(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178022
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】画像形成装置、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231207BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091048
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】井上 孔佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英明
【テーマコード(参考)】
2C056
3F048
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB13
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB49
2C056EC06
2C056EC28
2C056FA14
2C056HA30
2C056HA46
2C056KD06
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA11
3F048BB09
3F048BB10
3F048CA00
3F048DA06
3F048DB17
3F048DC13
3F048EB22
(57)【要約】
【課題】記録媒体の浮き上がりを精度よく検出すること。
【解決手段】画像形成装置は、記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、投光部及び受光部を有し、投光部から出射され、搬送経路の上を通った光の受光部による受光結果に基づき、記録媒体の浮き上がりを検出する浮き上がり検出部と、光の光路内の温度を検出する温度検出部と、投光部からの光の出射方向を変化させる可変機構と、温度検出部によって検出された温度に基づいて、可変機構の動作を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、
投光部及び受光部を有し、前記投光部から出射され、前記搬送経路の上を通った光の前記受光部による受光結果に基づき、前記記録媒体の浮き上がりを検出する浮き上がり検出部と、
前記光の光路内の温度を検出する温度検出部と、
前記投光部からの前記光の出射方向を変化させる可変機構と、
前記温度検出部によって検出された前記温度に基づいて、前記可変機構の動作を制御する制御部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
装置内部の空間温度を検出する温度センサを更に有し、
前記温度検出部は、前記装置内部の空間温度に基づいて、前記光路内の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送部によって搬送された前記記録媒体の温度を検出する温度センサを更に有し、
前記記録媒体の温度に基づいて、前記光路内の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体の印刷枚数を検出する印刷枚数検出部を更に有し、
前記記録媒体の印刷枚数に基づいて、前記光路内の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送部は、前記記録媒体を外周面に保持しながら回転するドラムを有し、
前記浮き上がり検出部は、前記記録媒体の前記外周面からの浮き上がりを検出することを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
投光部から出射され、記録媒体の搬送経路の上を通った光の受光部による受光結果に基づき、前記記録媒体の浮き上がりを検出する媒体浮き検知システムの制御装置であって、
前記光の光路内の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された前記温度に基づいて、前記投光部からの前記光の出射方向を変化させる可変機構の動作を制御する制御部と、を備えることを特徴とする媒体浮き検知システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載の記録装置は、レーザ光を出射する投光部と、レーザ光を受光する受光部と、を備える。投光部は、搬送経路上を通るようにレーザ光を投光する。記録装置は、記録媒体がレーザ光を遮ったことを検出した場合に、記録媒体の浮き上がりを検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2に記載の記録装置は、光路内に温度差が発生した場合に、光が曲がることにより、記録媒体の浮き上がりを精度よく検出できないおそれがある。
【0004】
本発明は、記録媒体の浮き上がりを精度よく検出可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、投光部及び受光部を有し、投光部から出射され、搬送経路の上を通った光の受光部による受光結果に基づき、記録媒体の浮き上がりを検出する浮き上がり検出部と、光の光路内の温度を検出する温度検出部と、投光部からの光の出射方向を変化させる可変機構と、温度検出部によって検出された温度に基づいて、可変機構の動作を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、光路内の温度に基づいて、投光部から出射する光の出射方向を傾斜させることにより、光が曲がることによる影響を抑制できる。そのため、記録媒体の浮き上がりを精度よく検出可能な画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る画像形成装置が備えるインクジェット記録モジュールの構成を示す概略図である。
【
図3】記録媒体浮き検知センサの配置を示す概略図である。
【
図4】記録媒体浮き検知センサを示す概略図である。
【
図5】通常時におけるレーザ光の分布を示す図である。
【
図6】温度差が発生した場合のレーザ光の分布を示す図である。
【
図7】投光部からのレーザ光の出射方向を変化させる可変機構を示す概略図である。
【
図9】レーザ光の光路内における温度差と、レーザ光の傾き量との関係を示す表である。
【
図10】レーザ光の到達位置とレーザ光の高さ位置との関係を示すグラフである。
【
図11】一実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図12】記録媒体浮き検知システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図13】一実施形態に係る画像形成装置の機能ブロック図である。
【
図14】記録媒体浮き検知システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】変形例1に係る記録媒体浮き検知システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図16】変形例1に係る記録媒体浮き検知システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、各図において、直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を記載する場合がある。X軸方向は、記録媒体PPの搬送方向に沿う。Y軸方向は、搬送方向に交差する方向であり、記録媒体PPの幅方向に沿う。Z軸方向は、記録媒体PPの厚さ方向に沿う。
【0009】
<画像形成装置200の全体構成>
図1は、一実施形態に係る画像形成装置200の全体構成を示す図である。
図1に示す画像形成装置200は、オンデマンド方式のライン走査型インクジェット記録装置である。
図1に示すように、一実施形態に係る画像形成装置200は、画像形成部210、給紙部220、レジスト調整部230、乾燥部240、記録媒体反転部250、および排紙部290を備える。
【0010】
給紙部220は、給紙スタック221に積載された記録媒体PPを、エアー分離部222によって1枚ずつピックアップし、レジスト調整部230へ送出する。レジスト調整部230は、給紙部220から送出された記録媒体PPに対し、レジストローラ対231によって、傾きの補正を行う。そして、レジスト調整部230は、傾きの補正が行われた後の記録媒体PPを、画像形成部210へ送出する。
【0011】
画像形成部210は、記録媒体PPに対してインクを吐出するヘッドモジュール20を備える。ヘッドモジュール20は、ヘッドモジュール20K,20C,20M,20Y,20S,20Pを含む。ヘッドモジュール20K,20C,20M,20Y,20S,20Pを区別しない場合には、ヘッドモジュール20と記載する。
【0012】
複数のヘッドモジュール20は、ドラム10の外周面10aに沿って配置されている。ヘッドモジュール20は、ドラム10の径方向において、外周面10aと離間している。記録媒体PPは、ドラム10の外周面10a上に配置され、ドラム10の回転に伴ってドラム10の周方向に搬送される。
【0013】
ドラム10の外周面10aには、記録媒体PPを保持する記録媒体グリッパ11が設けられている。画像形成部210では、記録媒体グリッパ11が記録媒体PPの先端を挟んだ状態で、ドラム10が回転することにより、記録媒体PPをヘッドモジュール20に対向する位置へ搬送する。記録媒体PPは、ドラム10の外周面10aとヘッドモジュール20との間に配置される。ドラム10は、記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送部の一例である。
【0014】
ヘッドモジュール20の各々は、記録媒体PPに対してインクを吐出することにより、記録媒体PPの表面に画像を形成する。画像形成部210は、画像が形成された後の記録媒体W1を、乾燥部240へ送出する。
【0015】
乾燥部240は、記録媒体PPを乾燥するヒーター241を備える。記録媒体PPは、搬送されながら、ヒーター241によって加熱される。乾燥部240は、乾燥された後の記録媒体PPを排紙部290へ送出する。両面印刷を行う場合には、乾燥部240は、記録媒体PPを記録媒体反転部250へ送出する。
【0016】
記録媒体反転部250は、記録媒体PPを反転させる記録媒体反転機構251、及び反転された記録媒体PPを搬送する反転搬送部252を備える。記録媒体反転部250は、乾燥部240から送出された記録媒体PPを、記録媒体反転機構251によって反転し、反転搬送部252によって、画像形成部210へ送出する。画像形成部210の内部に設けられたレジストローラ253は、記録媒体反転部250から送出された記録媒体W1の傾きを補正し、ドラム10へ搬送する。
【0017】
排紙部290は、乾燥部240から送出された複数の記録媒体PPを、互いに揃えられた状態で積載する。
【0018】
<ヘッドモジュール20の構成>
次に、
図2を参照して、ヘッドモジュール20について説明する。
図2に示されるように、ヘッドモジュール20は、駆動制御基板21、ケーブル22、及びインクジェット記録ヘッド23を備える。以下、「インクジェット記録ヘッド」を「記録ヘッド」と省略する場合がある。ヘッドモジュール20は、複数の記録ヘッド23を備える。複数の記録ヘッド23は、Y軸方向に並べられてラインヘッドを構成する。
【0019】
駆動制御基板21は、駆動制御部25、駆動波形生成部26、及び記憶部24を搭載する。駆動制御部25は、インクを吐出するための駆動素子を制御する。駆動波形生成部26は、駆動素子に供給されるパルス信号を生成する。記憶部24は、各種情報を記憶する。
【0020】
ケーブル22は、コネクタ27,28を有する。コネクタ27は、駆動制御基板21に接続される。コネクタ28は、記録ヘッド23に接続される。ケーブル22は、駆動制御基板21と記録ヘッド23との間で、アナログ信号及びデジタル信号を伝送する。
【0021】
記録ヘッド23は、残留振動検知モジュール29、ヘッド基板30、ヘッド内インクタンク31、ヘッド駆動IC基板32、及び剛性プレート33を有する。記録ヘッド23は、インクが流れるインク流路、インクを吐出するための駆動素子、インクに圧力を付与する圧力室、インクを吐出するノズルが形成されたノズルプレート等を含む。駆動素子は、例えば圧電素子である。ヘッド内インクタンク31内のインクは、インク流路を流れて圧力室に供給される。圧力室内のインクは、駆動素子が駆動することにより、圧力が上昇し、ノズルから吐出される。ノズルから吐出されたインク滴は、記録媒体上に着弾する。
【0022】
残留振動検知モジュール29は、記録ヘッド23内のインク流路におけるインクの残留振動を検知する。ヘッド基板30は、駆動制御基板21と電気的に接続され、駆動波形を受信する。ヘッド駆動IC基板32は、ヘッド基板30と電気的に接続されている。ヘッド駆動IC基板32は、駆動波形に従って、駆動素子を駆動させる。
【0023】
剛性プレート33は、ヘッド駆動IC基板32の下方に配置され、記録ヘッド23の剛性を高める。剛性プレート33は、記録ヘッド23の筐体の一部を構成する。剛性プレート33によって囲まれた領域内に、圧力室、駆動素子、及びノズル等が配置されている。ノズルから吐出されたインクは、Z軸方向に沿って飛翔して、記録媒体PP上にインクを付着させる。
【0024】
なお、本実施形態の画像形成装置200は、オンデマンド方式のライン走査型インクジェット記録装置である。そのため、ヘッドモジュール20の複数の記録ヘッド23は、記録媒体PPの搬送方向と直交する方向に並べられて設けられている。画像形成装置200は、ライン走査型インクジェット記録装置への適用に限らず、その他の方式を用いた記録装置にも適用可能である。その他の方式の記録装置として、例えば、記録ヘッドが、主走査方向に移動しながら、記録媒体の表面に画像を形成するシリアル走査型プリンタがある。
【0025】
<記録媒体浮き検知システム>
次に、
図3~
図6を参照して、記録媒体浮き検知システム40について説明する。
図3は、記録媒体浮き検知センサの配置を示す概略図である。
図4は、記録媒体浮き検知センサを示す概略図である。画像形成装置200は、記録媒体PPの搬送経路からの浮き上がりを検知する記録媒体浮き検知システム40を備える。
図3に示されるように、記録媒体浮き検知システム40は、記録媒体PPの搬送経路において、ヘッドモジュール20の上流に配置されている。記録媒体浮き検知システム40は、ドラム10の径方向において、ドラム10の外周面10aに近い位置に配置されている。搬送経路の一部は、ドラム10の外周面10aに沿って形成される。記録媒体PPは、ドラム10の回転に伴い、ドラム10の周方向に搬送される。
【0026】
図4に示されるように、記録媒体浮き検知システム40は、記録媒体浮き検知センサ41を備える。記録媒体浮き検知センサ41は、レーザ光44を投光する投光部42と、レーザ光44を受光する受光部43と有する。投光部42は、レーザ光44を発光する発光素子を含み、受光部43は、レーザ光44を受光する受光素子を含む。投光部42は、例えばY軸方向に沿ってレーザ光44を投光する。レーザ光44は、ドラム10の外周面10aの上方を通過する。外周面10aは、記録媒体PPの搬送経路に沿う搬送面を形成する。レーザ光44は、Z軸方向において所定の幅を有する。なお、
図4では、記録媒体PPの搬送方向が、X軸方向に沿って直線的に図示されているが、実際には、記録媒体PPの搬送方向は、ドラム10の外周面10aに沿って湾曲している。
【0027】
受光部43は、投光部42から出射されたレーザ光44を受光する。受光部43は、受光したレーザ光44の受光量に基づく電圧値を出力する。記録媒体浮き検知システム40では、受光量に基づく電圧値から記録媒体PPのZ軸方向における高さ位置を検出できる。記録媒体PPによってレーザ光44が遮蔽されることにより、記録媒体PPのZ軸方向における位置に応じて、受光部43によって受光されるレーザ光44の受光量が変化する。Z軸方向において、レーザ光44と記録媒体PPとの重なりが大きい場合には、レーザ光44と記録媒体PPとの重なりが小さい場合と比較して、受光部43による受光量は小さくなる。なお、記録媒体浮き検知センサ41は、記録媒体PPの浮き上がりを検出する浮き上がり検出部の一例である。「記録媒体PPの浮き上がり」は、例えば、ドラム10の外周面10aからの記録媒体PPの浮き上がりである。「受光量に基づく電圧値」は、受光部による受光結果の一例である。
【0028】
次に、
図5を参照して、理想的な場合のレーザ光の分布について説明する。
図5は、理想的な場合におけるレーザ光の分布を示す図である。なお、理想的な場合とは、レーザ光の光路において、温度差の影響が少なく、レーザ光44がY軸方向に沿って直進する場合である。レーザ光44は、Z軸方向に所定の幅を有する。なお、Z軸方向において、ドラム10の外周面10aから離れる方向を上下方向として説明する。高さは、Z軸方向に沿う。ドラム10の径方向において、外周面10aに近い方が下であり、外周面10aから離れる方が上とする。
【0029】
理想的な場合、レーザ光44は、Y軸方向に対して傾斜していない。記録媒体浮き検知システム40では、受光部43から出力した電圧値に基づいて、記録媒体PPのZ軸方向における検出高さh1を算出できる。検出高さh1は、受光部43によってレーザ光44が受光されない高さの範囲でもよい。受光部43は、受光素子の下端から、記録媒体PPと重なる範囲について、レーザ光44を受光できない。この受光できない範囲が検出高さh1となる。
【0030】
次に、
図6を参照して、レーザ光44の光路内に温度差が発生した場合のレーザ光の分布について説明する。
図6は、光路内に温度差が発生した場合のレーザ光の分布を示す図である。
図6に示されるように、レーザ光44の光路内に温度差が発生する場合がある。
図6では、Z軸方向において温度差が生じ、温度分布が生じている。例えば、ドラム10の外周面10aに近い位置A2の温度T2は、外周面10aから離れた位置A1の温度T1よりも高い(T2>T1)。
【0031】
このように、レーザ光44の光路内に温度差が発生した場合、レーザ光44は、低温側に曲がる。レーザ光44は、高温側の外周面10aから離れるように低温側へ曲がる。
図6では、レーザ光44が曲がり、Z軸方向において、外周面10aから離れるように傾斜する。
図6では、傾斜して進行するレーザ光44aが実線で示され、傾斜しないで理想的に進行した場合の記録媒体PP上を通過するレーザ光44の下端44bを破線で示す。レーザ光44が理想的に進行した場合の検出高さh1は、記録媒体PP上を通過するレーザ光44の下端44bの高さ位置に相当する。
【0032】
レーザ光44が傾斜した場合の検出高さh2は、検出高さh1よりも高い位置となる。この場合、受光部43は、実際の記録媒体PPの検出高さh1より高い検出高さh2に基づいて、電圧値を出力することになる。記録媒体PP上を通過したレーザ光44は、例えば、上方に湾曲することにより、受光部43は、検出高さh1より高い検出高さh2に対応する電圧値を出力する。そのため、
図5及び
図6に示す場合、記録媒体PPの高さは同じであるが、
図6の場合には、検出高さh2が高いので、記録媒体PPが所定の搬送経路よりも高い位置に存在していると認識される場合がある。記録媒体浮き検知センサ41は、記録媒体PPの浮き上がりを誤検出する場合がある。
【0033】
なお、「光路内の温度」とは、光が通る光路における温度であり、光路が形成される空間の温度でもよい。例えば、光路が形成される空間の温度を検出して、光路内の温度を検出してもよく、光路に隣接する空間の温度を検出して、光路内の温度を検出してもよく、光路が形成される空間を通過した記録媒体の温度を検出して、光路内の温度を検出してもよく、光路に隣接するドラム10の外周面10aの温度を検出して、光路内の温度を検出してもよい。また、光路内の温度に影響を与えるその他の要素を検出して、光路内の温度を検出してもよい。
【0034】
<可変機構>
次に、
図7を参照して、レーザ光の出射方向を傾斜させる可変機構60について説明する。
図7は、レーザ光の出射方向を傾斜させる傾斜機構を示す概略図である。記録媒体浮き検知システム40は、レーザ光44の出射方向を傾斜させる可変機構60を備える。
【0035】
可変機構60は、投光部42を支持する支持台61、支持台61の姿勢を変化させるウォーム歯車62、回転軸63、及びモータ64を備える。投光部42は、支持台61の上に載置されて、支持台61に固定されている。
【0036】
ウォーム歯車62は、回転軸63に設けられたウォーム62aと、ウォーム62aとかみ合うウォームホイール62bとを有する。ウォームホイール62bは、例えば支持台61の底面に固定されている。回転軸63は、Y軸方向に延在する。モータ64は、回転軸63を回転駆動する。モータ64は、例えばステッピングモータでもよい。回転軸63を回転させることにより、ウォーム62aとかみ合うウォームホイール62bがX軸方向に沿う軸線回りに回転移動する。これにより、支持台61及び投光部42は、ウォームホイール62bと一体として回転移動する。このように、投光部42の姿勢を変化させることにより、レーザ光44の出射方向を調整できる。可変機構60は、レーザ光44の出射方向をY軸方向に対して傾斜させることができる。
【0037】
<温度差と傾き量の関係>
次に、
図8及び
図9を参照して、レーザ光44の光路内における温度差と、レーザ光44の傾き量θとの関係について説明する。
図8は、レーザ光の傾き量を示す図である。
図9は、レーザ光の光路内における温度差と、レーザ光の傾き量との関係を示す表である。
図8に示されるように、レーザ光44の傾き量θは、Y軸方向に沿って延在する基準線LAに対するレーザ光44の傾斜角である。例えば、基準線LAに対して下向きに傾斜した場合の傾き量θをプラスとする。レーザ光44の傾き量θとして、投光部42の傾き量を採用してもよい。基準線LAに対して下向きとは、ドラム10の外周面10aに近い方をいう。
【0038】
図9に示される表では、温度差ΔTと傾き量θとの関係が示されている。温度差ΔTは、例えば、
図6に示される高温側の温度T2と、低温側の温度T1との差である(ΔT=T2-T1)。
【0039】
記録媒体浮き検知システム40は、温度差ΔTが0度である場合に、傾き量θを0°(deg)にする。記録媒体浮き検知システム40は、温度差ΔTが2℃未満である場合に、傾き量θを+1°とすることができる。記録媒体浮き検知システム40は、温度差ΔTが2℃以上、8℃未満である場合に、傾き量θを+2°とすることができる。記録媒体浮き検知システム40は、温度差ΔTが8℃以上、14℃未満である場合に、傾き量θを+3°とすることができる。記録媒体浮き検知システム40は、温度差ΔTが14℃以上、20℃未満である場合に、傾き量θを+4°とすることができる。記録媒体浮き検知システム40は、温度差ΔTが20℃以上である場合に、傾き量θを+5°とすることができる。なお、これらの値は、任意の値であり、適宜変更することができる。例えば、
図9に示す表では、傾き量を5段階に分類しているが、4段階以下に分類してもよく、6段階以上に分類してもよい。温度差ΔTが大きい場合には、温度差ΔTが小さい場合と比較して、レーザ光44の出射方向の傾きを補正するための傾き量θは大きくなる。
【0040】
<レーザ光の到達位置とレーザ光の高さ位置との関係>
次に、
図10を参照して、レーザ光44の到達位置とレーザ光44の高さ位置との関係について説明する。
図10は、レーザ光の到達位置とレーザ光の高さ位置との関係を示すグラフである。
図10では、横軸にレーザ光44の到達位置[mm]を示し、縦軸にレーザ光44の高さ位置を示す。投光部42におけるレーザ光44の出射点は、レーザ到達位置0mmであり、レーザ高さ10.000mmである。レーザ光44の到達位置は、Y軸方向における位置である。レーザ光44の高さ位置は、Z軸方向における位置である。レーザ光44の高さ位置は、例えば、ドラム10の外周面10aからの高さ位置でもよい。
図10は、レーザ光44のうち、最も低い高さのレーザ光44の位置を示している。最も低い高さは、ドラム10の外周面10aに最も近い位置である。
【0041】
グラフL1は、投光部42の傾きが有り、温度差が無い場合のレーザ光44の高さを示す。グラフL2は、投光部42の傾きが有り、温度差がある場合のレーザ光44の高さを示す。投光部42の傾きが有る場合とは、投光部42を傾けることにより、レーザ光44の出射方向をY軸方向に対して傾斜させている場合である。グラフL1,L2の場合の投光部42の傾きは同じである。
【0042】
グラフL3は、投光部42の傾きが無く、温度差が無い場合のレーザ光44の高さを示す。グラフL3に示す場合は、理想的な場合である。グラフL4は、投光部42の傾きが無く、温度差がある場合のレーザ光44の高さを示す。投光部42の傾きがない場合とは、Y軸方向に沿って、レーザ光44を出射する場合である。
【0043】
グラフL1,L3で示される場合は、温度差が無い場合であり、レーザ光44は、出射方向にそのまま直進する。グラフL2,L4で示される場合は、温度差が有る場合であり、レーザ光44は、上方に曲がる場合である。グラフL2で示される場合は、投光部42を下方に向けて傾けて、レーザ光44の出射方向を傾けているので、レーザ光44の位置ずれを抑制できる。グラフL4で示される場合は、投光部42を傾けていないので、Y軸方向に沿うように出射されたレーザ光44は、上方に曲がる。グラフL4に示される場合は、グラフL2に示される場合と比較して、位置ずれが大きい。
【0044】
図10では、記録媒体の浮き上がりを検出できない領域R1,R2が示されている。以下、「記録媒体の浮き上がりを検出できない領域」を「検出不可能領域」と記載する。検出不可能R1は、グラフL2の場合であり、検出不可能領域R2は、グラフL1の場合である。検出不可能領域R1は、検出不可能領域R2の半分以下である。
【0045】
例えば、グラフL2,L4の場合、この線より上方に記録媒体PPが存在すると、レーザ光44が遮蔽されることにより、記録媒体浮き検知システム40は、記録媒体PPが存在する位置を認識できる。上記の「記録媒体の浮き上がりを検出できない領域R1,R2」は、記録媒体PPが浮き上がっていないにも関わらず、「記録媒体PPが浮き上がっていると誤検出してしまう領域」でもよい。また、レーザ光44が曲がることで、レーザ光44が存在しない領域が発生した場合、レーザ光44が存在しない領域は、記録媒体PPを検出できない領域である。
【0046】
<画像形成装置のハードウェア構成>
次に
図11を参照して、画像形成装置200のハードウェア構成について説明する。
図11は、一実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11に示すハードウェア構成は、必要に応じて追加の構成要素を含むことができる。ハードウェアは、必要に応じて
図11に示される構成要素を備えていなくてもよい。
【0047】
画像形成装置200は、制御装置500を備える。制御装置500は、CPU(Center Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、NVRAM(Random Access Memory)504、及びHDD(Hard Disk Drive)508を有する。CPU501は、画像形成装置200全体の制御を司る。ROM502には、CPU501に液体吐出制御を実行させるための各種プログラムの他、塗装に必要な各種データ等が記憶されている。
【0048】
RAM503は、各種データ等を一時的に記憶する。NVRAM504は、不揮発性メモリであり、画像形成装置200の電源が遮断されている間もデータを保持できる。制御装置500は、主制御部500Aを有し、主制御部500Aは、CPU501、ROM502及びRAM503を含む。
【0049】
制御装置500は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)505を有する。ASIC505は、画像形成装置200の装置全体の動作を制御するための入出力信号を処理する。また、ASIC505は、画像データに対して各種信号処理を実行できる。ASIC505は、制御装置500に入力された画像データについて画像処理を実行できる。
【0050】
制御装置500は、外部機器であるPCとの間でデータ等の送受信を行うことが可能な外部インタフェース(外部I/F)506を備える。
【0051】
また、制御装置500は、センサ類18から出力された検知信号を取り込むための入出力部(I/O)507を含む。センサ類18は、各種の温度センサを含んでもよい。
【0052】
制御装置500は、ヘッドモジュール20の駆動を制御するヘッド制御装置510を含む。ヘッド制御装置510は、ヘッドモジュール20の駆動装置を制御できる。ヘッド制御装置510は、ヘッドモジュール20の駆動素子を制御して、液体吐出を実行できる。ヘッド制御装置510は、ヘッドモジュール20に関する各種制御を実行できる。
【0053】
制御装置500は、検知システム制御装置511を含む。検知システム制御装置511は、CPU501からの指令に従い、記録媒体浮き検知センサ41及び可変機構60の動作を制御する。
【0054】
<記録媒体浮き検知システム>
次に
図12を参照して、記録媒体浮き検知システム40のハードウェア構成について説明する。
図12は、記録媒体浮き検知システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図12に示される記録媒体浮き検知システム40のハードウェア構成は、
図11に示す画像形成装置200のハードウェア構成の一部である。
図12に示すハードウェア構成は、必要に応じて追加の構成要素を含むことができる。ハードウェアは、必要に応じて
図12に示される構成要素を備えていなくてもよい。
【0055】
記録媒体浮き検知システム40は、記録媒体浮き検知センサ41及び可変機構60を含む。記録媒体浮き検知システム40の制御装置は、検知システム制御装置511、及び温度検出部80を備える。検知システム制御装置511は、CPU501、及び記憶部509と電気的に接続されている。記憶部509は、ROM502、RAM503、NVRAM504、及びHDD508を含んでもよい。検知システム制御装置511は、可変機構60の動作を制御する制御部の一例である。記録媒体浮き検知システムの制御装置は、
【0056】
記録媒体浮き検知センサ41は、投光部42、受光部43、通信ユニット46、及びアンプユニット47を備える。記録媒体浮き検知センサ41は、通信ユニット46をインタフェースとし、検知システム制御装置511から検知閾値に関する情報を受信する。検知閾値とは、記録媒体PPの浮き上がりを判定するための閾値である。
【0057】
アンプユニット47は、受光部43から出力された情報に基づいて、検出高さh1を認識する。アンプユニット47は、検知閾値及び検出高さh1に基づいて、記録媒体PPの浮き上がりを判定する。アンプユニット47は、検出高さh1が検知閾値よりも高い場合に、記録媒体PPの浮き上がりが発生していると判定する。記録媒体浮き検知センサ41は、記録媒体PPの浮き上がりについての判定結果を検知システム制御装置511に出力する。
【0058】
検知システム制御装置511は、温度検出部80から出力された情報に基づいて、レーザ光44の光路内の温度について認識する。検知システム制御装置511は、レーザ光44の光路内の温度に基づいて、投光部42の傾き量を決定する。検知システム制御装置511は、傾き量に関するデータを可変機構60のモータ64に送信し、モータ64を駆動して、投光部42の傾きを変更する。これにより、投光部42によるレーザ光44の出射方向を変更できる。検知システム制御装置511は、温度検出部80から出力された情報に基づいて、レーザ光44の光路内の温度分布について認識してもよい。検知システム制御装置511は、レーザ光44の光路内の温度分布に基づいて、投光部42の傾き量を決定してもよい。
【0059】
<温度検出部>
温度検出部80は、装置内部の空間温度を検出可能な温度検出センサ(温度センサ)81を含み、この温度検出センサ81を用いて空間温度を検出できる。温度検出部80は、検出した空間温度に基づいて、レーザ光44の光路内の温度分布を検出してもよい。温度検出センサは、例えば熱電対でもよい。温度検出センサ81は、記録媒体浮き検知センサ41の近くに配置されている。
【0060】
<機能構成>
次に、
図13を参照して、画像形成装置200の機能構成について説明する。
図13は、画像形成装置200の機能ブロック図である。
図11に示すCPU501は、ROM502等の記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、
図13に示すシステム制御部121、メモリ制御部122、通信制御部123、吐出制御部124、搬送制御部125、温度認識部131、傾き量判断部132、傾き量制御部133、検知システム制御部134、及び浮き上がり判定部135の各機能を実現する。なお、制御装置500と接続された外部機器及びセンサは、これらの各機能の一部を実行してもよい。
【0061】
システム制御部121は、画像形成装置200の全体の動作を制御する。メモリ制御部122は、ROM502、RAM503、NVRAM504、及びHDD508等のメモリの動作を制御する。通信制御部123は、制御装置500に接続されている外部機器との通信制御を行う。
【0062】
吐出制御部124は、ヘッドモジュール20による液体の吐出を制御する。搬送制御部125は、搬送部による記録媒体PPの搬送を制御する。搬送部は、記録媒体PPを搬送するためのローラ、及びローラを駆動するモータを含む。
【0063】
温度認識部131は、温度検出部80から出力された情報に基づいて、レーザ光44の光路内の温度を認識する。温度認識部131は、光路内の温度差の有無を判定できる。
【0064】
傾き量判断部132は、レーザ光44の光路内の温度に応じて、投光部42の傾き量を決定できる。傾き量判断部132は、
図9に示される表を参照して、温度差ΔTに応じて、傾き量θを決定してもよい。
【0065】
傾き量制御部133は、光路内の温度に応じた傾き量θとなるように、可変機構60を制御して、投光部42を傾斜させる。これにより、傾き量制御部133は、レーザ光44の出射方向を変更できる。傾き量制御部133は、光路内の温度差ΔTに応じた傾き量θとなるように、可変機構60を制御して、投光部42を傾斜させてもよい。
【0066】
検知システム制御部134は、記録媒体浮き検知センサ41の動作を制御する。検知システム制御部134は、投光部42からレーザ光44を出射させる。検知システム制御部134は、受光部43から出力された検出高さh1に関する情報を取得できる。
【0067】
浮き上がり判定部135は、記録媒体浮き検知センサ41から取得した検出高さh1に関する情報に基づいて、記録媒体PPの浮き上がりが発生しているか否かを判定する。浮き上がり判定部135は、記録媒体PPがドラム10の外周面10aから離れて浮き上がっている場合に、記録媒体PPの浮き上がりが発生していると判定できる。
【0068】
搬送制御部125は、記録媒体PPの浮き上がりが発生している場合に、その記録媒体PPが、ヘッドモジュール20に供給されないように、記録媒体PPの経路を変更できる。搬送制御部125は、記録媒体PPの搬送経路を変更するためのガイドを駆動して、記録媒体PPの搬送経路を変更できる。
【0069】
なお、システム制御部121、メモリ制御部122、通信制御部123、吐出制御部124、搬送制御部125、温度認識部131、傾き量判断部132、傾き量制御部133、検知システム制御部134、及び浮き上がり判定部135は、記憶部に記憶されているプログラムにより、ソフトウェアで実現できる。これらのシステム制御部121、メモリ制御部122、通信制御部123、吐出制御部124、搬送制御部125、温度認識部131、傾き量判断部132、傾き量制御部133、検知システム制御部134、及び浮き上がり判定部135のうち全部又は一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。
【0070】
また、プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイル情報でCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録され、このような記録媒体を介して、画像形成装置200に提供され得る。また、プログラムは、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、半導体メモリ等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録され、このような記録媒体を介して、画像形成装置200に提供され得る。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由でインストールする態様で画像形成装置200に提供されるものでもよい。また、プログラムは、画像形成装置200内のROM等に予め組み込まれていてもよい。
【0071】
また、制御装置500は、制御装置500に接続されたコンピュータが実行する機能を実行してもよい。同様に制御装置500に接続されたコンピュータは、制御装置500が実行する機能を実行してもよい。
【0072】
<傾き量の変更>
次に、記録媒体浮き検知システム40で実行されるレーザ光44の傾き量θの変更について説明する。
図14は、記録媒体浮き検知システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
【0073】
制御装置500の温度認識部131は、レーザ光44の光路内の温度を認識する(ステップS11)。温度認識部131は、温度検出部80から光路内の温度に関する情報を取得する。温度認識部131は、
図6に示されるように、光路内の温度T1,T2に関する情報を取得する。
【0074】
次に、温度認識部131は、温度T1と温度T2との温度差ΔTが有るか否かを判定する(ステップS12)。温度認識部131は、温度差ΔTが、判定閾値(第1判定閾値)以上である場合に、温度差ΔTが有ると判定する。温度差ΔTが有る場合(ステップS12;YES)には、ステップS13に進み、温度差ΔTが無い場合(ステップS12;NO)には、ステップS14に進む。温度認識部131は、温度差ΔTが有る場合に、光路内に温度分布が発生していると認識してもよい。また、温度認識部131は、光路内の温度が、所定の判定閾値以上であるか否かを判定してもよい。温度認識部131は、光路内の温度が、所定の判定閾値以上である場合に、温度差ΔTが判定閾値以上であると判定してもよい。
【0075】
ステップS13では、温度認識部131は、温度差ΔTが小さいか否を判定する。温度認識部131は、温度差ΔTが、判定閾値(第2判定閾値)未満である場合に、温度差ΔTが小さいと判定することができる。温度差ΔTが小さい場合(ステップS13;YES)には、ステップS15に進み、温度差ΔTが大きい場合(ステップS13;NO)には、ステップS16に進む。また、温度認識部131は、光路内の温度が、所定の判定閾値未満であるか否かを判定してもよい。温度認識部131は、光路内の温度が、所定の判定閾値未満である場合に、温度差ΔTが判定閾値未満であると判定してもよい。
【0076】
ステップS14では、制御装置500の傾き量制御部133は、レーザ光44の傾き量θを変更しない。または、既にレーザ光44の傾き量θが変更されている場合には、傾き量制御部133は、レーザ光44がY軸方向に沿って出射されるように、可変機構60を制御して、傾き量θをゼロに戻す。
【0077】
ステップS15では、傾き量制御部133は、可変機構60を制御して、傾き量θを小さく変更する。ステップS16では、傾き量制御部133は、可変機構60を制御して、傾き量θを大きく変更する。傾き量θの大きさは、
図9に示される表を参照して決定できる。温度差ΔTが大きいほど、傾き量θは大きい値となり、温度差ΔTが小さいほど、傾き量θは小さい値となる。
【0078】
ステップS14~S16の終了後、制御装置500は、ステップS17に進み、印刷ジョブが終了しているか否かを判定する。印刷ジョブが終了している場合(ステップS17;YES)には、ここでの処理を終了し、印刷ジョブが終了していない場合(ステップS17;NO)には、ステップS11に戻り、ステップS11~ステップS17の処理を繰り返す。
【0079】
なお、ステップS14~S16において、「傾き変更なし」、「傾き量小」、「傾き量大」など、傾き3段階に分類している場合について例示しているが、2段階でもよく、4段階以上に分類してもよい。また、制御装置500は、ステップS11~ステップS17の処理を、定期的に実行してもよく、例えば1分ごとに、処理を実行して傾き量θを調整してもよい。
【0080】
<画像形成装置の作用効果>
このような画像形成装置200によれば、投光部42からレーザ光44を出射し、搬送経路の上方を通過したレーザ光44を受光部43によって受光することにより、記録媒体PPの浮き上がりを検出できる。画像形成装置200では、温度検出部80を用いて、レーザ光44の光路内の温度を検出できる。画像形成装置200では、可変機構60を用いて、投光部42から出射されるレーザ光44の出射方向を傾斜させることができる。画像形成装置200では、温度検出部80によって検出された光路内の温度に基づいて、可変機構60を制御できる。画像形成装置200の制御装置500は、光路内の温度が所定の判定閾値以上である場合に、可変機構60を駆動して、投光部42の傾きを変えることができる。これにより、画像形成装置200では、投光部42から出射されるレーザ光の出射方向の傾き量θを変えることができる。
【0081】
このような画像形成装置200によれば、光路内の温度が所定の判定閾値以上であり、レーザ光44が曲がるような場合であっても、可変機構60を用いて投光部42を傾けることにより、レーザ光の出射方向を調整できる。これにより、検出高さh1の測定誤差を低減できる。ここでの「所定の判定閾値」は、光路内に温度差が発生し、この温度差により、レーザ光が曲がることを検出可能な判定閾値である。
【0082】
画像形成装置200は、画像形成装置200の内部の空間温度を検出する温度検出センサ81を備えることにより、レーザ光44の光路内の空間の温度を検出できる。これにより、検知システム制御装置511は、光路内の温度差の発生の有無を認識できる。検知システム制御装置511は、
図6に示されるように、温度T1と温度T2との温度差に基づいて、温度分布の発生の有無を認識できる。
【0083】
画像形成装置200では、記録媒体PPの浮き上がりを検出した場合に、この記録媒体PPがヘッドモジュール20に供給されないようにすることができる。これにより、所定の高さ以上に浮き上がった記録媒体PPがヘッドモジュール20に当たることが抑制される。その結果、ヘッドモジュール20の損傷(ヘッドアタック)を防止することができる。
【0084】
例えば、画像形成装置200は、インクジェット方式の商用の印刷機でもよい。このような商用の印刷機では、高画質を実現するためにヘッドモジュール20と記録媒体PPとの間の距離を1mm程度とする場合がある。このような商用の印刷機の場合、記録媒体PPのわずかな浮き上がり発生した場合でも、記録媒体PPとヘッドモジュール20とが接触し、ヘッドモジュール20が損傷することがある。
【0085】
画像形成装置200では、記録媒体PPの浮き上がりを精度よく検出することができ、ヘッドアタックの発生が抑制されるので、記録媒体PPの搬送経路に対して、ヘッドモジュールを接近させて配置することができる。そのため、画像形成装置200において、高画質を実現できる。
【0086】
<変形例1>
次に、変形例1に係る画像形成装置200について説明する。画像形成装置200は、上記の温度検出部80に代えて、変形例1に係る温度検出部80Bを備える構成でもよい。
図15は、変形例1に係る記録媒体浮き検知システムのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、変形例1に係る画像形成装置200の説明において、上記の実施形態に係る画像形成装置200と同じ説明は省略する。
【0087】
図15に示されるように、変形例1に係る温度検出部80Bは、印刷後の記録媒体PPの温度を検出可能な温度センサ82を含み、この温度センサ82を用いて記録媒体PPの温度を検出できる。記録媒体PPの温度を検出可能な温度計としては、放射温度計がある。温度検出部80は、印刷後の記録媒体PPの温度に基づいて、レーザ光44の光路内の温度を検出できる。
【0088】
変形例1に係る画像形成装置200の温度認識部131は、温度センサ82から出力された、印刷後の記録媒体PPの温度に基づいて、レーザ光44の光路内の温度を検出できる。温度認識部131は、光路内の温度差の有無を判定できる。例えば、記憶部509は、印刷後の記録媒体PPの温度と、光路内の温度差ΔTとの関係を示すデータを予め記憶している。光路内の温度差Δとの関係を示すデータは、温度分布の発生状況に関するデータでもよい。
【0089】
図16は、変形例1に係る記録媒体浮き検知システムにおける処理手順を示すフローチャートである。画像形成装置200は、印刷後の記録媒体PPの温度を検出する(ステップS21)。温度認識部131は、印刷後の記録媒体PPの温度に基づいて、レーザ光44の光路内の温度を検出する。
【0090】
次に、温度認識部131は、印刷後の記録媒体PPの温度が判定閾値Tb1以上であるか否かを判定する(ステップS22)。温度認識部131は、記録媒体PPの温度が判定閾値Tb1以上である場合(ステップS22;YES)には、ステップS23に進み、記録媒体PPの温度が判定閾値Tb1未満の場合(ステップS22;NO)には、ステップS14に進む。温度認識部131は、印刷後の記録媒体PPの温度が判定閾値Tb1以上である場合に、光路内に温度差ΔTが発生していると認識できる。
【0091】
ステップS23では、温度認識部131は、温度差ΔTが小さいか否を判定する。温度認識部131は、温度差ΔTが、判定閾値(第2判定閾値)未満である場合に、温度差ΔTが小さいと判定することができる。温度差ΔTが小さい場合(ステップS13;YES)には、ステップS15に進み、温度差ΔTが大きい場合(ステップS13;NO)には、ステップS16に進む。これにより、画像形成装置200は、記録媒体PPの温度に応じて、光路内の温度差Δの発生状況を認識して、傾き量θを変更できる。
【0092】
このような変形例1に係る画像形成装置200においても、上記の実施形態に係る画像形成装置200と同様の作用効果を奏する。変形例1に係る画像形成装置200は、搬送部によって搬送され、印刷後の記録媒体PPの温度を検出する温度センサ82を備え、検出された記録媒体PPの温度に基づいて、光路内の温度を検出できる。
【0093】
<変形例2>
次に、変形例2に係る画像形成装置200について説明する。画像形成装置200は、上記の温度検出部80に代えて、変形例2に係る温度検出部80を備える構成でもよい。なお、変形例2に係る画像形成装置200の説明において、上記の実施形態に係る画像形成装置200と同じ説明は省略する。変形例2に係る画像形成装置200は、印刷枚数を検出する印刷枚数検出部を備えることができる。
【0094】
変形例2に係る画像形成装置200の温度検出部80は、印刷枚数等の印刷ジョブ情報に基づいて、光路内の温度に関する情報を出力してもよい。温度検出部80は、例えば、単位時間当たりの印刷枚数に基づいて、光路内の温度に関する情報を出力してもよい。温度検出部80は、単位時間当たりの印刷枚数に基づいて、光路内の温度差ΔTに関する情報を出力してもよい。
【0095】
画像形成装置200の記憶部509には、単位時間当たりの印刷枚数と、画像形成装置200の筐体内部の温度との関係を示すデータが保存されている。温度認識部131は、単位時間当たりの印刷枚数に基づいて、光路内の温度差ΔTの発生の有無を判定し、判定結果を出力できる。
【0096】
このような変形例2に係る画像形成装置200においても、上記の実施形態に係る画像形成装置200と同様の作用効果を奏する。変形例2に係る画像形成装置200は、記録媒体PPの印刷枚数を検出する印刷枚数検出部を備え、記録媒体PPの印刷枚数に基づいて、光路内の温度を検出できる。画像形成装置200は、光路内の温度に基づいて、可変機構60の動作を制御して、投光部42からの光の出射方向を変化させることができる。
【0097】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0098】
上記の実施形態では、投光部42と受光部43とが、記録媒体PPの搬送経路を挟んでY軸方向に対向するように、配置されている場合について説明しているが、投光部42及び受光部43はこれに限定されない。例えば、投光部42及び受光部43を1つのモジュールとして、Y軸方向において同じ位置に配置してもよい。この構成の記録媒体浮き検知センサは、投光部42及び受光部43を有するモジュールに対して、搬送経路を挟んで対向して配置されたミラーを備えていてもよい。投光部42から出射された光は、搬送経路の上方を通過した後、ミラーによって反射する。受光部43は、ミラーによって反射し、再び、搬送経路の上方を通過したレーザ光を受光する。光の回析などの特性上、微小な角度を持たせて光を出射して受光するように、投光部及び受光部を実装することで、記録媒体PPの検出のばらつきを抑制できる場合がある。
【0099】
上記の実施形態では、ウォーム歯車62及びモータ64を有する可変機構60を備える場合について説明しているが、傾斜機構はこれに限定されない。傾斜機構は、その他ガイド機構及びアクチュエータを備える構成でもよい。傾斜機構は、例えば、ヒンジ機構、ボールねじ、エアーシリンダ等を備える構成でもよい。また、ミラー等を用いて、光の出射方向を変えてもよい。
【0100】
また、上記の実施形態では、温度検出部80は、光路内の温度を検出しているが、温度検出部80は、Z軸方向における光路内の温度分布を検出してもよい。温度検出部80は、例えば、Y軸方向における光路内の温度分布を検出してもよく、Z軸及びY軸方向に対して傾斜する方向の温度分布を検出してもよい。温度検出部80は、Y軸方向において、温度差が生じている位置を検出し、検出した位置に応じて、レーザ光44の傾き量θを変更してもよい。
【0101】
上記で説明した実施形態の各機能のうち、制御部で実行される部分は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0102】
10 ドラム(搬送部)
10a 外周面
20 ヘッドモジュール
40 記録媒体浮き検知システム
41 記録媒体浮き検知センサ(浮き上がり検出部)
42 投光部
43 受光部
44 レーザ光
60 可変機構
80 温度検出部
81 温度検出センサ
82 温度センサ
131 温度認識部
200 画像形成装置
500 制御装置
511 検知システム制御装置(媒体浮き検知システムの制御部)
PP 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特許6076848号明細書
【特許文献2】特許5444079号明細書