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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178041
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】刺繍システム
(51)【国際特許分類】
   D05C 11/24 20060101AFI20231207BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231207BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231207BHJP
   D05B 67/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
D05C11/24
B41J2/01 501
B41J2/21
D05B67/00
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091084
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽子
【テーマコード(参考)】
2C056
3B150
【Fターム(参考)】
2C056EE03
2C056EE18
2C056FB01
2C056HA44
2C056HA46
3B150AA15
3B150CB04
3B150CD01
3B150CE23
3B150FB00
3B150FC00
3B150QA01
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】刺繍絵柄に視覚的凹凸感を付与することができる刺繍システムを提供する。
【解決手段】糸101を着色する着色手段103と、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いを行う刺繍手段100と、を備える刺繍システムであって、刺繍手段100は、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いの少なくとも一方に、着色手段103により着色された糸101を用いる刺繍手段であり、
刺繍イメージに基づいて刺繍絵柄及び下縫いのデータを作成する刺繍データ作成手段92aと、糸101を着色するための色データを作成する色データ作成手段92bと、刺繍イメージの凹凸感を表す凹凸データを得る凹凸データ取得手段93と、凹凸データに基づいて刺繍絵柄の刺繍密度を変更する刺繍密度調整手段97aと、を備えることを特徴とする刺繍システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を着色する着色手段と、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いを行う刺繍手段と、を備える刺繍システムであって、
前記刺繍手段は、前記刺繍絵柄の刺繍及び前記下縫いの少なくとも一方に、前記着色手段により着色された前記糸を用いる刺繍手段であり、
刺繍イメージに基づいて前記刺繍絵柄及び前記下縫いのデータを作成する刺繍データ作成手段と、
前記糸を着色するための色データを作成する色データ作成手段と、
前記刺繍イメージの凹凸感を表す凹凸データを得る凹凸データ取得手段と、
前記凹凸データに基づいて前記刺繍絵柄の刺繍密度を変更する刺繍密度調整手段と、を備えることを特徴とする刺繍システム。
【請求項2】
前記凹凸データに基づいて、前記刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、前記下縫いに用いる糸の色とのコントラストを変更するコントラスト調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の刺繍システム。
【請求項3】
前記凹凸データ取得手段により前記刺繍イメージの凹凸度合が大きい領域を抽出し、
前記刺繍密度調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍密度を下げ、
前記コントラスト調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、前記下縫いに用いる糸の色とのコントラストを上げることを特徴とする請求項1または2に記載の刺繍システム。
【請求項4】
前記凹凸データ取得手段により前記刺繍イメージの凹凸度合が大きい領域を抽出し、
前記刺繍密度調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍密度を下げ、
前記コントラスト調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、前記下縫いに用いる糸の色との明度差を大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の刺繍システム。
【請求項5】
前記凹凸データは、前記刺繍イメージのモチーフから取得した表面粗さのデータであることを特徴とする請求項1または2に記載の刺繍システム。
【請求項6】
前記凹凸データは、前記刺繍イメージの画像のコントラストのデータであることを特徴とする請求項1または2に記載の刺繍システム。
【請求項7】
前記凹凸データは、前記刺繍イメージの画像の周波数のデータであることを特徴とする請求項1または2に記載の刺繍システム。
【請求項8】
前記凹凸データは、ユーザが設定したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の刺繍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数色の糸を用いて刺繍を施し、布地に装飾性の高い多様な絵柄を形成することが行われている。従来、布地に複数色の刺繍を行う場合は、色ごとに刺繍パターン情報を作成し、糸を指定色に応じて取り替える必要があるため、複数の色の糸を保持する大型の刺繍装置が必要であった。
【0003】
これに対し、特許文献1では、白糸で刺繍した後、刺繍部分にインクジェットヘッドから異なる色のインクを吹き付けて着色する技術が提案されている。
【0004】
また近年、インクジェット技術を用いて糸を搬送方向で異なる色に着色(染色)し、所望の色に着色された糸を使用して刺繍するシステムが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット技術により着色された複数色の糸を用いて多様な刺繍を行う場合であっても、凹凸感は糸自体によって付与される程度のものであり、得られる刺繍絵柄は平面的なものが一般的である。そのため、立体感のある刺繍イメージに基づいて刺繍絵柄を形成する場合、視覚的凹凸感が強調された刺繍絵柄を得ることは難しいという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、刺繍絵柄に視覚的凹凸感を付与することができる刺繍システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の刺繍システムは、糸を着色する着色手段と、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いを行う刺繍手段と、を備える刺繍システムであって、前記刺繍手段は、前記刺繍絵柄の刺繍及び前記下縫いの少なくとも一方に、前記着色手段により着色された前記糸を用いる刺繍手段であり、刺繍イメージに基づいて前記刺繍絵柄及び前記下縫いのデータを作成する刺繍データ作成手段と、前記糸を着色するための色データを作成する色データ作成手段と、前記刺繍イメージの凹凸感を表す凹凸データを得る凹凸データ取得手段と、前記凹凸データに基づいて前記刺繍絵柄の刺繍密度を変更する刺繍密度調整手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、刺繍絵柄に視覚的凹凸感を付与することができる刺繍システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る刺繍システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本実施形態の刺繍システムを構成する液体吐出装置の液体付与部の下面図である。
図3】本実施形態の刺繍システムを構成する液体吐出装置のハードウェアブロック図である。
図4】本実施形態の刺繍システムを構成する液体吐出装置の機能ブロック図である。
図5】本実施形態の刺繍システムのデータ編集機構と演算機構の機能ブロック図である。
図6】本実施形態の刺繍システムによる第一の実施態様を示すフローチャートである。
図7】刺繍後の状態を模式的に示す説明図である。
図8】本実施形態の刺繍システムによる第二の実施態様を示すフローチャートである。
図9】本実施形態の刺繍システムによる第三の実施態様を示すフローチャートである。
図10】刺繍後の状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る刺繍システムについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る刺繍システムの概略構成を示す説明図である。図2は、図1の刺繍システムを構成する液体吐出装置の液体付与部の下面図である。
【0012】
本実施形態の刺繍システムは、給糸装置106、液体吐出装置103、乾燥装置104、後処理装置105、及び刺繍装置100を備えている。
給糸装置106は、糸101が巻回された供給リール102を備えている。供給リール102から引き出された糸101は、搬送ローラ108,109で案内され、刺繍装置100まで連続して這い回されている。
【0013】
搬送ローラ109には、ロータリーエンコーダ(以下、単にエンコーダと呼ぶこともある)45が設けられている。エンコーダ45は、ローラ109と共に回転するエンコーダホイール45bと、エンコーダホイール45bのスリットを読取るエンコーダセンサ45aで構成されている。
【0014】
液体吐出装置103は、供給リール102から引き出されて搬送される糸101に所要の色の液体を吐出して付与する複数のヘッド1(1K~1Y)と、各ヘッド1のメンテナンスを行う複数の個別の維持ユニットなどで構成されるメンテナンスユニット2とを備えている。吐出される液体の色は、刺繍イメージに基づき作成された色データに基づき決定される。
【0015】
なお、本実施形態において液体はインクである。以降の説明では、インクを糸に付与する動作を「着色」、「染色」、「印刷」等ともいう。
【0016】
図2を参照して、液体吐出装置103において、複数のヘッド1K~1Yは、互いに異なる色を吐出する吐出ヘッドであり、例えば、1Yはブラック(K)の液滴(インク滴)を吐出するヘッド、1Cはシアン(C)の液滴を吐出するヘッド、1Mはマゼンタ(M)の液滴を吐出するヘッド、1Yはイエロー(Y)の液滴を吐出するヘッドである。なお、色の順番は一例であり、この説明とは異なる順番に配置されてもよい。また、上記の色以外にオレンジやグリーンなどの特別色のインクや、糸の表面に光沢性を付与するオーバーコート処理液などを吐出するヘッドを追加または置換してもよい。
【0017】
ヘッド1Kは、液滴を吐出する複数のノズル11を配列したノズル列10a,10bが形成されたノズル面12を有する。各ヘッド1K~1Yは、ノズル列(ノズル11の配列)の方向が糸101の搬送方向(糸送り方向)と平行になるように配置される。
【0018】
ヘッド1Kにおいて、糸101の真上に位置する片方の列(図3ではノズル列10a)のノズル11で吐出した液体が糸に着弾して糸101への着色(染色、捺染ともいう)を行う。
【0019】
なお、図2には、ヘッド1はノズル面12に2つのノズル列10a,10bの2列が配置されている例を示しているが、ヘッド1Kに設けられるノズル列の数は1列でもよく、あるいは、3列以上であってもよい。なお、図2に示すように、他のヘッド1C,1M,1Yでも、同様の構成を有している。
【0020】
各ノズル列10a、10bは、ノズル11が糸101の搬送方向に複数個並んだノズル群からなる。
糸101に対して印刷を行う際は、1列のノズル列を使用する。
図2のようにヘッド1にノズル列が複数配置されている場合は、複数のノズル列のうちの1列を適宜切り替えて使用してもよい。例えば、一方のノズル列(第1のノズル列10a)で所定時間印刷を行った後、ヘッド1を糸101の搬送方向と直交する方向に移動させて、他方のノズル列(第2のノズル列10b)に切り替えて印刷を行うことができる。
【0021】
図1に戻って、乾燥装置104は、液体吐出装置103から吐出された液体が付与された糸101に対する定着処理(乾燥処理)を行う。乾燥装置104は、例えば加圧・加熱方式、温風吹付方式などの加熱手段を備え、糸101を加熱して乾燥する。
【0022】
後処理装置105は、例えば、糸101に定着していないインク等を洗浄(清掃)する洗浄手段、糸101の張力を調整する張力調整手段、糸101の移動量を検出する送り量検出手段、糸101の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段などを含む。
【0023】
刺繍装置100は、刺繍データに基づき、糸101を布に縫い込むことで、布上に柄や模様などのパターンを刺繍する。刺繍手段100は、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いの少なくとも一方に、液体吐出装置103により着色された糸101を用いる。
刺繍装置100が別の場所にある場合(インライン型でない場合)は、刺繍装置100に代えて、液体付与後の糸を巻き取る巻取装置を後処理装置の後段に連結してもよい。この場合は、一旦巻き取った糸を加工装置の設置場所に運び、加工装置に糸を装填して所望の加工を行う。
なお、後処理装置105の後段には、ミシン等、他の加工装置を連結してもよい。
【0024】
本実施形態において被吐出媒体としての糸101とは、ガラス繊維糸、ウール糸、綿糸、合成糸、金属糸、ウール、綿、ポリマー、または金属の混合糸、ヤーン、フィラメント、あるいは液体を付与可能な線状物体(線状部材、連続基材)であり、組紐、平紐なども含む。また、インク滴によって着色(染色)可能な被吐出媒体として、上記の線状物体に加えて、ロープ、ケーブル、コード等の、液体を付与可能な帯状部材(連続基材)も含まれる。いずれの被吐出媒体も、幅が狭く、搬送方向に連続している、線状又は帯状の媒体である。
【0025】
液体吐出装置103では、例えば、各色の各ノズル11から吐出された液滴は1回で被吐出媒体への吐出が完了することを前提しているため、被吐出媒体の糸101としては、液滴が着弾してにじむと被吐出媒体の幅の少なくとも1/2以上、より好ましくは、液滴がにじんだ状態で被吐出媒体の幅のほぼ全域を占める幅であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る刺繍システムのハードウェア構成について説明する。
図3は、刺繍システムの制御部60であって、刺繍システムを構成する液体吐出装置103のハードウェアブロック図の一例である。
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、NVRAM(Non-Volatile RAM)74、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)75を備えている。さらに、制御部は、ホストI/F(Interface)70、ヘッド制御部76、キャリッジ制御部77、ワイピング制御部78、I/O(Input/Output)78がデータバスを介して接続されている。
データバスは、制御部を構成する各構成要素間の双方向通信を可能にし、データを転送する。
【0027】
CPU71は、刺繍システムの各種動作を司る。例えば、CPU71は、RAM73を作業領域として利用して、ROM72に格納された各種の制御プログラムを実行し、刺繍システムにおける各種動作を制御するための制御指令を出力する。
ROM72は、不揮発性の半導体メモリであり、CPU71が実行するプログラムやその他の固定データ(BIOS、OS設定、ネットワーク設定等)を格納している。RAM73は、揮発性の半導体メモリであり、プログラムやデータを一時保存する。NVRAM74は、書き換え可能な不揮発性の半導体メモリであり、装置の電源が遮断している場合のデータ保持を可能にする。ASIC75は各種データに対する各種信号処理、並べ替え等を行う画像処理や、その他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0028】
ホストI/F70は、PC(Personal Computer)80等のホストとのデータおよび信号の送受を行う。
ヘッド制御部76は、液体吐出装置103のヘッド1を駆動するための駆動波形を生成するとともに、ヘッド1の圧力発生手段を駆動する色データおよびそれに伴う各種データをヘッドドライバに送信する。
キャリッジ制御部77は、キャリッジモータの駆動を制御する。
ワイピング制御部78は、メンテナンスユニット2に設けられた各ワイピング装置の駆動を制御する。
I/O79は、糸101の搬送路上に設けられたエンコーダ45からの検出パルスおよびその他の各種センサからの検知信号を受信する。
操作パネル61は、必要な情報の入力および表示を行う。
【0029】
制御部60は、PC80が生成したデータ等をケーブルまたはネットワークを介してホストI/F70で受信する。そして、CPU71は、ホストI/F70に設けた受信バッファ内のデータを読み出して解析する。CPU71での解析結果に対して、ASIC75は必要な画像処理、データの並べ替え処理等を行う。CPU71は、ASIC75での処理結果をヘッド制御部76に送信する。ヘッド制御部76は所要のタイミングで色データおよび駆動波形をヘッドドライバ62に送信する。
【0030】
なお、画像出力するためのデータ(刺繍データ、色データ、凹凸データ等)の生成は、例えばROM72にデータを格納して行うようにしてもよい。または、ホスト(PC80)側でデータをビットマップデータに展開して刺繍システムに転送するようにしてもよい。
【0031】
ヘッド制御部76から色データおよび駆動波形を受信したヘッドドライバ62は、ヘッド1の圧力発生手段に対して駆動パルスを選択的に印加し、ヘッド1を駆動する。
【0032】
本発明に係る刺繍システムの機能ブロック図の一例を図4及び図5に示す。
これらのブロック図は、図3に示した各構成要素のいずれかが、RAM73上に展開したプログラムに従ってCPU71から命令されることにより動作して実現する機能、または機能する手段に関するものである。
【0033】
図4は、刺繍システムを構成する液体吐出装置103に係る機能ブロック図である。液体吐出装置103は、取得した色データをもとにヘッド1の各ノズル11から液体を吐出する。
図4に示すように、液体吐出装置103は、プリンタアプリ50、メモリ管理部51、通信制御部52、操作パネル制御部53、システム管理部54、及びプロッタ制御部55を備えている。
【0034】
プリンタアプリ50は、主にCPU71の処理によって実現され、プリンタ機能に関する制御を行う。
メモリ管理部51は、主にCPU71の処理によって実現され、RAM73の管理を行う。
通信制御部52は、主にホストI/F70に対するCPU71の処理によって実現され、通信ネットワーク等を介して、PC80との通信を可能にする。
操作パネル制御部53は、操作パネル61に対するCPU71の処理によって実現され、操作パネル61への表示や操作パネル61からの入力情報を受け付ける。
【0035】
システム管理部54は、主にCPU71の処理によって実現され、NVRAM74や不揮発な設定値の管理を行う。
プロッタ制御部55は、主にCPU71の処理によって実現され、糸101に対する着色に関するハードウェアの制御を行う。また、プロッタ制御部55は、吐出制御部56、キャリッジモータ駆動制御部57、及び吐出データ制御部58を備えている。
【0036】
吐出制御部56は、図3に示すヘッド制御部76の制御を行う。吐出制御部56は、空吐出処理の実行や空吐出間隔の管理制御および空吐出のための液体吐出位置の変更指示制御等を行う。また、吐出制御部56は、ヘッド1のクリーニング処理の実行やクリーニング間隔の管理制御およびクリーニングのためのヘッド位置の変更指示制御等を行う。
キャリッジモータ駆動制御部57は、図3に示すキャリッジ制御部77を制御し、キャリッジ66のキャップ位置、ワイピング位置、空吐出位置および印刷位置への移動を制御する。
吐出データ制御部58は、キャリッジ66の移動中にRAM73への吐出データの保存や、キャリッジ66の移動後に保存データを加工して吐出データとの合成処理などを行う。
【0037】
本発明に係る刺繍システムは、糸101を着色する着色手段である液体吐出装置103と、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いを行う刺繍手段である刺繍装置100と、を備える刺繍システムであって、刺繍手段100は、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いの少なくとも一方に、着色手段である液体吐出装置103により着色された糸101を用いる刺繍手段であり、刺繍イメージに基づいて刺繍絵柄及び下縫いのデータを作成する刺繍データ作成手段と、糸101を着色するための色データを作成する色データ作成手段と、刺繍イメージの凹凸感を表す凹凸データを得て、凹凸データに基づいて刺繍絵柄の刺繍密度を変更する刺繍密度調整手段と、を備えている。
【0038】
図5は、本発明に係る刺繍システムのデータ編集機構と演算機構の機能ブロック図である。
本実施形態の刺繍システムは、データ編集機構90及び演算機構96を有している。データ編集機構90及び演算機構96は、いずれも制御装置であって、例えば図3に示したCPU71、ASIC75等の情報処理装置によって実現される。
【0039】
データ編集機構90は、刺繍イメージ取得部91と、刺繍データ作成手段である刺繍データ作成部92a及び色データ作成手段である色データ作成部92bを有するデータ作成部92と、凹凸データ取得手段である凹凸データ取得部93と、修正データ作成部94と、データ更新部95と、を有している。刺繍イメージ取得部91は、画像データである刺繍イメージ(刺繍ファイル)を取得する。
【0040】
演算機構96は、刺繍密度調整手段である刺繍密度調整部97a、コントラスト調整手段であるコントラスト調整部97bを備えている。
【0041】
本実施形態の刺繍システムでは、刺繍イメージから取得した凹凸データに応じて、データ編集機構90と演算機構96により刺繍データ及び色データを修正する。修正後のデータに更新された刺繍データ及び色データを用いて刺繍を行うことにより、刺繍絵柄に対し、視覚的凹凸感(疑似的な立体感)を付与することができる。視覚的凹凸感は、例えば、下縫いが透けるように刺繍絵柄の刺繍密度を制御すること、および/また刺繍絵柄と下縫いの色コントラスト上げることにより付与することができる。
【0042】
刺繍データ作成部92aは、取得した刺繍イメージに基づいて、刺繍データ(初期刺繍データ)を作成する。
「刺繍データ」とは、刺繍装置100に入力するデータである。刺繍データには、刺繍装置100の針を移動する座標のデータと、その座標で何を実行するかを組み合わせたデータが含まれる。当該座標で実行される事項としては、例えば、(1)針を布に刺して下糸と絡め、再び布の表に針を戻すこと、(2)その後、次に針を刺すべき位置に移動すること、(3)刺繍を終了する、又は他の針に切り替える・刺繍が連続しない離れた場所へ移動する等のために糸を切断すること、(4)針をイニシャライズ位置(位置合わせを行う位置)に移動すること、等の動作が挙げられる。
【0043】
ここで、刺繍データは、上記のような針を動かす座標とその座標で実施する動作の情報のみが含まれ、凹凸情報や色情報を含まないデータである。
【0044】
なお、刺繍データの作成において、表面に見える絵柄である刺繍絵柄に加えて、通常は刺繍絵柄に隠れてしまう布の縮みを防ぐための下縫いのためのデータも作成される。
なお、図6では、刺繍データ編集機構90において、刺繍イメージに基づいて、初期刺繍データを作成する例を示しているが、初期刺繍データは直接外部から入力されてもよい。
【0045】
色データ作成部92bは、取得した刺繍イメージに基づいて、糸101を着色するための色データ(着色データ)を作成する。
「色データ」とは、液体吐出装置103において糸101を着色(染色)するためのデータである。糸101の長さ方向に沿って、どの範囲をどのような色に着色するかを指定するデータが含まれる。色データに基づき、刺繍システムに接続された液体吐出装置103によって糸101を着色する。
なお、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いのいずれか一方にのみ液体吐出装置103で着色した糸101を用い、他方は液体吐出装置103による着色を行っていない所望の色の糸を用いるように構成することができる。
【0046】
凹凸データ取得部93は、画像データの凹凸データを取得する。
「凹凸データ」とは、刺繍イメージである絵柄(図柄)の表面が有する視覚的な凹凸感(立体感)に関する情報であって、そのような凹凸感をもたらす視覚的効果に関するデータである。
【0047】
凹凸データとしては、例えば、3Dスキャナにより刺繍イメージのモチーフをスキャンして取得できる表面粗さのデータ、刺繍イメージの画像(例えば、デザイン画等)におけるテクスチャデータ、コントラストのデータ等が挙げられる。また、刺繍イメージの画像の周波数を任意の領域毎に計算し、その大小の分布に基づくデータを用いることができる。さらに、この凹凸データは、ユーザが設定したものであってもよい。
【0048】
本実施形態では、凹凸データ取得部93で得た凹凸データに基づいて、刺繍絵柄の刺繍密度を変更する刺繍密度調整部97aと、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と下縫いに用いる糸の色とのコントラストを変更するコントラスト調整部97bを備えている。
【0049】
凹凸データ取得部93により刺繍イメージの凹凸度合が大きい領域を抽出し、刺繍密度調整手段97aは、凹凸度合が大きい領域に対応する刺繍絵柄の刺繍密度を下げる処理を行い、これに基づいて修正データ作成部94において刺繍データ及び色データが修正される。
なお、「凹凸度合」とは絵柄(図柄)の表面が有する視覚的な凹凸感(立体感)の程度をいい、凹凸度合が大きい程、視覚的な凹凸感(立体感)が大きくなる。
【0050】
また、コントラスト調整手段97bは、凹凸度合が大きい領域に対応する刺繍絵柄の刺繍に用いる糸101の色と下縫いに用いる糸101の色とのコントラストを上げる処理を行い、これに基づいて修正データ作成部94において色データが修正される。
【0051】
コントラスト調整手段97bは、凹凸度合が大きい領域に対応する刺繍絵柄の刺繍に用いる糸101の色と下縫いに用いる糸101の色との明度差を大きくする処理を行う態様であってもよい。この場合も、修正データ作成部94において色データが修正される。
【0052】
データ更新部95は、修正前の刺繍データ及び色データと、修正後の刺繍データ及び色データが入力され、刺繍絵柄に凹凸感を付与する場合には、凹凸データに基づいて修正された後の刺繍データ及び/又は色データを液体吐出装置103及び刺繍装置100へ送る。
【0053】
図6は、本実施形態の刺繍システムによる刺繍の流れの第一の実施態様を示すフローチャートである。
【0054】
まず、デザイン画等の刺繍イメージに基づき作成された刺繍データを取得する(S001)。そして、刺繍データに基づき作成された色データを取得する(S002)。さらに刺繍データに対応した凹凸データを取得する(S003)。取得された凹凸データを読み取り、凹凸の度合の大きい領域を抽出し、抽出された凹凸の度合の大きい領域の刺繍絵柄の密度を変更する処理を行う(S004)。
【0055】
ステップS004の刺繍絵柄の密度を変更する処理とは、刺繍絵柄の密度を下げる(ステッチの密度を下げる)処理である。
色データが刺繍に使用される糸の単位長さ毎に設定されている場合は、刺繍絵柄の密度が変更されると、色データの修正も必要となる。
よって、刺繍絵柄の密度の変更に伴い修正された刺繍データ及び色データを更新し(S005)、更新されたデータに基づいて、糸の着色及び刺繍を実行する(S006)。
【0056】
図7は、刺繍後の状態を模式的に示す説明図である。
図7(A)は下縫い後の状態を示す説明図であり、図7(B)及び(C)は下縫い後に刺繍絵柄の刺繍が行われた状態を示す説明図である。
一般的に刺繍においては、刺繍時に布30がゆがむのを防ぐために下縫いという補強のための刺繍が行われる。例えば、図7(A)の符号31で示す糸で先に縫う(下縫いをする)ことで、図7(B)及び(C)の符号32で示す糸で後から上に縫う刺繍絵柄にゆがみが出ないようにすることができる。
【0057】
図7(C)は、図6に示す本実施形態のフローのステップS006において、刺繍絵柄の密度を下げる(ステッチの密度を下げる)処理を行った刺繍の図である。刺繍絵柄の密度を下げることで、図7(C)に示すように下縫いの糸が透けて見えるようになる。これにより刺繍絵柄の視覚的凹凸感を強調することができる。
一方、凹凸の度合の小さい領域に対しては、刺繍絵柄の密度の変更は行わず、図7(B)のように下縫いが隠れるようにする。
【0058】
図8は、本実施形態の刺繍システムによる刺繍の流れの第二の実施態様を示すフローチャートである。
まず、デザイン画等の刺繍イメージに基づき作成された刺繍データを取得する(S101)。そして、刺繍データに基づき作成された色データを取得する(S102)。さらに刺繍データに対応した凹凸データを取得する(S103)。取得された凹凸データを読み取り、凹凸の度合の大きい領域を抽出し、抽出された凹凸の度合の大きい領域の刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色とのコントラストを変更する処理を行う(S104)。
【0059】
ステップS104のコントラストを変更する処理とは、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色とのコントラストを上げる処理である。
次いで、コントラスト変更後に伴い修正された色データを更新し(S105)、更新されたデータに基づいて、糸の着色及び刺繍を実行する(S106)。
【0060】
糸の色のコントラストの変更において、刺繍絵柄部分の色は、本来のデザインに影響を与えないために大きく変更せず、下縫いの糸の色を変更するのが好ましい。
また、コントラストを変更する処理として、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色との明度差を大きくすると、自然な陰影を形成できる。
【0061】
一方、凹凸の度合の小さい領域に対しては、コントラストの変更は行わず、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色とのコントラスト差を設けずに刺繍を行うことができる。
【0062】
図9は、本実施形態の刺繍システムによる刺繍の流れの第三の実施態様を示すフローチャートである。
まず、デザイン画等の刺繍イメージに基づき作成された刺繍データを取得する(S201)。そして、刺繍データに基づき作成された色データを取得する(S202)。さらに刺繍データに対応した凹凸データを取得する(S203)。取得された凹凸データを読み取り、凹凸の度合の大きい領域を抽出し、抽出された凹凸の度合の大きい領域の刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色とのコントラストを変更する処理を行う(S204)。
【0063】
ステップS204のコントラストを変更する処理とは、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色とのコントラストを上げる処理である。
【0064】
また、抽出された凹凸の度合の大きい領域の刺繍絵柄の密度を変更する処理を行う(S205)。
ステップS205の刺繍絵柄の密度を変更する処理とは、刺繍絵柄の密度を下げる(ステッチの密度を下げる)処理である。
【0065】
次いで、ステップS204における糸のコントラストの変更、及びステップS205における刺繍絵柄の密度の変更に伴い修正された刺繍データ及び色データを更新し(S005)、更新されたデータに基づいて、糸の着色及び刺繍を実行する(S006)。
【0066】
次いで、コントラスト変更後に伴い修正された色データを更新し(S206)、更新されたデータに基づいて、糸の着色及び刺繍を実行する(S207)。
【0067】
糸の色のコントラストの変更において、刺繍絵柄部分の色は、本来のデザインに影響を与えないために大きく変更せず、下縫いの糸の色を変更するのが好ましい。
また、コントラストを変更する処理として、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色との明度差を大きくすると、自然な陰影を形成できる。
【0068】
一方、凹凸の度合の小さい領域に対しては、コントラストの変更は行わず、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、下縫いに用いる糸の色とのコントラスト差を設けずに刺繍を行うことができる。
【0069】
図10(A)は、図9に示すフローチャートのステップS204において、下縫いの糸の色を変更した例を示す図であり、図10(B)は、図9に示すフローチャートのステップS205において、刺繍絵柄の密度を下げる(ステッチの密度を下げる)処理を行った刺繍の図である。
図9に示した第三の実施態様によれば、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と下縫いに用いる糸の色とのコントラストを上げる処理と、刺繍絵柄の密度を下げる処理を行っているため、コントラスト差の大きい下縫いが透けるような外観となり、刺繍絵柄の視覚的凹凸感を強調することができる。
【0070】
一方、凹凸感を強調しない場合には、刺繍絵柄の刺繍密度を変更せず、または刺繍密度を上げて、かつ刺繍絵柄の糸の色と下縫いの糸の色を同じ色で構成することができる。
【0071】
通常の刺繍装置では、装置に搭載できる糸の色数に限りがあるため、刺繍絵柄の刺繍に用いる糸と、下縫いに用いる糸の色を自由に調整することが難しい。よって、刺繍システムは、液体吐出装置を備え、インラインで糸の着色を行うことができる構成とすることが好ましい。
【0072】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 糸を着色する着色手段と、刺繍絵柄の刺繍及び下縫いを行う刺繍手段と、を備える刺繍システムであって、
前記刺繍手段は、前記刺繍絵柄の刺繍及び前記下縫いの少なくとも一方に、前記着色手段により着色された前記糸を用いる刺繍手段であり、
刺繍イメージに基づいて前記刺繍絵柄及び前記下縫いのデータを作成する刺繍データ作成手段と、
前記糸を着色するための色データを作成する色データ作成手段と、
前記刺繍イメージの凹凸感を表す凹凸データを得る凹凸データ取得手段と、
前記凹凸データに基づいて前記刺繍絵柄の刺繍密度を変更する刺繍密度調整手段と、を備えることを特徴とする刺繍システムである。
<2> 前記凹凸データに基づいて、前記刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、前記下縫いに用いる糸の色とのコントラストを変更するコントラスト調整手段を備えることを特徴とする前記<1>の刺繍システムである。
<3> 前記凹凸データ取得手段により前記刺繍イメージの凹凸度合が大きい領域を抽出し、
前記刺繍密度調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍密度を下げ、
前記コントラスト調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、前記下縫いに用いる糸の色とのコントラストを上げることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の刺繍システムである。
<4> 前記凹凸データ取得手段により前記刺繍イメージの凹凸度合が大きい領域を抽出し、
前記刺繍密度調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍密度を下げ、
前記コントラスト調整手段は、前記凹凸度合が大きい領域に対応する前記刺繍絵柄の刺繍に用いる糸の色と、前記下縫いに用いる糸の色との明度差を大きくすることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の刺繍システムである。
<5> 前記凹凸データは、前記刺繍イメージのモチーフから取得した表面粗さのデータであることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の刺繍システムである。
<6> 前記凹凸データは、前記刺繍イメージの画像のコントラストのデータであることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の刺繍システムである。
<7> 前記凹凸データは、前記刺繍イメージの画像の周波数のデータであることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の刺繍システムである。
<8> 前記凹凸データは、ユーザが設定したものであることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の刺繍システムである。
【符号の説明】
【0073】
1 ヘッド
10 ノズル列
11 ノズル
12 ノズル面
100 刺繍装置(刺繍手段)
101 糸
103 液体吐出装置(着色手段)
104 乾燥装置
105 後処理装置
106 給糸装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開平5-272046号公報
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10