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特開2023-178095III族窒化物単結晶基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178095
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】III族窒化物単結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20231207BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20231207BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/18
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091159
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳宏
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE13
4G077BE15
4G077DB04
4G077ED02
4G077ED06
4G077EF02
4G077FE14
4G077FG04
4G077FJ03
4G077TA04
4G077TB02
5F045AA03
5F045AA04
5F045AB09
5F045AB14
5F045AB17
5F045AC03
5F045AC08
5F045AC12
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AD17
5F045AE29
5F045AF03
5F045AF13
5F045AF16
5F045BB08
5F045CA09
(57)【要約】
【課題】デバイスの製造時間を短縮することができ、かつ、デバイス製造時の割れや特性劣化を抑制可能なIII族窒化物単結晶基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法は、窒化物セラミックスを含む支持基板を準備する支持基板準備ステップと、支持基板の上面に平坦化層を設ける平坦化層形成ステップと、平坦化層の上面に種結晶層を設ける種結晶層形成ステップと、種結晶層の上面に目的のIII族窒化物単結晶をエピタキシャル成長させて複合基板とするエピタキシャル成膜ステップと、平坦化層又は種結晶層の少なくともいずれか一方を除去することで、III族窒化物単結晶からなるIII族窒化物単結晶基板を、複合基板の残部と分離する分離ステップと、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物セラミックスを含む支持基板を準備する支持基板準備ステップと、
前記支持基板の上面に平坦化層を設ける平坦化層形成ステップと、
前記平坦化層の上面に種結晶層を設ける種結晶層形成ステップと、
前記種結晶層の上面に目的のIII族窒化物単結晶をエピタキシャル成長させて複合基板とするエピタキシャル成膜ステップと、
前記平坦化層又は前記種結晶層の少なくともいずれか一方を除去することで、前記III族窒化物単結晶からなるIII族窒化物単結晶基板を、前記複合基板の残部と分離する分離ステップと、
を実行するIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項2】
前記平坦化層又は前記種結晶層の少なくともいずれか一方の除去は、高周波誘導加熱による溶融によって行う請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項3】
前記平坦化層又は前記種結晶層の少なくともいずれか一方の除去は、Si系化合物及び/又はIII族窒化物系のエッチングガスによるドライエッチングによって行う請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項4】
前記支持基板の下面に応力調整層を設ける応力調整層形成ステップを更に実行する請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項5】
前記応力調整層が、シリコンを含むことを特徴とする請求項4に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項6】
前記窒化物セラミックスが、AlN系、GaN系又はSi系のいずれかである請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項7】
前記支持基板は、前記窒化物セラミックスからなるコアを、厚み0.05μm以上1.5μm以下の封止層で包み込んだ構造である請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項8】
前記封止層が、Si又はSiO(ここで、x=1、1≦y≦20)の少なくともいずれか一方を含む請求項7に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項9】
前記平坦化層が、SiO、Si(ここで、1≦x≦20、y=1)の少なくともいずれか一方を含む請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項10】
前記平坦化層の厚みが、0.5μm以上3.0μm以下である請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項11】
前記種結晶層の厚みが、0.04μm以上1.50μm以下である請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項12】
前記種結晶層が、Si<111>単結晶である請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項13】
前記Si<111>単結晶は、20℃の抵抗率が100Ω・cm以上である請求項12に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。
【請求項14】
前記種結晶層が、III族窒化物単結晶である請求項1に記載のIII族窒化物単結晶基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGa1-xN(ただし、0<x<1)、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物単結晶基板の製造方法に関する。具体的には、III族窒化物系の無垢基板をエピタキシャル成膜により高特性、低コストで製造するIII族窒化物単結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性AlN系、GaN系等のIII族窒化物の基板は広いバンドギャップを有し、短波長の発光性や高耐圧で優れた高周波特性を持つ。このため、III族窒化物の基板は、発光ダイオード(LED)、レーザ、ショットキーダイオード、パワーデバイス、高周波デバイス等のデバイスへの応用が期待されている。特に AlNおよびAlGa1-xN(ただし、0.5<x<1.0)の単結晶から作製されたLEDは、深紫外線領域(UVC;200~280nm)の発光波長において殺菌効果が報告され(非特許文献1参照)、昨今のコロナ対策用のデバイスとして期待されている。また、GaN単結晶は、5G、6Gの無線局やEVの無線充電用のデバイスとして期待されており、更なる高品質化、大口径化、低コスト化が求められている。
【0003】
このうちAlNは、常圧下で融点を持たないため、シリコン単結晶等の製造に用いられる一般的な融液法での製造は難しい。そのような事情を背景に、非特許文献2および非特許文献3には、1700~2250℃のN雰囲気下で、SiCやAlNを種結晶として昇華法(改良Lely法)でAlN単結晶基板を製造する方法が記載されている。しかし、結晶成長に高温を要するなど、装置が大掛かりになるため、低コスト化が難しく、φ4インチ以上の大口径化も困難であった。また、特許文献1には、シリコン基板やAlN基板を支持基板として、ハイドライド気相成長(HVPE)法でAlN層を成長させる方法が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1の方法ではシリコン等を支持基板に用いるため、熱膨張率や格子定数の違いに起因するAlN層の転位密度を低減することが困難である。そこで、支持基板として結晶性の良い昇華法AlN基板を使うことが考えられるが、転位密度を低減できる反面、支持基板自体が小口径で、しかも高価なため、基板の大口径化や低コスト化が困難であった。
【0005】
一方、GaN基板の製造方法に関しては、特許文献2に記載されている。この製造方法では、熱膨張率や格子定数がGaN単結晶に比較的近い、AlNセラミックスをコアとし、これをSiOやSi等の多層膜で封止して支持基板とする。続いて、支持基板の凹凸の埋め合わせのため、SiOなどの平坦化層を形成する。そして、平坦化層上に種結晶のシリコン<111>単結晶を薄膜転写して複合基板と成した後、種結晶からGaN等の単結晶をエピタキシャル成長させて成膜する。
【0006】
しかし、この製造方法では、例えばGaN或いはAlNやAlGa1-xN(ただし、0<x<1)の単結晶を厚くエピタキシャル成膜すると、シリコン<111>の種結晶とGaN、AlN、AlGa1-xN(ただし、0<x<1)のそれぞれの単結晶との格子定数差が大きいことから、転位密度の低減が難しい。また、AlNセラミックスと封止層との間、多層膜間、及び多層膜と平坦化層との間における、相互の親和性や熱膨張率の差などにより、製造されたIII族窒化物単結晶基板にクラックや反り等が生じやすいという問題がある。更に、製造されたIII族窒化物単結晶基板は、デバイス作成後、バックグラインディングで、より薄くするための薄化処理が施されるのが通常である。このとき、Si等の半導体と異なり、硬く割れ易いAlNセラミックスのコアを含む支持基板を削るため、加工に長い時間を要し、また、割れてデバイスの歩留まり低下や特性劣化をもたらし資源ロスを生じやすいことが、III族窒化物単結晶基板の製造上の大きな欠点となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4565042号公報
【特許文献2】特許第6626607号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】LEDs Magazine Japan;2016年12月、p30-31
【非特許文献2】SEIテクニカルレビュー;No.177号、p88-91
【非特許文献3】フジクラ技報;No.119号、2010年Vol.2、p33-38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、デバイスの製造時間を短縮することができ、かつ、デバイス製造時の割れや特性劣化を抑制可能なIII族窒化物単結晶基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法は、窒化物セラミックスを含む支持基板を準備する支持基板準備ステップと、支持基板の上面に平坦化層を設ける平坦化層形成ステップと、平坦化層の上面に種結晶層を設ける種結晶層形成ステップと、種結晶層の上面に目的のIII族窒化物単結晶をエピタキシャル成長させて複合基板とするエピタキシャル成膜ステップと、平坦化層又は種結晶層の少なくともいずれか一方を除去することで、III族窒化物単結晶からなるIII族窒化物単結晶基板を、複合基板の残部と分離する分離ステップと、を実行する。
【0011】
平坦化層又は種結晶層の少なくともいずれか一方の除去を、高周波誘導加熱による溶融によって行ってもよい。
【0012】
平坦化層又は種結晶層の少なくともいずれか一方の除去を、Si系化合物及び/又はIII族窒化物系のエッチングガスによるドライエッチングによって行ってもよい。
【0013】
支持基板の下面に応力調整層を設ける応力調整層形成ステップを更に実行してもよい。
【0014】
応力調整層は、シリコンを含んでもよい。
【0015】
窒化物セラミックスは、AlN系、GaN系又はSi系のいずれかであってもよい。
【0016】
支持基板は、窒化物セラミックスからなるコアを、厚み0.05μm以上1.5μm以下の封止層で包み込んだ構造であってもよい。
【0017】
封止層は、Si又はSiO(ここで、x=1、1≦y≦20)の少なくともいずれか一方を含んでもよい。
【0018】
平坦化層は、SiO、Si(ここで、1≦x≦20、y=1)のの少なくともいずれか一方を含んでもよい。
【0019】
平坦化層の厚みは、0.5μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0020】
種結晶層の厚みは、0.04μm以上1.50μm以下であってもよい。
【0021】
種結晶層は、Si<111>単結晶であってもよい。
【0022】
Si<111>単結晶は、20℃の抵抗率が100Ω・cm以上であってもよい。
【0023】
種結晶層は、III族窒化物単結晶であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法によれば、デバイスの製造時間を短縮することができ、かつ、製造時の割れや特性劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法のフローを示す図である。
図2】昇華法単結晶基板へのエピタキシャル成膜による種結晶基板の形成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明及び図面では、同一の部位には同一の符号を付し、一度説明した部位については説明を省略又は必要に応じた程度の説明にとどめることとする。
【0027】
図1は、本発明のIII族窒化物単結晶基板100の製造方法のフローを示す図である。
【0028】
まず、窒化物セラミックスを含む支持基板10を準備する(支持基板準備ステップS1)。支持基板10は、コア11の周囲に封止層12を形成したものである。
【0029】
コア11の素材としては、製造するIII族窒化物単結晶基板100と熱膨張率ができるだけ近く、高熱伝導率なAlN系、GaN系、又はSi系の窒化物セラミックスが好適である。
【0030】
封止層12は、コア11のセラミックスから拡散する金属やカーボン等の不純物を封止するため、コア11を包み込むように形成する。
【0031】
封止層12は、コア11のセラミックスとの親和性が良く、かつ不純物防止能が高い、窒化珪素(Si)と酸窒化珪素(SiO)のいずれか一方又は両方を含むとよい。SiOを用いる場合、コア11との親和性や不純物防止能とのバランスから、x=1、1≦y≦20のものが好適である。
【0032】
封止層12の厚みは、0.05μm以上1.5μm以下が好適である。これは、厚みが0.05μm未満だと不純物防止能が不足し、1.5μmを超えると窒化物セラミックスと封止層との熱膨張率差が大きくなり、剥離しやすくなるためである。
【0033】
封止層12は、例えばLPCVD法で成膜することにより形成してもよい。
【0034】
続いて、支持基板10の上面に平坦化層20を形成する(平坦化層形成ステップS2)。これにより、支持基板10の凹凸が平坦化される。
【0035】
平坦化層20は、二酸化珪素(SiO)と酸窒化珪素(Si)のいずれか一方又は両方を支持基板10の上面に成膜し、更に種結晶層32の薄膜転写が可能となる面精度に平滑化することで形成される。平滑化は、例えばCMP研磨、エッチング等により行ってもよい。
【0036】
平坦化層20としてSiを用いる場合、封止層12との親和性、凹凸への成膜性、及び研磨、エッチングの容易性から、1≦x≦20、y=1のものが好適である。
【0037】
平坦化層20の成膜方法は、例えば、プラズマCVD法、LPCVD法、又は低圧MOCVD法のいずれかを採用してもよい。
【0038】
平坦化層20の厚みは、研磨、エッチング後において0.5μm以上3.0μm以下が好適である。これは、厚みが0.5μm未満だと支持基板10の凹凸を埋めきれずボイドとなり、3.0μmを超えると厚さのあるSiO、Siに起因する熱伝導率の低下を来し、デバイスの特性を悪くするためである。
【0039】
なお、本発明では必要に応じて、支持基板10の平坦化層20が形成された側の面と反対側の面に、応力調整層21を形成してもよい(応力調整層形成ステップS3)。この応力調整層21は、主として平坦化層20を形成することにより生じるエピタキシャル成長用基板50の反りを矯正する。また、クラック防止や静電チャックの機能も果たしうる。応力調整層21には、エピタキシャル成長用基板50の反りを矯正可能とする熱膨張率を持つ膜材と厚みが選ばれ、特定の膜材に限定されるものではないが、例えば、単体のシリコンを含むのが好ましい。応力調整層21は、平坦化層20と同時に成膜してもよい。
【0040】
続いて、平坦化層20の上面に種結晶層32を形成するが、形成に先立ち、種結晶層32を切り出す種結晶基板30の素材を選択した上で(種結晶基板準備ステップS4)、種結晶基板30の一面(イオン注入面)にイオンを注入して、種結晶基板30内に剥離位置(脆化層)31を形成しておく(イオン注入ステップS5)。このとき注入するイオンは、例えば、H、H 、Ar、Heが好適である。
【0041】
種結晶層32の厚みは、0.04μm以上1.50μm以下が好適である。種結晶層32の厚みが0.04μm未満であると、エピタキシャル成膜の種としては薄すぎて、その膜厚や表面状態が大きく変動し、全面均一なエピタキシャル成膜を得ることが難しい。一方、種結晶層32の厚みが1.50μmを超えると、イオン注入深さを極めて深くする必要があり、そのためのイオン注入機が巨大になり、安全性や経済性に問題がある。
【0042】
種結晶基板30にイオンを注入すると、種結晶基板30内に剥離位置31が形成されるとともにダメージ層が生じ、結晶性の劣化や結晶性の消失(非晶質化)等が生じる。そのため、種結晶基板30から種結晶層32を分離した後、ダメージ層を除去すべく、通常、研磨及び/又はエッチング等の処理が必要になる。このことから、イオン注入深さは、種結晶層32の所望の厚みと、ダメージ層を除去する厚みを考慮して決定する必要がある。
【0043】
種結晶基板30の素材は、Si<111>単結晶、SiC単結晶、サファイア単結晶、又は窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、若しくはGaN等のIII族窒化物単結晶が好適である。これは、エピタキシャル成長で目的のIII族窒化物単結晶を得るに際し、種結晶が目的のIII族窒化物単結晶と同一又は類似の結晶系で、かつ、できるだけ格子定数や熱膨張率が近いものでなければ、良い結晶が得られないためである。
【0044】
コスト低減の観点からは、量産化されている大口径のSi<111>単結晶、SiC単結晶、又はサファイア単結晶を選択するのが好ましい。中でも最も量産化と大口径化が進み、高品質で相対的に安価なSi<111>単結晶がより好ましい。更に加えれば、20℃の抵抗率が100Ω・cm以上のSi<111>単結晶が最も好ましい。これは、種結晶のSi<111>単結晶の20℃の抵抗率が100Ω・cm以上あると、製造されたIII族窒化物単結晶基板100にSi中のドープ材の拡散による影響がほとんど見られず、この基板から作成された高周波デバイスの高周波での消費電力が小さくなるためである。逆に、Si<111>単結晶の20℃の抵抗率が100Ω・cm未満であると、製造されたIII族窒化物単結晶基板100にSi中のドープ材の拡散が見られ、この基板から作成された高周波デバイスは高周波での消費電力が大きくなるためである。
【0045】
一方、大口径が未だ得難い窒化アルミニウム単結晶や窒化ガリウム単結晶等を選ぶ場合、大口径のサファイア基板を下地として、MOCVD法又はHVPE法により窒化アルミニウム単結晶又は窒化ガリウム単結晶等をエピタキシャル成膜して得られた基板を種結晶基板30としてもよい。また、極めて特性を重視する場合は、小口径の昇華法単結晶基板又は昇華法AlN単結晶基板を下地とし、MOCVD法、HVPE法、又はTHVPE法で、窒化アルミニウム単結晶又は窒化ガリウム単結晶等をエピタキシャル成膜して得られた基板を種結晶基板30としてもよい。
【0046】
この場合、エピタキシャル成膜により形成されたエピタキシャル層の表面からイオンを注入して、エピタキシャル層内に剥離位置を形成すればよい。
【0047】
例えば、図2に示すように、昇華法で作製したAlN基板34を下地として、その上にMOCVD法、HVPE法、又はTHVPE法でAlNのエピタキシャル成膜を行ってエピタキシャル層35を形成することで、種結晶基板30を形成する(ステップS11)。そして、エピタキシャル層35の表面(イオン注入面)からイオンを注入することで、エピタキシャル層35内に種結晶層32の剥離位置31を形成することができる(ステップS12)。
【0048】
このような方法によれば、昇華法で作製した高価なAlN基板34を下地として用いても、種結晶層32として消費されるのはエピタキシャル層35の一部であるため、経済的に、かつ比較的高速に良質の種結晶層32を形成することができる。そして、種結晶層32の形成後に、エピタキシャル層35の厚みが十分であれば、種結晶基板30を繰り返し利用することができ、種結晶基板30の繰り返し利用によりエピタキシャル層35が薄くなった場合には、再度エピタキシャル成膜を行うことで、厚みを取り戻すことができるため、製造コストの削減に有効である。
【0049】
イオンが注入された種結晶基板30を準備した後、種結晶基板30のイオン注入面と、支持基板10上に形成された平坦化層20とを接合して接合体40を形成する(接合ステップS6)。
【0050】
続いて、接合体40を剥離位置31において分離する(種結晶層形成ステップS7)。これにより、支持基板10に形成された平坦化層20上に種結晶層32が薄膜転写されたエピタキシャル成長用基板50と、種結晶基板30から種結晶層32が取り除かれた残部33と、に分離される。種結晶基板30の残部33は、更なる種結晶基板として再利用することができる。
【0051】
なお、種結晶基板30のイオン注入面を一旦シリコンウエハ等の別の仮支持基板に接合し、剥離位置31で分離して種結晶層32が仮支持基板に接合した状態にしておき、この仮支持基板上の種結晶層32を平坦化層20に接合した上で、任意の方法で仮支持基板を種結晶層32から切り離すことにより、平坦化層20上に種結晶層32を転写してもよい。このようにすることで、平坦化層20に接合する種結晶層32の上下が反転したエピタキシャル成長用基板50を形成することができる。
【0052】
続いて、エピタキシャル成長用基板50の種結晶層32の上面に、目的のIII族窒化物単結晶をエピタキシャル成長させ、目標の厚みまで成膜する(エピタキシャル成膜ステップS8)。これにより、目的のIII族窒化物単結晶の複合基板70が形成される。
【0053】
そして、複合基板70の平坦化層20又は種結晶層32の少なくともいずれか一方を、略大気下の不活性ガス中で高周波誘導加熱による溶解、又は減圧加熱下におけるエッチングガスによるドライエッチングにより除去することで、エピタキシャル成長用基板50上に成膜された、目的のIII族窒化物単結晶の層60をIII族窒化物単結晶基板100として、複合基板70から分離する(分離ステップS9)。具体的には、例えば次のように分離する。
【0054】
高周波誘導加熱による溶解の場合、まず、精密な傾斜加熱ができる誘導コイル及び治具を具備した、回転及び上下動可能な収納装置に複合基板70を入れる。続いて、収納装置内を略1気圧のAr等の不活性ガス雰囲気にした後、除去対象の平坦化層20及び/又は種結晶層32の円周部分が最高温度1300~1600℃になるように、1~3MHzの高周波発信器により誘導コイル及び治具に高周波を付加し加熱する。このとき、除去対象の層が熱伝導で降温しないように熱補償をしつつ、他の部分はできるだけ加熱されないように誘導コイル及び治具を調整するとよい。また、加熱時には複合基板70に上下方向の引っ張り応力をかけておくのが好ましい。なお、最高温度を1300~1600℃の範囲に限定する理由は、1300℃未満では除去対象の層が溶解せず、1600℃を超えると装置部材の熱劣化が大きいためである。
【0055】
エッチングガスでドライエッチングする場合、300~1400℃の加熱とともに、溶解対象の層を選択的にエッチングするガスにより、除去対象の層をエッチングする。加熱温度が300℃未満の場合、エピタキシャル成長用基板50とIII族窒化物単結晶の層60との接合部における、外周方向から内部に向かってのエッチングが十分に進まない。また、加熱温度が1400℃を超える場合、III族窒化物単結晶の層60まで大きくエッチングされたり、装置部材の損傷が生じやすくなったりする。
【0056】
エッチングを行う場合、より効率的に行うために、例えば、950℃、かつ減圧下(数百mPa~数十Pa)において、除去対象の層にエッチングガスを導入しながら、数百kHz~数十MHzの高周波を印加することによりプラズマを発生させることで、ドライエッチング速度を上げてもよい。この場合に用いるドライエッチング装置は、例えば、通常の反応性イオンエッチング装置(RIE)や高密度プラズマエッチング装置(ECR、ICP)等を精密な傾斜加熱ができるように装置や治具を改造したものでもよい。
【0057】
また、導入するエッチングガスの種類は、除去対象の層に応じて選択するとよい。例えば、種結晶層32がIII族窒化物系の場合、Si系化合物とIII族窒化物系の各エッチングガス同士が反応しないならば、Si系化合物とIII族窒化物系の各エッチングガスを混合して使用することで、平坦化層20と種結晶層32の両方を除去することができる。一方、混合すると各エッチングガス同士の反応が激しくなる場合は、Si系化合物のエッチングガスとIII族窒化物系のエッチングガスのいずれか一方を使用すればよいが、種結晶層32より厚く分離効果が高い、平坦化層20を除去できるエッチングガスを選択するのが好ましい。具体的には、平坦化層20の構成物が二酸化珪素(SiO)や酸窒化珪素(SiO)であるため、Si系化合物のエッチングガスが好適である。
【0058】
Si系化合物のエッチングガスとしては、パーフルオロガーボン(CF、C,C)やハイドロフロオカーボン(CHF、CH,CHF、C)等が挙げられる。III族窒化物系のエッチングガスとしては、無機ハロゲンガス、炭化水素ガス等が挙げられる。
【0059】
必要に応じ、これらのガスに更にH、O、He、Ar等のガスを添加してもよい。添加するガスの割合を変えることで、エッチング速度を調整することができる。種結晶層32がSiの場合、例えば、エッチング速度を上げるにはCFに10~20%のOを添加するとエッチング速度を上げることができる。また、平坦化層20がSiOで、種結晶層32がSi<111>の場合、例えば、SiOの除去により分離する場合にはCFに50%のHを添加し、Si<111>の除去により分離する時はCFのみのエッチングガスを用いればよい。
【0060】
高周波誘導加熱による溶解、又はエッチングガスによるドライエッチングのいずれか一方のみで分離できない場合、更に他方を行うことで、より確実に分離することができる。
【0061】
なお、III族窒化物単結晶基板100を分離した際、種結晶層32の一部が付着している場合は、種結晶層32の構成物に応じた方法で除去するとよい。
【0062】
また、複合基板70からIII族窒化物単結晶基板100を分離した残部101は、適宜リサイクル使用することで、製造コストの削減を図ることができる。
【0063】
以上説明した本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法によれば、溶解やエッチング等により、硬く割れやすい支持基板部分が取り除かれたIII族窒化物単結晶基板が得られるため、デバイス作成後の支持基板部分のバックグラインディングによる、製造時間の浪費やデバイスの割れによる歩留まり低下及び特性劣化を回避することができる。また、複合基板から取り除かれた残部を再利用できるため、製造コストの削減を図ることができる。
【0064】
更に、複合基板を構成する各層の厚みや種結晶層の抵抗率を最適化することで、複合基板から分離されるIII族窒化物単結晶基板のクラックや反りの発生を防ぐことができるとともに、III族窒化物単結晶基板を用いたデバイスの特性劣化を防ぐことができる。
【0065】
以下に本発明のIII族窒化物単結晶基板の製造方法の実施例及び比較例を示す。
【0066】
<実施例1>
〔支持基板の準備〕
AlN粉を100重量部と、焼結助剤としてYを5重量部とを、有機バインダーや溶剤などと混合してグリーンシートを作成後、脱脂し、N下1900℃で焼結した上で両面研磨して、直径8インチ、厚み725μmの多結晶AlN基板を生成した。この多結晶AlN基板を支持基板のコアとした。このコア全体を、LPCVD法で形成した0.4μm厚の酸窒化珪素層で包み込むように覆い、更にその上に、LPCVD装置を使って形成した1.0μm厚の窒化珪素(Si)層で全体を包み込むように覆った。このようにして、コアが1.4μm厚の封止層に覆われた支持基板を形成した。
【0067】
〔平坦化層の積層〕
支持基板の片面(上面)の封止層上に、平坦化層として、プラズマCVD法(ICP-CVD装置)により6μm厚のSiOを積層した。その後、このSiOを1000℃で焼き締めた後、CMP研磨により、3μm厚まで研磨・平坦化し、表面粗さRa=0.14nmとした。
【0068】
〔種結晶の準備〕
CZ法で引き上げた市販の直径8インチのSi<111>基板(20℃の抵抗率が150Ω・cm)に、100keVで、0.7μmの深さ(剥離位置)にドーズ量6×1017/cmの水素イオンの注入を実施した。そして、Si<111>基板のイオン注入面を支持基板に形成された平坦化層に接合した上で薄膜転写し、支持基板にSi<111>の種結晶層を形成した。なお、イオン注入及び転写の際に種結晶層が受けたダメージ部分は、CMPで軽く研磨後、エッチングして完全に取り除いた。種結晶層の最終厚みは0.04μmであった。なお、薄膜転写後のSi<111>基板の残部(すなわち、支持基板に転写されずに分離された部分)は、イオン注入を繰り返し実施することで、多数の種結晶として利用することができ、極めて経済的であった。以上により、AlNのセラミックコアが封止層により封止された支持基板に、3μm厚の平坦化層及び0.04μm厚のSi<111>種結晶層を備える直径8インチのエピタキシャル成長用基板が得られた。
【0069】
〔GaNエピタキシャル成膜の実施〕
続いて、上記のように準備されたエピタキシャル成長用基板をGaNエピタキシャル成長炉(HVPE装置)に入れ、基板温度900℃の高温窒化処理を30分間実施した。続いて、基板温度400℃でGaNバッファー層を20nm厚で成膜した後、基板温度1050℃にてプロセスガスとしてGaCl及びNHを用いて12mm厚までGaNのエピタキシャル成膜を行い、GaN複合基板を得た。
【0070】
〔複合基板からのGaNエピタキシャル成膜部分の分離〕
上記のように準備されたGaN複合基板を、精密な傾斜加熱ができる誘導コイル及び治具を具備した、回転及び上下動が可能な収納装置に入れた。その後、装置内を略1気圧のArガス雰囲気にし、種結晶層の円周部分が1500℃になるように誘導コイル及び治具に3MHzの高周波を付加して局部的に加熱した。このとき、種結晶層が熱伝導で降温しないように熱補償をしながら、他の部分はできるだけ加熱されないように誘導コイル及び治具を調整した。また、加熱中はGaN複合基板の上下にわずかな引っ張り力を掛け続けた。その結果、GaN複合基板は、GaNエピタキシャル成膜部分とSi<111>種結晶層がわずかに残存する支持基板部分とに分離することができた。
【0071】
〔GaNエピタキシャル成膜部分の評価〕
GaNエピタキシャル成膜部分の結晶評価のために、12mm厚のGaNエピタキシャル成膜部分を円筒研削後、ワイヤソウで厚み900μmに切断し、粗研磨、CMP研磨を施して、最終寸法が直径8インチ、厚み725μmのGaN単結晶基板を5枚切り出した。GaNエピタキシャル成膜部分が分離された後に残った支持基板部分は、分離側表面を軽くCMP研磨してSi<111>種結晶層の残存部分を除去した後、再度Si<111>の薄膜転写を行い、リサイクル使用に充てた。
【0072】
上記の処理により得られた、直径8インチ、厚み725μmの評価用GaN単結晶基板5枚の、X線ロッキングカーブのFWHM(Full Width at Half Maximum:半値全幅)は、種結晶側と上部側とで若干ばらつきがあったが、291~350arcsecと極めて優れた結晶性を有するGaN単結晶基板であった。また、溶液アルカリ(KOH+NaOH)エッチング法によりエッチピットを発生させ、EPD(Etch pit Density:エッチピット密度)の測定も行い、2×10/cmという極めて低い転位密度であった。更に、これらのGaN単結晶基板に、600V耐圧のパワーデバイス、及び28GHz用のRFデバイスを作成し、それぞれのデバイス化基板について、裏面のバックグラインディングで200μmに薄化処理を行った。これらの基板の、個々のデバイスへの切断後の、600V耐圧のパワーデバイスの歩留まり、及び28GHz用のRFデバイスの歩留まりは、それぞれ約98%、約93%と極めて高かった。また、RFデバイスの28GHzにおけるロスは約1.5dBと低かった。
【0073】
<比較例>
種結晶層の形成に用いたSi<111>基板の20℃の抵抗率が85Ω・cmであること以外は、実施例1と同じ条件で、35μm厚までGaNのエピタキシャル成膜を行い、略760μm厚のGaN複合基板を得た。得られたGaN複合基板の、X線ロッキングカーブのFWHMは中心で780arcsecと、実施例1よりも悪い結晶性を示した。また、EPDは8×10/cmという、実施例1と比べて高い転位密度であった。更に、これらのGaN複合基板に、実施例1と同様に、600V耐圧のパワーデバイス、及び28GHz用のRFデバイスを作成し、それぞれのデバイス化基板について、AlNセラミックスコアを有する支持基板の裏面のバックグラインディングで薄化処理を行った。AlNセラミックスコアが硬いことで、薄化処理の時間は実施例1の5~6倍の時間を要した上、デバイス化基板の所々にクラック不良が発生した。更に、デバイス化基板を個々のデバイスに切断しようとしたところ、デバイス化基板のクラックのために切断できない部分が多かった。そのため、600V耐圧のパワーデバイスの歩留まり、及び28GHz用のRFデバイスの歩留まりは、それぞれ約24%、約31%と極めて低かった。また、RFデバイスの28GHzにおけるロスは約5.3dBと、非常に高かった。
【0074】
<実施例2>
〔支持基板の準備〕
支持基板のコアとして、金属不純物レベルが4Nで直径2インチの市販のGaN多結晶セラミックス基板を用意した。このコア全体を、SiH、NOガスによるLPCVD法で形成した0.06μm厚の酸窒化珪素(Si、概略の平均組成がx=3、y=15)、層で包み込むように覆い、支持基板を形成した。
【0075】
〔平坦化層及び応力調整層の積層〕
支持基板の片面(上面)の封止層上に平坦化層として、LPCVD法により1.3μm厚の酸窒化珪素(Si、概略の平均組成がx=17、y=2)、層を形成した。その後、CMP研磨により0.5μm厚まで研磨した。平坦化層の形成により基板全体が約50μm反ったため、反りを矯正すべく、支持基板の下面に応力調整層を、平坦化層と同じ組成になるようにLPCVDにより0.5μm厚で形成した。更に、静電チャックの吸着・脱離に対応するため、LPCVD法で多結晶Siを0.05μm付け加えた。その結果、反りがほぼ解消するとともに、静電チャックの吸着・脱離も可能であった。
【0076】
〔種結晶の準備〕
昇華法(改良レーリー法)による直径2インチの市販のAlN単結晶(厚み280μm)をベース基板として、その上にMOCVD法(反応ガス:トリメチルアルミニウム(TMAI)+NH、キャリアガス:N、H)により1050℃でAlNのエピタキシャル成膜を行い、550μmのエピタキシャル層を得た。そのエピタキシャル層に1.6μmの深さでイオン注入を行った上で、イオン注入面を支持基板に形成された平坦化層に接合した上で薄膜転写し、支持基板に1.6μm厚のAlN種結晶層を形成した。なお、イオン注入及び転写の際に種結晶層が受けたダメージ部分は、CMPで軽く研磨後、エッチングして完全に取り除いた。ダメージ部分を取り除いた種結晶層の最終厚みは1.4μmであった。以上により、GaNのセラミックコアが封止層により封止された支持基板に、0.5μm厚の平坦化層、1.4μm厚のAlN種結晶層、及び0.55μmの応力調整層を備える直径2インチのエピタキシャル成長用基板を得た。
【0077】
〔AlNエピタキシャル成膜の実施〕
続いて、上記のように準備されたエピタキシャル成長用基板をAlNエピタキシャル成長炉(HVPE装置)に入れ、基板温度900℃の高温窒化処理を30分間実施した。続いて、基板温度1300℃にてプロセスガスとしてAlCl及びNHを用いて10mm厚までAlNのエピタキシャル成膜を行い、AlN複合基板を得た。
【0078】
〔複合基板からのAlNエピタキシャル成膜部分の分離〕
上記のように準備されたAlN複合基板を、精密な傾斜加熱ができる誘導コイル及び治具を具備した、回転及び上下動が可能な反応性イオンエッチング(RIE)装置に入れた。その後、装置内を950℃まで昇温し、平坦化層(Si)のエッチングガスとしてCFにHを10%添加したガスを、15Paの減圧を保ちながら導入しつつ平坦化層のエッチングを行った。これにより、AlN複合基板は、AlNエピタキシャル成膜部分とAlN種結晶層がわずかに残存する支持基板部分とに分離することができた。
【0079】
〔AlNエピタキシャル成膜部分の評価〕
AlNエピタキシャル成膜部分の結晶評価のために、10mm厚のAlNエピタキシャル成膜部分を円筒研削後、ワイヤソウで厚み330μmに切断し、粗研磨、CMP研磨を施して、最終寸法が直径2インチ、厚み280μmのAlN単結晶基板を5枚切り出した。AlNエピタキシャル成膜部分が分離された後に残った支持基板部分は、分離側表面を軽くCMP研磨してAlN種結晶層の残存部分を除去した後、再度AlNの薄膜転写を行い、リサイクル使用に充てた。
【0080】
上記の処理により得られた、直径2インチ、厚み280μmの評価用AlN単結晶基板5枚の、X線ロッキングカーブのFWHM(Full Width at Half Maximum:半値全幅)は、種結晶側と上部側とで若干ばらつきがあったが、189~280arcsecと極めて優れた結晶性を有するAlN単結晶基板であった。また、溶液アルカリ(KOH+NaOH)エッチング法によりエッチピットを発生させ、EPD(Etch pit Density:エッチピット密度)の測定も行い、0.1×10/cmという極めて低い転位密度であった。更に、これらのAlN単結晶基板をLEDデバイス化し、裏面のバックグラインディングで150μmに薄化処理を行った。これらの基板の、個々のデバイスへの切断後の歩留まりは、約99%と極めて高かった。
【0081】
上記実施形態及び実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0082】
10 支持基板
11 コア
12 封止層
20 平坦化層
21 応力調整層
30 種結晶基板
31 剥離位置
32 種結晶層
33、101 残部
34 AlN基板
35 エピタキシャル層
40 接合体
50 エピタキシャル成長用基板
60 平坦化層
70 複合基板
100 III族窒化物単結晶基板

図1
図2