(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177421
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20231207BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20231207BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231207BHJP
B24B 37/32 20120101ALI20231207BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B24B37/30 Z
B24B41/06 L
B24B49/10
B24B37/32 A
H01L21/304 622R
H01L21/304 622S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090066
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑多
(72)【発明者】
【氏名】高橋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 暢行
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB92
3C034CA16
3C034CB08
3C158AA07
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC02
3C158DA12
3C158EA12
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA20
5F057AA31
5F057BA15
5F057BA21
5F057BB03
5F057CA12
5F057DA03
5F057FA01
5F057FA18
5F057FA19
5F057GA02
5F057GA12
5F057GA15
5F057GB04
5F057GB26
5F057GB30
(57)【要約】
【課題】ウェハと研磨パッドとの間に生じる摩擦力を精度よく決定することができる研磨装置が提供される。
【解決手段】研磨装置は、ヘッドアーム20に隣接して配置され、かつ研磨ヘッド1に作用する三軸方向の力に関する情報を検出する三軸センサを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨テーブルに押圧する研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドに連結されたヘッドシャフトと、
前記ヘッドシャフトを回転可能に支持するヘッドアームと、
前記ヘッドアームに隣接して配置され、かつ前記研磨ヘッドに作用する三軸方向の力に関する情報を検出する三軸センサと、を備える、研磨装置。
【請求項2】
前記研磨装置は、前記三軸センサに電気的に接続された制御装置を備えており、
前記制御装置は、前記基板の研磨中において、前記三軸センサから送られる信号に基づいて算出された前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を監視する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記三軸センサから送られる信号に基づいて、前記基板の傾きを測定し、
前記測定された基板の傾きに基づいて、前記研磨ヘッドの姿勢を制御する、請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記算出された摩擦力と所定のしきい値とを比較し、
前記摩擦力が前記しきい値に到達したときに、前記基板の研磨終点を決定する、請求項2または請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記研磨装置は、前記研磨ヘッドのリテーナリングの一部に局所荷重を加える、前記制御装置に電気的に接続された局所荷重付与装置を備えており、
前記制御装置は、
前記三軸センサから送られる信号に基づいて、前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を算出し、
前記算出された摩擦力に基づいて、前記局所荷重付与装置の動作を制御する、請求項2または請求項3に記載の研磨装置。
【請求項6】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨テーブルに押圧する研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドに連結されたヘッドシャフトと、
前記ヘッドシャフトを回転可能に支持するヘッドアームと、
前記ヘッドアームの両側に配置された第1ハウジングプレートおよび第2ハウジングプレートと、
前記第1ハウジングプレートと前記ヘッドアームとの間に配置され、かつ前記研磨ヘッドに作用する力に関する情報を検出する第1センサ群と、
前記第2ハウジングプレートと前記ヘッドアームとの間に配置され、かつ前記研磨ヘッドに作用する力に関する情報を検出する第2センサ群と、を備える、研磨装置。
【請求項7】
前記第1センサ群および前記第2センサ群のそれぞれは、複数の力センサを備えており、
前記複数の力センサは、前記ヘッドシャフトからの距離が等しい位置に配置されている、請求項6に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記研磨装置は、前記第1センサ群および前記第2センサ群に電気的に接続された制御装置を備えており、
前記制御装置は、前記基板の研磨中において、前記第1センサ群および前記第2センサ群から送られる信号に基づいて算出された前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を監視する、請求項6または請求項7に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記第1センサ群および前記第2センサ群から送られる信号に基づいて、前記基板の傾きを測定し、
前記測定された基板の傾きに基づいて、前記研磨ヘッドの姿勢を制御する、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記算出された摩擦力と所定のしきい値とを比較し、
前記摩擦力が前記しきい値に到達したときに、前記基板の研磨終点を決定する、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記研磨装置は、前記研磨ヘッドのリテーナリングの一部に局所荷重を加える、前記制御装置に電気的に接続された局所荷重付与装置を備えており、
前記制御装置は、
前記第1センサ群および前記第2センサ群から送られる信号に基づいて、前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を算出し、
前記算出された摩擦力に基づいて、前記局所荷重付与装置の動作を制御する、請求項8に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程における技術として、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)が知られている。CMPを行うための研磨装置は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、ウェハを保持するための研磨ヘッドと、を備えている。
【0003】
このような研磨装置を用いてウェハを研磨する場合には、研磨ヘッドによりウェハを保持しつつ、ウェハを研磨パッドの研磨面に対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨テーブルと研磨ヘッドとを相対運動させることによりウェハが研磨面に摺接し、ウェハの表面が研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェハを研磨するとき、ウェハと研磨パッドとの間には、摩擦力が生じる。この摩擦力を監視することにより、研磨ヘッドの押圧力を制御したり、ウェハの研磨終点を決定することができる。例えば、積層された上層膜および下層膜を有するウェハを研磨する場合、上層膜が研磨により除去されると、下層膜が露出する。摩擦力を監視することにより、下層膜が露出した時点を研磨終点に決定することができる。
【0006】
ウェハと研磨パッドとの間に生じる摩擦力に応じて、研磨テーブルを回転させるテーブルモータのトルク電流が変化する。このトルク電流の変化に基づいて摩擦力を決定する方法があるが、このような方法では、モータの機差や研磨ヘッドの組み立てのばらつきに起因する電流の誤差範囲が大きい。結果として、ウェハと研磨パッドとの間に生じる摩擦力を精度よく決定することができないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、ウェハと研磨パッドとの間に生じる摩擦力を精度よく決定することができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨テーブルに押圧する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに連結されたヘッドシャフトと、前記ヘッドシャフトを回転可能に支持するヘッドアームと、前記ヘッドアームに隣接して配置され、かつ前記研磨ヘッドに作用する三軸方向の力に関する情報を検出する三軸センサと、を備える、研磨装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記研磨装置は、前記三軸センサに電気的に接続された制御装置を備えており、前記制御装置は、前記基板の研磨中において、前記三軸センサから送られる信号に基づいて算出された前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を監視する。
一態様では、前記制御装置は、前記三軸センサから送られる信号に基づいて、前記基板の傾きを測定し、前記測定された基板の傾きに基づいて、前記研磨ヘッドの姿勢を制御する。
一態様では、前記制御装置は、前記算出された摩擦力と所定のしきい値とを比較し、前記摩擦力が前記しきい値に到達したときに、前記基板の研磨終点を決定する。
一態様では、前記研磨装置は、前記研磨ヘッドのリテーナリングの一部に局所荷重を加える、前記制御装置に電気的に接続された局所荷重付与装置を備えており、前記制御装置は、前記三軸センサから送られる信号に基づいて、前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を算出し、前記算出された摩擦力に基づいて、前記局所荷重付与装置の動作を制御する。
【0010】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨テーブルに押圧する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに連結されたヘッドシャフトと、前記ヘッドシャフトを回転可能に支持するヘッドアームと、前記ヘッドアームの両側に配置された第1ハウジングプレートおよび第2ハウジングプレートと、前記第1ハウジングプレートと前記ヘッドアームとの間に配置され、かつ前記研磨ヘッドに作用する力に関する情報を検出する第1センサ群と、前記第2ハウジングプレートと前記ヘッドアームとの間に配置され、かつ前記研磨ヘッドに作用する力に関する情報を検出する第2センサ群と、を備える、研磨装置が提供される。
【0011】
一態様では、前記第1センサ群および前記第2センサ群のそれぞれは、複数の力センサを備えており、前記複数の力センサは、前記ヘッドシャフトからの距離が等しい位置に配置されている。
一態様では、前記研磨装置は、前記第1センサ群および前記第2センサ群に電気的に接続された制御装置を備えており、前記制御装置は、前記基板の研磨中において、前記第1センサ群および前記第2センサ群から送られる信号に基づいて算出された前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を監視する。
一態様では、前記制御装置は、前記第1センサ群および前記第2センサ群から送られる信号に基づいて、前記基板の傾きを測定し、前記測定された基板の傾きに基づいて、前記研磨ヘッドの姿勢を制御する。
【0012】
一態様では、前記制御装置は、前記算出された摩擦力と所定のしきい値とを比較し、前記摩擦力が前記しきい値に到達したときに、前記基板の研磨終点を決定する。
一態様では、前記研磨装置は、前記研磨ヘッドのリテーナリングの一部に局所荷重を加える、前記制御装置に電気的に接続された局所荷重付与装置を備えており、前記制御装置は、前記第1センサ群および前記第2センサ群から送られる信号に基づいて、前記基板と前記研磨ヘッドとの間に生じる摩擦力を算出し、前記算出された摩擦力に基づいて、前記局所荷重付与装置の動作を制御する。
【発明の効果】
【0013】
研磨装置は、研磨ヘッドに作用する力に関する情報を検出するセンサを備えている。したがって、研磨装置は、研磨ヘッドに保持されたウェハと研磨パッドとの間に生じる摩擦力を精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】第1センサ群および第2センサ群を示す図である。
【
図3】研磨ヘッドとウェハとの間に作用する摩擦力の成分の一例を示す図である。
【
図5】研磨ヘッドとウェハとの間に作用する摩擦力の成分の一例を示す図である。
【
図6】研磨パッドに対してウェハが傾いた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、膜を有するウェハW(基板など)を研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上にスラリーなどの研磨液を供給するための研磨液供給ノズル5と、研磨装置の動作を制御するための制御装置9と、を備えている。研磨パッド2の上面は、ウェハWを研磨する研磨面2aを構成する。制御装置9は、テーブルモータ6に電気的に接続されている。
【0016】
研磨ヘッド1はヘッドシャフト10に連結されており、ヘッドシャフト10は、ベルトなどの連結手段を介して図示しない研磨ヘッドモータに連結されている。研磨ヘッドモータは、研磨ヘッド1をヘッドシャフト10とともに矢印で示す方向に回転させる。
【0017】
ヘッドシャフト10は、ヘッドシャフト10を回転可能に支持するヘッドアーム20に連結されており、図示しない上下動機構によりヘッドアーム20に対して上下動するように構成されている。ヘッドアーム20は、アームシャフト21に連結されており、アームシャフト21を中心として、旋回可能である。研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0018】
ウェハWは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を
図1の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。ウェハWは研磨ヘッド1によって、ヘッドシャフト10を中心に回転されながら、研磨パッド2上に研磨液が存在した状態でウェハWは研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。研磨テーブル3は、その中心CPを中心に回転する。ウェハWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒または研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0019】
制御装置9は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。制御装置9は、プログラムが格納された記憶装置9aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置9bと、を備えている。演算装置9bは、記憶装置9aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置9aは、演算装置9bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0020】
研磨ヘッド1の押圧力を精度よく制御したり、ウェハWの研磨終点を精度よく決定するために、ウェハWと研磨パッド2との間に生じる摩擦力を精度よく決定することが重要である。そこで、本実施形態では、研磨装置は、摩擦力を精度よく決定するために、ヘッドアーム20に隣接して配置された第1センサ群30および第2センサ群31を備えている。以下、これらセンサ群30,31の構成について、図面を参照して説明する。
【0021】
図2は、第1センサ群および第2センサ群を示す図である。
図2に示すように、第1センサ群30および第2センサ群31のそれぞれは、ヘッドアーム20の先端側(すなわち、ヘッドシャフト10の連結側)に配置されている。
【0022】
研磨装置は、ヘッドアーム20の両側(
図2に示す実施形態では、ヘッドアーム20の上方および下方)に配置された第1ハウジングプレート25Aおよび第2ハウジングプレート25Bを備えている。
図1では、図面を見やすくするために、これらハウジングプレート25A,25Bは省略されているが、
図1に示す実施形態においても、研磨装置は、ハウジングプレート25A,25Bを備えている。
【0023】
ハウジングプレート25A,25Bは同一の構造を有している。ハウジングプレート25A,25Bのそれぞれは、ヘッドアーム20と平行に延びる平板形状を有している。第1ハウジングプレート25Aはヘッドアーム20の下方に配置されており、第2ハウジングプレート25Bはヘッドアーム20の上方に配置されている。
【0024】
図2に示すように、第1センサ群30は、第1ハウジングプレート25Aとヘッドアーム20との間に配置されており、研磨ヘッド1に作用する力に関する情報を検出するように構成されている。より具体的には、第1センサ群30は、複数の力センサ30A,30B,30Cを備えている。これら力センサ30A,30B,30Cは、ヘッドシャフト10の周囲に配置されており、ヘッドシャフト10からの距離が等しい位置に配置されている(
図1および
図2参照)。力センサ30A,30B,30Cは、第1ハウジングプレート25Aの上方において、同一平面内に配置されている。
【0025】
第2センサ群31は第1センサ群30と同様の構成を有している。第2センサ群31は、第2ハウジングプレート25Bとヘッドアーム20との間に配置されており、研磨ヘッド1に作用する力に関する情報を検出するように構成されている。より具体的には、第2センサ群31は、複数の力センサ31A,31B,31Cを備えている。これら力センサ31A,31B,31Cは、ヘッドシャフト10の周囲に配置されており、ヘッドシャフト10からの距離が等しい位置に配置されている(
図1および
図2参照)。力センサ31A,31B,31Cは、第2ハウジングプレート25Bの下方において、同一平面内に配置されている。
【0026】
図1および
図2に示す実施形態では、第1センサ群30および第2センサ群31のそれぞれは、3つの力センサを備えているが、力センサの数は本実施形態には限定されない。力センサの数は、研磨ヘッド1のサイズや研磨ヘッド1の押圧力に応じて決定されてもよい。一実施形態では、第1センサ群30および第2センサ群31のそれぞれは、少なくとも1つの力センサを備えてもよい。
【0027】
図1および
図2に示す実施形態では、力センサ30A,30B,30C(および力センサ31A,31B,31C)のそれぞれは、研磨ヘッド1に作用する三軸方向(すなわち、x軸、y軸、およびz軸)の力に関する情報を検出する三軸センサである。三軸センサの一例として、水晶式圧電素子を挙げることができる。ここで、x軸方向およびy軸方向は、ヘッドシャフト10に対して垂直に延びる方向(すなわち、研磨パッド2と平行に延びる方向)であり、本実施形態では、水平方向である。z軸方向は、ヘッドシャフト10と平行に延びる方向(すなわち、研磨パッド2に対して垂直に延びる方向)であり、本実施形態では、鉛直方向である。
【0028】
一実施形態では、力センサ30A,30B,30C(および力センサ31A,31B,31C)のそれぞれは、二軸方向(すなわち、x軸およびy軸)の力に関する情報を検出する二軸センサであってもよく、一軸方向(すなわち、z軸)の力に関する情報を検出する一軸センサであってもよい。一実施形態では、力センサ30A,30B,30C(および力センサ31A,31B,31C)のそれぞれは、二軸センサおよび一軸センサの組み合わせであってもよい。このような構成によっても、研磨装置は、摩擦力を精度よく決定することができる。
【0029】
図2に示すように、ヘッドシャフト10は、ハウジングプレート25A,25Bの中央部分に形成された貫通穴を貫通している。研磨装置は、ヘッドシャフト10と第1ハウジングプレート25Aとの間に配置された第1軸受26Aと、ヘッドシャフト10と第2ハウジングプレート25Bとの間に配置された第2軸受26Bと、を備えている。
【0030】
軸受26A,26Bのそれぞれは、ヘッドシャフト10を通じて研磨ヘッド1の荷重(より具体的には、ラジアル荷重およびアキシャル荷重(すなわち、スラスト荷重))を受けるように構成されている。研磨ヘッド1がウェハWを研磨パッド2に押し付けると、研磨ヘッド1の荷重は、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cのそれぞれに作用する。
【0031】
本実施形態では、研磨装置は、ハウジングプレート25A,25Bのそれぞれ(および軸受26A,26B)によってヘッドシャフト10を支持する構造を有しており、ハウジングプレート25A,25Bとヘッドアーム20との間にセンサ群30,31を挟む構造を有している。このような構造により、研磨装置は、研磨ヘッド1に作用する荷重を、ヘッドシャフト10を介してセンサ群30,31のそれぞれに均一に伝達させることができる。
【0032】
ヘッドアーム20の上方および下方に形成された空間に複数の力センサを配置することにより、力センサとして、コンパクトなサイズを有する力センサを採用することができ、結果として、研磨装置の省スペース化を実現することができる。さらに、このような構成により、コンパクトなサイズを有する分解能の高い複数の力センサを採用することができ、結果として、より精度よく、研磨ヘッド1に作用する力に関する情報を検出することができる。
【0033】
制御装置9は、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cのそれぞれに電気的に接続されている。制御装置9は、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cのそれぞれによって検出された信号に基づいて、研磨ヘッド1の荷重を算出し、算出された研磨ヘッド1の荷重からウェハWに作用する摩擦力Fを算出する。
図2に示すように、摩擦力Fは、力センサ30A,30B,30Cに作用する力の成分FLの絶対値と、力センサ31A,31B,31Cに作用する力の成分FUの絶対値と、の和である(F=|FL|+|FU|)。
【0034】
図3は、研磨ヘッドとウェハとの間に作用する摩擦力の成分の一例を示す図である。
図3に示すように、研磨ヘッド1を上から見たとき、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cに作用する力のx軸方向の成分をf
x1,f
x2,f
x3,f
x4,f
x5,f
x6と定義し、y軸方向の成分をf
y1,f
y2,f
y3,f
y4,f
y5,f
y6と定義する。
【0035】
力センサ30A,30B,30Cに作用する力のx軸方向の成分FxLは、fx1+fx2+fx3で表現され、y軸方向の成分FyLは、fy1+fy2+fy3で表現される。力センサ31A,31B,31Cに作用する力のx軸方向の成分FxUは、fx4+fx5+fx6で表現され、y軸方向の成分FyUは、fy4+fy5+fy6で表現される。
【0036】
互いに直行するx軸方向およびy軸方向における、力センサ30A,30B,30Cおよび力センサ31A,31B,31Cに作用する力の合成成分(すなわち、研磨パッド2とウェハWとの間に生じる摩擦力)Fは、以下の式1で表現される。
【数1】
【0037】
制御装置9は、上記式1に関するデータを記憶装置9aに格納している。したがって、制御装置9は、センサ群30,31に属する各力センサから送られる信号と、上記式1と、に基づいて、摩擦力Fを算出する。制御装置9は、ウェハWの研磨中において、常時、算出された摩擦力Fを監視してもよい。摩擦力Fを監視することにより、制御装置9は、摩擦力Fの変化に応じて、ウェハWの研磨終点を精度よく決定することができる。
【0038】
図4は、摩擦力の変化を示す図である。
図4に示す実施形態では、ウェハWは、積層された上層膜および下層膜を有している。上層膜は下層膜よりも柔らかい材質から構成されているため、上層膜と研磨パッド2との間に生じる摩擦力は、下層膜と研磨パッド2との間に生じる摩擦力よりも小さい。ウェハWを研磨し続けると、やがて、上層膜が除去され、下層膜が露出する。
図4のグラフに示すように、下層膜が露出すると、摩擦力Fが変化する。なお、
図4のグラフは、摩擦力Fの時間変化を示すグラフである。
【0039】
制御装置9は、ウェハWの研磨中において、摩擦力Fを監視することにより、研磨終点(すなわち、下層膜が露出した時点)を決定することができる。より具体的には、制御装置9は、研磨対象のウェハWの膜の種類に応じたしきい値を記憶装置9aに格納している。このしきい値は、研磨終点における摩擦力に相当する値である。制御装置9は、算出された摩擦力Fと所定のしきい値とを比較し、現在の摩擦力Fがしきい値に到達したときに、ウェハWの研磨終点を決定する。
【0040】
図4に示す実施形態では、上層膜は下層膜よりも柔らかい材質から構成されているため、ウェハWの研磨の進行とともに摩擦力Fは大きくなっているが、ウェハWの種類によっては、上層膜は下層膜よりも硬い材質から構成されている場合もある。この場合には、摩擦力Fは、ウェハWの研磨の進行とともに小さくなる。この場合であっても、制御装置9は、算出された摩擦力Fと所定のしきい値とを比較し、現在の摩擦力Fが所定のしきい値に到達したときに、ウェハWの研磨終点を決定する。
【0041】
制御装置9は、テーブルモータ6のトルク電流の変化に基づいて摩擦力を決定してもよいが、モータの機差や研磨ヘッド1の組み立てのばらつきに起因して、摩擦力を精度よく決定することができないおそれがある。本実施形態によれば、制御装置9は、研磨ヘッド1に作用する力に関する情報を検出する力センサに基づいて、摩擦力Fを決定している。したがって、制御装置9は、研磨ヘッド1に保持されたウェハWと研磨パッド2との間に生じる摩擦力Fを精度よく決定することができる。
【0042】
図5は、研磨ヘッドとウェハとの間に作用する摩擦力の成分の一例を示す図である。
図5に示すように、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cに作用する力のz軸方向の成分をf
z1,f
z2,f
z3,f
z4,f
z5,f
z6と定義する。力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cに作用する力のz軸方向の成分(すなわち、垂直抗力)Nは、f
z1+f
z2+f
z3+f
z4+f
z5+f
z6で表現される(N=f
z1+f
z2+f
z3+f
z4+f
z5+f
z6)。
【0043】
研磨パッド2とウェハWとの間に生じる摩擦力Fは、以下の式2で表現される。
式2:F=μ×N
【0044】
ここで、μは、摩擦係数を表している。摩擦係数μは、ウェハWの種類によって異なり、さらには、ウェハWの研磨中においても変化する。そこで、制御装置9は、摩擦係数μを任意の数値に決定(推定)し、決定された摩擦係数μと、垂直抗力Nと、に基づいて、摩擦力Fを決定してもよい。このような方法によっても、制御装置9は、摩擦力Fを精度よく決定することができる。
【0045】
本実施形態では、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cのそれぞれは、三軸センサである。したがって、制御装置9は、上記式1から摩擦力Fを導き、かつ垂直抗力Nを算出することにより、上記式2から摩擦係数μを導くことができる。制御装置9は、摩擦係数μと、垂直抗力Nと、から、より正確な摩擦力Fを求めることができる。
【0046】
上記式2は摩擦係数μを含んでいるため、上記式1と上記式2との間には、摩擦係数μに応じた比例関係が成立する。そこで、制御装置9は、式1から導いた摩擦力Fと、式2から導いた摩擦力Fと、を比較することにより、力センサの異常(および/または研磨ヘッド1の組み立て異常)を判断することができる。より具体的には、制御装置9は、ウェハWの研磨中において、上記式1および式2から導いた2つの摩擦力Fを比較し、これら2つの摩擦力Fの間に比例関係が成立しない場合には、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cの少なくとも1つに異常が発生していると決定してもよい。
【0047】
図6は、研磨パッドに対してウェハが傾いた様子を示す図である。
図6に示すように、ウェハWの研磨中において、研磨パッド2に対してウェハWが傾く場合がある。この状態でウェハWを研磨し続けると、ウェハWの膜厚の均一性が低下するのみならず、ウェハWの研磨終点を精度よく決定することができないおそれがある。より具体的には、ウェハWが傾いていると、上層膜が均一に研磨されず、上層膜が部分的に残った状態で、下層膜の一部が露出するおそれがある。この場合、上層膜の一部および下層膜の一部が混在した状態で、ウェハWが研磨されるため、時間経過とともに摩擦力Fがなだらかに変化し、摩擦力Fがしきい値に達した時点においても、ウェハWの研磨終点が到達していないおそれがある。
【0048】
そこで、制御装置9は、力センサ30A,30B,30C,31A,31B,31Cから送られる信号に基づいて、各力センサに作用する垂直抗力Nを算出し、これら垂直抗力NからウェハWの傾きを測定してもよい。センサ群30,31に属する複数の力センサをヘッドシャフト10の周囲に配置することにより、制御装置9は、ウェハWの傾きを正確に測定することができる。
【0049】
制御装置9は、測定されたウェハWの傾きに基づいて、研磨ヘッド1の姿勢を制御してもよい。研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けるための弾性膜(図示しない)を備えている。したがって、制御装置9は、圧縮気体を弾性膜に供給して、研磨ヘッド1が研磨パッド2と平行になるように、研磨ヘッド1の姿勢を制御してもよい。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、制御装置9は、複数の力センサのそれぞれから送られる信号に基づいて、ウェハWの全体に作用する研磨ヘッド1の押圧力が均一か否かを判断することができる。各力センサから送られる信号が異なる場合には、制御装置9は、研磨ヘッド1の押圧力が均一でないと判断することができる。この場合には、制御装置9は、圧縮気体を弾性膜に供給して、研磨ヘッド1の押圧力が均一になるように、研磨ヘッド1の押圧力を制御してもよい。
【0051】
図7は、研磨装置の他の実施形態を示す図である。
図7に示す実施形態では、研磨ヘッド1は、ウェハWを取り囲むリテーナリング40を備えている。
図7に示すように、研磨装置は、リテーナリング40の一部に局所荷重を加える第1局所荷重付与装置50Aと、リテーナリング40の一部に局所荷重を加える第2局所荷重付与装置50Bと、を備えている。
【0052】
局所荷重付与装置50A,50Bは、リテーナリング40の上方に配置されており、ヘッドアーム20に固定されている。したがって、研磨中のリテーナリング40はその軸心周りに回転する一方で、局所荷重付与装置50A,50Bは、リテーナリング40とは一体に回転せずに、静止している。
【0053】
第1局所荷重付与装置50Aは、研磨パッド2の研磨面2aの進行方向において、リテーナリング40の上流側(研磨面2aに対して研磨液が流入するリテーナリング40の一方側)に配置されており、第2局所荷重付与装置50Bは、研磨パッド2の研磨面2aの進行方向においてリテーナリング40の下流側(研磨面2aに対して研磨液が流出するリテーナリング40の反対側)に配置されている。制御装置9は、局所荷重付与装置50A,50Bのそれぞれに電気的に接続されており、局所荷重付与装置50A,50Bのそれぞれは、リテーナリング40の一部に下向きの局所荷重を与える。
【0054】
研磨液がウェハWと研磨パッド2との間に流入すると、リテーナリング40の上流側と下流側との間で、ウェハWと研磨パッド2との間に生じる摩擦力が異なる可能性がある。ウェハWに作用する摩擦力は、ウェハWの全体において均一であることが望ましい。そこで、制御装置9は、複数の力センサのそれぞれから送られる信号に基づいて、ウェハWの全体に作用する摩擦力Fを算出し、リテーナリング40の上流側と下流側との間で、摩擦力Fが異なる場合には、局所荷重付与装置50A,50Bのそれぞれの動作を制御してもよい。このような構成により、制御装置9は、ウェハWの全体に作用する摩擦力を均一にし、かつ摩擦力を一定に維持することができる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
9 制御装置
9a 記憶装置
9b 演算装置
10 ヘッドシャフト
20 ヘッドアーム
25A 第1ハウジングプレート
25B 第2ハウジングプレート
30 第1センサ群
30A,30B,30C 力センサ
31 第2センサ群
31A,31B,31C 力センサ
40 リテーナリング
50A 第1局所荷重付与装置
50B 第2局所荷重付与装置