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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177324
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】撮影システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20231206BHJP
   G01T 1/29 20060101ALI20231206BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20231206BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20231206BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20231206BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20231206BHJP
   G21F 7/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01N23/18
G01T1/29 D
G21K1/00 X
G21K5/02 X
G01N23/04
G21F3/00 G
G21F7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089152
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2022089216
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390014649
【氏名又は名称】日本地工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】荘田 崇人
(72)【発明者】
【氏名】榊原 光彦
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栞
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英俊
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA07
2G001DA09
2G001FA06
2G001HA07
2G001HA13
2G001HA14
2G001KA03
2G001LA02
2G001LA03
2G001LA20
2G001MA06
2G001SA13
2G001SA29
2G188AA25
2G188BB02
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD16
2G188DD24
2G188DD25
2G188DD30
2G188EE06
2G188EE36
2G188EE37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】X線漏洩量を少量に抑えながら、鉄筋コンクリート構造物の設置場所に拘わらずX線照射装置とX線検出器を短時間に鉄筋コンクリート構造物に関し正対位置に配置が可能であると共に、その正対位置を保持した状態で鉄筋コンクリート構造物に関し同心円状に移動させ複数の照射方向から鉄筋コンクリート構造物内部をX線撮影することが可能となる撮影システムを提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造物30の断面より大きい円環部材を二分割して、その接合部に空間を形成し連結具2で連結する構造とする。2つの部分円環部材1を連結具2によって連結した円環部材組立40は、複数の軸芯調整具3が径方向にねじ込んで鉄筋コンクリート構造物30の外周面に当接可能な構造とする。また、円環部材組立40の軸芯が鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cに一致した状態で、複数の穴1aを所定の等間隔で点対称に部分円環部材1上に設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射装置(10)及びX線検出器(20)と、
前記X線照射装置(10)と前記X線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に固定する固定手段(40)とを備えた撮影システム(100)であって、
前記固定手段(40)は、前記鉄筋コンクリート構造物(30)の外周面に沿って配置され且つ複数の穴(1a)が軸方向端面の周方向に沿って所定の間隔で形成された複数の部分円環部材(1)と、
前記部分円環部材(1)の半径方向に沿って螺合しながら前記鉄筋コンクリート構造物(30)の外周面に当接して前記部分円環部材(1)の軸芯を前記鉄筋コンクリート構造物(30)の軸芯に一致させる軸芯調整具(3)と、
隣り合う前記部分円環部材同士(1,1)を連結する連結具(2)とを有する
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
一の前記部分円環部材(1)の前記穴(1a)と他の前記部分円環部材(1)の前記穴(1a)は、前記鉄筋コンクリート構造物(30)の軸芯(30C)に関し点対称に配置されている
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撮影システムにおいて、
前記部分円環部材(1)は軸方向下面を支持具(4)によって支持され、
前記支持具(4)は前記鉄筋コンクリート構造物(30)の外周を巻くことが可能な帯状体(5)によって前記鉄筋コンクリート構造物(30)に固定されている
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項4】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、X線が出力される開口(11a)が形成されたX線遮蔽性を有する第1遮蔽材(11)によって全体を覆われ、
前記開口(11a)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間は側面が閉じて内部が貫通したX線遮蔽性を有する第2遮蔽材(12)によって遮蔽され、
前記第2遮蔽材(12)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間に隙間が生じる場合は、該隙間は前記第2遮蔽材(12)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第3遮蔽材(13)によって遮蔽されている
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項5】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、X線が出力される開口(11a)が形成されたX線遮蔽性を有する第1遮蔽材(11)によって全体を覆われ、
前記第1遮蔽材(11)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間はX線遮蔽性を有する1又は複数の第4遮蔽材(14)によって遮蔽され、
前記第4遮蔽材(14)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間に隙間が生じる場合は、該隙間は前記第4遮蔽材(14)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第5遮蔽材(15)によって遮蔽されている
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、X線が出力される開口(11a)が形成されたX線遮蔽性を有する第1遮蔽材(11)によって全体を覆われ、
前記開口(11a)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間は側面が閉じて内部が貫通したX線遮蔽性を有する第2遮蔽材(12)によって遮蔽され、
前記第2遮蔽材(12)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間が生じる場合は、該隙間は前記第2遮蔽材(12)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第3遮蔽材(13)によって遮蔽され、
前記第2遮蔽材(12)および前記第3遮蔽材(13)の外側はX線遮蔽性を有する1又は複数の第4遮蔽材(14)によって遮蔽され、
前記第4遮蔽材(14)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間に隙間が生じる場合は、該隙間は前記第4遮蔽材(14)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第5遮蔽材(15)によって遮蔽されている
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項7】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)及び前記X線検出器(20)は、正対位置を保持した状態で前記部分円環部材(1)に沿って移動可能であり、
前記X線検出器(20)は、受光したX線の強度に応じた電気信号を出力する複数の画素(20a)から構成され、
前記電気信号は所定のコンピュータ(50)に取り込まれ、
前記コンピュータ(50)は前記電気信号に基づいて前記鉄筋コンクリート構造物(30)内部についての二次元画像または三次元画像を再構成する
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項8】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、第1のX線照射装置と、第2のX線照射装置と、を少なくとも含み、
前記第1のX線照射装置と、前記第2のX線照射装置は、水平方向に並んで前記固定手段(40)に固定される
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項9】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、第1のX線照射装置と、第2のX線照射装置と、を少なくとも含み、
前記第1のX線照射装置と、前記第2のX線照射装置は、鉛直方向に並んで前記固定手段(40)に固定される
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項10】
請求項1に記載の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、第1のX線照射装置と、第2のX線照射装置と、第3のX線照射装置と、を少なくとも含み、
前記第1のX線照射装置と、前記第2のX線照射装置は、鉛直方向に並んで前記固定手段(40)に固定され、
前記第1のX線照射装置と、前記第3のX線照射装置は、水平方向に並んで前記固定手段(40)に固定される
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項11】
請求項1の撮影システムにおいて、
前記X線検出器(20)のX線検出面は、曲面である
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項12】
請求項1の撮影システムにおいて、
前記X線照射装置(10)は、冷陰極X線管を有し、1本の単三電池またはバスパワーにより駆動可能である
ことを特徴とする撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物の内部を撮影することが可能な撮影システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートはセメント、水分、骨材としての砂利および砂が所定の比率で混合されたセメント複合材である。一般にコンクリートは圧縮方向の荷重には強いが引張方向の荷重に弱いという特性を有している。その反面、鉄筋は圧縮方向の荷重には弱いが引張方向の荷重には強いという特性を有している。
【0003】
例えば、鉄筋コンクリート構造物の一例である電柱は、長手方向に沿って鉄筋によって補強された中空円筒形のコンクリート成形物である。従って、電柱では圧縮方向の荷重はコンクリート材が支配的に受け持ち引張方向の荷重は鉄筋が支配的に受け持つことにより、電柱の強度を維持している。なお、鉄筋は空気または水分に含まれる酸素によって酸化されやすい(錆びやすい)という特性を有している。錆びた鉄筋は強度が低下し、その結果電柱の強度も低下することになる。電柱の強度評価にはコンクリート材と鉄筋の各劣化状態の把握が重要である。コンクリート材の劣化状態については目視検査によってある程度把握することができるが、内部に位置する鉄筋については目視検査によって把握することはできない。そのため、鉄筋の劣化状態については電柱の径方向から電柱にX線を照射し電柱内部を透過したX線を、X線検出器によって受光することにより電柱内部のX線画像(投影画像)を再構成し、そのX線画像から鉄筋の劣化状態について評価している(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、X線は電磁波の一種であるため、反射、屈折、回折または干渉という特性を有している。そのため、対象物に向けて照射されたX線の一部分はX線検出器に到達せずに反射、屈折、回折または互いに干渉し合って散乱光として対象物の周囲に漏洩することになる。また、X線は放射線の一種であり且つ目視することができないため、X線を照射する場合、作業者は自覚のないまま被ばくする危険性がある。そのため、X線を照射する際は、X線が対象物の周囲に漏洩することを防止する手段を適切に講じる必要がある。
【0005】
X線が周囲に漏洩することを防止する手段として、X線遮蔽性を有する材料、例えば鉛材で構成されたX線遮蔽体によってX線源とX線検出器の周囲を覆うことが行われている。X線遮蔽体のX線遮蔽効果を高めるためには、X線遮蔽体(鉛材)の板厚を厚くすること、更にはX線遮蔽体の設置位置について側面だけでなく上面および下面に対してもX線遮蔽体を設置する必要がある。その結果、X線遮蔽体は必然的に重量が重くなり且つ外形寸法が大きくなってしまう。従って、狭隘箇所等におけるX線を用いた非破壊検査(例えば、電柱内部診断)に対し、X線遮蔽体によって作業性が悪くなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6763526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、X線源とX線検出器の相対移動または回転については、作業者またはロボットによって行われる旨が記載されている(例えば特許文献1[0008]-[0009]を参照。)。一方、X線源とX線検出器の電柱への設置手段(固定手段)については何ら記載されていない。このことから、X線源とX線検出器の電柱への具体的な固定手段については未だ実用化されていないものと考えられる。
【0008】
ところで、X線源とX線検出器の電柱への固定手段として、X線源とX線検出器を高さ調整可能な架台に別個に搭載し、作業者が2つの架台を電柱に関して正対位置に配置することが考えられる。なお、ここで言う「電柱に関し正対位置」とは、具体的には、(a)X線源とX線検出器が電柱の外周に対し同心円上に対向して配置され且つ(b)X線源のコーンビームの中心軸が電柱の軸芯を通過しX線検出器に垂直に入射するように位置決めされたときの電柱とX線源とX線検出器の相対位置関係を意味している。
【0009】
しかし、作業者が(a)と(b)を同時に満たすようにX線源とX線検出器を電柱に配置することは極めて難しい作業である。
【0010】
同様に、X線源とX線検出器の正対位置を保持した状態で照射方向(位相方向)を変えて次の撮影をしようとする場合、作業者はX線源とX線検出器の正対位置を保持した状態で、現在の撮影点から次の撮影点まで同心円状に移動させなければならない。
【0011】
しかし、X線源とX線検出器を正対位置に保持するだけでも極めて難しい作業である上に、更にX線源とX線検出器の正対位置を保持した状態で電柱に関し同心円状に移動させることは更に難しい作業となる。このように、X線源とX線検出器についての鉄筋コンクリート構造物に対する正対位置を保持した状態で鉄筋コンクリート構造物に関し同心円状に移動させ複数の照射方向から鉄筋コンクリート構造物内部をX線撮影する方法が確立していなかった。
【0012】
従来のX線を使用した非破壊検査では、散乱光として周囲に漏洩するX線を遮蔽するため、非破壊検査装置及び検査対象物を丸ごと遮蔽材で被っている。仮に、この遮蔽方式が実用化された場合、鉄筋コンクリート構造物も含めた装置全体を被う必要があるため、X線撮影システムの大型化は避けられないものと考えられる。X線撮影システムが大型化する場合、鉄筋コンクリート構造物への設置やX線照射方向を変えるための配置変更が難しくなるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、X線漏洩量を従来システムよりも少量に抑えながら、鉄筋コンクリート構造物(30)の設置場所に拘わらずX線照射装置(10)とX線検出器(20)を従来よりも極めて短時間に鉄筋コンクリート構造物(30)に関し正対位置に配置・配置変更が可能であると共に、その正対位置を保持した状態で鉄筋コンクリート構造物に関し同心円状に移動させ複数の照射方向から鉄筋コンクリート構造物(30)内部をX線撮影することが可能となる撮影システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本手段に係る撮影システムは、X線照射装置(10)及びX線検出器(20)と、前記X線照射装置(10)と前記X線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に固定する固定手段(40)とを備えた撮影システム(100)であって、前記固定手段(40)は、前記鉄筋コンクリート構造物(30)の外周面に沿って配置され且つ複数の穴(1a)が軸方向端面の周方向に沿って所定の間隔で形成された複数の部分円環部材(1)と、前記部分円環部材(1)の半径方向に沿って螺合しながら前記鉄筋コンクリート構造物(30)の外周面に当接して前記部分円環部材(1)の軸芯を前記鉄筋コンクリート構造物(30)の軸芯に一致させる軸芯調整具(3)と、隣り合う前記部分円環部材同士(1,1)を連結する連結具(2)とを有することを特徴とする。
【0015】
上記構成では、複数の部分円環部材(1)を連結具(2)によって連結することにより、鉄筋コンクリート構造物(30)の周囲に単一の閉じた円環部材を容易に形成することができる。それに加えて、軸芯調整具(3)によって各部分円環部材(1)と鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間を一定とすることにより、その閉じた円環部材を鉄筋コンクリート構造物(30)に関し同心円状に位置決めすることが容易にできる。更に、部分円環部材(1)の軸方向端面の周方向に沿って所定の間隔で形成された複数の穴(1a)によって、X線照射装置(10)とX線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に関し同心円状に正対位置に配置することが容易となると共に、X線照射装置(10)とX線検出器(20)の正対位置を保持した状態で照射方向(位相方向)を変えてX線撮影することが容易となる。その結果、X線照射装置(10)から出射されるX線コーンビームの中心軸は、鉄筋コンクリート構造物の軸芯を通過しX線検出器に垂直に入射するようになる。
これにより、鉄筋コンクリート構造物内部についての明瞭なX線投影画像を取得することが可能となる。
【0016】
本手段に係る撮影システムの第2の特徴は、一の前記部分円環部材の前記穴と他の前記部分円環部材の前記穴は、前記鉄筋コンクリート構造物(30)の軸芯(30C)に関し点対称に配置されていることである。
【0017】
上記構成では、正対位置にある部分円環部材(1)上の穴同士のペアリングが予め決定されているため、X線照射装置(10)とX線検出器(20)を正対位置に配置すること、並びにその正対位置を保持した状態でX線照射方向(位相方向)を変えることが極めて容易となると共に、最初の撮影点から角度の変化量を把握することが極めて容易となる。その結果、複数の照射方向(位相方向)から明瞭なX線投影画像を取得することができるようになる。これにより、鉄筋コンクリート構造物内部についての3D画像を取得することが可能となる。
【0018】
本手段に係る撮影システムの第3の特徴は、前記部分円環部材(1)は軸方向下面を支持具(4)によって支持され、前記支持具(4)は前記鉄筋コンクリート構造物(30)の外周を巻くことが可能な帯状体(5)によって前記鉄筋コンクリート構造物(30)に固定されていることである。
【0019】
上記構成では、帯状体(5)によって支持具(4)を鉄筋コンクリート構造物(30)に固定することが容易となると共に、支持具(4)によって複数の部分円環部材(1)を鉄筋コンクリート構造物(30)の周囲に配置することが容易となる。その結果、仮に狭隘箇所においても固定手段(40)を鉄筋コンクリート構造物(30)に容易に取り付けることができるようになる。これにより、仮に狭隘箇所においても、X線照射装置(10)とX線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に関し正対位置に配置して鉄筋コンクリート構造物内部をX線撮影すること、並びにX線照射装置(10)とX線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に関して正対位置に配置した状態で照射方向(位相方向)を変えて鉄筋コンクリート構造物内部をX線撮影することが容易となる。
【0020】
本手段に係る撮影システムの第4の特徴は、前記X線照射装置(10)は、X線が出力される開口(11a)が形成されたX線遮蔽性を有する第1遮蔽材(11)によって全体を覆われ、前記開口(11a)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間は側面が閉じて内部が貫通したX線遮蔽性を有する第2遮蔽材(12)によって遮蔽され、前記第2遮蔽材(12)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間に隙間が生じる場合は、該隙間は前記第2遮蔽材(12)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第3遮蔽材(13)によって遮蔽されていることである。
【0021】
上記構成では、第1遮蔽材(11)によってX線源から多方向(全方位)に放射されるX線の内でX線コーンビームに寄与しないX線を遮蔽することができる。また、第2遮蔽材(12)によってX線コーンビームから散乱する散乱X線を遮蔽することができる。また、第3遮蔽材(13)によって第2遮蔽材(12)と鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間から漏洩するX線漏洩を遮蔽することができる。このように、上記構成ではX線撮影システムの内でX線漏洩が多い部分を重点的に且つ冗長的に遮蔽するようになっている。そのため、X線撮影システムと鉄筋コンクリート構造物(検査対象物)を遮蔽材によって丸ごと被う必要がなく、X線撮影システムの大型化を抑制することができる。
【0022】
本手段に係る撮影システムの第5の特徴は、前記X線照射装置(10)は、X線が出力される開口(11a)が形成されたX線遮蔽性を有する第1遮蔽材(11)によって全体を覆われ、前記第1遮蔽材(11)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間はX線遮蔽性を有する1又は複数の第4遮蔽材(14)によって遮蔽され、前記第4遮蔽材(14)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間に隙間が生じる場合は、該隙間は前記第4遮蔽材(14)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第5遮蔽材(15)によって遮蔽されていることである。
【0023】
上記構成では、第1遮蔽材(11)によってX線源から多方向(全方位)に放射されるX線の内でX線コーンビームに寄与しないX線を遮蔽することができる。また第4遮蔽材(14)によってX線コーンビームから拡散するX線拡散光およびX線散乱光を遮蔽することができる。また、第5遮蔽材(15)によって第4遮蔽材(14)と鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間から漏洩するX線漏洩を遮蔽することができる。このように、上記構成ではX線撮影システムの内でX線漏洩が多い部分を重点的に且つ冗長的に遮蔽するようになっている。そのため、X線撮影システムと鉄筋コンクリート構造物(検査対象物)を遮蔽材によって丸ごと被う必要がなく、X線撮影システムの大型化を抑制することができる。
【0024】
本手段に係る撮影システムの第6の特徴は、前記X線照射装置(10)は、X線が出力される開口(11a)が形成されたX線遮蔽性を有する第1遮蔽材(11)によって全体を覆われ、前記開口(11a)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間は側面が閉じて内部が貫通したX線遮蔽性を有する第2遮蔽材(12)によって遮蔽され、前記第2遮蔽材(12)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間が生じる場合は、該隙間は前記第2遮蔽材(12)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第3遮蔽材(13)によって遮蔽され、前記第2遮蔽材(12)および前記第3遮蔽材(13)の外側はX線遮蔽性を有する1又は複数の第4遮蔽材(14)によって遮蔽され、前記第4遮蔽材(14)と前記鉄筋コンクリート構造物(30)との間に隙間が生じる場合は、該隙間は前記第4遮蔽材(14)よりも比較的薄肉且つ可撓性を有し且つX線遮蔽性を有する1又は複数の第5遮蔽材(15)によって遮蔽されていることである。
【0025】
上記構成では、第1遮蔽材(11)によってX線源から多方向(全方位)に放射されるX線の内でX線コーンビームに寄与しないX線を遮蔽することができる。第2遮蔽材(12)および第4遮蔽材(14)によってX線コーンビームから拡散するX線拡散光を二重に遮蔽することができる。第3遮蔽材(13)によって第2遮蔽材(12)と鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間から漏洩するX線漏洩を遮蔽することができる。第5遮蔽材(15)によって第4遮蔽材(14)と鉄筋コンクリート構造物(30)との隙間から漏洩するX線漏洩を遮蔽することができる。このように、上記構成ではX線撮影システムの内でX線漏洩が多い部分を重点的に且つ冗長的に遮蔽するようになっている。そのため、X線撮影システムと鉄筋コンクリート構造物(検査対象物)を遮蔽材によって丸ごと被う必要がなく、X線撮影システムの大型化を抑制することができる。
【0026】
本手段に係る撮影システムの第7の特徴は、前記X線照射装置(10)及び前記X線検出器(20)は、前記鉄筋コンクリート構造物(30)に関する正対位置を保持した状態で前記部分円環部材(1)に沿って移動可能であり、前記X線検出器(20)は、受光したX線の強度に応じた電気信号を出力する複数の画素(20a)から構成され、前記電気信号は所定のコンピュータ(50)に取り込まれ、前記コンピュータ(50)は前記電気信号に基づいて前記鉄筋コンクリート構造物(30)内部についての二次元画像または三次元画像を再構成することである。
【0027】
上記構成では、仮に狭隘箇所においても、X線照射装置(10)とX線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に関し正対位置に配置して鉄筋コンクリート構造物内部をX線撮影すること、並びにX線照射装置(10)とX線検出器(20)を鉄筋コンクリート構造物(30)に関して正対位置に配置した状態で照射方向(位相方向)を変えて鉄筋コンクリート構造物内部をX線撮影することが容易となる。
【発明の効果】
【0028】
本手段の撮影システム(100)によれば、X線漏洩量を従来システムよりも少量に抑えながら、鉄筋コンクリート構造物(30)の設置場所に拘わらずX線照射装置(10)とX線検出器(20)を従来よりも極めて短時間に鉄筋コンクリート構造物(30)に関し正対位置に配置・配置変更が可能であると共に、その正対位置を保持した状態で鉄筋コンクリート構造物に関し同心円状に移動させ複数の照射方向から鉄筋コンクリート構造物(30)内部をX線撮影することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る撮影システムの平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る撮影システムの正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る撮影システムの組立手順を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る撮影システムの組立手順を示す説明図である。
図5】本実施形態に係るX線遮蔽体の一例を示す説明図である。
図6】本実施形態に係るX線遮蔽体の他の例を示す説明図である。
図7図6に示されるX線遮蔽体の変形例を示す説明図である。
図8】本実施形態に係るX線遮蔽体の他の例を示す説明図である。
図9】本発明に係るX線検出器を示す説明図である。
図10】本発明に係るX線検出器の各画素の構造を示す説明図である。
図11】本発明の一実施形態に係る撮影システムを用いた鉄筋コンクリート構造物内部の3D画像の再構成フロー図である。
図12】X線照射装置とX線検出器を鉄筋コンクリート構造物に関し正対位置に保持した状態で鉄筋コンクリート構造物に関し同心円状に移動させるときの、照射方向がθ=0°、40°、60°、120°、140°、160°である鉄筋コンクリート構造物内部についてのX線撮影を示す説明図である。
図13】X線照射装置とX線検出器を鉄筋コンクリート構造物に関し正対位置に保持した状態で鉄筋コンクリート構造物に関し同心円状に移動させるときの、照射方向がθ=-40°、-20°、0°、20°、40°である鉄筋コンクリート構造物内部についてのX線撮影を示す説明図である。
図14】複数のX線照射装置を水平方向に並べて配置する例を示す説明図である。
図15】複数のX線照射装置を水平方向に並べて配置するとともに、複数のX線照射装置を鉛直方向に並べて配置する例を示す説明図である。
図16】X線検出面が曲面であるX線検出器を用いる例を示す説明図である。
図17】撮影システムによって撮影されたX線画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0031】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る撮影システム100を示す説明図である。図1はこの撮影システム100の平面図である。図2はこの撮影システム100の正面図である。撮影システム100の撮影対象となる鉄筋コンクリート構造物30は、例えば電柱である。
【0032】
この撮影システム100は、X線漏洩量を従来システムよりも少量に抑えながら、鉄筋コンクリート構造物(30)の設置場所に拘わらずX線照射装置(10)とX線検出器(20)を従来よりも極めて短時間に鉄筋コンクリート構造物(30)に関し正対位置に配置・配置変更が可能であると共に、その正対位置を保持した状態で複数の照射方向(位相方向)から鉄筋コンクリート構造物(30)内部をX線撮影することができるように構成されている。
【0033】
そのための構成として、図1に示されるように、この撮影システム100は、鉄筋コンクリート構造物30の外周に沿って穴1aが形成された複数(本実施形態では2個)の部分円環部材1と、隣り合う部分円環部材1同士を連結する複数(本実施形態では2個)の連結具2と、「部分円環部材1を連結具2によって鉄筋コンクリート構造物30の周囲に環状に連結された円環部材組立40」の軸芯と鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cとを一致させる軸芯調整具3と、部分円環部材1の下面1A(図2)を支持する支持具4と、支持具4を鉄筋コンクリート構造物30に固定する帯状体5(図2)と、X線を鉄筋コンクリート構造物30の内部に向けて照射するX線照射装置10と、鉄筋コンクリート構造物30の内部を透過したX線を受光するX線検出器20と、X線検出器20から出力される画像に係る画素信号(電気信号)を受信して所定の鉄筋コンクリート構造物30の内部についての二次元画像(2D画像)または三次元画像(3D画像)を生成する計測用コンピュータ50とを具備して構成される。以下、各構成について説明する。
【0034】
図2に示されるように、部分円環部材1は、半環状上板1bと、半環状底板1cと、半環状上板1bと半環状底板1cとの間に取り付けられた複数の中空パイプ1dと、半環状上板1bの内周縁と半環状底板1cの内周縁との間に取り付けられる半環状内側板1eと、半環状上板1bの端縁と半環状底板1cの端縁との間に取り付けられる端板1fとから構成されている。
【0035】
再び図1に戻って、半環状上板1bには貫通した複数の穴1aが、鉄筋コンクリート構造物30に関し同心円状に所定の等間隔(本実施形態では20°)で点対称に形成されている。ここで言う「点対称」とは、例えば図上左側に位置する半環状上板1bに形成された任意の1つの穴1aは、その穴1aと鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cを通る直線上に、図上右側に位置する半環状上板1bの別の穴1aが一意的に存在する、ということを意味している。従って、X線照射装置10より出射されたX線コーンビームの中心軸は、常に鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cを通りX線検出器20に垂直に入射することになる。これにより、部分円環部材1上における任意の照射方向から鉄筋コンクリート構造物30の内部を照射する場合であっても、鉄筋コンクリート構造物30の内部についての明瞭なX線投影画像(2D画像)または3D画像を常に取得することが可能となる。
【0036】
複数の穴1aが鉄筋コンクリート構造物30に関し同心円状に所定の等間隔で点対称に形成されているため、点対称の位置関係にある穴1aのペアリングが一意的に決まることになる。例えば、図上左側の1番の穴1aと図上右側の1番の穴1aは、点対称な位置関係にあるペアリングを成している。同様に、図上左側の8番の穴1aと図上右側の8番の穴1aが点対称な位置関係にあるペアリングを成している。従って、X線照射装置10を図上右側の4番と5番の穴1aに設置した場合、X線検出器20は図上左側の4番と5番の穴1aに設置することにより、X線照射装置10とX線検出器20を容易に正対位置に配置することができる。また、その正対位置から例えば40°反時計方向に回転した位置から鉄筋コンクリート構造物30の内部についてX線撮影をしようとする場合は、X線照射装置10を図上右側の2番と3番の穴1aに設置し、X線検出器20を図上左側の2番と3番の穴1aに設置すれば良いことが分かる。
【0037】
なお、X線照射装置10およびX線検出器20の部分円環部材1への取り付けについては、引っ掛け部材6b,7bの挿入ピン6c,7c(図4)を穴1aに差し込むことによって行われるようになっている。このように、撮影システム100では、X線照射装置10とX線検出器20を鉄筋コンクリート構造物30に関し正対位置に配置すること、並びにX線照射装置10とX線検出器20の正対位置を保持した状態で配置位置を変更すること、並びに配置変更に係る角度変化を把握することが極めて容易となる。
【0038】
再び図2に戻って、中空パイプ1dは、軸芯が穴1aの中心と一致した状態で溶接によって半環状上板1bと半環状底板1cにそれぞれ取り付けられている。中空パイプ1dは、上端が開口して穴1aに連通している。なお、下端は開口していても閉じていてもどちらでも良い。
【0039】
半環状内側板1eは、溶接によって半環状上板1bと半環状底板1cにそれぞれ取り付けられている。半環状内側板1eには、複数箇所に雌ねじ(図示せず)が形成されている。その雌ねじ(図示せず)は、軸芯調整具3の外周面に形成された雄ねじ(図示せず)と螺合するようになっている。
【0040】
端板1fは、溶接によって半環状上板1bの端縁と半環状底板1cの端縁にそれぞれ取り付けられている。端板1fには、連結具2を通す貫通穴(図示せず)が形成されている。
【0041】
連結具2は、ボルト2aとナット2bによって構成されている。なお、図3において後述するが、連結具2は鉄筋コンクリート構造物30に対する図上左側の部分円環部材1の高さ方向位置と、図上右側の部分円環部材1と高さ方向位置との間のズレを補正している。
【0042】
再び図1に戻って、軸芯調整具3は、部分円環部材1と鉄筋コンクリート構造物30との隙間d(環状調整具3の半環状内側板1eからの飛出し量d)を一定にして、円環部材組立40の軸芯と鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cを一致させる。軸芯調整具3の外周面には雄ねじ(図示せず)が形成され、半環状内側板1eの雌ねじ(図示せず)と螺合することにより、軸芯調整具3の半環状内側板1eからの飛出し量dが変化することになる。そして、全ての軸芯調整具3の半環状内側板1eからの飛出し量dが等しくなるとき、円環部材組立40の軸芯が鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cに一致することになる。
【0043】
この場合、X線照射装置10とX線検出器20の正対位置に配置した状態が維持されている限り、X線照射装置10の周方向位置に関わらずX線コーンビームの中心軸は、鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cを通過してX線検出器20に垂直に入射されることになる。つまり、部分円環部材1上におけるX線照射方向に拘わらず、常に鉄筋コンクリート構造物30の内部についての明瞭なX線投影画像(2次元画像)または3D画像を取得することができる。
【0044】
また、軸芯調整具3は、円環部材組立40の軸芯を鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cに一致させる軸芯調整機能以外に、円環部材組立40の高さ方向位置調整を可能とする。すなわち、軸芯調整具3を緩めることにより、円環部材組立40の高さ方向位置を調整することが可能となる。これにより、鉄筋コンクリート構造物30に対するX線照射装置による照射高さ位置(撮影高さ位置)を調整することが可能となる。
【0045】
また、軸芯調整具3の先端(鉄筋コンクリート構造物30との接触部)には、ラバー等の弾性部材(図示せず)が装着されている。この弾性部材(図示せず)は円環部材組立40の滑り防止材及び鉄筋コンクリート構造物30表面の保護材として機能する。これにより、一旦、軸芯調整具3によって円環部材組立40の高さ位置を固定した場合、円環部材組立40は鉄筋コンクリート構造物30の外周面に安定に固定されることになる。また、この弾性部材(図示せず)により、鉄筋コンクリート構造物30表面を保護しながら軸芯調整具3の鉄筋コンクリート構造物30表面に対する圧着程度を密に(タイトに)することが可能となる。その結果、円環部材組立40が鉄筋コンクリート構造物30に対し安定にしっかりと固定されるようになる。これにより、X線照射装置10とX線検出器20の鉄筋コンクリート構造物30に対する各相対位置が安定するようになる。
【0046】
再び図2に戻って、支持具4は、鉄筋コンクリート構造物30の外周面にフィットする、例えば両端が折れ曲がったコ状板4aと、半環状底板1cを支持する平板4bとから構成されている。コ状板4aと平板4bは溶接によって連結されている。なお、鉄筋コンクリート構造物30の外周面にフィットする部材については、コ状板4aだけに限定されない。すなわち、例えば円弧状板であっても良い。
【0047】
帯状体5は、支持具4を鉄筋コンクリート構造物30に押し付けて、支持具4が鉄筋コンクリート構造物30から滑らない様にする。これにより支持具4の高さ方向の位置、ひいては、円環部材組立40が固定されることになる。
【0048】
帯状体5は、ナイロン又は布等から成る合成繊維ベルト5aと、合成繊維ベルト5aを固定する金具(バックル)5bとから構成されている。帯状体5として市販品のラッシングベルトを使用することができる。また、金具5bはラチェット等の緩み防止機構を備えることが望ましい。
【0049】
X線照射装置10を部分円環部材1に係止する係止具6は、L形部材6aと、引掛部材6bとから構成されている。L形部材6aは溶接または締結具によってX線照射装置10の裏面(鉄筋コンクリート構造物30に対向しない面)に取り付けられる。一方、引掛部材6bには2本の挿入ピン6c(図4)が、部分円環部材1の穴1aのピッチと同じピッチで鉛直下向きに取り付けられている。従って、作業者が2本の挿入ピン6c(図4)を穴1aに差し込むことにより、X線照射装置10は部分円環部材1に安定に懸架されることになる。
【0050】
同様にX線検出器20を部分円環部材1に係止する係止具7は、L形部材7aと、引掛部材7bとから構成されている。L形部材7aは溶接または締結具によってX線検出器20の裏面(鉄筋コンクリート構造物30に対向しない面)に取り付けられている。一方、引掛部材7bには2本の挿入ピン7c(図4)が、部分円環部材1の穴1aのピッチと同じピッチで鉛直下向きに取り付けられている。従って、作業者が2本の挿入ピン7c(図4)を穴1aに差し込むことにより、X線検出器20は部分円環部材1に安定に懸架されることになる。
【0051】
X線照射装置10は、真空管中に隙間を空け対向して配置された陰極と陽極から成るX線管(図示せず)と、X線管の陰極と陽極に高電圧を印加する高電圧発生装置(図示せず)とを備えたポータブルのX線発生装置(図示せず)から成っている。X線発生装置(図示せず)の全体は、X線が出力される開口11a(図5)を有する第1遮蔽材11によって覆われている。
【0052】
X線照射装置10は、計測用コンピュータ50で遠隔操作することができるようになっている。また、X線照射装置10の管電流、管電圧、並びに陰極および陽極の各温度等については計測用コンピュータ50によって監視されるようになっている。
【0053】
X線検出器20は、例えばX線フラットパネルディテクタによって構成されている。すなわち、X線検出器20は、受光したX線強度に応じて電荷を蓄積する画素(フォトダイオードとスイッチング素子とコンデンサから成る画素)がマトリックス状に密に大面積のガラス基板上に集積化されている。なお、円弧面(湾曲面)のX線検出面を有するX線検出器を使用することも可能である。
【0054】
詳細については図9及び図10を参照しながら後述するが、各画素のコンデンサに蓄電された電荷は、計測用コンピュータ50から送信される駆動信号に基づいて、対応するスイッチラインに接続されている各スイッチング素子が閉じて対応する一行の各画素の電荷がデータラインを通して取り出されるようになっている。取り出された各画素の電荷は、同じくガラス基板上に集積化されたチャージアンプによって電圧信号に変換され、更にオペアンプによって所定のレベルまで増幅される。増幅された電圧信号はA/D変換器によって所定のディジタル信号に変換され、計測用コンピュータ50に取り込まれ、鉄筋コンクリート構造物30の内部についての2D画像または3D画像として再構成される。
【0055】
計測用コンピュータ50は、X線検出器20によって検出された電柱30のX線投影データ(画素データ)を収集すると共に、収集した画素データを基に鉄筋コンクリート構造物30の所定区間におけるX線投影画像(2D画像)または所定区間における内部画像(3D画像)を再構成する。従って、計測用コンピュータ50のメモリには、X線検出器20から画素データを収集するためのデータ収集プログラムと、収集した画素データから鉄筋コンクリート構造物30の2D画像または3D画像を再構成するための画像作成プログラムが記憶されている。
【0056】
図3図4は、本発明の一実施形態に係る撮影システム100の組立手順を示す説明図である。
先ず図3(a)に示されるように、支持具4を鉄筋コンクリート構造物30に取り付ける。取付方としては、一人の作業者が支持具4を鉄筋コンクリート構造物30に押さえ付けて、もう一人の作業者が合成繊維ベルト5aを支持具4の上から鉄筋コンクリート構造物30の周囲を巻き回して、合成繊維ベルト5aを金具5bによって固定する。
【0057】
次に図3(b)に示されるように、2つの部分円環部材1を鉄筋コンクリート構造物30に取り付ける。取付方としては、作業者は自己の部分円環部材1を支持具4にそれぞれ乗せながら自己の端板1fを他方の端板1fに突き合わせる。次に、一人の作業者が片方の手で自己の部分円環部材1を押さえながらもう片方の手でボルト2aを2つの端板1fの各貫通穴に通し、もう一人の作業者がナット2bによって2つの部分円環部材1を締結する。なお、もし図上左側の部分円環部材1の高さ方向位置と、図上右側の部分円環部材1と高さ方向位置との間にズレが生じる場合、2つの端板1fの各貫通穴もズレることになる。その結果、ボルト2aを2つの端板1fの各貫通穴に通すことが出来なくなる。この場合、ボルト2aが2つの端板1fの各貫通穴を通るようにすることにより、図上右側の部分円環部材1と高さ方向位置との間のズレが解消されることになる。
【0058】
次に図3(c)に示されるように、軸芯調整具3を部分円環部材1の半環状内側板1eにねじ込んで、円環部材組立40(部分円環部材1)の軸芯を鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30Cに一致させる。
【0059】
次に図4に示されるように、X線照射装置10とX線検出器20を部分円環部材1上に取り付ける。取付方としては、引掛部材6bの下面に設けられた挿入ピン6cを部分円環部材1の穴1aに挿入する。同様に、引掛部材7bの下面に設けられた挿入ピン7cを部分円環部材1の対応する穴1aに挿入する。例えば、図1においてX線照射装置10の挿入ピン6cを4番と5番の穴1aに挿入した場合、X線検出器20の挿入ピン7cについても4番と5番の穴1aに挿入する必要がある。
【0060】
最後に、X線照射装置10及びX線検出器20と計測コンピュータ50との間の電気的接続を行うことにより、図1に示される撮影システム100の設置が完了することになる。
【0061】
図3図4に示されるように、主となる部品は、支持具4、帯状体5、部分円環部材1、連結具2、軸芯調整具3、X線照射装置10の係止具6およびX線検出器20の係止具7である。従って、撮影システム100は、少ない部品点数によってコンパクトに構成されている。そのため、撮影システム100は、少ない作業スペースで例えば作業者2名程度で極めて短時間に、被検査対象である鉄筋コンクリート構造物30に設置することが可能となる。
【0062】
また、X線照射装置10とX線検出器20を部分円環部材1に取り付けるための穴1aが所定の等間隔で点対称に設けられているため、X線照射装置10とX線検出器20が正対位置となる穴1aのペアリングは予め決まっている。そのため、X線照射装置10とX線検出器20を鉄筋コンクリート構造物30に関し正対位置に配置すること、並びにX線照射装置10とX線検出器20の正対位置を保持した状態で配置位置を変更すること、並びに配置変更に係る角度変化を把握することが極めて容易となる。これにより、X線照射装置10とX線検出器20を鉄筋コンクリート構造物30に関し正対状態を保持した状態で同心円状に移動させ複数の照射方向(位相方向)から鉄筋コンクリート構造物30の内部をX線撮影することが極めて容易となる。
【0063】
図5は、本実施形態に係るX線遮蔽体60を示す説明図である。図5(a)はX線遮蔽体60の斜視図である。図5(b)はX線遮蔽体60の平面図である。
【0064】
このX線遮蔽体60は、X線コーンビームが出射される開口11aを除くX線源(X線発生装置)の全体を被う第1遮蔽材11と、開口11aと鉄筋コンクリート構造物30との間を遮蔽する第2遮蔽材12と、第2遮蔽材12と鉄筋コンクリート構造物30との間に形成される隙間を遮蔽する第3遮蔽材13とから構成されている。以下、各構成について説明する。
【0065】
第1遮蔽材11は、X線照射時にX線源から多方向に発生する漏洩X線を遮蔽する。鉛板を材料とする場合、厚さは2mm以上が望ましい。X線照射部分(コリメータ)に合わせて開口部(開口11a)を設けている。なお、開口11aの形状は菱形に限定されない。
【0066】
第2遮蔽材12は、第1遮蔽材11の開口11aから鉄筋コンクリート構造物30までの間を遮蔽する。第2遮蔽材12は、X線照射角度を考慮し、開口部の位置や大きさ、角度などを調整する。X線の直接光(高エネルギーのX線)を遮蔽するため、鉛板を材料とする場合、厚さは2mm以上が望ましい。
【0067】
鉄筋コンクリート構造物30の表面は湾曲した形状であるため、第2遮蔽材との間に隙間ができ、そこからX線が漏洩する。それを防ぐには隙間をなくすことが重要である。第3遮蔽材13は第1遮蔽材11や第2遮蔽材12と比較して薄肉(鉛板の場合、0.5mm程度が好ましい)で可撓性を持つことを特徴とし、鉄筋コンクリート構造物30の表面形状に沿って湾曲可能であるため、第2遮蔽材12と鉄筋コンクリート構造物30の間を隙間なく遮蔽することができる。
【0068】
このように、X線遮蔽体60はX線源の近傍でX線を遮蔽するため、遮蔽効率が良い。
【0069】
図6は、本実施形態に係るX線遮蔽体61を示す説明図である。図6(a)はX線遮蔽体61の斜視図である。図6(b)はX線遮蔽体61の平面図である。
【0070】
このX線遮蔽体61は、上記第1遮蔽材11と、X線コーンビームから漏洩するX線直接光・X線散乱光を遮蔽する第4遮蔽材14と、第4遮蔽材14と鉄筋コンクリート構造物30との隙間から漏洩するX線を遮蔽する第5遮蔽材15とから構成されている。以下、各構成について説明する。
【0071】
第4遮蔽材14は、X線照射装置10の側面部(必要な場合は上面部、下面部)から鉄筋コンクリート構造物30までの間を遮蔽する。従って、第4遮蔽材14はX線直接光やX線散乱光の遮蔽を目的とする。鉛板を材料とする場合、厚さは2mm以上が望ましい。図6(a)では側面延長部のみに取付けられているが、上面部・下面部にも取り付けることで、X線漏洩量を低減させることができるため、より望ましい。作業性を鑑みると、上面部の第4遮蔽材14は着脱可能であることが望ましい。
【0072】
第5遮蔽材15は、第4遮蔽材14と鉄筋コンクリート構造物30の隙間を遮蔽する。第5遮蔽材15は第4遮蔽材14よりも薄肉(鉛板の場合、0.5mm程度が好ましい)で可撓性を持つことを特徴とするため、鉄筋コンクリート構造物30の形状に沿って湾曲しながら遮蔽する。しかし、鉛板はある程度の厚さ(2mm程度)であれば少なからず可撓性を有する。そのため、図7に示されるように、第4遮蔽材14の板厚が2mm程度である場合、第5遮蔽材15の代替として第4遮蔽材14を延長させ、延長された第4遮蔽材14によって第1遮蔽材11と鉄筋コンクリート構造物30との間を遮蔽することも可能である。そのため、第5遮蔽材15については、第4遮蔽材14の代替として選択的に取り扱うことも可能と考える。ただし、第4遮蔽材14を第5遮蔽材15の代替とする場合、重量が増えて作業性が悪くなることが予想される。
【0073】
図8は、本実施形態に係るX線遮蔽体62を示す説明図である。図8(a)はX線遮蔽体61の斜視図である。図8(b)はX線遮蔽体61の平面図である。
このX線遮蔽体62は、上記X線遮蔽体60と上記X線遮蔽体61が組み合わされた構成となっている。従って、このX線遮蔽体62は、上記X線遮蔽体60の特徴と上記X線遮蔽体61の特徴を有することになる。そのため、X線照射時に撮影システム100から漏洩するX線漏洩量を極めて効果的に低減させることが可能となる。
【0074】
このように、本実施形態に係るX線遮蔽体60,61,62では撮影システム100の内でX線漏洩が多い部分を重点的に且つ冗長的に遮蔽するようになっている。そのため、撮影システム100と鉄筋コンクリート構造物30(検査対象物)を遮蔽材によって丸ごと被う必要がなく、撮影システム100の大型化を抑制することができる。これにより、撮影システム100の鉄筋コンクリート構造物30(検査対象物)への取付けと配置変更が極めて容易となる。
【0075】
図9は、本発明に係るX線検出器20の構成を示す説明図である。
X線検出器20は、各行がN個の画素(Nピクセル)と各列がM個の画素(Mピクセル)から成る画素アレイ20aと、第n行のスイッチラインSWnを正にバイアスして各画素のスイッチング素子を導通状態にする垂直シフトレジスタ20bと、各行の画素データを一時的に保存しながら計測用コンピュータ50に出力する水平シフトレジスタ20cと、画素アレイ20aと垂直シフトレジスタ20bと水平シフトレジスタ20cに電力を供給する電源20dとを備えている。
【0076】
画素N行×M列から成る画素アレイは、例えばガラス基板上にCsIやGOSなどのシート状のシンチレータが積層され、シンチレータ上にフォトダイオードアレイが積層されて、画素を構成している。各フォトダイオード(画素)には、コンデンサ(図10)と半導体スイッチング素子(10)が個別に接続されている。
【0077】
従って、鉄筋コンクリート構造物30を透過したX線は、シンチレータによって蛍光に変換され、その蛍光(光信号)をフォトダイオードが受光して、光信号の強度に応じた電荷に変換する。フォトダイオードによって生成された電荷は、各画素のコンデンサに蓄電される。
【0078】
コンデンサに蓄電された電荷は、計測用コンピュータ50から送信される駆動信号に基づいて垂直シフトレジスタ20bが対応するスイッチラインを正にバイアスすることによって、対応するスイッチラインに接続されている各スイッチング素子が閉じて対応する一行の各画素の電荷が第1列データラインDLから第M列データラインDLを通して取り出されるようになっている。
【0079】
取り出された各画素の電荷は、同じくガラス基板上に集積化されたチャージアンプ(図10)によって電圧信号に変換され、更にオペアンプ(図10)によって所定のレベルまで増幅される。増幅された電圧信号はA/D変換器(図6)によって所定のディジタル信号に変換され、水平シフトレジスタ20cによって順に計測用コンピュータ50に画素データとして取り込まれる。
【0080】
計測用コンピュータ50に画素データとして取り込まれる画素データは、計測用コンピュータ50が鉄筋コンクリート構造物30の内部についてのX線投影画像(2D画像)又は三次元内部画像(3D画像)を再構成する際に使用される。
【0081】
図10は、本発明に係るX線検出器20の各画素の構造を示す説明図である。なお、説明の都合上、1行1列の画素(1,1)、1行2列の画素(1,2)、2行1列の画素(2,1)及び2行2列の画素(2,2)のみを例示している。
【0082】
各画素は、ガラス基板に蒸着されたシンチレータ上にフォトダイオードアレイが集積化され、各フォトダイオードにコンデンサとスイッチング素子から成るチップが接続されている。スイッチング素子としては、例えばアモルファスシリコン(a-Si)や酸化物半導体の一種であるIn-Ga-Zn-O(IGZO)によるTFT(薄膜トランジスタ)を使用することが可能である。
【0083】
X線を蛍光に変換するシンチレータとしては、CsI、Gd、Tl doped CsI、Gd2O2S等を使用することができる。
【0084】
今、第1行スイッチラインSWが正にバイアスされる場合、画素(1,1)のスイッチング素子S11と画素(1,2)のスイッチング素子S12が閉状態(オン)となる。
これにより、コンデンサC11に蓄電していた電荷q11は第1列データラインDLを通して取り出され、第1列チャージアンプCAによって電圧信号に変換される。電圧信号はさらに第1列増幅器OAによって所定のレベルまで増幅され、増幅された電圧信号は、第1列AD変換器によってディジタル信号に変換される。ディジタル信号は水平シフトレジスタ20c内の第1メモリM1に保存される。第1メモリM1内のディジタル信号は水平シフトレジスタ20cによって所定のタイミングで計測用コンピュータ50に出力される。
【0085】
同様に、コンデンサC12に蓄電していた電荷q12は第2列データラインDLを通して取り出され、第2列チャージアンプCAによって電圧信号に変換される。電圧信号はさらに第2列増幅器OAによって所定のレベルまで増幅され、増幅された電圧信号は、第2列AD変換器によってディジタル信号に変換される。ディジタル信号は水平シフトレジスタ20c内の第2メモリM2に保存される。第2メモリM2内のディジタル信号は水平シフトレジスタ20cによって所定のタイミングで計測用コンピュータ50に出力される。
【0086】
図11は、本発明の一実施形態に係る撮影システム100を用いた鉄筋コンクリート構造物30内部の3D画像の再構成フロー図である。
先ず、ステップS1では、図12に示されるようにX線照射装置10とX線検出器20を鉄筋コンクリート構造物30に関して正対位置に保持した状態で、X線照射装置10とX線検出器20を鉄筋コンクリート構造物30の回りに所定の位相角度毎に渡り鉄筋コンクリート構造物30内部をX線照射する。本実施形態では、θ=0°、40°、60°、120°、140°、160°の6回にわたり鉄筋コンクリート構造物30に対するX線照射を実施している。
【0087】
ステップS2では、計測用コンピュータ50は、X線検出器20から出力される画素データ(ディジタル信号)を取り込んで、その画素データに基づいて鉄筋コンクリート構造物30の3次元内部画像(3D画像)を再構成する。
【0088】
画素データから3D画像を再構成する方法としては公知の圧縮センシング理論を取り入れたコーンビームの逐次近似画像再構成法などを使用することができる。
【0089】
また、3D画像の再構成において、計測用コンピュータ50の計算能力では足りない場合、3D画像の再構成に係るデータをデータ通信ネットワーク(例えば携帯電話通信網、或いはWi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信)を通してクラウドに送信し、クラウド上のコンピュータで再構成処理を行うことも可能である。
【0090】
以上の通り、本発明の一実施形態に係る撮影システム100によれば、X線照射装置10とX線検出器20を鉄筋コンクリート構造物30に関して正対位置に配置すること、並びにその正対位置を保持した状態で鉄筋コンクリート構造物30に関し同心円状に所定の照射角度(位相角)だけ位置変更することが極めて容易に行うことができるようになる。そのため、任意の複数の照射方向から鉄筋コンクリート構造物30内部についてのX線画像データ(画素データ)を取得することが可能となる。これにより、半周程度の少ない回数、例えば6~8回程度のX線照射によって鉄筋コンクリート構造物30内部についての明瞭な内部画像(3D画像)を取得することが可能となる。
【0091】
また、撮影システム100は少ない部品点数で軽量コンパクトに構成されている。これにより、少ない作業スペースで且つ最低限の人数の作業者によって、特に狭隘箇所に設置されている鉄筋コンクリート構造物30に対し好適に取り付けることが可能となる。
【0092】
更に、撮影システム100が備えるX線遮蔽体60,61,62は、X線源の周囲と開口11aより出射されたX線コーンビームの近傍、或いはX線源の周囲とX線コーンビームを包絡するX線照射装置10と鉄筋コンクリート構造物30の間、或いはX線源の周囲と開口11aより出射されたX線コーンビームの近傍とX線コーンビームを包絡するX線照射装置10と鉄筋コンクリート構造物30の間を遮蔽するように構成されている。これにより、X線照射時のX線漏洩量を従来の撮影システムより低減することが可能となる。
【0093】
以上、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る撮影システム100について説明してきたが、本発明の実施形態は上記のみに限定されることはない。すなわち、本発明の技術的範囲内において上記撮影システム100に対し種々の変更・修正を施すことが可能である。例えば、2つの連結具2のうち、1つを廃止して代わりに2つの部分円環部材1を開閉するヒンジ機構を追加することも可能である。
【0094】
また、部分円環部材1について半環状上板1bと中空パイプ1dを廃止して、代わりに半環状底板1cに穴1aを形成するようにすることも可能である。
【0095】
また、図13に示されるように、X線照射に関する他の実施形態として鉄筋コンクリート構造物30の円周方向の特定方向、例えば引張方向のみに限定して、例えばθ=5°~20°間隔で4~9回(なお図13では20°間隔で5回の例示。)にわたり鉄筋コンクリート構造物30の引張方向に対するX線照射を実施することも可能である。その場合、本発明の撮影システム100は鉄筋コンクリート構造物30の引張方向の鉄筋を精度よく3次元画像化できるためより実用的な手段となる。
【0096】
<他の実施形態>
上記の実施形態では、図4図12図13に示すように、引っ掛け部材6bの挿入ピン6cを、部分円環部材1の穴1aに差し込むことによって、1のX線照射装置10が部分円環部材1に取り付けられる例について説明したが、このような形態に限らず、複数のX線照射装置10が部分円環部材1に取り付けられるようにしてもよい。
【0097】
例えば、図14(a)の例では、2つのX線照射装置10を、2つの穴1a分の間隔を空けて共通の円環部材組立(固定手段)40に取り付けている。すなわち、2つのX線照射装置10が、鉄筋コンクリート構造物30の周方向(水平方向)に沿って配置されている。また、図14(b)の例では、2つのX線照射装置10を、間隔無く(1つの穴1a分の間隔も空けることなく)共通の円環部材組立(固定手段)40に取り付けている。
【0098】
ここで、図14(b)の例では、各X線照射装置10について、前述したX線遮蔽体60,61,62を何れも使用していない。つまり、設置に際して特に横方向(鉄筋コンクリート構造物30の周方向)に空間を必要とする第1遮蔽材1でX線源を覆う形態を採用していないため、第1遮蔽材11によるスペースの制約無く、X線照射装置10間(X線源間)の間隔を狭くして配置することが可能となり、結果として、より多くのX線照射装置10を、共通の円環部材組立(固定手段)40に取り付けることが可能となる。
【0099】
例えば、図14(c)の例では、3つのX線照射装置10を、間隔無く共通の円環部材組立(固定手段)40に取り付けており、図14(d)の例では、3つのX線照射装置10を、1つの穴1a分の間隔を空けて共通の円環部材組立(固定手段)40に取り付けている。さらに、図14(e)の例では、4つのX線照射装置10を、間隔無く共通の環部材組立(固定手段)40に取り付けている。
【0100】
図14(b)~図14(e)に示したX線照射装置10のように、X線源を覆うための遮蔽材として第1遮蔽材11を用いない形態を採用する場合、代わりに、第1遮蔽材11よりも横幅が小さい縦長の筐体を遮蔽材として用いるようにしてもよい。この縦長の筐体によって、X線源が覆われ、縦長の筐体に設けられた開口(例えば、図5図8に示した開口11aに相当する開口)からX線コーンビームが出射されるようにしてもよい。この開口には、例えば、第2遮蔽材12及び第3遮蔽材13(図5図8を参照)が取り付けられるようにしてもよい。
【0101】
このように、X線照射装置10の配置間隔に応じて、遮蔽材の形状を異ならせるようにしてもよい。例えば、所定数(例えば2)の穴1a分の間隔で配置する場合は、第1遮蔽材11を含むX線遮蔽体60,61,62の何れかを備えたX線照射装置10を採用し、所定数未満(例えば1または0)の穴1a分の間隔で配置する場合は、第1遮蔽材11とは異なる前述した縦長の筐体を備えたX線照射装置10を採用することにより、検査対象物に応じた配置間隔に柔軟に対応できるようにしてもよい。
【0102】
図14に示す例では、第1のX線照射装置10が、第1の係止具6に取り付けられ、第2のX線照射装置10が、第2の係止具6に取り付けられている。ここで、第1の係止具6の引掛部材6bが有する挿入ピン6c(図4)を、第1の穴1aに差し込み、第2の係止具6の引掛部材6bが有する挿入ピン6c(図4)を、第2の穴1aに差し込むことによって、第1のX線照射装置10及び第2のX線照射装置10が、部分円環部材1に懸架され、第1のX線照射装置10及び第2のX線照射装置10が、部分円環部材1に平行な状態、すなわち水平方向に並んだ状態で、部分円環部材1に固定されている。
【0103】
図14に示す例では、少なくとも1以上のX線照射装置10が、鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30cを中心にX線検出器20のX線検出面と正対しない配置となっている。しかしながら、このような配置とすることで、複数のX線照射装置10から出射されたX線が、共通のX線検出器20によって検出され、1のX線投影画像が取得される。すなわち、同時に複数の方向から照射されたX線に基づくX線画像データを取得することが可能であるため、照射方向を変えつつ逐次X線画像データを取得しなければならない労力を軽減して、作業効率を高めることができる。
【0104】
例えば、X線照射装置10を鉄筋コンクリート構造物30の周方向に1つ配置する場合は、X線検出器20と正対する位置に配置することで、X線の照射方向とX線検出面の法線方向とが一致するため、良好なX線画像を取得することができるという特徴がある。これに対して、X線照射装置10を鉄筋コンクリート構造物30の周方向に2つ配置する場合(図14(a)及び(b)を参照)は、撮影範囲が周方向に広がるため、前述したようにX線照射装置10を移動させる労力を軽減することができるとともに、異なる角度から鉄筋30aを撮影できるので、欠陥を検出しやすい。
【0105】
また、X線照射装置10を鉄筋コンクリート構造物30の周方向に3つ配置する場合(図14(c)及び(d)を参照)は、撮影範囲が周方向にさらに広がるため、3D画像を取得し易く、X線照射装置10を鉄筋コンクリート構造物30の周方向に4つ配置する場合(図14(e)を参照)は、撮影範囲が周方向にさらに広がるため、より鮮明な3D画像を取得することができる。
【0106】
ここで、X線照射装置10を鉄筋コンクリート構造物30の周方向に複数配置する場合、例えば、図14(c)または(d)に示すように、そのうちの1つを、X線検出器20と正対する位置に配置することで、良好なX線画像を取得するとともに、異なる角度から鉄筋30aを撮影できるという利点がある。
【0107】
図14に示す例では、複数のX線照射装置10を、鉄筋コンクリート構造物30の周方向に配置する例について説明したが、このような形態に限らず、複数のX線照射装置10を、鉛直方向(鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30c方向)に配置してもよい。図15に示す例では、L形部材6aに、2つのX線照射装置10を鉛直方向に並べて取り付けている。すなわち、2つのX線検出器20の各裏面(鉄筋コンクリート構造物30に対向しない面)には、共通のL形部材7aが、溶接または締結具によって取り付けられている(固定されている)。このような構成を採用することで、X線の照射範囲を縦方向に拡大させることができる。
【0108】
例えば、係止具6を部分円環部材1に固定していない状態で、予めL形部材6aに2つのX線照射装置10を取り付けておき、その状態で、係止具6の引掛部材6bが有する挿入ピン6c(図4)を、穴1aに差し込むことで、部分円環部材1には、L形部材6aを介して2つのX線照射装置10が鉛直方向に並んで取り付けられることになる。
【0109】
このように、複数のX線照射装置10を鉛直方向に配置する構成を採用する場合、X線検出器20のX線検出面も、複数のX線照射装置10に対応した高さを有することが好ましい。例えば、2つのX線照射装置10を鉛直方向に配置する場合は、2つのX線照射装置10によるX線照射範囲の高さ以上の高さのX線検出面を有するX線検出器20を、部分円環部材1に固定することが好ましい。これにより、円環部材組立40(部分円環部材1)の設置位置(高さ)を変更する回数を減少させることができ、作業効率を高めることができる。
【0110】
なお、図15の例では、4つのX線照射装置10(以下、本図の説明においては、第1のX線照射装置10~第4のX線照射装置10と称する)を配置する例が示されており、第1のX線照射装置10と第2のX線照射装置とが、何れも第1のL形部材6aに取り付けられることにより鉛直方向に並んで配置されており、第3のX線照射装置10と第4のX線照射装置10とが、何れも第2のL形部材6aに取り付けられることにより鉛直方向に並んで配置されている。
【0111】
そして、第1のX線照射装置10と第3のX線照射装置10とが、水平方向に並んで配置され、第2のX線照射装置10と第4のX線照射装置10とが、水平方向に並んで配置されている。このように、X線照射装置10を水平方向(鉄筋コンクリート構造物30の周方向)に複数配置してもよく、X線照射装置10を鉛直方向(鉄筋コンクリート構造物30の軸芯30c方向)に複数配置してもよく、X線照射装置10を水平方向に複数配置するとともに、X線照射装置10を鉛直方向にも複数配置してもよい。
【0112】
なお、特に、X線照射装置10を複数配置する場合、鉄筋コンクリート構造物30の外周面の撮影対象領域(X線照射領域)には、所定間隔毎に、X線画像に投影されるマーキングをしておくことが好ましい。これにより、マーキングの座標に基づいてX線画像を補正(画像処理)することが可能となり、結果として、劣化診断が行い易いように補正(画像処理)されたX線画像を取得することができる。なお、形状に特徴のある鉄筋(例えば、特に劣化が進行した鉄筋)の座標を基準としてX線画像を補正(画像処理)してもよい。
【0113】
図14の例では、X線検出器20のX線検出面が、平面である例、例えば、フラットパネルディテクタを採用している例について説明したが、これに限らず、X線検出面は、前述したように曲面であってもよく、例えば、可撓性のあるX線センサを用いることにより湾曲型に形成(変形)された検出面であってもよい。
【0114】
図16に示す例では、X線検出面が、部分円環部材1の円弧方向(鉄筋コンクリート構造物30の周方向)と平行であるため、X線照射装置10を複数設置した場合に、複数のX線照射装置10それぞれについて、X線照射装置10が向いている方向(X線の中心照射方向)と、X線検出面が向いている方向(法線方向)とが一致する。これにより、各X線照射装置10から照射されるX線を、X線検出面で効率的に検出することが可能となり、より鮮明なX線画像を取得することができる。
【0115】
図16(a)の例は、図14(a)のようにX線照射装置10を2つ配置した場合において、X線検出面を曲面とした例であり、図16(b)の例は、図14(c)のようにX線照射装置10を3つ配置した場合において、X線検出面を曲面とした例であり、図16(c)の例は、図14(e)のようにX線照射装置10を4つ配置した場合において、X線検出面を曲面とした例である。
【0116】
上記の例に示したように、本実施形態には、検査対象物である鉄筋コンクリート構造物30の周囲に取り付け可能であり、複数の第1係合部(取付穴1a)を有する第1部材としての円環部材組立40(部分円環部材1,1)と、1以上のX線照射装置10を取り付け可能であり、第1係合部に係合する第2係合部(挿入ピン6cを含む引掛部材6b)を有する第2部材としてのL形部材6aと、X線検出器20を取り付け可能であり、第1係合部に係合する第3係合部(挿入ピン7cを含む引掛部材7b)を有する第3部材としてのL形部材7aと、を含み、第2係合部は、複数の第1係合部のうちの何れかの第1係合部に係合し、第3係合部は、複数の第1係合部のうちの第2係合部が係合する第1係合部とは異なる第1係合部に係合する、撮影システム100が例示されている。
これにより、第1部材、第2部材、及び第3部材によって、1以上のX線照射装置10と、X線検出器20とが、鉄筋コンクリート構造物30の周囲の所定位置に設置される。また、第2部材に複数のX線照射装置10が取り付けられている場合には、これらを鉛直方向に並べて設置できる。
【0117】
このような構成において、第1係合部(取付穴1a)は、第1部材(円環部材組立40(部分円環部材1,1))の周方向に所定間隔で設けられている。
第2係合部(挿入ピン6cを含む引掛部材6b)を、X線照射装置10を設置したい位置に対応した第1係合部に係合させ、第3係合部(挿入ピン7cを含む引掛部材7b)を、X線検出器20を設置したい位置に対応した第1係合部に係合させることによって、第2部材(L形部材6a)に取り付けられた1以上のX線照射装置10、及び、第3部材(L形部材7a)に取り付けられたX線検出器20を、鉄筋コンクリート構造物30の周囲の任意の位置(作業者が意図した位置)に設置することができる。
【0118】
ここで、前述したように、複数の第1係合部のうちの1の第1係合部には、1以上のX線照射装置10が取り付けられた1の第2部材の第2係合部を係合させ、他の第1係合部には、1以上のX線照射装置10が取り付けられた他の第2部材の第2係合部を係合させることによって、複数のX線照射装置10を水平方向(及び鉛直方向)に並べて設置することができる。
【0119】
このような構成において、第2部材と第3部材とは異なる構造であってもよいが、同じ構造としてもよい。第2部材と第3部材とが共通の構造であることによって(本例では、挿入ピン6cを含む引掛部材6bを有するL形部材6aと、挿入ピン7cを含む引掛部材7bを有するL形部材7aとが共通の構造であることによって)、撮影システム100を構成するために必要となる部品の種類を少なくすることができる。
【0120】
なお、上記の例では、L形部材6aおよびL形部材7aの部分円環部材1への取り付け(固定)は、引っ掛け部材6b,7bの挿入ピン6c,7c(図4)を穴1aに差し込むことによって行われるが、これに限らず、他の嵌合手段によって行われるようにしてもよく、締結によって行われるようにしてもよい。
【0121】
また、上記の例では、L形部材6aに、X線照射装置10の裏面(鉄筋コンクリート構造物30に対向しない面)が、溶接または締結具によって取り付けられる(固定される)例について説明したが、これに限らず、取り付けは、嵌合手段によって行われるようにしてもよい。また、例えば、L形部材6aの長手方向(鉛直方向)に沿って、複数の第4係合部を設けておくとともに、X線照射装置10の裏面に第5係合部を設けておき、第4系合部に、X線照射装置10の第5系合部を係合させることにより、1のL形部材6aに1以上のX線照射装置10を取り付けることができるようにしてもよい。
【0122】
また、上記の例では、L形部材7aに、X線検出器20の裏面(鉄筋コンクリート構造物30に対向しない面)が、溶接または締結具によって取り付けられる(固定される)例について説明したが、これに限らず、取り付けは、嵌合手段によって行われるようにしてもよい。また、例えば、L形部材7aに第6係合部を設けておくとともに、X線検出器20の裏面に第7係合部を設けておき、第6系合部に、X線検出器20の第7系合部を係合させることにより、L形部材7aにX線検出器20を取り付けることができるようにしてもよい。
【0123】
<X線画像例>
図17は、X線検出器20のX線検出面(フラットパネルディテクタ)に対向する位置に1のX線照射装置10を配置して撮影されたX線画像の例である。画像の中央下部に示されるように、一部が劣化した鉄筋が2本存在することを視認できる。
【0124】
X線照射装置10の駆動電源は、電池であってもよく、電池とは異なる電源であってもよい。X線照射装置10のX線管として、冷陰極X線管を採用することにより、熱陰極X線管を採用する場合と比較して、加熱が不要となるためX線照射時以外は電力を消費させずにすむ。これにより、低出力電源であっても蓄電機構(キャパシタ)を用いて蓄電し、所定の電力が蓄電されたときに、その電力を使用してX線を照射することが可能となる。
【0125】
そのため、X線照射装置10の駆動電源は、例えば、低出力の電池であってもよく、電池とは異なる低出力電源、例えば、X線照射装置10が有するUSBポートに接続される電源であってもよい。すなわち、電池出力に基づいて蓄電され、X線照射装置10が駆動されるようにしてもよく、バスパワーに基づいて蓄電され、X線照射装置10が駆動されるようにしてもよい。なお、本形態のX線検出器10のX線管として、冷陰極X線管に限らず、熱陰極X線管を採用してもよいが、駆動電源を、以下のように低出力の電池とする場合には、冷陰極X線管を採用することが特に好ましい。
【0126】
図17の例では、単三電池(IEC及びJIS:R6)1本を使用して撮影しているが、その場合でも、1ショットあたり1.5分以下から3分以下で撮影することが可能であるとともに、検査対象物が電柱である場合には、電柱1本の検査に要するショット数程度の撮影が可能である。
【0127】
具体的には、対象が電柱である場合、電柱のX線画像撮影に必要なX線の照射には、100kV,0.3mAs程度の電圧条件,電流条件が必要であり、例えば、図17のX線画像では、電圧条件が95kV,電流条件が0.4mA,0.7sであった。
例えば、容量が1,000mAh程度のアルカリ単三電池の場合、50分で20ショット程度の撮影が可能であり、容量が2,000mAh程度のニッケル水素単三電池の場合、1時間で35ショット程度の撮影が可能であり、容量が2,500mAh程度のニッケル水素単三電池の場合、1.2時間で46ショット程度の撮影が可能であった。なお、1.5Vのリチウム単三電池の場合は、1.5時間で58ショット程度の撮影が可能であった。
【0128】
すなわち、単三電池1本で少なくとも1時間以内に20ショット以上(高性能の電池では40ショット程度)の撮影が可能であり、且つ、1ショットあたり3分以下(高性能の電池では1.5分以下)での撮影が可能である。
【0129】
また、図14図16に示したように、複数のX線照射装置10を配置した場合、それらの駆動電源を共通の1本の単三電池としたとしても、それぞれのX線照射装置10による撮影が可能であり、それぞれのショットに基づくX線画像を取得することができる。
【0130】
ここで、単三電池1本分程度の容量であれば、X線照射装置10の近くに作業者がいた場合や、仮に、誤ってX線遮蔽材を一切用いることなく撮影した場合であっても、1ショットで発生するX線量は一般的なレントゲン撮影と比較して少なく、線量率は制限されているため、その容量を使い切る程度では被ばく事故が発生する可能性は極めて低い。このような観点からも、安全性を考慮して、単三電池を駆動電源として用いることが好ましい。なお、一次電池であってもよく二次電池であってもよい。
【0131】
<検査対象物>
上記の実施形態では、撮影システム100を適用可能な鉄筋コンクリート構造物30が電柱である例について説明したが、これに限らず、鉄筋コンクリート構造物30は、例えば、橋脚として使用される鉄筋コンクリート柱であってもよく、ビル等の建築物に使用される鉄筋コンクリート柱であってもよい。撮影システム100は、例えば、断面が円形状または円環状の鉄筋コンクリート柱に適用することが可能であり、円柱状または円筒状の鉄筋コンクリート柱に関して、テーパ状となっているものも含めて適用し得る。
【符号の説明】
【0132】
1 部分円環部材
1a 穴
1b 半環状上板
1c 半環状底板
1d 中空パイプ
1e 半環状内側板
1f 端板
2 連結具
2a ボルト
2b ナット
3 軸芯調整具
4 支持具
4a 円弧板
4b 平板
5 帯状体
10 X線照射装置
11 第1遮蔽材
12 第2遮蔽材
13 第3遮蔽材
14 第4遮蔽材
15 第5遮蔽材
20 X線検出器
20a 画素アレイ
20b 垂直シフトレジスタ
20c 水平シフトレジスタ
20d 電源
30 鉄筋コンクリート構造物
30a 鉄筋
40 円環部材組立(固定手段)
50 計測用コンピュータ(コンピュータ)
100 撮影システム
図1
図2
図3
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図5
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