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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177820
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】軌道取得装置及び装着支援装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 59/043 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A01B59/043 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090707
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】趙 元在
(72)【発明者】
【氏名】元林 浩太
(72)【発明者】
【氏名】ヌウェン ヴァン ナン
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA09
2B041AA15
2B041AB05
2B041AC03
2B041CA04
2B041CA16
2B041CC02
2B041CC12
2B041CC22
2B041CG01
2B041CG10
(57)【要約】
【解決手段】軌道取得装置(50)は、カメラ(52)と、上部フック(38)の位置と所定部位(58)の位置とを対応付けた対応関係を予め記憶する記憶部(62)と、リフトアーム(28)が上下方向に動作している間に、リフトアームの複数の高さ位置の各々に対応する角度情報を取得すると共に、リフトアームが各々の高さに位置するときにカメラによって撮影された所定部位を含む画像を取得し、高さ位置毎に角度情報と画像とを対応付ける情報取得部(64)と、情報取得部によって対応付けられた複数の組の角度情報及び画像と対応関係とを用いてリフトアームの回転角度に対応した上部フックの3次元の軌道を算出する軌道演算部(66)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機をトラクタに装着するために前記トラクタのリフトアームを動作させることによって前記トラクタに取り付けられたヒッチフレームの上部フックで前記作業機の上部ピンを掬い上げるときの前記上部フックの軌道を取得する軌道取得装置であって、
前記トラクタに取り付けられており、前記リフトアームの動作によって移動する所定部位を撮影するカメラと、
前記上部フックの位置と前記所定部位の位置とを対応付けた対応関係を予め記憶する記憶部と、
前記リフトアームが上下方向に動作している間に、前記リフトアームの複数の高さ位置の各々に対応する角度情報を取得すると共に、前記リフトアームが各々の高さに位置するときに前記カメラによって撮影された前記所定部位を含む画像を取得し、高さ位置毎に前記角度情報と前記画像とを対応付ける情報取得部と、
前記情報取得部によって対応付けられた複数の組の前記角度情報及び前記画像と前記対応関係とを用いて前記リフトアームの回転角度に対応した前記上部フックの3次元の前記軌道を算出する軌道演算部と
を備える、軌道取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道取得装置であって、
前記軌道が妥当であるか否かを判定する妥当性判定部を更に備え、
前記軌道演算部は、前記情報取得部によって対応付けられた複数の組のうち、一部の複数の組の前記角度情報及び前記画像と前記対応関係とを用いて前記上部フックの3次元の前記軌道を算出し、
前記妥当性判定部は、前記軌道演算部によって用いられていない1組以上の前記角度情報及び前記画像に基づいて定められる前記上部フックの3次元の位置が、前記軌道から所定距離離れた範囲内にあるか否かを判定し、前記上部フックの3次元の位置が前記範囲内にある場合に、前記軌道が妥当であると判定する、軌道取得装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軌道取得装置によって取得された前記軌道を用いて前記作業機を前記トラクタに装着する作業を支援する装着支援装置であって、
前記トラクタの移動方向及び移動量を算出する動作演算部と、
前記動作演算部によって算出された前記移動方向及び前記移動量を報知装置に報知させる報知制御部と
を備え、
前記カメラは、前記作業機が有する所定の作業機側部位を撮影し、
前記記憶部は、前記作業機側部位の位置と前記作業機の各部位の位置とを対応付けた作業機側対応関係を予め記憶し、
前記動作演算部は、前記カメラによって撮影される前記作業機側部位を含む画像と前記作業機側対応関係とを用いて、前記上部ピンを含む前記作業機の各部位の3次元位置を算出し、3次元の前記軌道の一部と前記上部ピンの3次元位置とを一致させるために必要な前記移動方向及び前記移動量を算出する、装着支援装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の軌道取得装置によって取得された前記軌道を用いて前記作業機を前記トラクタに装着する作業を支援する装着支援装置であって、
前記トラクタの移動方向及び移動量を算出する動作演算部と、
前記動作演算部によって算出された前記移動方向及び前記移動量に基づいて前記トラクタを自律走行させる走行制御部と
を備え、
前記カメラは、前記作業機が有する所定の作業機側部位を撮影し、
前記記憶部は、前記作業機側部位の位置と前記作業機の各部位の位置とを対応付けた作業機側対応関係を予め記憶し、
前記動作演算部は、前記カメラによって撮影される前記作業機側部位を含む画像と前記作業機側対応関係とを用いて、前記上部ピンを含む前記作業機の各部位の3次元位置を算出し、3次元の前記軌道の一部と前記上部ピンの3次元位置とを一致させるために必要な前記移動方向及び前記移動量を算出する、装着支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒッチフレームの上部フックの軌道を取得する軌道取得装置、及び、トラクタに作業機を装着する作業を支援する装着支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタには作業機が装着される。一般にユーザは、作業機の装着作業を手動で行う。例えば、ユーザは、トラクタを運転してトラクタを作業機に近づける。ユーザは、作業機昇降装置を操作してリンク機構(3点リンク)に取り付けられたヒッチフレームを上方に移動させる。上部フックが移動する軌道に作業機の上部ピンが位置する場合、上部フックは上部ピンを掬い上げる。すると、作業機は上部ピンを中心にしてトラクタ側に回転移動し、作業機の下部ピンがヒッチフレームの下部支持部に嵌る。このようにして、作業機は、トラクタのヒッチフレームに装着される。
【0003】
特許文献1には、トラクタに作業機を装着する際に、トラクタを作業機に向けて自律走行させる技術が開示される。この技術は、トラクタ側の第1のカメラでトラクタの一部を撮影し、トラクタ側の第2のカメラで作業機側のターゲットを撮影し、各カメラの画像を用いてトラクタの走行制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0077557号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、ユーザは、トラクタを運転する必要がない。その一方で、ユーザは、自ら作業機昇降装置を操作して、リンク機構に取り付けられたヒッチフレームに作業機を装着する必要がある。
【0006】
リンク機構は、複数の部材で構成される。トラクタへの作業機の装着作業前に、リンク機構の一部の部材の長さ、部材同士の接続位置等は適宜調整される。リンク機構が調整されると、ヒッチフレームの上部フックが移動する軌道は変わる。つまり、上部フックの軌道は一定でない。このため、ユーザは、作業機の装着作業時に、上部フックの位置をこまめに確認する必要がある。こうした理由から、作業機の装着作業はユーザにとって容易な作業でない。また、作業機の装着作業には時間を要する。
【0007】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、作業機をトラクタに装着するために前記トラクタのリフトアームを動作させることによって前記トラクタに取り付けられたヒッチフレームの上部フックで前記作業機の上部ピンを掬い上げるときの前記上部フックの軌道を取得する軌道取得装置であって、前記トラクタに取り付けられており、前記リフトアームの動作によって移動する所定部位を撮影するカメラと、前記上部フックの位置と前記所定部位の位置とを対応付けた対応関係を予め記憶する記憶部と、前記リフトアームが上下方向に動作している間に、前記リフトアームの複数の高さ位置の各々に対応する角度情報を取得すると共に、前記リフトアームが各々の高さに位置するときに前記カメラによって撮影された前記所定部位を含む画像を取得し、高さ位置毎に前記角度情報と前記画像とを対応付ける情報取得部と、前記情報取得部によって対応付けられた複数の組の前記角度情報及び前記画像と前記対応関係とを用いて前記リフトアームの回転角度に対応した前記上部フックの3次元の前記軌道を算出する軌道演算部とを備える。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の軌道取得装置によって取得された前記軌道を用いて前記作業機を前記トラクタに装着する作業を支援する装着支援装置であって、前記トラクタの移動方向及び移動量を算出する動作演算部と、前記動作演算部によって算出された前記移動方向及び前記移動量を報知装置に報知させる報知制御部とを備え、前記カメラは、前記作業機が有する所定の作業機側部位を撮影し、前記記憶部は、前記作業機側部位の位置と前記作業機の各部位の位置とを対応付けた作業機側対応関係を予め記憶し、前記動作演算部は、前記カメラによって撮影される前記作業機側部位を含む画像と前記作業機側対応関係とを用いて、前記上部ピンを含む前記作業機の各部位の3次元位置を算出し、3次元の前記軌道の一部と前記上部ピンの3次元位置とを一致させるために必要な前記移動方向及び前記移動量を算出する。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様の軌道取得装置によって取得された前記軌道を用いて前記作業機を前記トラクタに装着する作業を支援する装着支援装置であって、前記トラクタの移動方向及び移動量を算出する動作演算部と、前記動作演算部によって算出された前記移動方向及び前記移動量に基づいて前記トラクタを自律走行させる走行制御部とを備え、前記カメラは、前記作業機が有する所定の作業機側部位を撮影し、前記記憶部は、前記作業機側部位の位置と前記作業機の各部位の位置とを対応付けた作業機側対応関係を予め記憶し、前記動作演算部は、前記カメラによって撮影される前記作業機側部位を含む画像と前記作業機側対応関係とを用いて、前記上部ピンを含む前記作業機の各部位の3次元位置を算出し、3次元の前記軌道の一部と前記上部ピンの3次元位置とを一致させるために必要な前記移動方向及び前記移動量を算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザはトラクタへの作業機の装着作業を容易に行うことができる。結果として、作業機の装着作業の時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、トラクタの後部と作業機の側面図である。
図2図2は、トラクタの後部と作業機の側面図である。
図3図3は、軌道取得装置の構成図である。
図4図4は、軌道取得処理のフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る装着支援装置の構成図である。
図6図6は、第1実施形態の誘導処理のフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る装着支援装置の構成図である。
図8図8は、第2実施形態の誘導処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1 トラクタ10と作業機12の構成]
図1及び図2は、トラクタ10の後部と作業機12の側面図である。図1は、トラクタ10と作業機12とが互いに離間した状態を示す。図2は、トラクタ10と作業機12とが互いに接続された状態を示す。本実施形態では、作業機12の前方に位置するトラクタ10と、トラクタ10の後方に位置する作業機12との組み合わせを想定する。但し、本発明は、作業機12の後方に位置するトラクタ10と、トラクタ10の前方に位置する作業機12との組み合わせにも適用可能である。この場合、以下で説明する前後左右は逆転する。
【0014】
トラクタ10への作業機12の装着を容易にするためにヒッチフレーム20が使用される場合がある。本明細書では、ヒッチフレーム20を介してトラクタ10に作業機12を装着する実施形態を説明する。トラクタ10の車体14の後部には、作業機昇降装置16と、リンク機構18と、ヒッチフレーム20とが配置される。また、車体14の後部からは、後方にPTO軸22が突出する。PTO軸22は、トラクタ10の動力の一部を作業機12に供給し得る。動力を要する作業機12は、PTO軸22を介してトラクタ10から動力を受け取る。作業機昇降装置16は、左右一対のリフトアーム28を有する。作業機昇降装置16は、左右に延びる回転軸を中心にして、左右のリフトアーム28を上下方向に揺動させることができる。
【0015】
リンク機構18は、3点リンクである。リンク機構18は、1つのトップリンク30と、左右2つのロワリンク32と、左右2つのリフトロッド34と、左右2つのテンションロッド36とを有する。
【0016】
トップリンク30は、左右のロワリンク32の中間位置の上方に位置する。トップリンク30の前端部は、車体14の後部の取付部24にボールジョイントを介して接続される。トップリンク30は、取付部24との接続部分を中心にして上下方向に揺動可能である。トップリンク30の後端部は、ヒッチフレーム20の上端部にボールジョイントを介して接続される。トップリンク30とヒッチフレーム20は、互いに上下方向に揺動可能である。
【0017】
各々のロワリンク32の前端部は、車体14の後部にボールジョイントを介して接続される。各々のロワリンク32は、車体14との接続部分を中心にして上下方向に揺動可能である。各々のロワリンク32の後端部は、ヒッチフレーム20にボールジョイントを介して接続される。各々のロワリンク32とヒッチフレーム20は、互いに上下方向に揺動可能である。
【0018】
左側のリフトロッド34の上端部は、左側のリフトアーム28に接続される。左側のリフトロッド34の下端部は、左側のロワリンク32に接続される。同様に、右側のリフトロッド34は、右側のリフトアーム28と右側のロワリンク32とに接続される。なお、各々のリフトロッド34は、ロワリンク32との接続可能部分を複数有する。また、各々のロワリンク32は、リフトロッド34との接続可能部分を複数有する。このため、リフトロッド34とロワリンク32との接続位置は可変である。なお、リフトロッド34の長さが可変であってもよい。
【0019】
左側のテンションロッド36の前端部は、車体14に接続される。左側のテンションロッド36の後端部は、左側のロワリンク32に接続される。同様に、右側のテンションロッド36は、車体14と右側のロワリンク32とに接続される。各々のテンションロッド36の長さは可変である。各々のテンションロッド36を締め付ける(短く規制する)ことによってトラクタ10に対する作業機12の左右方向の揺れを防止することができる。
【0020】
ヒッチフレーム20は、1つのトップリンク30と2つのロワリンク32とによって支持される。ヒッチフレーム20は、上部から下部に向かって左右に広がる。ヒッチフレーム20は、上部フック38と左右2つの下部支持部40とを有する。上部フック38は、ヒッチフレーム20の上端部の後部に形成される。上部フック38は、ヒッチフレーム20の幅方向(左右方向)の中央に位置する。上部フック38には、略上方に向けられた開口が形成される。左側の下部支持部40は、ヒッチフレーム20の左下端部の後部に形成される。右側の下部支持部40は、ヒッチフレーム20の右下端部の後部に形成される。各々の下部支持部40には、略後上方に向けられた開口が形成される。各々の下部支持部40には、ロック機構(不図示)が設けられる。ロック機構は、作業機12の下部ピン48が下部支持部40から外れないように、下部支持部40の開口の一部を塞ぐ。
【0021】
トラクタ10のユーザは、キャビン内の操作装置を使用して作業機昇降装置16を操作可能である。ユーザが操作装置によってヒッチフレーム20を上方に移動させる操作を行うと、油圧機構(不図示)においてヒッチフレーム20を上方に移動させるための油圧が供給される。すると、左右のリフトアーム28は、油圧の作用によって上方に揺動する。リフトアーム28が上方に揺動すると、リフトアーム28に接続されるリフトロッド34が上方に引き上げられる。更に、リフトロッド34に接続されるロワリンク32は、前端部を中心にして上方に揺動する。以上の動作により、ヒッチフレーム20は、上方に揺動する。ユーザがヒッチフレーム20を上方に移動させる操作を停止すると、ロック機構が働いて、ヒッチフレーム20及び装着された作業機12は停止した高さを維持する。ユーザが操作装置によってヒッチフレーム20を下方に移動させる操作を行うと、油圧機構(不図示)においてヒッチフレーム20を上方に移動させるための油圧が開放される。すると、ヒッチフレーム20は下方に揺動する。ヒッチフレーム20の下部は、ロワリンク32の前端部を中心にして揺動可能である。ヒッチフレーム20の上部は、トップリンク30の前端部を中心にして揺動可能である。
【0022】
作業機12は、例えば、ロータリ耕うん機である。作業機12は、ヒッチフレーム20に着脱可能である。作業機12は、マスト44と、上部ピン46と、左右2つの下部ピン48とを有する。マスト44は、作業機12の上部に配置される。上部ピン46は、マスト44に配置される。上部ピン46は、作業機12の左右方向と平行する棒状部材である。各々の下部ピン48は、上部ピン46の下方に配置される。上部ピン46と左右2つの下部ピン48との位置関係は、ヒッチフレーム20の上部フック38と左右2つの下部支持部40の位置関係と一致する。
【0023】
トラクタ10への作業機12の装着開始時に、作業機12の上部ピン46は、下部ピン48よりも前方に配置される。下方から上方への上部フック38の軌道に上部ピン46が配置されていると、上部フック38は、上方への移動時に上部ピン46を掬い上げることができる。掬い上げられた上部ピン46は、上部フック38に引っ掛かる。更に、上部フック38が上方に移動すると、作業機12の下部は、上部ピン46を中心にして前方に回転移動する。すると、各々の下部ピン48は、正面に位置するヒッチフレーム20の下部支持部40に嵌る。このとき、ヒッチフレーム20のロック機構が作動して、各々の下部ピン48は、各々の下部支持部40に保持される。また、トラクタ10のPTO軸22は、ユニバーサルジョイント等を介して、作業機12の入力軸(不図示)に接続される。このようにして、作業機12は、トラクタ10に装着される。
【0024】
[2 軌道取得装置50]
図3及び図4を用いて、トラクタ10に設けられる軌道取得装置50について説明する。トラクタ10に作業機12を装着する際に、ユーザは、ヒッチフレーム20を上方に移動させて、上部フック38で作業機12の上部ピン46を掬い上げる。軌道取得装置50は、ヒッチフレーム20の上部フック38が作業機装着時に移動する軌道を予め取得する。具体的には、軌道取得装置50は、ヒッチフレーム20の上部フック38の先端の3次元の軌道を取得する。本明細書では、「ヒッチフレーム20の上部フック38の先端の3次元の軌道」を、「上部フック38の先端の軌道」又は「上部フック38の軌道」ともいう。
【0025】
[2-1 構成]
図3は、軌道取得装置50の構成図である。軌道取得装置50は、カメラ52と、角度センサ54と、演算装置56とを有する。また、軌道取得装置50は、トラクタマーカ58を有する。トラクタマーカ58は、画像認識処理によってカメラ52との離間距離と姿勢とを認識可能な特定のマークを有する。トラクタマーカ58は、ヒッチフレーム20のうち、上部フック38との相対位置が変わらない箇所に取り付けられる。例えば、トラクタマーカ58は、ヒッチフレーム20に取り付けられる。
【0026】
カメラ52は、例えば単眼カメラである。なお、カメラ52は、ステレオカメラであってもよい。カメラ52は、トラクタマーカ58を撮影可能な位置に配置される。例えば、カメラ52は、トラクタ10のキャビンのルーフ後端に取り付けられる。カメラ52は、撮影によって取得した画像を演算装置56に送信する。
【0027】
角度センサ54は、回転軸を中心とするリフトアーム28の回転角度を検出する。角度センサ54は、検出した回転角度としての角度情報を演算装置56に送信する。
【0028】
演算装置56は、例えばコンピュータである。演算装置56は、演算部60と、記憶部62とを有する。
【0029】
演算部60は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであってもよい。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であってもよい。プロセッサは、記憶部62に記憶されるプログラムを実行することによって各種の処理を実行可能である。演算部60は、情報取得部64と、軌道演算部66と、妥当性判定部68として機能する。複数の処理のうちの少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実行されてもよい。
【0030】
情報取得部64は、演算部60の外部の装置から各種情報を取得する。また、情報取得部64は、取得した各種情報を、記憶部62に記憶させる。例えば、情報取得部64は、カメラ52から送信される画像と角度センサ54から送信される角度情報とを互いに対応付ける。互いに対応付けられた画像と角度情報とは組を形成する。情報取得部64は、画像と角度情報との組を記憶部62に記憶させる。軌道演算部66は、複数の組の角度情報及び画像と、上部フック38の位置とトラクタマーカ58の位置との対応関係とを用いて、リフトアーム28の回転角度に対応した上部フック38の先端の3次元の軌道を算出する。妥当性判定部68は、軌道演算部66によって算出された上部フック38の軌道が妥当であるか否かを判定する。
【0031】
記憶部62は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用される。揮発性メモリは、処理又は算出に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用される。不揮発性メモリは、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶部62の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられてもよい。
【0032】
記憶部62は、座標変換に関する情報を記憶する。本実施形態では図1で示される3つの3次元座標系が使用される。第1座標系C1は、カメラ52のレンズの中心位置を原点とする。第2座標系C2は、トラクタマーカ58中の所定部分の位置(例えばマーカ中心位置)を原点とする。第3座標系C3は、トラクタ10の左右の後輪11の中間位置の真下の地面の位置を原点とする。
【0033】
第1座標系C1の3軸のうち、第1軸(X軸)はカメラ52のレンズの法線と平行し、第2軸(Y軸)はトラクタ10の左右方向と平行し、第3軸(Z軸)は、第1軸及び第2軸と直交する。第2座標系C2の3軸のうち、第1軸(X軸)はトラクタマーカ58のマーカ表示面に直交し、第2軸(Y軸)はトラクタマーカ58の横方向と平行し、第3軸(Z軸)はトラクタマーカ58の縦方向と平行する。第3座標系C3の3軸のうち、第1軸(X軸)はトラクタ10の前後方向と平行し、第2軸(Y軸)はトラクタ10の左右方向と平行し、第3軸(Z軸)は上下方向と平行する。
【0034】
本実施形態では、カメラ52で撮影された画像を用いて、最終的には第3座標系C3における上部フック38の先端の軌道を算出する。但し、カメラ52で撮影された画像から得られる座標は、第1座標系C1の座標である。また、上部フック38の先端の位置は、第2座標系C2において一義的に決まる。こうしたことから、記憶部62は、第1座標系C1における第2座標系C2の原点位置と、第1座標系C1における第2座標系C2の3軸の向きとに基づいて、第1座標系C1における上部フック38の先端位置の座標を算出するための処理方法(第1処理という)を記憶する。また、記憶部62は、第1座標系C1の座標を第3座標系C3の座標に変換するための処理方法(第2処理という)を記憶する。
【0035】
[2-2 軌道取得処理]
図4は、軌道取得処理のフローチャートである。ユーザは、トラクタ10に装着される作業機12の種類に応じて、手動でリンク機構18を調整する。ユーザは、リンク機構18を調整した後に、キャビン内の操作装置を操作して、軌道取得装置50に軌道取得処理を実行させる。なお、以下で説明する軌道取得処理は、トラクタ10への作業機12の装着作業前に行われる。
【0036】
ステップS1において、ユーザは、キャビン内の操作装置を使用して作業機昇降装置16を操作する。作業機昇降装置16は、ユーザの操作に応じて、リフトアーム28を上方又は下方に揺動させる。なお、作業機昇降装置16は、リフトアーム28を上下両方向に交互に揺動させてもよい。リフトアーム28の動作に応じて、ヒッチフレーム20は移動する。
【0037】
ステップS2において、カメラ52は、ヒッチフレーム20に取り付けられたトラクタマーカ58を撮影する。カメラ52は、所定時間が経過する度に、又は、リフトアーム28が所定角度だけ動作する度に、撮影を行う。情報取得部64は、カメラ52によって撮影されたトラクタマーカ58の画像を取得する。
【0038】
ステップS3において、角度センサ54は、リフトアーム28の回転角度を検出する。情報取得部64は、角度センサ54によって検出された回転角度、すなわち角度情報を取得する。
【0039】
ステップS4において、情報取得部64は、ステップS2で取得された画像とステップS3で取得された角度情報とを互いに対応付ける。例えば、情報取得部64は、画像IDを作成し、画像IDと角度情報とを互いに対応付ける。情報取得部64は、画像IDを付した画像を記憶部62に記憶させると共に、画像IDと角度情報との組を記憶部62に記憶させる。記憶部62は、画像IDと角度情報との組によって構成されるテーブルを記憶する。
【0040】
ステップS5において、情報取得部64は、情報(画像と角度情報との組)の取得が終了したか否かを判定する。例えば、情報取得部64は、リフトアーム28の回転角度が所定角度に到達したことを認識した場合に、情報の取得が終了したと判定してもよい。又は、情報取得部64は、リフトアーム28の操作量が所定量になったことを認識した場合に、情報の取得が終了したと判定してもよい。又は、情報取得部64は、所定数の画像を取得したことを認識した場合に、情報の取得が終了したと判定してもよい。又は、情報取得部64は、ユーザの指示に応じて、情報の取得が終了したと判定してもよい。情報の取得が終了した場合(ステップS5:YES)、処理はステップS6に移行する。この段階で、ユーザは、作業機昇降装置16の操作を終了する。一方、情報の取得が終了していない場合(ステップS5:NO)、処理はステップS1に戻る。
【0041】
ステップS6において、軌道演算部66は、記憶部62のテーブルから複数組の角度情報と画像IDとをランダムに読み出す。加えて、軌道演算部66は、読み出した各々の画像IDに対応する画像を読み出す。なお、複数の画像の中には、トラクタマーカ58が写っていない画像が含まれている可能性がある。軌道演算部66は、パターンマッチング等の画像認識処理を行い、読み出した画像にトラクタマーカ58が写っているかを判定してもよい。更に、軌道演算部66は、読み出した画像にトラクタマーカ58が写っていない場合に、その画像を破棄してもよい。
【0042】
ステップS7において、軌道演算部66は、リフトアーム28の回転角度に対応した上部フック38の軌道を算出する。軌道演算部66は、上部フック38の軌道を算出するために、ステップS6で読み出された各々の画像を用いて、次の一連の処理を行う。
【0043】
軌道演算部66は、各々の画像から、第1座標系C1における第2座標系C2の原点位置(トラクタマーカ58の所定部分の位置)の座標と、第1座標系C1における第2座標系C2の3軸の向きとを算出する。軌道演算部66は、座標と向きを算出するために、例えば、既存の3次元ポーズ推定手法[PnP(Perspective-n-Point)等]を利用する。軌道演算部66は、算出された座標及び3軸の向きを使用して第1処理を行い、第1座標系C1における上部フック38の先端位置の座標を算出する。次に、軌道演算部66は、第2処理を行い、第1座標系C1における上部フック38の先端位置の座標を、第3座標系C3における上部フック38の先端位置の座標に変換する。軌道演算部66は、複数の画像の各々から、第3座標系C3における上部フック38の座標を算出する。更に、軌道演算部66は、上部フック38の座標の各々に対して、リフトアーム28の回転角度を対応付ける。
【0044】
次いで、軌道演算部66は、算出された複数の座標を用いて、上部フック38の先端の軌道を算出する。例えば、軌道演算部66は、カーブフィッティング手法を利用することによって、3次元の軌道を算出することができる。軌道演算部66は、以上の処理により、上部フック38の先端の3次元の軌道を取得する。
【0045】
なお、軌道演算部66は別の手法にて上部フック38の軌道を算出してもよい。例えば、軌道演算部66は、トラクタマーカ58の所定部分の軌道を算出し、取得した軌道を上部フック38の軌道に変換してもよい。
【0046】
ステップS8において、妥当性判定部68は、軌道演算部66によって算出された上部フック38の軌道が適切であるかを確認する。すなわち、妥当性判定部68は、上部フック38の軌道の妥当性を判定する。妥当性判定部68は、記憶部62のテーブルから複数組の角度情報と画像IDとを読み出す。ここで、妥当性判定部68は、軌道演算部66によって用いられていない角度情報と画像IDとを読み出す。なお、妥当性判定部68は、複数組でなく1組の角度情報と画像IDとを読み出してもよい。加えて、軌道演算部66は、読み出した各々の画像IDに対応する画像を読み出す。妥当性判定部68は、ステップS7において軌道演算部66が行った手法(3次元ポーズ推定手法等)によって、トラクタマーカ58の所定部位の座標を算出する。この座標を判定用座標と称する。妥当性判定部68は、各々の判定用座標とステップS7において取得された上部フック38の軌道とのユークリッド距離を算出する。更に、妥当性判定部68は、各々のユークリッド距離の平均値を算出する。妥当性判定部68は、平均値と妥当性判定用の閾値とを比較する。閾値は、例えば上部フック38の左右方向の幅程度である。閾値は、記憶部62に予め記憶されている。なお、妥当性判定部68は、各々のユークリッド距離に関して、平均値の代わりに他の統計量、例えば分散、共分散等を算出してもよい。
【0047】
平均値が閾値未満である場合(ステップS9:YES)、妥当性判定部68は、上部フック38の軌道が妥当であると判定する。この場合、処理はステップS10に移行する。一方、平均値が閾値以上である場合(ステップS9:NO)、妥当性判定部68は、上部フック38の軌道が妥当でないと判定する。この場合、処理はステップS6に戻る。なお、2回目以降のステップS6において、軌道演算部66は、ステップS9で平均値が閾値以上であると判定された上部フック38の軌道が再現されることを防止するために、前回以前のステップS6で読み出した組の角度情報と画像IDとは別組の角度情報と画像IDとを読み出す。
【0048】
ステップS10において、軌道演算部66は、ステップS8及びステップS9において妥当と判定された上部フック38の軌道を、記憶部62に記憶させる。以上で軌道取得処理は終了する。
【0049】
以上のようにして、軌道取得装置50は、トラクタ10への作業機12の装着作業前に、リフトアーム28の回転角度に対応した上部フック38の3次元の軌道を取得する。トラクタ10のキャビンには、バックモニタが設けられる。軌道取得装置50は、カメラ52又は他のカメラで撮影された映像をバックモニタに表示させる。軌道取得装置50は、バックモニタに表示される映像に上部フック38の軌道を重畳してもよい。ユーザは、作業機12の上部ピン46がこの軌道上に位置するようにトラクタ10を移動させて、作業機昇降装置16を操作すれば、ヒッチフレーム20の上部フック38は、作業機12の上部ピン46を掬い上げることができる。このように、ユーザがヒッチフレーム20の上部フック38の軌道を予め把握できると、作業機12の装着作業の負担が低減する。つまり、軌道取得装置50によれば、ユーザはトラクタ10への作業機12の装着作業を容易に行うことができる。また、軌道取得装置50によれば、作業機12の装着作業の時間を短縮することができる。
【0050】
[3 装着支援装置70]
図5図8を用いて、トラクタ10に設けられる装着支援装置70について説明する。装着支援装置70は、上部フック38が上部ピン46を掬い上げることができる位置までトラクタ10を誘導する。
【0051】
[3-1 第1実施形態の装着支援装置70]
[3-1-1 装着支援装置70の構成]
図5は、第1実施形態に係る装着支援装置70の構成図である。第1実施形態に係る装着支援装置70は、トラクタ10の移動方向と移動量をユーザに報知することによって、トラクタ10を作業機12の正面位置まで誘導する。装着支援装置70は、軌道取得装置50を含む。このため、装着支援装置70の各構成のうち、軌道取得装置50と同じ構成には軌道取得装置50と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
装着支援装置70は、カメラ52と、角度センサ54と、慣性計測装置72と、演算装置56と、報知装置74とを有する。また、装着支援装置70は、トラクタマーカ58と作業機マーカ76とを有する。トラクタマーカ58と同様に、作業機マーカ76は、画像認識処理によってカメラ52との離間距離と姿勢とを認識可能な特定のマークを有する。作業機マーカ76は、作業機12のうち、上部ピン46との相対位置が変わらない箇所に取り付けられる。例えば、作業機マーカ76はマスト44に取り付けられる。なお、作業機マーカ76は、作業機12の種類毎に定められる。
【0053】
慣性計測装置72は、3軸のジャイロと3方向の加速度センサとを有する。慣性計測装置72は、トラクタ10の加速度と旋回角速度とを計測する。慣性計測装置72は、計測データを演算装置56に送信する。
【0054】
演算部60は、情報取得部64と、軌道演算部66と、妥当性判定部68と、動作演算部78と、報知制御部80と、位置判定部82として機能する。動作演算部78は、軌道演算部66によって算出された軌道の一部と作業機12の上部ピン46の位置とを一致させるために各種の算出を行う。報知制御部80は、報知装置74に報知指示を出力する。位置判定部82は、トラクタ10が目標位置に到達したか否かを判定する。
【0055】
記憶部62は、座標変換に関する情報を記憶する。本実施形態では図1で示される5つの3次元座標系が使用される。第1座標系C1~第3座標系C3は、軌道取得装置50が使用する3つの座標系と同じである。第4座標系C4は、作業機マーカ76中の所定部分の位置(例えばマーカ中心位置)を原点とする。第5座標系C5は、上部ピン46の中心部分(作業機12の左右方向における中心部分)の真下の地面の位置、言い換えると上部ピン46の中心部分を地面に投影した位置を原点とする。
【0056】
作業機12が直立した状態において、第4座標系C4の3軸のうち、第1軸(X軸)は作業機マーカ76のマーカ表示面に直交し、第2軸(Y軸)は作業機マーカ76の横方向と平行し、第3軸(Z軸)は作業機マーカ76の縦方向と平行する。第5座標系C5の3軸のうち、第1軸(X軸)は作業機12の前後方向と平行し、第2軸(Y軸)は作業機12の左右方向と平行し、第3軸(Z軸)は上下方向と平行する。
【0057】
第1実施形態では、カメラ52で撮影された画像を用いて、最終的には第5座標系C5におけるトラクタ10の目標位置と、トラクタ10の向きとを算出する。記憶部62は、第1座標系C1における第4座標系C4の原点位置と、第1座標系C1における第4座標系C4の3軸の向きとに基づいて、第1座標系C1における上部ピン46の中心位置の座標と、上部ピン46の姿勢とを算出するための処理方法(第3処理という)を記憶する。また、記憶部62は、第4座標系C4の原点位置から第5座標系C5の原点位置を算出するための情報として、直立した作業機12における上部ピン46の高さを記憶する。
【0058】
報知装置74は、例えば、ディスプレイ等を含む表示装置と、スピーカ等を含む音響装置のいずれか一方又は両方を有する。報知装置74は、報知制御部80が出力する報知指示に応じて報知する。
【0059】
[3-1-2 誘導処理]
図6は、第1実施形態の誘導処理のフローチャートである。ユーザは、キャビン内の操作装置を操作して、装着支援装置70に誘導処理を実行させる。
【0060】
ステップS11において、装着支援装置70は、図4で示される一連の軌道取得処理を実行する。これによって、軌道演算部66は、第3座標系C3におけるヒッチフレーム20の上部フック38の先端の3次元の軌道を取得する。
【0061】
ステップS12において、カメラ52は、マスト44に取り付けられた作業機マーカ76を撮影する。情報取得部64は、カメラ52によって撮影された画像を取得する。なお、ユーザは、ステップS12の前に、作業機マーカ76がカメラ52の画角内に入るように、トラクタ10を作業機12に近づけておくとよい。
【0062】
ステップS13において、動作演算部78は、ステップS12で取得された画像を用いて、第4座標系C4の原点位置、すなわち作業機マーカ76の所定部分の座標を算出する。例えば、動作演算部78は、図4のステップS7において軌道演算部66が行った手法(3次元ポーズ推定手法等)によって、第1座標系C1における第4座標系C4の原点位置(作業機マーカ76の所定部分の座標)の座標と、第1座標系C1における第4座標系C4の3軸の向きとを算出する。
【0063】
ステップS14において、動作演算部78は、第5座標系C5におけるトラクタ10の現在位置と、トラクタ10の向きとを算出する。動作演算部78は、次の処理を行う。
【0064】
動作演算部78は、ステップS13で算出された座標及び3軸の向きを使用して第3処理を行い、第1座標系C1における上部ピン46の中心位置の座標と、上部ピン46の姿勢とを算出する。次に、動作演算部78は、第4座標系C4の原点の座標と、上部ピン46の高さとから、第1座標系C1における第5座標系C5の原点の座標と、第5座標系C5の3軸の向きとを算出する。次に、動作演算部78は、第2処理を行い、第1座標系C1における第5座標系C5の原点の座標を、第3座標系C3の座標に変換する。これにより、第5座標系C5の原点が、第3座標系C3の座標として定められる。次に、動作演算部78は、第3座標系C3の原点の座標と第5座標系C5の原点の座標とに基づいて、第3座標系C3の原点を、第5座標系C5の座標として定める。また、動作演算部78は、第5座標系C5における第3座標系C3の3軸の向きを算出する。以上の処理により、作業機12を基準とするトラクタ10の現在位置と、トラクタ10の向きとが特定される。
【0065】
ステップS15において、動作演算部78は、トラクタ10が到達すべき目標位置を設定する。本実施形態において、動作演算部78は、トラクタ10のヒッチフレーム20の上部フック38が作業機12の上部ピン46を掬い上げることができる位置にトラクタ10を移動させるために、作業機12の第5座標系C5におけるトラクタ10の目標位置を設定する。目標位置において、トラクタ10の前後方向と、作業機12の前後方向は平行する。動作演算部78は、目標位置を設定するために、次の処理を行う。
【0066】
第3座標系C3の原点と第5座標系C5の原点は共に地面に位置する。つまり、第3座標系C3における高さ方向の座標と第5座標系C5における高さ方向の座標は、互いに同じである。動作演算部78は、第3座標系C3における上部フック38の先端の軌道から、上部ピン46の高さと一致する座標を取得する。これは、上部フック38が上部ピン46を掬い上げる位置の座標であり、第3座標系C3の座標である。この位置をフック位置と称する。フック位置の真下に第5座標系C5の原点が位置する。つまり、フック位置の前後方向の座標と左右方向の座標とは、第5座標系C5の原点と同じである。動作演算部78は、第3座標系C3におけるフック位置の前後方向の座標と左右方向の座標とから、第5座標系C5における第3座標系C3の原点の前後方向の座標と左右方向の座標とを算出する。動作演算部78は、この座標を、第5座標系C5における目標位置とする。
【0067】
ステップS16において、動作演算部78は、トラクタ10の移動方向及び移動量を算出する。ここで、動作演算部78は、トラクタ10を現在位置から目標位置まで誘導するための移動方向及び移動量を算出する。動作演算部78は、ステップS14で算出したトラクタ10の現在位置を、トラクタ10の出発位置とする。更に、動作演算部78は、慣性計測装置72から取得した計測データを用いてトラクタ10の実移動量と実移動方向を算出し、トラクタ10の現在位置及びトラクタ10の現在の向きとを更新し続ける。
【0068】
ステップS17において、報知制御部80は、ステップS16で算出したトラクタ10の移動方向及び移動量を、ステアリングの操作方向及び操作量に変換する。報知制御部80は、ステアリングの操作方向及び操作量を、ユーザに報知する報知指示として報知装置74に出力する。報知装置74は、報知指示に従いステアリングの操作方向及び操作量をユーザに報知する。ユーザは、報知装置74の報知内容に従いトラクタ10を運転することによって、トラクタ10を目標位置に向けて走行させることができる。
【0069】
ユーザは、トラクタ10を目標位置に向かって走行させる場合に、ヒッチフレーム20の高さ位置を調整する。具体的には、ユーザは、ヒッチフレーム20の上部フック38が作業機12の上部ピン46よりも下方に位置するように、リフトアーム28の回転角度を調整する。これにより、トラクタ10が作業機12に接近しても、上部フック38は上部ピン46に当たらない。演算装置56がリフトアーム28の回転角度の調整を行ってもよい。リフトアーム28の回転角度は、記憶部62に記憶されてもよい。また、リフトアーム28の回転角度は、作業機12の種類に応じて定められてもよい。
【0070】
ステップS18において、位置判定部82は、トラクタ10の現在位置と目標位置とを比較する。また、位置判定部82は、トラクタ10の現在の向きと目標位置におけるトラクタ10の目標向きとを比較する。トラクタ10の現在位置と目標位置とが一致し、且つ、トラクタ10の現在の向きとトラクタ10の目標向きとが一致する場合(ステップS18:YES)、位置判定部82は、トラクタ10が目標位置に到達したと判定する。この場合、処理はステップS19に移行する。一方、トラクタ10の現在位置と目標位置とが一致しない場合、又は、トラクタ10の現在の向きとトラクタ10の目標向きとが一致しない場合(ステップS18:NO)、位置判定部82は、トラクタ10が目標位置に到達していないと判定する。この場合、処理はステップS16に戻る。
【0071】
ステップS19において、報知制御部80は、目標位置に到達したことをユーザに報知する報知指示を報知装置74に出力する。報知装置74は、報知指示に従いトラクタ10が目標位置に到達したことをユーザに報知する。この段階で、ユーザはトラクタ10を停止させる。以上で誘導処理は終了する。
【0072】
誘導処理が終了すると、ユーザは、作業機昇降装置16を操作して、トラクタ10への作業機12の装着作業を行う。演算装置56がトラクタ10への作業機12の装着作業を行ってもよい。装着作業におけるリフトアーム28の回転角度は、記憶部62に記憶されてもよい。また、装着作業におけるリフトアーム28の回転角度は、作業機12の種類に応じて定められてもよい。
【0073】
以上のようにして、装着支援装置70は、トラクタ10を作業機12の正面に誘導する。装着支援装置70によれば、ユーザはトラクタ10への作業機12の装着作業を容易に行うことができる。また、軌道取得装置50によれば、作業機12の装着作業の時間を短縮することができる。
【0074】
[3-2 第2実施形態の装着支援装置70]
[3-2-1 装着支援装置70の構成]
図7は、第2実施形態に係る装着支援装置70の構成図である。第2実施形態に係る装着支援装置70は、トラクタ10を自律走行させることによって、トラクタ10を作業機12の正面位置まで誘導する。第1実施形態と同様に、装着支援装置70は、軌道取得装置50を含む。このため、装着支援装置70の各構成のうち、軌道取得装置50と同じ構成には軌道取得装置50と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同じ構成には第1実施形態と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
装着支援装置70は、カメラ52と、角度センサ54と、慣性計測装置72と、演算装置56と、操舵装置84と、駆動装置86と、制動装置88とを有する。
【0076】
演算部60は、情報取得部64と、軌道演算部66と、妥当性判定部68と、動作演算部78と、走行制御部90と、位置判定部82として機能する。走行制御部90は、操舵装置84にトラクタ10の操舵指示を出力する。また、走行制御部90は、駆動装置86にトラクタ10の加速指示を出力する。また、走行制御部90は、制動装置88にトラクタ10の減速停止指示を出力する。
【0077】
操舵装置84は、走行制御部90が出力する操舵指示に応じてトラクタ10を操舵する。駆動装置86は、走行制御部90が出力する加速指示に応じてトラクタ10を加速させる。制動装置88は、走行制御部90が出力する減速停止指示に応じてトラクタ10を減速又は停止させる。
【0078】
[3-2-2 誘導処理]
図8は、第2実施形態の誘導処理のフローチャートである。ユーザは、キャビン内の操作装置を操作して、装着支援装置70に誘導処理を実行させる。図8で示されるステップS21~ステップS26の処理は、図6で示されるステップS11~ステップS16の処理と同じである。以下では、ステップS27以降の処理を説明する。
【0079】
ステップS27において、走行制御部90は、ステップS26で算出したトラクタ10の移動方向及び移動量に基づいて、トラクタ10の操舵量と加速度と減速度とを演算する。走行制御部90は、操舵装置84に操舵量に応じた操舵指示を出力する。また、走行制御部90は、駆動装置86に加速度に応じた加速指示を出力する。また、走行制御部90は、制動装置88に減速度に応じた減速指示又は停止指示を出力する。これにより、トラクタ10は、目標位置に向けて自律走行することができる。
【0080】
ステップS28の処理は、ステップS18の処理と同じである。トラクタ10の現在位置と目標位置とが一致し、且つ、トラクタ10の現在の向きとトラクタ10の目標向きとが一致する場合(ステップS28:YES)、処理はステップS29に移行する。一方、トラクタ10の現在位置と目標位置とが一致しない場合、又は、トラクタ10の現在の向きとトラクタ10の目標向きとが一致しない場合(ステップS28:NO)、処理はステップS26に戻る。
【0081】
ステップS29において、走行制御部90は、制動装置88に停止指示を出力する。制動装置88は、停止指示に応じてトラクタ10を目標位置で停止させる。以上で誘導処理は終了する。
【0082】
誘導処理が終了すると、ユーザは、作業機昇降装置16を操作して、トラクタ10への作業機12の装着作業を行う。
【0083】
以上のようにして、装着支援装置70は、トラクタ10を作業機12の正面に誘導する。装着支援装置70によれば、ユーザはトラクタ10への作業機12の装着作業を容易に行うことができる。また、軌道取得装置50によれば、作業機12の装着作業の時間を短縮することができる。
【0084】
[3-3 他の実施形態の装着支援装置70]
第1、第2実施形態では、トラクタ10に特定の作業機12が装着される。これに代わり、トラクタ10に不特定の作業機12が装着されてもよい。例えば、記憶部62は、作業機マーカ76の特徴量と、作業機12の特有の情報(上部ピン46の高さ、幅)とを関連付けるテーブルを記憶してもよい。この場合、動作演算部78は、画像認識によって作業機マーカ76の特徴量を算出し、その特徴量に対応する作業機12の特有の情報を特定してもよい。
【0085】
トラクタ10の外部にあるサーバが、作業機マーカ76の特徴量と、作業機12の特有の情報とを関連付けるテーブルを記憶してもよい。この場合、トラクタ10とサーバとが相互に無線通信可能であるとよい。
【0086】
[4 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0087】
本発明の第1の態様は、作業機(12)をトラクタ(10)に装着するために前記トラクタのリフトアーム(28)を動作させることによって前記トラクタに取り付けられたヒッチフレーム(20)の上部フック(38)で前記作業機の上部ピン(46)を掬い上げるときの前記上部フックの軌道を取得する軌道取得装置(50)であって、前記トラクタに取り付けられており、前記リフトアームの動作によって移動する所定部位(58)を撮影するカメラ(52)と、前記上部フックの位置と前記所定部位の位置とを対応付けた対応関係を予め記憶する記憶部(62)と、前記リフトアームが上下方向に動作している間に、前記リフトアームの複数の高さ位置の各々に対応する角度情報を取得すると共に、前記リフトアームが各々の高さに位置するときに前記カメラによって撮影された前記所定部位を含む画像を取得し、高さ位置毎に前記角度情報と前記画像とを対応付ける情報取得部(64)と、前記情報取得部によって対応付けられた複数の組の前記角度情報及び前記画像と前記対応関係とを用いて前記リフトアームの回転角度に対応した前記上部フックの3次元の前記軌道を算出する軌道演算部(66)とを備える。
【0088】
第1の態様において、軌道取得装置は、前記軌道が妥当であるか否かを判定する妥当性判定部(68)を更に備え、前記軌道演算部は、前記情報取得部によって対応付けられた複数の組のうち、一部の複数の組の前記角度情報及び前記画像と前記対応関係とを用いて前記上部フックの3次元の前記軌道を算出し、前記妥当性判定部は、前記軌道演算部によって用いられていない1組以上の前記角度情報及び前記画像に基づいて定められる前記上部フックの3次元の位置が、前記軌道から所定距離離れた範囲内にあるか否かを判定し、前記上部フックの3次元の位置が前記範囲内にある場合に、前記軌道が妥当であると判定してもよい。
【0089】
本発明の第2の態様は、軌道取得装置によって取得された前記軌道を用いて前記作業機を前記トラクタに装着する作業を支援する装着支援装置(70)であって、前記トラクタの移動方向及び移動量を算出する動作演算部(78)と、前記動作演算部によって算出された前記移動方向及び前記移動量を報知装置(74)に報知させる報知制御部(80)とを備え、前記カメラは、前記作業機が有する所定の作業機側部位(76)を撮影し、前記記憶部は、前記作業機側部位の位置と前記作業機の各部位の位置とを対応付けた作業機側対応関係を予め記憶し、前記動作演算部は、前記カメラによって撮影される前記作業機側部位を含む画像と前記作業機側対応関係とを用いて、前記上部ピンを含む前記作業機の各部位の3次元位置を算出し、3次元の前記軌道の一部と前記上部ピンの3次元位置とを一致させるために必要な前記移動方向及び前記移動量を算出する。
【0090】
本発明の第3の態様は、軌道取得装置によって取得された前記軌道を用いて前記作業機を前記トラクタに装着する作業を支援する装着支援装置であって、前記トラクタの移動方向及び移動量を算出する動作演算部と、前記動作演算部によって算出された前記移動方向及び前記移動量に基づいて前記トラクタを自律走行させる走行制御部(90)とを備え、前記カメラは、前記作業機が有する所定の作業機側部位を撮影し、前記記憶部は、前記作業機側部位の位置と前記作業機の各部位の位置とを対応付けた作業機側対応関係を予め記憶し、前記動作演算部は、前記カメラによって撮影される前記作業機側部位を含む画像と前記作業機側対応関係とを用いて、前記上部ピンを含む前記作業機の各部位の3次元位置を算出し、3次元の前記軌道の一部と前記上部ピンの3次元位置とを一致させるために必要な前記移動方向及び前記移動量を算出する。
【符号の説明】
【0091】
10…トラクタ 12…作業機
28…リフトアーム 38…上部フック
46…上部ピン 50…軌道取得装置
52…カメラ 58…トラクタマーカ(所定部位)
62…記憶部 64…情報取得部
66…軌道演算部 68…妥当性判定部
70…装着支援装置 74…報知装置
76…作業機マーカ(作業機側部位) 78…動作演算部
80…報知制御部 90…走行制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8