(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177557
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20231207BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 451
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090291
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】司馬 哲裕
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA23
2C056EB35
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC28
2C056FA13
2C056HA01
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】メンテナンスが不要で且つ大型化を防止しつつ、ミストによる装置内の汚染を防止した液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出装置は、搬送路に沿って媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、搬送路の上方に配置されて、搬送部によって搬送された媒体に向けて液体を吐出する液体吐出部とを備える。液体吐出部は、筐体と、液体を吐出するノズルが筐体の下面から露出するように、筐体に収容された吐出ヘッドと、筐体の内部を正圧にするための気流を発生させる気流発生部とを備える。筐体の下面には、筐体の内部の空気を搬送路に向かう下降気流として排出するスリットが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送路の上方に配置されて、前記搬送部によって搬送された媒体に向けて液体を吐出する液体吐出部とを備え、
前記液体吐出部は、
筐体と、
液体を吐出するノズルが前記筐体の下面から露出するように、前記筐体に収容された吐出ヘッドと、
前記筐体の内部を正圧にするための気流を発生させる気流発生部とを備え、
前記筐体の下面には、前記筐体の内部の空気を前記搬送路に向かう下降気流として排出するスリットが形成されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記スリットは、前記筐体の下面の外周辺のうち、前記ノズルより前記搬送方向の上流側及び下流側それぞれにおいて、前記搬送方向に直交する幅方向に延びる辺に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記スリットは、前記筐体の下面の外周辺のうち、前記幅方向における前記ノズルの両側において、前記搬送方向に延びる辺の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体吐出部は、前記スリットの開口量を調整する開口量調整部を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記気流発生部は、前記吐出ヘッドの直上において、前記筐体の内部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記気流発生部は、
前記筐体の内部を正圧にする方向の気流を発生させる正圧発生部と、
前記筐体の内部を負圧にする方向の気流を発生させる負圧発生部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記正圧発生部は、前記搬送方向に直交する幅方向に離間した二箇所に配置され、
前記負圧発生部は、前記幅方向において、二箇所の前記正圧発生部の間に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体吐出部は、各々がユニット化された複数の前記吐出ヘッドを備え、
複数の前記吐出ヘッドは、
前記搬送方向に直交する幅方向に離間して配置された複数の第一吐出ヘッドと、
隣接する前記第一吐出ヘッドの間で且つ前記第一吐出ヘッドより前記搬送方向の下流側において、前記幅方向に離間して配置された複数の第二吐出ヘッドとを含み、
前記スリットは、複数の前記吐出ヘッドそれぞれの前記ノズルを囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記気流発生部によって発生された気流の強さを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が閾値以上の場合に、前記気流発生部に第一風量の気流を発生させ、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が前記閾値未満の場合に、前記気流発生部に前記第一風量より少ない第二風量の気流を発生させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記気流発生部によって発生された気流の強さを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記搬送部による搬送速度が閾値以上の場合に、前記気流発生部に第一風量の気流を発生させ、
前記搬送部による搬送速度が前記閾値未満の場合に、前記気流発生部に前記第一風量より少ない第二風量の気流を発生させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記気流発生部によって発生された気流の向きを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が閾値以上の場合に、前記気流発生部が発生させた気流を前記スリットに向け、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が前記閾値未満の場合に、前記気流発生部が発生させた気流を前記スリットと異なる方向に向けることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記気流発生部は、発生させた気流が常に前記スリットに向かうように、前記筐体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記開口量調整部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が閾値以上の場合に、前記開口量調整部に前記スリットの開口量を第一開口量に調整させ、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が前記閾値未満の場合に、前記開口量調整部に前記スリットの開口量を前記第一開口量より小さい第二開口量に調整させることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記筐体の下面には、前記搬送部によって搬送される媒体の全域に対面するように、前記搬送方向に直交する幅方向に複数の前記ノズルが配列されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送路に沿って媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、搬送路の上方に配置されて、搬送部によって搬送された媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部とを備えるインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
上記構成のインクジェットプリンタには、インク吐出部から吐出されたインクがミスト化して浮遊し、気流に乗ってプリンタの内部に付着することで、装置内に汚染が発生するという課題がある。そこで、ミストによる装置内の汚染を防止する技術として、インク吐出部より搬送方向の下流側にミスト回収機構を設ける技術(例えば、特許文献1を参照)などがある。
【0004】
また、上記構成のインクジェットプリンタには、媒体の搬送による気流がインク吐出部から吐出されたインク滴にぶつかることによって、インク吐出部と媒体との間の気流が乱される。そして、インク滴の着弾位置が乱されることで、形成された画像上に曲線状の白筋模様(以下、「風紋」と表記する。)が形成されるという課題がある。そこで、風紋発生を防止する技術として、インク吐出部より搬送方向の上流側に搬送方向と逆向きの気流を発生させる技術(例えば、特許文献2を参照)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、回収したインクがミスト回収機構に溜まるので、ミスト回収機構の定期的なメンテナンスが必要になるという課題がある。また、特許文献2の技術では、インク吐出部より搬送方向の上流側に気流発生機構が設置されるので、インクジェットプリンタが搬送方向に大型化するという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、媒体に向けて液体を吐出する液体吐出装置において、メンテナンスが不要で且つ大型化を防止しつつ、ミストによる装置内の汚染を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、搬送路に沿って媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送路の上方に配置されて、前記搬送部によって搬送された媒体に向けて液体を吐出する液体吐出部とを備え、前記液体吐出部は、筐体と、液体を吐出するノズルが前記筐体の下面から露出するように、前記筐体に収容された吐出ヘッドと、前記筐体の内部を正圧にするための気流を発生させる気流発生部とを備え、前記筐体の下面には、前記筐体の内部の空気を前記搬送路に向かう下降気流として排出するスリットが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、媒体に向けて液体を吐出する液体吐出装置において、メンテナンスが不要で且つ大型化を防止しつつ、ミストによる装置内の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インクジェットプリンタの全体構成を示す図。
【
図2】ラインヘッドの外観斜視図及び内部構造を示す図。
【
図4】インクジェットプリンタのハードウェア構成図。
【
図9】ノズル及びスリットのレイアウトの他の例を示す図。
【
図10】ノズル及びスリットのレイアウトのさらに他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るインクジェットプリンタ1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンタ1の全体構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、液体の一例であるインクを用紙に向けて吐出することによって、用紙に画像を形成する液体吐出装置(液体を吐出する装置)の一例である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、搬送部10と、インク吐出部20(液体吐出部)と、乾燥部30と、画像検査部40とを主に備える。
【0011】
搬送部10は、帯状の連帳紙P(媒体)を搬送路に沿って搬送方向に搬送する。より詳細には、搬送部10は、後述するアンワインダー11からインク吐出部20、乾燥部30、画像検査部40を経てリワインダー12に至る搬送路に沿って、連帳紙Pを搬送する。搬送部10は、アンワインダー11と、リワインダー12と、複数のガイドローラ13とを主に備える。
【0012】
アンワインダー11には、画像が形成される前の連帳紙Pが巻回されている。そして、アンワインダー11は、巻回された連帳紙Pを繰り出す向きに回転可能に、インクジェットプリンタ1のフレームに支持されている。リワインダー12には、画像が形成された後の連帳紙Pが巻回される。そして、リワインダー12は、画像が形成された連帳紙Pを巻き取る向きに回転可能に、インクジェットプリンタ1のフレームに支持されている。複数のガイドローラ13は、アンワインダー11及びリワインダー12の間において、搬送方向に所定の間隔を隔てて配置されている。ガイドローラ13は、リワインダー12によって巻き取られる連帳紙Pに当接して回転することによって、連帳紙Pをガイドすると共に、連帳紙Pに所定の張力を付与する。
【0013】
なお、搬送路は、インクジェットプリンタ1の内部において、連帳紙Pが通過する空間である。搬送路の少なくとも一部は、上端を画定する上ガイド板と、下端を画定する下ガイド板とによって画定されていてもよい。また、搬送路は、インクジェットプリンタ1の内部において、湾曲または屈曲して形成されている。すなわち、本明細書中の「搬送方向」は、搬送路の位置によって異なる。但し、インク吐出部20に対面する位置における搬送方向は、水平方向(
図1の右から左に向かう方向)である。また、連帳紙Pの表面に沿う方向のうち、搬送方向に直交する方向を「幅方向(主走査方向)」と表記する。
【0014】
さらに、本実施形態では、媒体として帯状の連帳紙Pを例に挙げて説明するが、所定の大きさ(例えば、A4、B5など)にカットされたカット紙でもよい。この場合のインクジェットプリンタ1は、アンワインダー11に代えて給紙トレイを備え、リワインダー12に代えて排紙トレイを備えればよい。また、液体が付着可能なもの(媒体)の具体例は紙に限定されず、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチックなどでもよい。
【0015】
インク吐出部20は、アンワインダー11より搬送方向の下流側で、乾燥部30より搬送方向の上流側に配置されている。また、インク吐出部20は、搬送路の水平方向に延びる部分より上方において、搬送路に対面して配置されている。インク吐出部20は、各々が異なる色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する複数のラインヘッド21B、21C、21M、21Yを備える。複数のラインヘッド21B、21C、21M、21Yは、搬送方向に配列されている。ラインヘッド21B、21C、21M、21Yは、吐出するインクの色が異なる以外は構成が共通するので、以下、これらを総称して「ラインヘッド21」と表記することがある。ラインヘッド21の構成は、
図2及び
図3を参照して後述する。
【0016】
乾燥部30は、インク吐出部20より搬送方向の下流側で、画像検査部40より搬送方向の上流側に配置されている。乾燥部30は、連帳紙Pに付着したインクを乾燥させる。乾燥部30は、例えば、連帳紙Pに接触して加熱するヒータでもよいし、連帳紙Pに向けて温風を供給するブロアでもよい。但し、乾燥部30は省略可能である。
【0017】
画像検査部40は、乾燥部30より搬送方向の下流側で、リワインダー12より搬送方向の上流側において、搬送路に対面して配置されている。画像検査部40は、連帳紙Pに適切に画像が形成されたか否かを検査する。画像検査部40は、例えば、連帳紙Pの表面を撮影するカメラである。但し、画像検査部40は省略可能である。
【0018】
図2は、ラインヘッド21の外観斜視図及び内部構造を示す図である。
図3は、ラインヘッド21を下面側から見た図である。
図2及び
図3に示すように、ラインヘッド21は、筐体22と、各々がユニット化された複数の吐出ヘッド23A、23B、23D、23E、23F、23G(以下、これらを総称して、「吐出ヘッド23」と表記することがある。)と、複数のファン24A、24B、24C(以下、これらを総称して、「ファン24」と表記することがある。)とを主に備える。
【0019】
筐体22は、概ね直方体の外形を呈する。すなわち、筐体22は、上面22Aと、下面22Bと、上面22A及び下面22Bの間に配置された4つの側面22C、22D、22E、22Fとを備える。上面22A及び下面22Bは、上下方向において互いに対面する。側面22C、22Dは、搬送方向において互いに対面する。側面22E、22Fは、幅方向において互いに対面する。そして、筐体22は、上面22A、下面22B、及び側面22C~22Fで画定された内部空間を有する箱形である。
【0020】
吐出ヘッド23は、
図2(A)に示すインク供給ポート25及び流路部材26を通じて供給されるインクを、搬送路上の連帳紙Pに吐出する複数のノズルNを備える。また、
図2(B)に示すように、吐出ヘッド23は、筐体22の内部空間に収容されている。また、
図3に示すように、吐出ヘッド23のノズルNは、筐体22の下面22Bから露出している。すなわち、ノズルNは、搬送路より上方において、搬送路に対面して配置されている。さらに、複数のノズルNは、搬送方向及び幅方向に所定の間隔を隔てて配列されている。
【0021】
吐出ヘッド23A、23B、23C、23Dは、幅方向に所定の間隔を隔てて一列に配列されている。同様に、吐出ヘッド23E、23F、23Gは、幅方向に所定の間隔を隔てて一列に配列されている。また、吐出ヘッド23E~23Gは、隣接する吐出ヘッド23A~23Dの間で、且つ吐出ヘッド23A~23Dより搬送方向の下流側に配置されている。換言すれば、吐出ヘッド23A~23Gは、筐体22の下面22Bに沿って千鳥格子状に配置されている。吐出ヘッド23A、23B、23C、23Dは第一吐出ヘッドの一例であり、吐出ヘッド23E、23F、23Gは第二吐出ヘッドの一例である。
【0022】
ファン24は、筐体22の上面22Aに取り付けられている。すなわち、ファン24は、吐出ヘッド23の直上に配置されている。換言すれば、ラインヘッド21を上下方向から平面視したときに、ファン24は、吐出ヘッド23に重なる位置に配置されている。ファン24は、後述するコントローラ100の制御(例えば、供給する電流の大きさ)に従って、発生させる気流の風量を調整可能に構成されている。ファン24は、筐体22の内部に気流を発生させる気流発生部の一例である。但し、気流発生部の具体例はファン24に限定されず、ブロアなどでもよい。
【0023】
ファン24A、24Cは、筐体22の内部を正圧にする方向の気流を発生させる(すなわち、筐体22の内部に空気を供給する)正圧発生部の一例である。ファン24Bは、筐体22の内部を負圧にする方向の気流を発生させる(すなわち、筐体22の内部から空気を排出する)負圧発生部の一例である。なお、ファン24Bを負圧発生部として機能させるには、例えば、ファン24A、24Cと表裏反転させて、ファン24Bを上面22Aに取り付ければよい。
【0024】
本実施形態に係るファン24A、24Cは、幅方向に離間した二箇所に配置されている。また、ファン24Bは、幅方向において、ファン24A、24Cの間に配置されている。すなわち、ラインヘッド21には、正圧発生部及び負圧発生部が幅方向に交互に配置されている。さらに、正圧発生部の数は、負圧発生部の数より多い。その結果、筐体22の内部空間は、正圧に維持される。但し、筐体22の内部空間を正圧に維持する方法は、正圧発生部及び負圧発生部の数の差に限定されず、正圧発生部が発生させる風量を負圧発生部が発生させる風量より多くすればよい。
【0025】
また、
図3(A)に破線で示すように、筐体22の下面22Bには、スリット27A、27B、27C、27D、27E、27F、27G(以下、これらを総称して、「スリット27」と表記することがある。)が形成されている。スリット27は、下面22Bを厚み方向に貫通している。すなわち、筐体22の内部空間の空気は、スリット27を通じて下向きに排出される。換言すれば、スリット27は、正圧に維持された筐体22の内部空間の空気を、搬送路に向かう下降気流として排出する。
【0026】
本実施形態に係るスリット27A~27Gは、複数の吐出ヘッド23A~23Gそれぞれが備える複数のノズルNを囲むように形成されている。換言すれば、本実施形態に係るスリット27A~27Gは、周方向に連続する枠型に形成されている。但し、スリット27のレイアウトは、
図3の例に限定されない。
【0027】
また、ラインヘッド21は、板状のルーバ28(
図4参照)を備える。ルーバ28は、ファン24A、24Cそれぞれに対面する位置において、筐体22の内部空間に収容されている。そして、ルーバ28は、コントローラ100の制御に従って、ファン24A、24Cが発生させた気流の向きを調整(変更)する。ルーバ28は、風向調整部の一例である。但し、ファン24A、24Cが発生させた気流の向きを調整する方法は、ルーバ28に限定されず、ファン24A、24C自体が向きを変更可能に構成されていてもよい。
【0028】
さらに、ラインヘッド21は、スライド板29(
図4参照)を備える。スライド板29は、コントローラ100の制御に従って、筐体22の下面22Bに沿ってスライドすることによって、スリット27の開口量を調整する(増減させる)。スライド板29は、開口量調整部の一例である。但し、スリット27の開口量を調整する具体的な方法は、スライド板29に限定されない。
【0029】
図4は、インクジェットプリンタ1のハードウェア構成図である。
図4に示すように、インクジェットプリンタ1は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0030】
CPU101は演算手段であり、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0031】
インクジェットプリンタ1は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、インクジェットプリンタ1の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、インクジェットプリンタ1に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、インクジェットプリンタ1の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、HDD104、及びI/F105は、インクジェットプリンタ1の動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0032】
I/F105は、搬送部10、インク吐出部20、乾燥部30、画像検査部40、ファン24、ルーバ28、スライド板29、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送部10、インク吐出部20、乾燥部30、画像検査部40、ファン24、ルーバ28、及びスライド板29を動作させる。
【0033】
操作パネル110は、ユーザからの操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。
【0034】
図5は、コントローラ100の機能ブロック図である。コントローラ100は、速度制御部111と、吐出制御部112と、温度制御部113と、検査制御部114と、風量制御部115と、風向制御部116と、開口量制御部117とを主に備える。ROM103またはHDD104に記憶されたプログラムをCPU101が実行することによって、各機能ブロック111~117が実現される。
【0035】
コントローラ100は、画像形成指示を取得したことに応じて、連帳紙Pに画像を形成する。画像形成指示は、連帳紙Pに形成すべき画像を示す画像データを少なくとも含む。画像形成指示は、例えば、操作パネル110を通じてユーザから取得してもよいし、通信ネットワークを通じて外部装置から取得してもよい。そして、コントローラ100は、画像形成指示に含まれる画像データに基づいて、印字率を算出する。印字率は、ノズルNから連帳紙Pに向けて吐出される液体の量を指す。より詳細には、印字率は、連帳紙Pの単位面積当たりに吐出されるインクの量を指す。
【0036】
速度制御部111は、搬送部10による連帳紙Pの搬送速度を制御する。速度制御部111は、例えば、印字率が高いほど、連帳紙Pの搬送速度を遅くすればよい。速度制御部111は、例えば、リワインダー12を回転させるモータに供給する電流の大きさを調整することによって、搬送速度を制御する。吐出制御部112は、画像形成指示で指示された画像が連帳紙Pに形成されるように、ラインヘッド21B、21C、21M、21Yに所定のタイミングでインクを吐出させる。吐出制御部112は、例えば、各ノズルNに対応付けて吐出ヘッド23に搭載されたピエゾ素子に所定のタイミングで電圧を印加することによって、ノズルNからインクを吐出させる。
【0037】
温度制御部113は、乾燥部30の温度を制御する。温度制御部113は、例えば、印字率が高いほど、乾燥部30の温度を高くすればよい。検査制御部114は、画像検査部40が撮影した画像に基づいて、連帳紙Pに適切な画像が形成されたか否かを判断する。そして、検査制御部114は、適切な画像が形成されていないと判断した場合に、操作パネル110を通じてエラーを報知してもよいし、その後に連帳紙Pに形成する画像を補正してもよい。
【0038】
風量制御部115は、例えば、ファン24に供給する電流の大きさを調整することによって、ファン24が発生させる気流の風量を制御する。風量とは、単位時間当たりにファン24に発生させる気流の量を指す。風量制御部115の処理の詳細は、
図6を参照して後述する。風向制御部116は、例えば、ルーバ28を回動させることによって、ファン24が発生させる気流の向きを制御する。風向制御部116の処理の詳細は、
図7を参照して後述する。開口量制御部117は、例えば、スライド板29をスライドさせることによって、スリット27の開口量を制御する。開口量制御部117の処理の詳細は、
図8を参照して後述する。
【0039】
まず、温度制御部113は、画像形成指示を取得したことに応じて、乾燥部30が所望の温度になるように制御する。次に、速度制御部111は、乾燥部30が所望の温度に達したことに応じて、所定の速度で連帳紙Pの搬送を開始する。次に、吐出制御部112は、搬送部10によって搬送される連帳紙Pに向けて、所定のタイミングでインク吐出部20にインクを吐出させる。これにより、画像形成指示で指示された画像が連帳紙Pに画像が形成される。また、検査制御部114は、連帳紙Pに形成された画像を検査する。さらに、風量制御部115、風向制御部116、及び開口量制御部117は、画像形成指示を取得してから連帳紙Pに対する画像の形成が終了するまでの間、
図6~
図8に示す処理を実行する。
【0040】
図6は、風量制御処理のフローチャートである。風量制御部115は、印字率と予め定められた閾値とを比較する(S601)。風量制御部115は、印字率が閾値以上の場合に(S601:Yes)、ファン24の風量を“強(第一風量)”に設定する(S602)。一方、風量制御部115は、印字率が閾値未満の場合に(S601:No)、ファン24の風量を“弱(第二風量)”に設定する(S603)。第二風量は、第一風量より少ない風量である。そして、風量制御部115は、ステップS602、S603で設定した風量の気流が発生するように、ファン24を回転させる。
【0041】
風量制御部115は、連帳紙Pへの印刷が終了するまで(S604:No)、ステップS601~S603の処理を繰り返すことによって、印字率に対応する風量の気流をファン24に発生させる。さらに、風量制御部115は、連帳紙Pへの印刷が終了したことに応じて(S604:Yes)、ファン24を停止させる(S605)。
【0042】
図7は、風向制御処理のフローチャートである。風向制御部116は、印字率と予め定められた閾値とを比較する(S701)。風量制御部115は、印字率が閾値以上の場合に(S701:Yes)、ファン24が発生させた気流をスリット27に向ける(S702)。一方、風向制御部116は、印字率が閾値未満の場合に(S701:No)、ファン24が発生させた気流をスリット27と異なる方向に向ける(S703)。そして、風向制御部116は、連帳紙Pへの印刷が終了するまで(S704:No)、ステップS701~S703の処理を繰り返すことによって、ステップS702、S703で設定した向きに気流が向かうようにルーバ28の向きを調整する。さらに、風向制御部116は、連帳紙Pへの印刷が終了したことに応じて(S704:Yes)、ルーバ28の制御を終了する(S705)。
【0043】
図8は、開口量制御処理のフローチャートである。開口量制御部117は、印字率と予め定められた閾値とを比較する(S801)。開口量制御部117は、印字率が閾値以上の場合に(S801:Yes)、スリット27の開口量を“大(第一開口量)”に設定する(S802)。一方、開口量制御部117は、印字率が閾値未満の場合に(S801:No)、スリット27の開口量を“小(第二開口量)”に設定する(S803)。そして、開口量制御部117は、連帳紙Pへの印刷が終了するまで(S804:No)、ステップS801~S803の処理を繰り返すことによって、ステップS802、S803で設定した開口量になるようにスライド板29の位置を制御する。さらに、開口量制御部117は、連帳紙Pへの印刷が終了したことに応じて(S804:Yes)、スライド板29の制御を終了する(S805)。
【0044】
なお、風向制御部116は、例えばステップS702において、
図3(B)に太い実線で示すように、第二吐出ヘッド23E、23F、23Gを囲むスリット27のうち、ノズルNより上流側で幅方向に延びる部分に気流を向けてもよい。また、開口量制御部117は、例えばステップS802、S803において、
図3(B)に太い実線で示すように、第二吐出ヘッド23E、23F、23Gを囲むスリット27のうち、ノズルNより上流側で幅方向に延びる部分の開口量を制御してもよい。
【0045】
さらに、連帳紙Pに形成する画像全体の印字率をコントローラ100が算出する場合、
図6のステップS602、S603で設定される風量、
図7のステップS702、S703で設定される風向、
図8のステップS802、S803で設定される開口量は、連帳紙Pに対する画像形成の開始から終了まで常に一定となる。一方、コントローラ100は、連帳紙Pに形成する画像を搬送方向に分割し、分割した部分画像それぞれの印字率を算出してもよい。この場合、
図6のステップS602、S603で設定される風量、
図7のステップS702、S703で設定される風向、
図8のステップS802、S803で設定される開口量は、連帳紙Pに対する画像形成の開始から終了までに刻々と変化する。
【0046】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0047】
上記の実施形態によれば、筐体22に取り付けられたファン24が発生させた気流を、筐体22の下面22Bに形成したスリット27から下降気流として搬送路に供給する。これにより、吐出ヘッド23から吐出されたインクを、ミスト化する前に連帳紙Pに着弾させることができる。その結果、メンテナンスが不要で且つ大型化を防止しつつ、ミストによる装置内の汚染を防止することができる。さらに、本実施形態によれば、風紋の発生を防止することもできる。
【0048】
また、上記の実施形態によれば、吐出ヘッド23A~23Gの直上にファン24を設けた。これにより、特に、インク吐出部20の搬送方向のサイズの大型化を防止することができる。また、上記の実施形態によれば、吐出ヘッド23A~23Gそれぞれを囲むようにスリット27を形成した。これにより、吐出ヘッド23A~23G毎のミスト化防止効果を平準化することができる。
【0049】
また、上記の実施形態によれば、ファン24A、24Cを正圧発生部として機能させ、ファン24Bを負圧発生部として機能させる。これにより、筐体22の内部空間を正圧に維持しつつ、筐体22の内部空間の空気を循環させることができる。これにより、吐出ヘッド23A~23Gを効率的に冷却することができる。
【0050】
また、上記の実施形態によれば、風量(
図6)、風向(
図7)、及び開口量(
図8)を印字率によって変化させる。これにより、ノズルNから吐出されるインク量が多い場合は、下降気流を強くしてミストの発生を抑制することができる。また、ノズルNから吐出されるインク量が少ない場合は、下降気流を弱くして、連帳紙Pに対するインクの着弾ズレを抑制することができる。なお、コントローラ100は、
図6、
図7、
図8の処理の全てを並行して実行してもよいし、一部のみを実行してもよい。
【0051】
なお、風紋は、
図3(B)の太い実線の位置(すなわち、第二吐出ヘッド23E~23Gより搬送方向の上流側の位置)で特に発生しやすい。そこで、上記の実施形態によれば、風向制御処理及び開口量制御処理において、この部分を集中的に制御することによって、効率的に風紋の発生を防止することができる。
【0052】
さらに、搬送路内には、連帳紙Pの移動に伴って、搬送方向に流れる気流(以下、「搬送気流」と表記する。)が発生する。そこで、ノズルNより搬送方向の上流側にスリット27を設けて下降気流を発生させることによって、搬送方向におけるノズルNの位置に到達する搬送気流を低減することができる。これにより、ノズルNから吐出されたインクのミスト化を防止できると共に、連帳紙Pに対するインクの着弾ズレを防止できる。
【0053】
[変形例]
なお、筐体22の下面22BにおけるノズルN及びスリット27のレイアウトは、
図3の例に限定されない。そこで、
図9及び
図10を参照して、ノズルN及びスリット27のレイアウトの他の例を説明する。
図9は、ノズルN及びスリット27のレイアウトの他の例を示す図である。
図10は、ノズルN及びスリット27のレイアウトのさらに他の例を示す図である。以下、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0054】
まず、
図3に示すように、吐出ヘッド23A~23Gは、千鳥格子状に配列されていなくてもよい。他の例として、
図9(A)に示すように、筐体22の下面22Bには、複数の吐出ヘッド23A~23Cが幅方向に一列に配列されていてもよい。なお、
図9(A)の例における吐出ヘッド23A~23Cの数は、3つに限定されない。
【0055】
また、
図2(B)及び
図3に示すように、ラインヘッド21は、各々がユニット化された複数の吐出ヘッド23A~23Gを備えていなくてもよい。他の例として、
図9(B)~
図9(D)に示すように、筐体22の下面22Bに露出された全てのノズルNを1つの吐出ヘッド23で制御してもよい。このとき、幅方向に一列に配列された複数のノズルNの列(以下、「ノズル列」と表記する。)は、
図9(B)に示すように一列でもよいし、
図9(C)及び
図9(D)に示すように搬送方向に複数列でもよい。さらに、
図9(D)に示すように、搬送方向に隣接するノズル列は、幅方向にずれて配置されていてもよい。
【0056】
また、
図3に示すように、スリット27は、複数の吐出ヘッド23A~23Gそれぞれを囲むように形成されていなくてもよい。他の例として、
図9に太い実線で示すように、スリット27は、筐体22の下面22Bに形成された全てのノズルNを囲む単一の枠型でもよい。換言すれば、スリット27は、複数のノズルNを囲むように、筐体22の下面22Bの外周に沿って形成されていてもよい。
【0057】
また、
図3及び
図9に示すように、スリット27は、周方向に連続する枠型でなくてもよい。他の例として、
図10(A)に太い実線で示すように、スリット27は、筐体22の下面22Bの外周辺のうち、ノズルNより搬送方向の上流側及び下流側それぞれにおいて、幅方向に延びる辺に形成されていればよい。また
図10(A)の配置に加えて、
図10(B)に太い実線で示すように、スリット27は、幅方向におけるノズルNの両側において、搬送方向に延びる辺の少なくとも一部に形成されていればよい。より詳細には、
図10(C)に太い実線で示すように、インクジェットプリンタ1のフレームにインク吐出部20を取り付けるための取付部50が筐体22の幅方向の両端に設けられている場合、スリット27は、幅方向におけるノズルNの両側において搬送方向に延びる辺のうち、取付部50と異なる位置に設けられていればよい。
【0058】
また、
図6の他の例として、風量制御部115は、ステップS601で搬送部10による搬送速度と、予め定められた閾値とを比較してもよい。そして、風量制御部115は、搬送速度が閾値以上の場合に(S601:Yes)、ファン24の風量を“強(第一風量)”に設定してもよい(S602)。一方、風量制御部115は、搬送速度が閾値未満の場合に(S601:No)、ファン24の風量を“弱(第二風量)”に設定してもよい(S603)。
【0059】
また、
図7の他の例として、ファン24は、発生させた気流が常にスリット27に向かうように、筐体22に取り付けられていてもよい。さらに他の例として、ファン24が発生させた気流が常にスリット27に向かうように、ルーバ28が固定されていてもよい。
【0060】
さらに、上記の実施形態及び変形例では、連帳紙Pの全域に対面するように幅方向に複数のノズルNが筐体22の下面22Bに配列された、所謂「ラインヘッドプリンタ」の例を説明した。しかしながら、本発明は、ラインヘッドプリンタのみならず、吐出ヘッドを搭載したキャリッジが幅方向(主走査方向)に移動するタイプの「シリアルヘッドプリンタ」にも適用することができる。
【0061】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0062】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0063】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0064】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0065】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0066】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0067】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0068】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルNを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0069】
また、上記に説明した制御方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0070】
また、上記で説明した実施形態の各機能のうち、コントローラ100で実行される部分は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0071】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0072】
[本発明の態様]
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1> 搬送路に沿って媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送路の上方に配置されて、前記搬送部によって搬送された媒体に向けて液体を吐出する液体吐出部とを備え、
前記液体吐出部は、
筐体と、
液体を吐出するノズルが前記筐体の下面から露出するように、前記筐体に収容された吐出ヘッドと、
前記筐体の内部を正圧にするための気流を発生させる気流発生部とを備え、
前記筐体の下面には、前記筐体の内部の空気を前記搬送路に向かう下降気流として排出するスリットが形成されていることを特徴とする液体吐出装置である。
【0073】
<2> 前記スリットは、前記筐体の下面の外周辺のうち、前記ノズルより前記搬送方向の上流側及び下流側それぞれにおいて、前記搬送方向に直交する幅方向に延びる辺に形成されていることを特徴とする前記<1>に記載の液体吐出装置である。
【0074】
<3> 前記スリットは、前記筐体の下面の外周辺のうち、前記幅方向における前記ノズルの両側において、前記搬送方向に延びる辺の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする前記<2>に記載の液体吐出装置である。
【0075】
<4> 前記液体吐出部は、前記スリットの開口量を調整する開口量調整部を備えることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0076】
<5> 前記気流発生部は、前記吐出ヘッドの直上において、前記筐体の内部に収容されていることを特徴とする前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0077】
<6> 前記気流発生部は、
前記筐体の内部を正圧にする方向の気流を発生させる正圧発生部と、
前記筐体の内部を負圧にする方向の気流を発生させる負圧発生部とを備えることを特徴とする前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0078】
<7> 前記正圧発生部は、前記搬送方向に直交する幅方向に離間した二箇所に配置され、
前記負圧発生部は、前記幅方向において、二箇所の前記正圧発生部の間に配置されていることを特徴とする前記<6>に記載の液体吐出装置である。
【0079】
<8> 前記液体吐出部は、各々がユニット化された複数の前記吐出ヘッドを備え、
複数の前記吐出ヘッドは、
前記搬送方向に直交する幅方向に離間して配置された複数の第一吐出ヘッドと、
隣接する前記第一吐出ヘッドの間で且つ前記第一吐出ヘッドより前記搬送方向の下流側において、前記幅方向に離間して配置された複数の第二吐出ヘッドとを含み、
前記スリットは、複数の前記吐出ヘッドそれぞれの前記ノズルを囲むように形成されていることを特徴とする前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0080】
<9> 前記気流発生部によって発生された気流の強さを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が閾値以上の場合に、前記気流発生部に第一風量の気流を発生させ、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が前記閾値未満の場合に、前記気流発生部に前記第一風量より少ない第二風量の気流を発生させることを特徴とする前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0081】
<10> 前記気流発生部によって発生された気流の強さを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記搬送部による搬送速度が閾値以上の場合に、前記気流発生部に第一風量の気流を発生させ、
前記搬送部による搬送速度が前記閾値未満の場合に、前記気流発生部に前記第一風量より少ない第二風量の気流を発生させることを特徴とする前記<1>から前記<9>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0082】
<11> 前記気流発生部によって発生された気流の向きを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が閾値以上の場合に、前記気流発生部が発生させた気流を前記スリットに向け、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が前記閾値未満の場合に、前記気流発生部が発生させた気流を前記スリットと異なる方向に向けることを特徴とする前記<1>から前記<10>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0083】
<12> 前記気流発生部は、発生させた気流が常に前記スリットに向かうように、前記筐体に取り付けられていることを特徴とする前記<1>から前記<10>のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
【0084】
<13> 前記開口量調整部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が閾値以上の場合に、前記開口量調整部に前記スリットの開口量を第一開口量に調整させ、
前記ノズルから媒体に向けて吐出される液体の量が前記閾値未満の場合に、前記開口量調整部に前記スリットの開口量を前記第一開口量より小さい第二開口量に調整させることを特徴とする前記<4>に記載の液体吐出装置である。
【0085】
<14> 前記筐体の下面には、前記搬送部によって搬送される媒体の全域に対面するように、前記搬送方向に直交する幅方向に複数の前記ノズルが配列されていることを特徴とする前記<1>から前記<13>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0086】
1 :インクジェットプリンタ
10 :搬送部
11 :アンワインダー
12 :リワインダー
13 :ガイドローラ
20 :インク吐出部
21B,21C,21M,21Y :ラインヘッド
22 :筐体
22A :上面
22B :下面
22C,22D,22E,22F :側面
23A,23B,23C,23D,23E,23F,23G :吐出ヘッド
24A,24B,24C :ファン
25 :インク供給ポート
26 :流路部材
27A,27B,27C,27D,27E,27F,27G :スリット
28 :ルーバ
29 :スライド板
30 :乾燥部
40 :画像検査部
50 :取付部
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
111 :速度制御部
112 :吐出制御部
113 :温度制御部
114 :検査制御部
115 :風量制御部
116 :風向制御部
117 :開口量制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2017-213712号公報
【特許文献2】特開2010-179626号公報