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  • 特開-貼り替え防止策を施した印刷物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177617
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】貼り替え防止策を施した印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20231207BHJP
   B42D 25/20 20140101ALI20231207BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/20
B42D15/00 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090371
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信朝
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA01
2C005HB20
2C005JB22
2C005JB40
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA03
2H113BA05
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC09
2H113BC10
2H113CA32
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
(57)【要約】
【課題】複数の印刷物が全て同じサイズであっても、1度使用した印刷物や、異なる価値の印刷物の一部を切り取り、他の印刷物に切り貼りしてあたかも真正な1枚として再使用することを防止する印刷物を提供する。
【解決手段】貴重価値が異なる製品が複数存在する印刷物において、基材の少なくとも一部に、所定の幅及び高さを有する通知部が印刷され、通知部は、印刷物の貴重価値を示す情報部と、情報部の周囲に背景部とを有し、通知部は、貴重価値ごとに、異なる幅及び/又は高さであることを特徴とする、貼り替え防止策を施した印刷物。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴重価値を有する印刷物であって、
前記印刷物は、異なる貴重価値を有して、前記貴重価値ごとに複数枚存在し、
基材の少なくとも一部に、所定の幅及び高さを有する通知部が印刷され、
前記通知部は、前記印刷物の前記貴重価値を示す情報部と、前記情報部の周囲に背景部とを有し、
前記通知部は、前記貴重価値ごとに、異なる幅及び/又は高さであることを特徴とする、貼り替え防止策を施した印刷物。
【請求項2】
前記貴重価値が低い印刷物は、前記貴重価値が高い印刷物よりも、前記幅及び/又は高さが大きいことを特徴とする請求項1記載の、貼り替え防止策を施した印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資格や検定のような、試験結果の合否を示す貴重印刷物に対して、不合格者が、合格者の合格結果が印刷された部分を使用した切り貼りによる変造を防止するために、貼り替え防止策を施した印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、資格や検定については、受験後に、試験結果が受験者へインターネットメールや郵送等により通知される。郵送の場合、試験結果がはがきや封書に印刷されて送付されることで、多くはそのはがきや封書自体が合格や能力を証明する証明書として効力を発揮する。
【0003】
そのため、試験結果が印刷された印刷物においては、不合格者の氏名や顔写真等の個人情報をカッターやハサミで切り取ったのち、合格者の個人情報の上に切り貼りを行うことで、証明書を変造する事例が発生している。
【0004】
このような切り貼りによる変造への対策として、印紙や切手のように、貴重価値が等しい複数の印刷物に対して、輪郭に印刷物ごとに異なる可変情報を形成することで、使用済の印刷物の割印が付与されていない部分を切り取り、切り貼りによりあたかも未使用の印刷物として再使用することを防止する印刷物が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-010846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1により、使用した証拠としての割印が付与される位置に該当する印刷物の輪郭に、印刷物ごとに異なる可変情報を形成することで、使用済の印刷物の割印箇所を切り取り、他の使用済の印刷物の同箇所に貼り付けた場合、可変情報に不一致/違和感が生じ、変造された印刷物であることが一見して判明することが可能となった。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、作成される複数の印刷物は、全て同じサイズである。よって、使用済や、異なる価値の印刷物を集めて、切り貼りをした場合、可変情報に不一致/違和感が生じるものの、未使用と同じサイズの印刷物を作成することが可能となってしまうことから、改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、複数の印刷物が全て同じサイズであっても、1度使用した印刷物や、異なる価値の印刷物の一部を切り取り、他の印刷物に切り貼りしてあたかも真正な1枚として再使用することを防止する印刷物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、貴重価値を有する印刷物であって、印刷物は、異なる貴重価値を有して、貴重価値ごとに複数枚存在し、基材の少なくとも一部に、所定の幅及び高さを有する通知部が印刷され、通知部は、印刷物の貴重価値を示す情報部と、情報部の周囲に背景部とを有し、通知部は、貴重価値ごとに、異なる幅及び/又は高さであることを特徴とする、貼り替え防止策を施した印刷物である。
【0010】
さらに、貴重価値が低い印刷物は、貴重価値が高い印刷物よりも、幅及び/又は高さが大きいことを特徴とする請求項1記載の、貼り替え防止策を施した印刷物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の貼り替え防止策を施した印刷物は、試験結果を印刷する通知部を、貴重価値ごとに異なる大きさで形成しているため、異なる貴重価値、例えば合格者の通知部を切り取り、他の不合格者の同箇所に貼り付けても、不合格者の情報が露出することから、貼り替えにより改ざんされた印刷物であることが一見して判明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の貼り替え防止策を施した「合格」を通知する印刷物(1)の平面図。
図2】本発明の貼り替え防止策を施した「不合格」を通知する印刷物(1)の平面図。
図3】本発明の合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)を比較する模式図。
図4】本発明の背景部(4a-b、4b-b)の一例を示す平面図。
図5】本発明の不合格通知部(4b)の変造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0014】
図1は、本発明における貼り替え防止策を施した「合格」を通知する印刷物(1)の平面図である。
【0015】
図1において印刷物(1)は、試験結果を通知する圧着はがきを広げた平面図である。本発明における印刷物(1)は、貴重価値が異なる製品が複数存在する印刷物(1)である。例えば、図1においては、試験結果である「合格」か「不合格」かにより、貴重価値が異なる製品となる。「合格」の場合、印刷物(1)自体が証明書の役割にもなるので、本発明においては、印刷物(1)に付加価値を付与する情報、例えば、図1では試験結果を「貴重価値」とする。なお、対比としては、紙幣(例えば、1万円券)のように、複数存在するが、いずれも価値が同じ場合、「貴重価値が等しい製品が複数存在する印刷物」とする。
【0016】
印刷物(1)は、基材(2)上の一部に、印刷物(1)ごとに異なる情報を有する可変情報部(3)が形成されており、図1では受験者の氏名「印刷 太郎」と生年月日「2001/01/01」などが形成されている。その他、デザイン性を向上するための地紋模様等が印刷されていてもよい。
【0017】
基材(2)は、可変情報部(3)や後述する合格通知部(4a)が少なくとも印刷可能であれば特に限定されるものではなく、上質紙やコート紙等の紙基材、又は、フィルム、カード基材など様々な基材を用いることが可能であり、特にその材料は限定されない。
【0018】
印刷物(1)は、基材(2)上の一部に通知部(4)である合格通知部(4a)を有している。合格通知部(4a)は、情報部(4a-f)と背景部(4a-b)から成る。情報部(4a-f)は、印刷物(1)の貴重価値を示す部分であり、図1では、試験結果として「合格」の文字が形成されている。情報部(4a-f)の周囲は、背景部(4a-b)として地紋模様が形成されている。
【0019】
情報部(4a-f)は、文字、数字及び記号を組み合わせて形成することが可能であり、特に限定されない。
【0020】
図2は、本発明における貼り替え防止策を施した「不合格」を通知する印刷物(1)の平面図である。
【0021】
なお、図1図2に示す印刷物(1)は、同じ試験に対する試験結果を、異なる受験者に通知する印刷物(1)である。よって、図1の印刷物(1)と図2の印刷物(2)は貴重価値が異なる製品である。印刷物(1)は、通知部(4)である不合格通知部(4b)を有している。不合格通知部(4b)は、情報部(4b-f)と背景部(4b-b)から成る。情報部(4b-f)は、前述した図1と同様に、印刷物(1)の貴重価値を示す部分であり、図2では、試験結果として「不合格」の文字が形成されている。情報部(4b-f)の周囲は、背景部(4b-b)として地紋模様が形成されている。なお、合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)は、異なる試験結果をそれぞれ説明する場合、「合格通知部(4a)、不合格通知部(4b)」とするが、試験結果を通知する印刷部として併せて説明する場合、総称して「通知部(4)」とする。
【0022】
図3は、合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)を比較する模式図である。
【0023】
合格通知部(4a)の幅(W1)は、不合格通知部(4b)の幅(W1b)より、両端が短くなっている。一例として、図3では、合格通知部(4a)の幅(W1a)は、不合格通知部(4b)の幅(W1b)より、両端が5.0mmずつ短くなっている。
【0024】
また、合格通知部(4a)の背景部(4a-b)と、不合格通知部(4b)の背景部(4b-b)は、同じ地紋模様であるが、異なる色で形成されている。一例として、図3では、ネガポジ反転した色であり、合格通知部(4a)の背景部(4a-b)は黒色を主体とした模様、不合格通知部(4b)の背景部(4b-b)は、白色を主体とした模様としている。
【0025】
詳細については後述するが、本発明においては、合格通知部(4a)の幅及び/又は高さを、不合格通知部(4b)の幅及び/又は高さより短くし、さらに、異なる色の背景部(4a-b、4b-b)とすることで、合格通知部(4a)を切り取り、不合格通知部(4b)の上に貼り付けて変造しようとした場合、不合格通知部(4b)の背景部(4b-b)がはみ出ることで、目視で簡単に変造を発見することが可能となる。
【0026】
合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)の幅を異ならせる構成は、図3に示すように、幅(W1b、W2b)に限らず、高さ(W)を異ならせてもよい。ただし、本発明の目的である、合格通知部(4a)を切り取り、不合格通知部(4b)の上に貼り付けて変造した際に、目視で簡単に発見するためには、不合格通知部(4b)の一部がはみ出るために、合格通知部(4a)の高さ(W2a)よりも不合格通知部(4b)の高さ(W2b)を大きくする必要がある。
【0027】
なお、合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)は、幅と高さの両方を異ならせてもよい。
【0028】
また、合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)における、背景部(4a-b、4b-b)は、図3に示す同じ模様で色を異ならせる構成に限らず、同じ色で異なる模様で構成してもよい。ただし、本発明の目的である、合格通知部(4a)を切り取り、不合格通知部(4b)の上に貼り付けて変造した際に、目視で簡単に発見するためには、不合格通知部(4b)の一部がはみ出る領域の模様については、背景部(4a-b、4b-b)を互いに異なる色及び/又は模様とする必要がある。
【0029】
さらに、偽造防止策として、不合格通知部(4b)の背景部(4b-b)に発光材料を使用してもよい。発光材料を使用した場合には、貼り替えによりはみ出る領域に対して、励起光を照射した際、発光の有無により改ざんの有無を確認することが可能となる。
【0030】
合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)の幅及び/又は高さ(W1a、W1b、W2a、W2b)は特に限定されないが、貼り替えの改ざんを行った際に、目視ではみ出る領域を確認できるように、幅及び/又は高さ(W1a、W1b、W2a、W2b)の差を約0.5~15.0mmとすることが好ましい。
【0031】
また、合格通知部(4a)と不合格通知部(4b)は、長方形の形状を有しているが、楕円形の形状等、任意の形状とすることが可能である。
【0032】
背景部(4a-b、4b-b)には、図3に示した地紋模様に限らず、様々な模様が含まれる。地紋模様とは、文字や絵柄の背景に印刷される淡色の網点、砂目、線画等の模様であり、階調が連続的に変化する連続階調模様も含まれる。
【0033】
図4は、本発明の背景部(4a-b、4b-b)の一例を示す平面図である。
【0034】
図4(a)に示された背景部は線画模様の一例であり、同一の模様が連続的に繰り返される平坦な調子を基調としており、階調は一定であり変化していない。しかし、階調を連続的に変化させた模様であってもよい。
【0035】
図4(b)に示された背景部(4a-b、4b-b)は連続階調模様の一例であり、網点の面積率が連続的に変化して階調が連続的に変化している。このような連続階調模様に含まれる網点の形状は、三角形、四角形、五角形以上の多角形等の直線形状、円形、楕円形等の曲線形状を有する。
【0036】
図4(c)に示された背景部(4a-b、4b-b)は、図4(b)に示された背景部(4a-b、4b-b)と同様に連続階調模様の一例であり、網点の面積率が連続的に変化して階調が連続的に変化している。この連続階調模様に含まれる網点の形状は、円形、楕円形等の曲線形状を有する。
【0037】
図4(d)に示された背景部(4a-b、4b-b)は砂目状の網点模様の一例であり、不規則に配置された微小な点の密度の濃淡で階調が表現され、ランダム網点又はFM(Frequency Modulation)スクリーンと称されるものである。この他の網点模様には、規則的に配置された微小な点の密度の濃淡で階調を表現するAMスクリーン(Amplitude Modulation)と称されるものがある。
【0038】
次に、印刷物(1)の変造の発見方法について説明する。
図5は、不合格通知部(4b)の変造を示す模式図である。具体的には、図1に示した受験者の合格通知部(4a)をカッターやハサミ等を用いて切り取ったのち、図2に示した、図1とは異なる受験者の不合格通知部(4b)の上に接着剤やのり等を用いて貼り替えを行った変造を示す。
【0039】
図1から図3においては、一例として、合格通知部(4a)の幅(W1a)を、不合格通知部(4b)の幅(W1b)より5mm短くし、合格通知部(4a)の背景部(4a-b)を赤色とし、不合格通知部(4b)の背景部(4b-b)を青色とした。よって、貼り替えにより変造を行った場合、不合格通知部(4b)の背景部(4b-b)の両端が5mmずつはみ出て、さらに、赤色の合格通知部(4a)の下から、青色の不合格通知部(4b)が露出することで、目視で簡単に変造を発見することが可能となる。
【0040】
なお、印刷物(1)は、前述した、試験結果通知書(合格及び不合格を通知)以外にも、認定書(認定及び不認定を通知)、許可証(許可及び不許可を通知)、入館証(入館及び不入館を通知)、入場証(入場及び不入場を通知)等に使用することが可能である。また、入場証において、例えば、3日間開催される展示会の入場証とする場合、1日目、2日目、3日目、さらには、全日等の入場日ごとに、縦と横の大きさを組み合わせて変更させてもよい。
【0041】
本発明における可変情報部(3)及び通知部(4)を形成する手段は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、IJP印刷方式又はレーザ加工等、特に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1 印刷物
2 基材
3 可変情報部
4 通知部
4a 合格通知部
4b 不合格通知部
4a-f、4b-f 情報部
4a-b、4b-b 背景部
図1
図2
図3
図4
図5