(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177353
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電解槽ユニット
(51)【国際特許分類】
C25B 9/60 20210101AFI20231206BHJP
C25B 9/00 20210101ALN20231206BHJP
C25B 9/77 20210101ALN20231206BHJP
【FI】
C25B9/60
C25B9/00 A
C25B9/00 E
C25B9/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118912
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2023541830の分割
【原出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022089229
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁司
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA03
4K021AB01
4K021CA11
(57)【要約】
【課題】気液分離を促進することができる電解槽ユニットを提供する。
【解決手段】電解槽ユニット2は、電極室4(陽極室8、陰極室10)と、陽極室8の上方に配置された陽極側気液分離室30と、陰極室10の上方に配置された陰極側気液分離室32とを備える。陽極室8と陽極側気液分離室30とを区画する区画板40には、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリット42が形成され、陰極室10と陰極側気液分離室32とを区画する区画板54には、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリット56が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極室と、前記電極室の上方に配置された気液分離室とを備える電解槽ユニットであって、
前記電極室と前記気液分離室とを区画する区画板には、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリットが形成されている電解槽ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩電解等のアルカリ金属塩化物水溶液の電解、あるいは、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の電解のいずれにも適用することができる電解槽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、アルカリ金属塩化物水溶液を電解して、塩素とアルカリ金属水酸化物を生成するための複極式電解槽の構成要素である電解槽ユニットが開示されている。この電解槽ユニットは、電極室と、電極室の上方に配置された気液分離室とを備える。
【0003】
気液分離室は、電極室枠の電極板(陽極板ないし陰極板)より上の背板の上方部分が逆U字形になるように外側に曲げられ、その逆U字形部分内にU字形の樋状部材が背板との間に通路となる隙間が設けられるように配置され、逆U字形部分とU字形の樋状部材で区画されている。
【0004】
そして、上記電解槽ユニットによれば、電極室内を上昇してきた気液混相流が、気液分離室の側部に設けられた通路からサイホン現象により吸い上げられるように気液分離室に入るので、気液分離室の外側下部にガスだまりができにくく、また、気液混相流が狭い通路を通ることにより、小さい気泡が分散された気泡流となり気液分離がスムースに行なわれる旨が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小さすぎる気泡は液体から分離しがたいため、上記電解槽ユニットにおいては、気液分離性の点で改善の余地がある。気体と液体との分離が不十分である場合には、電解槽内の圧力変動による振動が生じやすくなり、このような振動に起因して膜(食塩電解等のアルカリ金属塩化物水溶液の電解の場合にはイオン交換膜、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の電解の場合には隔膜)が損傷するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、気液分離を促進することができる電解槽ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の電解槽ユニットが提供される。すなわち、
「電極室と、前記電極室の上方に配置された気液分離室とを備える電解槽ユニットであって、
前記電極室と前記気液分離室とを区画する区画板には、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリットが形成されている電解槽ユニット」が提供される。
【0009】
好ましくは、前記区画板の上方には付加板が設けられており、前記付加板には、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリットが形成されている。
【0010】
前記区画板のスリットおよび前記付加板のスリットは、幅方向において互い違いに配置されているのが望ましい。前記付加板のスリットの幅は、前記区画板のスリットの幅よりも小さいのが好適である。前記付加板のスリットの数量は、前記区画板のスリットの数量よりも少ないのが好都合である。
【0011】
前記区画板の上方には、互いに上下方向に間隔をおいて第1付加板および第2付加板が設けられており、前記第1付加板および前記第2付加板のそれぞれには、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリットが形成されていてもよい。
【0012】
前記区画板のスリットおよび前記第1付加板のスリットは、幅方向において互い違いに配置されているのが好適である。前記第1付加板のスリットの幅は、前記区画板のスリットの幅よりも小さいのがよい。前記第1付加板のスリットの数量は、前記区画板のスリットの数量よりも少ないのが望ましい。
【0013】
前記第1付加板のスリットおよび前記第2付加板のスリットは、幅方向において互い違いに配置され得る。前記第2付加板のスリットの幅は、前記第1付加板のスリットの幅よりも小さいのが好ましい。前記第2付加板のスリットの数量は、前記第1付加板のスリットの数量よりも少ないのが好適である。
【0014】
前記第1付加板および前記第2付加板は、前記気液分離室の側壁に沿って上下方向に延びる連結片によって連結されているのが好都合である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電解槽ユニットにおいては、電極室において生じた気泡が区画板のスリットを通過する際に、気泡の合体・分裂が生じて気泡のサイズ分布が狭まり、気液分離室において破裂しやすいサイズの気泡の割合が増加するので、気液分離を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にしたがって構成された電解槽ユニットの第1実施形態の平面図。
【
図3】クラッド板が介在されない場合における断面図(
図2の断面に相当する断面)。
【
図6】本発明にしたがって構成された電解槽ユニットの第2実施形態の断面図。
【
図7】(a)
図6におけるVII-VII線の拡大断面図、(b)付加板のスリットの幅が区画板のスリットの幅よりも小さい場合のVII-VII線断面図。
【
図8】本発明にしたがって構成された電解槽ユニットの第3実施形態の断面図。
【
図10】第1付加板のスリットの幅が区画板のスリットの幅よりも小さく、第2付加板のスリットの幅が第1付加板のスリットの幅よりも小さい場合のIX-IX線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
まず、本発明の電解槽ユニットの第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(電解槽ユニット2)
図1および
図2を参照して説明すると、電解槽ユニット2は、液体の電気分解が行われる電極室4と、電気分解により生じた気体を電解液から分離させるための気液分離室6(
図2参照)とを備える。
【0019】
(電極室4)
図2に示すとおり、電極室4は、第1材料から形成された陽極室8と、第2材料から形成された陰極室10とを含む。図示の実施形態においては、陽極室8と陰極室10とは、第1材料の層12aおよび炭素鋼12bを有するクラッド板12を介して接続されている。アルカリ金属塩化物水溶液の電解に適用される場合には、たとえば、第1材料はチタン(Ti)、第2材料はニッケル(Ni)でよい。また、アルカリ金属水酸化物の電解に適用される場合には、第1・第2材料は同一でよく、たとえばニッケル(Ni)が採用され得るとともに、クラッド板12は不要である。
【0020】
(陽極室8)
図2に示すとおり、第1材料製(たとえば、チタン製)の陽極室8は、陽極板14と、陽極板14と間隔をおいて配置された第1隔壁16と、陽極板14と第1隔壁16との間に配置された複数の第1リブ18とを含む。
【0021】
(陽極板14)
矩形状の陽極板14には、図示していないが、多数の開口が設けられている。開口の形状は任意であり、たとえば、菱形状、扁平な扇形状、スリット状などが挙げられる。多数の開口は千鳥状に配置され得る。
【0022】
(第1隔壁16)
第1隔壁16は、
図2に矢印Dで示す奥行方向(D方向)において、陽極板14と間隔をおいて配置されている。
図2に示すとおり、第1隔壁16は、
図2に矢印Vで示す上下方向(V方向)に延びる主部16aと、主部16aの下端から陽極板14に向かって奥行方向に延びる底面部16bと、底面部16bの先端から下方に延びるフランジ部16cと、フランジ部16cの下端から主部16a側に向かって奥行方向に突出する突出部16dとを有する。
【0023】
図示していないが、第1隔壁16の幅方向(
図1に矢印Wで示す方向)両側部分にも、主部16aの幅方向端部から陽極板14に向かって奥行方向に延びる側面部と、側面部の先端から幅方向外側に延びるフランジ部と、フランジ部の外側端部から主部16a側に向かって奥行方向に突出する突出部とが設けられている。
【0024】
(第1リブ18)
図1に示すとおり、第1リブ18は、幅方向に間隔をおいて複数個設けられている。それぞれの第1リブ18は、上下方向(V方向)に沿って延びている。
図2を参照して説明すると、第1リブ18は、陽極板14から第1隔壁16に向かって奥行方向に延びる主部18aと、主部18aの第1隔壁16側の端部から幅方向に突出する複数の接合片18bとを有する。
【0025】
主部18aの陽極板14側の端部は陽極板14に接合され、各接合片18bは第1隔壁16の主部16aに接合されている。
図2を参照することによって理解されるとおり、主部18aの第1隔壁16側の端部には、上下方向に間隔をおいて複数の切り欠き18cが設けられている。切り欠き18cは、隣接する接合片18b同士の間に位置している。複数の切り欠き18cにより、陽極室8内において、液体および気体の幅方向への流通が確保されている。
【0026】
(陰極室10)
図2に示すとおり、第2材料製(たとえば、ニッケル製)の陰極室10は、集電体20と、集電体20と間隔をおいて配置された第2隔壁22と、集電体20と第2隔壁22との間に配置された複数の第2リブ24とを含む。
【0027】
(集電体20)
矩形状の集電体20には、陽極板14と同様に、多数の開口(図示していない。)が設けられている。開口の形状は任意であり、たとえば、菱形状、扁平な扇形状、スリット状などが採用され得る。多数の開口の配置は千鳥状でよい。
【0028】
多数の電解槽ユニット2が奥行方向に並べられ、かつ奥行方向両側からプレスされて電解槽が組み立てられる際、集電体20の外面には、金属製のクッション材26を介して陰極板28が装着される。
【0029】
(第2隔壁22)
第2隔壁22は、奥行方向(D方向)において、集電体20と間隔をおいて配置されている。
図2に示すとおり、第2隔壁22は、第1隔壁16と同様に、上下方向(V方向)に延びる主部22aと、主部22aの下端から集電体20に向かって奥行方向に延びる底面部22bと、底面部22bの先端から下方に延びるフランジ部22cと、フランジ部22cの下端から主部22a側に向かって奥行方向に突出する突出部22dとを有する。
【0030】
図示していないが、第2隔壁22の幅方向(W方向)両側部分にも、主部22aの幅方向端部から集電体20に向かって奥行方向に延びる側面部と、側面部の先端から幅方向外側に延びるフランジ部と、フランジ部の外側端部から主部22a側に向かって奥行方向に突出する突出部とが設けられている。
【0031】
(第2リブ24)
第2リブ24は、第1リブ18と同じように、幅方向に間隔をおいて複数個設けられており、上下方向(V方向)に沿って延びている。複数の第2リブ24は、幅方向において、複数の第1リブ18の位置に対応する位置に配置されている。第2リブ24は、集電体20から第2隔壁22に向かって奥行方向に延びる主部24aと、主部24aの第2隔壁22側の端部から幅方向に突出する複数の接合片24bとを有する。
【0032】
主部24aの集電体20側の端部は集電体20に接合され、各接合片24bは第2隔壁22の主部22aに接合されている。
図2を参照することによって理解されるとおり、主部24aの第2隔壁22の端部には、上下方向に間隔をおいて複数の切り欠き24cが設けられている。切り欠き24cは、隣接する接合片24b同士の間に位置している。複数の切り欠き24cにより、陰極室10内において、液体および気体の幅方向への流通が確保されている。
【0033】
(クラッド板12)
クラッド板12は、幅方向に間隔をおいて複数個設けられており、上下方向に沿って延びている。クラッド板12は、第1隔壁16の裏面と第2隔壁22の裏面との間であって、第1リブ18の接合片18bと第2リブ24の接合片24bとに対応する位置に配置されている。
【0034】
図示の実施形態のクラッド板12は、第1材料の層12a(たとえばチタン層)と、炭素鋼12bとが爆発圧着により接合された二層構造の板材である。第1材料の層12aは、第1材料製の第1隔壁16の裏面に接合され、炭素鋼12bは、第2材料製の第2隔壁22の裏面に接合されている。
【0035】
上記のとおり、電解槽ユニット2がアルカリ金属水酸化物の電解に適用される場合には、第1・第2材料は同一でよく、たとえばニッケル(Ni)が採用され得るとともに、クラッド板12は不要である。クラッド板12が介在されない場合、陽極室8と陰極室10とが直接的に接続される。具体的には、第1隔壁16の主部16aと第2隔壁22の主部22aとが接合され得る。
【0036】
あるいは、クラッド板12が介在されない場合、第2隔壁22の主部22aが設けられていなくてもよい。すなわち、
図3に示すように、陽極室8と陰極室10とが第1隔壁16の主部16aによって仕切られていてもよい。このとき、第2隔壁22の主部22aは設けられないが、第1隔壁16の下部には、第2隔壁22の底面部22b、フランジ部22cおよび突出部22dに相当する部材が接続される(
図3参照)。また、図示していないが、第1隔壁16の幅方向両側部分には、第2隔壁22の側面部、フランジ部および突出部に相当する部材が接続される。
【0037】
なお、クラッド板12が介在されない場合には、
図3に示す形態とは反対に、第1隔壁16の主部16aが設けられておらず、陽極室8と陰極室10とが第2隔壁22の主部22aによって仕切られていてもよい。このとき、第1隔壁16の主部16aは設けられないが、第2隔壁22の下部には、第1隔壁16の底面部16b、フランジ部16cおよび突出部16dに相当する部材が接続される。また、第2隔壁22の幅方向両側部分に、第1隔壁16の側面部、フランジ部および突出部に相当する部材が接続される。
【0038】
以下、クラッド板12が介在される場合について説明するが、クラッド板12および第2隔壁22の主部22aが設けられない形態(たとえば
図3に示す形態)の場合には、第2隔壁22を第1隔壁16と読み替えるものとする。また、クラッド板12および第1隔壁16の主部16aが設けられない形態(図示していない。)の場合には、第1隔壁16を第2隔壁22と読み替えるものとする。
【0039】
(気液分離室6)
気液分離室6は、陽極室8の上方に配置された陽極側気液分離室30と、陰極室10の上方に配置された陰極側気液分離室32とを有する。陽極側気液分離室30は、チタンなどの第1材料から形成され、陰極側気液分離室32は、ニッケルなどの第2材料から形成されている。
【0040】
(陽極側気液分離室30)
図2および
図4を参照して説明すると、陽極側気液分離室30は、第1隔壁16の上端側部分と、第1材料製の第1フランジ部材34とによって形成されている。第1フランジ部材34は、第1隔壁16の上端から奥行方向に延びる天面板36と、天面板36の先端から下方に延びる側壁38と、側壁38の下端から第1隔壁16に向かって奥行方向に延びる区画板40とを含む。なお、図示していないが、天面板36の基端(第1隔壁16側の端部)には、上方に突出する突出片が設けられていてもよい。
【0041】
(スリット42)
区画板40は、陽極室8と陽極側気液分離室30とを区画している。
図5に示すとおり、区画板40には、幅方向(W方向)に間隔をおいて奥行方向(D方向)に延びる複数のスリット42が形成されている。複数のスリット42によって、陽極室8から気液分離室30への液体および気体の流通が確保されている。
【0042】
(縦仕切り板44)
図4に示すように、区画板40の上面には、側壁38側と第1隔壁16側とに陽極側気液分離室30を奥行方向に分割する縦仕切り板44が設置されており、複数のスリット42は、縦仕切り板44と側壁38との間に設けられている。縦仕切り板44の上端は天面板36の下面よりも低く、縦仕切り板44を越えて、気液分離室30内の液体および気体が移動可能になっている。縦仕切り板44の上端は、横仕切り板45によって側壁38に連結されており、横仕切り板45には、液体および気体の移動を許容するための複数の開口45aが形成されている。
【0043】
(排出ノズル46)
図示していないが、天面板36の幅方向両端部は、第1隔壁16の側面部によって閉塞されている。第1隔壁16の側面部の一方には、陽極側気液分離室30から液体および気体を排出するための排出ノズル46(
図1参照)が付設されている。
【0044】
(陰極側気液分離室32)
図4に示すとおり、陰極側気液分離室32は、第2隔壁22の上端側部分と、第2材料製の第2フランジ部材48とによって形成されている。第2フランジ部材48は、第2隔壁22の上端から奥行方向に延びる天面板50と、天面板50の先端から下方に延びる側壁52と、側壁52の下端から第2隔壁22に向かって奥行方向に延びる区画板54とを含む。なお、図示していないが、天面板50の基端(第2隔壁22側の端部)には、上方に突出する突出片が設けられていてもよい。
【0045】
(スリット56)
区画板54は、陰極室10と陰極側気液分離室32とを区画している。区画板54には、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリット56が形成されている。複数のスリット56によって、陰極室10から気液分離室32への液体および気体の流通が確保されている。
【0046】
(縦仕切り板58)
区画板54の上面には、側壁52側と第2隔壁22側とに陰極側気液分離室32を奥行方向に分割する縦仕切り板58が接合されており、複数のスリット56は、縦仕切り板58と側壁52との間に設けられている。縦仕切り板58の上端は天面板50の下面よりも低く、縦仕切り板58を越えて、気液分離室32内の液体および気体が移動可能になっている。縦仕切り板58の上端は、横仕切り板59によって側壁52に連結されており、横仕切り板59には、液体および気体の移動を許容するための複数の開口59aが形成されている。
【0047】
(排出ノズル60)
図示していないが、天面板50の幅方向両端部は、第2隔壁22の側面部によって閉塞されている。第2隔壁22の側面部の一方には、陰極側気液分離室32から液体および気体を排出するための排出ノズル60(
図1参照)が付設されている。
【0048】
(下部フレーム62)
図2に示すように、電解槽ユニット2の下部には、中空の断面角形の下部フレーム62が設けられている。下部フレーム62は、ステンレス鋼等の適宜の金属材料から形成され得る。下部フレーム62には、上下方向に貫通する2個の貫通穴(図示していない。)が設けられている。
【0049】
(供給ノズル64、66)
下部フレーム62の一方の貫通穴には、陽極室8に原料液体を供給するための供給ノズル64(
図1および
図2参照)が装着されている。また、下部フレーム62の他方の貫通穴には、陰極室10に原料液体を供給するための供給ノズル66(
図1参照)が装着されている。なお、図示していないが、電解槽ユニット2の幅方向両側端部には、サイドフレームが設けられている。
【0050】
(電解槽)
電解槽を組み立てる際は、上述の電解槽ユニット2を多数準備し、陽極板14と陰極板28とが向かい合うように多数の電解槽ユニット2を奥行方向に並べるとともに、陽極板14と陰極板28との間にイオン交換膜または隔膜(図示していない。)を配置する。そして、油圧プレス装置などによって奥行方向両側から多数の電解槽ユニット2をプレスする。また、供給ノズル64、66および排出ノズル46、60にホースなどの流路部材を接続する。
【0051】
(電気分解)
電解槽において電気分解を行う際は、供給ノズル64を介して陽極室8に原料液体を供給するとともに、供給ノズル66を介して陰極室10に原料液体を供給する。そして、陽極板14および陰極板28に電圧を印加すると、陽極室8および陰極室10において、気体が発生し、多数の気泡を含む電解液が生成される。
【0052】
生成された気泡含有電解液は、陽極室8からは陽極側気液分離室30へと上昇し、また、陰極室10からは陰極側気液分離室32へと上昇する。そして、気泡含有電解液が区画板40、54のスリット42、56を通過する際には、気泡の合体・分裂が生じる。区画板40、54には、スリット42、56が多数形成されているものの、区画板40、54によって気泡の上昇が一時的に阻害されるため、気泡同士の衝突や、区画板40、54と気泡との衝突により、気泡の合体・分裂が生じる。
【0053】
なお、陽極室8ないし陰極室10において気泡が上昇する際にも、気泡同士の衝突が起こり、気泡の合体・分裂が生じるが、区画板40、54のスリット42、56においては、陽極室8ないし陰極室10において気泡が上昇する際よりも激しく気泡同士が衝突するとともに、気泡が区画板40、54に衝突するため、気泡の合体・分裂が促進される。
【0054】
陽極室8および陰極室10においては、大小さまざまなサイズの気泡が発生する。このような気泡群が区画板40、54のスリット42、56を通過する際には、気液分離性の悪化につながる比較的小さな気泡は他の気泡と合体する。また、破裂するとイオン交換膜または隔膜の損傷につながる圧力変動を引き起こす比較的大きな気泡は、小さな気泡へと分裂する。このようにして、比較的小さい気泡および比較的大きな気泡が減り、気泡のサイズ分布が狭まるので、破裂しやすく、かつ破裂してもイオン交換膜または隔膜の損傷につながる圧力変動を引き起こさないサイズの気泡の割合が増加する。
【0055】
したがって、区画板40、54のスリット42、56を通過し、陽極側・陰極側の気液分離室30、32に流入した気泡含有電解液にあっては、破裂しやすいサイズの気泡の割合が増加しているので、気液分離室30、32において気液分離が促進される。そして、気液分離室30、32に流入した気泡含有電解液は、気体と液体とに分離されて排出ノズル46、60から排出される。
【0056】
以上のとおりであり、電解槽ユニット2においては、陽極室8および陰極室10において生じた気泡が区画板40、54のスリット42、56を通過する際に、気泡の合体・分裂が生じて気泡のサイズ分布が狭まり、破裂しやすいサイズの気泡の割合が増加するので、気液分離を促進することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の電解槽ユニットの第2実施形態について、
図6および
図7を参照しつつ説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し説明を省略する。
【0058】
(陽極側の付加板70)
図6に示すとおり、第2実施形態の電解槽ユニット68においては、陽極室8と気液分離室30とを区画する区画板40の上方に第1材料製(たとえば、チタン製)の付加板70が設けられている。付加板70の奥行方向片側端部は側壁38に接し、付加板70の奥行方向他側端部は第1隔壁16に接している。
【0059】
(スリット72)
図7に示すとおり、付加板70には、幅方向(W方向)に間隔をおいて奥行方向(D方向)に延びる複数のスリット72が形成されている。複数のスリット72は、区画板40のスリット42の上方に位置する。区画板40のスリット42および付加板70のスリット72については、下記(a)から(c)までのうち1個以上の条件を充足するのが好ましい。
(a)区画板40のスリット42および付加板70のスリット72は、幅方向において互
い違いに配置されていること(
図7(a)、
図7(b)参照)。
(b)付加板70のスリット72の幅W2は、区画板40のスリット42の幅W1よりも
小さいこと(W2<W1、
図7(b)参照)。
(c)付加板70のスリット72の数量は、区画板40のスリット42の数量よりも少な
いこと。
【0060】
(仕切り片74)
図6を参照して説明すると、区画板40と付加板70との間には、側壁38側と第1隔壁16側とに陽極側気液分離室30を奥行方向に分割する第1材料製の仕切り片74が設けられている。仕切り片74の下端は区画板40に接合ないし嵌合され、仕切り片74の上端は付加板70に接合ないし嵌合されている。仕切り片74と側壁38との間に、区画板40のスリット42および付加板70のスリット72が位置している。
【0061】
(縦仕切り板76)
付加板70の上面(仕切り片74の直上)には、側壁38側と第1隔壁16側とに気液分離室30を奥行方向に分割する第1材料製の縦仕切り板76が接合ないし嵌合されている。縦仕切り板76の上端は天面板36の下面よりも低く、縦仕切り板76を越えて、気液分離室30内の液体および気体が移動可能になっている。縦仕切り板76の上端は、横仕切り板77によって側壁38に連結されており、横仕切り板77には、液体および気体の移動を許容するための複数の開口77aが形成されている。
【0062】
付加板70には、気液分離室30内の液体および気体の移動を許容する複数の貫通穴78が設けられている。貫通穴78は、縦仕切り板76と第1隔壁16との間に位置する。
【0063】
(陰極側の付加板80)
陰極室10と気液分離室32とを区画する区画板54の上方には、第2材料製(たとえば、ニッケル製)の付加板80が設けられている。付加板80の奥行方向片側端部は側壁52に接し、付加板80の奥行方向他側端部は第2隔壁22に接している。
【0064】
(付加板80のスリット)
図示していないが、付加板80にも、陽極側の付加板70と同様に、幅方向に間隔をおいて奥行方向に延びる複数のスリットが形成されている。複数のスリットは、区画板54のスリット56の上方に位置する。区画板54のスリット56および付加板80のスリットについても、下記(d)から(f)までのうち、1個以上の条件を充足するのが好ましい。
(d)区画板54のスリット56および付加板80のスリットは、幅方向において互い違
いに配置されていること。
(e)付加板80のスリットの幅は、区画板54のスリット56の幅よりも小さいこと。
(f)付加板80のスリットの数量は、区画板54のスリット56の数量よりも少ないこ
と。
【0065】
(仕切り片82)
区画板54と付加板80との間には、側壁52側と第2隔壁22側とに陰極側気液分離室32を奥行方向に分割する第2材料製の仕切り片82が設けられている。仕切り片82の下端は区画板54に接合ないし嵌合され、仕切り片82の上端は付加板80に接合ないし嵌合されている。仕切り片82と側壁52との間に、区画板54のスリット56および付加板80のスリットが位置している。
【0066】
(縦仕切り板84)
付加板80の上面(仕切り片82の直上)には、側壁52側と第2隔壁22側とに気液分離室32を奥行方向に分割する第2材料製の縦仕切り板84が接合ないし嵌合されている。縦仕切り板84の上端は天面板50の下面よりも低く、縦仕切り板84を越えて、気液分離室32内の液体および気体が移動可能になっている。縦仕切り板84の上端は、横仕切り板85によって側壁52に連結されており、横仕切り板85には、液体および気体の移動を許容するための複数の開口85aが形成されている。
【0067】
(貫通穴86)
付加板80には、陽極側の付加板70と同じように、気液分離室32内の液体および気体の移動を許容する複数の貫通穴86が設けられている。貫通穴86は、縦仕切り板84と第2隔壁22との間に位置する。
【0068】
第2実施形態においても、気泡含有電解液が陽極室8から陽極側気液分離室30へ上昇するとともに、陰極室10からも気泡含有電解液が陰極側気液分離室32へ上昇する。そして、気泡含有電解液が区画板40、54のスリット42、56を通過する際に、気泡の合体・分裂が生じるとともに、付加板70のスリット72および付加板80のスリットを通過する際にも、気泡の合体・分裂が生じる。したがって、第2実施形態においては、第1実施形態よりも気泡の合体・分裂が促進されるので、気液分離性が向上する。
【0069】
また、第2実施形態のように、陽極側の区画板40のスリット42および付加板70のスリット72が幅方向において互い違いに配置され(
図7参照)、陰極側の区画板54のスリット56および付加板80のスリットが幅方向において互い違いに配置されていると(上記条件(a)・(d)が充足されていると)、気泡の合体・分裂が一層促進される。
【0070】
さらに、付加板70のスリット72の幅W2が区画板40のスリット42の幅W1よりも小さく、付加板80のスリットの幅が区画板54のスリット56の幅よりも小さいと(上記条件(b)・(e)が充足されると)、あるいは、付加板70のスリット72の数量が区画板40のスリット42の数量よりも少なく、付加板80のスリットの数量が区画板54のスリット56の数量よりも少ないと(上記条件(c)・(f)が充足されると)、より効果的に気泡の合体・分裂が促進される。
【0071】
(第3実施形態)
次に、
図8および
図9を参照して本発明の電解槽ユニットの第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態においても、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し説明を省略する。
【0072】
(陽極側の第1付加板90、第2付加板92)
図8に示すように、第3実施形態の電解槽ユニット88においては、陽極室8と気液分離室30とを区画する区画板40の上方に、互いに上下方向に間隔をおいて第1付加板90および第2付加板92が設けられている。第1・第2付加板90、92は、第1材料製(たとえば、チタン製)である。
【0073】
(連結片94)
図示の実施形態では、第1付加板90の奥行方向片側端部および第2付加板92の奥行方向片側端部は、気液分離室30の側壁38に沿って上下方向に延びる第1材料製の連結片94によって連結されている。連結片94は側壁38に接し、第1・第2付加板90、92の奥行方向他側端部は第1隔壁16に接している。なお、
図8を参照することによって理解されるとおり、第3実施形態の側壁38は、連結片94が設けられる部分が外側に若干突出している。突出部分を符号38aで示す。
【0074】
(スリット96、98)
図9に示すとおり、第1・第2付加板90、92のそれぞれには、幅方向(W方向)に間隔をおいて奥行方向(D方向)に延びる複数のスリット96、98が形成されている。スリット96、98は、区画板40のスリット42の上方に位置する。区画板40のスリット42および第1付加板90のスリット96については、下記(g)から(i)までのうち1個以上の条件を充足するのが好ましい。
(g)区画板40のスリット42および第1付加板90のスリット96は、幅方向におい
て互い違いに配置されていること(
図9、
図10参照)。
(h)第1付加板90のスリット96の幅W2は、区画板40のスリット42の幅W1よ
りも小さいこと(W2<W1、
図10参照)。
(i)第1付加板90のスリット96の数量は、区画板40のスリット42の数量よりも
少ないこと。
【0075】
また、第1付加板90のスリット96および第2付加板92のスリット98についても、下記(j)から(l)までのうち1個以上の条件を充足するのが好ましい。
(j)第1付加板90のスリット96および第2付加板92のスリット98は、幅方向に
おいて互い違いに配置されていること(
図9、
図10参照)。
(k)第2付加板92のスリット98の幅W3は、第1付加板90のスリット96の幅W
2よりも小さいこと(W3<W2、
図10参照)。
(l)第2付加板92のスリット98の数量は、第1付加板90のスリット96の数量よ
りも少ないこと。
【0076】
(仕切り片100)
図示の実施形態においては、
図8に示すとおり、区画板40と第1付加板90との間には、側壁38側と第1隔壁16側とに気液分離室30を奥行方向に分割する第1材料製の仕切り片100が設けられている。仕切り片100の下端は区画板40に接合ないし嵌合され、仕切り片100の上端は第1付加板90に接合ないし嵌合されている。仕切り片100と側壁38との間に、区画板40のスリット42および第1付加板90のスリット96が位置している。
【0077】
ただし、下記(1)から(4)までの条件が充足される場合には、仕切り片100が設けられていなくてもよい。
(1)区画板40と側壁38の突出部分38aとの間の曲げ部分R1の少なくとも一部ま
でスリット42が延びていること。
(2)第1付加板90と連結片94との間の曲げ部分R2の少なくとも一部までスリット
96が延びていること。
(3)曲げ部分R1の曲げ半径が、曲げ部分R2の曲げ半径よりも小さいこと。
(4)曲げ部分R1と曲げ部分R2との間の隙間よりも、区画板40の平坦部と第1付加
板90の平坦部との間の隙間が小さく、区画板40の平坦部と第1付加板90の平
坦部との間における気液の流通がほとんどなく、曲げ部分R1と曲げ部分R2との
隙間を気液が流通すること。
【0078】
(第1縦仕切り板102)
第1付加板90と第2付加板92との間(仕切り片100の直上)には、側壁38側と第1隔壁16側とに気液分離室30を奥行方向に分割する第1材料製の縦仕切り板102が設けられている。第1縦仕切り板102の下端は第1付加板90に接合ないし嵌合され、第1縦仕切り板102の上端は第2付加板92に接合ないし嵌合されている。第1縦仕切り板102と側壁38との間に、第2付加板92のスリット98が位置している。
【0079】
(第2縦仕切り板104)
第2付加板92の上面(第1縦仕切り板102の直上)には、側壁38側と第1隔壁16側とに気液分離室30を奥行方向に分割する第1材料製の第2縦仕切り板104が接合ないし嵌合されている。第2縦仕切り板104の上端は天面板36の下面よりも低く、第2縦仕切り板104を越えて、気液分離室30内の液体および気体が移動可能になっている。第2縦仕切り板104の上端は、横仕切り板105によって側壁38に連結されており、横仕切り板105には、液体および気体の移動を許容するための複数の開口105aが形成されている。
【0080】
第1・第2付加板90、92には、気液分離室30内の液体および気体の移動を許容する複数の貫通穴106、108が設けられており、貫通穴106、108は、第1・第2縦仕切り板102、104と第1隔壁16との間に配置されている。なお、第1付加板90には、貫通穴106が設けられていなくてもよい。
【0081】
(陰極側の第1付加板110、第2付加板112)
陰極室10と気液分離室32とを区画する区画板54の上方には、互いに上下方向に間隔をおいて第1付加板110および第2付加板112が設けられている。第1・第2付加板110、112は、第2材料製(たとえば、ニッケル製)である。
【0082】
(連結片114)
図示の実施形態では、第1付加板110の奥行方向片側端部および第2付加板112の奥行方向片側端部は、気液分離室32の側壁52に沿って上下方向に延びる第2材料製の連結片114によって連結されている。連結片114は側壁52に接し、第1・第2付加板110、112の奥行方向他側端部は第2隔壁22に接している。なお、側壁52は、連結片114が設けられる部分が外側に若干突出している。突出部分を符号52aで示す。
【0083】
(スリット)
図示していないが、第1付加板110には、幅方向(W方向)に間隔をおいて奥行方向(D方向)に延びる複数のスリットが形成されている。また、第2付加板112にも、幅方向(W方向)に間隔をおいて奥行方向(D方向)に延びる複数のスリット118(
図8参照)が形成されている。
【0084】
第1付加板110のスリットおよび第2付加板112のスリット118は、区画板54のスリット56の上方に位置する。区画板54のスリット56および第1付加板110のスリットについては、下記(m)から(o)までのうち1個以上の条件を充足するのが好ましい。
(m)区画板54のスリット56および第1付加板110のスリットは、幅方向において
互い違いに配置されていること。
(n)第1付加板110のスリットの幅は、区画板54のスリット56の幅よりも小さい
こと。
(o)第1付加板110のスリットの数量は、区画板54のスリット56の数量よりも
少ないこと。
【0085】
また、第1付加板110のスリットおよび第2付加板112のスリット118についても、下記(p)から(r)までのうち1個以上の条件を充足するのが好ましい。
(p)第1付加板110のスリットおよび第2付加板112のスリット118は、幅方向
において互い違いに配置されていること。
(q)第2付加板112のスリット118の幅は、第1付加板110のスリットの幅より
も小さいこと。
(r)第2付加板112のスリット118の数量は、第1付加板110のスリットの数量
よりも少ないこと。
【0086】
(仕切り片120)
区画板54と第1付加板110との間には、側壁52側と第2隔壁22側とに気液分離室32を奥行方向に分割する第2材料製の仕切り片120が設けられている。仕切り片120の下端は区画板54に接合ないし嵌合され、仕切り片120の上端は第1付加板110に接合ないし嵌合されている。仕切り片120と側壁52との間に、区画板54のスリット56および第1付加板110のスリットが位置している。なお、仕切り片120は、上記(1)から(4)までに相当する条件が充足される場合には、設けられていなくてもよい。
【0087】
(第1縦仕切り板122)
第1付加板110と第2付加板112との間(仕切り片120の直上)には、側壁52側と第2隔壁22側とに気液分離室32を奥行方向に分割する第2材料製の縦仕切り板122が設けられている。第1縦仕切り板122の下端は第1付加板110に接合ないし嵌合され、第1縦仕切り板122の上端は第2付加板112に接合ないし嵌合されている。第1縦仕切り板122と側壁52との間に、第2付加板112のスリット118が位置している。
【0088】
(第2縦仕切り板124)
第2付加板112の上面(第1縦仕切り板122の直上)には、側壁52側と第2隔壁22側と気液分離室32を奥行方向に分割する第2材料製の第2縦仕切り板124が接合ないし嵌合されている。第2縦仕切り板124の上端は天面板50の下面よりも低く、第2縦仕切り板124を越えて、気液分離室32内の液体および気体が移動可能になっている。第2縦仕切り板124の上端は、横仕切り板125によって側壁52に連結されており、横仕切り板125には、液体および気体の移動を許容するための複数の開口125aが形成されている。
【0089】
第1・第2付加板110、112には、気液分離室32内の液体および気体の移動を許容する複数の貫通穴126、128が設けられており、貫通穴126、128は、第1・第2縦仕切り板122、124と第2隔壁22との間に配置されている。なお、第1付加板110には、貫通穴126が設けられていなくてもよい。
【0090】
第3実施形態においても、気泡含有電解液が陽極室8から陽極側気液分離室30へ上昇するとともに、陰極室10からも気泡含有電解液が陰極側気液分離室32へ上昇する。そして、気泡含有電解液が区画板40、54のスリット42、56を通過する際に、気泡の合体・分裂が生じる。
【0091】
さらに、第1付加板90のスリット96および第1付加板110のスリットを通過する際にも気泡の合体・分裂が生じるとともに、第2付加板92、112のスリット98、118を通過する際にも気泡の合体・分裂が生じる。したがって、第3実施形態においては、第1・第2実施形態よりも気泡の合体・分裂が促進されるので、気液分離性が向上する。
【0092】
また、
図9に示すように、陽極側の区画板40のスリット42および第1付加板90のスリット96、第1付加板90のスリット96および第2付加板92のスリット98が幅方向において互い違いに配置され、陰極側においても、区画板54のスリット56および第1付加板110のスリット、第1付加板110のスリットおよび第2付加板112のスリット118が幅方向において互い違いに配置されていると(上記条件(g)・(j)・(m)・(p)が充足されていると)、気泡の合体・分裂が一層促進される。さらに、スリット同士の幅に係る上記条件(h)・(k)・(n)・(q)、あるいは、スリット同士の数量に係る上記条件(i)・(l)・(o)・(r)が充足されている場合には、より効果的に気泡の合体・分裂が促進される。
【0093】
ところで、多数の電解槽ユニット88を奥行方向に並べて奥行方向両側からプレスする際は、第1フランジ部材34と第2フランジ部材48とがガスケット(図示していない。)を介して互いに押し付けられる。具体的には、側壁38の突出部分38aと側壁52の突出部分52aとがガスケットを介して押し合うことになる。
【0094】
上述したとおり、第3実施形態においては、陽極側の第1・第2付加板90、92が気液分離室30の側壁38に沿って上下方向に延びる連結片94によって連結され、陰極側においても、第1・第2付加板110、112が気液分離室32の側壁52に沿って上下方向に延びる連結片114によって連結されている。
【0095】
このため、第1フランジ部材34は、第1・第2付加板90、92および連結片94によって補強され、第2フランジ部材48も、第1・第2付加板110、112および連結片114によって補強されるので、第1・第2フランジ部材34、48の肉厚を薄くしてコストを低減することができる。また、第1・第2フランジ部材34、48の肉厚を薄くしても、第1フランジ部材34と第2フランジ部材48との面圧低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0096】
2:電解槽ユニット(第1実施形態)
4:電極室
6:気液分離室
8:陽極室
10:陰極室
30:陽極側気液分離室
32:陰極側気液分離室
38:側壁(陽極側)
40:区画板(陽極側)
42:スリット(陽極側)
52:側壁(陰極側)
54:区画板(陰極側)
56:スリット(陰極側)
68:電解槽ユニット(第2実施形態)
70:付加板(陽極側)
72:スリット
80:付加板(陰極側)
88:電解槽ユニット(第3実施形態)
90:第1付加板(陽極側)
92:第2付加板(陽極側)
94:連結片
96:スリット(第1付加板)
98:スリット(第2付加板)
110:第1付加板(陰極側)
112:第2付加板(陰極側)
114:連結片
118:スリット(第2付加板)