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特開2023-17753粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
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  • 特開-粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017753
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230131BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230131BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230131BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J133/14
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118582
(22)【出願日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097784
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】崔 柱 烈
(72)【発明者】
【氏名】金 成 漢
(72)【発明者】
【氏名】趙 成 ▲きん▼
(72)【発明者】
【氏名】李 昇 勳
(72)【発明者】
【氏名】金 一 鎭
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲げん▼ 昇
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF031
4J040DF061
4J040EF262
4J040GA05
4J040HD32
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA02
4J040LA06
4J040LA07
4J040MA05
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】入射される光の光効率を高める粘着フィルムを提供する。
【解決手段】1種以上の芳香族基含有(メタ)アクリレートを含有する単量体混合物の重合物を含む粘着剤組成物を硬化してなる粘着フィルムであって、前記粘着フィルムは、屈折率が1.55以上であり、初期の分解率が10%~20%であり、およびゲル分率が50%~70%である、粘着フィルム、それを含む光学部材、ならびにそれを含む光学表示装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基含有(メタ)アクリレートを1種以上含有する単量体混合物の重合物を含む粘着剤組成物を硬化してなる粘着フィルムであって、
前記粘着フィルムは、屈折率が1.55以上であり、初期の分解率が10%~20%であり、ゲル分率が50%~70%である、粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着フィルムは、ガラス板に対する剥離力が800gf/inch以上である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
ガラス転移温度が-5℃~20℃である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着フィルムは、高屈折率の無機粒子を含まない、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記芳香族基含有(メタ)アクリレートは、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃~40℃である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記芳香族基含有(メタ)アクリレートは、下記化学式2で表される化合物を含む、請求項1に記載の粘着フィルム:
【化1】

前記化学式2中、
Xは、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、または酸素原子(O)であり、
Yは、水素原子またはメチル基であり、
は、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子、または炭素数6~20のアリール基であり、
nは、0~5の整数であり、
は、炭素数1~10のアルキレン基、または炭素数1~30の(ポリ)アルキレンオキシ基である。
【請求項7】
前記芳香族基含有(メタ)アクリレートは、フェニルベンジルアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、モノエトキシ化フェニルフェノキシ(メタ)アクリレート、およびポリ(エトキシ化)フェニルフェノキシ(メタ)アクリレートの1種以上を含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記単量体混合物は、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体よりも低い、請求項8に記載の粘着フィルム。
【請求項10】
前記単量体混合物は、前記単量体混合物の総質量に対して、芳香族基含有(メタ)アクリレートの1種以上を75質量%~95質量%、および前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を5質量%~25質量%の含有量で含む、請求項8に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記粘着剤組成物は、イソシアネート系硬化剤およびシランカップリング剤の1種以上をさらに含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学部材。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、数個の薄膜の積層構造を含むが、発光層で生成された光の80%以上が、有機発光素子の内部または界面で反射または吸収されて前面に出射せず消失するため、光効率を下げ得る。光効率が低いことにより、目的とする輝度を具現するためには、電力消費量を増加させなければならず、有機発光素子の寿命もまた、減少することになる。よって、光効率改善のための研究は重要な課題となっている。
【0003】
これと関連して、パターンを導入した光学素子を有機発光素子の上部に積層させることにより、光効率を改善するための研究が行われている。このような研究の一形態として、図3を参照すると、有機発光素子100の上部面に無機層200、低屈折率有機層300、および高屈折率有機層400が順に形成された構造が提案されている。無機層200は、シリコンナイトライド、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキサイド、チタニウムオキサイド、アルミニウムオキサイド等の無機粒子で形成されて高屈折率を示す。高屈折率有機層400は、無機層200と接しているため、無機層200とうまく付着し、高屈折率、例えば屈折率1.55以上を有しない場合は、視認性および光効率が改善されない。
【0004】
一般に、屈折率を高くするためには、無機粒子を含む方法を考慮することができる。しかし、無機粒子を含ませると、有機(メタ)アクリレートバインダーとの相溶性の制御が難しくなり、無機粒子の導入により貯蔵弾性率(G’)が高くなって粘着力が低下し、高価な無機粒子を使用することにより、材料費の原価上昇を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2007-0055363号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、入射される光の光効率を高める粘着フィルムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、パターン化された光学素子に対する付着の程度が著しく改善された粘着フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、剥離力が高く、耐熱信頼性および耐湿熱信頼性に優れた粘着フィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、無機粒子との相溶性を合わせなければならない問題、および粘着フィルムの製造原価の上昇の問題がない粘着フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粘着フィルムは、芳香族基含有(メタ)アクリレート1種以上を含有する単量体混合物の重合物を含む粘着剤組成物を硬化してなり、前記粘着フィルムは屈折率が1.55以上であり、初期の分解率が10%~20%であり、ゲル分率が50%~70%である。
【0011】
本発明の別の観点は、光学部材である。
【0012】
光学部材は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0013】
本発明の別の観点は、光学表示装置である。
【0014】
光学表示装置は、本発明の光学フィルムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】初期の分解率の計算を説明するためのグラフである。
図2】本発明の一実施形態による光学表示装置を示す断面概略図である。
図3】有機発光素子の光効率を高める構造の例示的な断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面および実施例を参考にして、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されるのではない。図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通して同一または類似する構成要素については、同じ図面符号を付ける。
【0017】
本明細書において「上部」と「下部」は、図面を基準に定義したものであり、見方により「上部」が「下部」に、「下部」が「上部」に変更になる場合もあり、「上に(on)」、または「上(on)」と称されるものは真上だけでなく中間に他の構造を介在させている場合も含まれ得る。一方、「直上(directly on)」、「真上」または「直接的に形成」あるいは「直接的に接して形成」と称されるものは、中間に他の構造を介在させないことを意味する。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0019】
本明細書において「屈折率」は、可視光線領域、具体的には波長633nmの光で測定した値である。
【0020】
本明細書において「粘着力」は、被着体であるガラス板(無アルカリガラス板)に対してJIS C2107:2011の規格に基づいて測定された値である。
【0021】
本明細書において、数値範囲の「X~Y」は、「X以上Y以下」(X≦、≦Y)を意味する。
【0022】
本発明は、パターン化された光学素子の上部面に積層される粘着フィルムに関するものである。上記光学素子の上部面には無機層が積層されており、該無機層の少なくとも一部には所定の形状を有するパターンが形成されている。パターン化された光学素子については、下記で詳しく説明する。
【0023】
本発明の粘着フィルムは、パターン化された光学素子から出射される光の光取出し効率を高める効果を奏することにより、相対的に少ない電力消費量でも高い輝度を具現することができ、これによって発光素子の寿命を延ばすことができる。
【0024】
下記で説明するが、上述の効果は、粘着フィルムの屈折率を1.55以上にすることによって提供できる。本発明の粘着フィルムは、高屈折率(例:屈折率1.55以上、具体的には1.55~2.0)の無機粒子、例えば、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)等を含まない。これにより、本発明の粘着フィルムは無機粒子と有機重合物と間の相溶性を合わせなければならない問題、無機粒子の導入により粘着フィルムの貯蔵弾性率(G’)が高くなって粘着力が低くなる問題、および無機粒子の使用による粘着フィルムの製造原価上昇の問題がなくなり得る。
【0025】
本発明の粘着フィルムは、パターン化された光学素子に対する付着の程度が著しく優れる。ここで、「付着の程度が著しく優れる」とは、光学素子のパターン化された面と粘着フィルムとの間の空間が最小化され、気泡もなく、パターン化された面が完全に埋められることにより、粘着フィルムとパターン化された面とが完全に密着していることを意味する。これにより、本発明の粘着フィルムは、パターン化された光学素子と該光学素子の上部面に積層される別の光学素子、例えば、偏光板との間の離脱および/または分離を防いで、表示装置の信頼性を高めることができる。また、本発明の粘着フィルムは、パターン化された光学素子と粘着フィルムとの間に互いに付着しない面積を最小化することにより、光効率が低くなる等の問題をなくすことができる。
【0026】
本発明の粘着フィルムは、耐熱信頼性および耐湿熱信頼性に優れる。よって、本発明の粘着フィルムはパターン化された光学素子と、該光学素子の上部面に積層される別の光学素子、例えば、偏光板との間の離脱および/または分離を防いで、表示装置の信頼性を高めることができる。
【0027】
下記で説明するが、上述の本発明の全ての効果は、粘着フィルムの剥離力を無条件で高めたからと言って達成できるものではなく、粘着フィルムのゲル分率を50%~70%とし、初期の分解率を10%~20%に調節することにより達成することができる。ゲル分率および初期の分解率については、下記で詳しく説明する。
【0028】
以下、本発明の一実施形態による粘着フィルムを説明する。
【0029】
本発明の粘着フィルムは、屈折率が1.55以上である。屈折率がこの範囲であれば、パターン化された光学素子の光出射面に積層する際、発光素子から出射される光の光取出し効率を高める効果を提供することができる。例えば、粘着フィルムは屈折率が1.55~1.65、具体的には1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65になり得る。
【0030】
本発明の粘着フィルムは、初期の分解率が10%~20%であり、ゲル分率が50%~70%である。この範囲であれば、パターン化された光学素子に対する付着の程度が優れることにより、優れた信頼性を提供し、付着の不良による光効率の低減を防ぐことができ、耐熱および耐湿熱信頼性も優れたものとなり得る。例えば、初期の分解率は、好ましくは13%~18%、具体的には10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、ゲル分率は好ましくは50%~65%、具体的には50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%であり得る。
【0031】
初期の分解率は、熱重量分析(TGA)から算出される。具体的には、図1を参照しながら、初期の分解率を求める方法を説明する。
【0032】
図1を参照すると、所定含有量の粘着フィルム試験片に対してDSCを測定すると、X軸が温度(単位:℃)であり、Y軸が初期の試験片の重量に対する特定温度における重量の百分率(単位:%)のグラフ(図1の実線グラフ)を得ることができる。DSCの測定条件は次の通りである:
1)温度範囲:25℃から700℃まで温度を上昇
2)昇温速度:10℃/分
3)窒素雰囲気下。
【0033】
得られたTGAのグラフに対して、DSC測定装置内のプログラムを通じて微分することにより、温度(T)(X軸,単位:℃)とd(W)/d(T)(Y軸,単位:%)の微分曲線(図1で一点鎖線グラフ)を得る。得られた微分曲線において最初の変曲点(図1のA)、最初の変曲点を含む開始(onset)温度(図1のB)および終了(end)温度(図1のC)を得た後、微分曲線と基準線との間の全体面積に対する、開始温度から終了温度までの区間と基準線との間の面積の比率を通じて、初期の分解率を算出する。ここで「基準線」とは、d(W)/d(T)が0の線である。初期の分解率は、分析プログラム(TRIOS,Discovery TA)を使用して得ることができるが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明者らは、初期の分解率が、パターン化された光学素子に対する付着の程度を高めるまた別の要素であることを確認した。これについて、具体的な理由は分からないが、初期の分解率は、粘着フィルム中の複数の成分のうち、低分子量の成分、例えば、共重合体中の低分子量の共重合体またはオリゴマーによって決定される。粘着フィルム中、低分子量の共重合体またはオリゴマー、あるいはこれらの硬化物は、高分子量の共重合体またはオリゴマーに比べて相対的に柔軟であることにより、光学素子のパターン化された面によりよく付着され得ると予想できるが、これに制限されるものではない。
【0035】
ゲル分率は、下記数式1によって計算される。一般に、ゲル分率は、粘着剤組成物から粘着フィルムを製造するときに、粘着フィルムの熟成の程度を評価するものである。しかし、本発明者らは、ゲル分率が、パターン化された光学素子に対する付着の程度を高める1つの要素であることを確認した。
【0036】
【数1】
【0037】
上記数式1中、
は、金網の重さ(単位:g)であり、
は、金網に粘着フィルム0.5gを入れて試験片を作製した後、測定した金網および粘着フィルムの全体の重さ(単位:g)であり、
は、上記試験片を100ccのサンプル瓶に入れ、トルエン50ccを添加して試験片をトルエン内に完全に浸漬させ、25℃で1日放置した後、サンプル瓶から試験片を取出し、120℃で12時間乾燥させて測定した重さ(単位:g))である。
【0038】
一具体例において、上記の金網の目開きは100メッシュでもよい。
【0039】
粘着フィルムは、ガラス板に対する粘着力が800gf/inch以上であり得る。粘着力がこの範囲であれば、パターン化された光学素子に高い信頼性で粘着され得る。例えば、粘着フィルムはガラス板に対する粘着力が、800gf/inch~2000gf/inch、具体的には、800gf/inch、850gf/inch、900gf/inch、950gf/inch、1000gf/inch、1050gf/inch、1100gf/inch、1150gf/inch、1200gf/inch、1250gf/inch、1300gf/inch、1350gf/inch、1400gf/inch、1450gf/inch、1500gf/inch、1550gf/inch、1600gf/inch、1650gf/inch、1700gf/inch、1750gf/inch、1800gf/inch、1850gf/inch、1900gf/inch、1950gf/inch、2000gf/inchであり得る。なお、1gf/inch=0.386kg/sである。
【0040】
本発明の粘着フィルムは、光学的に透明であり光学表示装置に使用することができる。一具体例において、粘着フィルムは光透過率が90%以上、例えば90%~100%であり得る。
【0041】
本発明の粘着フィルムは、ヘーズが1%以下、例えば0.001%~0.5%であり得る。ヘーズがこの範囲であれば、光学表示装置に適用することができる。ヘーズは、粘着フィルムが上述の無機粒子を含まないことにより、有機共重合体と無機粒子との間の相溶性の調節の問題点が全くないため、容易に達成することができる。なお、該ヘーズは、JIS K7136:2000に基づいて測定することができる。
【0042】
粘着フィルムは、厚さが通常50μm以下、例えば5μm~30μmであり得る。厚さがこの範囲であれば、光学表示装置に使用することができる。
【0043】
粘着フィルムは、下記で説明する粘着剤組成物を硬化してなる感圧接着剤(pressure sensitive adhesive,PSA)フィルムである。例えば、粘着フィルムは、粘着剤組成物を離型フィルムの一面に所定の厚さで塗布し、乾燥させた後に熟成させることにより、製造することができる。乾燥は、100℃~150℃で30秒~5分間行うことができるが、これに制限されるものではない。熟成は、25℃~40℃で1日~5日放置することで行うことができる。熟成後、より低い熟成温度、例えば20℃~30℃で約5時間~約15時間放置する工程をさらに行うこともできる。
【0044】
以下、粘着剤組成物について説明する。
【0045】
本発明の粘着剤組成物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の1種以上を含有する単量体混合物の重合物および硬化剤を含む。ここで「芳香族基」とは、炭素数6~20のアリール基を意味し得る。アリール基は、単環、複環(縮合型)、または単環が連結した環集合(例:ビフェニル基)を含むことができる。ここで、「重合物」は共重合体、オリゴマー、プレポリマーの1種以上を含むことができる。
【0046】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体を1種以上含有する単量体混合物の重合物は、本発明に係る屈折率および初期の分解率の達成に役立ち得る。
【0047】
上記単量体混合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体1種以上および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を含み得る。
【0048】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムの屈折率を高めることができる。一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーの屈折率が1.5以上、具体的には、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、例えば1.55~1.7であり得る。上記屈折率の範囲であれば、本発明の屈折率が容易にできる。
【0049】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃~40℃であり得る。この範囲であれば、粘着フィルムが固くなりすぎないため、パターン化された光学素子にうまく付着するようにすることができる。例えば、ガラス転移温度は0℃~35℃、具体的には、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃であり得る。本明細書において「ホモポリマーのガラス転移温度」は、製品のカタログを参照して決定するか、当業者に知られている通常の方法で測定できる。
【0050】
本発明の粘着フィルムは、前述のホモポリマーのガラス転移温度を有する芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体を下記で説明するように多量に含んで屈折率を高めつつ、初期の分解率を達成できるようにするため、粘着フィルムは、ガラス転移温度が-5℃~20℃、具体的には、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃であり得る。
【0051】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、芳香族基を1個有する単量体も使用できるが、芳香族基を2個以上有する単量体を使用することが好ましい。芳香族基を2個以上有する単量体は、芳香族基を1個有する単量体に比べて、同じ含有量で使用しても粘着フィルムの屈折率を容易に高めることができる。一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、芳香族基を2個~5個有することができる。
【0052】
一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、下記化学式1で表される構造を有し得る:
【0053】
【化1】
【0054】
上記化学式1中、*は連結部位であり、
Xは、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、または酸素原子(O)である。
【0055】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、1官能の(メタ)アクリレートであり得る。これにより、重合物製造時に単量体が過度に重合されることにより、粘着フィルムが固くなってパターン化された光学素子に付着不良が発生する問題を最小化することができ、本発明で規定する初期の分解率および粘着力に容易に到達し得る。
【0056】
一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、下記化学式2で表される化合物を含み得る:
【0057】
【化2】
【0058】
上記化学式2中、
Xは、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、または酸素原子(O)であり、
Yは、水素またはメチル基であり、
は、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子、または炭素数6~20のアリール基であり、
nは、0~5の整数であり、
は、炭素数1~10のアルキレン基または全体の炭素数が1~30のモノまたはポリアルキレンオキシ基である。
【0059】
一具体例において、上記化学式2中、全体の炭素数が1~30のモノまたはポリアルキレンオキシ基は、-*(-O-R-)-*(*は連結部位であり、Rは炭素数1~3のアルキレン基であり、nは1~10の整数である)であり得る。
【0060】
例えば、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、o-フェニルベンジルアクリレート、m-フェニルベンジルアクリレート、またはp-フェニルベンジルアクリレート等を含むフェニルベンジル(メタ)アクリレート;フェノキシベンジル(メタ)アクリレート;モノエトキシ化フェニルフェノキシ(メタ)アクリレート;ジエトキシ化フェニルフェノキシ(メタ)アクリレート等を含むポリエトキシ化フェニルフェノキシ(メタ)アクリレート;等の1種以上を含むことができる。
【0061】
一具体例において、単量体混合物は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種を含むことができる。
【0062】
別の具体例において、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体ごとに、ホモポリマーの屈折率、ガラス転移温度等が異なるため、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体を2種以上混合して含むことにより、本発明の効果の具現がより容易になり得る。
【0063】
一例を挙げると、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、上記化学式2中のXが単結合または炭素数1~5のアルキレン基である第1の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、および上記化学式2中のXが酸素(O)である第2の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体の混合物であり得る。このような混合物を用いるにより、粘着力の上昇および柔軟性の向上効果が得られ得る。
【0064】
第1の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、フェニルベンジルアクリレートを含むことができるが、これに制限されるものではない。第2の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0065】
第1の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量に対して、70質量%~90質量%、具体的には、70質量%、71質量%、72質量%、73質量%、74質量%、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、例えば70質量%~80質量%の含有量で含まれ得る。第2の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量に対して、1質量%~15質量%、具体的には、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、例えば5質量%~15質量%の含有量で含まれ得る。
【0066】
別の例を挙げると、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、上記化学式2中のRが炭素数1~10のアルキレン基または酸素原子である第3の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、および上記化学式2中のRが炭素数1~30の(ポリ)アルキレンオキシ基である第4の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体の混合物を含み得る。上記第4の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体が柔軟性(flexibility)を提供することにより、パターン化された光学素子に粘着フィルムが付着される程度をより高めることができる。
【0067】
第3の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、フェニルベンジルアクリレート、およびフェノキシベンジル(メタ)アクリレートの1種以上を含むことができるが、これらに制限されるものではない。第4の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、モノエトキシ化フェニルフェノキシ(メタ)アクリレート、およびポリ(エトキシ化)フェニルフェノキシ(メタ)アクリレートの1種以上を含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0068】
第3の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量に対して、70質量%~90質量%、具体的には、70質量%、71質量%、72質量%、73質量%、74質量%、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、例えば70質量%~80質量%の含有量で含むことができる。第4の芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量に対して、1質量%~15質量%、具体的には、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、例えば5質量%~15質量%の含有量で含むことができる。
【0069】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の1種以上は、単量体混合物の全質量に対して、75質量%~95質量%、具体的には、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、例えば75質量%~90質量%、75質量%~85質量%の含有量で含まれ得る。上記含有量の範囲であれば、粘着フィルムの屈折率を確保し、粘着フィルムの粘着力が低くなる問題をなくすことができる。
【0070】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、エステル部位に1つ以上の水酸基を含む炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびエステル部位に1つ以上の水酸基を含む炭素数3~20のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の1種以上を含むことができる。
【0071】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体に比べて低くなり得る。これにより、粘着フィルムの粘着力を高め、パターン化された光学素子にうまく付着するようにし、粘着力も高めることができる。例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-10℃以下、具体的には、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、例えば-50℃~-10℃であり得る。
【0072】
一具体例において、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体として、エステル部位に1つ以上の水酸基を含む炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。具体的には、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの1種以上を含み得る。水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単独でもまたは2種以上を混合しても用いることができる。
【0073】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量に対して、5質量%~25質量%、具体的には、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、例えば、10質量%~25質量%、15質量%~25質量%の含有量で含むことができる。上記含有量の範囲であれば、本発明の効果を容易に達成することができる。本発明では、パターン化された光学素子にうまく付着される粘着フィルムを提供するために、従来に比べて相対的に高い含有量の水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を使用している。
【0074】
芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量は、単量体混合物中、95質量%以上、例えば98質量%~100質量%、好ましくは100質量%で含まれ得る。
【0075】
単量体混合物は、エステル部位に、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよい。直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびドデシル(メタ)アクリレートの1種以上を含むことができる。
【0076】
上記重合物は、多分散指数(PDI)が高いため、重合物に含まれるオリゴマー、共重合体等の分子量分布が広い。本発明者らは、このような高い多分散指数が本発明における初期の分解率とゲル分率との達成に役立ち得ることを確認した。一具体例において、上記重合物は、多分散指数(PDI)が5以上、具体的には、約5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、例えば5~10になり得る。
【0077】
上記重合物は、重量平均分子量が10万g/mol~500万g/mol、具体的には、10万、50万、100万、150万、200万、250万、300万、350万、400万、450万、500万g/mol、例えば10万g/mol~300万g/mol、10万g/mol~200万g/molであり得る。重量平均分子量が上記範囲であれば、粘着フィルムの粘着力と耐久信頼性とが確保できる。
【0078】
上記多分散指数は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography:GPC)を用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、これにより算出(Mw/Mn)することができる。
【0079】
上記重合物は、前記単量体混合物に開始剤を添加した後、重合して製造することができる。開始剤は、光重合開始剤および熱重合開始剤の1種以上を含むことができる。光重合開始剤および熱重合開始剤は、それぞれ当業者に知られている通常のものを使用することができる。例えば、開始剤は、アゾ系重合開始剤;および/または過酸化ベンゾイルもしくは過酸化アセチルのような過酸化物等を含む通常のものを使用することができる。
【0080】
開始剤は、単量体混合物100質量部に対して、0.01質量部~0.5質量部、好ましくは0.01質量部~0.1質量部、より好ましくは0.03質量部~0.08質量部の含有量で含まれ得る。上記含有量の範囲であれば、重合物を容易に得ることができる。
【0081】
重合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の当業者に知られている通常の重合方法を含むことができる。重合温度は、60℃~80℃、重合時間は4時間~8時間であり得る。このような範囲であれば、重合物を容易に得ることができる。
【0082】
硬化剤は、上記重合物を硬化させて粘着フィルムのマトリックスを形成し、粘着力を高めることができる。硬化剤は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤、およびアジリジン系硬化剤の1種以上を含むことができる。好ましくは、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を使用できる。
【0083】
イソシアネート系硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等を含むトルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等を含むキシリレンジイソシアネート(XDI)、水素化トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン/トルエンジイソシアネートの三量体付加物を含むトリメチロールプロパントルエンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネート等の上述のイソシアネート系硬化剤のアダクト等を含むことができる。
【0084】
硬化剤、例えばイソシアネート系硬化剤は、上記重合物100質量部に対して、0.01質量部~1質量部、具体的には、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.25質量部、0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、0.45質量部、0.5質量部、0.55質量部、0.6質量部、0.65質量部、0.7質量部、0.75質量部、0.8質量部、0.85質量部、0.9質量部、0.95質量部、1質量部、例えば0.01質量部~0.5質量部の含有量で含まれ得る。上記含有量の範囲であれば、耐久性および粘着力を同時に満たす効果を奏することができる。
【0085】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0086】
シランカップリング剤は、粘着フィルムの粘着力を高め、信頼性を高めることができる。
【0087】
シランカップリング剤は、アセチルアセトネート基を有するアセチルアセトネート系シランカップリング剤、アセトアセテート基を有するアセトアセテート系シランカップリング剤、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤の1種以上を含むことができる。例えば、エポキシ系シランカップリング剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を含むことができるが、これらに制限されるものではない。アセチルアセトネート系シランカップリング剤またはアセトアセテート系シランカップリング剤は、3-(トリメトキシシリル)プロピルアセトアセテート、アセチルアセトネートトリメトキシシラン、アセチルアセトネートトリエトキシシラン等を含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0088】
シランカップリング剤は、上記重合物100質量部に対して、0.1質量部~1質量部、具体的には、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.25質量部、0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、0.45質量部、0.5質量部、0.55質量部、0.6質量部、0.65質量部、0.7質量部、0.75質量部、0.8質量部、0.85質量部、0.9質量部、0.95質量部、1質量部、例えば0.1質量部~0.5質量部の含有量で含まれ得る。上記含有量の範囲であれば、粘着フィルムの粘着力がより改善され得る。
【0089】
粘着剤組成物は、硬化触媒、添加剤等をさらに含むことができる。
【0090】
硬化触媒は、例えば、金属触媒として、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系触媒、トリス(アセチルアセトネート)鉄、トリス(ヘキサン-2,4-ジオネート)鉄、トリス(ヘプタン-2,4-ジオネート)鉄等の鉄系触媒を含むことができる。硬化触媒は、上記重合物100質量部に対して、0.001質量部~0.01質量部、具体的には0.005質量部~0.01質量部で含まれ得る。上記含有量の範囲であれば、本発明の効果の具現がより容易になり得る。
【0091】
添加剤は、当業者に知られている通常の添加剤として、例えば、帯電防止剤、粒子、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等を含むことができる。添加剤は、上記重合物100質量部に対して、0.001質量部~5質量部、具体的には0.01質量部~1質量部で含まれ得る。上記含有量の範囲であれば、粘着剤層の物性に影響を及ぼさずに、添加剤の効果を得ることができる。
【0092】
粘着剤組成物は、無溶剤型でもよく、溶剤をさらに含んでもよい。粘着剤組成物が溶剤を含む場合、粘着フィルムを薄くして、塗布性を良くすることができる。溶剤は、当業者に知られている通常の溶剤を使用することができる。例えば、溶剤は、メチルエチルケトン、エチルアセテート、およびトルエンの1種以上を含むことができる。
【0093】
本発明の光学部材は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0094】
以下、本発明の一実施形態による光学部材を説明する。
【0095】
光学部材は、第1の粘着フィルムおよび第1の粘着フィルムの上部面に積層された偏光板を含み、第1の粘着フィルムは、本発明の粘着フィルムを含み得る。
【0096】
偏光板は、偏光子および偏光子の少なくとも一面に積層された保護層または保護フィルムを含み得る。偏光子、保護層、および保護フィルムは、当業者に知られている通常の種類を採用することができる。
【0097】
光学部材は、第1の粘着フィルムと偏光板との間に第2の粘着フィルムをさらに含んでもよい。第2の粘着フィルムは、第1の粘着フィルムに比べて屈折率が低い。第2の粘着フィルムは、第1の粘着フィルムと偏光板とに対する粘着力を高めて、光学部材の信頼性を高めることができる。
【0098】
光学表示装置は、本発明の粘着フィルムまたは光学部材を含む。光学表示装置は、有機発光素子、無機発光素子、有機-無機ハイブリッド発光素子等を含む発光素子表示装置を含むことができる。
【0099】
以下、本発明の一実施形態である光学表示装置を、図2を参照して説明する。
【0100】
図2を参照すると、光学表示装置は、有機発光素子100、有機発光素子100の上部面に積層されたパターン化された光学素子、および高屈折率有機層500を含み、パターン化された光学素子は、有機発光素子100から順に積層された無機層200および低屈折率有機層300を含み、高屈折率有機層500は本発明の粘着フィルムを含むことができる。低屈折率有機層300は、無機層200の上に配置され、所定の断面形状を有する突出したパターンになり得る。このようなパターン化された光学素子は、工程安定性を確保することができる。図2に示したように、低屈折率有機層300は、所定の断面を有するパターンが複数個互いに離隔されており、パターン間の間隔は10μm~1000μm、パターンの高さ、つまり段差は1μm~100μmのパターン面を備えることができる。低屈折率有機層300は、特に制限されないが、アクリル系物質で形成することができる。
【実施例0101】
以下、本発明の好ましい実施例により、本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0102】
製造例1:(メタ)アクリル系重合物の製造
窒素ガスが還流し、温度調節を容易にするように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、酢酸エチル 80質量部を添加した。p-フェニルベンジルアクリレート(PBA)70質量部、フェノキシベンジルアクリレート(PoBA)15質量部、および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA、ホモポリマーのガラス転移温度:-40℃)15質量部を含む単量体混合物 100質量部を上記反応器に添加した。酢酸エチルとメチルエチルケトンとの混合物を反応器にさらに添加した。単量体混合物から酸素を取り除くために、窒素ガスを1時間投入して反応器を置換させた後、反応器の内部温度を70℃に保った。単量体混合物を均一に撹拌した後、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05質量部を投入し、4時間重合反応させて(メタ)アクリル系重合物を含む溶液を製造し、酢酸エチルを添加して固形分35質量%の(メタ)アクリル系重合物溶液を製造した。
【0103】
製造例2~製造例7:(メタ)アクリル系重合物の製造
各単量体の含有量、重合時間および/または開始剤の含有量を下記表1(単位:質量部)のように変更したことを除いては、製造例1と同様の方法で、(メタ)アクリル系重合物溶液を製造した。なお、下記表1で「-」の表記は、該当成分が含まれないことを意味する。
【0104】
【表1】
【0105】
下記の実施例および比較例で使用した成分は次の通りである:
(1)硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤(CK-164、NCI社製)
(2)シランカップリング剤:アセチルアセトントリメトキシシラン(A-50、綜研化学株式会社製)。
【0106】
実施例1
固形分を基準に、製造例1の(メタ)アクリル系重合物 100質量部、硬化剤 0.4質量部、およびシランカップリング剤 0.25質量部を混合し、トルエン 10質量部を添加して30分間撹拌することにより、粘着剤組成物を製造した。
【0107】
製造した粘着剤組成物を、第1離型フィルム(第1離型フィルムに対する下記粘着フィルムの剥離力:12gf/inch、PETフィルム,RPK501、東レ株式会社製)に所定の厚さで塗布し、120℃で2分間乾燥して、粘着フィルム用塗膜(厚さ:20μm)を形成した。粘着フィルム用塗膜の上に第2離型フィルム(第2離型フィルムに対する下記粘着フィルムの剥離力:3gf/inch、PETフィルム、RPK201、東レ株式会社製)を積層し、恒温恒湿条件(35℃および45%RHの相対湿度)で2日間一次熟成させ、恒温恒湿条件(23℃および55%RHの相対湿度)で12時間追加熟成させることにより、第1離型フィルム-粘着フィルム(厚さ:20μm)-第2離型フィルムが順に積層された粘着シートを製造した。
【0108】
実施例2~実施例5
(メタ)アクリル系重合物の種類および/または硬化剤の含有量を下記表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、第1離型フィルム-粘着フィルム(厚さ:20μm)-第2離型フィルムが順に積層された粘着シートを製造した。
【0109】
比較例1および比較例2
(メタ)アクリル系重合物の種類および/または硬化剤の含有量を下記表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、第1離型フィルム-粘着フィルム(厚さ:20μm)-第2離型フィルムが順に積層された粘着シートを製造した。
【0110】
実施例および比較例で製造された粘着シートを用いて、下記の物性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0111】
(1)初期の分解率(単位:%):初期の分解率は、熱重量分析(TGA)装置であるTA Instruments社製のDiscovery(第一世代)を使用して測定した。粘着シートから離型フィルムを全て剥離させて粘着フィルムを得て、粘着フィルム0.1gを取り、TA Instrument社製のDiscovery(第一世代)に入れ、窒素雰囲気下で25℃から700℃まで10℃/分の昇温速度で温度を上げて、図1に示したような温度(T)(X軸、単位:℃)-重量(W)(Y軸、単位:%)の結果を得た。得られた結果を微分することにより、温度(T)(X軸,単位:℃)-d(W)/d(T)(Y軸,単位:%)を得た。得られた微分曲線で最初の変曲点を探し、変曲点を含んで開始温度と終了温度とを含む温度範囲を設定した後、分析プログラム(TRIOS、Discovery TA)を使用して初期の分解率を得た。
【0112】
(2)ゲル分率(単位:%):粘着シートから離型フィルムを全て剥離させて粘着フィルムを得て、その中から粘着フィルム0.5gを取った。予め金網(100メッシュ)に対して重量(W)を測定した。この金網で粘着フィルム0.5gを完全に包んで粘着フィルムが完全に漏れないようにし、粘着フィルムと金網全体とに対して重量(W)を再度測定した。次に、ゲル分率測定用の100ccサンプル瓶に粘着フィルムと金網全体とを入れた。続いて、サンプル瓶にトルエン50ccを添加して、粘着フィルムと金網全体とがトルエンに完全に浸かるようにした。この状態で、25℃で1日放置した。次いで、サンプル瓶から粘着フィルムと金網全体とを取出した後、120℃のオーブンで12時間乾燥させ、再度重量(W)を測定した。下記数式1に従い、ゲル分率を計算した。
【0113】
【数2】
【0114】
(3)屈折率:粘着シートから離型フィルムを全て剥離させて粘着フィルムを得た。粘着フィルムに対してプリズムカップラー(Metricon,model 2010/M)を用いて波長633nmの光を用いて測定した。
【0115】
(4)粘着力(単位:gf/inch):粘着力は、粘着フィルムとガラス板(無アルカリガラス板)と間の180°粘着力で、JIS C2107:2011規格に基づいて測定した。粘着シートを縦25mm×横100mmの大きさに切断し、第2離型フィルムを剥離させて、ガラス板[縦35mm×横110mm]に付着させ、粘着フィルムから第1離型フィルムを剥離した。30kgf ロードセルで、ガラス板と粘着フィルムとをそれぞれ引張試験測定機の上部ジグと下部ジグとにそれぞれ連結し、引張速度300mm/min、引張角度180°、引張温度25℃で粘着フィルムをガラス板から剥離させた際の荷重(粘着力)を測定した。
【0116】
(5)耐久性:粘着シートを横150mm×縦90mmに切断し、第2離型フィルムを取り除き、ガラス板(無アルカリガラス板)[縦170mm×横110mm]の一面に付着させ、4~5kg/cmの圧力を加え、第1離型フィルムを取り除くことにより試験片を作製した。この試験片を、85℃で500時間(耐熱信頼性)放置した後、さらに常温で1時間放置した後、外観を下記の基準で評価した。この試験片を、85℃および95%RHの相対湿度の恒温チャンバー内で500時間(耐湿信頼性)放置した後 、さらに常温で1時間放置した後、外観を下記の基準で評価した:
◎:気泡や浮きが全くない
○:気泡や浮きがわずかにある
△:気泡や浮きが多少ある
×:気泡と浮きが共に発生して使用できない。
【0117】
(6)パターン化された構造体に対する付着の程度:パターン間隔500μm、段差10μmのパターン面を備えたアクリル系有機パターン構造体を作製し、粘着フィルムの粘着面を上記パターン面にラミネートした。その後、オートクレーブ(50℃、5bar、1000秒)処理し、段差の埋まりの程度を、顕微鏡を用いて観察し、下記基準で評価した:
◎:気泡がなく完全に埋められている
○:気泡がなく90%以上埋められている
△:気泡が一部存在し50%以上埋められている
×:気泡が多くあり50%未満埋められている。
【0118】
【表2】
【0119】
上記表2のように、本発明の粘着フィルムは屈折率が高い。よって、上記表2では見られないが、光学表示装置に適用する際には、入射する光の光効率を高くすることができる。上記表2のように、本発明の粘着フィルムはパターン面に対する付着の程度が優れている。よって、上記表2では見られないが、パターン面と粘着フィルムとの間の互いに付着されていない面積を最小化することにより、光効率が低くなる問題がほとんどなくなる。上記表2のように、本発明の粘着フィルムは耐湿熱信頼性および耐熱信頼性に優れる。よって、上記表2では見られないが、パターン化された光学素子と該光学素子の上部面に積層される他の光学素子、例えば偏光板と間の離脱および/または分離を防いで、表示装置の信頼性を高くすることができる。
【0120】
よって、本発明は、入射する光の光効率を高める粘着フィルムを提供することができる。また、本発明は、パターン化された光学素子に対する付着の程度が著しく優れる粘着フィルムを提供することができる。また、本発明は、剥離力が高く、耐熱信頼性および耐湿熱信頼性に優れる粘着フィルムを提供することができる。さらに、本発明は、無機粒子との相溶性を合わせなくてはならない問題、および粘着フィルムの製造原価上昇の問題がほとんどない粘着フィルムを提供することができる。
【0121】
一方、本発明のゲル分率範囲および初期の分解率の範囲の1種以上を満たさない比較例の粘着フィルムは、本発明の効果を得ることができなかった。
【0122】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施され、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
【符号の説明】
【0123】
100 有機発光素子、
200 無機層、
300 低屈折率有機層、
400、500 高屈折率有機層。
図1
図2
図3