(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177095
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】仮固定用積層体、仮固定用積層フィルム、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231206BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231206BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231206BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231206BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231206BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231206BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20231206BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20231206BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231206BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/78 M
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
C09J7/30
C09J201/00
C09J5/00
H01L21/56 R
B32B7/06
B32B15/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089808
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕紀子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】赤須 雄太
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 笑
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5F057
5F061
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
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(57)【要約】
【課題】支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程を備える半導体装置の製造方法に好適に用いることができ、より低い光照射エネルギーで、加工後の半導体部材を支持部材から分離することが可能な仮固定用積層フィルム及び仮固定用積層体を提供すること。
【解決手段】半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる仮固定用積層体20が提供される。当該仮固定用積層体20は、支持部材22と、支持部材22上に設けられた仮固定材層10Aとを備える。仮固定材層10Aは、第1の硬化性樹脂層14と、金属層12と、第2の硬化性樹脂層16とを支持部材22からこの順に有する。金属層12の厚さは、1μm以上である。第2の硬化性樹脂層16の厚さは、第1の硬化性樹脂層14の厚さに対して2~10倍である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、前記支持部材上に設けられた仮固定材層とを備え、
前記仮固定材層が、第1の硬化性樹脂層と、金属層と、第2の硬化性樹脂層とを前記支持部材からこの順に有し、
前記金属層の厚さが1μm以上であり、
前記第2の硬化性樹脂層の厚さが、前記第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~10倍であり、
半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる、
仮固定用積層体。
【請求項2】
前記第1の硬化性樹脂層の厚さが1~50μmである、
請求項1に記載の仮固定用積層体。
【請求項3】
第1の硬化性樹脂層と、金属層と、第2の硬化性樹脂層とを有し、
前記金属層の厚さが1μm以上であり、
前記第2の硬化性樹脂層の厚さが、前記第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~10倍であり、
半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる、
仮固定用積層フィルム。
【請求項4】
前記第1の硬化性樹脂層の厚さが1~50μmである、
請求項3に記載の仮固定用積層フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の仮固定用積層体を準備する工程と、
半導体部材を、前記仮固定材層を介して前記支持部材に対して仮固定する工程と、
前記支持部材に対して仮固定された前記半導体部材を加工する工程と、
前記仮固定用積層体の前記金属層に対して前記支持部材側から光を照射して、前記支持部材から前記半導体部材を分離する工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記光が、少なくとも赤外光を含む光である、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮固定用積層体、仮固定用積層フィルム、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、半導体ウェハ、半導体チップ等の半導体基板に集積回路を組み入れた後で、半導体基板を有する半導体部材を加工することがある。半導体部材には、例えば、裏面の研削、ダイシングによる個片化等の加工処理が施される。半導体部材は、通常、支持部材に仮固定された状態で加工され、その後で半導体部材が支持部材から分離される。例えば、特許文献1、2は、仮固定材層に光(レーザー光)を照射することによって、半導体部材を支持部材から分離する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-138182号公報
【特許文献2】特開2013-033814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程を備える半導体装置の製造方法に好適に用いることができ、より低い光照射エネルギーで、加工後の半導体部材を支持部材から容易に分離することが可能な仮固定用積層フィルム及び仮固定用積層体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが上記課題を解決すべく検討したところ、支持部材と、第1の硬化性樹脂層と、金属層と、第2の硬化性樹脂層とをこの順に有する仮固定用積層体に、半導体ウェハが配置されている状態を解析モデルとした応力解析において、第1の硬化性樹脂層の厚さ及び第2の硬化性樹脂層の厚さに依存して、光照射時に金属層上面で発生する第2の硬化性樹脂層の最大主応力が変化することが見出された。本発明者らのさらなる検討によると、第2の硬化性樹脂層の厚さが第1の硬化性樹脂層の厚さに対して所定の範囲にあることにより、光照射時に金属層上面で発生する第2の硬化性樹脂層の最大主応力が大きくなり、加工後の半導体部材を支持部材から容易に分離することが可能であることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本開示は、[1]及び[2]に記載の仮固定用積層体、[3]及び[4]に記載の仮固定用積層フィルム、並びに[5]及び[6]に記載の半導体装置の製造方法を提供する。
[1]支持部材と、前記支持部材上に設けられた仮固定材層とを備え、前記仮固定材層が、第1の硬化性樹脂層と、金属層と、第2の硬化性樹脂層とを前記支持部材からこの順に有し、前記金属層の厚さが1μm以上であり、前記第2の硬化性樹脂層の厚さが、前記第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~10倍であり、半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる、仮固定用積層体。
[2]前記第1の硬化性樹脂層の厚さが1~50μmである、[1]に記載の仮固定用積層体。
[3]第1の硬化性樹脂層と、金属層と、第2の硬化性樹脂層とを有し、前記金属層の厚さが1μm以上であり、前記第2の硬化性樹脂層の厚さが、前記第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~10倍であり、半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられる、仮固定用積層フィルム。
[4]前記第1の硬化性樹脂層の厚さが1~50μmである、[3]に記載の仮固定用積層フィルム。
[5][1]又は[2]に記載の仮固定用積層体を準備する工程と、半導体部材を、前記仮固定材層を介して前記支持部材に対して仮固定する工程と、前記支持部材に対して仮固定された前記半導体部材を加工する工程と、前記仮固定用積層体の前記金属層に対して前記支持部材側から光を照射して、前記支持部材から前記半導体部材を分離する工程とを備える、半導体装置の製造方法。
[6]前記光が、少なくとも赤外光を含む光である、[5]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程を備える半導体装置の製造方法に好適に用いることができ、より低い光照射エネルギーで、加工後の半導体部材を支持部材から容易に分離することが可能な仮固定用積層フィルム及び仮固定用積層体が提供される。また、本開示によれば、このような仮固定用積層体を用いた半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、仮固定用積層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、仮固定用積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0010】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0013】
本明細書中、以下で例示する材料は、特に断らない限り、条件に該当する範囲で、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
[仮固定用積層フィルム]
図1は、仮固定用積層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示される仮固定用積層フィルム10は、半導体部材と支持部材とを仮固定するために用いられるものである。より具体的には、仮固定用積層フィルム10は、半導体装置の製造において、半導体部材を加工する間、半導体部材を支持部材に対して一時的に固定するための層(仮固定材層)を形成するために用いられるものである。仮固定用積層フィルム10は、第1の硬化性樹脂層14と、金属層12と、第2の硬化性樹脂層16とをこの順に有する。言い換えれば、仮固定用積層フィルム10は、金属層12と、金属層12の第1の面12a上に設けられた第1の硬化性樹脂層14と、金属層12の第1の面12aの反対側の面である第2の面12b上に設けられた第2の硬化性樹脂層16とを有するということができる。
【0015】
金属層12は、光(赤外光を含む光)を吸収して熱を発生する金属からなる層であり得る。金属層12は、光(赤外光を含む光)を吸収して熱を発生する金属からなる金属箔であってよい。このような金属層12(又は金属箔)を構成する金属としては、例えば、銀、金、白金、銅、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、アルミニウム等の単一金属;SUS、ニクロム、ジュラルミン、青銅、白銅、黄銅、鋼等の合金などが挙げられる。金属層12(又は金属箔)を構成する金属は、高膨張係数、高熱伝導等の観点から、銀、金、白金、銅、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、銅であってもよい。金属箔は、銅箔であってよい。金属箔は、例えば、光沢を有する光沢面と光沢を有しない非光沢面とを含んでいてもよい。仮固定用積層フィルム10の第1の硬化性樹脂層14を支持部材に貼り付けて仮固定材層を形成する場合、光照射における光の反射を抑えられることから、仮固定用積層フィルム10における金属層12の第1の面12aが非光沢面であることが好ましい。
【0016】
金属層12の厚さd0は、仮固定用積層フィルムの製造時の取扱性等の観点から、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であってよい。金属層12の厚さd0は、放熱抑制による温度上昇の促進等の観点から、例えば、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0017】
第1の硬化性樹脂層14及び第2の硬化性樹脂層16は、熱又は光によって硬化する硬化性樹脂組成物を含有する層であり、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後に加熱処理によって硬化(Cステージ)状態となり得るものであってよい。第1の硬化性樹脂層14における硬化性樹脂組成物及び第2の硬化性樹脂層16における硬化性樹脂組成物は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。仮固定用積層フィルムの製造の観点から、第1の硬化性樹脂層14における硬化性樹脂組成物(硬化性樹脂組成物を構成する各成分)及び第2の硬化性樹脂層16における硬化性樹脂組成物(硬化性樹脂組成物を構成する各成分)は互いに同一であることが好ましい。
【0018】
Bステージとは、ある種の熱硬化性樹脂の反応において、材料がある種の液体に接触する場合には膨潤しかつ加熱する場合には軟化するが、しかし完全には溶解又は溶融しない中間段階を意味し、Cステージとは、ある種の熱硬化性樹脂の反応において、その材料が事実上不溶不融となる最終段階を意味する。
【0019】
硬化性樹脂組成物は、例えば、一実施形態において、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む。このとき、硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤、重合性モノマー、重合開始剤、その他の成分等をさらに含んでいてもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有する樹脂、又は少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であってよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、炭化水素樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、石油樹脂、ノボラック樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、熱可塑性樹脂は、炭化水素樹脂であってよい。
【0021】
炭化水素樹脂は、主骨格が炭化水素で構成される樹脂である。このような炭化水素樹脂としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ノルボルネン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらの炭化水素樹脂は、水添処理が施されていてもよい。また、これらの炭化水素樹脂は、無水マレイン酸等によってカルボキシ変性されていてもよい。これらのうち、炭化水素樹脂は、スチレンに由来するモノマー単位を含む炭化水素樹脂(スチレン系樹脂)を含んでいてもよく、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)を含んでいてもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂のTgは、-100~500℃、-50~300℃、又は-50~50℃であってよい。熱可塑性樹脂のTgが500℃以下であると、フィルム状の仮固定材を形成したときに、柔軟性を確保し易く、低温貼付性を向上させることができる傾向にある。熱可塑性樹脂のTgが-100℃以上であると、フィルム状の仮固定材を形成したときに、柔軟性が高くなり過ぎることによる取扱性及び剥離性の低下を抑制できる傾向にある。
【0023】
熱可塑性樹脂のTgは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる中間点ガラス転移温度値である。熱可塑性樹脂のTgは、具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121に準拠した方法によって算出される中間点ガラス転移温度である。
【0024】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~500万又は10万~200万であってよい。重量平均分子量が1万以上であると、樹脂層の耐熱性を確保し易くなる傾向にある。重量平均分子量が500万以下であると、フィルム状の樹脂層を形成したときに、フローの低下及び貼付性の低下を抑制し易い傾向にある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0025】
熱可塑性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、40~90質量部であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、50質量部以上又は60質量部以上であってもよく、85質量部以下又は80量部以下あってもよい。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲にあると、樹脂層の薄膜形成性及び平坦性により優れる傾向にある。
【0026】
熱硬化性樹脂は、熱により硬化する樹脂を意味し、上記炭化水素樹脂を包含しない概念である。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、熱硬化性樹脂は、耐熱性、作業性、及び信頼性により優れることから、エポキシ樹脂であってよい。熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂硬化剤(熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂硬化剤)と組み合わせて用いてもよい。
【0027】
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂は、例えば、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、又は複素環含有エポキシ樹脂であってもよい。これらの中でも、エポキシ樹脂は、耐熱性及び耐候性の観点から、脂環式エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0028】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化剤を含んでいてもよい。エポキシ樹脂硬化剤は、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0029】
熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂硬化剤の合計の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、10~60質量部であってよい。熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂硬化剤の合計の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、15質量部以上又は20質量部以上であってもよく、50質量部以下又は40質量部以下であってもよい。熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂硬化剤の合計の含有量が上記範囲にあると、樹脂層の薄膜形成性、平坦性、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0030】
硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂硬化剤の総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性が向上し、耐熱性がより優れる傾向にある。
【0032】
硬化性樹脂組成物は、重合性モノマー及び重合開始剤をさらに含んでいてもよい。重合性モノマーは、加熱又は紫外光等の照射によって重合するものであれば特に制限されない。重合性モノマーは、材料の選択性及び入手の容易さの観点から、例えば、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有する化合物であってよい。重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ビニルアミド、アリール化ビニル等が挙げられる。これらのうち、重合性モノマーは、(メタ)アクリレートであってもよい。(メタ)アクリレートは、単官能(1官能)、2官能、又は3官能以上のいずれであってもよいが、充分な硬化性を得る観点から、2官能以上の(メタ)アクリレートであってもよい。
【0033】
重合性モノマーの含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、10~60質量部であってよい。
【0034】
重合開始剤は、加熱又は紫外光等の照射によって重合を開始させるものであれば特に制限されない。例えば、重合性モノマーとして、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いる場合、重合性開始剤は熱ラジカル重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤であってよい。
【0035】
重合開始剤の含有量は、重合性モノマーの総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。
【0036】
硬化性樹脂組成物は、絶縁性フィラー、増感剤、酸化防止剤等のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0037】
絶縁性フィラーは、樹脂層に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され得る。絶縁性フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、セラミック等の非金属無機フィラーなどが挙げられる。これらの絶縁性フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。絶縁性フィラーは、溶剤との分散性の観点から、その表面が表面処理剤で処理された粒子であってもよい。表面処理剤は、例えば、シランカップリング剤であってよい。
【0038】
絶縁性フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、5~20質量部であってよい。絶縁性フィラーの含有量が上記範囲内であると、光透過を妨げることなく耐熱性をより向上させることができる傾向にある。また、絶縁性フィラーの含有量が上記範囲内であると、軽剥離性にも寄与する可能性がある。
【0039】
増感剤としては、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンゾピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、1-クロロ-4‐プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0040】
増感剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、0.01~10質量部であってよい。増感剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性樹脂組成物の特性及び薄膜性への影響が少ない傾向にある。
【0041】
酸化防止剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体(ヒンダードフェノール誘導体)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。
【0042】
酸化防止剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であってよい。酸化防止剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性樹脂組成物の分解を抑制し、汚染を防ぐことができる傾向にある。
【0043】
硬化性樹脂組成物は、第1の硬化性樹脂層14の主成分又は第2の硬化性樹脂層16の主成分であり得る。硬化性樹脂組成物の含有量は、第1の硬化性樹脂層14の総量又は第2の硬化性樹脂層16の総量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は100質量%であってよい。
【0044】
第1の硬化性樹脂層14の厚さd1は、光透過性の観点から、例えば、1~50μmであってよい。第1の硬化性樹脂層14の厚さd1は、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってもよく、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0045】
第2の硬化性樹脂層16の厚さd2は、光照射時に金属層上面で発生する第2の硬化性樹脂層の最大主応力の観点から、第1の硬化性樹脂層14の厚さよりも大きく、第2の硬化性樹脂層の厚さd2は、第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~10倍である。第2の硬化性樹脂層の厚さd2は、第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~8倍、2~6倍、又は2~4倍であってよい。第2の硬化性樹脂層16の厚さd2の上限は、例えば、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0046】
仮固定用積層フィルム10(第1の硬化性樹脂層14、金属層12、及び第2の硬化性樹脂層16の合計)の厚さは、仮固定用積層フィルムの取扱性の観点から、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上であってよく、光照射による易剥離性の観点から、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0047】
[仮固定用積層フィルムの製造方法]
一実施形態の仮固定用積層フィルム10の製造方法は、金属層12の一方の面側に第1の硬化性樹脂層14を設けるとともに、金属層12の他の一方の面側に第2の硬化性樹脂層16を設け、仮固定用積層フィルム10を得る工程を備える。言い換えれば、仮固定用積層フィルム10の製造方法は、金属層12の第1の面12a側に第1の硬化性樹脂層14を設けるとともに、金属層12の第1の面12aの反対側の面である第2の面12b側に第2の硬化性樹脂層16を設け、仮固定用積層フィルム10を得る工程を備える。金属層12は、金属箔であり得る。
【0048】
仮固定用積層フィルム10の製造方法は、例えば、金属層12の一方の面(第1の面12a)側に、第1の硬化性樹脂層14を設ける工程(第1の工程)と、金属層12の他の一方の面(第2の面12b)側に、第2の硬化性樹脂層16を設ける工程(第2の工程)とを備えるものであってよい。仮固定用積層フィルム10の製造方法は、金属層12の両面に、硬化性樹脂層(第1の硬化性樹脂層14及び第2の硬化性樹脂層16)を設けることができるのであれば、第1の工程及び第2の工程の順序は特に制限されない。
【0049】
第1の工程では、例えば、まず、硬化性樹脂組成物の各成分を、溶剤中で撹拌混合、混錬等を行うことによって、溶解又は分散させ、硬化性樹脂組成物のワニスを調製する。その後、離型処理を施した支持フィルム上に、硬化性樹脂組成物のワニスをナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗工した後、加熱によって溶剤を揮発させて、支持フィルム上に第1の硬化性樹脂フィルムを形成する。このとき、硬化性樹脂組成物のワニスの塗工量を調整することによって、第1の硬化性樹脂フィルム(さらには第1の硬化性樹脂層14)の厚さを調整することができる。次いで、金属層12の一方の面側に第1の硬化性樹脂フィルムを貼り付けることによって、第1の硬化性樹脂層14を設けることができる。
【0050】
硬化性樹脂組成物のワニスの調製において使用される溶剤は、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものであれば特に制限されない。このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、トルエン、キシレン、ヘプタン、又はシクロヘキサノンであってもよい。ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0051】
硬化性樹脂組成物のワニスの調製の際の撹拌混合又は混錬は、例えば、撹拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ホモディスパー等を用いて行うことができる。
【0052】
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、液晶ポリマのフィルム等が挙げられる。支持フィルムの厚さは、例えば、1~250μmであってよい。
【0053】
支持フィルムへ塗工した硬化性樹脂組成物のワニスから溶剤を揮発させる際の加熱条件は、使用する溶剤等に合わせて適宜設定することができる。加熱条件は、例えば、40~120℃で0.1~30分間であってよい。
【0054】
金属層12の一方の面に第1の硬化性樹脂フィルムを貼り付ける方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、0~120℃の温度条件下で行うことができる。
【0055】
第1の硬化性樹脂フィルムの厚さは、光透過性の観点から、例えば、1~50μmであってよい。第1の硬化性樹脂層14の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってもよく、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0056】
第1の硬化性樹脂層14は、硬化性樹脂組成物を金属層12の一方の面に直接塗工することによっても形成することができる。硬化性樹脂組成物のワニスを用いる場合、硬化性樹脂組成物のワニスを金属層12の一方の面に塗工し、溶剤を加熱によって揮発することによっても形成することができる。
【0057】
第2の工程では、第1の工程と同様にして、第2の硬化性樹脂フィルムを作製し、金属層12の他の一方の面側に第2の硬化性樹脂フィルムを貼り付けることによって、第2の硬化性樹脂層16を設けることができる。第2の硬化性樹脂層16は、硬化性樹脂組成物を金属層12の他の一方の面に直接塗工することによっても形成することができる。硬化性樹脂組成物のワニスを用いる場合、硬化性樹脂組成物のワニスを金属層12の他の一方の面に塗工し、溶剤を加熱によって揮発することによっても形成することができる。このようにして、仮固定用積層フィルム10を得ることができる。
【0058】
第2の硬化性樹脂フィルムの厚さは、光照射時に金属層上面で発生する第2の硬化性樹脂層の最大主応力の観点から、第1の硬化性樹脂フィルムの厚さよりも大きく、第2の硬化性樹脂フィルムの厚さは、第1の硬化性樹脂フィルムの厚さに対して2~10倍である。第2の硬化性樹脂フィルムの厚さは、第1の硬化性樹脂フィルムの厚さに対して2~8倍、2~6倍、又は2~4倍であってよい。第2の硬化性樹脂フィルムの厚さの上限は、例えば、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0059】
仮固定用積層フィルム10の製造方法は、例えば、第1の硬化性樹脂フィルムと、金属層(金属箔)と、第2の硬化性樹脂フィルムとをこの順に積層した積層体を準備する工程と、当該積層体における第1の硬化性樹脂フィルム及び第2の硬化性樹脂フィルムを金属層(金属箔)の両面に貼り付ける工程とを備えるものであってもよい。このような製造方法であれば、硬化性樹脂フィルムの貼り付けプロセスが1回になることから、より効率よく仮固定用積層フィルム10を製造することができる。第1の硬化性樹脂フィルム及び第2の硬化性樹脂フィルムを金属箔の両面に貼り付ける方法は、第1の工程と同様であってよい。
【0060】
[仮固定用積層体]
図2は、仮固定用積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2で示される仮固定用積層体20は、支持部材22と、支持部材22上に設けられた仮固定材層10Aとを備える。仮固定材層10Aは、第1の硬化性樹脂層14と、金属層12と、第2の硬化性樹脂層16とを支持部材22からこの順に備える。すなわち、仮固定材層10Aは、金属層12と、金属層12の第1の面12a上に設けられた第1の硬化性樹脂層14と、金属層12の第1の面12aの反対側の面である第2の面12b上に設けられた第2の硬化性樹脂層16とを備えている。第2の硬化性樹脂層16は、仮固定材層10Aの支持部材22とは反対側の最表面Sを含む。このような仮固定用積層体20によれば、第1の硬化性樹脂層14と、金属層12と、第2の硬化性樹脂層16とをこの順に備える仮固定材層10Aを備えることから、より低い光照射エネルギーで仮固定された半導体部材を支持部材から分離することが可能となる。
【0061】
金属層12は、例えば、光沢を有する光沢面と光沢を有しない非光沢面とを含んでいてもよい。このとき、金属層12の第1の面12aは、光照射における光の反射を抑えることができることから、非光沢面であってよい。
【0062】
仮固定用積層体20の製造方法は、所定の構成を有する積層体が得られるのであれば特に制限されない。仮固定用積層体20は、例えば、支持部材22上に上記の仮固定用積層フィルム10を貼り付ける工程を含む方法によっても得ることができる。この場合、仮固定材層10Aは、上記の仮固定用積層フィルム10からなる層であり得る。支持部材22上に仮固定用積層フィルム10の第1の硬化性樹脂層14を貼り付ける場合、仮固定用積層フィルム10における金属層12の第1の面12aは非光沢面であってよい。
【0063】
支持部材22は、高い透過率を有し、半導体部材の加工時に受ける負荷に耐え得る板状体である。支持部材22としては、例えば、無機ガラス基板、透明樹脂基板等が挙げられる。
【0064】
支持部材22の厚さは、例えば、0.1~2.0mmであってよい。支持部材22の厚さが0.1mm以上であると、ハンドリングが容易となる傾向にある。支持部材22の厚さが2.0mm以下であると、材料費を抑制することができる傾向にある。
【0065】
支持部材22上に上記の仮固定用積層フィルム10を貼り付ける方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、0~120℃の温度条件下で行うことができる。
【0066】
仮固定用積層体20は、支持部材22上に上記の仮固定用積層フィルム10を貼り付ける工程を含む方法以外の方法によっても得ることができる。仮固定用積層体20は、例えば、支持部材22を準備する工程と、当該支持部材22上に、第1の硬化性樹脂層14、金属層12、及び第2の硬化性樹脂層16を積層させて貼り合わせる工程とを含む方法、支持部材及び支持部材上に設けられた第1の硬化性樹脂層を備える第1の積層体、及び、金属層(金属箔)及び金属層(金属箔)上に設けられた第2の硬化性樹脂層を備える第2の積層体を準備する工程と、第1の積層体の第1の硬化性樹脂層14と第2の積層体の金属層12とを貼り合わせる工程とを含む方法等によっても得ることができる。
【0067】
[半導体装置の製造方法]
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記の仮固定用積層体を準備する工程(準備工程)と、半導体部材を、仮固定材層を介して支持部材に対して仮固定する工程(仮固定工程)と、支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程(加工工程)と、仮固定用積層体に対して支持部材側から光を照射して、支持部材から半導体部材を分離する工程(分離工程)とを備える。このような半導体装置の製造方法によれば、上記の仮固定用積層体を用いることから、より低い光照射エネルギーで仮固定された半導体部材を支持部材から分離することが可能となる。
【0068】
(準備工程)
準備工程では、半導体装置を製造するために、半導体部材を加工する間、半導体部材を支持部材に対して仮固定するための上記の仮固定用積層体20が準備される。
【0069】
(仮固定工程)
図3(a)及び
図3(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。仮固定工程では、半導体部材40が、仮固定材層10Aを介して支持部材22に対して仮固定される。仮固定材層10Aの半導体部材が仮固定される側の最表面Sは、第2の硬化性樹脂層16の表面である。例えば、第2の硬化性樹脂層16上に半導体部材40が配置された状態(
図3(a)参照)で第2の硬化性樹脂層16(及び第1の硬化性樹脂層14)を硬化させることによって、半導体部材40を支持部材22に対して仮固定することができる(
図3(b)参照)。言い換えると、半導体部材40が、硬化した第2の硬化性樹脂層16c(及び硬化した第1の硬化性樹脂層14c)を有する仮固定材層10Acを介して支持部材22に対して一時的に接着され得る。このようにして、仮固定用積層体20cが形成される。
【0070】
半導体部材40は、半導体ウェハ、半導体チップ等の半導体基板42を有する部材であってよい。半導体部材40は、例えば、再配線層44と半導体基板42とを有する再配線層付き半導体チップであってよい。半導体部材40が再配線層付き半導体チップである場合、再配線層付き半導体チップは、再配線層が第2の硬化性樹脂層16側に位置する向きで、仮固定材層10Aを介して支持部材22に対して仮固定される。半導体部材40は、外部接続端子をさらに有していてもよい。
図3(a)の例では、複数の半導体部材40が第2の硬化性樹脂層16に配置されているが、半導体部材40の数は1個であってもよい。半導体部材40の厚さは、半導体装置の小型化、薄型化に加えて、搬送時、加工工程等の際の割れ抑制の観点から、1~1000μm、10~500μm、又は20~200μmであってもよい。
【0071】
第2の硬化性樹脂層16上に配置された半導体部材40は、例えば、真空プレス機又は真空ラミネータを用いて第2の硬化性樹脂層16に対して圧着される。真空プレス機を用いる場合、圧着の条件は、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度120~200℃、及び保持時間100~300秒間であってよい。真空ラミネータを用いる場合、圧着の条件は、例えば、気圧1hPa以下、圧着温度60~180℃又は80~150℃、ラミネート圧力0.01~1.0MPa又は0.1~0.7MPa、保持時間1~600秒間又は30~300秒間であってよい。
【0072】
第2の硬化性樹脂層16上に半導体部材40が配置された後、第2の硬化性樹脂層16(及び第1の硬化性樹脂層14)を熱硬化又は光硬化させることによって、半導体部材40が、硬化した第2の硬化性樹脂層16c(及び硬化した第1の硬化性樹脂層14c)を有する仮固定材層10Acを介して、支持部材22に対して仮固定される。熱硬化の条件は、例えば、300℃以下又は100~250℃で、1~180分間又は1~120分間であってよい。
【0073】
(加工工程)
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は、は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。加工工程では、支持部材22に対して仮固定された半導体部材40が加工される。
図4(a)は、半導体基板の薄化を含む加工の例を示す。半導体部材の加工は、これに限定されず、例えば、半導体基板の薄化、半導体部材の分割(ダイシング)、貫通電極の形成、エッチング処理、めっきリフロー処理、スパッタリング処理、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0074】
半導体部材40の加工の後、
図4(b)に示されるように、加工された半導体部材40を封止する封止層50が形成される。封止層50は、半導体素子の製造のために通常用いられる封止材を用いて形成することができる。例えば、封止層50を熱硬化性樹脂組成物によって形成してもよい。封止層50に用いられる熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂などが挙げられる。封止層50及び封止層50を形成するための熱硬化性樹脂組成物は、フィラー、及び/又は難燃剤等の添加剤を含んでもよい。
【0075】
封止層50は、例えば、固形材、液状材、細粒材、又は封止フィルムを用いて形成される。封止フィルムを用いる場合、コンプレッション封止成形機、真空ラミネート装置等が用いられる。例えば、これら装置を用いて、40~180℃(又は60~150℃)、0.1~10MPa(又は0.5~8MPa)、かつ0.5~10分間の条件で熱溶融させた封止フィルムで半導体部材40を被覆することによって、封止層50を形成することができる。封止フィルムの厚さは、封止層50が加工後の半導体部材40の厚さ以上になるように調整される。封止フィルムの厚さは、50~2000μm、70~1500μm、又は100~1000μmであってよい。
【0076】
封止層50を形成した後、
図4(c)に示されるように、封止層50及び硬化した第2の硬化性樹脂層16cを、半導体部材40を1個ずつ含む複数の部分に分割してもよい。
【0077】
(分離工程)
図5(a)及び
図5(b)は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。分離工程では、仮固定用積層体に対して支持部材側から光を照射して、支持部材から半導体部材が分離される。
【0078】
図5(a)に示されるように、仮固定用積層体20cの金属層12に対して支持部材22側から光Aを照射して、支持部材22から半導体部材40を分離する。光Aの照射によって、金属層12が光を吸収して熱を瞬間的に発生する。発生した熱によって、例えば、硬化した第1の硬化性樹脂層14c及び/又は硬化した第2の硬化性樹脂層16cの溶融、支持部材22と半導体部材40との間に生じる熱応力、及び金属層12の飛散が生じ得る。これらの現象のうち1つ又は2つ以上が主な原因となって、凝集剥離、界面剥離等が発生して、半導体部材40が支持部材22から容易に分離し得る。半導体部材40を支持部材22から分離するために、光Aの照射とともに、半導体部材40に対して応力をわずかに加えてもよい。
【0079】
光Aは、少なくとも赤外光を含む。赤外光の波長は、通常、700nm~1mmである。
【0080】
分離工程における光Aは、コヒーレント光であってよい。コヒーレント光は、可干渉性が高い、指向性が高い、単色性が高いといった性質を有する電磁波である。コヒーレント光は、同一波長で同位相の光が互いに強め合って合成されるため、強度が高い傾向を有する。レーザー光は、一般にコヒーレント光である。レーザー光は、YAGレーザー、ファイバレーザー、半導体レーザー、ヘリウムーネオンレーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。レーザー光の波長は、1300nm以下であってもよい。波長が1300nm以下であることにより、支持部材22の光吸収が抑制され、かつ、金属層12の光吸収が高くなるため、より低い光照射エネルギーではく離することが可能である。コヒーレント光は、パルス光であってもよい。
【0081】
分離工程における光Aは、インコヒーレント光であってよい。インコヒーレント光は、コヒーレントでない光であり、干渉縞が発生しない、可干渉性が低い、指向性が低いといった性質を有する電磁波である。インコヒーレント光は、光路長が長くなるほど、減衰する傾向を有する。太陽光、蛍光灯の光等の光は、インコヒーレント光である。インコヒーレント光は、レーザー光を除く光ということもできる。インコヒーレント光の照射面積は、一般にコヒーレント光(すなわち、レーザー光)よりも圧倒的に広いため、照射回数を少なくすることが可能である。例えば、1回の照射により、複数の半導体部材40の分離を生じさせ得る。インコヒーレント光は、赤外線を含んでいてもよい。インコヒーレント光は、パルス光であってもよい。
【0082】
光の光源は、特に制限されないが、キセノンランプであってよい。キセノンランプは、キセノンガスを封入した発光管での印加・放電による発光を利用したランプである。キセノンランプは、電離及び励起を繰り返しながら放電するため、紫外光領域から赤外光領域までの連続波長を安定的に有する。キセノンランプは、メタルハライドランプ等のランプと比較して始動に要する時間が短いため、工程に係る時間を大幅に短縮することができる。また、発光には、高電圧を印加する必要があるため、高熱が瞬間的に生じるが、冷却時間が短く、連続的な作業が可能な点でも、キセノンランプは有利である。
【0083】
キセノンランプの照射条件は、印加電圧、パルス幅、照射時間、照射距離(光源と仮固定材層との距離)、照射エネルギー等を含み、照射回数等に応じてこれらを任意に設定することができる。半導体部材40のダメージを低減する観点から、1回の照射で半導体部材40を分離できる照射条件を設定してもよい。
【0084】
分離した半導体部材40上に、硬化した第2の硬化性樹脂層16cの一部が残さとして付着することがある。付着した残さは、
図5(b)に示されるように除去される。付着した残さは、例えば、溶剤で洗浄することにより除去されてもよいし、ピールにより剥離されてもよい。溶剤としては、特に制限されないが、エタノール、メタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。付着した残さの除去のために、半導体部材40を溶剤に浸漬させてもよいし、超音波洗浄を行ってもよい。100℃以下程度の低温で半導体部材40を加熱してもよい。
【0085】
以上の例示された方法によって、加工された半導体部材40を備える半導体素子60を得ることができる。得られた半導体素子60を他の半導体チップ又は半導体素子搭載用基板に接続することによって半導体装置を製造することができる。
【実施例0086】
以下、本開示について、実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
(シミュレーションによる第2の硬化性樹脂層の最大主応力の算出)
シミュレーションは、解析シミュレーションソフトFemtet Version 2020.1(ムラタソフトウェア株式会社)を用いて3次元で行った。解析モデルは、支持部材と、第1の硬化性樹脂層と、金属層と、第2の硬化性樹脂層とをこの順に有する仮固定用積層体に、半導体ウェハが配置されている状態を対象とした。支持部材は、素材をガラスとし、サイズを1000μm×1000μm×700μm、メッシュを0.1mmとした。第1の硬化性樹脂層は、サイズを1000μm×1000μm×30μm、メッシュを0.05mmとした。金属層は、素材を銅とし、サイズを1000μm×1000μm×13.5μm、メッシュを0.05mmとした。第2の硬化性樹脂層は、サイズを1000μm×1000μm×80μm、メッシュを0.05mmとした。このような条件で、光照射時に金属層で発生する単位時間当たりの発熱量を220Wとし、0.0002秒間の光照射をしたと想定して、シミュレーション開始後0.0002秒の時点での最大主応力を評価対象とした。続いて、第1の硬化性樹脂層の厚さを5μm、15μm、25μm、35μmとし、第2の硬化性樹脂層の厚さをこれに合わせて変動させたものを解析モデルとし、金属層に対して220Wの発熱量を与えてシミュレーションを行い、応力解析により、シミュレーション開始後0.0002秒の時点での金属層上面で発生する第2の硬化性樹脂層の最大主応力を算出した。結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
表1に示すとおり、第2の硬化性樹脂層の厚さが、第1の硬化性樹脂層の厚さに対して2~10倍である実施例は、このような条件を満たさない比較例に比べて、光照射時に金属層上面で発生する第2の硬化性樹脂層の最大主応力が大きいことが判明した。第2の硬化性樹脂層の最大主応力が大きいと、半導体部材と支持部材との分離がより一層容易になることが推測される。このことから、本開示の仮固定用積層フィルム及び仮固定用積層体が、より低い光照射エネルギーで、加工後の半導体部材を支持部材から容易に分離することが可能であることが示唆された。
10…仮固定用積層フィルム、10A,10Ac…仮固定材層、12…金属層、12a…第1の面、12b…第2の面、14…第1の硬化性樹脂層、14c…硬化した第1の硬化性樹脂層、16…第2の硬化性樹脂層、16c…硬化した第2の硬化性樹脂層、20,20c…仮固定用積層体、22…支持部材、40…半導体部材、42…半導体基板、44…再配線層、50…封止層、60…半導体素子。