IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図1
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図2
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図3
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図4
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図5
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図6
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図7
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図8
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図9
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図10
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図11
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図12
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図13
  • 特開-パンツ型吸収性物品 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177094
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20231206BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/496
A61F13/49 410
A61F13/532 200
A61F13/511 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089805
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅史
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200BA16
3B200BB11
3B200BB20
3B200CA03
3B200DA02
3B200DA13
3B200DA14
3B200DA21
3B200DB05
3B200DC04
3B200DD04
(57)【要約】
【課題】股下部におけるフィット性や排泄液の吸収性を高めつつ、吸収した排泄液によって股下部が蒸れやすくなるといった懸念をユーザーに生じさせ難いパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性本体(10)と、吸収性本体(10)よりも非肌側に設けられ、少なくとも一部が横方向に伸縮可能な外装部材(20)と、を有するパンツ型吸収性物品(1)であって、吸収性本体(10)は、股下部(CA)において、横方向の中央部に設けられ縦方向に沿って伸縮する吸収体弾性部材(50)を備えた股下弾性領域(50A)を有し、外装部材(20)を構成するシート部材(21)の少なくとも一部に、複数の開孔(70)を備えた開孔領域(70A)を有し、厚さ方向に見たときに、股下弾性領域(50A)と開孔領域(70A)とが重複する部分を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態において互いに交差する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、
液吸収性の吸収性本体と、
前記吸収性本体よりも非肌側に設けられ、少なくとも一部が前記横方向に伸縮可能な外装部材と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、股下部において、前記横方向の中央部に設けられ前記縦方向に沿って伸縮する吸収体弾性部材を備えた股下弾性領域を有し、
前記外装部材を構成するシート部材の少なくとも一部に、複数の開孔を備えた開孔領域を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記股下弾性領域と前記開孔領域とが重複する部分を有している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた液不透過性且つ通気性の通気性シート部材とを有し、
前記開孔の周縁に沿って前記厚さ方向の肌側若しくは非肌側に突出した開孔縁突出部が設けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記開孔縁突出部は、前記厚さ方向の非肌側に突出している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
請求項2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記開孔縁突出部は、前記厚さ方向の肌側に突出している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体を前記厚さ方向に圧搾する線状圧搾部を有し、
前記股下部における前記線状圧搾部の前記縦方向の長さは、前記横方向の長さよりも長い、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記外装部材は、
前記開孔を有する第1シートと、
前記第1シートの少なくとも一部において肌側に積層され、前記横方向に伸縮性を有する第2シートと、を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記吸収体弾性部材及び前記線状圧搾部の少なくとも一方の前記縦方向における後側端部が、前記第1シート及び前記第2シートと重複している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記外装部材は、前記股下部において、1枚の前記第1シートによって構成されている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記線状圧搾部は、複数の個別圧搾部が断続的に並ぶことによって形成されており、
前記開孔の各々の面積は、前記個別圧搾部の各々の面積よりも大きい、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記線状圧搾部は、複数の個別圧搾部が断続的に並ぶことによって形成されており、
前記開孔の各々の面積は、前記個別圧搾部の各々の面積よりも小さい、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
自然状態において、前記厚さ方向に見たときに、
前記股下弾性領域と重複する部分に設けられた前記開孔の各々の面積は、前記吸収性本体よりも横方向の外側の部分に設けられた前記開孔の各々の面積よりも小さい、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記横方向の両側部に一対の防漏壁部を有し、
前記防漏壁部には、前記縦方向に伸縮する防漏壁弾性部材が設けられており、
伸長状態の前記吸収体弾性部材の長さを自然状態の前記吸収体弾性部材の長さで割った値は、伸長状態の前記防漏壁弾性部材の長さを自然状態の前記防漏壁弾性部材の長さで割った値よりも大きい、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体と前記外装部材とを前記厚さ方向に接合する本体接合部を有し、
前記本体接合部の合計の面積は、前記開孔の合計の面積よりも大きい、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項13】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体と前記外装部材とを前記厚さ方向に接合する本体接合部を有し、
前記本体接合部の合計の面積は、前記開孔の合計の面積よりも小さい、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項14】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の肌側に、トップシートとセカンドシートとを有し、
前記トップシート及び前記セカンドシートの少なくとも一方は、保水性繊維を有するシート部材である、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項15】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記通気性シート部材の非肌側にサイドシートを有し、
前記吸収体弾性部材は、前記通気性シート部材と前記サイドシートとの前記厚さ方向の間に設けられており、
股下弾性領域よりも前記縦方向の後側において、前記通気性シート部材と前記サイドシートとが接合されていない部分を有する、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項16】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記線状圧搾部は、前記横方向に間隔を空けて一対設けられており、
前記吸収性本体は、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に1以上のシート部材を有し、
一対の前記線状圧搾部の前記横方向の内側の領域で、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に積層されている前記シート部材の枚数は、一対の前記線状圧搾部の前記横方向の外側の領域で、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に積層されている前記シート部材の枚数よりも少ない、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ型吸収性物品の股下部において、排泄液の伝い漏れ等を抑制するために、吸収性本体の幅方向(短手方向)の中央部に長手方向に沿って伸縮する弾性部材を設け、当該弾性部材の収縮力によって吸収性本体を排泄口(膣口等)にフィットさせやすくする技術が知られている。例えば、特許文献1には、吸収性本体の長手方向に沿って設けられた股間部弾性部材によって、吸収体を着用者の身体にフィットさせ、股間部でのだぶつきを防止することが可能なパンツタイプのおむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-61335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように股下部に弾性部材を備えたパンツ型吸収性物品では、股下部における吸収性本体のフィット性が高まり、尿や経血等の排泄液を漏れ難くすることができる。しかしながら、着用者の排泄口付近において吸収性本体に排泄液が吸収されやすくなるため、吸収性本体に溜まった排泄液によって股下部が蒸れやすくなるという懸念をユーザーに生じさせるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、股下部におけるフィット性や排泄液の吸収性を高めつつ、吸収した排泄液によって股下部が蒸れやすくなるといった懸念をユーザーに生じさせ難いパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において互いに交差する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体よりも非肌側に設けられ、少なくとも一部が前記横方向に伸縮可能な外装部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、股下部において、前記横方向の中央部に設けられ前記縦方向に沿って伸縮する吸収体弾性部材を備えた股下弾性領域を有し、前記外装部材を構成するシート部材の少なくとも一部に、複数の開孔を備えた開孔領域を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記股下弾性領域と前記開孔領域とが重複する部分を有している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、股下部におけるフィット性や排泄液の吸収性を高めつつ、吸収した排泄液によって股下部が蒸れやすくなるといった懸念をユーザーに生じさせ難いパンツ型吸収性物品を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ナプキン1の一構成例を示す概略斜視図である。
図2】展開かつ伸長状態のナプキン1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。
図3図2のA-A断面模式図である。
図4】吸収性本体10の平面図及び断面図である。
図5】非肌側シート21に設けられた開孔70及び融着部80について説明する平面図である。
図6】溶着部90の配置について説明する平面図である。
図7】伸長状態におけるパンツ型形状のナプキン1の平面図である。
図8図8A及び図8Bは、非肌側シート21に形成された開孔70の厚さ方向における形状について説明する断面模式図である。
図9】吸収性本体10と外装部材20とを厚さ方向に接合する本体接合部18の配置について説明する図である。
図10】バックシート14とサイドシート15とを厚さ方向に接合するバック‐サイド接合部19の配置について説明する図である。
図11】ナプキン1の製造における各工程のフロー図である。
図12】ナプキン1を製造する製造装置100について説明する概略図である。
図13】延伸処理の原理について説明する図である。
図14図13の領域Kについて拡大して表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
(態様1)
展開状態において互いに交差する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体よりも非肌側に設けられ、少なくとも一部が前記横方向に伸縮可能な外装部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、股下部において、前記横方向の中央部に設けられ前記縦方向に沿って伸縮する吸収体弾性部材を備えた股下弾性領域を有し、前記外装部材を構成するシート部材の少なくとも一部に、複数の開孔を備えた開孔領域を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記股下弾性領域と前記開孔領域とが重複する部分を有している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0011】
態様1のパンツ型吸収性物品によれば、股下弾性領域の収縮力によって、排泄口付近における吸収性本体のフィット性が高まり、経血等の排泄液の吸収性が向上する。そして、当該股下弾性領域と重複する部分の外装部材に開孔領域が設けられているため、ユーザーに良好な通気性を想起させやすい。したがって、吸収された排泄液によって股下部が蒸れやすくなるといった懸念をユーザーに生じさせ難くすることができる。
【0012】
(態様2)
前記吸収性本体は、吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた液不透過性且つ通気性の通気性シート部材とを有し、前記開孔の周縁に沿って前記厚さ方向の肌側若しくは非肌側に突出した開孔縁突出部が設けられている、態様1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0013】
態様2のパンツ型吸収性物品によれば、開孔縁突出部が形成されていない場合と比較して、吸収性コアや通気性シート部材と着用者の衣服との間の距離が遠くなり、排泄液が水蒸気として非肌側に蒸散する際に、衣服に水分が凝集して衣服が濡れてしまうことが抑制されやすくなる。したがって、着用者が身体を動かして吸収性本体が変形した場合であっても、衣服が濡れにくくなり、ユーザーに不快感を生じさせ難くすることができる。
【0014】
(態様3)
前記開孔縁突出部は、前記厚さ方向の非肌側に突出している、態様2に記載のパンツ型吸収性物品。
【0015】
態様3のパンツ型吸収性物品によれば、開孔縁突出部が肌側シートと干渉し難く、開孔縁突出部の厚さ方向における突出高さが維持されやすい。また、開孔縁突出部が一時的に潰れたような場合でも、元の形状に戻りやすい。
【0016】
(態様4)
前記開孔縁突出部は、前記厚さ方向の肌側に突出している、態様2に記載のパンツ型吸収性物品。
【0017】
態様4のパンツ型吸収性物品によれば、非肌側シートと肌側シートとが、開孔縁突出部を介して接触しやすくなる。したがって、開孔縁突出部付近において肌側シート側から非肌側シートへの水分の移行が促進され、開孔から非肌側に水分を効率よく蒸散させることができる。これにより、肌側に水分が溜まり難く、股下部等で蒸れが生じることを抑制し易くすることができる。
【0018】
(態様5)
前記吸収性本体を前記厚さ方向に圧搾する線状圧搾部を有し、前記股下部における前記線状圧搾部の前記縦方向の長さは、前記横方向の長さよりも長い、態様1~4の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0019】
態様5のパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアの股下部において、着用者の排泄口と当接する部分にて吸収された経血等が、線状圧搾部に沿って縦方向の前後へと拡散しやすくなり、排泄口当接領域周辺に排泄液が集中的に滞留することが抑制される。これにより、股下部における蒸れや排泄漏れを抑制しやすくなる。
【0020】
(態様6)
前記外装部材は、前記開孔を有する第1シートと、前記第1シートの少なくとも一部において肌側に積層され、前記横方向に伸縮性を有する第2シートと、を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記吸収体弾性部材及び前記線状圧搾部の少なくとも一方の前記縦方向における後側端部が、前記第1シート及び前記第2シートと重複している、態様1~5の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0021】
態様6のパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアに吸収された経血等の排泄液が前後に拡散して後側端部まで達した際に、その非肌側に第1シート及び第2シートが設けられていることにより、排泄液が非肌側に漏れ難くなる。これにより、着用者が仰向けの姿勢で寝ていた場合等に、排泄液が吸収性本体の後側から漏れ出してしまうことが抑制される。
【0022】
(態様7)
前記外装部材は、前記股下部において、1枚の前記第1シートによって構成されている、態様6に記載のパンツ型吸収性物品。
【0023】
態様7のパンツ型吸収性物品によれば、股下部において、経血等の水分が第1シート(非肌側シート)を透過して肌側から非肌側へ移動しやすい。また、第1シート(非肌側シート)に設けられた開孔領域によって、水分が肌側から非肌側へ効率的に蒸散しやすくなり、股下部における通気性がより向上し、蒸れを生じ難くすることができる。
【0024】
(態様8)
前記線状圧搾部は、複数の個別圧搾部が断続的に並ぶことによって形成されており、前記開孔の各々の面積は、前記個別圧搾部の各々の面積よりも大きい、態様1~7の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0025】
態様8のパンツ型吸収性物品によれば、開孔の面積が大きければ、その分、開孔縁突出部が大きく形成されやすくなる。したがって、逆の場合と比較して、通気性シート部材(バックシート)と着用者の衣服との間の距離が確保されやすく、股下部における経血等の水分の蒸散が促進されやすくなる。これにより、ユーザーに良好な通気性を想起させやすくすることができる。
【0026】
(態様9)
前記線状圧搾部は、複数の個別圧搾部が断続的に並ぶことによって形成されており、前記開孔の各々の面積は、前記個別圧搾部の各々の面積よりも小さい、態様1~7の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0027】
態様9のパンツ型吸収性物品によれば、開孔の面積が相対的に小さくなるため、逆の場合と比較して、開孔が視認され難くなる。これにより、股下部において、経血等の液体が開孔から外側(非肌側)に漏れやすくなるといったネガティブな印象をユーザーに生じ難くさせることができる。
【0028】
(態様10)
自然状態において、前記厚さ方向に見たときに、前記股下弾性領域と重複する部分に設けられた前記開孔の各々の面積は、前記吸収性本体よりも横方向の外側の部分に設けられた前記開孔の各々の面積よりも小さい、態様1~9の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0029】
態様10のパンツ型吸収性物品によれば、股下弾性領域と重複する部分では開孔が過度に大きく見えないため、膣口周辺で経血等が開孔から外側(非肌側)に漏れてしまうといった印象をユーザーに生じ難くさせることができる。一方、吸収性本体よりも左右方向の外側の領域では、開孔が相対的に大きく見えるようにすることで、股下部の全体として十分な通気性を有している印象をユーザーに生じさせることができる。
【0030】
(態様11)
前記吸収性本体は、前記横方向の両側部に一対の防漏壁部を有し、前記防漏壁部には、前記縦方向に伸縮する防漏壁弾性部材が設けられており、伸長状態の前記吸収体弾性部材の長さを自然状態の前記吸収体弾性部材の長さで割った値は、伸長状態の前記防漏壁弾性部材の長さを自然状態の前記防漏壁弾性部材の長さで割った値よりも大きい、態様1~10の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0031】
態様11のパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体は、横方向の両側部(防漏壁部)よりも中央部(股下弾性領域)において縦方向に収縮しやすい。したがって、横方向中央部では開孔が収縮しやすくなり、過度に大きく見え難く、横方向の両外側では、開孔が相対的に大きく見えるようになる。これにより、排泄口の周辺では排泄液が漏れ難く、股下部全体としては通気性が確保されやすい印象をユーザーにより生じさせやすい。
【0032】
(態様12)
前記吸収性本体と前記外装部材とを前記厚さ方向に接合する本体接合部を有し、前記本体接合部の合計の面積は、前記開孔の合計の面積よりも大きい、態様1~11の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0033】
態様12のパンツ型吸収性物品によれば、本体接合部が相対的に大きく形成されるため、逆の場合と比較して、吸収性本体と外装部材との接合強度を高めることができる。したがって、外装部材に設けられた開孔が起点となって外装部材が破れてしまうことを抑制しやすい。
【0034】
(態様13)
前記吸収性本体と前記外装部材とを前記厚さ方向に接合する本体接合部を有し、前記本体接合部の合計の面積は、前記開孔の合計の面積よりも小さい、態様1~11の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0035】
態様13のパンツ型吸収性物品によれば、逆の場合と比較して、開孔を大きくしたり、単位面積あたりに設けられる開孔の数を多くしたりすることができる。したがって、開孔がより視認されやすくなり、良好な通気性を有している印象をユーザーに生じさせやすくなる。
【0036】
(態様14)
前記吸収性本体は、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の肌側に、トップシートとセカンドシートとを有し、前記トップシート及び前記セカンドシートの少なくとも一方は、保水性繊維を有するシート部材である、態様1~13の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0037】
態様14のパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアよりも肌側に、保水性の高いシート部材が配置されていることにより、経血等の排泄液が、吸収性コアよりも肌側にて保持されやすくなるため、吸収性コアよりも非肌側へ移行する水分を低減することができる。これにより、着用時における排泄液の漏れをより抑制しやすくすることができる。
【0038】
(態様15)
前記吸収性本体は、前記通気性シート部材の非肌側にサイドシートを有し、前記吸収体弾性部材は、前記通気性シート部材と前記サイドシートとの前記厚さ方向の間に設けられており、股下弾性領域よりも前記縦方向の後側において、前記通気性シート部材と前記サイドシートとが接合されていない部分を有する、態様1~14の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0039】
態様15のパンツ型吸収性物品によれば、通気性シート部材とサイドシートとが接合されていない領域では、両者の厚さ方向の間に隙間が形成されやく、肌側から非肌側への水分の移行が抑制されやすくなる。したがって、着用者が仰向けの寝姿勢を取っている場合等に、股下弾性領域よりも後側の臀部付近において排泄液の漏れが生じることを抑制し易くなる。
【0040】
(態様16)
前記線状圧搾部は、前記横方向に間隔を空けて一対設けられており、前記吸収性本体は、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に1以上のシート部材を有し、一対の前記線状圧搾部の前記横方向の内側の領域で、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に積層されている前記シート部材の枚数は、一対の前記線状圧搾部の前記横方向の外側の領域で、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に積層されている前記シート部材の枚数よりも少ない、態様1~15の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0041】
態様16のパンツ型吸収性物品によれば、横方向の両側では、中央部と比較して、肌側から非肌側に水分が移行し難く、非肌側に移行した場合であっても水分が横方向の外側へ漏れにくい。これにより、着用者が横向きに寝た姿勢を取っていた場合等に、排泄液が横方向に漏れることを抑制しやすくすることができる。
【0042】
===実施形態===
本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品の一例として、ショーツ型(パンツ型)ナプキン(以下では、単に「ナプキン1」とも呼ぶ)について説明する。なお、パンツ型吸収性物品には、パンツ型おむつやパンツ型吸収パッド等も含まれる。
【0043】
<ナプキン1の基本的構造>
図1は、本実施形態に係るナプキン1の一構成例を示す概略斜視図である。図2は、展開かつ伸長状態のナプキン1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。図3は、図2のA-A断面模式図である。
【0044】
なお、ナプキン1の「伸長状態」とは、ナプキン1が備える各弾性部材(例えば、後述する吸収体弾性部材50や、肌側シート22,23等)を伸長させることにより、ナプキン1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、ナプキン1を構成する各部材(例えば、後述する外装部材20等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。
【0045】
ナプキン1は、図1に示すパンツ型状態において、互いに直交する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」とを有している。また、図3に示すように、各部材が積層された方向である「厚さ方向」を有している。上下方向のうち、着用者がナプキン1を着用した状態で着用者の胴側となる方を「上側」とし、着用者の股下側となる方を「下側」とする。また、前後方向のうち、着用状態で着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。また、厚さ方向のうち、着用者がナプキン1を着用した状態で着用者の肌と接触する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0046】
また、ナプキン1は、図2に示される展開状態において、互いに直交する「縦方向」と「横方向」とを有している。「縦方向」は、パンツ型における上下方向に沿った方向であり、「横方向」は、ショーツ型における左右方向に沿った方向である。
【0047】
本実施形態のナプキン1は、尿等の液体を吸収する液吸収性の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に配置され、ナプキン1の着用時には着用者の胴回りに配置される外装部材20と、を備えている。
【0048】
ナプキン1は、経血等の排泄液(液体)を吸収する液吸収性の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に設けられ、ナプキン1の着用時には着用者の胴回りに配置される外装部材20と、を備えている。
【0049】
(吸収性本体10)
図4は、吸収性本体10の平面図及び断面図である。本実施形態の吸収性本体10は、図2に示すように、縦方向(すなわち吸収性本体10の長辺方向)がナプキン1の上下方向に沿った平面視略長方形状である。そして、図3及び図4に示すように、吸収性本体10は、縦方向(上下方向)に沿った吸収性コア11と、吸収性コア11よりも肌側に配置されたトップシート12と、トップシート12と吸収性コア11との間に配置されたセカンドシート13と、吸収性コア11よりも非肌側に配置されたバックシート14と、バックシート14の非肌側に配置されたサイドシート15とを有している。
【0050】
吸収性コア11は、経血等の液体を吸収して保持する部材であり、例えばパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。なお、吸収性コア11は、パルプ繊維に高吸収性ポリマー(SAP)が混入したものであっても良い。また、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材(コアラップシート11b)によって、外周面が覆われていても良い。
【0051】
トップシート12は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。
【0052】
セカンドシート13はトップシート12とほぼ同等の機能及び構成を有するシート部材であり、トップシート12の非肌側面に積層されている。なお、吸収性本体10において、セカンドシート13は必ずしも設けられていなくても良い。
【0053】
バックシート14は、吸収性コア11に吸収された経血等の液体が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性且つ通気性のシート部材(通気性シート部材)であり、例えば樹脂フィルム等により形成される。
【0054】
サイドシート15は、バックシート14の非肌側に積層されたシート部材であり、例えば、SMS(スパンボンド‐メルトブローン‐スパンボンド)不織布等の疎水性の不織布が用いられる。また、本実施形態において、サイドシート15は一対の防漏壁部30,30を形成する。
【0055】
防漏壁部30は、吸収性本体10の横方向(左右方向)の両側に一対設けられ、所謂立体ギャザーに相当する部位である。ナプキン1の着用時には、該防漏壁部30が、吸収性本体10の左右方向の両側部において着用者の肌側に起立することによって、経血等の排泄液が着用者の肌を伝って吸収性本体10の左右方向の外側に漏出することを抑制する。
【0056】
本実施形態において、サイドシート15は、図4の断面図に示されるように、吸収性コア11の横方向(左右方向)の両外側に延出しつつ、吸収性本体10の左右方向の両端部にて厚さ方向の肌側に折り曲げられ、端部15tが吸収性コア11よりも肌側に配置される。また、端部15tでは、図4のように、サイドシート15が折り返されることによって厚さ方向に積層された状態となっており、積層されたサイドシート15,15の間には防漏壁弾性部材31が縦方向に沿って伸長した状態で設けられている。ナプキン1の着用時には、該防漏壁弾性部材31が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部30の端部15tが縦方向(上下方向)に収縮することで、吸収性本体10が着用者の脚繰りに沿ってフィットしやすくなる。
【0057】
また、吸収性本体10には、吸収性コア11の密度が周囲の部分よりも高くなった高密度部40が設けられている。高密度部40は、吸収性本体10を構成する各部材を厚さ方向に圧搾することによって形成されている。ナプキン1において高密度部40は、図4に示されるように、ドット状の個別圧搾部41が断続的に複数並ぶことによって線状に形成されている。以下、高密度部40を「線状圧搾部40」とも呼ぶ。このような線状圧搾部40(高密度部40)が設けられることにより、吸収性コア11の液体吸収性繊維がばらけて形状が崩れてしまうことが抑制される。また、ナプキン1の着用時には、線状圧搾部40が折れ曲がり起点となることによって、吸収性コア11が着用者の身体形状に応じて三次元的に変形しやすくなり、着用者の身体にフィットしやすくなる。
【0058】
また、吸収性本体10には、縦方向(上下方向)に沿って伸縮する吸収体弾性部材50が複数設けられている。吸収体弾性部材50は、例えば糸ゴムによって形成され、吸収性コア11よりも非肌側(具体的には、バックシート14とサイドシート15との間)に、所定の伸長倍率で縦方向(上下方向)に伸長した状態で配置されている。本実施形態のナプキン1では、図4に示されるように、左右方向に所定の間隔を空けて4本の吸収体弾性部材50が設けられている。ここで、弾性部材の「伸長倍率」とは伸長状態の弾性部材の長さを自然状態の弾性部材の長さで割った値である。なお、吸収体弾性部材50の配置や本数、伸長倍率等の設定は、適宜変更可能である。
【0059】
吸収体弾性部材50が発現する伸縮性によって、吸収性本体10が縦方向に沿って伸縮可能となり、ナプキン1の着用時において、着用者の股下部(股間部)に吸収性本体10がフィットしやすくなり、経血等の排泄液の吸収性を高めることができる。以下では、主に股下部において吸収体弾性部材50の伸縮性が発現している領域を「股下弾性領域50A」とも呼ぶ。ナプキン1では、4本の吸収体弾性部材50によって囲まれている領域(図4の斜線部で示される領域)が股下弾性領域50Aとなる。なお、股下弾性領域50Aが、股下部CA以外の領域と重複する部分を有していても良い。
【0060】
(外装部材20)
外装部材20は、吸収性本体10の非肌側に配置されたシート部材であり、非肌側シート21と、肌側シート22,23を有する。また、図2に示すように、外装部材20のうち、縦方向において、前側(図1における前後方向の前側)に形成されるサイド接合部60と重複する部分を「前側胴回り部FA」とする。同様に、外装部材20のうち、縦方向において、後側(図1における前後方向の後側)に形成されるサイド接合部60と重複する部分を「後側胴回り部BA」とする。そして、縦方向において、前側胴回り部FAの後側端と後側胴回り部BAの前側端との間の部分を「股下部CA」とする。サイド接合部60については、後で説明する。
【0061】
非肌側シート21は、ナプキン1の最も非肌側に配置される非伸縮性のシート部材であり、例えばスパンボンド不織布やSMS不織布等により形成される。本実施形態で、非肌側シート21は、図2に示すように、股下部CAにおいて左右方向内側に向かって括れた形状を有している。また、非肌側シート21の表面には全体に亘って、複数の開孔70及び融着部80が離散的に設けられている。図5は、非肌側シート21に設けられた開孔70及び融着部80について説明する平面図である。
【0062】
開孔70は、非肌側シート21を厚さ方向に貫通する貫通孔である。ナプキン1において、開孔70は、直径φ70=0.55~1.0mm程度の略円形状の開孔であり、隣り合う2つの開孔70,70の中心間距離p70(つまり、開孔70のピッチ)=2.0~4.0mm程度で配置されている。非肌側シート21において、これら複数の開孔70,70…が設けられている領域を「開孔領域70A」とも呼ぶ。本実施形態では、非肌側シート21の全体に亘って開孔領域70Aが形成されているが、非肌側シート21の一部に開孔領域70Aが形成されているのであっても良い。なお、開孔70は、後述するナプキン1の製造工程の開孔形成工程(S102)で形成され(図11参照)、開孔70の大きさや配置を適宜調整することが可能である。
【0063】
融着部80は、非肌側シート21(不織布)を構成する繊維同士を互いに接合することで、繊維をシート状に形成するための部位であり、不織布の製造工程において、例えば、平面上に堆積した繊維(ウェッブ)にエンボス加工を施すことによって形成される。このような融着部80が点在していることにより、非肌側シート21は柔軟性を維持しつつ、シート部材として十分な強度を確保することができる。ナプキン1において、融着部80は、1辺の長さが0.3~0.5mm程度の矩形状であり、隣り合う2つの融着部80,80の中心間距離p80(つまり、融着部80のピッチ)=1.0~2.0mm程度で点在している。本実施系形態では、図5のように、開孔領域70Aの全体に融着部80が略格子状に点在している。
【0064】
肌側シート22は、縦方向の前側(腹側)において非肌側シート21の肌側に積層された伸縮性を有するシート部材であり、ナプキン1においては左右方向に沿った伸縮性を発現する。肌側シート22は、例えば、伸縮性不織布により形成される。「伸縮性不織布」とは、伸縮性を有する伸縮性繊維、及び伸縮性繊維よりも収縮性の低い伸長性繊維を含み、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布である。本実施形態の肌側シート22は、伸縮性繊維として、弾性を有する熱可塑性エラストマーの一種であるポリウレタン系エラストマーの繊維を用いることが可能であり、伸長性繊維として、非弾性を有する熱可塑性樹脂の一種であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)の繊維を用いることが可能である。伸縮性不織布は、後述するナプキン1の製造工程の延伸工程(S103)で形成される(図11参照)。
【0065】
肌側シート23は、縦方向の後側(背側)において非肌側シート21の肌側に積層された伸縮性を有するシート部材であり、肌側シート22と同様の構成を有している。
【0066】
肌側シート22,23は、点在する複数の溶着部90によって非肌側シート21と接合されており、これにより、外装部材20の少なくとも前側胴回り部FA及び後側胴回り部BAに左右方向の伸縮性が付与される。本実施形態において、溶着部90は、超音波溶着等の公知の接合手段を用いて形成される。
【0067】
図6は、溶着部90の配置について説明する平面図である。同図6は、展開且つ伸長状態において、外装部材20を構成する基材シート(非肌側シート21及び肌側シート22,23)を溶着部90によって厚さ方向に接合した状態について表している。つまり図6では、脚回り開口1bを形成するためのカッティング(図6では破線で示されている)が行われる前の外装部材20について表している。また、製造工程上、肌側シート22,23と非肌側シート21とが積層されていない部分(例えば、股下部CAの一部)にも溶着部90が形成される。
【0068】
図6では、展開且つ伸長状態の外装部材20を厚さ方向に見たときに、外装部材20と吸収性本体10とが重複する部分のうち斜線部で示される領域を領域Yとし、それ以外の領域を領域Xとしている。ナプキン1において、領域Xに形成される溶着部90と、領域Yに形成される溶着部90とでは、大きさ及びパターンが異なっている。具体的に、領域Yに形成される溶着部92は、領域Xに形成される溶着部91よりも個々の面積が大きく、且つ、密に形成されている。すなわち、領域Yにおいて、単位面積あたりに設けられる溶着部92の合計の面積(以下「面積率」とも呼ぶ)は、領域Xにおいて、単位面積あたりに設けられる溶着部91の合計の面積(面積率)よりも大きくなっている。
【0069】
溶着部90の面積率が大きいほど、肌側シート22,23と非肌側シート21との接合強度が強くなる。したがって、ナプキン1の着用時において外装部材20(非肌側シート21)が着用者の肌と接触する領域Xでは、溶着部91の面積率を小さくすることで外装部材20の剛性が低く変形が生じやすくなる。これにより、外装部材20の肌触りが硬くなりすぎず、また着用者の身体にフィットさせやすくすることができる。一方、領域Yでは、ナプキン1の着用時において外装部材20(非肌側シート21)と着用者の肌との間に吸収性本体10が介在し、外装部材20は着用者の肌と直接接触し難い。そのため、図6のように溶着部92の面積率を大きくしても、外装部材20の肌触りやフィット性は悪化し難く、肌側シート22,23と非肌側シート21との接合強度を強くすることができる。
【0070】
また、外装部材20は、上下方向の上端部において非肌側シート21の一部が下側に折り返されている。図3において、非肌側シート21は、前側折り曲げ位置FL20fにて上下方向の下側(縦方向の後側)且つ厚さ方向の肌側に折り返された部分である折り返し部21ffを有している。折り返し部21ffは、ホットメルト接着剤等の接着剤によって厚さ方向に隣接するシート部材(図3では肌側シート22)と少なくとも一部が互いに接合されている。また、折り返し部21ffと厚さ方向に隣接するシート部材(肌側シート22)との厚さ方向の間に、横方向(左右方向)に沿った胴回り弾性部材25fが設けられていても良い。胴回り弾性部材25fは、例えば糸ゴム等を用いることができ、横方向に伸長した状態で外装部材20に固定されている。該胴回り弾性部材25fが横方に収縮することにより、ナプキン1の前側胴回り部FAにおいて胴回り開口1a(後述)のフィット性が向上する。
【0071】
同様に、図3において、非肌側シート21は、後側折り曲げ位置FL20bにて上下方向の下側(縦方向の前側)且つ厚さ方向の肌側に折り返された部分である折り返し部21bfを有している。また、折り返し部21bfと厚さ方向に隣接するシート部材(肌側シート23)との厚さ方向の間に、横方向(左右方向)に沿った胴回り弾性部材25bが設けられていても良い。胴回り弾性部材25bにより、ナプキン1の後側胴回り部BAにおいて胴回り開口1a(後述)のフィット性が向上する。
【0072】
図7は、伸長状態におけるパンツ型形状のナプキン1の平面図である。ナプキン1は、図2に示す展開状態から、縦方向における中央位置CL(図2において一点鎖線で示す)を折り位置として、図7のように、吸収性本体10及び外装部材20が長手方向に二つ折りされる。当該二つ折りの状態において、外装部材20のうち前後方向に重なり合った前側胴回り部FAの横方向両側部20feと、後側胴回り部BAの横方向両側部20beとがシール溶接等の公知の接合手段を用いて接合され、一対のサイド接合部60,60が形成される。これにより、二つ折りされた外装部材20が前側(腹側)と後側(背側)とで環状につながって、図1及び図7に示すような胴回り開口1a及び一対の脚回り開口1bが形成され、パンツ型のナプキン1となる。
【0073】
ナプキン1において、サイド接合部60は、複数の個別接合部61,62が上下方向(縦方向)に沿って間欠的に並ぶことによって形成される。図7では、横長に形成された複数の個別接合部61,61…が上下方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。また、個別接合部61よりも左右方向(横方向)の内側に、横長に形成された複数の個別接合部62,62…が上下方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。使用後のおむつ1を着用者の身体から取り外す際には、当該サイド接合部60を破ることによって、環状に連結されている前側胴回り部FAと後側胴回り部BAとを前後に分離させることができる。その際、サイド接合部60において上下方向に沿って間欠的に配置された複数の個別接合部61,62がミシン目のように機能することで、簡単にサイド接合部60を破ることができる。但し、サイド接合部60が1種類の個別接合部によって形成されるのであって良い。
【0074】
<股下弾性領域50A及び開孔領域70Aについて>
本実施形態のナプキン1は、吸収性本体10に設けられた股下弾性領域50A(吸収体弾性部材50)が発現する収縮力によって、股下部CAにおいて、吸収性本体10が着用者の排泄口にフィットしやすく、経血等の排泄液の吸収性を向上させることができる。一方で、排泄口付近において吸収性本体10に排泄液が吸収されやすくなることから、吸収された排泄液が股下部に集中して溜まりやすくなり、着用時において股下部が蒸れやすくなるといった懸念をユーザーに生じさせるおそれがある。
【0075】
これに対して、本実施形態のナプキン1では、外装部材20(非肌側シート21)の全体に亘って複数の開孔70,70…からなる開孔領域70Aが設けられている。この開孔領域70Aは、ナプキン1の通気性を高め、また、外部から視認可能であることにより、ナプキン1が蒸れにくいというイメージをユーザーに想起させることができる。そして、図2に示される展開状態においてナプキン1を厚さ方向に見たときに、開孔領域70Aの少なくとも一部は、股下弾性領域50Aと重複して設けられている。すなわち、排泄口にフィットしやすい股下弾性領域50Aと重複する部分の外装部材20に開孔領域70Aが設けられている。これにより、ユーザーに良好な通気性を想起させやすくし、股下部が蒸れやすくなるといった懸念をユーザーに生じさせ難くすることができる。
【0076】
なお、吸収性本体10のうち、吸収性コア11よりも非肌側には、液不透過性且つ通気性を備えたバックシート14(通気性シート部材)が設けられている(図4参照)。したがって、排泄口付近にて吸収性コア11によって吸収された経血等の排泄液は、水蒸気としてバックシート14を透過して吸収性本体10の非肌側へ移動可能である。これにより、吸収性本体10に吸収された水分(排泄液)を吸収性本体10の非肌側へ排出することができる。その際、吸収性本体10の非肌側の外装部材20に開孔領域70Aが設けられているため、外装部材20よりも非肌側へ水蒸気が移動しやすくなり、実際に股下部における通気性を高めることができる。
【0077】
また、股下弾性領域50Aが発現している伸縮性によって吸収性本体10が着用者の身体(股下)側に押し付けられているため、着用者の衣服との間にスペースが確保されやすく、排泄液が大気中に蒸散しやすくなっている。仮に、股下弾性領域50Aが設けられておらず、吸収性本体10が着用者の衣服の近くに位置していた場合、バックシート14(通気性シート部材)を通過した水蒸気(水分)がそのまま着用者の衣服に付着して、衣服を湿らせてしまうおそれがある。この場合、ユーザーに、排泄液が漏れて衣服に付着した等の誤解を生じさせるおそれがある。
【0078】
しかしながら、上述のように股下弾性領域50Aの伸縮性によって着用者の衣服と吸収性本体10との間に空間が確保されていれば、バックシート14を通過した水蒸気が当該空間にて蒸散しやすく、衣服側に水蒸気が凝集することが抑制され、衣服は濡れにくくなる。したがって、外装部材20の股下部に開孔領域70Aが設けられていても、ユーザーに排泄液が漏れやすい等のネガティブな印象は生じさせ難い。
【0079】
図8A及び図8Bは、非肌側シート21に形成された開孔70の厚さ方向における形状について説明する断面模式図である。本実施形態において、開孔70は、非肌側シート21に対して、先端の尖ったピンの先端部を厚さ方向の一方側から他方側に貫通させることによって形成される。その際、開孔70の周縁部が厚さ方向の他方側(ピンが押し込まれた側)に向かって突出した状態となる。図8Aでは、開孔70の周縁部が厚さ方向の非肌側に突出した開孔縁突出部71が形成されている。一方、図8Bでは、開孔70の周縁部が厚さ方向の肌側に突出した開孔縁突出部72が形成されている。
【0080】
このように厚さ方向に突出した開孔縁突出部71,72が形成されていることにより、開孔縁突出部71,72が形成されていない場合と比較して、吸収性本体10(吸収性コア11)及びバックシート14(通気性シート部材)と、着用者の衣服との間の距離が遠くなる。したがって、吸収性コア11によって吸収された排泄液(水分)が水蒸気としてバックシート14を通過して非肌側に蒸散する際に、衣服に水分が凝集して衣服が濡れてしまうことが抑制されやすくなる。これにより、例えば、着用者が身体を動かした際に吸収性本体10が変形して衣服に近づいたような場合であっても、衣服が濡れにくくなり、ユーザーに不快感を生じさせ難くすることができる。
【0081】
なお、図8Aの場合は、外装部材20を構成する非肌側シート21と肌側シート22(23)とが厚さ方向に接合された状態において、肌側シート22(23)とは反対側に開孔縁突出部71が突出していることになる。したがって、開孔縁突出部71と肌側シート22とが干渉し難く、開孔縁突出部71の厚さ方向における突出高さが維持されやすく、また、一時的に開孔縁突出部71が潰れたような場合でも、元の形状に戻りやすい。また、外装部材20の非肌側において、開孔縁突出部71とその他の部分とで光の反射の仕方が異なって見えるため、非肌側から開孔70が視認しやすくなり、良好な通気性を有していることをユーザーに想起させやすくすることができる。
【0082】
一方、図8Bのように、開孔縁突出部72が厚さ方向の非肌側に突出している場合、非肌側シート21とその肌側に隣接する肌側シート22(23)とが、開孔縁突出部72を介して接触しやすくなる。したがって、開孔縁突出部72付近において肌側シート22側から非肌側シート21への水分の移行が促進され、開孔70から非肌側に水分を効率よく蒸散させることができる。これにより、ナプキン1の肌側に水分が溜まり難く、股下部等で蒸れが生じることを抑制し易くすることができる。
【0083】
また、ナプキン1の吸収性本体10には縦長の線状圧搾部40が設けられていることにより(図4参照)、吸収性コア11によって吸収された経血等の水分が、排泄口付近の領域に局所的に溜まってしてしまうことが抑制される。図4に示されるように、線状圧搾部40は、縦方向における中心位置CLから前側胴回り部FA及び後側胴回り部BAに向かって前後に延びるように配置されている。言い換えると、線状圧搾部40の縦方向における長さは横方向における長さよりも長くなっている。そのため、吸収性コア11の股下部CAにおいて、着用者の排泄口と当接する部分にて吸収された経血等の液体は、線状圧搾部40に沿って誘導されるように縦方向の前後へと拡散し、吸収性コア11の全体に広がりやすくなる。したがって、吸収性コア11の排泄口周辺に排泄液が集中的に滞留することが抑制され、股下部において、蒸れが生じ難く、また、排泄漏れを抑制することができる。
【0084】
そして、この線状圧搾部40は、厚さ方向に見たときに、縦方向の前後端部にて外装部材20の非肌側シート21及び肌側シート22(23)と重複している(図2参照)。すなわち、線状圧搾部40の縦方向端部において、厚さ方向の非肌側に非肌側シート21及び肌側シート22(23)の2層のシート部材が積層されている。したがって、吸収性コア11によって吸収された経血等が線状圧搾部40に沿って前後に拡散して縦方向の端部まで達した際に、当該端部において経血等が外装部材20(21,22)よりも非肌側に漏れてしまうことが抑制される。例えば、着用者が座っていたり仰向けの姿勢で寝ていたりした場合には、経血等の排泄液が縦方向の後側に拡散して、吸収性本体10の後側から漏れ出してしまうおそれがある。このような場合であっても、線状圧搾部40の縦方向の後側端部40ebにおいて、吸収性本体10の非肌側に2層のシート部材が積層されていることによって(図2及び図4参照)、排泄液が非肌側に漏れて着用者の衣服を汚してしまうこと等を抑制することができる。
【0085】
なお、吸収性本体10において、前後方向に沿って配置された吸収体弾性部材50でも、線状圧搾部40と同様に、排泄液が前後方向に誘導され拡散しやすくなる。本実施形態では、吸収体弾性部材50の縦方向の端部(後側端部50eb)でも厚さ方向の非肌側に非肌側シート21及び肌側シート22(23)の2層のシート部材が積層されている(図2及び図4参照)。したがって、排泄液が漏れて着用者の衣服を汚してしまうこと等を抑制することができる。
【0086】
一方、ナプキン1の縦方向の中央部付近では、肌側シート22,23が設けられておらず、非肌側シート21のみによって外装部材20が構成されている。言い換えると、外装部材20は、股下部CAの少なくとも一部において、1枚のシート部材によって構成されている。したがって、前側胴回り部FAや後側胴回り部BAと比較して、股下部CAにおいては、経血等の水分が非肌側シート21を透過して肌側から非肌側へ移動し易くなっている。さらに非肌側シート21は、その全域に開孔領域70Aを有していることから、水分を肌側から非肌側へ蒸散しやすい構造となっている。これにより、股下部CAにおける通気性が向上し、ナプキン1の着用時に蒸れが生じることを抑制することができる。
【0087】
また、線状圧搾部40を構成している複数の個別圧搾部41,41…の各々の面積S41よりも、開孔70の各々の面積S70の方が大きくなるように、開孔70が形成されるようにすると良い(S70>S41)。開孔70の面積S70が大きければ、その分、図8で説明した開孔縁突出部71,72が大きく形成されやすくなる。したがって、逆の場合(S70<S41)と比較して、バックシート14(通気性シート部材)と着用者の衣服との間の距離が確保されやすくなり、股下部CAにおける経血等の水分の蒸散が促進されやすくなる。また、開孔70自体が目立ちやすく視認されやすくなるため、ユーザーに良好な通気性を想起させやすく、股下部が蒸れやすいといった印象を生じさせ難い
【0088】
逆に、線状圧搾部40を構成している複数の個別圧搾部41,41…の各々の面積S41が、開孔70の各々の面積S70よりも大きくなるように、開孔70が形成されるのであっても良い(S41>S70)。この場合、開孔70の面積S70が相対的に小さくなるため、逆の場合(S70>S41)と比較して、開孔70が視認され難くなる。したがって、股下部において、経血等の液体が開孔70から外側(非肌側)に漏れやすくなるといったネガティブな印象をユーザーに生じ難くさせることができる。
【0089】
また、ナプキン1を自然状態において厚さ方向に見たときに、開孔領域70Aのうち股下弾性領域50Aと重複する部分に設けられている開孔70の各々の面積は、開孔領域70Aのうち股下部CAにおいて吸収性本体10よりも左右方向(横方向)の外側の部分に設けられている開孔70の各々の面積よりも小さくなっている。股下弾性領域50Aと重複する部分では開孔70が過度に大きく見えないようにすることで、膣口周辺で経血等が開孔70から外側(非肌側)に漏れてしまうといった印象をユーザーに生じ難くさせることができる。一方、吸収性本体10(股下弾性領域50A)よりも左右方向の外側では、開孔70が相対的に大きく見えるようにすることで、股下部CAの全体として十分な通気性を有している印象をユーザーに生じさせることができる。
【0090】
なお、「自然状態」とは、ナプキン1を所定時間放置したときの状態である。例えば、製品状態のナプキン1をパッケージから取り出した後、外装部材20の両側部(20fe,20be)を左右方向の両外側に引っ張り、外装部材20を「伸長状態」として、この伸長状態を15秒間継続させた後、ナプキン1の引っ張りを解除して机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させた状態を自然状態とする。
【0091】
また、股下弾性領域50Aを構成している吸収体弾性部材50の伸長倍率は、吸収性本体10の横方向両側部に設けられた一対の防漏壁部30,30の防漏壁弾性部材31の伸長倍率よりも大きくなるように設定されている。したがって、吸収性本体10は、横方向の両側部(防漏壁部30)と比較して、横方向の中央部(股下弾性領域50A)において縦方向に収縮しやすくなっている。このような構成であれば、横方向の中央部では、股下弾性領域50Aの縦方向への収縮に伴って、開孔70も収縮しやすくなるため、開孔70が過度に大きく見えないようになる。一方、横方向の両側部では、吸収性本体10の収縮が小さく、股下弾性領域50Aと比較して開孔70が相対的に大きく見えるようになる。これにより、排泄口(膣口)の周辺では排泄液が漏れ難く、股下部全体としては通気性が確保されやすい印象をユーザーに生じさせることができる。
【0092】
図9は、吸収性本体10と外装部材20とを厚さ方向に接合する本体接合部18の配置について説明する図である。本実施形態の吸収性本体10は、後述するナプキン1の製造工程の転写工程(S105)において、外装部材20の肌側面に接合される。転写工程(S105)では、吸収性本体10の非肌側面若しくは外装部材20の肌側面において、図9の斜線部で示される領域にホットメルト接着剤等の接着材が塗布されることによって、本体接合部18が形成される。そして、該本体接合部18を介して、吸収性本体10と外装部材20とが接合される。
【0093】
ナプキン1では、本体接合部18の合計の面積S18が、外装部材20に設けられている複数の開孔70,70…の合計の面積S70Mよりも大きくなるように、本体接合部18及び開孔70が形成されている(S18>S70M)。このような構成であれば、逆の場合(S18<S70M)と比較して、本体接合部18が相対的に大きく形成されるため、吸収性本体10と外装部材20との接合強度を高めることができる。したがって、外装部材20に設けられた開孔70が起点となって外装部材20が破れてしまうこと等を抑制することができる。
【0094】
一方、本体接合部18の合計の面積S18よりも、外装部材20に設けられている複数の開孔70,70…の合計の面積S70Mの方が大きくなるように、本体接合部18及び開孔70が形成されるのであっても良い(S70M>S18)。このような構成であれば、逆の場合(S70M<S18)と比較して、個々の開孔70を大きくしたり、単位面積あたりに設けられる開孔70の数を多くしたりすることができる。したがって、開孔70がより視認されやすくなり、良好な通気性を有している印象をユーザーに生じさせることができる。
【0095】
また、吸収性本体10で、吸収性コア11よりも肌側に設けられるトップシート12及びセカンドシート13の少なくとも一方は、保水性繊維を有するシート部材とすることが好ましい(図4参照)。吸収性コア11よりも肌側に、保水性の高いシート部材が配置されていることにより、経血等の排泄液が、吸収性コア11よりも肌側で保持されやすくなるため、多量の水分が一気に吸収性コア11よりも非肌側へ移動してしまうことを抑制することができる。これにより、ナプキン1の着用時における排泄液の漏れをより抑制しやすくすることができる。
【0096】
図10は、バックシート14とサイドシート15とを厚さ方向に接合するバック‐サイド接合部19の配置について説明する図である。バックシート14は、吸収体弾性部材50を挟み込んだ状態で、バック‐サイド接合部19を介してサイドシート15と接合されている。バック‐サイド接合部19は、図10に示されるように、縦方向に沿った細長い帯状の領域に、ホットメルト接着剤等の接着材を塗布することによって形成される。そして、横方向に隣り合う2つの帯状のバック‐サイド接合部19,19の間には、非接合領域S19が形成されている。
【0097】
本実施形態では、縦方向において、股下弾性領域50Aの後側端50ebよりも後側の領域にも、非接合領域S19が形成されている。すなわち、股下弾性領域50Aよりも縦方向の後側の領域に、バックシート14とサイドシート15とが接合されていない領域(非接合領域S19)を有している。非接合領域S19では、バックシート14とサイドシート15との厚さ方向の間に隙間が形成されやく、肌側から非肌側への水分の移行が抑制されやすくなる。つまり、本実施形態のナプキン1は、股下弾性領域50Aよりも縦方向の後側に、肌側から非肌側へ水分が移動し難い部分を有していることになる。これにより、着用者が仰向けの寝姿勢を取っている場合であっても、臀部の周辺で排泄液の漏れが生じることを抑制することができる。
【0098】
また、吸収性本体10を厚さ方向に見たときに、一対の線状圧搾部40,40の横方向の間の領域で、吸収性コア11よりも非肌側に積層されているシート部材の枚数は、一対の線状圧搾部40,40の横方向の外側の領域で、吸収性コア11よりも非肌側に積層されているシート部材の枚数よりも少なくなっている。図4に示される吸収性本体10の断面図では、一対の線状圧搾部40,40の横方向内側では、吸収性コア11よりも非肌側に、バックシート14とサイドシート15との2枚のシート部材が積層されている。一方、一対の線状圧搾部40,40の横方向外側では、吸収性コア11よりも非肌側に、バックシート14と、サイドシート15と、サイドシート15が非肌側に折り返された部分と、非肌側に折り込まれたトップシート12と、の4枚のシート部材が積層されている。したがって、横方向の両側部では、横方向の中央部と比較して、肌側から非肌側に水分が移行し難い。また、横方向の中央部において肌側から非肌側に移行した水分は、横方向の外側へは漏れにくい。これにより、着用者が横向きに寝た姿勢を取っていた場合等であっても、排泄液がナプキン1の横方向に漏れることを抑制しやすくすることができる。
【0099】
<ナプキン1の製造方法>
続いて、ナプキン1の製造方法について説明する。図11は、ナプキン1の製造における各工程のフロー図である。図12は、ナプキン1を製造する製造装置100について説明する概略図である。なお、図11及び図12では、説明を簡略化するために、吸収性本体10は完成された状態で供給されるものとし、吸収性本体10の製造方法については説明を省略する。
【0100】
図12に示す製造装置100は、図11に示される各工程(S101~S108)を順次実施することによって、ナプキン1を連続的に製造する。製造装置100は、搬送機構110と、開孔機構120と、延伸機構130と、超音波溶着機構140と、吸収性本体転写機構150と、折り曲げ機構160と、接合機構170と、切断機構180と、を備える。
【0101】
ナプキン1の製造工程において、外装部材20を構成するシート部材(21,22,23)等の各種基材を所定の搬送方向へ搬送する搬送工程が行われる(S101)。なお、製造装置100において搬送方向は、ナプキン1の左右方向(横方向)に沿った方向である。以下では、搬送方向のことを「MD方向」とも呼び、搬送方向と交差する交差方向(図12において紙面の奥行き方向)を「CD方向」とも呼ぶ。
【0102】
搬送工程では、非肌側シート21がMD方向(パンツ型状態における左右方向)に連なった状態の非肌側シート連続体21a(第1シートに相当)が、原反ロールから繰り出された後、搬送機構110によって、所定の搬送速度でMD方向の上流側から下流側へ搬送される。同様に、肌側シート22,23がそれぞれMD方向(左右方向)に連なった状態の肌側シート連続体22a,23a(第2シートに相当)が、それぞれ原反ロールから繰り出された後、搬送機構110によって、所定の搬送速度でMD方向の上流側から下流側へ搬送される。これらの各基材が搬送される間に、S102~S108の各工程が実施されることで、ナプキン1が製造される。
【0103】
まず、MD方向に搬送される非肌側シート連続体21aに複数の開孔70を形成する開孔形成工程が行われる(S102)。開孔形成工程においては、MD方向の所定位置に設けられた開孔機構120のピン121を動作させ、当該ピン121の先端部分を非肌側シート連続体21aの厚さ方向に貫通させることにより、複数の開孔70を形成する。このとき、ピン121が貫通する方向に突出した開孔縁突出部71(72)が形成される。なお、開孔機構120が、製造装置100とは独立して構成されており、製造装置100に供給される前に非肌側シート連続体21aに開孔70が形成されるのであっても良い。つまり、開孔70はインラインで開孔加工するものでもよいし、オフラインで加工されたものであっても良い。また、非肌側シート連続体21aには、不織布の製造段階で形成された複数の融着部80が予め設けられているものとする。
【0104】
また、MD方向に搬送される肌側シート連続体22a(23a)に延伸処理を施して、MD方向(横方向)に沿った伸縮性を発現させる延伸工程が行われる(S103)。延伸処理は、一対のギアロール131,132を備えた延伸機構130を用いて行われる。図13は、延伸処理の原理について説明する図である。図14は、図13の領域Kについて拡大して表した図である。
【0105】
ギアロール131及び132は、互いの外周面を対向させつつCD方向に沿った回転軸回りに回転する上下一対のロール機構である。ギアロール131の外周面には、それぞれ回転方向に沿って複数の山部131m(ギアの歯に相当する)と谷部131vとが交互に形成されているとともに、各山部131m及び各谷部131vは、それぞれ、CD方向に延びて形成されている。なお、山部131m及び谷部131vはギアロール131のCD方向全体に形成されている必要は無く、ギアロール131の外周面でCD方向の一部の領域に形成されていても良い。また、ギアロール132の外周面にも同様の山部132m(ギアの歯)と谷部132vとが交互に形成されている。ギアロール131及び132が回転しているときには、一方のギアロール131の山部131mが他方のギアロール132の谷部132vに入り込むように互いの山部131mと谷部132vとが若干の隙間をもって噛み合うようになっている。そして、当該回転中に、1対のギアロール131及び132の間を肌側シート連続体22a(23a)が伸長した状態でMD方向に沿って通過する。
【0106】
1対のギアロール131及び132の間を通過中の肌側シート連続体22a(23a)は、一方のギアロール132において互いに隣り合う山部132m,132m同士と、その間の谷部132vに入り込む他方のギアロール131の山部131mとによって、三点曲げ状に変形される(図14参照)。このとき、肌側シート連続体22a(23a)において一方のギアロール132の山部132mの頂面と当接する第1部分Saは、当該頂面に概ね相対移動不能に当接するため、延伸されにくい。一方、隣り合う二つの第1部分Sa,Sa同士の間の第2部分Sbは、山部131mの入り込みに基づいて延伸される。その結果、肌側シート連続体22a(23a)は、図14に示されるように、延伸された第2部分Sbと、第2部分Sbよりも延伸され難い第1部分SaとがMD方向に交互に並ぶように加工される。そして、第2部分Sbの領域では、肌側シート連続体22a(23a)を構成する不織布の伸長性繊維が部分的に引き延ばされる。つまり、1対のギアロール131及び132の間を通過することにより、肌側シート連続体22a(23a)において、少なくとも一部の伸長性繊維が伸長された状態となる。これにより、肌側シート連続体22a(23a)は伸縮性繊維の弾性変形に基づいてMD方向に沿った伸縮性を発現する。
【0107】
なお、肌側シート連続体22a(23a)に延伸処理を施す際には、不図示の加熱装置を用いて、該肌側シート連続体22a(23a)を予め加熱しておくことで、伸長性繊維が切断されたり、不織布自体が破れたりしないようにすることが望ましい。加熱時の条件(加熱温度や加熱時間等)は、不織布を構成する繊維の種類やその融点等に応じて適宜調整される。
【0108】
次いで、MD搬送方向に搬送される非肌側シート21の肌側面に、同じくMD方向に搬送される肌側シート連続体22a及び23aの非肌側面を重ねて接合し、外装部材20を形成する外装部材形成工程が行われる(S104)。外装部材形成工程では、MD方向の所定位置に設けられた超音波溶着機構140によって、非肌側シート連続体21a及び肌側シート連続体22a(23a)の所定位置に超音波振動及び圧力を加える超音波溶着を実施する。これにより、上述した複数の溶着部90(91,92、図6参照)によって非肌側シート連続体21aと肌側シート連続体22a(23a)とが接合され、外装部材20がMD方向(パンツ型状態における左右方向)に連なった状態の外装部材連続体20aとなる。
【0109】
次いで、外装部材連続体20aの肌側の所定位置に、吸収性本体10を転写する転写工程が行われる(S105)。転写工程では、吸収性本体転写機構150に設けられた転写ドラム151によって、外装部材連続体20aに吸収性本体10が転写される。
【0110】
転写ドラム151の外周面には、吸収性本体10が、周方向に沿って所定の間隔を置いて複数保持されている。各々の吸収性本体10は、肌側面が転写ドラム151の外周面と対向するように保持されており、非肌側面には接着剤が塗布されている。かかる状態の転写ドラム151を所定の速度で回転させ、外装部材連続体20aの肌側面と吸収性本体10の非肌側面とが接触するタイミングで、転写ドラム151の吸収性本体10の保持を解除する。そして、転写ドラム151と非肌側に設けられた転写ドラム152とで厚さ方向に挟み込むようにして吸収性本体10を外装部材連続体20aに押し付けることにより、吸収性本体10が外装部材連続体20aに接合される。
【0111】
その後、吸収性本体10が転写された外装部材連続体20aに対して、脚回り開口1bを形成するためのカッティングが実施され、また、外装部材20の折り返し部20bf,20bnが形成される(図11及び図12では不図示)。
【0112】
次いで、吸収性本体10及び外装部材連続体20aを、CD方向の所定位置にて二つ折りにする折り曲げ工程が行われる(S106)。折り曲げ工程では、折り曲げ機構160によって、吸収性本体10及び外装部材連続体20aを、図2の縦方向における中央位置CLに相当する位置を折り目としてCD方向に二つ折りにして、折り曲げられた外装部材連続体20a,20a同士が厚さ方向に重ね合わされた状態とする。
【0113】
次いで、各々のナプキン1の横方向の両側部20fe,20beに対応する位置にて、厚さ方向に重ね合わされた外装部材連続体20a,20a同士を接合する接合工程が行われる(S107)。接合工程では、接合機構170によってCD方向に沿ったシール接合が行われ、CD方向に沿って間欠的に並ぶ複数の個別接合部61,62からなるサイド接合部60が形成される。これにより、図7に示されるようなパンツ型形状のナプキン1がMD方向に沿って複数連続した状態となる。
【0114】
次いで、MD方向に搬送されるパンツ型ナプキン1の連続体を、個々のパンツ型ナプキン1,1…に切断する切断工程が行われる(S108)。切断工程では、切断機構180に設けられたカッターロール181,182によって、MD方向に連続したパンツ型ナプキン1の連続体を、MD方向における所定位置(ナプキン1の横方向における両端位置)ごとに切断する。これにより、個々のパンツ型ナプキン1が製造される。
【0115】
製造されたパンツ型ナプキン1は、切断機構180よりもMD方向の下流側にてそれぞれ折り畳まれ、包装材によって1個ずつまたは複数個ずつパッキングされ、梱包された後、出荷される。
【0116】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0117】
上述の実施形態では、パンツ型吸収性物品の一例としてナプキン1について説明されていたが、本発明は、ナプキン以外の他の吸収性物品にも適用可能である。例えば、パンツ型吸収性物品は、子供用や成人用のパンツ型のおむつや、パンツ型吸収パッド等であっても良い。
【0118】
上述の実施形態では、パンツ型吸収性物品の一例として、外装部材20が縦方向の一方側(前側)から他方側(後側)まで連続して一体的に構成されたナプキン1について説明されていたが(図2等参照)、外装部材20が前側と後側とで別体として構成されていてもよい。すなわち、前側外装部材(前側胴回り部)、後側外装部材(後側胴回り部)、及び、吸収性本体の3部品からなる所謂3ピースタイプのパンツ型吸収性物品であっても良い。
【符号の説明】
【0119】
1 ナプキン(パンツ型吸収性物品)、
1a 胴回り開口、1b 脚回り開口、
10 吸収性本体、
11 吸収性コア、12 トップシート、13 セカンドシート、14 バックシート、15 サイドシート、15t 端部、18 本体接合部、19 バック‐サイド接合部、
20 外装部材、20fe 両側部、20be 両側部、
21 非肌側シート、21ff 折り返し部、21bf 折り返し部、
22 肌側シート、23 肌側シート、
25f 胴回り弾性部材、25b 胴回り弾性部材、
30 防漏壁部、
31 防漏壁弾性部材、
40 高密度部(線状圧搾部)、
50 吸収体弾性部材、50A 股下弾性領域、
60 サイド接合部、
61 個別接合部、62 個別接合部、
70 開孔、70A 開孔領域、
70f 折り返し開孔、70i 非折り返し開孔、
71 開孔縁突出部(肌側)、72 開孔縁突出部(非肌側)、
80 融着部、
90 溶着部、
91 溶着部、92 溶着部、
100 製造装置、
110 搬送機構、
120 開孔機構、121 ピン、
130 延伸機構、
131 ギアロール、131m 山部、131v 谷部、
132 ギアロール、132m 山部、132v 谷部、
140 超音波溶着機構、
150 吸収性本体転写機構、151 転写ドラム、152 転写ドラム、
160 折り曲げ機構、
170 接合機構、
180 切断機構、181 カッターロール、182 カッターロール、
1a 胴回り開口、1b 脚回り開口、
CL 中央位置、
FL20f 前側折り曲げ位置、FL20b 後側折り曲げ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14