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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177697
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20231207BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231207BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20231207BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B41/06 L
B24B1/00 F
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090505
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田渕 智隆
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C043BA03
3C043BA12
3C043BA15
3C043BA16
3C049AA04
3C049AA12
3C049AA13
3C049AB04
3C049CB01
5F057AA05
5F057AA11
5F057BA11
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057BC03
5F057BC06
5F057CA14
5F057DA08
5F057DA10
5F057DA11
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA28
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】被加工物の外周部に欠けが発生することを抑制することができる被加工物の研削方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の研削方法は、保持テーブルに被加工物を保持する保持ステップ101と、外径が被加工物より小さい第1の研削ホイールで、被加工物の中央部を所定厚みまで研削し凹部を形成する中央部研削ステップ102と、中央部研削ステップ102の実施後、第1の研削ホイールを凹部から保持テーブルの保持面の外周領域に相対的に移動させ、凹部を囲繞する被加工物の外周部を研削する外周部研削ステップ103と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の研削方法であって、
保持テーブルに被加工物を保持する保持ステップと、
外径が被加工物より小さい第1の研削ホイールで、被加工物の中央部を所定厚みまで研削し凹部を形成する中央部研削ステップと、
該中央部研削ステップの実施後、該第1の研削ホイールを該凹部から該保持テーブルの保持面の外周領域に相対的に移動させ、該凹部を囲繞する被加工物の外周部を研削する外周部研削ステップと、
を備えることを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項2】
該保持テーブルは、
該外周部を保持する外周領域と、該中央部を保持する中央領域と、に区画された保持面と、
該外周領域と、該中央領域と、をそれぞれ独立して吸引源に接続する吸引経路と、を有し、
該保持ステップは、該中央領域に吸引力を発生させ、被加工物の該中央部を保持することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項3】
該中央部研削ステップと、該外周部研削ステップと、を繰り返し実施することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項4】
該外周部研削ステップを開始してから所定のタイミングで、該中央領域の吸引力を維持した状態で、さらに該外周領域に吸引力を発生させ、薄化された被加工物の該外周部を該外周領域に吸着する外周吸着ステップと、
該外周吸着ステップの実施後、該第1の研削ホイールまたは該第1の研削ホイールと異なる第2の研削ホイールで被加工物の全面を研削し、被加工物を所望する最終厚みまで薄化する全面研削ステップと、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の被加工物の研削方法。
【請求項5】
該第1の研削ホイールは、該中央領域よりも外径が小さいことを特徴とする請求項2に記載の被加工物の研削方法。
【請求項6】
該全面研削ステップで使用する第2の研削ホイールは、該第1の研削ホイールよりも外径が大きいことを特徴とする請求項4に記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を研削する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反りがある被加工物を研削する際には、従来の加工方法では、まず被加工物を保持テーブルに吸着させる必要があると考えられていた。そこで保持テーブルに吸着させるために、搬送アームに被加工物の外周部を保持テーブルに対して押しつける機構を設ける(例えば、特許文献1参照)、保持テーブルの吸引力を上げるためにポンプを増やす、保持面の吸着経路を中央と外周とで分け、外周が沿って保持面から浮いてしまったとしても中心がリークせず、外周側を搬送アームなどで押す事でバキュームできる様にするため、外周専用のバキューム経路を形成するなどの解決策がとられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-123047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年反りが大きい被加工物が生じ、搬送や保持面を工夫しても被加工物の全面を吸着ができないケースも生じている。
【0005】
万が一外周部が浮いている状態で研削が進んでしまい、研削ホイールが外周部にあたると、外周部に欠けが発生する恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、被加工物の外周部に欠けが発生することを抑制することができる被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の研削方法は、被加工物の研削方法であって、保持テーブルに被加工物を保持する保持ステップと、外径が被加工物より小さい第1の研削ホイールで、被加工物の中央部を所定厚みまで研削し凹部を形成する中央部研削ステップと、該中央部研削ステップの実施後、該第1の研削ホイールを該凹部から該保持テーブルの保持面の外周領域に相対的に移動させ、該凹部を囲繞する被加工物の外周部を研削する外周部研削ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記被加工物の研削方法において、該保持テーブルは、該外周部を保持する外周領域と、該中央部を保持する中央領域と、に区画された保持面と、該外周領域と、該中央領域と、をそれぞれ独立して吸引源に接続する吸引経路と、を有し、該保持ステップは、該中央領域に吸引力を発生させ、被加工物の該中央部を保持しても良い。
【0009】
前記被加工物の研削方法において、該中央部研削ステップと、該外周部研削ステップと、を繰り返し実施しても良い。
【0010】
前記被加工物の研削方法において、該外周部研削ステップを開始してから所定のタイミングで、該中央領域の吸引力を維持した状態で、さらに該外周領域に吸引力を発生させ、薄化された被加工物の該外周部を該外周領域に吸着する外周吸着ステップと、該外周吸着ステップの実施後、該第1の研削ホイールまたは該第1の研削ホイールと異なる第2の研削ホイールで被加工物の全面を研削し、被加工物を所望する最終厚みまで薄化する全面研削ステップと、を備えても良い。
【0011】
前記被加工物の研削方法において、該第1の研削ホイールは、該中央領域よりも外径が小さくても良い。
【0012】
前記被加工物の研削方法において、該全面研削ステップで使用する第2の研削ホイールは、該第1の研削ホイールよりも外径が大きくても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、被加工物の外周部に欠けが発生することを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の加工対象の被加工物の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示された被加工物の研削方法の保持ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図4図4は、図2に示された被加工物の研削方法の中央部研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図5図5は、図2に示された被加工物の研削方法の外周部研削ステップ開始直後を一部断面で模式的に示す側面図である。
図6図6は、図2に示された被加工物の研削方法の外周部研削ステップ終了直前を一部断面で模式的に示す側面図である。
図7図7は、実施形態2に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、図7に示された被加工物の研削方法の最初の外周部研削ステップ終了直前を一部断面で模式的に示す側面図である。
図9図9は、図7に示された被加工物の研削方法の退避ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図10図10は、図7に示された被加工物の研削方法の中央部研削準備ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図11図11は、実施形態3に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、図11に示された被加工物の研削方法の外周吸着ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図13図13は、図11に示された被加工物の研削方法の全面研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図14図14は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例に係る被加工物の研削方法の保持ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の加工対象の被加工物の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
【0017】
(被加工物)
実施形態1に係る被加工物の研削方法は、図1に示す被加工物1を研削する方法である。実施形態1に係る被加工物の研削方法の加工対象の被加工物1は、シリコン、サファイヤ、ガリウムヒ素、又はSiC(炭化ケイ素)等などを基板2とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等である。被加工物1は、図1に示すように、表面3に互いに交差する分割予定ライン4が複数設定され、分割予定ライン4によって区画された領域にデバイス5が形成されている。
【0018】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、又はメモリ(半導体記憶装置)である。
【0019】
また、実施形態1において、被加工物1は、中央部8と、中央部8よりも外周側の外周部9とを含み、外周部9の方が中央部8より厚み方向に反っている(なお、図1は、被加工物1の反りを省略している)。なお、中央部8は、被加工物1の平面視における中心を含んだ領域であり、外周部9は、中央部8よりも外周側でかつ被加工物1の外縁を含んだ領域である。なお、外周部9は、表面3にデバイス5が形成されていても良く、表面3にデバイス5が形成されていなくても良い。
【0020】
なお、実施形態1では、被加工物1は、前述したウエーハであるが、本発明では、ウエーハに限定されることなく、例えば、デバイスチップを複数配置した基板と、基板上の複数のデバイスチップをモールド封止したモールド樹脂とを備えたパッケージ基板等の種々の被加工物でも良い。また、本発明では、被加工物1は、表面3にデバイス5が形成されていないウエーハでも良い。
【0021】
(被加工物の研削方法)
実施形態1に係る被加工物の研削方法は、被加工物1の表面3の裏側の裏面7を研削して、所望する最終厚み6まで被加工物1の薄化する方法である。被加工物の研削方法は、図2に示すように、保持ステップ101と、中央部研削ステップ102と、外周部研削ステップ103とを備える。
【0022】
(保持ステップ)
図3は、図2に示された被加工物の研削方法の保持ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。保持ステップ101は、研削装置20の保持テーブル21の保持面25に被加工物1を保持するステップである。なお、保持テーブル21は、円盤状の多孔質のポーラス部材22と、ポーラス部材22を中央に嵌合して取り付ける円形の凹部24が設けられた枠体23とを備える。
【0023】
ポーラス部材22は、ポーラスセラミック等の多孔質材で構成されている。ポーラス部材22の上面は、水平方向に沿って平坦に形成され、被加工物1を保持する保持面25である。また、保持テーブル21は、ポーラス部材22の上面である保持面25と、枠体23の上面とが同一平面上に配置されている。
【0024】
また、実施形態1では、保持テーブル21は、保持面25が被加工物1の外周部9を保持する外周領域251と、被加工物1の中央部8を保持する中央領域252とに区画されている。なお、実施形態1では、保持テーブル21は、外周領域251と中央領域252との間に、ポーラス部材22の他の部分よりも通気性の低いポーラスセラミック、非通気性の樹脂、又は非通気性のガラス等により構成された隔壁部材26がポーラス部材22内に埋設されて、保持面25が外周領域251と、中央領域252とに区画されている。このように、保持テーブル21は、外周領域251と中央領域252とに区画された保持面25を有している。
【0025】
また、保持テーブル21は、保持面25の外周領域251と、保持面25の中央領域252とをそれぞれ独立して吸引源29に接続する吸引経路27,28を有している。各吸引経路27,28は、開閉弁271,281を設けている。吸引経路27は、凹部24の底面のうち隔壁部材26よりも外周側の位置に開口し、吸引経路28は、凹部24の底面のうち隔壁部材26よりも内周側の位置に開口している。
【0026】
実施形態1において、保持ステップ101では、表面3に支持部材10が貼着された被加工物1が研削装置20の保持テーブル21の保持面25に載置される。このとき、外周領域251上に被加工物1の外周部9が位置し、中央領域252上に被加工物1の中央部8が位置する。実施形態1において、保持ステップ101では、研削装置20が、開閉弁271を閉じた状態で、開閉弁281を開いて、保持面25の外周領域251と中央領域252とのうち中央領域252のみに吸引力を発生させて、被加工物1の中央部8を中央領域252に吸引保持する。
【0027】
なお、実施形態1では、支持部材10は、可撓性と非粘着性を有する基材層と、基材層に積層されかつ可撓性と粘着性を有する粘着層とを有する粘着テープであるが、本発明では、粘着テープに限定されない。本発明では、支持部材10は、粘着層を有しない熱可塑性の樹脂で構成されたシートでも良い。粘着性を有さないシートの場合、支持部材10はポリオレフィン系シート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、又はポリスチレンシートである好ましく、被加工物1に熱圧着で貼着される。
【0028】
(中央部研削ステップ)
図4は、図2に示された被加工物の研削方法の中央部研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。中央部研削ステップ102は、外径が被加工物1の外径より小さい第1の研削ホイール30で、被加工物1の中央部8を所定厚みまで研削し、裏面7に部分的に凹部11を形成するステップである。
【0029】
実施形態1において、第1の研削ホイール30は、外径が被加工物1の外径よりも小さい。被加工物1の中央領域252の外径よりも小さな円盤状のホイール基台31と、ホイール基台31の外縁部に複数設けられた研削砥石32とを備える。このように、第1の研削ホイール30は、複数の研削砥石32の外縁で構成される円の直径(第1の研削ホイール30の外径に相当)が、被加工物1の外径及び被加工物1の中央領域252の外径よりも小さい。中央領域252は被加工物1の中央部8を保持するが、中央部8は外周部9に比べて反りが小さため、保持面25に吸引保持されている。第1の研削ホイール30の外径が中央領域252よりも小さいことで保持面25に吸引保持されている領域のみを研削する事ができるので、被加工物1が反って保持面25から浮いている部分に第1の研削ホイール30が衝突して被加工物1が損傷する恐れがない。
【0030】
また、実施形態1では、第1の研削ホイール30の外径が被加工物1の中央部8の半径より大きい。なお、本発明では、反って保持面25から浮いている外周部9を研削せず、まずは保持面25に吸引保持されている中央部8を研削することが目的であるため、第1の研削ホイール30の外径は、被加工物1の中央領域252の外径以下である方が好ましいが、中央領域252の周辺も反りが小さくなっており吸引保持されていなくても被加工物1を損傷させずに研削出来る場合もあるため、被加工物1の外径よりも小さければよい。また、本発明では、第1の研削ホイール30の外径は、被加工物1の中央部8の半径に限定されてもよい。
【0031】
実施形態1において、中央部研削ステップ102では、研削装置20が、保持テーブル21の軸心と、下端に第1の研削ホイール30を装着したスピンドル33の軸心34とを互いに平行でかつ間隔をあけるとともに、保持テーブル21に保持された被加工物1の裏面7の中央部8の上方に第1の研削ホイール30の研削砥石32を位置付ける。実施形態1において、中央部研削ステップ102では、研削装置20が、保持テーブル21を軸心回りに回転させた状態で、第1の研削ホイール30を軸心34回りに回転させながら被加工物1に研削水を供給しつつ第1の研削ホイール30を下方に移動させる。
【0032】
実施形態1において、中央部研削ステップ102では、研削装置20が、図4に示すように、ホイール基台31の外縁部に設けられた複数の研削砥石32を保持テーブル21に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石32で被加工物1の裏面7を研削する。実施形態1において、中央部研削ステップ102では、研削装置20が、最終厚み6まで被加工物1の中央部8を研削して薄化し、被加工物1の裏面7に部分的に凹部11を形成する。なお、実施形態1では、第1の研削ホイール30の外径が被加工物1の中央部8の半径より大きいので、被加工物1の裏面7の中央部8の軸心付近が研削されずに、凹部11が環状に形成される。
【0033】
(外周部研削ステップ)
図5は、図2に示された被加工物の研削方法の外周部研削ステップ開始直後を一部断面で模式的に示す側面図である。図6は、図2に示された被加工物の研削方法の外周部研削ステップ終了直前を一部断面で模式的に示す側面図である。外周部研削ステップ103は、中央部研削ステップ102の実施後、第1の研削ホイール30を凹部11から保持テーブル21の保持面25の外周領域251に相対的に移動させ、凹部11を囲繞する被加工物1の外周部9を研削ステップである。
【0034】
実施形態1において、外周部研削ステップ103では、図5に示すように、研削装置20が、中央部研削ステップ102終了時の研削砥石32の保持面25からの距離を維持した状態で、第1の研削ホイール30を保持テーブル21に対して保持テーブル21の保持面25の外周領域251に向かって保持面25に沿って相対的に移動させて、被加工物1の外周部9を凹部11の内面側から研削する。外周部研削ステップ103において、第1の研削ホイール30が移動しながら研削することで図4に示す被加工物1の中央部8の軸心付近の研削されていない領域も除去される。外周部研削ステップ103では、最終的に図6に示すように、第1の研削ホイール30の研削砥石32が被加工物1の外縁まで保持面25に対して相対的に移動して位置付けられ、被加工物1の外周部9を最終厚み6まで薄化する。
【0035】
なお、実施形態1では、外周部研削ステップ103では、研削装置20が、第1の研削ホイール30を保持テーブル21の保持面25の外周領域251に向かって相対的に50mm移動させる。
【0036】
以上説明した実施形態1に係る被加工物の研削方法は、中央部研削ステップ102において被加工物1の裏面7の中央部8に凹部11を形成した後に、外周部研削ステップ103において凹部11の内面を被加工物1の外縁に向かって研削するので、被加工物1の外周部9が保持面25から浮いていたとしても第1の研削ホイール30を凹部11の内面から押し当てるため第1の研削ホイール30で外周部9を保持面25に押しつけながら研削することとなる。このために、実施形態1に係る被加工物の研削方法は、被加工物1の外周部9が保持面25から浮いていたとしても、被加工物1の外周部9に第1の研削ホイール30が衝突することを抑制でき、外周部9が欠けることを抑制することができる。
【0037】
その結果、実施形態1に係る被加工物の研削方法は、被加工物1の外周部9に欠けが発生することを抑制することができるという効果を奏する。
【0038】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図7は、実施形態2に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。図8は、図7に示された被加工物の研削方法の最初の外周部研削ステップ終了直前を一部断面で模式的に示す側面図である。図9は、図7に示された被加工物の研削方法の退避ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。図10は、図7に示された被加工物の研削方法の中央部研削準備ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図7図8図9及び図10は、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
実施形態2に係る被加工物の研削方法は、最初の中央部研削ステップ102において被加工物1の中央部8を最終厚み6よりも厚い所定厚み12(図8に示す)まで研削し、図7に示すように、中央部研削ステップ102と、外周部研削ステップ103と、を繰り返しそれぞれ複数回実施して段階的に被加工物1の全面を最終厚み6に薄化する事と、退避ステップ105と、中央部研削準備ステップ106を備える事以外、実施形態1と同じである。
【0040】
実施形態2に係る被加工物の研削方法では、研削装置20が、最初の中央部研削ステップ102において被加工物1の中央部8を最終厚み6よりも厚い所定厚み12まで研削し、最初の外周部研削ステップ103において、最初の中央部研削ステップ102終了時の研削砥石32の保持面25からの距離を維持した状態で、第1の研削ホイール30を保持テーブル21に対して保持テーブル21の保持面25の外周領域251に向かって保持面25に沿って相対的に移動させて、被加工物1の外周部9を凹部11の内面側から研削する。実施形態2において、外周部研削ステップ103では、図8に示すように、研削装置20が第1の研削ホイール30の研削砥石32が被加工物1の外縁に位置付けられると、被加工物1を最終厚み6まで薄化したか否かを判定する(ステップ104)。実施形態2において、研削装置20が被加工物1を最終厚み6まで薄化していないと判定する(ステップ104:No)と、退避ステップ105に進む。
【0041】
実施形態2において、退避ステップ105は、研削砥石32が被加工物1に当たらない高さ即ち被加工物1の裏面7よりも上方に位置するように、第1の研削ホイール30を上昇させるステップである。実施形態2において、退避ステップ105では、図9に示すように、研削装置20が第1の研削ホイール30を保持テーブル21に対して相対的に上昇させる。
【0042】
実施形態2において、中央部研削準備ステップ106は、第1の研削ホイール30を被加工物1の裏面7の中央部8の上方に位置付けるステップである。実施形態2において、中央部研削準備ステップ106では、図10に示すように、研削装置20が第1の研削ホイール30を保持テーブル21に対して保持面25に沿って相対的に移動させて、第1の研削ホイール30を保持テーブル21に保持した被加工物1の裏面7の中央部8の上方に位置付けて、中央部研削ステップ102に戻る。
【0043】
実施形態2において、中央部研削ステップ102では1回の実施につき、研削装置20が例えば10μm又は100μmなどの所定距離ずつ被加工物1の中央部8を薄化し、外周部研削ステップ103も1回の実施につき、中央部研削ステップ102と同様の所定距離ずつ薄化する。また、実施形態2において、外周部研削ステップ103後、研削装置20が被加工物1を最終厚み6まで薄化したと判定する(ステップ104:Yes)と終了する。このように、実施形態2では、被加工物1の厚みが最終厚み6になるまで、中央部研削ステップ102と外周部研削ステップ103とを繰り返し実施することとなる。
【0044】
実施形態2に係る被加工物の研削方法は、中央部研削ステップ102において被加工物1の裏面7の中央部8に凹部11を形成した後に、外周部研削ステップ103において凹部11の内面を被加工物1の外縁に向かって研削するので、被加工物1の外周部9に第1の研削ホイール30が衝突することを抑制でき、外周部9が欠けることを抑制することができる。その結果、実施形態2に係る被加工物の研削方法は、実施形態1と同様に、被加工物1の外周部9に欠けが発生することを抑制することができるという効果を奏する。
【0045】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図11は、実施形態3に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。図12は、図11に示された被加工物の研削方法の外周吸着ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。図13は、図11に示された被加工物の研削方法の全面研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図11図12及び図13は、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施形態3に係る被加工物の研削方法は、中央部研削ステップ102において被加工物1の中央部8を最終厚み6よりも厚い第1段階仕上げ厚み13(図12に示す)まで研削し、図11に示すように、外周部研削ステップ103後に実施される外周吸着ステップ107と、全面研削ステップ108とを備える事以外、実施形態1と同等である。
【0047】
実施形態3に係る被加工物の研削方法では、研削装置20が、中央部研削ステップ102において被加工物1の中央部8を最終厚み6よりも厚い第1段階仕上げ厚み13まで研削し、外周部研削ステップ103において中央部研削ステップ102終了時の研削砥石32の保持面25からの距離を維持した状態で、第1の研削ホイール30を保持テーブル21に対して保持テーブル21の保持面25の外周領域251に向かって保持面25に沿って相対的に移動させて、被加工物1の外周部9を凹部11の内面側から研削する。なお、第1段階仕上げ厚み13は、外周部9が薄化されて反りが緩和し、保持テーブル21の外周領域251に外周部9を吸引保持することが可能となる被加工物1の厚みである。
【0048】
実施形態3において、外周吸着ステップ107は、外周部研削ステップ103を開始してから所定のタイミングで、中央領域252の吸引力を維持した状態で、さらに外周領域251に吸引力を発生させ、薄化された被加工物1の外周部9を外周領域251に吸着するステップである。実施形態3において、外周吸着ステップ107では、研削装置20が、所定のタイミングとしての外周部研削ステップ103終了後、開閉弁281を開いた状態で、開閉弁271を開いて保持面25の外周領域251に吸引力を発生させて、図12に示すように、外周領域251に被加工物1の外周部9を吸引保持する。
【0049】
実施形態3において、全面研削ステップ108は、外周吸着ステップ107の実施後、第1の研削ホイール30と異なる第2の研削ホイール40で被加工物1の裏面7の全面を研削し、被加工物1を所望する最終厚み6まで薄化するステップである。第2の研削ホイール40は、半径が被加工物1の半径よりも大きな円盤状のホイール基台41と、ホイール基台41の外縁部に複数設けられた研削砥石42とを備える。このように、第2の研削ホイール40は、複数の研削砥石42の外縁で構成される円の半径(第2の研削ホイール40の半径に相当)が、被加工物1の半径よりも大きい。
【0050】
実施形態3において、全面研削ステップ108では、研削装置20が、保持テーブル21の軸心と、下端に第2の研削ホイール40を装着したスピンドル43の軸心44とを互いに平行でかつ間隔をあけるとともに、保持テーブル21に保持された被加工物1の裏面7の中央部8の上方に第2の研削ホイール40の研削砥石42を位置付ける。実施形態3において、全面研削ステップ108では、研削装置20が、保持テーブル21を軸心回りに回転させた状態で、第2の研削ホイール40を軸心回りに回転させながら被加工物1に研削水を供給しつつ第2の研削ホイール40を下方に移動させることで被加工物1の裏面7全面を研削する。
【0051】
実施形態3において、全面研削ステップ108では、研削装置20が、図13に示すように、第2の研削ホイール40のホイール基台41の外縁部に設けられた複数の研削砥石42を保持テーブル21に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石42で被加工物1の裏面7の全面を研削する。なお、本発明では、実施形態3よりも研削時間は余分にかかるが、全面研削ステップ108において、研削装置20が第1の研削ホイール30で被加工物1の裏面7全面を研削しても良い。
【0052】
実施形態3に係る被加工物の研削方法は、中央部研削ステップ102において被加工物1の裏面7の中央部8に凹部11を形成した後に、外周部研削ステップ103において凹部11の内面を被加工物1の外縁に向かって研削するので、被加工物1の外周部9に第1の研削ホイール30が衝突することを抑制でき、外周部9が欠けることを抑制することができる。その結果、実施形態3に係る被加工物の研削方法は、実施形態1と同様に、被加工物1の外周部9に欠けが発生することを抑制することができるという効果を奏する。また、実施形態3は、被加工物1の半径以上の半径を有する第2の研削ホイール40で全面研削をすることで保持面25と第2の研削ホイール40とを相対的に移動させて研削しなくても全面を研削する事ができる。よって、被加工物1の半径よりも外径が小さい第1の研削ホイール30で被加工物1の全面を最終厚み6まで研削すると比べて研削時間を削減出来る効果がある。
【0053】
なお、本発明では、実施形態3において、研削装置20が、最初の中央部研削ステップ102において被加工物1の中央部8を第1段階仕上げ厚み13よりも厚い所定厚み12まで研削するなどして、実施形態2と同様に、中央部研削ステップ102と外周部研削ステップ103とを複数回繰り返し実施しても良い。
【0054】
また、本発明では、実施形態1から3において、外周部研削ステップ103の実施中(所定のタイミングに相当)に、外周吸着ステップ107を実施しても良い。特に、本発明は、中央部研削ステップ102と外周部研削ステップ103とを複数回繰り返し実施する際には、これらを所定回実施した後(所定のタイミングに相当)に、外周吸着ステップ107を実施しても良い。
【0055】
〔変形例〕
本発明の実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。図14は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例に係る被加工物の研削方法の保持ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
変形例に係る被加工物の研削方法は、保持テーブル21が、ポーラス部材22内に隔壁部材26が埋設されることなく、保持面25が中央領域252と外周領域251とに区画されていないとともに、保持面25と吸引源29に接続する吸引経路28-1を一つのみ設けている事以外、実施形態1と同じである。吸引経路28-1は、開閉弁281-1を設けている。
【0057】
変形例において、保持ステップ101では、表面3に支持部材10が貼着された被加工物1が研削装置20の保持テーブル21の保持面25に載置される。このとき、実施形態1と同様に、外周領域251上に被加工物1の外周部9が位置し、中央領域252上に被加工物1の中央部8が位置する。実施形態1において、保持ステップ101では、研削装置20が、開閉弁281-1を開いて、保持面25全体に吸引力を発生させて、反った被加工物1の場合、図14に示すように、中央部8を中央領域252に吸引保持する。なお、変形例において、実施形態3のように、全面研削ステップ108を実施する際には、外周吸着ステップ107を実施しない。
【0058】
変形例に係る被加工物の研削方法は、中央部研削ステップ102において被加工物1の裏面7の中央部8に凹部11を形成した後に、外周部研削ステップ103において凹部11の内面を被加工物1の外縁に向かって研削するので、被加工物1の外周部9に第1の研削ホイール30が衝突することを抑制でき、外周部9が欠けることを抑制することができる。その結果、変形例に係る被加工物の研削方法は、実施形態1と同様に、被加工物1の外周部9に欠けが発生することを抑制することができるという効果を奏する。
【0059】
また、変形例に係る被加工物の研削方法は、保持ステップ101において保持面25全体に吸引力を発生させるので、外周部研削ステップ103において外周部9を研削して反りを緩和すると保持面25に被加工物1の外周部9も吸引保持することが可能となる。その結果、変形例に係る被加工物の研削方法は、被加工物1の外周部9に第1の研削ホイール30が衝突することを抑制でき、外周部9が欠けることを抑制することができる。
【0060】
なお、本発明の実施形態においては反った被加工物1を対象として説明したが、本発明は反っていない被加工物1でも有効である。これは、被加工物1の反りに限らず、通常被加工物1の外縁は丸みを帯びた形状に面取りされており、保持面25からわずかに浮いており、研削中に研削水の侵入や研削ホイールの衝突によってもばたつきやすくなっていることや、事前に面取り部が除去された被加工物1であっても外周部から研削ホイールが衝突していくことで外周部を起点に被加工物1に欠けが発生する恐れがあるからである。よって被加工物1の中央部8に凹部11を形成し、凹部11の内面に研削ホイールを当てて研削領域を広げて外周部9を研削する本発明は、外周部9から研削ホイールが接触しないため、保持力が不安定な外周部9を起点に被加工物1が損傷することを防げるためである。なお、本発明は、上記実施形態に等限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 被加工物
6 最終厚み(所定厚み)
8 中央部
9 外周部
11 凹部
12 所定厚み
21 保持テーブル
25 保持面
27,28 吸引経路
29 吸引源
30 第1の研削ホイール
40 第2の研削ホイール
101 保持ステップ
102 中央部研削ステップ
103 外周部研削ステップ
107 外周吸着ステップ
108 全面研削ステップ
251 外周領域
252 中央領域
図1
図2
図3
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図10
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