(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178316
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び(メタ)アクリル系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 33/12 20060101AFI20231207BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20231207BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231207BHJP
C08K 5/3412 20060101ALI20231207BHJP
C08F 220/14 20060101ALI20231207BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20231207BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231207BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20231207BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231207BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20231207BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
C08L33/12
C08K5/29
C08L63/00 A
C08K5/3412
C08F220/14
C08F8/00
C09J7/38
C09J7/24
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167276
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2019148412の分割
【原出願日】2019-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】客野 真人
(72)【発明者】
【氏名】廣神 萌美
(57)【要約】
【課題】薄い膜厚の樹脂フィルムを得るための溶液キャスト法に使用でき、耐折性、耐切性(引張破断強度)、破断伸び、耐溶剤性(ゲル分率)に優れている(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、(メタ)アクリル系ポリマーが、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物(光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物を除き、かつ、1分子中に3個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するプレポリマーを含有する樹脂組成物を除く。)であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、
メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、
前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、
を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、
(A)メチルメタクリレートを80~99重量部と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の1~20重量部との合計を100重量部と、
前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーとして、(B)水酸基を有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーからなるモノマー群の中から選択した少なくとも1種以上のモノマーの合計を1.0~20.0重量部と、
を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物からなる化合物群から選択した1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層であることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層である(メタ)アクリル系樹脂フィルムの片面または両面に、粘着層を形成してなることを特徴とする粘着シート。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層である(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、偏光子の片面または両面に形成してなることを特徴とする偏光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系樹脂フィルム等の形成に好適に用いられる(メタ)アクリル系樹脂組成物、及びそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高透明性、加熱加工性、耐候性、耐薬品性に優れていることから、電子機器、家電製品、自動車内外装部品、建築部材などの各種機器部品の表面被覆に用いる樹脂フィルムとして、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが用いられている。
また、近年では、高透明性、耐候性などに優れていることから、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが、光学用フィルムとして用いられている。
【0003】
従来、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルム(PMMAフィルム)を製造する方法としては、生産性が高いことから、PMMA樹脂を溶融押出法により製膜する方法が採用されていた。
【0004】
例えば、特許文献1には、アクリル樹脂フィルムと成形樹脂とを一体化する部材に好適に使用可能なアクリル樹脂フィルムであって、特に、表面の保護層の形成に好適な塗装代替アクリル樹脂フィルムが開示されている。特許文献1に記載の発明に係わるアクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂フィルムに添加する紫外線吸収剤と滑剤とを特定の種類で組み合わせ、しかもこれらの成分を特定の含有量としている。このため、特許文献1では、表面の保護層の形成に使用する塗装代替アクリル樹脂フィルムとして、好適に使用できるとしている。
【0005】
また、特許文献2には、アクリル系樹脂の長所である独特の美しい色調、及び透明性が損なわれる原因となるゴム含有グラフト共重合体を含有させないで、アクリル系樹脂の本質的な欠点である耐衝撃性を改善する方法が開示されている。特許文献2に記載の発明に係わるアクリル系樹脂組成物は、前記樹脂組成物を溶融押出法によりフィルム化する際に溶融押出温度を高くすると、前記グラフト共重合体が熱分解することにより発生する分解ガス、又はブリードアウト物により、キャストロール等の冷却ロールが汚染されて、生産性が落ちるという問題を解決できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-286960号公報
【特許文献2】国際公開第2016/139927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の発明に係わるアクリル樹脂フィルムは、熱可塑性重合体を含むアクリル樹脂組成物の混合物を脱気式二軸押出機にて混練して、アクリル樹脂組成物のペレットを得た後に、溶融押出機にて溶融した樹脂組成物をTダイに押し出して行う溶融押出法により、アクリル樹脂フィルムを製膜したものである。また、特許文献1に記載の実施例1~6では、膜厚が50~125μmのアクリル樹脂フィルムが得られている。しかし、特許文献1に記載の発明に係わるアクリル樹脂フィルムは、溶融押出法により製膜した樹脂フィルムであることから、膜厚が40μm以下の薄い樹脂フィルムを得ることが困難であるという問題を有していた。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明に係わるアクリル樹脂組成物は、3~4段階のグラフト重合反応を行い徐々にグラフト共重合体を完成させるため、グラフト共重合体を得る工程に長時間を要するという問題を有していた。また、特許文献2の、溶融押出法によりアクリル樹脂フィルムを製造した実施例6~8では、延伸しないで得られたアクリル樹脂フィルムの膜厚が80μmであり、延伸しないで膜厚が40μm以下の薄い樹脂フィルムが得られていなかった。
【0009】
こうしたなか、溶融押出法に比べて、より簡便な樹脂フィルムの製膜方法であり、薄膜化にできる利点がある溶液キャスト法によりPMMA樹脂を製膜する方法が求められていた。本発明者らは、溶液キャスト法によりPMMA樹脂を製膜する方法を鋭意検討した。その結果、特定のPMMA樹脂組成物を用いることにより、溶液キャスト法により製膜した場合でも、溶融押出法により製膜したものと同等以上の優れた物性を有するPMMA樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させることができた。
【0010】
従来の溶融押出法により、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを製膜する方法の場合には、40μm以下の厚みに薄膜化することが困難であった。一方、溶液キャスト法により、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを製膜する方法の場合には、40μm以下の厚みに薄膜化することが可能であるが、得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルムの物性として耐溶剤性の性能を向上させることが難しいという問題があった。また、溶液キャスト法においては、(メタ)アクリル系樹脂組成物に含有する未架橋のPMMA樹脂の重量平均分子量を100万以上の大きな値にする必要があるため、該(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶液が高粘度であり、製膜工程での作業性が良くないという問題があった。
【0011】
本発明は、薄い膜厚の樹脂フィルムを得るための溶液キャスト法に使用できる(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、製膜した樹脂フィルム等の成形品が耐折性、耐切性(引張破断強度)、破断伸び、耐溶剤性(ゲル分率)に優れている(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、MMA(メチルメタクリレート)と、前記MMA以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートと、官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上とを、特定の割合で共重合させた共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーとすることにより、このような(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いて、溶液キャスト法により得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、耐折性、耐切性(引張破断強度)、破断伸び、耐溶剤性(ゲル分率)に優れていることを見出し、本発明を完成させることができた。すなわち、本発明は、特定の(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋させた樹脂層からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得ることを技術思想としている。
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供する。
【0014】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)メチルメタクリレートを80~99重量部と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の1~20重量部との合計を100重量部と、前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーとして、(B)水酸基を有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーからなるモノマー群の中から選択した少なくとも1種以上のモノマーの合計を1.0~20.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0015】
前記架橋剤が、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物からなる化合物群から選択した1種以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層であることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層である(メタ)アクリル系樹脂フィルムの片面または両面に、粘着層を形成してなることを特徴とする粘着シートを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層である(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、偏光子の片面または両面に形成してなることを特徴とする偏光フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、薄い膜厚の樹脂フィルムを得るための溶液キャスト法に使用できる(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、製膜した樹脂フィルム等の成形品が耐折性、耐切性(引張破断強度)、破断伸び、耐溶剤性(ゲル分率)に優れている(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供することができる。
なお、本発明では、耐溶剤性の試験方法として、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの試験片を、溶剤の液中に所定時間に渡り浸漬した後、前記溶剤に溶出しないで不溶分(残渣)として残った(メタ)アクリル系樹脂フィルムの割合(いわゆる、ゲル分率)を測定し、耐溶剤性を試験した。
また、従来技術の溶融押出法により(メタ)アクリル系樹脂フィルムを製膜する場合は、樹脂フィルムを製膜した後に、1軸又は2軸の延伸加工を施さない限り膜厚を40μm以下とすることができなかった。一方、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いれば、溶液キャスト法のみを用いて、膜厚が40μm以下である薄膜の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを製造することができ、製造工程がより簡便になると共に、製造装置の費用低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする。
【0021】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂組成物に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、特にメチルメタクリレート(MMA)を主成分とする(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。前記アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、非環状(直鎖、分枝状)、環状(単環、多環)のいずれでもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも2種以上を含有する共重合体であることが好ましい。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上を共重合させた共重合体であることが好ましい。ここで、(メタ)アクリル系ポリマーの主成分とは、1種類で(メタ)アクリル系ポリマーの50重量%以上の割合を占める化合物、又は2種類以上の合計で(メタ)アクリル系ポリマーの50重量%以上の割合を占める化合物群を意味する。つまり、(メタ)アクリル系ポリマーの100重量部のうち、主成分が50重量部以上の割合を占める場合である。なお、以下の説明において、モノマーについて、単にTgという場合は、ホモポリマーのTgを指す場合がある。
【0022】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる化合物群から選択した1種以上が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0023】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数がC1~C6であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数がC1~C4であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。また、メチルメタクリレート以外の、アルキル基の炭素数がC1~C4であるアルキル(メタ)アクリレートの中では、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレートからなる化合物群から選択した1種以上であることが特に好ましい。
【0024】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(A)メチルメタクリレートと、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計の100重量部のうち、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を、20重量部以下との割合で含有することが好ましく、メチルメタクリレートを80~99重量部と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を、1~20重量部との割合で含有することがより好ましい。
【0025】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、前記(A)メチルメタクリレートと、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計の100重量部に対して、前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部の割合で含有することが好ましく、1.0~12.0重量部の割合で含有することがより好ましく、1.0~9.0重量部の割合で含有することが特に好ましい。
【0026】
前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーとしては、(B)水酸基を有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーからなるモノマー群の中から選択した少なくとも1種以上のモノマーが挙げられる。前記架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーは、水酸基を有する共重合可能なモノマーのみでもよく、カルボキシル基を有する共重合可能なモノマーのみでもよく、水酸基を有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーの両方を併用してもよい。
【0027】
前記水酸基を有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0028】
前記カルボキシル基を有する共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0029】
前記アクリル系ポリマーは、前記(A)メチルメタクリレートと、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計の100重量部に対して、前記(B)水酸基を有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーからなるモノマー群の中から選択した少なくとも1種以上のモノマーの合計を1.0~20.0重量部の割合で含有することが好ましい。
【0030】
前記アクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体であることが好ましく、重量平均分子量が10万超過95万以下の共重合体であることがより好ましく、重量平均分子量が10万超過90万以下の共重合体であることが特に好ましい。前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量が10万以下であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋しても優れた物性を有する(メタ)アクリル系樹脂フィルム等の成形品が得られ難くなる。前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100万より大きいと、(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶液が高粘度となり、製膜工程の作業性が良くない。
【0031】
前記架橋剤としては、前記(メタ)アクリル系ポリマーの有する官能基と、架橋反応することができる架橋性官能基を有する化合物が挙げられる。前記架橋剤は、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の保存安定性等の観点から、常温(一般には5~35℃)では架橋反応が起こり難く、所定の温度以上に加熱すると架橋反応が開始する化合物であることが好ましい。
【0032】
前記架橋剤が、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物からなる化合物群から選択した1種以上であることが好ましい。本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、前記(A)メチルメタクリレートと、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計の100重量部に対して、前記架橋剤を0.01~10重量部の割合で含有することが好ましい。
【0033】
前記エポキシ化合物からなる架橋剤(エポキシ系架橋剤)としては、2官能以上のエポキシ化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリオール類(ジオール類、グリコール類、ビスフェノール類を含む。)のポリグリシジルエーテル、ジカルボン酸のジグリシジルエステル、ジグリシジル置換のアミン類、テトラグリシジル置換のジアミン類などからなる化合物群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。
【0034】
前記エポキシ系架橋剤のうち、ポリオール類のポリグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、ジカルボン酸のジグリシジルエステルとしては、例えば、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
また、ジグリシジル置換のアミン類としては、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
また、テトラグリシジル置換のジアミン類としては、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。
【0035】
前記アジリジン化合物からなる架橋剤(アジリジン系架橋剤)としては、2官能以上のアジリジン化合物、1分子中に2個以上のアジリジン系官能基を有する化合物等であれば特に限定されない。アジリジン系官能基としては、1-アジリジニル基〔-N(CH2)2〕、2-アジリジニル基、メチル基等の置換基を有する置換アジリジニル基等が挙げられる。アジリジン系架橋剤の具体例としては、例えば、次の(1)~(2)のような、ポリイソシアネート化合物とアジリジンとの付加生成物、次の(3)~(4)のような、ポリオールポリアクリレート化合物とアジリジンとの付加生成物、次の(5)~(7)のような、その他のポリアクリジン化合物が挙げられる。
【0036】
(1)4,4′-ビス[(1-アジリジニル)カルボニルアミノ]ジフェニルメタン
(CH2)2NCONH-C6H4CH2C6H4-NHCON(CH2)2
(2)1,6-ビス[(1-アジリジニル)カルボニルアミノ]ヘキサン
(CH2)2NCONH-(CH2)6-NHCON(CH2)2
(3)トリメチロールプロパン-トリス[2-(1-アジリジニル)プロピオネート]
CH3CH2C[CH2O-COCH2CH2N(CH2)2]3
(4)テトラメチロールメタン-トリス[2-(1-アジリジニル)プロピオネート]
HOCH2C[CH2O-COCH2CH2N(CH2)2]3
(5)トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイド
O=P[N(CH2)2]3
(6)トリス(1-アジリジニル)ホスフィンスルフィド
S=P[N(CH2)2]3
(7)2,4,6-トリス(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン
(C3N3)[N(CH2)2]3
【0037】
前記イソシアネート化合物からなる架橋剤(イソシアネート系架橋剤)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の2官能イソシアネート(ジイソシアネート化合物)や、これらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト体等の3官能以上のポリイソシアネート化合物からなる化合物群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。ここで、3官能以上のアダクト体は、ジイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体が挙げられる。
【0038】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上述の添加剤に限らず、界面活性剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、可塑剤、充填剤、滑剤、加工助剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらの添加剤は、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0039】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、所定の形状に成形又は塗布した後で前記(メタ)アクリル系ポリマーと前記架橋剤とを反応させることにより、硬化させることができる。前記(メタ)アクリル系樹脂組成物から得られる成形品としては、特に限定されないが、フィルム、板(シート)、棒(ロッド)、繊維(ファイバー)などが挙げられる。前記成形品の成形方法は、特に限定されないが、キャスト成形、積層成形、押出成形などが挙げられる。前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を、基材上に塗布する場合は、例えば、溶液コーティングにより該基材上に樹脂膜を形成することができる。該基材としては、特に限定されないが、樹脂フィルム、離型フィルム、紙基材、金属箔、積層体等が挙げられる。
【0040】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物に含有されている前記架橋剤が、加熱により架橋反応を開始する熱架橋剤である場合、前記成形品の成形時において前記アクリル系ポリマーを加熱溶融させて流動化させるのではなく、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶液として流動化させるのが好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶液を得るための溶剤としては、前記アクリル系ポリマーの官能基及び前記架橋剤の反応性を損なうことなく、前記アクリル系ポリマーを溶解させることができれば特に限定されない。前記溶剤としては、トルエン等の炭化水素系溶剤、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。前記アクリル系ポリマーを溶液重合法により製造した場合、重合に用いた溶剤の少なくとも一部が、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶剤の少なくとも一部となってもよい。
【0041】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層であることを特徴とする。前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、例えば、溶液キャスト法を用いることにより、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶液を所定の基材上に塗布して薄膜を形成した後、加熱乾燥させて前記薄膜から溶剤を揮発させると共に架橋させることにより、製造することができる。前記基材としては、固定された平面に限らず、樹脂フィルムのロール体から巻き戻された樹脂フィルム、可動のベルト、ドラムなどが挙げられる。前記基材の表面性状は、平滑面が好ましいが、基材に所定の凹凸を設けることにより、得られる前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの表面に凹凸を転写することも可能である。
【0042】
上記の、溶液キャスト法により得られた前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、長手方向、幅方向等の所定の方向に延伸してもよく、無延伸のままとしてもよい。光学用フィルムの用途において、異方性を低減する必要がある場合は、前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを無延伸フィルムとすることが好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向に延伸する操作を加えて、二軸延伸フィルムに加工してもよい。なお、フィルムの異方性としては、「破断伸び」などの機械的特性の異方性に限らず、「複屈折率」などの光学異方性も挙げられる。
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの機械的特性は、用途にも依存するが、粘着シート、光学用フィルム、表面保護フィルム、工程フィルム等に用いる場合や、長手方向の搬送、ロールからの繰り出し、ロールへの巻き取りなどを行う場合は、耐折性及び耐切性(引張破断強度)が高いことに加えて、被着体等に対する追従性が得られるよう、適度な破断伸びを有することが好ましい。
【0043】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを構成する、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層のゲル分率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90~100%であることがさらに好ましく、93~100%であることが特に好ましい。このように前記樹脂層のゲル分率が高いことにより、前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの必要とされる物性である耐溶剤性を改善することができる。
【0044】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば、光学用フィルムの場合は、10~200μm程度の厚みが好ましく、厚みが10~50μmであることがより好ましく、厚みが10~40μmであることが特に好ましく、厚みを40μm以下の薄膜にすることもできる。前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの片面または両面に他の材料を積層する場合は、必要に応じて、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0045】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、光学用フィルムの基材に用いてもよい。光学用フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。光学用部材が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを光学用フィルムとして用いる場合は、無色透明であることが好ましい。
【0046】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの片面または両面には、ハードコート層、帯電防止層、反射防止層、防汚層、防眩層、低屈折率層、粘着層、離型層などの1種又は2種以上を積層してもよい。低屈折率層形成用の組成物に用いられるフッ素化合物としては、フッ素化オレフィン類、フッ素化ビニルエーテル類、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上の重合物である含フッ素共重合体、フッ素化アルキル基含有シラン化合物などの縮合物が挙げられる。含フッ素共重合体は、フッ素化されたモノマーに加えて、オレフィン類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレートなどの、フッ素化されていないモノマーが共重合されていてもよい。低屈折率層は、高屈折率層等と組み合わせて反射防止層を構成してもよい。
【0047】
本実施形態の粘着シートは、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層である前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの片面または両面に、粘着層を形成してなることを特徴とする。前記粘着層としては、(メタ)アクリル系粘着剤からなる粘着剤層が好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムに粘着層を形成する方法は、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0048】
前記粘着シートは、前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを基材としてなる光学用フィルムの少なくとも一方の面に、粘着層が積層されてなる粘着層付き光学用フィルムとしてもよい。粘着層付き光学用フィルムは、液晶表示装置、タッチパネル、電子ペーパー、有機EL等の各種表示装置における光学用フィルムの貼り合せに用いることができる。光学用フィルムの貼り合せに用いられる粘着層の粘着面は、離型フィルムを用いて保護してもよい。離型フィルムには、粘着層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施されてもよい。
【0049】
前記粘着シートは、ガラス、光学用フィルム、光学用部材等の被着体の表面を保護するために前記粘着層を介して貼り合される表面保護フィルムを構成してもよい。表面保護フィルムを被着体に貼り合わせた状態で、被着体の光学特性、異物の有無等を光学的に検査することができる。また、被着体を製品に組み込む段階では、表面保護フィルムを被着体から剥離して除去することができる。
【0050】
本実施形態の偏光フィルムは、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を架橋してなる樹脂層である前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、偏光子の片面または両面に形成してなることを特徴とする。前記偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された少なくとも1種以上であってもよい。ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【実施例0051】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0052】
<(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、メチルメタクリレート95重量部、メチルアクリレート5重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート3.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を滴下させ、65℃に加熱して所定の時間反応させ、実施例1の(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定したところ、20万であった。実施例1の(メタ)アクリル系ポリマー溶液に対して、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)3.0重量部を加えて撹拌混合して実施例1の(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。
【0053】
[実施例2~5及び比較例1~2]
実施例1の(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系樹脂組成物の組成を各々、表1の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~2の(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。実施例2~5及び比較例1~2の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、表1に示すとおりであった。
【0054】
[比較例3]
溶融押出法により製造された市販のPMMAフィルム(厚み:80μm)を溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、PMMAフィルムに含まれるポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定したところ、30万であった。
【0055】
【0056】
また、表1に用いた(A)~(C)の各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、(C)群の架橋剤において、コロネート(登録商標)HX及び同HLは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140Nは三井化学株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)-Xは三菱ガス化学株式会社の商品名である。
【0057】
【0058】
<(メタ)アクリル系樹脂フィルムの作製>
実施例1~5及び比較例1~2の(メタ)アクリル系樹脂組成物を溶液キャスト法により、樹脂フィルム状に製膜し、溶剤の乾燥及び架橋剤の硬化に適した温度条件にして加熱乾燥、及び架橋させて、実施例1~5及び比較例1~2の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得た。各フィルムの厚みを表3に示す。
また、比較例3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムとしては、上記のとおり、溶融押出法により製造された市販のPMMAフィルム(厚み:80μm)を用いた。
【0059】
<(メタ)アクリル系樹脂フィルムの試験方法及び評価>
実施例1~5及び比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、以下の試験方法により評価した。
【0060】
<耐折性>
実施例1~5及び比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムから試験片を作製した後、JIS P8115(紙及び板紙-耐折強さ試験方法-MIT試験機法)に準拠して、耐折度試験装置(メーカ:テスター産業株式会社、型式:MIT耐折度試験装置BE-201)を用いて耐折性の試験を行い、試験片が破断するまでの往復折曲げ回数(耐折回数)を測定した。
【0061】
<耐溶剤性(ゲル分率)>
耐溶剤性の試験方法として、下記のように(メタ)アクリル系樹脂フィルムの試験片を、溶剤の液中に所定時間に渡り浸漬した後、前記溶剤に溶出しないで不溶分(残渣)として残った(メタ)アクリル系樹脂フィルムの割合(いわゆる、ゲル分率)を測定し、耐溶剤性を試験した。
実施例1~5及び比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムから試験片を作製し、試験片の質量を正確に測定し、メチルエチルケトン(MEK)中に24hr浸漬した後、200メッシュの金網で濾過した。その後、濾過物を、温度100℃で、1hr乾燥して得られた残渣の質量を正確に測定して、以下の式から耐溶剤性の試験方法として、溶剤への浸漬によるゲル分率(%)を測定した。
ゲル分率(%)=不溶分(残渣)質量(g)/フィルム(試験片)質量(g)×100
【0062】
<耐切性(引張破断強度)、破断伸び率>
実施例1~5及び比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムから試験片を作製し、引張試験装置(メーカ:株式会社島津製作所、型式:AGS-X)を用いて測定し、試験片が破断するまでの耐切性(引張破断強度(MPa))、及び破断伸び率(%)の値を求めた。
【0063】
<位相差>
実施例1~5及び比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの面内位相差(Re)値(nm)を、位相差測定装置(メーカ:王子計測機器株式会社、型式:KOBRA-HBPR/SPC)を用いて測定した。位相差の測定波長は、例えば450~550nm等の可視領域から適宜選択することができる。Re値は、面内の屈折率が最大になる方向をx軸(遅相軸)、これと直交する方向をy軸(進相軸)とするとき、x軸方向の屈折率nxと、y軸方向の屈折率nyと、フィルムの膜厚dとから、次の式により算出される。
面内位相差Re=(nx-ny)×d
ここで、フィルムの膜厚dは、面内位相差Reと同じくnm単位であるから、フィルムの厚み(μm)の1000倍である。
【0064】
表3に、実施例1~5及び比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムについての評価結果を示す。
【0065】
【0066】
実施例1~5の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、厚みが40μm以下の薄膜に製膜されたものであり、耐折性が50回以上、耐切性(引張破断強度)が50MPa以上、破断伸び率が9~12%、耐溶剤性(ゲル分率)が93%以上であり、いずれの特性にも優れているものであった。
このように、実施例1~5の(メタ)アクリル系樹脂フィルムでは、本発明の課題を解決できることが実証されている。
【0067】
比較例1の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーが、アルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートとしてMMAのみを共重合したものであり、MMA以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、アルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートを共重合していないためか、耐折性が極めて低く、破断伸び率が低かった。
比較例2の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂組成物が、架橋剤を含有していないためか、耐折性及び耐溶剤性(ゲル分率)が極めて低かった。
【0068】
比較例3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、溶融押出法により製造された樹脂フィルムであるが、耐折性及び耐溶剤性(ゲル分率)が、実施例1~5による(メタ)アクリル系樹脂フィルムに比べて極めて低いことが判明した。なお、比較例3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚みが20μmと仮定すると、Reの値は厚みの比率(20/80)に応じて、1/4の値となるが、それでもRe値が大きいことから、複屈折率(nx-ny)の値自体が大きいと考えられる。
【0069】
以上のように、比較例1~3の(メタ)アクリル系樹脂フィルムでは、本発明の課題である、耐折性、耐切性(引張破断強度)、破断伸び率、耐溶剤性(ゲル分率)に優れている(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供することを解決することができなかった。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物、及びそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、従来の溶融押出法により得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルムと比較すると、特に、薄膜化、耐折性、耐溶剤性(ゲル分率)の点において優れた特性を有することから、ディスプレイなどの各種光学機器の薄型化、及び耐久性の向上に効果を発揮することが期待できるため、産業上の利用価値が大である。