(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177528
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】フッ素系樹脂及びそれを用いたパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20231207BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C08F220/12
G03F7/038 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090254
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】李 廷輝
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴
(72)【発明者】
【氏名】奥 慎也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC12
2H225AC79
2H225AD14
2H225AN39P
2H225CA24
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC11
2H225CD05
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA15Q
4J100BB18P
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GC07
4J100GC17
4J100GC26
4J100HA53
4J100HE22
4J100JA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パターン外部の撥液性の低下が無くかつパターン内部の親液性の低下のないパターン形成材料であるフッ素系樹脂、及びそれを用いたパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】光架橋性基を含む下記式(1)で表される繰り返し単位と、20mol%以上のフッ素原子を含む繰り返し単位とを有するフッ素系樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光架橋性基を含む下記式(1)で表される繰り返し単位と、20mol%以上のフッ素原子を含む繰り返し単位とを有するフッ素系樹脂。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、L
1は、単結合または2価の連結基を表し、Aはm価の連結基を表し、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基からなる群の1種を表す。mは3以上の整数を表し、nはm-1の整数を表す。)
【請求項2】
フッ素原子を含む繰り返し単位が、下記式(2)で表される繰り返し単位である請求項1に記載のフッ素系樹脂。
【化2】
(式(2)中、R
7は水素原子またはメチル基を表す。L
2は、単結合または2価の連結基を表し、Rf
1は炭素数1~15の直鎖状フルオロアルキル基、炭素数3~15の分岐状フルオロアルキル基または炭素数3~15の環状フルオロアルキル基からなる群の1種を表す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフッ素系樹脂と有機溶剤およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤を含む組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物の光架橋物。
【請求項5】
請求項4に記載の光架橋物で構成されるパターン。
【請求項6】
請求項4に記載の光架橋物を備える電子デバイス。
【請求項7】
基板に請求項3に記載の組成物を用いて光架橋物を得、パターンを形成し、ドライプロセスを行った後、さらにアルカリ液及び/又はアルコールで洗浄することを特徴とするパターンの形成方法。
【請求項8】
アルカリ液が無機アルカリ類、第一アミン類、第二アミン類、第三アミン類、アルコールアミン類、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、の少なくとも1種を含むアルカリ類の水溶液である請求項7に記載のパターンの形成方法。
【請求項9】
アルコールが炭素原子数1~4の飽和脂肪族アルコールである請求項7に記載のパターンの形成方法。
【請求項10】
ドライプロセスがプラズマ装置、UVオゾン装置、反応性イオンエッチング装置の少なくとも1種を用いたドライプロセスである請求項7~9のいずれか1項に記載のパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素系樹脂及びそれを用いたパターンの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低コストで生産性が高い全印刷法による有機電子デバイスの製造に関する技術開発が積極的に行われている。電子デバイスとして、例えば有機トランジスタの開発も進められている。この有機トランジスタは多数の工程を経て製造されるが、樹脂よりなる保護膜が有機トランジスタを保護し、エレクトロルミネッセンス(EL)発光部のパターンを形成する工程も含まれている。このパターンは、例えば、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層またはポリマー層を覆うように設けられていて、EL発光部を形成するところである電極上には存在しないようになっている。
【0003】
通常、EL発光部は、感光性物質(レジスト)を塗布した基板面をフォトマスクまたはレチクル等を介しパターンに露光し、露光された部位と露光されていない部位からなるパターンを形成する技術であるフォトリソグラフィを用いて形成される。フォトリソグラフィではドライエッチング法、または、ウエットエッチングによりEL発光部を開口している。
【0004】
パターン形成材料として、光反応性の高分子材料が用いられている。全印刷法のような塗布法では、該材料を溶媒に溶解させたインク状で塗布を行い、溶媒を乾燥除去した後、該材料を光架橋反応させることにより溶媒に不溶化させてパターンを形成させる。したがって、全印刷法のような塗布法に用いられる高分子材料には、該材料の溶媒への可溶性に優れていること、溶媒除去後、常温かつ短時間の露光で該材料の光架橋反応が可能であることの性質を兼ね備えることが求められている。
【0005】
ここで、有機電界ディスプレイおよび有機電界照明などに含まれる有機電界発光素子の製造方法を示す。まず基板上に、前記高分子材料を塗布しパターンを形成したい部分を光架橋反応させ、光架橋反応させていない部分を除去する。これにより残存した部分はパターンとなる。この高分子材料が除去されている部分(以下、パターン内部)に、種々の機能層を積層する。該機能層はインク状の原料を用いて形成する技術が有望であるが、パターン内部へのインク付着、および高分子材料が除去されていない部分(以下、パターン外部)を超えた領域外へのインク漏れ予防の観点から、パターンを構成する材料には撥液性能を有することが期待されている。
【0006】
このような材料としては特許文献1、非特許文献1のフッ素系樹脂または組成物を用いてパターンを形成する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J Polym Sci A Polym Chem 53、1252(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、パターン内部の親液性を向上及び接触抵抗を減らすためドライプロセスとしてUVオゾンクリーナーまたはプラズマクリーナー等を用いて処理するとフッ素系樹脂のアッシング残渣の影響でパターン外部の撥液性の低下およびパターン内部の親液性の低下する問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン外部の撥液性の低下が無くかつパターン内部の親液性の低下のないパターン形成材料であるフッ素系樹脂及びそれを用いたパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のフッ素系樹脂及び洗浄工程を含むパターン形成方法が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、光架橋性基を含む特定の繰り返し単位と、20mol%以上のフッ素原子を含む繰り返し単位とを有するフッ素系樹脂及び基板に前記フッ素系樹脂と有機溶媒およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤を含む組成物を用いて光架橋物を得、パターンを形成し、ドライプロセスを行った後、さらにアルカリ液及び/又はアルコールで洗浄することを特徴とするパターンの形成方法である。
【0013】
すなわち本発明は、以下の要旨を有するものである。
[1] 光架橋性基を含む下記式(1)で表される繰り返し単位と、20mol%以上のフッ素原子を含む繰り返し単位とを有するフッ素系樹脂。
【0014】
【0015】
(式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、L1は、単結合または2価の連結基を表し、Aはm価の連結基を表し、R2、R3、R4、R5およびR6は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基からなる群の1種を表す。mは3以上の整数を表し、nはm-1の整数を表す。)
[2] フッ素原子を含む繰り返し単位が、下記式(2)で表される繰り返し単位である[1]に記載のフッ素系樹脂。
【0016】
【0017】
(式(2)中、R7は水素原子またはメチル基を表す。L2は、単結合または2価の連結基を表し、Rf1は炭素数1~15の直鎖状フルオロアルキル基、炭素数3~15の分岐状フルオロアルキル基または炭素数3~15の環状フルオロアルキル基からなる群の1種を表す。)
[3] [1]又は[2]に記載のフッ素系樹脂と有機溶剤およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤を含む組成物。
[4] [3]に記載の組成物の光架橋物。
[5] [4]に記載の光架橋物で構成されるパターン。
[6] [4]に記載の光架橋物を備える電子デバイス。
[7] 基板に[3]に記載の組成物を用いて光架橋物を得、パターンを形成し、ドライプロセスを行った後、さらにアルカリ液及び/又はアルコールで洗浄することを特徴とするパターンの形成方法。
[8] アルカリ液が無機アルカリ類、第一アミン類、第二アミン類、第三アミン類、アルコールアミン類、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、の少なくとも1種を含むアルカリ類の水溶液である[7]に記載のパターンの形成方法。
[9] アルコールが炭素原子数1~4の飽和脂肪族アルコールである[7]に記載のパターンの形成方法。
[10] ドライプロセスがプラズマ装置、UVオゾン装置、反応性イオンエッチング装置の少なくとも1種を用いたドライプロセスである[7]~[9]のいずれか1項に記載のパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフッ素系樹脂は、パターン外部の撥液性に優れ、かつパターン内部の親液性にも優れたパターン形成用材料であり、該フッ素系樹脂と有機溶剤およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤を含む組成物を用いることによりパターン外部の撥液性の優れ、かつパターン内部の親液性にも優れたパターンを形成できるパターン形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】有機トランジスタの断面形状を示す図である。
【
図2】本発明の電子デバイスの一形態である有機トランジスタの断面形状の示す図である。
【
図3】実施例1で製造したフッ素系樹脂1の
1H-NMRチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のフッ素系樹脂は、光架橋性基を含む下記式(1)で表される繰り返し単位と、20mol%以上のフッ素原子を含む繰り返し単位とを有するフッ素系樹脂である。
【0021】
【0022】
(式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、L1は、単結合または2価の連結基を表し、Aはm価の連結基を表し、R2、R3、R4、R5およびR6は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基からなる群の1種を表す。mは3以上の整数を表し、nはm-1の整数を表す。)
上記のフッ素系樹脂における前記式(1)は光架橋性基を有するものであり、光架橋性基を有することにより、フッ素系樹脂が高い光反応性を発現し、該樹脂を塗布して得られる膜において光照射した部位のみを選択的に不溶化させることが可能となる。
【0023】
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。
【0024】
式(1)中、L1は単結合または2価の連結基を表す。
【0025】
L1における2価の連結基としては、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、炭素数3~10の分岐状のアルキレン基または炭素数3~10の環状のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)およびイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基であることが好ましい。これにより平坦でひび割れのない膜を形成することが可能となる。
【0026】
炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基などが挙げられる。
【0027】
炭素数3~10の分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-チルプロピレン基などが挙げられる。
【0028】
炭素数3~10の環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0029】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
【0030】
これらの2価の連結基のうち、カルボニル基とエーテル基とを組み合わせたエステル結合(-C(=O)O-)またはフェニレン基とエーテル基とを組み合わせた連結基であることがより好ましく、(-C(=O)O-)であることが更に好ましい。
【0031】
式(1)中、Aはm価の連結基を表す。
【0032】
mは3以上の整数を表し、3~5の整数であることが好ましく、3~4の整数であることがより好ましく、3であることが更に好ましい。
【0033】
Aは、得られる樹脂の有機溶剤およびフッ素系溶剤への可溶性がより良好になることから、置換基を有していてもよい炭素数1~24のm価の炭化水素基であってもよい。
【0034】
m価の炭化水素基Aが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
【0035】
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基およびシクロヘキシル基等がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
【0036】
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~16の、直鎖状または分岐状アルキル基を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペンチロキシ基、n-ヘキシリキシ基、イソヘキシロキシ基、n-ヘプチロキシ基、n-オクチロオキシ基、n-ノニロキシ基、n-デシロキシ基、n-ドデシロキシ基、n-テトラデシロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、3-エチルヘプチロキシ基、2-ヘキシルデシロキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペンチロキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、n-ヘプチロキシ基、n-オクチロキシ基からなる群より選択される基が特に好ましい。
【0037】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0038】
なかでも、m価の炭化水素基Aは、下記式(a-1)~(a-4)からなる群の1種の連結基であることが好ましい。
【0039】
【0040】
式(a-1)~(a-4)中、*Lは、前記式(4)におけるL1との結合位置を表し、炭素原子の先の*は、前記式(1)におけるエステル基を構成する酸素原子との結合位置を表す。
【0041】
m価の炭化水素基Aは、モノマー合成における反応の容易性の理由から、式(a-1)、式(a-2)、式(a-3)からなる群の1種の3価の連結基であることが好ましく、式(a-1)または式(a-2)の3価の連結基であることがより好ましく、式(a-1)の3価の連結基であることがさらに好ましい。
【0042】
式(1)中、R2、R3、R4、R5およびR6は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基からなる群の1種を表す。
【0043】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0044】
炭素数1~20の直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられ、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0045】
炭素数3~20の分岐状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
【0046】
炭素数3~20の環状アルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
【0047】
炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~4のフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基などが挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0048】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
【0049】
炭素数6~20のアリール基としては、炭素数6~12のアリール基が好ましく、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
【0050】
炭素数6~20のアリールオキシ基としては、炭素数6~12のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、2-ナフチルオキシ基などが挙げられ、中でも、フェニルオキシ基が好ましい。
【0051】
アミノ基としては、例えば、第1級アミノ基(-NH2);メチルアミノ基などの第2級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、含窒素複素環化合物(例えば、ピロリジン、ピぺリジン、ピペラジンなど)の窒素原子を結合手とした基などの第3級アミノ基が挙げられる。
【0052】
R2、R3、R4、R5およびR6は、フッ素系樹脂におけるフッ素系溶剤への溶解性、光硬化性、撥液性をより高くする理由から、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、さらに、水素原子であることが好ましい。
【0053】
光架橋性基を含む式(1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B、と称することもある)としては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位B-1~B-26が挙げられ、その中でもB-1~B-16などが好ましく、特にB-1、B-2、B-13、B-16が好ましい。なお、下記式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはイソプロピル基を表す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
本発明のフッ素系樹脂は、20mol%以上、好ましくは20mol%以上80mol%以下、特に好ましくは20mol%以上70mol%以下のフッ素原子を含む繰り返し単位を有する。これにより、フッ素系樹脂が撥液性能を発現し、かつ、フッ素系溶剤へも高い溶解性を有する。
【0060】
フッ素原子を含む繰り返し単位は下記式(2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0061】
【0062】
式(1)中、R7は水素原子またはメチル基を表す。
【0063】
式(1)中、L2は単結合または2価の連結基を表す。
【0064】
L2における2価の連結基としては、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、炭素数3~10の分岐状のアルキレン基または炭素数3~10の環状のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)またはイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基であることが好ましい。これにより平坦でひび割れのない膜形成ができる。
【0065】
炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基などが挙げられる。
【0066】
炭素数3~10の分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-チルプロピレン基などが挙げられる。
【0067】
炭素数3~10の環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0068】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
【0069】
これらの2価の連結基のうち、カルボニル基とエーテル基とを組み合わせたエステル結合(-C(=O)O-)またはフェニレン基とエーテル基とを組み合わせた連結基であることがより好ましく、(-C(=O)O-)であることが更に好ましい。
【0070】
式(2)中、Rf1は炭素数1~15の直鎖状フルオロアルキル基、炭素数3~15の分岐状フルオロアルキル基または炭素数3~15の環状フルオロアルキル基からなる群の1種を表す。
【0071】
Rf1がフルオロアルキル基であることにより、本発明の一態様に係るフッ素系樹脂はフッ素系溶剤との親和性、および撥液性を示す。
【0072】
Rf1が直鎖状のフルオロアルキル基である場合、具体的なRf1としてフッ素原子で置換されているメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基または炭素数10~14のアルキル基を例示することができる。L1におけるRf1との結合元素が酸素である場合、Rf1におけるフッ素原子の置換位置は、L1の酸素に直接結合している炭素原子以外の炭素原子上であればよい。
【0073】
Rf1が直鎖状のフルオロアルキル基である場合、Rf1は下記式(3)で表される基であることが好ましい。
【0074】
【0075】
式(3)中、*は、式(2)におけるL2との結合位置を表す。
【0076】
式(3)中、Xは水素原子またはフッ素原子である。
【0077】
式(3)中、yは1~4の整数であり、好ましくは1~2である。
【0078】
式(3)中、zは1~14の整数であり、好ましくは2~10であり、さらに好ましくは4~8である。
【0079】
Rf1が式(3)で表される基であることにより、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる単量体の合成がより容易となる。
【0080】
Rf1が分岐状のフルオロアルキル基である場合、具体的なRf1として、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、1-(トリフルオロメチル)-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)-2,2,2-トリフルオロエチル基または1,1-ビス(トリフルオロメチル)エチル基を例示することができる。
【0081】
Rf1が環状フルオロアルキル基である場合、具体的なRf1として1,2,2,3,3,4,4,5,5-ノナフルオロシクロペンタン基、1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ウンデカフルオロシクロヘキサン基を例示することができる。
【0082】
前記式(2)で表される繰り返し単位は、下記式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0083】
【0084】
式(4)中、R8は水素原子またはメチル基のいずれかを表す。
【0085】
式(4)中、Xは水素原子またはフッ素原子である。
【0086】
式(4)中、yは1~4の整数であり、好ましくは1~2である。
【0087】
式(4)中、zは1~14の整数であり、好ましくは2~10であり、さらに好ましくは4~8である。
【0088】
本発明の一態様に係るフッ素系樹脂は、前記式(2)で表わされる繰り返し単位を1種含んでいてもよく、2種以上含んでもよい。例えば、Rf1として前述した直鎖状のフルオロアルキル基を有する繰り返し単位、およびRf1として前述した分岐状のフルオロアルキル基を有する繰り返し単位の両方の繰り返し単位を含んでもよいし、互いに炭素数の異なる直鎖状フルオロアルキル基を有する2種以上の繰り返し単位を含んでもよい。本発明の一態様に係るフッ素系樹脂は、好ましくは式(2)で表わされる繰り返し単位を1種含む。
【0089】
本発明の一態様に係るフッ素系樹脂におけるフッ素原子を含む繰り返し単位として、具体的に、以下の式(C-1)~(C-33)で表される繰り返し単位からなる群の1種を挙げることができる。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
フッ素原子を含む繰り返し単位として、前記式(C-1)~(C-33)で表される繰り返し単位からなる群の1種が好ましく、式(C-9)~(C-33)で表される繰り返し単位からなる群の1種がさらに好ましく、式(C-14)~(C-21)で表される繰り返し単位からなる群または式(C-27)~(C-33)で表される繰り返し単位からなる群の1種が特に好ましい。
【0094】
本発明の一態様に係るフッ素系樹脂は、前記式(1)で表される繰り返し単位と、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体であることが好ましい。すなわち、本発明の一態様に係るフッ素系樹脂は、以下の式(5)で表される共重合体であることが好ましい。
【0095】
【0096】
(式(5)の中でR1、R7は、水素原子またはメチル基を表し、L1、L2は、単結合または2価の連結基を表し、Aはm価の連結基を表し、R2、R3、R4、R5およびR6は、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基からなる群の1種を表す。mは、3以上の整数を表し、nは、m-1の整数を表す。Rf1は炭素数1~15の直鎖状フルオロアルキル基、炭素数3~15の分岐状フルオロアルキル基または炭素数3~15の環状フルオロアルキル基からなる群の1種を表す。)
式(5)中、R1、L1、A、R2、R3、R4、R5およびR6は前記式(1)におけるR1、L1、A、R2、R3、R4、R5およびR6と同義である。
【0097】
式(5)中、R7、L2、Rf1は前記式(2)におけるR7、L2、Rf1と同義である。
【0098】
式(5)で表される共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0099】
上記のフッ素系樹脂には、本発明の目的を逸脱しない範囲において、他の単量体繰り返し単位が含まれていても良い。他の単量体繰り返し単位としては、例えば、エチレン残基、プロピレン残基、1-ブテン残基等のオレフィン類残基;スチレン残基、α-メチルスチレン残基等のビニル芳香族炭化水素類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基、ピバル酸ビニル残基等のカルボン酸ビニルエステル類残基;メチルビニルエーテル残基、エチルビニルエーテル残基、ブチルビニルエーテル残基等のビニルエーテル類残基;N-メチルマレイミド残基、N-シクロヘキシルマレイミド残基、N-フェニルマレイミド残基等のN-置換マレイミド類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基等が挙げられる。
【0100】
本発明のフッ素系樹脂において、分子量に対して何ら制限はなく、例えば、2000~10,000,000(g/mol)のものを用いることができる。得られる樹脂の溶液粘度、および力学強度の観点から、好ましくは10,000~1,000,000(g/mol)である。
【0101】
以下に本発明の一態様である組成物について説明する。
【0102】
本発明の一態様に係る組成物は有機溶剤およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤とフッ素系樹脂とを含む。
【0103】
前記のフッ素系溶剤は、本発明のフッ素系樹脂を溶解させるものであればよい。フッ素系樹脂を溶解させる溶剤としてフッ素系溶剤を用いることで、全印刷法による電子デバイスの作製の際に、有機物を主成分とするデバイス構成部材へのダメージを最小限に抑えることができ、電子デバイスの性能を十分に発揮することが可能となる。
【0104】
フッ素系溶剤を構成するフッ素系化合物中、フッ素原子含有量は、フッ素系化合物の全質量に対して、50質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは55質量%以上70質量%以下である。70質量%を超えると前述のフッ素系樹脂が十分溶解しなくなる。また、50質量%より少ないと、有機半導体膜上に塗布または印刷する際、有機半導体膜の表面を溶解または膨潤することがある。
【0105】
本発明の組成物に含まれるフッ素系溶剤として、以下に示す含フッ素炭化水素、含フッ素エーテルまたは含フッ素アルコールを好ましく用いることができ、含フッ素炭化水素または含フッ素エーテルをより好ましく用いることができる。
【0106】
含フッ素炭化水素はオゾン破壊係数が低く、本発明の組成物が含むフッ素系溶剤として好ましい。特に、炭素数4~8の、直鎖状、分岐状または環状の炭化水素で、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている含フッ素炭化水素は塗布しやすく好ましい。
【0107】
このような含フッ素炭化水素として具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはベンゼンの水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されたものを例示することができる。具体的に示せば、例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、2H,3H-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、ヘキサフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、ヘキサフルオロベンゼンの含フッ素炭化水素を例示することができる。
【0108】
含フッ素炭化水素は、沸点が200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは180℃以下である。含フッ素炭化水素の沸点が200℃以下であると、加熱により含フッ素炭化水素を蒸発除去しやすい。
【0109】
前記含フッ素炭化水素のうち、特に好ましい沸点を有する例として、以下を例示することができる。
【0110】
2H,3H-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼンを例示することができる。
【0111】
また、オゾン破壊係数の低さから、フッ素系溶剤として含フッ素エーテルを使用することができる。特に、含フッ素エーテルは、沸点が200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは180℃以下である。含フッ素エーテルの沸点が200℃以下であると、フッ素系樹脂膜から、加熱により含フッ素エーテルを蒸発除去しやすい。
【0112】
好ましい含フッ素エーテルの例として、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)プロパン、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)プロパン、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)プロパン、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)プロパン、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-3-メトキシプロパン、メチルパーフルオロブチルエーテル、または、エチルノナフルオロブチルエーテルを例示することができる。
【0113】
好ましい沸点を有する含フッ素エーテルとしてはエチルノナフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサン、(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メトキシパーフルオロヘプテン等を例示することができる。
【0114】
フッ素系溶剤として含フッ素アルコールを使用することができる。用いられる含フッ素アルコールは、沸点が200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは180℃以下である。含フッ素アルコールの沸点が200℃以下であると、加熱により含フッ素アルコールを蒸発除去しやすい。
【0115】
好ましい含フッ素アルコールの例として、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H1H-ペンタフルオロプロパノール、1H,1H-へプタフルオロブタノール、2-(パーフルオロブチル)エタノール、3-(パーフルオロブチル)プロパノール、2-(パーフルオロヘキシル)エタノール、3-(パーフルオロヘキシル)プロパノール、1H,1H,3H-テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H-オクタフルオロペンタノール、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプタノール、2H-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブタノールを例示することができる。
【0116】
さらに、フッ素系樹脂の溶解性をより高めるためにフッ素系溶剤を2種類以上含んでいてもよい。
【0117】
本発明の組成物に用いられるものとしての有機溶剤とは、フッ素系溶剤に該当しない有機溶剤を指す。有機溶剤としては本発明のフッ素系樹脂が溶解する限り何ら制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、デカリン、インダン、1-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、ジメチルナフタレン異性体混合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、γ-ブチロラクトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、グリセリン、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、3-メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、エチルアセテート、フェニルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-N-プロピルエーテル、テトラデカヒドロフェナントレン、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロフェナントレン、デカヒドロ-2-ナフトール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール、α-テルピネオール、イソホロントリアセチンデカヒドロ-2-ナフトール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、2,6-ジメチルアニソール、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、1-ベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、リモネン等が例示される。好ましい性状の膜を得るためにはフッ素系樹脂を溶解する溶解力が高い有機溶剤が適しており、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。また、前述の溶剤2種以上を適切な割合で混合した混合溶剤も用いることができる。
【0118】
本発明の一態様に係るフッ素系樹脂と有機溶剤およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤との組成物は、フッ素系樹脂を1wt%以上50wt%以下含み、当該溶剤を50wt%以上99wt%以下含むことが好ましい。
【0119】
また、本発明の一態様に係る組成物は光増感剤を含んでもよい。光増感剤は、光架橋性基の架橋反応を促進させるものであれば良い。
【0120】
光増感剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのアシロイン類;アントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-クロロアントラキノン、シクロヘキサノンなどのカルボニル類;ジアセチル、ベンジルなどのジケトン類;ジフェニルモノサルファイド、ジフェニルジサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイドなどの有機サルファイド類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメトキシベンゾフエノンなどのフェノン類;p-トルエンスルホニルクロライド、I-ナフタレンスルホニルクロライド、1,3-ベンゼンスルホニルクロライド、2,4-ジニトロベンゼンスルホニルブロマイド、p-アセトアミドベンゼンスルホニルクロライドなどのスルホニルハライド類;5-ニトロフルオレン、5-ニトロアセナフテン、N-アセチル-4-ニトロ-1-ナフチルアミン、ビクラミド等の芳香族ニトロ化合物類;7-ジエチルアミノ-3-テノイルクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)などのクマリン類;四塩化炭素、ヘキサブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;ジアゾメタン、アブビスイソブチロニトリル、ヒドラジン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの窒素誘導体;エチオニン、チオニン、メチレンブルーなどの色素類などが挙げられる。光増感剤を含有することで、より低露光量で本発明の一態様に係るフッ素系樹脂を架橋(不溶化)することができる。また、該増感剤は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0121】
本発明の一態様に係るフッ素系樹脂と光増感剤と有機溶剤およびフッ素系溶剤の少なくとも一方の溶剤との組成物は、フッ素系樹脂を1wt%以上50wt%以下含み、当該溶剤を50wt%以上99wt%以下含み、光増感剤を0.001wt%以上5wt%以下含むことが好ましい。
【0122】
以下に本発明の一態様であるパターンについて説明する。
【0123】
本発明のフッ素系樹脂の組成物を用いてパターンを形成することができる。より詳細には、基板に本発明の組成物を用いて光架橋物を得、パターンを形成し、ドライプロセスを行った後、さらにアルカリ液及び/又はアルコールで洗浄することによりパターンを形成する。これにより、フッ素系樹脂のアッシング残渣の除去ができて、フッ素系樹脂が除去されていない部分(以下、パターン外部)は撥液化、フッ素系樹脂が除去されている部分(以下、パターン内部)は親液化することができる。
【0124】
最初に、公知の塗膜形成方法によって、基板の表面に組成物の膜を形成することができる。基板としては、例えば、各種ガラス板;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリイミドの熱可塑性プラスチックシート;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート等を挙げることができる。
【0125】
膜の形成方法としては、例えば、スピンコーティング、ドロップキャスト、ディップコーティング、ドクターブレードコーティング、パッド印刷、スキージコート、ロールコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング、フローコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スーパーフレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷、反転オフセット印刷、付着力コントラスト印刷等を用いることができる。
【0126】
次に、膜は乾燥される。乾燥することによって、溶剤が揮発し、粘着性のない膜が得られる。乾燥条件は、用いる溶剤の沸点および配合割合などによっても異なるが、好ましくは50~150℃、10~2000秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0127】
膜形成時に、印刷手法を用いて、所定の形状、すなわち目的とするパターンと同一の形状を有する膜を形成した際は、露光を行うことで、所定の形状を有する塗膜が光架橋し光架橋物を得、固定化され、パターンを形成できる。
【0128】
一方、膜形成時に所定の形状を有する膜を形成しなかった場合は、フォトリソグラフィ技術を用いて、膜からパターンを形成できる。フォトリソグラフィ技術を用いる場合、まず、乾燥された膜に、所定の形状、すなわち目的とするパターンを形成し得る形状のマスクを介して露光し、光架橋させる。
【0129】
膜(本発明の組成物)を光架橋により硬化させ光架橋物を得る際、紫外線、可視光等の放射線が用いられ、例えば、波長245~435nmの紫外線が例示される。照射量は樹脂の組成により適宜変更されるが、例えば、10~5000mJ/cm2が挙げられる。架橋度の低下を防止し、かつ、プロセスの短時間化による経済性の向上の観点から、照射量は、好ましくは100~4000mJ/cm2である。具体的な光照射装置または光源としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0130】
紫外線の照射は通常大気中で行うが、必要に応じて不活性ガス中、または一定量の不活性ガス気流下で行うこともできる。必要に応じて前記の光増感剤を添加して光架橋反応を促進させることもできる。その後、現像液により現像し、未露光部分を除去する。現像液としては、未硬化のフッ素系樹脂が溶解する溶剤であれば如何なるものでもよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;2H,3H-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ヘキサフルオロベンゼン、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール等のフッ素系溶剤等を用いることができる。
【0131】
現像時間は、30~300秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法などのいずれでもよい。現像後、溶剤で洗浄を行い、圧縮空気または圧縮窒素で風乾させることによって、基板上の溶剤を除去する。続いて、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、好ましくは40~150℃で、5~90分間加熱処理をすることによって、パターンが形成される。
【0132】
上記のフォトリソグラフィ技術を用いる場合、フォトリソグラフィ技術を経て画素パターンを形成させた後、画素内の基板表面の汚れを除去してもよい。例えば、低圧水銀灯もしくはエキシマUV等の短波長紫外線の照射、または光アッシング処理等により基板表面を洗浄することが挙げられる。光アッシング処理とはオゾンガス存在下、短波長紫外線を照射する処理である。前記短波長紫外線とは、100~300nmの波長にメインピークを有する光である。
【0133】
このように、上記のフッ素系樹脂は、それ自体はフッ素系溶剤または有機溶剤に可溶であり、光照射により、側鎖に有する光架橋性基が架橋され硬化し、用いた溶剤に不溶化する。この性質を利用し、上記のフッ素系樹脂を光照射により架橋した際に、フッ素系溶剤または有機溶剤によって光の照射されていない部分が除去されるネガ型レジストとして使用できる。
【0134】
光架橋物を得、パターンを形成した後用いるドライプロセスとしては、プラズマ装置、UVオゾン装置、反応性イオンエッチング装置の少なくとも1種を用いたドライプロセスであることが好ましく、プラズマクリーナー、UVオゾンクリーナーであることがより好ましい。これにより、パターン内部に残っている微量のフッ素系樹脂の残渣を除去およびパターン内部を親液化することができる。
【0135】
ドライプロセスを行った基板に存在するアッシング残渣は上記のフッ素系樹脂のドライプロセスによる、変質物であり、パターン外部、パターン内部に付着し、抵抗の増大、パターン内部の親液性及びパターン外部の撥液性を低下するものである。この変質物は酸化されたフッ素系樹脂からなるので、絶縁層となる。
【0136】
アッシング残渣を除去するために、ドライプロセスを行った後、さらにアルカリ液及び/又はアルコールで洗浄する(アッシング残渣除去工程)。
【0137】
上記のアルカリ液としては無機アルカリ類、第一アミン類、第二アミン類、第三アミン類、アルコールアミン類、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、の少なくとも1種を含むアルカリ類の水溶液であること好ましい。
【0138】
無機アルカリ類としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等が例示される。
【0139】
第一アミン類としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン等が例示される。
【0140】
第二アミン類としては、例えば、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等が例示される。
【0141】
第三アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等が例示される。
【0142】
アルコールアミン類としては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等が例示される。
【0143】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等が例示される。
【0144】
環状アミン類としては、例えば、ピロール、ピペリジン等が例示される。
【0145】
これらの中でも、アルカリ液としては、無機アルカリ類、第三アミン類、アルコールアミン類、第4級アンモニウム塩等が好ましく、特に好ましくは第4級アンモニウム塩である。
【0146】
上記のアルカリ液の水素イオン濃度指数はpH8以上であることが好ましく、pH10以上であることがより好ましく、pH12以上であることがより好ましい。
【0147】
上記のアルコールは、炭素原子数1~4の飽和脂肪族アルコールであることが好ましく、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等が用いられ、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0148】
アルカリ液及び/又はアルコールでの洗浄(処理)は、例えば、ドライプロセス後の基板を被処理物として、これをアルカリ液及び/又はアルコールに接触させることにより行うことができる。アルカリ液及び/又はアルコールへの接触条件は、ドライプロセス後のアッシング残渣が除去でき、アルカリ液及び/又はアルコールの種類や温度に応じて適宜設定することができる。
【0149】
接触方法としては、例えば、アルカリ液及び/又はアルコールをためた槽に、カセットに入った多量の被処理物を浸漬させるバッチ式、回転させた被処理物の上からアルカリ液及び/又はアルコールをかけて洗浄する枚葉式、被処理物にアルカリ液及び/又はアルコールをスプレーで吹付け続けて洗浄するスプレー式等、種々の接触方法が用いられる。
【0150】
アッシング残渣除去工程の温度は、例えば10~60℃ 程度、好ましくは15~40℃ 程度にするのがよい。
【0151】
接触時間としても限定されず適宜選択することができるが、例えば、0.5分~60分程度、好ましくは0.5分~10分程度が例示できる。
【0152】
また、バッチ式の場合は、必要に応じて、撹拌下のアルカリ液及び/又はアルコールに被処理物を浸漬してもよい。撹拌の速度も限定されず、適宜選択することができる。不要物が剥離しにくい場合、例えば被処理物をアルカリ液及び/又はアルコールに浸漬して超音波洗浄を行ってもよい。
【0153】
アッシング残渣除去工程の後、さらに純水で洗浄することができる。この洗浄によりアルカリ液及び/又はアルコールを洗い流すことができる。
【0154】
本発明のパターン形成方法により得られるパターンでは、フッ素系樹脂が架橋して残っている部分(パターン外部)は、機能層を形成するためのインクの濡れ広がりを避け撥液性に優れることから、接触角(パターン外部の水接触角)は70°以上であることが好ましく、特に80°以上が好ましい。
【0155】
また、フッ素系樹脂が除去されている部分(パターン内部)は、親液性に優れることから、接触角(パターン内部の水接触角)は30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、特に10°以下が好ましい。
【0156】
本発明のアッシング残渣除去工程を含むパターンの形成方法は、ドライプロセス後に基板に存在するアッシング残渣を効果的に除去する方法であって、有機トランジスタ素子、カラーフィルター、有機EL素子を製造する際にパターン内を親液化し、インクがより濡れ広がりやすくすることができる。また、前記の有機トランジスタ素子、カラーフィルター、有機EL素子を含む電子バイスの電気特性を向上することができる。
【0157】
以下に本発明の一態様である電子デバイスについて詳細に説明する。
【0158】
本発明のアッシング残渣除去工程は、電子デバイスに用いることができる。
【0159】
電子デバイスとして、有機トランジスタを挙げることができる。
【0160】
一般的な有機トランジスタは、基板上にゲート絶縁層を有し、更にこのゲート絶縁層の上に有機半導体層を成膜し、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を付設することにより得られる。有機トランジスタの素子構造の一例を、断面図として
図1に示す。1001は、ボトムゲート-トップコンタクト型、1002は、ボトムゲート-ボトムコンタクト型、1003は、トップゲート-トップコンタクト型、1004は、トップゲート-ボトムコンタクト型の素子構造である。1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示す。
【0161】
上記の有機トランジスタの一形態を
図2に示す。
図2に示す有機トランジスタ1005は、
図1におけるボトムゲート-ボトムコンタクト型に対応する。7はパターン、8は保護膜層を示す。
【0162】
該有機トランジスタにおいて、用いることができる基板は素子を作製できる十分な平坦性を確保できれば特に制限されず、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;プラスチック;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属;セラミックス;コート紙;表面コート不織布等が挙げられ、これらの材料からなる複合材料またはこれらの材料を多層化した材料であっても良い。また、表面張力を調整するため、これらの材料表面をコーティングすることもできる。
【0163】
基板として用いるプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン-1、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、スチレンブロック共重合体等が例示される。また、上記のプラスチックを2種以上用いて積層して基板として用いることができる。
【0164】
有機半導体層で用いることができる有機半導体には何ら制限はなく、N型およびP型の有機半導体の何れも使用することができ、N型とP型とを組み合わせたバイポーラトランジスタとしても使用できる。また、低分子および高分子の有機半導体の何れも用いることができ、これらを混合して使用することもできる。有機半導体の具体的な化合物としては、例えば下記式(D-1)~(D-11)で表される化合物等が例示される。
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
本発明において、有機半導体層を形成する方法としては、有機半導体を真空蒸着する方法、または有機半導体を有機溶剤に溶解させて塗布、印刷する方法等が例示されるが、有機半導体層の薄膜を形成できる方法であれば何らの制限もない。有機半導体層を有機溶剤に溶解させた溶液を用いて塗布、または印刷する場合の溶液濃度は、有機半導体の構造および用いる溶剤により異なるが、より均一な半導体層の形成および層の厚みの低減の観点から、0.5~5wt%であることが好ましい。この際の有機溶剤としては有機半導体が製膜可能な一定の濃度で溶解する限り何ら制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、デカリン、インダン、1-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、ジメチルナフタレン異性体混合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、γ-ブチロラクトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、グリセリン、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、3-メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、エチルアセテート、フェニルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-N-プロピルエーテル、テトラデカヒドロフェナントレン、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロフェナントレン、デカヒドロ-2-ナフトール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール、α-テルピネオール、イソホロントリアセチンデカヒドロ-2-ナフトール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、2,6-ジメチルアニソール、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、1-ベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、リモネン等が例示される。好ましい性状の結晶膜を得るためには有機半導体を溶解する溶解力が高く、沸点が100℃以上の溶剤が適しており、キシレン、イソプロピルベンゼン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、1,2-ジクロロベンゼン、3,4-ジメチルアニソール、ペンチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デカヒドロ-2-ナフトールが好ましい。また、前述の溶剤2種以上を適切な割合で混合した混合溶剤も用いることができる。
【0170】
有機半導体層には必要に応じて各種有機・無機の高分子若しくはオリゴマー、または有機・無機ナノ粒子を固体若しくは、ナノ粒子を水若しくは有機溶剤に分散させた分散液を含有させることができ、上記絶縁層上に高分子溶液を塗布して保護膜を形成できる。更に、必要に応じて本保護膜上に各種防湿コーティング、耐光性コーティング等を行うことができる。
【0171】
本発明で用いることができるゲート電極、ソース電極、またはドレイン電極としては、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、ポリシリコン、シリサイド、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、白金、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機電極、またはドープされた導電性高分子(例えば、PEDOT-PSS)等の有機電極等の導電性材料が例示され、これらの導電性材料を複数、積層して用いることもできる。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極に表面処理剤を用いて表面処理を実施することもできる。このような表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0172】
また、前記の基板、絶縁層または有機半導体層の上に電極を形成する方法に特に制限はなく、蒸着、高周波スパッタリング、電子ビームスパッタリング等が挙げられ、前記導電性材料のナノ粒子を水または有機溶剤に溶解させたインクを用いて、溶液スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、ドクターブレード、ダイコート、パッド印刷、ロールコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スーパーフレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷等の方法を採用することもできる。
【0173】
本発明の一態様に係る有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、移動度が0.20cm2/Vs以上であることが好ましい。
【0174】
本発明の一態様に係る有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、オン電流/オフ電流比が105以上であることが好ましい。
【0175】
本発明の一態様に係る有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、ソース・ドレイン間電流のヒステリシスが無いことが好ましい。
【実施例0176】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0177】
実施例において、以下に示す条件・装置で実施した。
【0178】
<フッ素系樹脂の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM-ECZ400S)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(1H-NMR)スペクトル分析より求めた。
【0179】
<スピンコート>
ミカサ株式会社製MS―A100を用いた。
【0180】
<UV照射>
ウシオライティング(株)製UVマスクアライナ、UPE-1605MAを用い、UV強度14.2mW/cm2の条件で、搬送速度を変えてUV照射時間を調整した。
【0181】
<UVオゾンクリーナー>
サムコ(株)製UVオゾンクリーナー UV-1を用い、酸素流量0.5L/分の条件でドライプロセスを行った。
【0182】
実施例において、以下の結果を得た。
【0183】
合成例1(光架橋性モノマー1の合成)
窒素雰囲気下で200mLのフラスコにグリセリンモノメタクリレート(ブレンマーGLM、日油)6gとトリエチルアミン8.6gとテトラヒドロフラン18gとを入れ、十分に混合した。また、窒素雰囲気下でガラス瓶に桂皮酸クロリド14.1gとテトラヒドロフラン42gとを入れて溶かした。その後グリセリンモノメタクリレート、トリエチルアミンおよびテトラヒドロフランを入れたフラスコに窒素を流し、滴下ロートを用いて桂皮酸クロリドを溶かした溶液を滴下し、22時間攪拌した。その後、ろ過して副産物である塩を除去し、アスピレーターでテトラヒドロフランを除去した。その後、生成物をトルエン50gに溶解させて炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗浄して真空乾燥した。乾燥後得られた物質の1H-NMRおよびガスクロマトグラフィー分析の結果、下記式(7)で表される物質(光架橋性モノマー1)であることを確認した。(GC純度87%)
(光架橋性モノマー1)
【0184】
【0185】
実施例1(フッ素系樹脂1の重合)
容量75mLのガラスアンプルに、合成例1で得られた光架橋性モノマー1 6.78g、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル9.10g、重合開始剤としてパーヘキシルND(日油製)0.27g、および2-ブタノン37gを入れ、窒素置換と抜圧とを繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを45℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルからポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液を、メタノール500mL中に滴下して析出させた後、メタノール300mLで2回洗浄した。さらに30℃で8時間真空乾燥することにより、フッ素系樹脂1を13.8g得た(収率:約87%)。フッ素系樹脂1の
1H-NMR測定により、その組成は、光架橋性モノマー1(光架橋基単位1)[B-1]/メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(フッ
素系単位)[C-29]=38/62(mol%)であり、式(7)で表される共重合体であることを確認した。
1H-NMR測定結果を
図3に示す。
【0186】
(フッ素系樹脂1)
【0187】
【0188】
実施例2(フッ素系樹脂2の重合)
容量75mLのガラスアンプルに、合成例1で得られた光架橋性モノマー1 8.2g、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル3.1g、重合開始剤としてパーヘキシルND(日油製)0.18g、および2-ブタノン26gを入れ、窒素置換と抜圧とを繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを45℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルからポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液を、メタノール500mL中に滴下して析出させた後、メタノール300mLで2回洗浄した。さらに30℃で8時間真空乾燥することにより、フッ素系樹脂9を8.8g得た(収率:約88%)。フッ素系樹脂9の1H-NMR測定により、その組成は、光架橋性モノマー1(光架橋基単位1)[B-1]/メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(フッ素系単位1)[C-29]=26/74(mol%)であり、式(8)で表される共重合体であることを確認した。
【0189】
(フッ素系樹脂2)
【0190】
【0191】
比較例1(フッ素系樹脂3の重合)
容量75mLのガラスアンプルに、合成例1で得られた光架橋性モノマー10.9g、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル0.72g、重合開始剤としてパーヘキシルND(日油製)0.18g、および2-ブタノン27gを入れ、窒素置換と抜圧とを繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを45℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルからポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液を、メタノール500mL中に滴下して析出させた後、メタノール300mLで2回洗浄した。さらに30℃で8時間真空乾燥することにより、フッ素系樹脂9を8.5g得た(収率:約85%)。フッ素系樹脂9の1H-NMR測定により、その組成は、光架橋性モノマー1(光架橋基単位1)[B-1]/メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(フッ素系単位1)[C-29]=10/90(mol%)であり、式(9)で表される共重合体であることを確認した。
【0192】
(フッ素系樹脂3)
【0193】
【0194】
<ドライプロセス後のアッシング残渣の除去評価>
(フッ素家樹脂が除去されている部分のアッシング残渣除去の評価)
合成したフッ素系樹脂1~3と増感剤として4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成工業製)を添加した溶液をフッ素系樹脂20wt%、増感剤0.4wt%になるように溶液を調製した。(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)その後、洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(コーニング社製EagleXG)にフッ素系樹脂1~2の溶液を500rpm×5秒、1500rpm×20秒の条件でスピンコートし、150℃で10分間乾燥した。パターン形成用マスクとしては、15×20mm2形状の、クロムでパターニングしたマスクを用いた。30×30mm2のガラス基板上に前記の溶液をスピンコートして得られた膜上にマスクを配置し、UVを300mJ/cm2照射した。照射後、未架橋部分をアセトンで1分間洗浄除去することにより、膜上に15×20mm2形状サイズのパターンを形成した。
【0195】
その後、ドライプロセスとしてUVオゾン装置で10分間処理し、150℃で1分間処理した。その後、アッシング残渣除去として、アルコールまたはアルカリ液(洗浄液1,2)で洗浄を行って、150℃で1分間乾燥した。
【0196】
その後、接触角計(協和界面化学社製、商品名DM-300)を使用して、フッ素家樹脂が除去されている部分(パターン内部)をθ/2法により水に対する接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0197】
評価結果、アッシング残渣を除去することでパターン内部の水接触角が10°以下に低下しており、親液化することを確認した。
【0198】
洗浄液1:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38%水溶液(東京応化工業製、NMD-3)
洗浄液2:イソプロピルアルコール
(フッ素家樹脂が除去されてない部分のアッシング残渣除去の評価)
合成したフッ素系樹脂1~3と増感剤として4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成工業製)を添加した溶液をフッ素系樹脂20wt%、増感剤0.4wt%になるように溶液を調製した。(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)その後、洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(コーニング社製EagleXG)にフッ素系樹脂1~2の溶液を500rpm×5秒、1500rpm×20秒の条件でスピンコートし、150℃で10分間乾燥し、UVを300mJ/cm2照射して硬化させた。その後、ドライプロセスとしてUVオゾン装置で10分間処理した。その後、アッシング残渣除去として、アルコールまたはアルカリ液(洗浄液1,2)で洗浄を行って、150℃で1分間乾燥した。
【0199】
その後、接触角計(協和界面化学社製、商品名DM-300)を使用して、フッ素家樹脂が除去されてない部分(パターン外部)をθ/2法により水に対する接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
評価結果、フッ素系樹脂1~2を用いた実施例1~2はアッシング残渣を除去後にパターン外部の水接触角が80°以上であり、撥液化することとパターンの内部は水接触角が10°以下であり、新液化したことを確認した。
【0201】
一方でフッ素原子の含有量が20mol%未満のフッ素系樹脂3を用いた比較例1はパターン外部の接触角が80°以下であり、十分に撥液化しなかった。
【0202】