスト化や、高エネルギー線照射における酸のケミカルフレア及び帯電防止膜材料をレジスト膜上に塗布するプロセスにおける帯電防止膜からの酸のミキシングを遮蔽し、予期しない不要なパターン劣化を抑制する目的で、(D)成分として、下記式(D1)で表される繰り返し単位、下記式(D2)で表される繰り返し単位、下記式(D3)で表される繰り返し単位及び下記式(D4)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位D1、D2、D3及びD4ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含み、更に下記式(D5)で表される繰り返し単位及び下記式(D6)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位D5及びD6ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいフッ素原子含有ポリマーを含んでもよい。前記フッ素原子含有ポリマーは、界面活性剤の機能も有することから、現像プロセス中に生じ得る不溶物の基板への再付着を防止できるため、現像欠陥に対する効果も発揮する。
【化93】
【0194】
式(D1)~(D6)中、RCは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RDは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R101、R102、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。R103、R106、R107及びR108は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R103、R106、R107及びR108がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。R109は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。R110は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。R111は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基であり、前記飽和ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エステル結合又はエーテル結合で置換されていてもよい。xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。hは、1~3の整数である。Z1は、炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基である。Z2は、単結合、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。Z3は、単結合、-O-、*-C(=O)-O-Z31-Z32-又は*-C(=O)-NH-Z31-Z32-である。Z31は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基である。Z32は、単結合、エステル結合、エーテル結合又はスルホンアミド結合である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
【0195】
式(D1)及び(D2)中、R101、R102、R104及びR105で表される炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の炭素数3~10の環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基が好ましい。
【0196】
式(D1)~(D4)中、R103、R106、R107及びR108で表される炭素数1~15のヒドロカルビル基としては、炭素数1~15のアルキル基、炭素数2~15のアルケニル基、炭素数2~15のアルキニル基等が挙げられるが、炭素数1~15のアルキル基が好ましい。前記アルキル基としては、前述したもののほか、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基等が挙げられる。また、フッ素化ヒドロカルビル基としては、前述したヒドロカルビル基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0197】
式(D4)中、Z1で表される炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基から更に水素原子をh個除いた基が挙げられる。また、Z1で表される炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基としては、前述した(h+1)価の炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0198】
繰り返し単位D1~D4の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RCは、前記と同じである。
【化94】
【0199】
【化95】
【0200】
【化96】
【0201】
式(D5)中、R109及びR110で表される炭素数1~5のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよい。
【0202】
式(D5)中、-OR109は親水性基であることが好ましい。この場合、R109としては水素原子、炭素-炭素結合間に酸素原子が介在した炭素数1~5のアルキル基等が好ましい。
【0203】
式(D5)中、Z2は、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-であることが好ましい。さらに、RDがメチル基であることが好ましい。Z2にカルボニル基が存在することにより、帯電防止膜由来の酸のトラップ能が向上する。また、RDがメチル基であると、よりガラス転移温度(Tg)が高い剛直なポリマーとなるため、酸の拡散が抑制される。これにより、レジスト膜の経時安定性が良好なものとなり、解像力やパターン形状も劣化することがない。
【0204】
繰り返し単位D5としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RDは、前記と同じである。
【化97】
【0205】
【化98】
【0206】
式(D6)中、Z3で表される炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メタンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、1,1-ジメチルエタン-1,2-ジイル基等が挙げられる。
【0207】
式(D6)中、R111で表される少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0208】
繰り返し単位D6としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RDは、前記と同じである。
【化99】
【0209】
【化100】
【0210】
【化101】
【0211】
【化102】
【0212】
繰り返し単位D1~D4の含有量は、前記フッ素原子含有ポリマーの全繰り返し単位中、15~95モル%が好ましく、20~85モル%がより好ましい。繰り返し単位D5及び/又はD6の含有量は、前記フッ素原子含有ポリマーの全繰り返し単位中、5~85モル%が好ましく、15~80モル%がより好ましい。繰り返し単位D1~D6は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0213】
前記フッ素原子含有ポリマーは、前述した繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、特開2014-177407号公報の段落[0046]~[0078]に記載されているもの等が挙げられる。前記フッ素原子含有ポリマーがその他の繰り返し単位を含む場合、その含有量は、前記フッ素原子含有ポリマーの全繰り返し単位中50モル%以下が好ましい。
【0214】
前記フッ素原子含有ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0215】
前記フッ素原子含有ポリマーのMwは、2000~50000であることが好ましく、3000~20000であることがより好ましい。Mwが2000未満であると、酸の拡散を助長し、解像性の劣化や経時安定性が損なわれることがある。Mwが大きすぎると、溶剤への溶解度が小さくなり、塗布欠陥を生じることがある。また、前記フッ素原子含有ポリマーは、Mw/Mnが1.0~2.2であることが好ましく、1.0~1.7であることがより好ましい。
【0216】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(D)フッ素原子含有ポリマーを含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましく、0.5~10質量部が更に好ましい。(D)フッ素原子含有ポリマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0217】
[(E)有機溶剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(E)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、各成分を溶解可能なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル(EL)、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるため、高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0218】
これらの有機溶剤の中でも、1-エトキシ-2-プロパノール、PGMEA、PGME、シクロヘキサノン、EL、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0219】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(E)有機溶剤の含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、200~10000質量部が好ましく、400~5000質量部がより好ましい。(E)有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0220】
[(F)界面活性剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、基板への塗布性を向上させるため、慣用されている界面活性剤を含んでもよい。前記界面活性剤は、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、(F)界面活性剤の含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0~5質量部が好ましい。(F)界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0221】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は、前述した化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程(すなわち、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程)、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含む。
【0222】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいは透過型又は反射型マスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、Si、SiO、SiO2、SiON、SiONC、CoTa、NiTa、TaBN、SnO2等)等を用いることができる。前記基板上に、スピンコーティング等の方法で膜厚が0.03~2μmとなるように前記化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0223】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光(KrF、ArF等)、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線、EB等が挙げられる。本発明においては、EUV又はEBを用いて露光することが好ましい。
【0224】
前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、EUV、X線、γ線又はシンクロトロン放射線を用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~500mJ/cm2、より好ましくは10~400mJ/cm2となるように照射する。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するため直接、露光量が好ましくは1~500μC/cm2、より好ましくは10~400μC/cm2となるように照射する。
【0225】
露光は、通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジスト膜との間を液浸する液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0226】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間PEBする。
【0227】
その後、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。
【0228】
なお、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、特に解像性が良好でLERが小さいパターンを形成することができるため、有用である。また、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、レジストパターンの密着性が取り難いことから、パターン剥がれやパターン崩壊を起こしやすい材料を表面に持つ基板のパターン形成に特に有用である。このような基板として、金属クロムや酸素、窒素及び炭素から選ばれる1以上の軽元素を含むクロム化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板、SiO、SiOx、タンタル化合物、モリブデン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、スズ化合物を最表層に含む基板等が挙げられる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクを用いたパターン形成に有用である。このとき、フォトマスクブランクとしては、透過型でも反射型でもよい。
【0229】
透過型マスクブランクとして、クロム系材料による遮光膜をもつフォトマスクブランクは、バイナリーマスク用フォトマスクブランクでもよく、位相シフトマスク用フォトマスクブランクでもよい。バイナリーマスク用フォトマスクブランクの場合、遮光膜としてクロム系材料による反射防止層と遮光層をもつものでもよく、表層側の反射防止膜全部又は表層側の反射防止膜の更に表層側のみがクロム系材料で、残りの部分は、例えば遷移金属を含有していてもよいケイ素系化合物材料からなるものであってもよい。また、位相シフトマスク用フォトマスクブランクの場合、位相シフト膜上にクロム系遮光膜を有する位相シフトマスク用フォトマスクブランクを対象とすることができる。
【0230】
前述した最表層にクロム系材料をもつフォトマスクブランクは、特開2008-26500号公報、特開2007-302873号公報又はそれらの中で従来技術として例示されているように、非常によく知られているものであり、詳細の説明は省略するが、例えばクロム系材料によって反射防止層と遮光層をもつ遮光膜を構成する場合には、下記のような膜構成を用いることができる。
【0231】
クロム系材料によって反射防止層と遮光層とを有する遮光膜を形成する場合、層構成としては、表層側より反射防止層及び遮光層の順に積層してもよいし、反射防止層、遮光層及び反射防止層の順に積層してもよい。また、反射防止層と遮光層はそれぞれ多層であってもよく、組成の異なる層の間は、不連続に組成が変わるものでもよいし、組成が連続変化するものでもよい。用いるクロム系材料としては、金属クロム及び金属クロムに酸素、窒素、炭素のような軽元素を含有する材料が用いられる。具体的には、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化炭化クロム、窒化炭化クロム、酸化窒化炭化クロム等を用いることができる。
【0232】
また、反射型マスクブランクは、基板と、基板の一の主表面(表側の面)上に形成された多層反射膜、具体的には、EUV光などの露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された吸収体膜、具体的には、EUV光などの露光光を吸収し、反射率を低下させる吸収体膜とを備える。反射型マスクブランク(EUV用反射型マスクブランク)からは、吸収体膜をパターニングして形成される吸収体パターン(吸収体膜のパターン)を有する反射型マスク(EUV用反射型マスク)が製造される。EUVリソグラフィーに用いられるEUV光の波長は13~14nmであり、通常、波長が13.5nm程度の光である。
【0233】
多層反射膜は、通常、基板の一の主表面に接して設けられることが好ましいが、本発明の効果を失わなければ、基板と多層反射膜との間に下地膜を設けることも可能である。吸収体膜は多層反射膜に接して形成してもよいが、多層反射膜と吸収体膜との間には、好ましくは多層反射膜と接して、より好ましくは多層反射膜及び吸収体膜と接して、保護膜(多層反射膜の保護膜)を設けてもよい。保護膜は、洗浄、修正等の加工などにおいて、多層反射膜を保護するためなどに用いられる。また、保護膜には、吸収体膜をエッチングによりパターニングするときの多層反射膜の保護や、多層反射膜の酸化を防止する機能を有するものが好ましい。一方、基板の一の主表面と反対側の面である他の主表面(裏側の面)下、好ましくは他の主表面に接して、反射型マスクを露光装置に静電チャックするために用いる導電膜を設けてもよい。なお、ここでは、基板の一の主表面を表側の面かつ上側、他の主表面を裏側の面かつ下側としているが、両者の表裏及び上下は便宜上定めたものであり、一の主表面と他の主表面とは、基板における2つの主表面(膜形成面)のいずれかであり、表裏及び上下は置換可能である。より具体的には、特開2021-139970号公報又はそれらの中で従来技術として例示されているような方法にて形成することができる。
【0234】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、最表面が、クロム、ケイ素又はタンタルを含む材料等のレジストパターン形状に影響を与えやすい材料からなる基板(例えば、透過型又は反射型マスクブランク)を用いた場合であっても、極めて高い解像性を有し、LERが小さく、矩形性に優れ、パターン忠実性に優れたパターンを得ることができる。
【実施例0235】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、共重合組成比はモル比であり、Mwは、GPCによるポリスチレン換算測定値である。
【0236】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物に用いた酸発生剤PAG-1~PAG-12の構造を以下に示す。
【化103】
【0237】
【化104】
【0238】
【化105】
【0239】
比較例に用いた酸発生剤cPAG-1~cPAG-4の構造を以下に示す。
【化106】
【0240】
レジスト組成物に用いたポリマーA-1~A-14及びポリマーP-1~P-5の構造を以下に示す。
【化107】
【0241】
【化108】
【0242】
【化109】
【0243】
【化110】
【0244】
【化111】
【0245】
レジスト組成物に用いたクエンチャーQ-1~Q-3及びフッ素原子含有ポリマーD-1~D-5の構造を以下に示す。
【化112】
【0246】
【化113】
【0247】
[1]化学増幅ポジ型レジスト組成物の調製
[実施例1-1~1-44、比較例1-1~1-4]
下記表1~3に示す組成で各成分を有機溶剤中に溶解し、得られた各溶液を10nm、5nm、3nm及び1nmサイズから選択されるUPEフィルター及び/又はナイロンフィルターで濾過することで、化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-44、CR-1~CR-4)を調製した。なお、前記有機溶剤は、PGMEA900質量部、EL1800質量部及びPGME1800質量部の混合溶剤である。
【0248】
【表1】
【0249】
【表2】
【0250】
【表3】
【0251】
[2]EBリソグラフィー評価
[実施例2-1~2-44、比較例2-1~2-4]
各化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-44、CR-1~CR-4)を、ACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面がクロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定は、ブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、110℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0252】
得られたレジストパターンを次のように評価した。作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、200nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とした。SEMを用いて200nmLSパターン32本のエッジ各々について80点のエッジ検出を行い、そのばらつき(標準偏差、σ)の3倍値(3σ)を求め、LER(nm)とした。また、パターン忠実性(Fidelity)評価については、密度36%で120nmサイズの正方形ホールパターンを配置した際、ホールパターン一角のArea loss値(%)を算出した。この値が小さいほどホール形状の矩形性が良いと判断できる。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。結果を表4~6に示す。
【0253】
【表4】
【0254】
【表5】
【0255】
【表6】
【0256】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-44)は、いずれも良好な解像性、LER、パターン矩形性及びパターン忠実性を示した。また、R-43とR-44とを比較すると、50μC以上の領域にて良好な解像性能を得ることができた。一方、比較例のレジスト組成物(CR-1~CR-4)は、酸発生剤の設計が不十分であり、解像性、LER及びパターン矩形性については性能が不十分であった。本発明の設計として、ヒドロキシスチレン骨格を有するベースポリマーとヨウ素原子含有酸発生剤の組み合わせによる酸拡散抑制効果によって、解像性、LER、パターン矩形性及びパターン忠実性の改善が達成できたものと考えられる。
【0257】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法は、半導体素子製造、特に透過型又は反射型フォトマスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。