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特開2023-178045感覚提示制御装置及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178045
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】感覚提示制御装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091088
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】界 瑛宏
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA63
5E555AA64
5E555AA76
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC01
5E555BE17
5E555CA44
5E555CB19
5E555CB23
5E555DA08
5E555DA13
5E555DA24
5E555DA30
5E555DD06
5E555EA09
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】VR映像と連動して温感を提示する。
【解決手段】感覚提示制御装置3は、視聴者の現実世界における位置姿勢が入力される位置姿勢入力部30と、視聴者の仮想空間における位置姿勢を計算する位置姿勢計算部31と、熱源の位置が予め登録された熱源データベース32と、視聴者に熱源の感覚を提示するか否かを判定し、視聴者に提示する熱源の出力を計算する出力制御部33と、視聴者に熱源の温感を提示する感覚提示部34と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源が含まれるVR映像を視聴する人物に前記熱源の感覚を提示する感覚提示制御装置であって、
人物の現実世界における位置姿勢が入力される位置姿勢入力部と、
予め設定された前記人物の仮想空間における初期位置姿勢、及び、前記人物の前記現実世界における位置姿勢に基づいて、前記人物の仮想空間における位置姿勢を計算する位置姿勢計算部と、
前記仮想空間に配置された熱源の位置が予め登録された熱源データベースと、
前記仮想空間における位置姿勢、及び、前記熱源データベースに基づいて、前記人物に前記熱源の感覚を提示するか否かを判定し、前記人物に提示する前記熱源の出力を計算する出力制御部と、
前記出力制御部が計算した熱源の出力に基づいて、前記熱源の感覚として、前記人物に前記熱源の温感を提示する感覚提示部と、
を備えることを特徴とする感覚提示制御装置。
【請求項2】
前記熱源データベースは、前記熱源の感覚が前記人物から前記熱源までの距離に依存しない第1熱源の位置と、前記熱源の感覚が前記人物から前記熱源までの距離に依存する第2熱源の位置とが予め登録され、
前記出力制御部は、
前記仮想空間に配置された熱源の種類を表す識別情報が入力され、
前記仮想空間に前記第1熱源が配置されている場合、前記人物が前記第1熱源から遮蔽されているか否かを判定し、前記人物が前記第1熱源から遮蔽されている場合、前記人物に提示する前記熱源の出力をゼロと計算し、
前記仮想空間に前記第2熱源が配置されている場合、前記人物から前記熱源までの距離に応じて、前記人物に提示する前記熱源の出力を計算することを特徴とする請求項1に記載の感覚提示制御装置。
【請求項3】
前記熱源データベースは、前記第1熱源の情報として、天候毎の係数が予め登録され、 前記出力制御部は、前記人物が前記第1熱源から遮蔽されていない場合、前記天候毎の係数を前記人物に提示する前記熱源の出力として計算することを特徴とする請求項2に記載の感覚提示制御装置。
【請求項4】
前記熱源データベースは、前記第2熱源の情報として、近距離閾値及び遠距離閾値が予め登録され、
前記出力制御部は、
前記人物から前記熱源までの距離が前記近距離閾値未満の場合、前記人物に提示する前記熱源の出力を最大と計算し、
前記人物から前記熱源までの距離が前記近距離閾値以上、かつ、前記遠距離閾値未満の場合、前記人物から前記熱源までの距離に応じて、前記人物に提示する前記熱源の出力を計算し、
前記人物から前記熱源までの距離が前記遠距離閾値以上の場合、前記人物に提示する前記熱源の出力をゼロと計算することを特徴とする請求項3に記載の感覚提示制御装置。
【請求項5】
前記感覚提示部は、前記熱源の感覚として、前記熱源の光感覚をさらに提示することを特徴とする請求項4に記載の感覚提示制御装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の感覚提示制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感覚提示制御装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
HMD(Head-Mounted Display)やヘッドフォンなどの普及により、仮想現実(VR:Virtual Reality)における視覚提示及び聴覚提示が可能となり、それら以外の温感などの感覚提示の実現も期待されている。そこで、皮膚が暖められることによる温覚やHMDの隙間からの間接光による光感覚を用いて、太陽や焚火などの熱源の温感を提示する手法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-85725号公報
【特許文献2】特開2001-166676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した特許文献1,2に記載の手法は、熱源の映像と温覚提示が必ずしも連動しておらず、高い臨場感が得られない場合がある。
【0005】
本発明は、VR映像と連動して温感を提示する感覚提示制御装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る感覚提示制御装置は、熱源が含まれる仮想空間のVR映像を視聴する人物に熱源の感覚を提示する感覚提示制御装置であって、位置姿勢入力部と、位置姿勢計算部と、熱源データベースと、出力制御部と、感覚提示部と、を備える構成とした。
【0007】
かかる構成によれば、位置姿勢入力部は、人物の現実世界における位置姿勢が入力される。
位置姿勢計算部は、予め設定された人物の仮想空間における初期位置姿勢、及び、人物の現実世界における位置姿勢に基づいて、人物の仮想空間における位置姿勢を計算する。
熱源データベースは、仮想空間に配置された熱源の位置が予め登録される。
【0008】
出力制御部は、仮想空間における位置姿勢、及び、熱源データベースに基づいて、人物に熱源の感覚を提示するか否かを判定し、人物に提示する熱源の出力を計算する。
感覚提示部は、出力制御部が計算した熱源の出力に基づいて、熱源の感覚として、人物に熱源の温感を提示する。
このように、感覚提示制御装置は、VR映像と連動して温感を提示することができる。
【0009】
なお、本発明は、コンピュータを前記した感覚提示制御装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、VR映像と連動して温感を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)及び(b)は、実施形態に係る感覚提示システムの概要図である。
図2】実施形態に係る感覚提示制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態において、人物の位置計算を説明する説明図である。
図4】実施形態において、人物の姿勢計算を説明する説明図である。
図5】実施形態において、(a)は太陽が遮蔽されない場合の説明図であり、(b)は太陽が遮蔽される場合の説明図である。
図6】実施形態において、(a)~(e)は、第1熱源の出力計算を説明する説明図である。
図7】実施形態において、(a)及び(b)は、第2熱源の出力計算を説明する説明図である。
図8】実施形態において、第2熱源の出力の一例を示すグラフである。
図9】実施形態において、感覚提示装置への出力の調整を説明する説明図である。
図10】実施形態において、感覚提示装置と熱源とのなす角と、感覚提示装置への出力との関係の一例を示すグラフである。
図11】実施形態において、温感及び光感覚のエネルギーを説明する説明図である。
図12】実施形態において、第1熱源が配置されている場合の感覚提示制御装置の動作を示すフローチャートである。
図13】実施形態において、第2熱源が配置されている場合の感覚提示制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(実施形態)
[感覚提示システムの概要]
図1を参照し、実施形態に係る感覚提示システム1の概要について説明する。
感覚提示システム1は、HMD2でVR映像を視聴する視聴者(人物)Hに対し、VR映像と連動するように熱源(例えば、太陽、焚火)の感覚を提示するものである。図1(a)に示すように、感覚提示システム1は、HMD2と、感覚提示制御装置3と、感覚提示装置4とを備える。
【0014】
なお、熱源の感覚の提示とは、熱源が発する熱や光を、温感や光感覚として視聴者に知覚させることである。
【0015】
HMD2は、VR映像を表示する一般的なヘッドマウントディスプレイである。例えば、HMD2は、ゴーグル状の形状を有しており、バンド20などで視聴者90の頭部に装着される。また、HMD2は、視聴者90の位置及び姿勢を計測する位置姿勢計測手段(例えば、ジャイロセンサ)を備え、その計測結果である位置姿勢を感覚提示制御装置3に出力する。この位置姿勢は、現実世界において、視聴者90の頭部の位置及び姿勢を表している。
【0016】
ここで、HMD2は、感覚提示制御装置3を内蔵していることとする。なお、感覚提示制御装置3は、HMD2から独立したハードウェアとし、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信手段を介して、HMD2に接続してもよい。
【0017】
感覚提示制御装置3は、熱源が含まれるVR映像を視聴する視聴者90に熱源の感覚を提示するものである。本実施形態では、感覚提示制御装置3は、VR映像と連動して熱源の温感及び光感覚を提示するように、感覚提示装置4に制御信号を出力する。
なお、仮想空間とは、VR映像で再現される仮想的なCG空間のことである。本実施形態では、太陽や焚火などの熱源が仮想空間に配置されている。
【0018】
感覚提示装置4は、感覚提示制御装置3からの制御信号に応じて、視聴者90に熱源の感覚を提示するものである。図1(b)に示すように、感覚提示装置4は、HMD2の下部左側に視聴者90から離間して取り付けられた感覚提示装置4と、HMD2の下部右側に視聴者90から離間して取り付けられた感覚提示装置4とを備える。本実施形態では、感覚提示装置4,4は、視聴者90に温感及び光感覚の両方を提示する。例えば、感覚提示装置4,4としては、視聴者90に温感を提示するペルチェ素子や小型ヒータと、視聴者90に間接光を照射するLED(Light Emitting Diode)やハロゲンランプとを組み合わせたものがあげられる。
【0019】
本実施形態では、感覚提示装置4,4は、VR映像中の熱源の位置に応じて駆動する。つまり、VR映像中、視聴者90の左側に熱源が位置する場合、左側の感覚提示装置4が動作して、視聴者90の頭部左側に熱源の温感及び光感覚を提示する。また、VR映像中、視聴者90の右側に熱源が位置する場合、右側の感覚提示装置4が駆動して、視聴者90の頭部右側に熱源の温感及び光感覚を提示する。さらに、VR映像中、視聴者90の正面に熱源が位置する場合、両側の感覚提示装置4,4が駆動して、視聴者90の頭部両側に熱源の温感及び光感覚を提示する。
【0020】
[感覚提示制御装置の構成]
図2を参照し、感覚提示制御装置3の構成について説明する。
図2に示すように、感覚提示制御装置3は、位置姿勢入力部30と、位置姿勢計算部31と、熱源データベース32と、出力制御部33と、感覚提示部34とを備える。
【0021】
位置姿勢入力部30は、視聴者90の現実世界における位置姿勢が入力されるものである。本実施形態では、位置姿勢入力部30は、HMD2から視聴者90の現実世界における位置姿勢が入力され、入力された位置姿勢を位置姿勢計算部31に出力する。
【0022】
位置姿勢計算部31は、予め設定された視聴者90の仮想空間における初期位置姿勢、及び、視聴者90の現実世界における位置姿勢に基づいて、視聴者90の仮想空間における位置姿勢を計算するものである。この初期位置姿勢は、仮想空間において、視聴者90の頭部の位置及び姿勢(回転座標)の初期値を表し、例えば、VR映像の制作者が予め設定しておく。そして、位置姿勢計算部31は、計算した仮想空間における位置姿勢を出力制御部33に出力する。
【0023】
<位置姿勢の計算>
図3及び図4を参照し、位置姿勢計算部31による位置姿勢の計算について説明する。
図3に示すように、視聴者90の現実世界における位置を(X,Y,Z)、視聴者90の仮想空間における初期位置を(X,Y,Z)、視聴者90の仮想空間におけるスケールをSとする(図3の例では、S=1)。また、仮想空間の原点を(0,0,0)とし、熱源(例えば、焚火93)の位置を(X,Y,Z)とする。このとき、視聴者90の仮想空間における位置(X,Y,Z)は、以下の式(1)で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
図4に示すように、視聴者90の仮想空間における姿勢(回転座標)を(X´,Y´,Z´)、視聴者90の仮想空間における初期姿勢を(X´,Y´,Z´)とする。このとき、視聴者90の現実世界における姿勢(X´,Y´,Z´)は、以下の式(2)で表される。
【0026】
【数2】
【0027】
従って、位置姿勢計算部31は、式(1)を用いて、視聴者90の仮想空間における位置(X,Y,Z)を算出すればよい。また、位置姿勢計算部31は、式(2)より、視聴者90の仮想空間における姿勢(X´,Y´,Z´)を逆算すればよい。
【0028】
図2に戻り、感覚提示制御装置3の構成について説明を続ける。
熱源データベース32は、仮想空間に配置された熱源の位置が予め登録されるものである。この熱源の位置は、仮想空間内での熱源の3次元座標を表す。具体的には、熱源データベース32は、熱源の感覚が視聴者90から熱源までの距離に依存しない第1熱源の位置と、熱源の感覚が視聴者90から熱源までの距離に依存する第2熱源の位置とが予め登録される。なお、熱源データベース32は、VR映像の制作者が手動で登録する。
【0029】
第1熱源は、視聴者90から熱源までの距離に関わらず、視聴者90が感じる温感が変化しない熱源である(例えば、太陽)。また、第2熱源は、視聴者90から熱源までの距離に応じて、視聴者90が感じる温感が変化する熱源である(例えば、焚火)。
【0030】
また、熱源データベース32には、熱源の種類が予め登録される。この熱源の種類は、第1熱源又は第2熱源であるかを表す識別情報である(例えば、0:太陽、1:焚火)。
また、熱源データベース32には、第1熱源の情報として、天候毎の係数が登録される。例えば、天候毎の係数は、雨のとき0、曇りのとき0.2、晴れのとき1である。
また、熱源データベース32には、第2熱源の情報として、後記する近距離閾値TH1、及び、遠距離閾値TH2が予め登録される。
【0031】
出力制御部33は、仮想空間における位置姿勢、及び、熱源データベース32に基づいて、視聴者90に熱源の感覚を提示するか否かを判定し、視聴者90に提示する熱源の出力を計算するものである。本実施形態では、出力制御部33は、仮想空間に配置された熱源の種類を表す識別情報が入力されることとする。また、出力制御部33は、第1熱源の場合、仮想空間に配置された遮蔽物の情報(例えば、位置、形状、サイズ)と、天候の種類(例えば、晴れ、曇り)とが入力されることとする。
【0032】
なお、本実施形態では、第1熱源と第2熱源の出力制御が排他的であることとする。つまり、出力制御部33は、第1熱源又は第2熱源の何れか一方しか感覚提示を行わないこととする。
【0033】
<第1熱源の出力計算>
図5及び図6を参照し、第1熱源の出力計算について説明する。
図5(a)に示すように、天気が良く、太陽などの熱源が存在するVR映像の場合、第1熱源の出力を高くする。一方、図5(b)に示すように、トンネルなどの遮蔽物により遮蔽されるVR映像の場合、第1熱源の出力をゼロにする。
【0034】
図6では、第1熱源が太陽91であることとして説明する。また、熱源の出力Hが0~1の間で計算され、熱源としての太陽91の出力をHSUNとする(但し、0≦HSUN≦1)。
【0035】
出力制御部33は、仮想空間に太陽91が配置されている場合、視聴者90が太陽91から遮蔽されているか否かを判定する。そして、出力制御部33は、視聴者90が太陽91から遮蔽されていない場合、天候毎の係数を太陽91の出力HSUNとして計算する。一方、出力制御部33は、視聴者90が太陽91から遮蔽されている場合、太陽91の出力HSUNをゼロと計算する。その後、出力制御部33は、計算した太陽91の出力HSUNを感覚提示部34に出力する。
【0036】
図6(a)の例では、視聴者90が太陽91から遮蔽されておらず、天気が晴れなので、太陽91の出力HSUN=1となる。また、図6(b)の例では、視聴者90が太陽91から遮蔽されておらず、天気が曇りなので、太陽91の出力HSUN=0.2となる。図6(c)に示すように、視聴者90が太陽91から遮蔽されているので、太陽91の出力HSUN=0となる。
【0037】
このとき、出力制御部33は、視聴者90から太陽91への方向ベクトルVが遮蔽物92に衝突するか否かで、視聴者90が太陽91から遮蔽されているか否かを判定する。図6(d)に示すように、方向ベクトルVが遮蔽物92に衝突しない場合、出力制御部33は、視聴者90が太陽91から遮蔽されていないと判定する。また、図6(e)に示すように、方向ベクトルVが遮蔽物92に衝突する場合、出力制御部33は、視聴者90が太陽91から遮蔽されていると判定する。
【0038】
具体的には、出力制御部33は、以下の式(3)を用いて、太陽91の出力HSUNを計算できる。なお、式(3)において、LineTraceは、遮蔽判定を行う関数である。また、Vector_sunは、太陽光の逆方向ベクトル(つまり、方向ベクトルV)である。また、Playter_position(X,Y,Z)は、視聴者90の仮想空間における位置である。また、weatherは、天気毎の係数を表す。
【0039】
【数3】
【0040】
このLineTraceでは、Vector_sunで指定されたベクトルの逆方向で、Playter_position(X,Y,Z)から光線を照射する演算を行う。そして、LineTraceは、その光線が遮蔽物92に衝突した場合にゼロを返し、その光線が遮蔽物92に衝突しない場合にweatherの値を返す。
【0041】
<第2熱源の出力計算>
図7を参照し、第2熱源の出力計算について説明する。
図7では、第2熱源が焚火93であり、熱源としての焚火93の出力をHFIREとする(但し、0≦HFIRE≦1)。また、図3に示すように、視聴者90から焚火93までの距離dが、以下の式(4)で表されることとする。
【0042】
【数4】
【0043】
出力制御部33は、仮想空間に焚火93が配置されている場合、距離dに応じて、焚火93の出力HFIREを計算する。図7(a)に示すように、出力制御部33は、距離dが近づく程、焚火93の出力HFIREを高くし、距離dがある程度近づいた場合、焚火93の出力HFIREを最大(例えば、1)とする。図7(b)に示すように、出力制御部33は、距離dが遠くなる程、焚火93の出力HFIREを低くし、距離dがある程度離れた場合、ゼロとする。そして、出力制御部33は、計算した焚火93の出力HFIREを感覚提示部34に出力する。
【0044】
具体的には、出力制御部33は、距離dが近距離閾値TH1未満の場合、焚火93の出力HFIREを最大=1と計算する。また、出力制御部33は、距離dが近距離閾値TH1以上、かつ、遠距離閾値TH2未満の場合、距離dに応じて、焚火93の出力HFIREを計算する。また、出力制御部33は、距離dが遠距離閾値TH2以上の場合、焚火93の出力HFIREをゼロと計算する。つまり、出力制御部33は、以下の式(5)を用いて、焚火93の出力HSUNを計算できる。なお、ifは、カッコ内の条件式を満たす場合、次項の演算を行う関数である。図8には、焚火93の出力HFIREの一例をグラフに図示した。
【0045】
【数5】
【0046】
図2に戻り、感覚提示制御装置3の構成について説明を続ける。
感覚提示部34は、出力制御部33が計算した熱源の出力Hに基づいて、熱源の感覚として、視聴者90に熱源の温感を提示するものである。具体的には、感覚提示部34は、以下の式(6)を用いて、熱源の出力Hを感覚提示装置4への制御信号(電力)Pに変換する。なお、感覚提示装置4の最大出力Pmaxは、予め設定されている。
【0047】
【数6】
【0048】
図9に示すように、感覚提示部34は、左右に2つの感覚提示装置4,4が配置されているので、感覚提示装置4,4それぞれへの制御信号Pを調整してもよい。図9では、熱源が焚火93であることとして説明するが、太陽91の場合も同様である。また、図9では、視聴者90が正面を向いており、視聴者90の正面に焚火93が位置することとする。
【0049】
図9に示すように、感覚提示装置4,4は、視聴者90が正面から角度θ,θだけ外側に向くようにHMD2に取り付けられている。そこで、感覚提示部34は、感覚提示装置4,4のそれぞれと焚火93とのなす角φ,φを求める。具体的には、感覚提示部34は、仮想空間における視聴者90の位置(X,Y,Z)及び姿勢(X´,Y´,Z´)と焚火93の位置(X,Y,Z)との関係から、感覚提示装置4と焚火93とのなす角φを計算する。これと同様に、感覚提示部34は、感覚提示装置4と焚火93とのなす角φを計算する。
【0050】
次に、感覚提示部34は、感覚提示装置4,4のそれぞれと焚火93とのなす角φ,φに応じて、感覚提示装置4,4それぞれの制御信号P,Pを調整する。具体的には感覚提示部34は、なす角φ,φが大きくなるほど、制御信号P,Pを小さくする。図10では、感覚提示装置4と焚火93とのなす角φと、感覚提示装置4の制御信号(電力)Pとの関係の一例をグラフに図示した。この関係は、以下の式(7)で表される。
【0051】
【数7】
【0052】
図11を参照し、感覚提示装置4への制御信号Pと、感覚提示装置4が出力するエネルギーEとの関係を説明する。感覚提示装置4の放射熱によるエネルギーをE1とし(単位W)、感覚提示装置4の光エネルギーをE2とする(単位W)。
【0053】
放射熱によるエネルギーE1は、以下の式(8)で表される。なお、σは、ステファンボルツマン定数である(σ=5.67×10-8)。また、εが放射率であり、T1が感覚提示装置4の温度であり(単位K)、T2が室温である(単位K)。
【0054】
【数8】
【0055】
光感覚提示部41の光エネルギーE2は、以下の式(9)で表される。なお、Iが発光効率であり(単位lm/W)、Pが電力である(単位W)。
【0056】
【数9】
【0057】
図11に示すように、感覚提示装置4からの放射熱によるエネルギーE1や光エネルギーE2が視聴者90の皮膚に吸収されることで、温感や光感覚を提示できる。視聴者90の皮膚の上昇温度ΔTは、以下の式(10)で表される。なお、Dが視聴者90の皮膚と感覚提示装置4との距離であり、Cが視聴者90の皮膚の比熱であり、Uが視聴者90の皮膚の光吸収率であり、kが定数である。
【0058】
【数10】
【0059】
ここで、感覚提示装置4の温度T1は、以下の式(11)に示すように、電力Pに応じて変化する。なお、Mが感覚提示装置4の質量であり、Ctが感覚提示装置4の比熱である。また、エネルギーE1,E2は、無相関である。光エネルギーE2の方が放射熱によるエネルギーE1よりも多くなり、感覚提示装置4に熱が残りにくく、より素早い制御が可能となる。例えば、50WのLEDを用いた場合、感覚提示装置4の温度T1が約70度になり、E1:E2が約1:9になる。感覚提示の際、感覚提示装置4に印可する電力Pを制御すればよい。
【0060】
【数11】
【0061】
[感覚提示制御装置の動作]
<第1熱源>
図12を参照し、第1熱源の場合における感覚提示制御装置3の動作を説明する。
図12に示すように、ステップS1において、位置姿勢入力部30は、視聴者90の現実世界における位置姿勢が入力される。そして、位置姿勢計算部31は、視聴者90の仮想空間における初期位置姿勢、及び、現実世界における位置姿勢に基づいて、視聴者90の仮想空間における位置姿勢を計算する。
【0062】
ステップS2において、出力制御部33は、視聴者90が第1熱源から遮蔽されているか否かを判定する。
遮蔽されている場合(ステップS2でYes)、感覚提示制御装置3は、ステップS3に進む。
遮蔽されていない場合(ステップS2でNo)、感覚提示制御装置3は、ステップS4に進む。
【0063】
ステップS3において、出力制御部33は、第1熱源の出力をゼロと計算する。この場合、感覚提示部34は、視聴者90に温感や光感覚を提示しない。その後、感覚提示制御装置3は、ステップS1に戻る。
【0064】
ステップS4において、出力制御部33は、天候毎の係数を第1熱源の出力として計算する。そして、感覚提示部34は、出力制御部33が計算した第1熱源の出力に基づいて、視聴者90に熱源の温感や光感覚を提示する。その後、感覚提示制御装置3は、ステップS5に進む。
【0065】
ステップS5において、感覚提示制御装置3は、処理を終了するか否かを判定する。例えば、視聴者90がVR映像の再生を中止した場合、感覚提示制御装置3は、処理を終了すると判定する。
終了する場合(ステップS5でYes)、感覚提示制御装置3は、ステップS6に進む。
終了しない場合(ステップS5でNo)、感覚提示制御装置3は、ステップS1に戻る。
【0066】
ステップS6において、出力制御部33は、第1熱源の出力をゼロと計算する。その後、感覚提示制御装置3は、処理を終了する。
【0067】
<第1熱源>
図13を参照し、第2熱源の場合における感覚提示制御装置3の動作を説明する。
図13に示すように、ステップS10において、位置姿勢入力部30は、視聴者90の現実世界における位置姿勢が入力される。そして、位置姿勢計算部31は、視聴者90の仮想空間における初期位置姿勢、及び、現実世界における位置姿勢に基づいて、視聴者90の仮想空間における位置姿勢を計算する。
【0068】
ステップS11において、出力制御部33は、視聴者90から焚火93までの距離dが遠距離閾値TH2以上であるか否かを判定する。
距離dが遠距離閾値TH2以上の場合(ステップS11でYes)、感覚提示制御装置3は、ステップS12に進む。
距離dが遠距離閾値TH2以上でない場合(ステップS2でNo)、感覚提示制御装置3は、ステップS13に進む。
【0069】
ステップS12において、出力制御部33は、第2熱源の出力をゼロと計算する。この場合、感覚提示部34は、視聴者90に温感や光感覚を提示しない。その後、感覚提示制御装置3は、ステップS10に戻る。
【0070】
ステップS13において、出力制御部33は、距離dに応じて第2熱源の出力を計算する。そして、感覚提示部34は、出力制御部33が計算した第2熱源の出力に基づいて、視聴者90に熱源の温感や光感覚を提示する。その後、感覚提示制御装置3は、ステップS14に進む。
【0071】
ステップS14において、感覚提示制御装置3は、処理を終了するか否かを判定する。例えば、視聴者90がVR映像の再生を中止した場合、感覚提示制御装置3は、処理を終了すると判定する。
終了する場合(ステップS14でYes)、感覚提示制御装置3は、ステップS15に進む。
終了しない場合(ステップS14でNo)、感覚提示制御装置3は、ステップS10に戻る。
【0072】
ステップS15において、出力制御部33は、第2熱源の出力をゼロと計算する。その後、感覚提示制御装置3は、処理を終了する。
【0073】
[作用・効果]
以上のように、感覚提示制御装置3は、VR映像と連動して温感及び光感覚を提示することができる。つまり、感覚提示制御装置3は、皮膚が暖められることによる温覚や、HMD2の隙間から差し込む間接光による光感覚から、視聴者90が太陽や炎のような熱源の知覚を可能となる。これにより、感覚提示制御装置3は、臨場感のある体験を視聴者90に提供することが可能となり、表現の幅を向上させることができる。
【0074】
以上、実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
前記した実施形態では、熱源として太陽や焚火を例示したが、熱源はこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0075】
前記した実施形態では、感覚提示制御装置が独立したハードウェアであることとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスクなどのハードウェア資源を、前記した感覚提示制御装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリなどの記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 感覚提示システム
2 HMD
3 感覚提示制御装置
4 感覚提示装置
30 位置姿勢入力部
31 位置姿勢計算部
32 熱源データベース
33 出力制御部
34 感覚提示部
図1
図2
図3
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図10
図11
図12
図13