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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178436
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系複合材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20231207BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231207BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20231207BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20231207BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/013
C08L23/12
C08F210/16
C08F4/6592
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183193
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2022504689の分割
【原出願日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121150
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】イン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】テ・ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・サム・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】レ・クン・カク
(57)【要約】
【課題】優れた機械的強度とともに著しく改善した衝撃強度特性を示すことができるポリプロピレン系複合材を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)ポリプロピレンと、(1)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が0.1g/10分~10.0g/10分であり、(2)示差走査熱量計(DSC)による測定時に、溶融温度が20℃~70℃であり、(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定時に、75℃~150℃で高温溶融ピークが確認され、当該領域の熱容量の総合H(75)が1.0J/g以上である要件を満たす(B)オレフィン系重合体とを含むポリプロピレン系複合材に関し、本発明のポリプロピレン系複合材は、優れた衝撃強度を発揮することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリプロピレンと、
(B)下記(1)~(3)の要件を満たすオレフィン系重合体とを含む、ポリプロピレン系複合材:
(1)溶融指数(Melt Index、MI、190℃2.16kgの荷重条件)が0.1g/10分~10.0g/10分であり、
(2)密度(d)が0.860g/cc~0.880g/ccであり、
(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定時に、T(90)-T(50)≦50であり、T(95)-T(90)≧10であり、
ここで、T(50)、T(90)およびT(95)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定結果で温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%、90%、および95%が溶融される温度である。
【請求項2】
前記(A)ポリプロピレンは、230℃および2.16kgの荷重で測定された溶融指数が0.5g/10min~100g/10minである、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項3】
前記(A)ポリプロピレンは、230℃および2.16kgの荷重で測定された溶融指数が0.5g/10min~100g/10minである、請求項1に記載のインパクトコポリマーであるポリプロピレン系複合材。
【請求項4】
前記(B)オレフィン系重合体は、さらに、(4)重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~500,000g/molである要件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項5】
前記(B)オレフィン系重合体は、さらに、(5)分子量分布(MWD、molecular weight density)が0.1~6.0である要件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項6】
前記(B)オレフィン系重合体は、さらに、(6)示差走査熱量計(DSC)による測定時に、溶融点が20℃~70℃である要件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項7】
前記(B)オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素数3~12のアルファ-オレフィン共単量体との共重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項8】
前記アルファ-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含む、請求項7に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項9】
前記(B)オレフィン系重合体は、エチレンと1-ヘキセンの共重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項10】
前記(B)オレフィン系重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法により得られる、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系複合材:
【化1】
前記化学式1中、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイド基であり、前記二つのRは、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリール基を含むアルキリデン基によって互いに連結されて環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミド基であり、前記Rのうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリール基で置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数個である場合には、前記置換基のうち2個以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく、
Mは、第4族遷移金属であり、
およびQは、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミド;または炭素数1~20のアルキリデン基である。
【請求項11】
前記(B)オレフィン系重合体は、前記オレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入し、連続撹拌式反応器(Continuous Stirred Tank Reactor)を用いた連続溶液重合反応により製造される、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項12】
前記(B)オレフィン系重合体を5重量%~40重量%含む、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項13】
無機充填剤をさらに含む、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項14】
(A)ポリプロピレン100重量部に対して、0.1重量部~40重量部の含量で前記無機充填剤を含み、
前記無機充填剤は、平均粒径(D50)が1μm~20μmである、請求項13に記載のポリプロピレン系複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月30日付けの韓国特許出願第10-2019-0121150号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリプロピレン系複合材に関し、具体的には、高結晶性領域が導入されて高い機械的剛性を示す低密度オレフィン系重合体を含むことで、衝撃強度および機械的物性が改善したポリプロピレン系複合材に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、自動車の内外装材部品用の組成物としては、ポリプロピレン(PP)を主成分として衝撃補強材と無機充填剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物が使用されてきた。
【0004】
メタロセン触媒を適用して重合したエチレン-α-オレフィン共重合体を開発する前の1990年代半ばまでは、自動車の内外装材、特に、バンパーカバーの材料として、ほとんどの場合、ポリプロピレン系樹脂組成物にEPR(エチレンプロピレンゴム;Ethylene Propylene Rubber)やEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム;ethylene propylene diene rubber)を衝撃補強材として主に使用していた。しかし、メタロセン触媒によって合成されたエチレン-α-オレフィン共重合体が登場してからは、衝撃補強材として、エチレン-α-オレフィン共重合体が使用され始め、現在、その主流をなしている。その理由は、これを使用したポリプロピレン系複合材は、衝撃強度、弾性率、曲げ強度などの均衡の取れた物性を有して成形性に優れ、安価であるなど、利点が多いためである。
【0005】
メタロセン触媒によって合成されたエチレン-α-オレフィン共重合体などのポリオレフィンは、チーグラー・ナッタ触媒によるものよりも分子構造が均一に制御されるため、分子量分布が狭く、機械的物性も良好な方である。メタロセン触媒によって重合された低密度のエチレンエラストマーも、α-オレフィン共重合単量体が、チーグラー・ナッタ触媒によるものよりも、ポリエチレン(PE)分子内に比較的均一に挿入されるため、低密度のゴム特性を維持し、且つ他の機械的物性も良好であるという特性がある。
【0006】
しかし、様々な使用環境によって耐衝撃性の確保には限界があり、かかる限界を解消できるポリプロピレン系複合材の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、優れた機械的強度とともに著しく改善した衝撃強度特性を示すことができるポリプロピレン系複合材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、(A)ポリプロピレンと、(B)下記(1)~(3)の要件を満たすオレフィン系重合体とを含むポリプロピレン系複合材を提供する。
【0009】
(1)溶融指数(Melt Index、MI、190℃2.16kgの荷重条件)が0.1g/10分~10.0g/10分であり、(2)密度(d)が0.860g/cc~0.880g/ccであり、(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定時に、T(90)-T(50)≦50であり、T(95)-T(90)≧10であり、
ここで、T(50)、T(90)およびT(95)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定結果で温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%、90%、および95%が溶融される温度である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるポリプロピレン系複合材は、高結晶性領域が導入されて高い機械的剛性を示し、且つポリプロピレンとの優れた混和性によって複合材内への均一な分散が可能なオレフィン系重合体を含むことで、別の添加剤を使用しなくても、優れた機械的強度とともに著しく改善した衝撃強度特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施製造例1の重合体に対して、示差走査熱量計(DSC)を用いて溶融温度を測定した結果を示すグラフである。
図2】比較製造例1の重合体に対して、示差走査熱量計(DSC)を用いて溶融温度を測定した結果を示すグラフである。
図3】実施製造例1の重合体に対して、示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果を示すグラフである。
図4】比較製造例1の重合体に対して、示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果を示すグラフである。
図5】実施製造例1の重合体に対して、示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果を分画化し、T(50)、T(90)、およびT(95)を示すグラフである。
図6】比較製造例1の重合体に対して、示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果を分画化し、T(50)、T(90)、およびT(95)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本明細書および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0014】
本明細書において、用語「重合体」とは、同一または異なる類型の単量体の重合により製造される重合体化合物を意味する。「重合体」という総称は、「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」だけでなく、「混成重合体」という用語を含む。また、前記「混成重合体」とは、二つ以上の相違する類型の単量体の重合により製造された重合体を意味する。「混成重合体」という総称は、(二つの相違する単量体から製造された重合体を指すために通常使用される)「共重合体」という用語だけでなく、(三つの相違する類型の単量体から製造された重合体を指すために通常使用される)「三元共重合体」という用語を含む。これは、四つ以上の類型の単量体の重合により製造された重合体を含む。
【0015】
通常、自動車バンパーなどの自動車用内外装材として、ポリプロピレンが使用されており、ポリプロピレンの低い衝撃強度を補完するための衝撃補強材として、ポリオレフィン系重合体がともに使用されている。中でも、様々な使用環境による耐衝撃性、弾性率および引張物性などの特性を示し、且つ高い衝撃強度特性を有するようにするために、低密度のポリオレフィン系重合体が使用されているが、この場合、むしろポリプロピレンの強度を低下させるという問題があった。
【0016】
これに対して、本発明では、ポリプロピレン系複合材の製造時に、優れた衝撃強度の改善効果を示し、且つポリプロピレンとの優れた混和性によって複合材内への均一な分散が可能なオレフィン系重合体を使用することで、別の添加剤を使用しなくても、優れた機械的強度とともに著しく改善した衝撃強度特性を示すことができる。
【0017】
本発明によるポリプロピレン系複合材は、(A)ポリプロピレンと、(B)下記(1)~(3)の要件を満たすオレフィン系重合体とを含む。
【0018】
(1)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が0.1g/10分~10.0g/10分であり、(2)密度(d)が0.860g/cc~0.880g/ccであり、(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定時に、T(90)-T(50)≦50であり、T(95)-T(90)≧10である。
【0019】
ここで、T(50)、T(90)およびT(95)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定結果で、温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%、90%、および95%が溶融される温度である。
【0020】
以下、各構成成分別に詳細に説明する。
【0021】
(A)ポリプロピレン
本発明の一実施形態による前記ポリプロピレン系複合材において、前記ポリプロピレンは、具体的には、ポリプロピレン単独重合体であるか、またはプロピレンとアルファ-オレフィン単量体との共重合体であってもよく、この際、前記共重合体は、交互(alternating)またはランダム(random)、またはブロック(block)共重合体であってもよい。ただし、本発明において、前記ポリプロピレンは、前記オレフィン重合体と重なり得るものは排除され、前記オレフィン重合体とは異なる化合物である。
【0022】
前記アルファ-オレフィン系単量体は、具体的には、炭素数2~12、または炭素数2~8の脂肪族オレフィンであってもよい。より具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン(1-decene)、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-イコセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジエチル-1-ヘキセンまたは3,4-ジメチル-1-ヘキセンなどが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0023】
より具体的には、前記ポリプロピレンは、ポリプロピレン共重合体、プロピレン-アルファ-オレフィン共重合体、およびプロピレン-エチレン-アルファ-オレフィン共重合体からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよく、この際、前記共重合体は、ランダムまたはブロック共重合体であってもよい。
【0024】
また、前記ポリプロピレンは、230℃および2.16kgの荷重で測定された溶融指数(MI)が0.5g/10min~100g/10minであり、具体的には、前記溶融指数(MI)は、1g/10min~90g/10minであってもよく、より具体的には、10g/10min~50g/10minであってもよい。ポリプロピレンの溶融指数が前記範囲から逸脱する場合、射出成形時に問題が発生する恐れがある。
【0025】
具体的には、本発明の一実施形態によるポリプロピレン系複合材において、前記ポリプロピレンは、230℃および2.16kgの荷重で測定された溶融指数(MI)が、0.5g/10min~100g/10min、具体的には、1g/10min~90g/10minであるインパクトコポリマー(impact copolymer)であってもよく、より具体的には、プロピレン-エチレンインパクトコポリマーであってもよく、前記インパクトコポリマーは、ポリプロピレン系複合材の全重量に対して、50重量%~90重量%、より具体的には、80重量%~90重量%含まれることができる。かかる物性を有するインパクトコポリマーをポリプロピレンとして上記の含量範囲で含む場合、強度特性、特に、低温強度特性を向上させることができる。
【0026】
上記のインパクトコポリマーは、通常の重合体の製造反応を用いて、上記の物性的要件を満たすように製造することもでき、商業的に手に入れて使用することもできる。具体的な例として、LG化学社製のSEETETM M1600などが挙げられる。
【0027】
また、本発明の一実施形態によるポリプロピレン系複合材において、前記ポリプロピレンは、具体的には、120℃~160℃範囲のDSC融点、およびASTM-D1238に準じて、230℃、2.16kgの荷重条件で測定した、5g/10min~120g/10min範囲の溶融流速(MFR)を有する一つ以上のランダムプロピレン共重合体であってもよく、前記ランダムプロピレン共重合体は、ポリプロピレン系複合材の全重量に対して、75重量%~97重量%、より具体的には、85重量%~91重量%含まれることができる。かかる物性を有するポリプロピレンを上記の含量範囲で含む場合、硬度などのポリプロピレン複合材の機械的強度を向上させることができる。前記ランダムプロピレン共重合体は、通常の重合体の製造反応を用いて、上記の物性的要件を満たすように製造することもでき、商業的に手に入れて使用することもできる。具体的な例として、ブラスケムアメリカインコーポレーション(Braskem America Inc.)のBraskemTM PP R7021-50RNAまたはアメリカのフォルモサプラスチックスコーポレーション(Formosa Plastics Corporation)のFormoleneTM 7320Aなどが挙げられる。
【0028】
(B)オレフィン系重合体
本発明によるポリプロピレン系複合材に含まれるオレフィン系重合体は、超低密度であり、且つ、通常の従来のオレフィン系重合体と比較して、高結晶性領域が導入されて同水準の密度および溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)を有する時に、より高い引張強度および引裂強度を示す。本発明によるポリプロピレン系複合材に含まれるオレフィン系重合体は、重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法により製造されており、重合時に、水素ガスの投入によって高結晶性領域が導入され、優れた機械的剛性を示す。
【0029】
前記溶融指数(MI)は、オレフィン系重合体を重合する過程で使用される触媒の共単量体に対する使用量を調節することで調節することができ、オレフィン系重合体の機械的物性および衝撃強度、および成形性に影響を及ぼす。本明細書において、前記溶融指数は、0.850g/cc~0.890g/ccの低密度条件で、ASTM D1238に準じて、190℃、2.16kgの荷重条件で測定したものであり、0.1g/10分~10g/10分であり、具体的には、0.3g/10分~9g/10分、より具体的には、0.4g/10分~7g/10分であってもよい。
【0030】
一方、前記密度は、0.850g/cc~0.890g/ccであり、具体的には、0.850g/cc~0.880g/ccであってもよく、より具体的には、0.860g/cc~0.875g/ccであってもよい。
【0031】
通常、オレフィン系重合体の密度は、重合時に使用される単量体の種類と含量、重合度などの影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響が大きい。本発明のオレフィン系重合体は、特徴的な構造を有する遷移金属化合物を含む触媒組成物を使用して重合されたものであり、多量の共単量体の導入が可能であり、本発明のオレフィン系重合体は、上述の範囲の低密度を有することができる。
【0032】
また、前記オレフィン系重合体は、示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定時に、T(90)-T(50)≦50であり、T(95)-T(90)≧10であり、具体的には、20≦T(90)-T(50)≦45であり、10≦T(95)-T(90)≦30であってもよく、より具体的には、30≦T(90)-T(50)≦40であり、10≦T(95)-T(90)≦20であってもよい。
【0033】
前記T(50)、T(90)およびT(95)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定結果で、温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%、90%、および95%が溶融される温度である。
【0034】
一般的に、示差走査熱量計(DSC)を用いた溶融温度(Tm)の測定は、溶融温度(Tm)より略30℃ほど高い温度まで一定の速度で加熱した後、ガラス転移温度(Tg)より略30℃ほど低い温度まで一定の速度で冷却する一度目のサイクルの後、二度目のサイクルで標準的な溶融温度(Tm)のピークを得る。前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、一度目のサイクルの後に、溶融温度(Tm)のピーク直前の温度まで加熱し、冷却する過程を経て、5℃程度温度を下げた温度まで加熱し、冷却する過程を繰り返して行うことで、より精緻な結晶情報を得る方法である(Eur.Polym.J.2015,65,132)。
【0035】
オレフィン系重合体に高結晶性領域が少量導入される場合、一般的な示差走査熱量計(DSC)を用いた溶融温度の測定時には示されず、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)により高温溶融ピークを測定することができる。
【0036】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、(4)重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~500,000g/molである要件を満たすことができ、具体的には、前記重量平均分子量(Mw)は、30,000g/mol~300,000g/mol、より具体的には、50,000g/mol~200,000g/molであってもよい。本発明において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)で分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0037】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である(5)分子量分布(MWD;Molecular Weight Distribution)が0.1~6.0である要件を満たすことができ、前記分子量分布(MWD)は、具体的には、1.0~4.0、より具体的には、2.0~3.0であってもよい。
【0038】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、(6)示差走査熱量計(DSC)による測定時に、溶融点(Tm)が20℃~70℃である要件を満たすことができ、前記溶融点(Tm)は、具体的には、25℃~60℃であってもよく、より具体的には、25℃~50℃であってもよい。
【0039】
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体、具体的には、アルファ-オレフィン系単量体、サイクリックオレフィン系単量体、ジエンオレフィン系単量体、トリエンオレフィン系単量体およびスチレン系単量体から選択されるいずれか一つの単独重合体であるか、もしくは2種以上の共重合体であってもよい。より具体的には、前記オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素数3~12のアルファ-オレフィンの共重合体または炭素数3~10のアルファ-オレフィンの共重合体であってもよい。
【0040】
前記アルファ-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-イコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含むことができる。
【0041】
より具体的には、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンと4-メチル-1-ペンテンまたはエチレンと1-オクテンの共重合体であってもよく、より具体的には、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンと1-ブテンの共重合体であってもよい。
【0042】
前記オレフィン系重合体がエチレンとアルファ-オレフィンの共重合体である場合、前記アルファ-オレフィンの量は、共重合体の全重量に対して、90重量%以下、より具体的には、70重量%以下、さらに具体的には、5重量%~60重量%であってもよく、一層具体的には、20重量%~50重量%であってもよい。前記アルファ-オレフィンが前記範囲で含まれる時に、上述の物性的特性の具現が容易である。
【0043】
前記の物性および構成的特徴を有する本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体は、単一反応器で1種以上の遷移金属化合物を含むメタロセン触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合する連続溶液重合反応により製造されることができる。これにより、本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体は、重合体内の重合体を構成する単量体のいずれか一つの単量体由来の繰り返し単位が、2個以上線状に連結されて構成されたブロックが形成されない。すなわち、本発明によるオレフィン系重合体は、ブロック共重合体(block copolymer)を含まず、ランダム共重合体(random copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)およびグラフト共重合体(graft copolymer)からなる群から選択されてもよく、より具体的には、ランダム共重合体であってもよい。
【0044】
本発明の一例において、前記水素ガスの投入量は、反応系に投入されるオレフィン系単量体1重量部に対して、0.35~3重量部であってもよく、具体的には、0.4~2重量部であってもよく、より具体的には、0.45~1.5重量部であってもよい。また、本発明の一例において、前記オレフィン系重合体が、連続溶液重合によって重合される場合、前記水素ガスは、反応系に投入されるオレフィン系単量体1kg/hに対して、0.35~3kg/h、具体的には、0.4~2kg/h、より具体的には、0.45~1.5kg/hの量で投入されることができる。
【0045】
また、本発明の他の一例において、前記オレフィン系重合体が、エチレンとアルファ-オレフィンの共重合体である場合、前記水素ガスは、エチレン1重量部に対して、0.8~3重量部、具体的には、0.9~2.8重量部、より具体的には、1~2.7重量部の量で投入されることができる。また、本発明の一例において、前記オレフィン系重合体がエチレンとアルファ-オレフィンの共重合体であり、連続溶液重合によって重合される場合、前記水素ガスは、反応系に投入されるエチレン1kg/hに対して、0.8~3kg/h、具体的には、0.9~2.8kg/h、より具体的には、1~2.7kg/hの量で投入されることができる。
【0046】
前記水素ガスが前記範囲の量で投入される条件下で重合が行われる場合、本発明のオレフィン系重合体が、上述の物性を満たすことができる。
【0047】
具体的には、本発明のオレフィン系共重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法により得られることがでる。
【0048】
ただし、本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体の製造において、下記化学式1の遷移金属化合物の構造の範囲を特定の開示形態に限定せず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物もしくは代替物を含むものと理解すべきである。
【0049】
【化1】
前記化学式1中、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイド基であり、前記二つのRは、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリール基を含むアルキリデン基によって互いに連結されて環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミド基であり、前記Rのうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリール基で置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数個である場合には、前記置換基のうち2個以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく、
Mは、第4族遷移金属であり、
およびQは、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミド;または炭素数1~20のアルキリデン基である。
【0050】
また、本発明の他の一例において、前記化学式1中、前記RおよびRは、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;アリール;またはシリルであってもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;アリールオキシ;またはアミドであってもよく、前記Rのうち2個以上のRは、互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく、
前記QおよびQは、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミドであってもよく、
Mは、第4族遷移金属であってもよい。
【0051】
前記化学式1で表される遷移金属化合物は、テトラヒドロキノリンが導入されたシクロペンタジエニルリガンドによって金属サイトが連結されており、構造的にcp-M-N角度は狭く、モノマーが近付くQ-M-Q(Q-M-Q)角度は広く維持することを特徴とする。また、環状の結合によって、cp、テトラヒドロキノリン、窒素および金属サイトが順に連結され、より安定し、強固な五角形のリング構造をなす。したがって、かかる化合物をメチルアルミノキサンまたはB(Cなどの助触媒と反応させて活性化した後、オレフィン重合に適用した時に、高い重合温度でも、高活性、高分子量および高空重合性などの特徴を有するオレフィン系重合体を重合することが可能である。
【0052】
本明細書で定義された各置換基について詳細に説明すると、以下のとおりである。
【0053】
本明細書に使用されている用語「ヒドロカビル(hydrocarbyl group)」は、他に断らない限り、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルなどその構造に関係なく、炭素および水素のみからなる炭素数1~20の1価の炭化水素基を意味する。
【0054】
本明細書に使用されている用語「ハロゲン」は、他に断らない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0055】
本明細書に使用されている用語「アルキル」は、他に断らない限り、直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を意味する。
【0056】
本明細書に使用されている用語「シクロアルキル」は、他に断らない限り、シクロプロピルなどを含む環状アルキルを示す。
【0057】
本明細書に使用されている用語「アルケニル」は、他に断らない限り、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味する。
【0058】
前記分岐鎖は、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0059】
本明細書に使用されている用語「アリール」は、他に断らない限り、炭素数6~20の芳香族基を示し、具体的には、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0060】
前記アルキルアリール基は、前記アルキル基によって置換されたアリール基を意味する。
【0061】
前記アリールアルキル基は、前記アリール基によって置換されたアルキル基を意味する。
【0062】
前記環(またはヘテロ環基)は、炭素数5~20個の環原子を有し、1個以上のヘテロ原子を含む1価の脂肪族または芳香族の炭化水素基を意味し、単一環または2以上の環の縮合環であってもよい。また前記ヘテロ環基は、アルキル基で置換されていても置換されていなくてもよい。これらの例としては、インドリン、テトラヒドロキノリンなどが挙げられるが、本発明がこれらにのみ限定されるものではない。
【0063】
前記アルキルアミノ基は、前記アルキル基によって置換されたアミノ基を意味し、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などがあるが、これらの例にのみ限定されたものではない。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記アリール基は、炭素数6~20であることが好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0065】
本明細書において、シリルは、炭素数1~20のアルキルで置換または非置換のシリルであってもよく、例えば、シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリヘキシルシリル、トリイソプロピルシリル、トリイソブチルシリル、トリエトキシシリル、トリフェニルシリル、トリス(トリメチルシリル)シリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記化学式1の化合物は、下記化学式1-1であってもよく、これに限定されない。
【0067】
【化2】
【0068】
他にも、前記化学式1において定義された範囲で様々な構造を有する化合物であってもよい。
【0069】
前記化学式1の遷移金属化合物は、触媒の構造的な特徴上、低密度のポリエチレンだけでなく、多量のアルファ-オレフィンが導入可能であることから、0.850g/cc~0.890g/cc水準の低密度ポリオレフィン共重合体の製造が可能である。
【0070】
前記化学式1の遷移金属化合物は、一例として、以下の方法により製造されることができる。
【0071】
【化3】
【0072】
前記反応式1中、R~R、M、QおよびQは、前記化学式1で定義したとおりである。
【0073】
前記化学式1は、韓国特許公開第2007-0003071号に記載の方法により製造されることができ、前記特許文献の内容は、その全てが本明細書に組み込まれる。
【0074】
前記化学式1の遷移金属化合物は、他に、下記化学式2、化学式3、および化学式4で表される助触媒化合物のうち1種以上をさらに含む組成物の形態で、重合反応の触媒として使用されることができる。
【0075】
[化学式2]
-[Al(R)-O]
【0076】
[化学式3]
A(R
【0077】
[化学式4]
[L-H][W(D)または[L][W(D)
【0078】
前記化学式2~3中、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカビル、およびハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカビルからなる群から選択され、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
Dは、それぞれ独立して、1以上の水素原子が置換基で置換されてもよい炭素数6~20のアリールまたは炭素数1~20のアルキルであり、この際、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカビル、炭素数1~20のアルコキシおよび炭素数6~20のアリールオキシからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、
Hは、水素原子であり、
Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、
Wは、第13族元素であり、
aは、2以上の整数である。
【0079】
前記化学式2で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンが挙げられ、また、前記アルキルアルミノキサンが2種以上混合された修飾されたアルキルアルミノキサンが挙げられ、具体的には、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)であってもよい。
【0080】
前記化学式3で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素などが含まれ、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムから選択されることができる。
【0081】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリブチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルホスホニウムテトラフェニルホウ素、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素またはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素などが挙げられる。
【0082】
前記触媒組成物は、第一の方法として、1)前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式2または化学式3で表される化合物を接触させて混合物を得るステップと、2)前記混合物に前記化学式4で表される化合物を添加するステップとを含む方法により製造されることができる。
【0083】
また、前記触媒組成物は、第二の方法として、前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式4で表される化合物を接触させる方法により製造されることができる。
【0084】
前記触媒組成物の製造方法のうち第一の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/前記化学式2または化学式3で表される化合物のモル比は、1/5,000~1/2であってもよく、具体的には、1/1,000~1/10であってもよく、より具体的には、1/500~1/20であってもよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式2または化学式3で表される化合物のモル比が1/2を超える場合には、アルキル化剤の量が非常に少なくて、金属化合物のアルキル化が完全に行われないという問題があり、モル比が1/5,000未満の場合には、金属化合物のアルキル化は行われるものの、残っている過量のアルキル化剤と前記化学式4の化合物である活性化剤との副反応によって、アルキル化した金属化合物の活性化が完全に行われないという問題がある。また、前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比は、1/25~1であってもよく、具体的には、1/10~1であってもよく、より具体的には、1/5~1であってもよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比が1を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて、金属化合物の活性化が完全に行われることができず、生成される触媒組成物の活性度が低下し得、モル比が1/25未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるものの、残っている過量の活性化剤によって、触媒組成物の単価が経済的でないか、生成される高分子の純度が低下し得る。
【0085】
前記触媒組成物の製造方法のうち、第二の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物/化学式4で表される化合物のモル比は、1/10,000~1/10であってもよく、具体的には、1/5,000~1/100であってもよく、より具体的には、1/3,000~1/500であってもよい。前記モル比が1/10を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて、金属化合物の活性化が完全に行われることができず、生成される触媒組成物の活性度が低下し得、1/10,000未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるものの、残っている過量の活性化剤によって、触媒組成物の単価が経済的でないか、生成される高分子の純度が低下し得る。
【0086】
前記触媒組成物の製造時に、反応溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒が使用されることができる。
【0087】
また、前記触媒組成物は、前記遷移金属化合物と助触媒化合物を担体に担持した形態で含むことができる。
【0088】
前記担体は、メタロセン系触媒で担体として使用されるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記担体は、シリカ、シリカ-アルミナまたはシリカ-マグネシアなどであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0089】
中でも、前記担体がシリカである場合、シリカ担体と前記化学式1のメタロセン化合物の官能基が化学的に結合を形成することから、オレフィン重合過程で表面から遊離される触媒がほとんどない。結果、オレフィン系重合体の製造工程中に、反応器の壁面や重合体粒子同士が絡み合うファウリングの発生を防止することができる。また、前記シリカ担体を含む触媒の存在下で製造されるオレフィン系重合体は、重合体の粒子形態および見掛け密度に優れる。
【0090】
より具体的には、前記担体は、高温乾燥などの方法により、表面に反応性が大きいシロキサンを含む、高温乾燥したシリカまたはシリカ-アルミナなどであってもよい。
【0091】
前記担体は、NaO、KCO、BaSOまたはMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩または硝酸塩成分をさらに含むことができる。
【0092】
前記オレフィン系単量体を重合する重合反応は、連続式溶液重合、バルク重合、懸濁重合、スラリー重合、または乳化重合など、オレフィン単量体の重合に適用される通常の工程により行われることができる。
【0093】
前記オレフィン単量体の重合反応は、不活性溶媒の下で行われることができ、前記不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、1-ヘキセン、1-オクテンが挙げられ、これに制限されない。
【0094】
前記オレフィン系重合体の重合は、約25℃~約500℃の温度で行われることができ、具体的には、80℃~250℃、より好ましくは100℃~200℃の温度で行われることができる。また、重合時の反応圧力は、1kgf/cm~150kgf/cm、好ましくは、1kgf/cm~120kgf/cm、より好ましくは、5kgf/cm~100kgf/cmであってもよい。
【0095】
実施例
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0096】
触媒製造例1:遷移金属化合物Aの製造
【化4】
(1)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(8-(2,3,4,5-Tetramethyl-1,3-cyclopentadienyl)-1,2,3,4-tetrahydroquinoline)の製造
(i)リチウムカルバメートの製造
1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(13.08g、98.24mmol)とジエチルエーテル(150mL)をシュレンク(schlenk)フラスコに入れた。ドライアイスとアセトンで設けられた-78℃低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間撹拌した。次いで、n-BuLi(39.3mL、2.5M、98.24mmol)を窒素雰囲気下で注射器で投入し、淡黄色のスラリーが形成された。次いで、フラスコを2時間撹拌した後、生成されたブタンガスを除去しながら常温にフラスコの温度を上げた。フラスコを-78℃の低温槽に再度浸漬して温度を下げた後、COガスを投入した。二酸化炭素ガスの投入によってスラリーが無くなり、透明な溶液になった。フラスコをバブラ(bubbler)に連結して二酸化炭素ガスを除去しながら温度を常温に上げた。その後、真空下で残りのCOガスと溶媒を除去した。ドライボックスにフラスコを移した後、ペンタンを加え、激しく撹拌した後、濾過し、白色の固体化合物であるリチウムカルバメートを得た。前記白色の固体化合物は、ジエチルエーテルが配位結合している。この際、収率は100%である。
【0097】
H NMR(C,CN):δ 1.90(t,J=7.2 Hz,6H,ether),1.50(br s,2H,quin-CH),2.34(br s,2H,quin-CH),3.25(q,J=7.2 Hz,4H,エーテル(ether)),3.87(br,s,2H,quin-CH),6.76(br d,J=5.6 Hz,1H,quin-CH)ppm
13C NMR(C):δ 24.24,28.54,45.37,65.95,121.17,125.34,125.57,142.04,163.09(C=O)ppm
【0098】
(ii)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの製造
【化5】
前記ステップ(i)で製造されたリチウムカルバメート化合物(8.47g、42.60mmol)をシュレンクフラスコに入れた。次いで、テトラヒドロフラン(4.6g、63.9mmol)とジエチルエーテル45mLを順に入れた。アセトンと少量のドライアイスで設けられた-20℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間撹拌した後、t-BuLi(25.1mL、1.7M、42.60mmol)を入れた。この際、反応混合物の色が赤色に変わった。-20℃を維持し続けながら6時間撹拌した。テトラヒドロフランに溶解しているCeCl・2LiCl溶液(129mL、0.33M、42.60mmol)とテトラメチルシクロペンチノン(5.89g、42.60mmol)を注射器の中で混合した後、窒素雰囲気下でフラスコに投入した。フラスコの温度を常温に徐々に上げてから1時間後に恒温槽を除去し、温度を常温に維持した。次いで、前記フラスコに水(15mL)を添加した後、エチルアセテートを入れて濾過し、濾液を得た。その濾液を分液漏斗に移した後、塩酸(2N、80mL)を入れて12分間振盪した。また、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(160mL)を入れて中和した後、有機層を抽出した。この有機層に無水硫酸マグネシウムを入れて水分を除去し濾過した後、その濾液を取り、溶媒を除去した。得られた濾液をヘキサンとエチルアセテート(v/v、10:1)溶媒を使用してカラムクロマトグラフィー方法で精製し、黄色のオイルを得た。収率は40%であった。
【0099】
H NMR(C):δ 1.00(br d,3H,Cp-CH),1.63-1.73(m,2H,quin-CH),1.80(s,3H,Cp-CH),1.81(s,3H,Cp-CH),1.85(s,3H,Cp-CH),2.64(t,J=6.0 Hz,2H,quin-CH),2.84-2.90(br,2H,quin-CH),3.06(br s,1H,Cp-H),3.76(br s,1H,N-H),6.77(t,J=7.2 Hz,1H,quin-CH),6.92(d,J=2.4 Hz,1H,quin-CH),6.94(d,J=2.4 Hz,1H,quin-CH)ppm
【0100】
(2)[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η ,κ-N]チタンジメチル([(1,2,3,4-Tetrahydroquinolin-8-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5,kapa-N]titanium dimethyl)の製造
【化6】
【0101】
(i)[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η,κ-N]ジリチウム化合物の製造
ドライボックスの中で前記ステップ(1)により製造された8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(8.07g、32.0mmol)とジエチルエーテル140mLを丸底フラスコに入れた後、-30℃に温度を下げ、n-BuLi(17.7g、2.5M、64.0mmol)を撹拌しながら徐々に入れた。温度を常温に上げながら6時間反応させた。その後、ジエチルエーテルで数回洗浄しながら濾過し、固体を得た。真空をかけて残っている溶媒を除去し、黄色の固体であるジリチウム化合物(9.83g)を得た。収率は95%であった。
【0102】
H NMR(C,CN):δ 2.38(br s,2H,quin-CH),2.53(br s,12H,Cp-CH),3.48(br s,2H,quin-CH),4.19(br s,2H,quin-CH),6.77(t,J=6.8 Hz,2H,quin-CH),7.28(br s,1H,quin-CH),7.75(brs,1H,quin-CH)ppm
【0103】
(ii)(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η,κ-N]チタンジメチルの製造
ドライボックスの中でTiCl・DME(4.41g、15.76mmol)とジエチルエーテル(150mL)を丸底フラスコに入れて-30℃で撹拌しながらMeLi(21.7mL、31.52mmol、1.4M)を徐々に入れた。15分間撹拌した後、前記ステップ(i)で製造された[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-ηη,κ-N]ジリチウム化合物(5.30g、15.76mmol)をフラスコに入れた。温度を常温に上げながら3時間撹拌した。反応が終了した後、真空をかけて溶媒を除去し、ペンタンに溶解してから濾過し、濾液を取った。真空をかけてペンタンを除去すると、濃い褐色の化合物(3.70g)が得られた。収率は71.3%であった。
【0104】
H NMR(C):δ 0.59(s,6H,Ti-CH),1.66(s,6H,Cp-CH),1.69(br t,J=6.4 Hz,2H,quin-CH),2.05(s,6H,Cp-CH),2.47(t,J=6.0 Hz,2H,quin-CH),4.53(m,2H,quin-CH),6.84(t,J=7.2 Hz,1H,quin-CH),6.93(d,J=7.6 Hz,quin-CH),7.01(d,J=6.8 Hz,quin-CH)ppm
13C NMR(C):δ 12.12,23.08,27.30,48.84,51.01,119.70,119.96,120.95,126.99,128.73,131.67,136.21 ppm
【0105】
触媒製造例2:遷移金属化合物Bの製造
【化7】
(1)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンの製造
前記製造例1の(1)で1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの代わりに、2-メチルインドリンを使用した以外は、前記製造例1の(1)と同じ方法により、2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンを製造した。収率は19%であった。
【0106】
H NMR(C):δ 6.97(d,J=7.2Hz,1H,CH),δ 6.78(d,J=8Hz,1H,CH),δ 6.67(t,J=7.4Hz,1H,CH),δ 3.94(m,1H,キノリン(quinoline)-CH),δ 3.51(br s,1H,NH),δ 3.24-3.08(m,2H,キノリン(quinoline)-CH,Cp-CH),δ 2.65(m,1H,キノリン(quinoline)-CH),δ 1.89(s,3H,Cp-CH),δ 1.84(s,3H,Cp-CH),δ 1.82(s,3H,Cp-CH),δ 1.13(d,J=6Hz,3H,quinoline-CH),δ 0.93(3H,Cp-CH)ppm.
【0107】
(2)[(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-エタ5,カパ-N]チタンジメチル([(2-Methylindolin-7-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5,kapa-N]titanium dimethyl)の製造
(i)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの代わりに、2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-インドリン(2.25g、8.88mmol)を使用した以外は、前記製造例1の(2)(i)と同じの方法により、0.58当量のジエチルエーテルが配位されたジリチウム塩化合物(化合物4g)を得た(1.37g、50%)。
【0108】
H NMR(ピリジン(Pyridine)-d8):δ 7.22(br s,1H,CH),δ 7.18(d,J=6Hz,1H,CH),δ 6.32(t,1H,CH),δ 4.61(brs,1H,CH),δ 3.54(m,1H,CH),δ 3.00(m,1H,CH),δ 2.35-2.12(m,13H,CH,Cp-CH3),δ 1.39(d,インドリン(indoline)-CH3)ppm.
【0109】
(ii)前記(i)で製造したジリチウム塩化合物(化合物4g)(1.37g、4.44mmol)で前記製造例1の(2)(ii)と同じの方法により、チタン化合物を製造した。
【0110】
H NMR(C):δ 7.01-6.96(m,2H,CH),δ 6.82(t,J=7.4Hz,1H,CH),δ 4.96(m,1H,CH),δ 2.88(m,1H,CH),δ 2.40(m,1H,CH),δ 2.02(s,3H,Cp-CH),δ 2.01(s,3H,Cp-CH),δ 1.70(s,3H,Cp-CH),δ 1.69(s,3H,Cp-CH),δ 1.65(d,J=6.4Hz,3H,インドリン(indoline)-CH),δ 0.71(d,J=10Hz,6H,TiMe-CH)ppm.
【0111】
実施製造例1
1.5L連続工程反応器にヘキサン溶媒(5kg/h)と1-ブテン(0.95kg/h)を満たした後、反応器上端の温度を140.7℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.06mmol/min)、前記触媒製造例2で得られた遷移金属化合物B(0.40μmol/min)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(1.20μmol/min)を同時に反応器に投入した。次いで、前記反応器の中に水素ガス(15cc/min)およびエチレン(0.87kg/h)を投入し、89barの圧力で連続工程で141℃で30分以上維持して共重合反応を行い、共重合体を得た。次に、真空オーブンで12時間以上乾燥した後、物性を測定した。
【0112】
実施製造例2~5
実施製造例1と同様に共重合反応を行っており、遷移金属化合物の使用量、触媒と助触媒の使用量、また、反応温度、水素投入量および共単量体の量を下記表1のようにそれぞれ変更して共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0113】
比較製造例1
三井化学社製のDF610を購入し、使用した。
【0114】
比較製造例2~4
実施製造例1と同様に共重合反応を行っており、遷移金属化合物の種類、遷移金属化合物の使用量、触媒と助触媒の使用量、また、反応温度、水素投入量および共単量体の量を下記表1のようにそれぞれ変更して共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0115】
比較製造例5
三井化学社製のDF710を購入し、使用した。
【0116】
比較製造例6
三井化学社製のDF640を購入し、使用した。
【0117】
比較製造例7
Dow社製のEG7447を購入し、使用した。
【0118】
【表1】
【0119】
実験例1:オレフィン系重合体の物性評価
前記実施製造例1~5、および比較製造例1~4の共重合体に対して、下記の方法によって物性を評価し、下記表2および3に示した。
【0120】
1)重合体の密度(Density)
ASTM D-792に準じて測定した。
【0121】
2)高分子の溶融指数(Melt Index、MI)
ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16kgの荷重)に準じて測定した。
【0122】
3)重量平均分子量(Mw、g/mol)および分子量分布(MWD)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量で除して分子量分布を計算した。
【0123】
-カラム:PL Olexis
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン(Trichlorobenzene))
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):Polystyrene(三次関数で補正)
【0124】
4)高分子の融点(Tm)
TA instrument社製の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 250)を用いて得た。すなわち、温度を150℃まで上げた後、1分間その温度を維持し、その後、-100℃まで下げ、また温度を上げてDSC曲線の頂点を融点とした。この際、温度の上昇と下降の速度は10℃/minであり、融点は、二度目に温度が上がる間に得られる。
【0125】
図1に実施製造例1の重合体のDSCグラフを、図2に比較製造例1の重合体のDSCグラフをそれぞれ示した。
【0126】
5)高分子の高温溶融ピークおよびT(95)、T(90)、T(50)
TA instrument社製の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 250)を用いて、SSA(Successive self-nucleation/annealing)測定法で得た。
【0127】
具体的には、一度目のサイクルで、温度を150℃まで上げた後、1分間その温度を維持し、その後、-100℃まで冷却した。二度目のサイクルで、温度を120℃まで上げた後、30分間その温度を維持し、その後、-100℃まで冷却した。三度目のサイクルで、温度を110℃まで上げた後、30分間その温度を維持し、その後、-100℃まで冷却した。このように、10℃間隔で温度を上げ、-100℃まで冷却する過程を-60℃まで繰り返して、各温度区間別に結晶化が行われるようにした。
【0128】
最後のサイクルで、温度を150℃まで上げながら熱容量を特定した。
【0129】
このようにして得られた温度-熱容量曲線を各区間別に積分し、全体の熱容量に対する各区間の熱容量を分画化した。ここで、全体に対して50%が溶融される温度をT(50)、90%が溶融される温度をT(90)、95%が溶融される温度をT(95)と定義した。
【0130】
図3に実施例1の重合体のSSAグラフを、図4に比較例1の重合体のSSAグラフをそれぞれ示した。
【0131】
図5に実施例1の重合体のSSA結果を分画化したグラフを、図4に比較例1の重合体のSSA結果を分画化したグラフをそれぞれ示した。
【0132】
6)硬度(shore A)
TECLOCK社製のGC610 STAND for DurometerとMitutoyo社製のショア硬度計Type Aを用いて、ASTM D2240基準に準じて硬度を測定した。
【0133】
7)重合体の引張強度および引裂強度
前記実施製造例1および比較製造例1~3のオレフィン系共重合体をそれぞれ押出してペレット状に製造した後、ASTM D638(50mm/min)に準じて破断時の引張強度および引裂強度を測定した。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
同等な水準の密度とMIを有する実施製造例1のオレフィン系重合体と比較製造例1のオレフィン系重合体を比較すると、DSCで測定した図1図2は、類似する傾向を示し、類似するグラフ形態を示して、それほど差が認められないが、SSAで測定した図3図4では、75℃以上の高温領域で大きな差があることを確認することができる。具体的には、実施製造例1には75℃以上でピークが示されるのに対し、比較製造例には示されない。比較製造例2と比較製造例3は、当該領域でピークがあるものの、その大きさが実施製造例に比べ小さかった。この高温領域で溶融の差によって、実施製造例1~5は、T(90)-T(50)≦50を満たし、且つT(95)-T(90)≧10を満たすことができ、T(95)-T(90)で比較製造例1~7に比べて広い値を有することが分かる。
【0137】
表3により、同等な水準の密度、MIを有する実施製造例1と比較製造例1、2、および3の機械的強度を比較することができる。実施製造例1は、高温で溶融される重合体が導入されて機械的剛性が増加し、比較例1~3に比べて引張強度と引裂強度が増加したことが分かる。
【0138】
実施製造例1~5は、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合して得られた重合体であって、高結晶性領域が導入され、T(90)-T(50)≦50を満たし、且つT(95)-T(90)≧10を満たして、高い機械的剛性を示す。前記比較例2および比較例4との比較により、重合時に水素ガスの投入可否およびその投入量に応じてT(90)-T(50)≦50とT(95)-T(90)≧10の満足可否および機械的剛性が異なることを確認することができた。
【0139】
実施例1:ポリプロピレン系複合材の製造
前記実施製造例1で製造したオレフィン共重合体 20重量部に、溶融指数(230℃、2.16kg)が30g/10minである高結晶性インパクトコポリマーポリプロピレン(CB5230、大韓油化社製)60重量部およびタルク(KCNAP-400TM、KOCH社製)(平均粒径(D50)=11.0μm)20重量部を添加し、酸化防止剤として、AO1010(Irganox 1010、Ciba Specialty Chemicals)0.1重量部、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(A0168)0.1重量部、およびカルシウムステアレート(Ca-st)0.3重量部を添加した後、二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット状のポリプロピレン系複合材コンパウンド(compound)を製造した。この際、前記二軸押出機は、直径が25Φ、直径と長さとの比が40であり、バレル(barrel)温度200℃~230℃、スクリュー回転速度250rpm、押出量25kr/hrの条件に設定した。
【0140】
実施例2~5:ポリプロピレン系複合材の製造
前記実施製造例1で製造したオレフィン共重合体の代わりに、下記表4に示したようなオレフィン共重合体を使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリプロピレン系複合材を製造した。この際、実施例5は、ポリプロピレンの種類、およびオレフィン共重合体とポリプロピレンの比率が異なる。下記表4でCB5290で示したポリプロピレンは、溶融指数(230℃、2.16kg)が90g/10minである高結晶性インパクトコポリマーポリプロピレン(CB5290、大韓油化社製)である。
【0141】
比較例1~7:ポリプロピレン系複合材の製造
前記実施製造例1で製造したオレフィン共重合体の代わりに、下記表4に示したようなオレフィン共重合体を使用した以外は、実施例1と同じ方法でポリプロピレン系複合材を製造した。この際、比較例7は、ポリプロリレンの種類、およびオレフィン共重合体とポリプロピレンの比率が異ならる。
【0142】
下記表4でCB5290で示したポリプロピレンは、溶融指数(230℃、2.16kg)が90g/10minである高結晶性インパクトコポリマーポリプロピレン(CB5290、大韓油化社製)である。
【0143】
【表4】
【0144】
実験例2:ポリプロピレン系複合材の物性評価
実施例1~5と、比較例1~7で製造したポリプロピレン系複合材の物性を確認するために、前記ポリプロピレン系複合材を、射出機を用いて、230℃の温度で射出成形で試験片を製造し、恒温恒湿室で1日間放置した後、重合体の比重、高分子の溶融指数、引張強度、曲げ強度および曲げ弾性率、低温および常温衝撃強度、および収縮率を測定した。作製された試験片の物性は、下記表5に示した。
【0145】
1)比重(Specific gravity)
ASTM D792に準じて測定した。
【0146】
2)高分子の溶融指数(Melt Index、MI)
高分子の溶融指数(Melt Index、MI)は、ASTM D-1238(条件E、230℃、2.16kgの荷重)に準じて測定した。
【0147】
3)引張強度、および曲げ強度(Flexural strength)
INSTRON 3365装置を用いて、ASTM D790に準じて測定した。
【0148】
4)低温および常温衝撃強度
ASTM D256に準じて行っており、常温衝撃強度は、常温(23℃)条件下で衝撃強度を測定し、低温衝撃強度は、低温チャンバ(-30℃)で12時間以上放置した後、衝撃強度を測定した。
【0149】
【表5】
【0150】
表5を参照すると、同等な水準の密度およびMI値を有するオレフィン系共重合体を含むポリプロピレン系複合材を比較した時に、実施例のポリプロピレン系複合材は、比較例のポリプロピレン系複合材に比べて、類似する水準の低温衝撃強度および常温衝撃強度を維持し、且つ引張強度および曲げ強度などの機械的強度は向上したことを確認することができる。これにより、実施例のポリプロピレン系複合材は、高結晶性領域が導入されて高い機械的剛性を示すオレフィン系共重合体を含むことで、ポリプロピレン系複合材の機械的剛性が増加したことを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリプロピレンと、
(B)下記(1)~(3)の要件を満たす、エチレンと1-ブテンの共重合体、エチレンと1-ヘキセンの共重合体、エチレンと4-メチル-1-ペンテンの共重合体、またはエチレンと1-オクテンの共重合体のうちのいずれか一つであるオレフィン系重合体とを含む、ポリプロピレン系複合材:
(1)溶融指数(Melt Index、MI、190℃2.16kgの荷重条件)が0.1g/10分~10.0g/10分であり、
(2)密度(d)が0.860g/cc~0.880g/ccであり、
(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定時に、T(90)-T(50)≦50であり、T(95)-T(90)≧10であり、
ここで、T(50)、T(90)およびT(95)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定結果で温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%、90%、および95%が溶融される温度である。
【請求項2】
前記(A)ポリプロピレンは、230℃および2.16kgの荷重で測定された溶融指数が0.5g/10min~100g/10minである、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項3】
前記(A)ポリプロピレンは、230℃および2.16kgの荷重で測定された溶融指数が0.5g/10min~100g/10minである、請求項1に記載のインパクトコポリマーであるポリプロピレン系複合材。
【請求項4】
前記(B)オレフィン系重合体は、さらに、(4)重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~500,000g/molである要件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項5】
前記(B)オレフィン系重合体は、さらに、(5)分子量分布(MWD、molecular weight distribution)が1.0~6.0である要件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項6】
前記(B)オレフィン系重合体は、さらに、(6)示差走査熱量計(DSC)による測定時に、溶融点が20℃~70℃である要件を満たす、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項7】
前記(B)オレフィン系重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入しながらオレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法により得られる、請求項1~のいずれか一項に記載のポリプロピレン系複合材:
【化1】
前記化学式1中、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイド基であり、前記二つのRは、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリール基を含むアルキリデン基によって互いに連結されて環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミド基であり、前記Rのうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく、
は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリール基で置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数個である場合には、前記置換基のうち2個以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく、
Mは、第4族遷移金属であり、
およびQは、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミド;または炭素数1~20のアルキリデン基である。
【請求項8】
前記(B)オレフィン系重合体は、前記オレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素ガスを投入し、連続撹拌式反応器(Continuous Stirred Tank Reactor)を用いた連続溶液重合反応により製造される、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項9】
前記(B)オレフィン系重合体を5重量%~40重量%含む、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項10】
無機充填剤をさらに含む、請求項1に記載のポリプロピレン系複合材。
【請求項11】
(A)ポリプロピレン100重量部に対して、0.1重量部~40重量部の含量で前記無機充填剤を含み、
前記無機充填剤は、平均粒径(D50)が1μm~20μmである、請求項10に記載のポリプロピレン系複合材。
【外国語明細書】