(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177168
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】化学センサ、電極の再生方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/48 20060101AFI20231206BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01N27/48 301
G01N27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089955
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 渉
(72)【発明者】
【氏名】平間 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】森田 伸友
(72)【発明者】
【氏名】竹村 謙信
(72)【発明者】
【氏名】大曲 新矢
(57)【要約】
【課題】連続的に使用でき環境モニタリングに適用できる化学センサ及び電極の再生方法を提供する。
【解決手段】流路21、液体収容部22、電解膜23、第1電極24及び第2電極25を有する再生部2と、2つの電極に電圧を印加する電圧印加手段3と、第1電極24に付着した測定対象物質110を検出する検出手段4とを備え、流路21と液体収容部22は電解膜23を介して接合し、流路21は測定対象物質110を含む試料溶液120を流す流路、液体収容部22は流路21内の試料溶液120に含まれるH
+又はOH
-を受容するイオン受容液体130を収容する容器又は流路である、化学センサ1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流路と、少なくとも1つの液体収容部と、前記流路と前記液体収容部の間に介在する電解膜と、前記流路内に配置される第1電極と、前記液体収容部内に配置される第2電極と、を有する再生部と、
前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記第1電極に付着した測定対象物質を検出する検出手段と、を備え、
前記流路と前記液体収容部は、互いに隣接する領域において、前記電解膜を介して接合し、
前記流路は測定対象物質を含む試料溶液を流す流路であり、前記液体収容部は前記流路内の試料溶液に含まれる水素イオンまたは水酸化物イオンを受容する液体を収容する容器または流路である、化学センサ。
【請求項2】
前記流路の長手方向に沿って、前記再生部を2つ以上備える、請求項1に記載の化学センサ。
【請求項3】
前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを検出するpH検出部を備える、請求項1に記載の化学センサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化学センサにおける電極の再生方法であって、
前記電圧印加手段により、前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加し、前記電解膜を介して、前記流路内の試料溶液に含まれる水素イオンまたは水酸化物イオンを前記液体収容部内の液体へ移動させるか、または前記液体収容部内の液体に含まれる水素イオンまたは水酸化物イオンを前記流路内の試料溶液へ移動させて、前記流路内において、前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを制御する、電極の再生方法。
【請求項5】
前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを8以上14以下に制御する、請求項4に記載の電極の再生方法。
【請求項6】
前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを1以上6以下に制御する、請求項4に記載の電極の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学センサ、および化学センサにおける電極の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業活動や日常生活において、多種多様な化学物質が利用されている。化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄・リサイクル等の各段階において適切な管理が行われない場合には、環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがある。また、環境の中で分解されにくく、生物中に蓄積され、長距離を移動して広範な環境汚染を引き起こすことがある残留性有機汚染物質(POPs、Persistent Organic Pollutants)がある。これらの物質は汚染防止の対象となっており、国際的に協調して廃絶・削除することが求められている。
【0003】
環境への化学物質の排出規制は、益々厳しくなっている。しかしながら、実環境下において、生態や環境への化学物質の影響について正しく理解することが難しい。そのような状況の中で、慢性的な化学物質の影響を評価することは難しい。そこで、工場等の排出源や、河川や水道等の生活環境中の化学物質を常時モニタリングすることが求められている。
【0004】
環境モニタリングを行う方法としては、例えば、気体熱伝導式ガスセンサ等の物理センサを用いる方法や、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)等の化学センサを用いる方法が知られている。
【0005】
従来の物理センサを用いる方法や、化学センサを用いる方法は、設備が大型で高価であるばかりではなく、測定対象の化学物質の前処理が必要であるため、環境モニタリングには適していなかった。そこで、本発明者等は、環境モニタリングを行う方法として、設備が小型で安価な電気化学センサを連続的に用いる方法を検討している。電気化学センサを用いて環境モニタリングを行う方法としては、例えば、アノーディックストリッピングボルタンメトリーによる重金属測定が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電気化学センサは、電極表面に汚れが付きやすく、その汚れによって性能が低下するという課題があった。そのため、電気化学センサでは、電極表面に付いた汚れを除去するために洗浄操作が必要である。電気化学センサは、前記の洗浄操作を行うために、連続的に使用することが難しかった。従って、電気化学センサは、環境モニタリングに適用することが難しかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、連続的に使用することができ、環境モニタリングに適用できる化学センサ、および化学センサにおける電極の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]少なくとも1つの流路と、少なくとも1つの液体収容部流路と、前記流路と前記液体収容部の間に介在する電解膜と、前記流路内に配置される第1電極と、前記液体収容部内に配置される第2電極と、を有する再生部と、
前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記第1電極に付着した測定対象物質を検出する検出手段と、を備え、
前記流路と前記液体収容部は、互いに隣接する領域において、前記電解膜を介して接合し、
前記流路は測定対象物質を含む試料溶液を流す流路であり、前記液体収容部は前記流路内の試料溶液に含まれる水素イオンまたは水酸化物イオンを受容する液体を収容する容器または流路である、化学センサ。
[2]前記流路の長手方向に沿って、前記再生部を2つ以上備える、[1]に記載の化学センサ。
[3]前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを検出するpH検出部を備える、[1]に記載の化学センサ。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の化学センサにおける電極の再生方法であって、
前記電圧印加手段により、前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加し、前記電解膜を介して、前記流路内の試料溶液に含まれる水素イオンまたは水酸化物イオンを前記液体収容部内の液体へ移動させるか、または前記液体収容部内の液体に含まれる水素イオンまたは水酸化物イオンを前記流路内の試料溶液へ移動させて、前記流路内において、前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを制御する、電極の再生方法。
[5]前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを8以上14以下に制御する、[4]に記載の電極の再生方法。
[6]前記第1電極およびその周辺を含む領域に存在する前記試料溶液のpHを1以上6以下に制御する、[4]に記載の電極の再生方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連続的に使用することができ、環境モニタリングに適用できる化学センサ、および化学センサにおける電極の再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る化学センサの概略構成を示し、化学センサの高さ方向に沿う断面を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る化学センサの第1変形例の概略構成を示し、化学センサの断面を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る化学センサの第2変形例の概略構成を示し、化学センサの断面を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る化学センサの第3変形例の概略構成を示し、化学センサの断面を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る化学センサの第4変形例の概略構成を示し、化学センサの断面を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る化学センサの第5変形例の概略構成を示し、化学センサの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化学センサ、および化学センサにおける電極の再生方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】
[化学センサ]
図1は、本発明の一実施形態に係る化学センサの概略構成を示し、化学センサの高さ方向に沿う断面を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の化学センサ1は、再生部2と、電圧印加手段3と、検出手段4と、を備える。
再生部2は、流路21と、液体収容部(以下、「第1液体収容部」と言う。)22と、流路21と、液体収容部22の間に介在する電解膜23と、第1電極24と、第2電極25と、を有する。
検出手段4は、電圧印加手段3と、流路21と、第2液体収容部31と、流路21と第2液体収容部31の間に介在する液洛部32と、流路21内に配置される第3電極33と、第2液体収容部31内に配置される第4電極34と、電気検出部5と、を有する。
また、本実施形態の化学センサ1は、再生部2を支持する基板6を備えていてもよい。
【0014】
本実施形態では、流路21と第1液体収容部22が隣接して配置されている。
流路21は、化学センサ1による測定対象物質(化学物質)110を含む試料溶液120を流す流路である。
第1液体収容部22は、流路21内の試料溶液120に含まれる水素イオン(H+)または水酸化物イオン(OH-)を受容する液体(以下、「イオン受容液体」と言う。)130を収容する容器または流路である。
【0015】
電解膜23は、流路21と第1液体収容部22の間に介在している。詳細には、
図1に示すように、流路21と第1液体収容部22は、互いに隣接する領域7において、電解膜23を介して接合している。言い換えれば、流路21と第1液体収容部22は、それぞれの一部同士が、領域7において電解膜23を介して互いに接合していればよく、その他の部分では接合していなくてもよく、その他の部分では隣接していなくてもよい。
【0016】
第1電極24は、作用電極であり、流路21内に配置されている。第1電極24は、流路21内において、電解膜23と対向する位置に配置されていることが好ましい。
第2電極25は、第1液体収容部22内に配置されている。第1液体収容部22内における第2電極25の位置は特に限定されないが、第2電極25は、電解膜23と対向する位置に配置されていることが好ましく、第1電極24と対向する位置に配置されていることがより好ましい。
第1電極24と第2電極25が、互いに対向する位置に配置されている場合と、互いに対向する位置に配置されていない場合も、化学センサ1による、第1電極24の再生能力にはほとんど差異がない。
【0017】
流路21と第2液体収容部31が隣接して配置されている。
第2液体収容部31は、第1液体収容部22内に収容されるイオン受容液体130と同様の液体を収容する容器または流路である。
【0018】
液洛部32は、流路21と第2液体収容部31の間に介在している。詳細には、
図1に示すように、流路21と第2液体収容部31は、互いに隣接する領域9において、液洛部32を介して接合している。言い換えれば、流路21と第2液体収容部31は、それぞれの一部同士が、領域9において液洛部32を介して互いに接合していればよく、その他の部分では接合していなくてもよく、その他の部分では隣接していなくてもよい。
【0019】
第3電極33と第4電極34が、互いに対向する位置に配置されている場合と、互いに対向する位置に配置されていない場合も、化学センサ1による、測定対象物質110の検出能力にはほとんど差異がない。
【0020】
電圧印加手段3は、第1電極24、第2電極25、第3電極33および第4電極34に接続されている。第1電極24と第2電極25に電圧を印加して、第1電極24(流路21)から第2電極25(第1液体収容部22)に向かう電界E、または第2電極25(液体収容部22)から第1電極24(流路21)に向かう電界Eを発生させる。
【0021】
検出手段4は、第1電極24に付着した測定対象物質を検出する。
【0022】
[流路]
流路21は、測定対象物質(化学物質)110を含む試料溶液120を流すことができれば特に限定されないが、例えば、ハイドロゲルモールディング法や、フォトリソグラフィー、ソフトリソグラフィー、切削加工、接合等の微細加工法、または、これらの微細加工法を組み合わせた方法によって、流路基材8に形成されたマイクロ流路であることが好ましい。言い換えれば、流路21は、基板6の一方の面6aに設けられた流路基材8に形成されたマイクロ流路であることが好ましい。マイクロ流路は、内径(最大径)がナノメートルからミリメートルのオーダーの流路である。流路21を用いることにより、化学センサ1により測定対象物質110を高感度に検出することができる。また、後述する再生方法により、第1電極24に付着した測定対象物質110を容易に解離させることができる。
流路基材8としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンゴム以外の種々の樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0023】
[第1液体収容部、第2液体収容部]
第1液体収容部22および第2液体収容部31は、流路21と同様に、ハイドロゲルモールディング法や、フォトリソグラフィー、ソフトリソグラフィー、切削加工、接合等の微細加工法、または、これらの微細加工法を組み合わせた方法によって、流路基材8に形成された容器または流路である。言い換えれば、第1液体収容部22および第2液体収容部31は、基板6の一方の面6aに設けられた流路基材8に形成された容器または流路ある。
【0024】
[電解膜]
電解膜23は、内径(最大径)がナノメートルのオーダーの細孔を多数有する多孔質膜であり、流路21中の試料溶液120に含まれる水素イオン(H+)または水酸化物イオン(OH-)を透過することができるイオン交換膜である。
電解膜23の材質は、流路21中の試料溶液120に含まれる水素イオン(H+)または水酸化物イオン(OH-)を透過することができるものであれば特に限定されないが、例えば、ナフィオン(登録商標)、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0025】
[液洛部]
液洛部32は、内径(最大径)がナノメートルからマイクロメートルのオーダーの細孔を多数有する多孔質体であり、流路21中の試料溶液120とわずかに液交換ができ、第1電極24、第3電極33、第4電極34と電気的接続を可能にするものである。
液洛部32の材質は、流路21中の試料溶液120とわずかに液交換ができ、第1電極24、第3電極33、第4電極34と電気的接続を可能にするものであれば特に限定されないが、例えば、多孔質ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0026】
[第1電極]
第1電極24としては、試料溶液120によって劣化しないものであれば、特に限定されない。第1電極24としては、例えば、金、白金等の金属からなる金属電極、炭素電極等が挙げられる。
【0027】
[第2電極]
第2電極25としては、イオン受容液体130、および水素イオン等のイオンによって劣化しないものであれば、特に限定されない。第2電極25としては、例えば、金、白金等の金属からなる金属電極、炭素電極等が挙げられる。
【0028】
[第3電極]
第3電極33としては、試料溶液120によって劣化しないものであれば、特に限定されない。第3電極33としては、例えば、金、白金等の金属からなる金属電極、炭素電極等、が挙げられる。
【0029】
[第4電極]
第4電極34としては、イオン受容液体130、および水素イオン等のイオンによって劣化しないものであれば、特に限定されない。第4電極34としては、例えば、塩化銀、パラジウム、水銀等の金属からなる金属電極、炭素電極等が挙げられる。また、第4電極34は、第1液体収容部22および第2液体収容部31と同様に微細加工により形成してもよく、市販の参照電極を、流路21に触れさせてもよい。市販の参照電極は、第2液体収容部31と液洛部32に相当する部位を有する。そのため、市販の参照電極を用いる場合、第2液体収容部31と液洛部32を省略することができる。
【0030】
[電圧印加手段]
電圧印加手段3は、第1電極24と第2電極25、および第3電極33と第4電極34に電圧を印加することができるものであれば、特に限定されない。電圧印加手段3としては、例えば、電圧発生器、電圧電流発生器等が挙げられる。
【0031】
[検出手段]
検出手段4は、電気検出部5を有する。電気検出部5としては、例えば、電流計、ポテンシオスタット等が用いられる。測定対象物質(化学物質)110のイオン(陽イオン)が第1電極24によって還元されると、第1電極24から第2電極25に向かって電子が流れる。それと同時に、第2電極25から第1電極24に向かって電流が流れる。そこで、第2電極25から第1電極24に向かって流れる電流値を測定することにより、試料溶液120に含まれる測定対象物質(化学物質)110の濃度を測定することができる。また、化学センサ1は、検出手段4として、第1液体収容部22内に、試料溶液120のpHを測定するpHメータを有していてもよい。
【0032】
[基板]
基板6は、その一方の面6aに流路基材8を設けることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、ガラス基板、樹脂基板等が挙げられる。
【0033】
[試料溶液]
試料溶液120は、測定対象物質(化学物質)110を含む溶液である。試料溶液120としては、具体的には、工場や家庭から排出される排水、河川水、海水等が挙げられる。
【0034】
[測定対象物質(化学物質)]
測定対象物質(化学物質)110としては、例えば、ヒ素、カドミウム、鉛、水銀、セレン、クロム、銅等の重金属類、シアン、シアン錯化合物、アルキル水銀、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有機リン、チウラム、シマジン、チオベルカルブ等の環境汚染物質、フェリシアン化カリウム、アミノフェノール、フェロセン誘導体等の電子伝達メディエーター等が挙げられる。
【0035】
[イオン受容液体]
イオン受容液体130は、電圧印加手段3により、第1電極24と第2電極25に電圧を印加した際に、流路21内の試料溶液120に含まれる水素イオン(H+)および水酸化物イオン(OH-)を受容(溶解)するものであれば、特に限定されない。イオン受容液体130は、中性の液体であってもよく、酸性の液体であってもよく、アルカリ性の液体であってもよい。イオン受容液体130が中性の液体である場合、イオン受容液体130としては、例えば、水、塩化ナトリウム水溶液、硫酸銅水溶液、エタノール等が挙げられる。イオン受容液体130が酸性の液体である場合、イオン受容液体130としては、例えば、硫酸、硝酸等が挙げられる。イオン受容液体130がアルカリ性の液体である場合、イオン受容液体130としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【0036】
[化学センサの使用方法]
本実施形態の化学センサ1の使用方法の一例を説明する。ここでは、化学センサ1を用いて、ストリッピングボルタンメトリーによりヒ素を検出する方法について説明する。
まず、測定対象のヒ素を含有しないキャリア溶液のみを流路21に注入し、いわゆるバックグラウンド電流をできるだけ小さくし、かつ安定させる。次に、ヒ素を含有する試料溶液120にHClを0.1Mとなるように加えpHを1にし、NaClを2mol/Lの濃度となるように加える。さらに、金イオンの濃度が100ppm程度になるようにAuCl3(塩酸中で[AuCl4]-として存在)等の金化合物を添加する。このように調整した後の試料溶液120を流路21に注入する。なお、試料溶液120への、HClおよびNaClの添加と金化合物の添加の順番は、どちらが先であってもよい。
【0037】
試料溶液120を流しながら、ポテンシオスタット(電気検出部5)を用いて第1電極24の電位を負電位の方向に変動させることにより、ヒ素および金を第1電極24の表面に電着させる。なお、電気検出部5は、ポテンシオスタットと、情報処理装置とを有する。この際、As(III)を測定対象とする場合は、電位を-0.1Vにする。As(V)またはAs(III)とAs(V)とを共に測定対象とする場合は、2段階で電位を変動させ、まず、電位を-1.0VにしてAs(V)を還元し、次いで、電位を-0.1Vにする。いずれの場合も、電位を-0.1Vにした後は、しばらくの間、第1電極24の電位を-0.1Vに保持することにより、ヒ素を濃縮し充分に電着させることができる。
【0038】
As(V)またはAs(III)とAs(V)とを共に検出対象とする電着工程における電気化学反応について、以下に、より詳細に説明する。
As(V)の標準酸化電位は次の通りである。
2H2AsO4
-+6H++4e-=As2O3+5H2O
(E0=-0.036VvsAg/AgCl)
As2O3+H2O=2HAsO2
HAsO2+3H++3e-=As+2H2O
(E0=-0.036VvsAg/AgCl)
【0039】
このように、As(V)が第1電極24の表面に電着(析出)するまでには、還元反応と電着反応との2段階の反応がある。このため、As(V)を電着させるには、まず、電位を-1.0VにしてAs(V)をAs(III)に還元し、次いで、電位を-0.1VにしてAs(III)を第1電極24の表面に電着させる。
【0040】
第1電極24の表面にヒ素および金が電着したら、試料溶液120を流すのを止めて、ポテンシオスタット(電気検出部5)により、第1電極24の電位を-0.1Vから正電位方向に掃引して、ヒ素を試料溶液120中に溶出させる。
【0041】
ヒ素が溶出すると、これに伴い電流が発生する。この際、As(V)とAs(III)とを測定対象として2段階で負電位を印加した場合は、試料溶液120中に存在していたAs(V)とAs(III)との合計量を、As(III)のピーク電流値として検出することができる。
【0042】
このような電気化学的反応によって発生した電流値(電気信号)はポテンシオスタット(電気検出部5)に伝達され、ポテンシオスタット(電気検出部5)にて各電極における信号の制御・検出が行われる。ポテンシオスタット(電気検出部5)で検出された信号は情報処理装置(電気検出部5)に送信され、予め作成されたヒ素の濃度と電流値との検量線と、得られた電流値とが対比されて、試料溶液中のヒ素濃度が算出される。
【0043】
次いで、電圧印加手段3により、第1電極24と第2電極25に電圧を印加し、第1電極24から第2電極25に向かう電界Eを発生させると、電解膜23を介して、流路21内の試料溶液120に含まれる水素イオン(H+)が第1液体収容部22内のイオン受容液体130へ移動する。これにより、流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHが7超になる。その結果、アルカリ性の試料溶液120によって、第1電極24の一方の面24aに付着した測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等が解離して、第1電極24は測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等が付着していない状態に再生される。これにより、再び、第1電極24に、試料溶液120に含まれる測定対象物質110を付着させることが可能となる。
【0044】
なお、測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等の種類に応じて、電圧印加手段3により、第1電極24と第2電極25に電圧を印加し、第2電極25から第1電極24に向かう電界Eを発生させて、電解膜23を介して、流路21内の試料溶液120に含まれる水酸化物イオン(OH-)を第1液体収容部22内のイオン受容液体130へ移動させてもよい。これにより、流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHが7未満になる。その結果、酸性の試料溶液120によって、第1電極24の一方の面24aに付着した測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等が解離して、第1電極24は測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等が付着していない状態に再生される。
【0045】
本実施形態の化学センサ1によれば、電圧印加手段3により、第1電極24と第2電極25に電圧を印加し、第1電極24から第2電極25に向かう電界E、または第2電極25から第1電極24に向かう電界E発生させて、流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを制御することができる。その結果、アルカリ性または酸性の試料溶液120によって、第1電極24の一方の面24aに付着した測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等を解離して、第1電極24を測定対象物質110が付着していない状態に再生することができる。従って、化学センサ1は、連続的に使用することができるため、環境モニタリングに適用できる。また、化学センサ1は、大規模な設備を用いることなく、第1電極24の再生を行うことができるため、小型化することができ、環境モニタリングに適用できる。
【0046】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。本発明の電気化学センサは、例えば、
図2~
図6に示すような変形例を採用してもよい。なお、各変形例を示す図では、上記の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0047】
[第1変形例]
図2に示すように、第1変形例の化学センサ200は、検出手段4が、第1電極24に白色光を照射する光源210と、表面プラズモン共鳴により減衰する光の波長が、第1電極24に測定対象物質110が付着することにより変化する量を検出する検出器52とを有する構成であってもよい。第1変形例の化学センサ200によれば、表面プラズモン共鳴法によって、第1電極24への測定対象物質110の付着量を直接測定することができる。
【0048】
[第2変形例]
図3に示すように、第2変形例の化学センサ300は、流路21(流路21A)と第1液体収容部22と流路21(流路21B)とがこの順に隣接して配置された構成であってもよい。第1変形例の化学センサ300では、第1液体収容部22が流路21Aと流路21Bで挟まれている。また、流路21Aと第1液体収容部22が、電解膜23を介して接合している。さらに、流路21Bと第1液体収容部22が、電解膜23を介して接合している。第1変形例の化学センサ300によれば、流路21A内の第1電極24と流路21B内の第1電極24を、第1液体収容部22内のイオン受容液体130を用いて再生することができる。従って、より効率的に、第1電極24の再生を行うことができる。なお、流路21A内の第1電極24の再生と流路21B内の第1電極24の再生は、同時に行ってもよく、個別に行ってもよい。
【0049】
[第3変形例]
図4に示すように、第3変形例の化学センサ400は、1つの流路21と1つの第1液体収容部22から構成される流路の組み410を2組み備えていてもよい。第2変形例の化学センサ400では、電解膜23を介して接合している流路21Aと第1液体収容部22Aから構成される第1組み410Aと、電解膜23を介して接合している流路21Bと第1液体収容部22Bから構成される第2組み410Bとを備える。また、互いに隣接する第1組み410Aの第1液体収容部22Aと、第2組み410Bの流路21Bとが、電解膜23を介して接合している。すなわち、第2変形例の化学センサ400では、流路21Aと第1液体収容部22Aと流路21Bと第1液体収容部22Bとがこの順に隣接して配置されている。本実施形態によれば、流路21A内の第1電極24と流路21B内の第1電極24を、第1液体収容部22A内のイオン受容液体130を用いて再生することができる。従って、より効率的に、第1電極24の再生を行うことができる。なお、流路21A内の第1電極24の再生と流路21B内の第1電極24の再生は、同時に行ってもよく、個別に行ってもよい。また、流路21B内の第1電極24を、第1液体収容部22A内のイオン受容液体130Aおよび第1液体収容部22B内のイオン受容液体130Bの少なくとも一方を用いて再生することができる。従って、第1液体収容部22A内のイオン受容液体130Aおよび第1液体収容部22B内のイオン受容液体130Bとして、異なる種類のものを用いれば、流路21B内の第1電極24の再生を段階的に行うことができる。
【0050】
[第4変形例]
図5に示すように、第4変形例の化学センサ500は、流路21の長手方向に沿って、再生部2を2つ以上備えていてもよい。流路21の長手方向とは、流路21内において、試料溶液120が流れる方向である。第4変形例の化学センサ500では、例えば、試料溶液120を化学センサ500の高さ方向と垂直な方向に、
図4に示す矢印方向に向かって流す。この場合、試料溶液120は、まず、第1電極24Aに接触し、次いで、第1電極24Bに接触する。ここで、第1電極24Aに印加する電圧と第1電極24Bに印加する電圧を異なる値とすれば、第1電極24Aと第1電極24Bにおいて、試料溶液120に含まれる異なる測定対象物質を付着して、検出することができる。また、再生部2Aにおける第1電極24Aの再生と再生部2Bにおける第1電極24Bの再生を個別に行うことができる。従って、1つの化学センサ400により、2種以上の測定対象物質を連続的に検出することができる。
【0051】
[第5変形例]
図6に示すように、第5変形例の化学センサ600は、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを検出するpH検出部610を備えていてもよい。pH検出部610は、電圧印加手段3に接続されている。pH検出部610としては、例えば、pHメータ等が挙げられる。pH検出部610を備えることにより、試料溶液120のpHを検出するためにpH指示薬を用いる必要がない。また、pH検出部610を備えることにより、即時に試料溶液120のpHを検出することができ、電圧印加手段3による第1電極24と第2電極25への電圧の印加を調節して、試料溶液120のpHの制御をより容易に行うことができる。なお、第1の変形例~第4の変形例においても、pH検出部を備えていてもよい。
【0052】
[その他の変形例]
また、流路21を2つ以上に分岐することにより、化学センサを汚染物質(上記の測定対象物質)の分離装置として用いることもできる。具体的には、流路21を、第1電極24に付着した汚染物質を含む試料溶液120を化学センサ外に排出する排出路と、未処理の試料溶液120を流す流路とに分岐する。
【0053】
[電極の再生方法]
本発明の一実施形態に係る電極の再生方法は、上述の本発明の一実施形態に係る化学センサにおける電極の再生方法である。
【0054】
「第1の再生方法」
本実施形態の化学センサにおける電極の再生方法は、例えば、化学センサ1において、電圧印加手段3により、第1電極24と第2電極25に電圧を印加し、第1電極24から第2電極25に向かう電界Eを発生させて、電解膜23を介して、流路21内の試料溶液120に含まれる水素イオン(H+)を第1液体収容部22内のイオン受容液体130内へ移動させるか、またはイオン受容液体130に含まれる水酸化物イオン(OH-)を流路21内の試料溶液120内へ移動させて、流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを7超に制御する。
【0055】
第1電極24と第2電極25に印加する電圧は、特に限定されないが、例えば、1V以上5V以下であることが好ましく、2V以上4V以下であることがより好ましい。電圧が1V未満では、イオンの移動量が少なく、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120に対して十分なpHの操作が難しくなる。電圧が5V以上を超えると、第1電極24近傍からのガス発生量が増え、流路21内でのガスの滞留が問題となるリスクが高くなる。
【0056】
第1電極24と第2電極25に電圧を印加する時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上20分以下であることが好ましく、1分以上5分以下であることがより好ましい。
【0057】
流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHは、汚れ物質の種類に応じて適宜制御する。汚れ物質が変性タンパク質等の水溶性(難溶性)の汚れである場合、汚れ物質を第1電極24から解離させる場合には、試料溶液120を弱アルカリ性(pH8~12)とする。汚れ物質が脂肪酸等の油性(強酸性)の汚れである場合、汚れ物質を第1電極24から解離させる場合には、試料溶液120を弱アルカリ性(pH8~12)とする。汚れ物質が動植物性脂等の油性(中極性)の汚れである場合、汚れ物質を第1電極24から解離させる場合には、試料溶液120を強アルカリ性(pH12~14)とする。汚れ物質が泥等の固体(親水性)の汚れである場合、汚れ物質を第1電極24から解離させる場合には、試料溶液120を弱アルカリ性(pH8~12)とする。
【0058】
試料溶液120は、pH指示薬を含んでいてもよい。pH指示薬としては、アルカリ性(pH14)から酸性(pH1)の範囲を指示することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、アリザリンイエロー、チモールブルー、メチルレッド、フェノールフタレイン等が挙げられる。アリザリンイエローは、中性では黄色を示し、アルカリ性では橙色に変色する。アリザリンイエローは、pHが10では黄色を示し、橙色に近い程、pHが大きく、アルカリ性度が高いことを示す。試料溶液120がpH指示薬を含んでいれば、第1電極24と第2電極25への電圧の印加によって、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを確認することができる。pH指示薬により、第1電極24と第2電極25への電圧の印加を継続するか、または第1電極24と第2電極25への電圧の印加を停止するかについて判断することができる。
【0059】
また、化学センサ1は、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを検出するpHメータ等のpH検出部を備えていてもよい。pH検出部を備えていれば、第1電極24と第2電極25への電圧の印加によって、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを確認することができる。pH検出部により、第1電極24と第2電極25への電圧の印加を継続するか、または第1電極24と第2電極25への電圧の印加を停止するかについて即時に判断することができる。
【0060】
本実施形態の電極の再生方法によれば、第1電極24と第2電極25に電圧を印加して、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを7超に制御することにより、アルカリ性の試料溶液120によって、第1電極24の一方の面24aに付着した測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる微生物、たんぱく質、油脂等を解離して、第1電極24を測定対象物質110が付着していない状態に再生することができる。従って、化学センサ1を、繰り返し、かつ連続的に使用することができる。また、大規模な設備を用いることなく、第1電極24の再生を行うことができる。
【0061】
「第2の再生方法」
本実施形態の化学センサにおける電極の再生方法は、電圧印加手段3により、第1電極24と第2電極25に電圧を印加し、第2電極25から第1電極24に向かう電界Eを発生させて、電解膜23を介して、流路21内の試料溶液120に含まれる水酸化物イオン(OH-)を第1液体収容部22内へ移動させるか、またはイオン受容液体130に含まれる水素イオン(H+)を流路21内の試料溶液120内へ移動させて、流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを7未満に制御する。
【0062】
第1電極24と第2電極25に印加する電圧は、特に限定されないが、例えば、1V以上5V以下であることが好ましく、2V以上4V以下であることがより好ましい。電圧が1V未満では、イオンの移動量が少なく、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120に対して十分なpHの操作が難しくなる。電圧が5V以上を超えると、第1電極24近傍からのガス発生量が増え、流路21内でのガスの滞留が問題となるリスクが高くなる。
【0063】
第1電極24と第2電極25に電圧を印加する時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上20分以下であることが好ましく、1分以上5分以下であることがより好ましい。
【0064】
流路21内において、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHは、汚れ物質の種類に応じて適宜制御する。汚れ物質が金属、金属酸化物等である場合、汚れ物質を第1電極24から解離させる場合には、試料溶液120を弱酸性(pH1~6)とする。
【0065】
試料溶液120は、pH指示薬を含んでいてもよい。pH指示薬としては、アルカリ性(pH14)から酸性(pH1)の範囲を指示することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、チモールブルー、メチルレッド、フェノールフタレイン等が挙げられる。チモールブルーは、中性では黄色を示し、酸性では赤色に変色する。チモールブルーは、pHが3では黄色を示し、赤色に近い程、pHが小さく、酸性度が高いことを示す。試料溶液120がpH指示薬を含んでいれば、第1電極24と第2電極25への電圧の印加によって、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを確認することができる。pH指示薬により、第1電極24と第2電極25への電圧の印加を継続するか、または第1電極24と第2電極25への電圧の印加を停止するかについて判断することができる。
【0066】
第2の再生方法においても、第2の再生方法と同様に、化学センサ1は、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを検出するpHメータ等のpH検出部を備えていてもよい。
【0067】
本実施形態の電極の再生方法によれば、第1電極24と第2電極25に電圧を印加して、第1電極24およびその周辺を含む領域αに存在する試料溶液120のpHを7未満に制御することにより、酸性の試料溶液120によって、第1電極24の一方の面24aに付着した測定対象物質110や、試料溶液120に含まれる金属、金属酸化物等を解離して、第1電極24を測定対象物質110が付着していない状態に再生することができる。従って、化学センサ1を、繰り返し、かつ連続的に使用することができる。また、大規模な設備を用いることなく、第1電極24の再生を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の化学センサは、連続的に使用することができるため、環境モニタリングに適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1,200,300,400,500,600 化学センサ
2 再生部
3 電圧印加手段
4 検出手段
5 電気検出部
6 基板
7,9 領域
8 流路基材
21 流路
22 液体収容部(第1液体収容部)
23 電解膜
24 第1電極
25 第2電極
31 第2液体収容部
32 液洛部
33 第3電極
34 第4電極
110 測定対象物質
120 試料溶液
130 イオン受容液体