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特開2023-178067二次電池用圧延銅箔、並びにそれを用いた二次電池負極及び二次電池の製造方法
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  • 特開-二次電池用圧延銅箔、並びにそれを用いた二次電池負極及び二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178067
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】二次電池用圧延銅箔、並びにそれを用いた二次電池負極及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/00 20060101AFI20231207BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231207BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20231207BHJP
   C22F 1/08 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
C22C9/00
H01M4/66 A
C22F1/00 622
C22F1/00 630A
C22F1/00 661A
C22F1/00 661C
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 694A
C22F1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091117
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長 俊介
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017BB06
5H017CC01
5H017EE01
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH10
(57)【要約】
【課題】高強度及び高導電率を両立させた二次電池用圧延銅箔を提供すること。
【解決手段】Mgを0.25~1.0重量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる二次電池用圧延銅箔であって、圧延平行方向の引張強さTSが、TS(MPa)≧250×Mg(重量%)+554の式を満たし、導電率ECが50%IACS以上であり、厚みが50μm以下である二次電池用圧延銅箔。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgを0.25~1.0重量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる二次電池用圧延銅箔であって、
圧延平行方向の引張強さTSが、TS(MPa)≧250×Mg(重量%)+554の式を満たし、導電率ECが50%IACS以上であり、厚みが50μm以下である二次電池用圧延銅箔。
【請求項2】
Mgを0.25~1.0重量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる二次電池用圧延銅箔であって、
圧延平行方向の引張強さTSが640MPa以上であり、導電率ECが50%IACS以上であり、厚みが50μm以下である二次電池用圧延銅箔。
【請求項3】
導電率ECが55%IACS以上である、請求項1又は2に記載の二次電池用圧延銅箔。
【請求項4】
Mgを0.4~0.6重量%含有し、圧延平行方向の引張強さTSが700MPa以上である、請求項1又は2に記載の二次電池用圧延銅箔。
【請求項5】
Pを0.0001~0.005重量%含有する請求項1又は2に記載の二次電池用圧延銅箔。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の二次電池用圧延銅箔を集電体の原材料として二次電池負極を製造する方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の二次電池用圧延銅箔を集電体の原材料として二次電池を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用圧延銅箔、並びにそれを用いた二次電池負極及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高く、比較的高い電圧を得ることができるという特徴を有し、ノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の小型電子機器に多用されている。また、リチウムイオン二次電池は、電気自動車や一般家庭の分散配置型電源といった大型機器の電源としても利用が始められており、他の二次電池と比較して軽量でエネルギー密度が高いことから、各種の電源を必要とする機器で広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電極体は一般に、巻回構造又は各電極を積層したスタック構造を有している。リチウムイオン二次電池の正極は、アルミニウム箔製の集電体とその表面に設けられたLiCoO2、LiNiO2及びLiMn24等のリチウム複合酸化物を材料とする正極活物質から構成され、負極は銅箔製の集電体とその表面に設けられたカーボン等を材料とする負極活物質から構成されるのが一般的である。そして、リチウムイオン電池の電極(負極)の集電体として、従来から銅分99.9%のタフピッチ銅と呼ばれる圧延銅箔や、電解銅箔が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2013-001982号公報)には、Mg:0.10~0.30wt%を含み、残部が不可避的不純物及び銅からなり、350℃で30分間熱処理後の引張強さTSAが400MPa以上で、かつ350℃で30分間熱処理後の導電率が65%IACS以上である圧延銅箔が開示されている。この圧延銅箔は、熱処理後の強度と破断伸びがいずれも優れていると開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2017-179490号公報)には、Mgを0.15mass%以上、0.35mass%未満の範囲内で含み、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、導電率が75%IACS超えるとともに、小傾角粒界およびサブグレインバウンダリー長さ比率LLB/(LLB+LHB)>20%の式が成り立つことを特徴とする電子・電気機器用銅合金が開示されている。この発明によれば、導電性、強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性に優れた電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金塑性加工材、電子・電気機器用部品、端子、及び、バスバーを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-001982号公報
【特許文献2】特開2017-179490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、集電体には電極活物質が塗着されているが、活物質からのイオンの移動に伴って充放電時には活物質が膨張及び収縮し、充放電毎に集電体が繰り返し負荷を受けることになる。そのため、集電体である銅箔が部分的に破断、剥離すると電池の寿命低下に繋がる。一方、近年リチウムイオン電池の高容量化が求められており、既存のC系活物質からSi系活物質への代替が検討されている。Si系活物質は充放電時の体積変化率が大きいため、繰り返しサイクル後に活物質が集電体から剥離する可能性が懸念される。
【0008】
特許文献1に係る発明は、Mgを0.10~0.30wt%添加することにより強度と破断伸びを高めた圧延銅箔が得られたが、さらなる高容量化を実現するためにSi系活物質濃度が上昇すると、既存の引張強度・破断伸びでは不足となる可能性がある。高濃度Si系活物質に対応できるさらに高強度の集電体銅箔が必要である。
【0009】
一方で、活物質を集電箔に塗布する際の熱処理温度は技術の向上に伴い低下しており、特に活物質と集電箔との結合剤として水系のバインダーを用いた際の熱処理温度は約150~200℃である(Cu-Mg系では200℃以下の熱処理温度での強度低下率は5%以下である)。そのため、熱処理後の強度よりも常温の強度を重視して、従来よりもさらに高強度な電池用銅箔の開発が必要である。
【0010】
また、リチウムイオン電池は充電時に内部抵抗によるジュール熱が発生し、発熱を引き起こすが、発熱量が大きいと電池特性の劣化、場合によっては発火等の重大事故を引き起こす可能性がある。そのため、発熱量を抑えるために電気抵抗の小さい(導電率の高い)集電体銅箔が必要である。ただし、強度を上げるために、単にMg濃度を増加させると、導電率は低下してしまう。したがって、Mg濃度を増加させすぎずに、強度を上昇させる必要がある。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、一実施形態において、高強度及び高導電率を両立させた二次電池用圧延銅箔を提供することを課題とする。本発明は別の実施形態において、そのような二次電池用圧延銅箔を用いた二次電池負極及び二次電池を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が鋭意検討した結果、二次電池用圧延銅箔を製造する工程を工夫することで、同程度のMg濃度でも、従来技術よりも高い強度の二次電池用圧延銅箔が得られることを見出した。すなわち、導電率を低下させずに、二次電池用圧延銅箔の強度を高めることができた。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下に例示される。
【0013】
[1]
Mgを0.25~1.0重量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる二次電池用圧延銅箔であって、
圧延平行方向の引張強さTSが、TS(MPa)≧250×Mg(重量%)+554の式を満たし、導電率ECが50%IACS以上であり、厚みが50μm以下である二次電池用圧延銅箔。
[2]
Mgを0.25~1.0重量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる二次電池用圧延銅箔であって、
圧延平行方向の引張強さTSが640MPa以上であり、導電率ECが50%IACS以上であり、厚みが50μm以下である二次電池用圧延銅箔。
[3]
導電率ECが55%IACS以上である、[1]又は[2]に記載の二次電池用圧延銅箔。
[4]
Mgを0.4~0.6重量%含有し、圧延平行方向の引張強さTSが700MPa以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の二次電池用圧延銅箔。
[5]
Pを0.0001~0.005重量%含有する[1]~[4]のいずれか一項に記載の二次電池用圧延銅箔。
[6]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の二次電池用圧延銅箔を集電体の原材料として、二次電池負極を製造する方法。
[7]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の二次電池用圧延銅箔を集電体の原材料として、二次電池を製造する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高強度及び高導電率を両立させた二次電池用圧延銅箔、並びにそのような二次電池用圧延銅箔を用いた二次電池負極及び二次電池を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例及び比較例における、Mg濃度と圧延平行方向の引張強さTSとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
(二次電池用圧延銅箔の組成)
本実施形態の二次電池用圧延銅箔は、Mgを0.25~1.0重量%含有する。Mgの含有量が0.25重量%未満であると引張強さの低下が顕著になる。この観点から、Mgの含有量は0.3重量%以上であることがより好ましく、0.4重量%以上であることがさらにより好ましい。
【0018】
Mgの含有量が1.0重量%を超えると、導電率の低下が顕著になる。この観点から、Mgの含有量は0.9重量%以下であることが好ましく、0.8重量%以下であることがより好ましく、0.7重量%以下であることがさらにより好ましく、0.6重量%以下であることがさらにより好ましい。
【0019】
本実施形態の二次電池用圧延銅箔の組成は蛍光X線分析により測定できる。具体的には、蛍光X線分析はリガク社製Simultix14を使用し測定する。分析面は表面最大粗さRz(JIS-B0601(2013))が6.3μm以下となるように切削もしくは機械研磨したものを用いればよい。溶解鋳造中の溶湯から分析サンプルを採取する場合は30~40mmΦ、厚み50~80mm程度の形状に鋳込んだ後、厚み10~20mm程度に切断したのち切断面を分析面とする。分析面は表面最大粗さRz(JIS-B0601(2013))が6.3μm以下になるまで切削もしくは機械研磨を繰り返す。
なお、二次電池用圧延銅箔の組成は蛍光X線分析による測定の他に湿式分析としてICP発光分光分析法を用いてもよい。具体的には、日立ハイテクサイエンス社製ICP発光分光分析装置(ICP-OES)SPS3100を用いて測定を行うことができる。ICP発光分光分析法の場合はサンプルを塩酸と硝酸による混酸(塩酸2,硝酸1,水2)にて溶解したものを希釈して用いる。
【0020】
本発明の二次電池用圧延銅箔の材料、すなわちMgを含有させるベースの銅としては、JIS-H3100-C1100(2018)に規格するタフピッチ銅、又は、JIS-H3100-C1020(2018)に規格する無酸素銅が好ましい。これらの組成は純銅に近いため、銅箔の導電率が低下せず、集電体に適する。銅箔に含まれる酸素濃度は、タフピッチ銅の場合は0.05重量%(すなわち、500重量ppm)以下、無酸素銅の場合は0.001重量%(すなわち、10重量ppm)以下である。
【0021】
本発明に係る二次電池用圧延銅箔は、工業的に使用される銅で形成されており、不可避的不純物を含んでいる。この不可避的不純物としてのFe、Zr、S、Ge及びTiは、微少量存在していても、銅箔の曲げ変形によって結晶方位が回転し易くなり、剪断帯も入り易く、集電体が曲げ変形を繰返した時にクラックや破断が発生しやすくなるため好ましくない。このため、本発明に係る銅箔は、不可避的不純物としてのFe、Zr、S、Ge及びTiからなる群から選択された1種又は2種以上を合計で0.002重量%以下に制御することが好ましい。
【0022】
本実施形態の二次電池用圧延銅箔は、Pを0.0001~0.005重量%含んでもよい。銅中に酸素が含まれると、高温での熱処理時に水素と反応し、水素脆化を引き起こしやすくなる。Pを添加することで、Pが酸素と優先的に反応し、銅中の酸素を取り除くことができる。Pの含有量が0.005重量%を超えると、導電率の低下を引き起こす場合があるので、含有量は0.005重量%以下であることが好ましい。
【0023】
なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとし、「タフピッチ銅及び無酸素銅」を単独で用いたときにはタフピッチ銅及び無酸素銅をベースとした銅合金箔を含むものとする。
【0024】
(二次電池用圧延銅箔の引張強さ)
本発明の二次電池用圧延銅箔は、一実施形態において、圧延平行方向の引張強さTSが、TS(MPa)≧250×Mg(重量%)+554の式を満たす。圧延平行方向の引張強さTSが低すぎると、圧延銅箔を電池の集電体に用いたときに、充放電時の活物質の膨張及び収縮に伴って集電体が繰り返し負荷を受ける際、集電体が破断し易くなる。Mg濃度を上げると圧延平行方向の引張強さTSは上昇し、導電率は減少するが、リチウムイオン電池(特にSi系活物質を用いたリチウムイオン電池)において、活物質の膨張に耐えうる高強度と、発熱を抑制する高導電率を両立させるために実用的な圧延平行方向の引張強さTSとMg濃度の関係式として、TS(MPa)≧250×Mg(重量%)+554である必要がある。なお、TS(MPa)の上限については特に設ける必要はないが、例えばTS(MPa)≦500×Mg(重量%)+654となることが通常である。
【0025】
また、本発明の二次電池用圧延銅箔は、別の実施形態において、圧延平行方向の引張強さTSが640MPa以上である。圧延平行方向の引張強さTSが640MPa以上であれば、活物質の膨張に耐えうる高強度が担保される。好ましくは、二次電池用圧延銅箔の圧延平行方向の引張強さTSが700MPa以上である。これにより、二次電池用圧延銅箔の用途のさらなる拡大が期待できる。
【0026】
圧延平行方向の引張強さTSとは、常温(23℃)において、JIS-Z2241(2011)またはIPC-TM-650 Test Method 2.4.18(2012)に基づく引張強さ試験を圧延平行方向において実施した場合の値を意味する。
【0027】
(二次電池用圧延銅箔の導電率)
本実施形態の二次電池用圧延銅箔の導電率ECは50%IACS(International Annealed Copper Standard)以上である。これにより、二次電池用圧延銅箔を電子材料として有効に用いることができる。二次電池用圧延銅箔の導電率ECは、55%IACS以上であることが好ましく、60%IACS以上であることがより好ましい。なお、導電率はJIS-H0505(2018)に準拠して測定することができる。
【0028】
(二次電池用圧延銅箔の厚み)
本実施形態の二次電池用圧延銅箔は、厚みが50μm以下である。厚みを50μm以下とすることにより、電池の単位重量あたりのエネルギー密度を高めることができる。この観点から、二次電池用圧延銅箔の厚みは40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらにより好ましい。二次電池用圧延銅箔の厚さに特に下限は無いが、例えば5μm以上とすることで、ハンドリング性をよくすることができる。
【0029】
(二次電池用圧延銅箔の製造方法)
本実施形態の二次電池用圧延銅箔の製造方法は特に限定されないが、一般的に圧延銅箔はインゴットを鋳造後、熱間圧延し、次に焼鈍と冷間圧延とを適宜繰り返し、最終冷間圧延して製造される。各工程の間または各工程中に適宜酸洗を挟む場合もある。
【0030】
そして、最終冷間圧延工程の加工率を高くすることが、二次電池用圧延銅箔の高強度化に有利である。また、最終冷間圧延工程の加工率を高くすることにより導電率向上効果を高めることができる。本発明の一実施形態において、最終冷間圧延工程の加工率は、99.0%以上であることが好ましい。加工率は、下記式で示される。
加工率=(T0-T1)/T0×100%
式中、T0:最後に実施した熱処理工程(熱間圧延や中間焼鈍)後における材料の厚さ、T1:最終冷間圧延工程終了時点における材料の厚さ。
【0031】
(二次電池負極及び二次電池)
本実施形態の二次電池用圧延銅箔は、集電体として、二次電池負極に好適に使用することができる。したがって、本発明は別の側面において、本発明の二次電池用圧延銅箔を含む二次電池負極又は二次電池である。さらに、本発明は別の側面として、本発明の二次電池用圧延銅箔を集電体の原材料として、二次電池負極又は二次電池を製造する方法である。
【実施例0032】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、ここでの説明は単なる例示を目的とするものであり、それに限定されることを意図するものではない。
【0033】
(実施例)
表1に記載のMg含有量の銅インゴット(残部は銅及び不可避的不純物)を用いて銅箔を製造した。最終冷間圧延工程における加工度は表1に示される最終冷間圧延加工率とした。Mgの含有量は上記したICP発光分光分析法によって測定した。
【0034】
このようにして得られた各試験片に対し、以下の特性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
<引張強さ>
実施例1~3についてJIS-Z2241(2011)に基づいて13B号型試験片(標点間距離50mm、幅方向12.5mm)の試験片を作製し、引張試験機(AutoCom C型万能試験機 AC-100kN-C,T.S.E社製)により圧延方向と平行に引張試験を行い、引張強さの測定を実施した。なお、板厚35μm以下の銅箔についてはIPC-TM-650 Test Method 2.4.18(2012)に基づいて引張試験を行うことが望ましい。
【0036】
<導電率>
試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS-H0505(2018)に準拠し、4端子法で導電率(EC:%IACS)を測定した。
【0037】
(比較例)
表1に示される比較例1~4は特開2013-001982号公報からの引用である。特開2013-001982号公報によれば、表1に記載のMg含有量の銅インゴット(残部は銅、12~18wtppmの酸素及び不可避的不純物)を製造し、厚み10mmまで熱間圧延を行い、その後、面削を行った後、所定の加工率で焼鈍前圧延し、450℃で再結晶焼鈍し、さらに、表1に示される加工率に従い、最終冷間圧延工程を実施した旨が記載されている。また、各試験例につき、表1に示す厚みの銅箔を得た旨及び表1に示される引張強さ、導電率を有する旨が記載されている。
【0038】
【表1】
【0039】
(考察)
表1から分かるように、最終冷間圧延工程を99.0%以上の加工率で実施することにより、同様のMgの濃度水準では実施例が比較例より高い引張強さが得られることが分かった(図1)。また、導電率が高く維持されることも分かった。
【0040】
比較例1~4は、最終冷間圧延工程の加工率が不十分であり、十分な引張強さが得られていないものと推測される。
図1