(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178580
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】表面処理装置およびその圧力制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231211BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231211BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 A
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091343
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 芳文
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
(72)【発明者】
【氏名】角谷 匡規
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030EA03
4K030EA11
4K030JA09
4K030KA05
4K030KA41
5F004AA01
5F004BA04
5F004BB18
5F004BB28
5F004BD04
5F004CA02
5F004DA00
5F004DA23
5F004DA25
5F045BB01
5F045DP03
5F045EB02
5F045EF05
5F045EF14
5F045EF20
5F045EG02
5F045EG06
5F045EH13
(57)【要約】
【課題】ガス供給が原因とする不具合を避け、良品率を向上させ、不良品の大量生産を回避できる技術を提供する。
【解決手段】大気と隔絶された処理室内で被加工物を表面処理する場合に、該被加工物を搭載する試料台を有し、プロセス処理時に前記試料台の上の前記被加工物に対して、プロセスガスが供給され、前記処理室内のガスを前記試料台の周囲から排出する表面処理装置であって、前記被加工物が載置される前記試料台の外周に配置された排気口および前記排気口に対応した排気経路を有し、圧力調整弁が前記排気経路内に配置され、前記圧力調整弁を開閉してガスの排気を制御する。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気と隔絶された処理室内で被加工物を表面処理する場合に、前記被加工物を搭載する試料台を有し、プロセス処理時に前記試料台の上の前記被加工物に対して、プロセスガスが供給され、前記処理室内のガスを前記試料台の周囲から排出する表面処理装置の圧力制御方法であって、
前記被加工物が載置される前記試料台の外周に配置された排気口および前記排気口に対応した排気経路を有し、圧力調整弁が前記排気経路内に配置され、前記圧力調整弁を開閉してガスの排気を制御する圧力制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記試料台と前記処理室の側壁との間の円筒空間を複数に分けてそれぞれ前記排気経路とし、前記排気経路の上流側に前記排気口を設け、前記排気経路の下流側に前記圧力調整弁を設けたことを特徴とする圧力制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記排気口のコンダクタンスが、前記圧力調整弁の全開時のコンダクタンスより小さいことを特徴とする圧力制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記排気経路に圧力計を設け、前記圧力計から得た圧力を参照して前記圧力調整弁の開度の制御をする圧力制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記試料台と前記処理室の側壁との間の略円筒形状の空間を共通の排気経路とし、前記試料台の構造体の下部で周回状に複数の独立に制御される前記圧力調整弁を設けたことを特徴とする圧力制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記プロセス処理時の前記被加工物の側方の前記処理室の内壁に前記排気口を設け、前記排気口から前記処理室を縦方向に貫通する排気経路を複数設けて、それぞれの前記排気経路に独立に制御できる前記圧力調整弁を配置したことを特徴とする圧力制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記処理室内の前記被加工物より下流の前記排気経路内に前記プロセスガスの流出とは異なり、別途独立してガスを流出できる機能を設け、そのガスを流すか流さないか、もしくはそのガス流量を可変して、前記被加工物の周辺のガスの排気に変化を与えることを特徴とした圧力制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載の圧力制御方法において、
前記プロセスガスの流出口を前記被加工物に略対向する上方に複数設けて、前記プロセスガスを流すか流さないか、もしくはそのガス流量を可変して、さらには前記圧力調整弁の制御と関連づけて制御し、ガス流れ方向を制御することで、前記被加工物内の被加工面に対して、経時的に水平方向にまんべんなく前記プロセスガスを流すことを特徴とする圧力制御方法。
【請求項9】
大気と隔絶された処理室内で被加工物を表面処理する場合に、前記被加工物を搭載する試料台を有し、プロセス処理時に前記試料台の上の前記被加工物に対して、プロセスガスが供給され、前記処理室内のガスを前記試料台の周囲から排出する表面処理装置であって、
前記被加工物が載置される前記試料台の外周に配置された排気口および前記排気口に対応した排気経路を有し、圧力調整弁が前記排気経路内に配置され、前記圧力調整弁を開閉してガスの排気を制御する表面処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記試料台と前記処理室の側壁との間の円筒空間を複数に分けてそれぞれ前記排気経路とし、前記排気経路の上流側に前記排気口を設け、前記排気経路の下流側に前記圧力調整弁を設けたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項11】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記排気口のコンダクタンスが、前記圧力調整弁の全開時のコンダクタンスより小さいことを特徴とする表面処理装置。
【請求項12】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記排気経路に圧力計を設け、前記圧力計から得た圧力を参照して前記圧力調整弁の開度の制御をすることを特徴とする表面処理装置。
【請求項13】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記試料台と前記処理室の側壁との間の略円筒形状の空間を共通の排気経路とし、前記試料台の構造体の下部で周回状に複数の独立に制御される前記圧力調整弁を設けたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項14】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記プロセス処理時の前記被加工物の側方の前記処理室の内壁に前記排気口を設け、前記排気口から前記処理室を縦方向に貫通する排気経路を複数設けて、それぞれの前記排気経路に独立に制御できる前記圧力調整弁を配置したことを特徴とする表面処理装置。
【請求項15】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記処理室内の前記被加工物より下流の前記排気経路内に前記プロセスガスの流出とは異なり、別途独立してガスを流出できる機能を設け、そのガスを流すか流さないか、もしくはそのガス流量を可変して、前記被加工物の周辺のガスの排気に変化を与えることを特徴とした表面処理装置。
【請求項16】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記プロセスガスの流出口を前記被加工物に略対向する上方に複数設けて、前記プロセスガスを流すか流さないか、もしくはそのガス流量を可変して、さらには前記圧力調整弁の制御と関連づけて制御し、ガス流れ方向を制御することで、前記被加工物内の被加工面に対して、経時的に水平方向にまんべんなく前記プロセスガスを流すことを特徴とする表面処理装置。
【請求項17】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記排気経路の上流から下流に向かうガス流れの方向に対して、前記圧力調整弁の回転翼の旋回方向を、略垂直に交わるように開口部に対して遮蔽することを特徴とした表面処理装置。
【請求項18】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記排気経路の上流から下流に向かうガス流れの方向に、前記圧力調整弁の回転翼の翼面が、一致する位置から垂直となる遮蔽する位置まで、略90度旋回するようにしたことを特徴とした表面処理装置。
【請求項19】
請求項17に記載の表面処理装置において、
前記圧力調整弁どうしの前記回転翼が、ガス流れ方向に部分的に重なり、互いが干渉せず、独立して開度設定できることを特徴とした表面処理装置。
【請求項20】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記圧力調整弁の旋回駆動用動力機器が、前記試料台の構造体内に収納されていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項21】
請求項9に記載の表面処理装置において、
前記圧力調整弁の旋回駆動用動力機器が、前記処理室の下部の排気経路の外側大気側に、周回するように配置されていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項22】
請求項17または請求項20に記載の表面処理装置において、
前記圧力調整弁を全開する際に、前記試料台の構造物の下部の底面内のガス流れを阻害しない位置に前記圧力調整弁の回転翼が退避できることを特徴とする表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクターからガスを排気する時の圧力制御方法、およびその表面処理装置に関する。本発明は、特に、エッチング、CVD(chemical vapor deposition)、イオン拡散、イオン打ち込み、アッシングおよび表面改質などのガスを用いて被加工物に処理を施す表面処理装置に用いられ、この表面処理装置へのガスの流れ方向や流路、流路ごとのガス流量を制御するためのガス排気用の圧力制御方法およびその圧力制御装置およびその圧力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体素子や、液晶素子、太陽電池、MEMSとその計測器といった電気部品、および微細メカ部品の製作において、それぞれさまざまなガス特性を有する高純度プロセスガスを用いて、半導体ウエハ等の被加工材料の表面の処理する表面処理装置は、今や世の中で欠くことのできない重要な産業機械である。表面処理装置は、半導体製造装置、基板処理装置、プラズマ処理装置、または、真空処理装置と言い換えることもできる。
【0003】
これらの表面処理装置においては、複数の各処理室や計測室、もしくは前処理室や後処理室を連続して並べて、クラスター状に配設し、それぞれの室の間を被加工物であるウエハ等を受け渡しして、単発の処理はもちろん、複数の室で連続処理をも可能にするクラスター装置が一般的である。簡素で素早い搬送を実現するために、搬送高さや、ウエハリフトアップ高さや、移載位置をそれぞれの室で規格化している。そうすることで、クラスター装置の室構成を変更させたり、故障時には当該室そのものを新品のものに交換したりすることが容易になり、利便性が良くなる。また被加工物の微細加工の進展とともに、その加工精度を担保するために、被加工物であるウエハなどは、1枚ごとに搬送、処理することが必須となってきており、枚葉式の搬送が主流であることは言うまでもない。
【0004】
この各室で1枚の被加工物を搭載するステージ(電極)がほぼ処理室のセンター位置に配設される。ステージは、被加加工物を上方に捧げ持つための上下動するリフトピンを内部に持っていたり、もしくは逆にステージ自体が降下して、より上方で下げ止まったリフトピン上に被加工物を残し、結果として被加工物をステージ上に捧げることができる機能(特許第3398936号公報等)を有したりしている。ステージと捧げられた被加工物の隙間に搬送用のワンドが挿入され、ワンドが上昇して被加工物を受け取り、退避するワンドで被加工物を搬出することができる。被加工物を搬入は、リフトピンの上方に被加工物が搭載されたワンドを進行させ、下降してリフトピン上に被加工物を受け渡し、空のワンドが退出して搬出することで実現できる。
【0005】
ステージには、温度制御手段、静電吸着手段、電磁界の印加手段、荷電粒子、スパッタ粒子、中性粒子、もしくは光を含む電磁波を遮蔽するためのシャッター機能等がそれぞれの加工の必用に応じて設けられている。
【0006】
ステージに対向した上方に、ガス流出口が設けられている。流量制御器を経て混合ガスで流される、あるいは単独ガスで流されるガスの流出口は、可燃性、あるいは支燃性などのガスの性状ごとにまとめられて、複数のガスの流出口から処理室内に導入される。導入されたガスの一部は励起され、また被加工物との間での反応、内部への拡散、チャンバー内表面への堆積や、スパッタ・ターゲット面やチャンバー壁面での衝突などを経て他の物質におきかわったり(反応生成物)、被加工物やチャンバー内に留まったりする。気相中にある一部のクラスター状の粒子は、未反応な供給ガスや、反応生成物、表面からの揮発性のガスなどとともに、処理室内から排出される。
【0007】
これら気相中のガスの排出方向は3通りある。最もよく用いられるのが、ステージ側面と処理室壁面の間の円筒状空間から下方に排出する方向である。また被加工物から横方向に処理室の側面外周から横方向に排出することがある(特開2015-2349号公報等)。また実用化はされなかったが、ガス流出口と交互にガス排出口を設けて、上方向に排出することが試された。しかし上方向のガスの排出では、排気配管内で固化した物質が落下、もしくは吹き付けられて、被加工物に異物として付着する不具合の回避が難しく、未だ量産機で多用された例はない。
【0008】
ところで、微細加工の進展にともない、間欠的に高周波を印加するパルス放電や、ガスの間欠供給が開始され、それらに対応できる処理室も造られるようになってきた。また化学反応を利用して、例えばエッチングではガス付着、反応層形成、反応気化、ガス置換のそれぞれのステップごとにガス種を換えて制御するAtomic Layer Etching(ALE)が、同様に成膜ではAtomic Layer Deposition(ALD)などのプロセスを実現できる新しいガス種に対応したガス供給系を備える処理室もみられるようになってきた。
【0009】
また微細化で、低角度で被加工物の表面に入射してくる粒子の課題について論じた文献に、『鈴木基史、"物理的蒸着法による薄膜のナノ形態制御", 第52回真空に関する連合講演会プロシーディングス, Vol. 55, No. 3, 2012, p.91-96』がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015-2349号公報
【特許文献2】米国特許第4,393,896号明細書
【特許文献3】特開2003-45854号公報
【特許文献4】特許第3398936号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】鈴木基史、"物理的蒸着法による薄膜のナノ形態制御"、第52回真空に関する連合講演会プロシーディングス, Vol. 55, No. 3, 2012, p.91-96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
プラズマアッシングを含むDCR(Dry Chemical Removal: 乾式化学反応除去)などの表面反応において、そのパフォーマンスは、加工対象物の性状やその制御温度はもちろん、ガス分子や反応生成物の性状にも大きく左右される。ガス分子の大きさ、ガスの温度、平均自由工程や、付着確率、反応確率、深さ方向への拡散係数、表面のマイグレーション、反応生成物の揮発性(脱離の容易さ)などのガスの性状の影響を受ける。一般的にプロセスガスを大流量にして、処理室に多量に流すほどガスの供給律速が解消され、反応速度がガス供給不足の影響を受ける範囲を脱して安定し、面内均一性や処理毎の再現性が向上する。しかし、表面反応に寄与するガスの吸着量は低圧ほど少なく、反応面を覆い尽くすのに時間を要する。真空中で適度な反応速度で、精密な表面制御を実現するにはいわゆる中間流領域のガス制御が好ましい。
【0013】
この中間流のガス制御に複合翼のターボ分子ポンプ(TMP)と小型ドライポンプ(DP)の組み合わせか、もしくは大流量対応の大排気量のドライポンプ(DP)を用いたい。また処理室の中央には被加工物を搭載するステージが設けられるので、従来と同じように処理済みのガス排気には、横方向、もしくは下方への排出とし、他の低圧(0.1~ 50Pa)での処理を実施するTMPを用いた処理室と同じように、ステージの下方周辺にTMPや圧力制御機構、および排気配管類を配置したい。
【0014】
ところで、粘性流や中間流の領域では、ガス供給や排気に同軸状になるように流出口や排気口を配置する機器構成としても、排気の偏りが発生しやすく、被加工物の加工面上のガス流れの向きや流速が不均一となるいわゆる乱流が発生しやすくなる。ガス流れへのガス粘性の影響が大きいために、微妙な加工面の反りや、チャンバー中心軸からの傾き、処理室周辺の壁面形状の影響を受けて乱流が発生してしまう。そのため表面処理結果が被加工物の位置で不均一となり、表面処理のパフォーマンスを低下させる。また被加工物が加工中にも熱変形していき、複雑に歪むことも乱流発生の要因になっている。古くはこのような課題の解決に、被加工物を自転させたり、複数の被加工物を自公転させたりした。しかしこれは被加工物の支持や搬出入が複雑になる。また一部の表面処理装置では、被加工物をステージ(電極)上に静電吸着させてステージ(電極)表面に沿わせてほぼ平面になるように補正するものもあるが、静電吸着させることで被加工物の裏面に傷ができ、異物発生の原因になる。さらに形状補正のために被加工物に生じた応力が表面処理の反応に影響を与えることもあるため、必ずしも静電吸着ができるわけでもない。現状では、パフォーマンス結果の計測結果で、処理後に不均一なガス供給や乱流の発生を推し量ることはできるが、処理中にガスの不均一な流れの発生を知る手段さえない。
【0015】
いわゆるシャワープレート方式で被加工物からみて処理室の上方中央からガスを噴出させ、ステージの横、もしくはステージの周辺下方等の被加工面の周辺からガスを排出する方法が一般的である。このために、被加工物の加工面の中央は供給ガス由来のガス濃度が大きいガス成分が入射し、被加工物の周辺部の加工面に向かっていくにつれて徐々に反応生成濃度が上昇、もしくは供給ガス由来成分の濃度が低下するようなガス成分が入射することになる。従来では、例えばエッチング処理では、被加工物であるウエハの周辺部の温度を相対的に大きくして、ウエハの周辺部の反応速度を増大させる補正をして、均一なエッチングパフォーマンスが得られるようにした。具体的には被加工物を搭載するステージの略同心円状の周辺に向かって温度を上昇させる温調で被加工面の温度制御を実施してきた。また成膜では、被加工面の周辺部では逆に温度を低下させて、付着確率を増大させて膜厚を増す補正をした。しかしながらこの温度による補正だけでは解決できない課題、例えばエッチング後のミクロな形状差等が新たな課題になってきた。
【0016】
これは、ガス流の制御のため、および周辺の壁の影響を減じるために、被加工物上方の空間を狭くして、天板を被加工面に近づけることと関連がある。被加工面の上方の空間を狭くするとガス流れが被加工面に平行して、被加工面の中央から被加工面に沿って周辺に向い拡がるように流れることになる。これは前出の文献『鈴木基史、"物理的蒸着法による薄膜のナノ形態制御", 第52回真空に関する連合講演会プロシーディングス, Vol. 55, No. 3, 2012, p.91-96』の蒸着の場合と同様に、ガスの表面入射において、ある程度高さのあるパターン側壁に(ガス分子の入射が抑制される)影部ができる。この文献と同様の成膜はもちろん、エッチング処理の被加工物を被加工面から除去する場合にも問題になる。被加工面の温度、飛来ガス成分の性状、付着確率、反応確率、さらには脱離係数により複雑に制御されて、被加工面の中心から周辺に向かうガス流の影部で、エッチング除去反応が加速されたり、減速されたりする。ガス流れの影響を受けやすい処理の場合は、それを解消する手段が必要になる。
【0017】
特にALEやALD等原子層レベルの反応処理では、パターンの存在やガス流れを起因とする被加工面へのガスの入射方向の依存が無視できなくなってきた。
【0018】
これらの課題に対して、被加工物周辺部のチャンバー横側壁から排気する手段が開示されている特許文献1(特開2015-2349号公報)に記載した例では、チャンバー外周に設けた円周状の排気路で集めたガスをチャンバーに沿わせた円周上の排気経路の1箇所に集めて排気しているので、粘性流や中間流の領域で不均一なガス流れが発生しても、それを補正する手段をもっていない。
【0019】
また、従来の表面処理装置では、チャンバーに対して一つの圧力制御弁を設けているが、圧力制御弁の設置位置や、その開き度合いでガスの流れの変化が大きく、乱流を発生させるひとつの要因になっている。ステージの外周空間を排気に利用し、ステージ直下に集めたガスを圧力制御弁で排気する構造になっているが、ステージ上の被加工物の周方向のガス流れを制御する手段を持ち合わせていない。
【0020】
また特許文献2(米国特許第4,393,896号明細書)に記載した例では、例えばこの圧力調整弁をステージ直下に配設し、その下にTMPを配置して圧力制御を実施すると、高精度で圧力制御するときは多数枚の回転翼のひとつの回転翼しか動作させないので、ステージを直上に配置すると、この圧力制御弁自身が排気の不均一を招いてしまう問題がある。
【0021】
また特許文献3(特開2003-45854号公報)に記載した例では、弁体の上下動作でチャンバーの圧力の制御を実施しているが、被加工物周辺の排気路を一斉に開閉するので、被加工物周辺に発生する排気の不均一を解消させる手段がない。
【0022】
現状主流となっているクラスタータイプ装置(クラスター型:複数のチャンバ(処理室)が搬送室の回りに星状に配列された構成)に配設するプロセス処理チャンバーでは、配置状態やメンテナンス方法がチャンバーごとに不ぞろいとならないようにしたいが、そのためにはチャンバーの形状、および大きな構成要素である排気経路をできるだけ統一させて同一な装置形態にする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
まず、排気によるガス流れが不均一になる課題に対しては、ステージの横もしくはステージの側壁部の排気経路、または、処理室の内壁の排気経路を数系統に分けて、それぞれの排気系統に圧力調整弁を設けて排気系統ごとの排気ガス量の調整を可能とした。その数系統の排気経路は、圧力調整後に合流させ、1系統で排気手段(ターボ分子ポンプ(TMP)と小型ドライポンプ(DP)の組み合わせ、もしくは、大流量対応の大排気量のドライポンプ(DP))につなげる構造にした。
【0024】
これにより、ステージ周辺の任意の排気系統の排気を強めたり、弱めたり自在に制御することが可能になる。各系統の圧力調整弁を独立で制御することで、ステージ上部に供給されたプロセスガスをステージの廻りで旋回排気させたり、各系統の方向に均一に排気させたりすることが可能となる。
【0025】
この排気状態をモニターしたり、フィードバック制御、もしくは表面処理結果などとの間で学習させたAI制御(artificial intelligence control)したりするために、それぞれの排気系統に圧力計を設けてもよい。ステージ上方もしくはステージ上の圧力をモニターする圧力計の値、各系統の合流したあとの集合排気配管の圧力計の値、そしてこの各排気系統の圧力計の値を元に、目的に合わせて圧力調整弁を制御する。各排気系統に設ける圧力計には、隔膜式圧力計を用いて、計測側には直接プロセスガスが入り込まないようにした。またこの隔膜式圧力計での被膜形成を予防するために、隔膜式圧力計を加熱してもよい。
【0026】
この排気系統ごとチャンバーからの排気口は、圧力調整弁の最大開口時の排気コンダクタンスより1/2以下の排気抵抗となる排気口を有することを基本とした。つまり、排気口のコンダクタンスが、圧力調整弁の全開時のコンダクタンスより小さい。このため、調圧弁の開度を大きくして開いた系統での排気量は大きくなるが、圧力計の感じる圧力は小さくなり、圧力が低下する。この各排気系統圧力計の値が同じになるような基本的な制御を実施すれば、ステージの周囲からの均等な排気ができる。逆に、ガス排気方向をランダムにするために一定の制御間隔ごとに各排気系統の圧力調整弁の開度をプログラムやAI制御にしたがって増減させて、排気方向のパターンを変えることができる。
【0027】
さらに、エッチングやALDやALE等、パターンの存在やガス分子の供給方向の影響を受ける表面処理については、排気系のみならず、チャンバーへのガスの供給系もステージの軸対象に複数系統設けて、主に供給するガス系統と排気系統をステージに対して対角な位置に制御し、ステージ上をガスが横切るように制御する。さらにそれをステージの廻りで旋回させる。こうすることで、ステージ上の被加工物の加工表面にあらゆる方向からのガス流れが実現され、供給の影部(供給頻度の少ない場所)ができたりすることはない。
【0028】
横方向に排気する場合については、チャンバーの被加工物の搬送レベルより高い位置に複数の排気口を設け、それらを四角で4系統に分けて、ステージ側方に4本の縦穴で落とす。それぞれに圧力調整弁を設け、ステージの側方でいわゆるトーナメント表のように統合する。これにより、クラスタータイプの装置レイアウトでも不揃いにならずに当該チャンバーを配設できる。
【発明の効果】
【0029】
一実施形態に係る圧力制御方法および表面処理装置によれば、ガス供給が原因とする不具合を避け、良品率を向上させ、不良品の大量生産を回避できる。また、ステージの周囲に排気配管を集め、チャンバー底側から排出することができるで、排気手段(TMP+DPもしくはDP)によらず、クラスタータイプの装置の排気系の配置を揃えることができる。また中間流領域の不安定なガス流れも、各排気配管の圧力計で検知して補正することができる。さらにガス流れ起因によるガス分子の入射方向も圧力調整弁で制御して制御できるので、エッチングやALD、およびALEなどのガス入射に依存しない好適なパフォーマンスを得る表面処理が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、供給ガスバルブを含む表面処理装置の機器の構成の1例である。
【
図2a】
図2aは、実施例に係る複数の排気経路を有する表面処理装置の縦断面略図である。
【
図2b】
図2bは、説明のために一部を切り欠いた立体略図である。
【
図2c】
図2cは、回転翼の動作の様子を示す
図2aのA-A断面を示す図である。
【
図3】
図3は、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状と開度ごとの回転翼の位置を示す略図である。
【
図4a】
図4aは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状と位置、さらにその構成を示す図であり、回転翼の全開時の状態を示す。
【
図4b】
図4bは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状と位置、さらにその構成を示す図であり、回転翼の全閉時の状態を示す。
【
図5a】
図5aは、他の実施例に係る単一の排気経路を有する表面処理装置の縦断面略図である。
【
図6a】
図6aは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状、設置位置、およびその構成を示す図で、回転翼の全閉時の状態を示す。
【
図7a】
図7aは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の位置、さらにその構成を示す縦断面略図である。
【
図8a】
図8aは、他の実施例に係り、横方向に排気経路を有する表面処理装置の縦断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例および実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0032】
本発明の対象である表面処理装置のガスの流れやガス流路と、その制御するための方法について説明する。
図1は、表面処理装置の1例である。この表面処理装置110は、プロセス処理装置(ガス処理を実施。全体を図示せず)であり、模式的に示してある。被加工物1が搭載されるステージ2を内部に収蔵し、大気とは隔絶するチャンバー(リアクター等)3内で、ガスエッチングや成膜などが実施される。ステージ2に対向したチャンバー3の上部には、ガス分散室(副室)4a,4b,4cが設けられており、そのガス分散室4a、4b、4cは、スペーサ6a、6b、および6c、ガス分散板7aおよび7b、シャワープレート8が用いられて、チャンバー上部構造5を形成している。チャンバー上部構造5は、本実施例では主にガスの供給を担当しているが、高周波印加手段や加熱手段、もしくは膜厚や温度などの計測手段を単独、あるいはこれらの手段を複数組み合わせたチャンバー上部構造であっても良い。本実施例では、チャンバー上部構造5の周囲を周回するようにハロゲンランプ10が可視光~赤外光の発生源として大気側に備えており、透過窓11を介して、発生した光は被加工物1を含めたチャンバー3の内部に照射できる。被加工物1を搬入、搬出するためのゲートバルブ15がチャンバー開口部3aの側壁端に取り付けられている。
【0033】
チャンバー3の内部、ステージ2の直下にはメインバルブ22、排気口18があり、その下のターボ分子ポンプ(TMP)23の直上に、チャンバー3内の圧力を調整するため圧力調整弁21が設けられている。ターボ分子ポンプ(TMP)23には、入口の吸気側圧力が比較的大きくとれる複合翼型の羽形状を採用したものが使用される。ターボ分子ポンプ(TMP)23の排出口からのガスは、排気配管20a、20bで、ドライポンプ26で排気されて、排出配管27から建屋の排ガス処理装置(図示せず)へと運ばれる。チャンバー3の圧力と、排気配管20aの圧力は、それぞれの隔膜式圧力計28、29でモニターされている。
【0034】
図1のガスボックス(MFC Unit)30は、図示していない複数のガス流量制御器、エアーオペレートバルブの開閉を制御する複数のソレノイドバルブ、ガス漏洩時の検知機能、さらにガス漏洩時にダクトで筐体排気する機能や、常時ガスボックス30内部空間の陰圧(排気されていること)をモニターする機能およびそのための部品からなる構成ユニットである。
図1のガスボックス30には複数のガス源からのガスが導入され、それぞれのガスの流量を制御し、さらに必要に応じて混合ガスを形成し、チャンバー3や排気管20aへ送り出される。基本的に処理中は常に不活性ガスを含めていずれかのガスが流されるように制御することで、排出最終バルブG1Eから排気系に流されたガスは、チャンバー3へ逆流することはなく、被加工物1の処理反応に寄与することはない。
【0035】
本実施例において、プロセスガスラインや排気系に捨てるガスラインについてはそれぞれ1系統としたが、表面処理装置110では複数のガス配管系統がそれぞれの目的に応じて接続されることがある。可燃性や支燃性、および自燃性のガスの性状で系統を分けたり、パージやベント専用ガスライン等のように用途で系統を分けたりする。
【0036】
被加工物1を搭載して、チャンバー3へ搬入したり、チャンバー3から搬出したりするためのハンド(エンドエフェクター)25とその駆動機構(図示せず)を収納した搬送室24が、ゲートバルブ15を介してチャンバー3に接続されている。その他の複数のチャンバーが搬送室24で接続されて、全体でクラスタータイプの表面処理装置110を構成している。つまり、表面処理装置110は、大気と隔絶された処理室3内で被加工物1を表面処理する場合に、被加工物1を搭載する試料台2を有し、プロセス処理時に試料台2の上の被加工物1に対して、プロセスガスが供給され、処理室3内のガスを試料台2の周囲から排出する。
【0037】
次に本実施例におけるプロセス処理の手順について説明する。真空中、もしくはパージされた環境下で、ゲートバルブ15を開放し、ハンド25に搭載された被加工物1をステージ2の上面に移載する。多くの場合、ステージ2の中に組み込まれて相対的に上下動できる複数のリフトピン(図示せず)の先端で受け取ったあとで、ステージ上に被加工物1を移し替える方法がとられる。ゲートバルブ15を閉じた後で表面処理が開始される。被加工物1の温度が調整され、ガス圧力を調整し、そのあとで必要に応じて、外部からの表面加熱やガスのプラズマ化、イオン引込による物理化学的なアタックや付着、拡散などの表面処理が実施される。処理後はチャンバー3内のガスを排気したり、パージしたりして清浄化したあとで、再度真空中、もしくはパージされた環境下で、ゲートバルブ15を開放し、ハンド25に処理後の被加工物1を移載して、搬送室24内に回収する。この処理を複数のチャンバーで繰り返すことで、被加工物1に複数の異なる表面処理を施すことができる。また同一加工ロット内の被加工物1の複数枚をそれぞれ複数の同一仕様のチャンバーで処理して、単位時間あたりの処理枚数を増やし、生産性を増大させることもできる。
【0038】
この
図1で示したクラスタータイプの表面処理装置110に限らず、通常のクラスタータイプの処理チャンバーでは、チャンバー3の圧力はチャンバーの圧力を計測する圧力計28の値を参照してその値を基に、所望の圧力が得られるように、圧力調整弁21を駆動させて調整される。従来、被加工物1と圧力調整弁21は同軸状に配置して、排気の偏心が起きないように配慮されてきたが、必ずしもうまく制御されていない。圧力調整弁21の回転翼の開く方向での開口形状に偏りが生じる。またターボ分子ポンプ(TMP)23の開口が基本的には円形であり、周辺に翼を有し、周辺での排気速度が大きくなる特性を持つので、ターボ分子ポンプ(TMP)23の排気面にも排気速度の偏りがある。また圧力調整弁の開度が異なるとガスの流れ方、排気ガスの流れ方向とその量、流速が変化してしまう問題もある。これらの要因などから、どうしても被加工物1に対する排気偏心が発生していた。またメインバルブ駆動軸22aや、ステージ2を支えるステージ導入部2aの存在、さらにはチャンバー3の内部形状の非対称性、ステージ2の搭載面の傾き、さらには被加工物の変形等で不均一な排気抵抗となり、その周回方向での微妙な差と、ガスの粘性により、ガス流れが周方向で異なる排気偏心が生じる問題がある。2wは、ステージの被加工物搭載面である。
【0039】
図2aに一実施例に係る表面処理装置の縦断面略図を示す。
図2aは、実施例に係る複数の排気経路を有する表面処理装置の縦断面略図である。ステージ2の被加工物の搭載面の周囲には、サセプタ2cが配置されている。ステージ導入部2b、ステージ2の内部に収納された配管や電線、信号線などは省略した。これらは、被加工物1の温度制御や、イオン引込のための高周波導波路などに利用される。またリフトピン(図示せず)の駆動機構も省略した。
【0040】
図1の表面処理装置110は、ハロゲンランプ10によって被加工物1に熱エネルギーを供給してガスを活性化させ反応を促進させるプロセス処理装置として記載したが、他のガス励起手段、例えば高周波電源によって発生させるプラズマを利用したり、ガス分散室4内を加熱したりして予め活性なガスを形成して被加工物1に吹き付けるタイプのプロセス処理装置であっても、その加工のための励起のタイミングなどは異なるが、本実施例のプロセスガスの供給装置の構成やそのガスの制御方法に何ら変わるところはない。また膜厚や加工の進行度合いを計測する光学機器等の計測器が組み込まれることもある。
【0041】
またチャンバー3からの排気手段31については、本実施例においてはターボ分子ポンプ(TMP)23と補助ポンプのドライポンプ(図示せず)を用いて排気したが、チャンバー3の下部の空間から大口径の排気配管(図示せず)で大形のドライポンプ(図示せず)まで導き、ドライポンプ単独で大排気量を有するプロセス処理装置としてもよい。またメカニカル ブースター ポンプ等の他の排気手段を用いても本実施例の基本的なガスの制御方法、および制御装置に何ら変わるものではない。
【0042】
図2a、
図2bは、
図1に記載した表面処理装置110と同じクラスタータイプの表面処理装置に組み込み可能な処理装置で、一実施例を説明するための図である。
図2aは、縦断面略図、
図2bは、
図2aのパーツの一部分をカットした立体斜視の略図である。チャンバー上部構造5には、
図1と同じようにガス供給部も備えているが、高周波印加手段等の表面処理を実施するための他の機能も有している。またステージ2の内部のリフトピン駆動機構や、静電チャック機能、真空シール部材の一部、イオン引込を目的とした高周波印加機能等のパーツ、および細かいボルト、ナット類の記載は省略した。
【0043】
51は排気板で、本実施例では、排気口としての排気孔52がステージ2の外周に等間隔で6個設けられている。55は仕切板で、ステージ2の外側とステージおよび排気部取付ベース64との間の円筒空間を周方向で6つに分けるために、ステージおよび排気部取付ベース64の側壁とステージ2の側壁に設けられた溝に差し込む6枚の板である。仕切板55で隔てられた排気経路それぞれの上部に、排気孔52がそれぞれひとつずつ配置されている。本実施例では、6ヶ所に空間を分けたが、3~16ヶ所等、ワークである被加工物1の大きさと排気量、制御の系統数の関係で分ける空間を増減させても、また複数の空間分をまとめていっしょに制御して、群に分けて制御しても問題はない。ステージ2の下方には、回転力駆動および導入機器56が設けられている。基本的には、回転駆動機構(モータや旋回型エアーシリンダー等)と、必要に応じては減速機(ハーモニック・ギア等)、および大気および真空間のシール機構を有している。仕切板55で6ヶ所に分けられたそれぞれの扇状断面をした縦空間の途中に、圧力計68が設けられている。3ヶ所に減数して2個ずつの空間をまとめて制御しても良い。65はターボ分子ポンプ(TMP)23を取り付けるためのTMPベースであり、66はTMPベース65の旋回および上下機構である。
【0044】
旋回板(回転翼)62は、回転力駆動および導入機器56の先端に取り付けられて、ステージ2の側壁とステージおよび排気部取付ベース64との間の空間を横切るように旋回(回転)できる。つまり、圧力調整弁21である旋回板(回転翼)62の旋回駆動用動力機器である回転力駆動および導入機器56が、試料台2の構造体内に収納されている。ステージ2の底部には、上部開口板58が取り付けられており、上部開口板58には上部開孔(上部開口部)59が設けられている。上部開口板58の周辺に密着させて、下部開口板60があり、下部開口板60には下部開孔(下部開口部)61が設けられている。上部開口板58と下部開口板60の間に、旋回板62が旋回する空間が設けられている。つまり、試料が載置される試料台2の外周に配置された排気口52および排気口52に対応した排気経路を有し圧力制御弁(圧力調整弁21)とされる旋回板(回転翼)62が排気経路内に配置されている。そして、排気経路の上流から下流に向かうガス流れの方向に対して、圧力調整弁の回転翼62の旋回方向を、略垂直に交わるように開口部61に対して遮蔽する。本実施例では、上部開孔59と下部開孔61は上下で同一形状の開口としたが、異なる形状にしても問題はない。また上部開口板58と下部開口板60のどちらかひとつだけにしても問題はない。
【0045】
上部開口板58は、ステージ底面2zに組付けられており、旋回板62を取りつけたあとで、下部開口板60が組付けられる。旋回板62の旋回する空間が薄く、上部開孔59と下部開口61周辺に密着させているので、排気抵抗が大きく(排気コンダクタンスが小さく)、十分なガス遮蔽能力を有している。
【0046】
図2cは、
図2aのA-Aから見た平面図である。
図2cにおいて、上側の図はハッチングを施した図である、下側の図は上側の図からハッチングを取り除いた図である。は本実施例においては、ステージ2の周辺空間を6ヶ所に区切っているが、その6区間が、さし込み式の仕切板55で形成されていて、この上部開口板58にもさし込まれている。旋回板62は、ステージ2の下方の直下に退避できるようになっており、また旋回板62は、上部開孔59と下部開孔60の間を横切って遮蔽できるようになっている。つまり、圧力調整弁である回転翼(旋回板62)を全開する際に、試料台2の構造物の下部の底面内のガス流れを阻害しない位置に圧力調整弁の回転翼が退避できる構成とされている。上部開口板58には、このため、周辺部とは異なり、略下半分は図の断面で示されていない形状で座繰りされており、この座繰り部が旋回板62の移動する空間として用いられている。
【0047】
図2cでは、排気の空間の6ヶ所のそれぞれの旋回板62の開度が異なる状態を示した。
図2cの外側の周りに、それぞれの旋回板62の回転角度と開度[%]とを示した。
【0048】
図2a、
図2bおよび
図2cを用いて、本実施例の圧力制御の方法を説明する。まずステージ2の上面に搭載された被加工物1に対して、周辺から均等に排気する場合について記述する。被加工物1の処理が開始されると、処理レシピで設定された制御値、もしくはAIで計算された流量で、チャンバー3にプロセスガスが供給される。旋回板62は、各排気空間に設置された各々の圧力計68が、基本的には同じ圧力を示すように、開度が制御される。排気板51に設けられた排気孔52のそれぞれは、同じ開口部の形状面積で開けられており、おのおのの圧力計68に示す真空圧力が同じであれば、各排気孔52から引き込むガス流量は基本的には等しいことを利用する。要はおのおのの圧力計68の示す真空度を基にして、旋回板62の開度をフィードバック制御する。もちろんステージ導入部2bの存在等を配慮してAIで計算し、若干の制御する圧力値を変化させても良い。このように制御することで、被加工物1の周辺から均等なガス流量で排気することが可能となる。つまり、プロセスガスの流出口を被加工物1に略対向する上方に複数設けて、プロセスガスを流すか流さないか、もしくはそのガス流量を可変して、さらには圧力調整弁(旋回板62)の制御と関連づけて制御し、ガス流れ方向を制御することで、被加工物1内の被加工面に対して、経時的に水平方向にまんべんなくプロセスガスを流すことできる。
【0049】
次に、被加工物1の加工面内で、一定方向のプロセスガス流量を増大させる場合の制御方法を説明する。このような制御は、前工程で発生した面内不具合を補正する場合などに活用される。例えば、多層膜の絶縁膜を形成する場合に、前工程の別装置もしくは別チャンバーでの成膜で、面内成膜の不均一が判明していて補正したい場合、また多層膜のエッチングの表面反応をする場合で説明すると、前工程で被加工物1の面内で方向性をもって削れた量が異なる場合に、当該チャンバーでその補正をする場合に必用とされる。おのおのの圧力計68の示す真空の数値に対して、基本的には多くガスを引き込みたい排気の空間に対応する上部開孔59、下部開孔61と旋回板62の開度で形成されるガス通過孔を大きくして、該圧力計68が他の圧力計68が示す真空度よりも低く制御することで、該排気の空間へのガス流量を可変して、他の排気の空間より多くすることができる。当然被加工物1の上を流れるガスの流れる方向と流量も変化する。補正の度合いや程度に応じて、この制御する真空値の差を増減させたり、制御の時間幅を変化させたりして、補正度合いをコントロールすることはいうまでもない。
【0050】
更に、被加工物1の加工面に対して、旋回流でガス流量を可変して変化させて、表面処理する場合の制御方法について記載する。最新の半導体産業の微細化において、多くの場合毎分加工する速度は多くて数10nm、場合によっては数nmと、加工速度を従来の加工速度より低下させている。より高精度に加工を制御するためである。またプロセスガスの供給方向、もしくは反応後の生成物の流れの影響を受けるプロセスについては、その流れの影響を無くしたり、平均化したりして緩和することが必要になる。このような制御の場合は、プログラマブルに、もしくはAI制御で計算しておのおのの旋回板62の開度を変化させて、被加工物1の上を流れるガス流量と向きに変化を与えることができる。加工速度を低下させているので、機械的に旋回板62の開度を変化させて、ガス流れを被加工物1に対して軸対象に旋回させたり、ランダムに流したりすることができる。更にチャンバー上部構造5のプロセスガス流出部を排気の空間に対応させて6分割し、それぞれの排気の空間と被加工物1を挟んで対称側の上方に設置して、プロセスガスをチャンバー3に流入させる位置と軸対称の反対側の排気の空間からのみ排気するようにしても良い。それをさらに順に6ヶ所の位置を変えて流せば、被加工物1のガス流れ方向、それにともなう入射分子の差が緩和される。特に微細パターンが存在することで発生する影部へのガス入射の影響(マイクロ・シャドーイング現象)を低減できる。この場合は、圧力計68で計測される真空度の値の時間的な変化をモニターして、流量制御がうまく行われているかどうかを判定するための手段として活用してもよい。
【0051】
次に、
図3を用いて、他の実施例について説明する。
図3は、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状と開度ごとの回転翼の位置を示す略図である。
図3において、上側の図はハッチングを施した図である、下側の図は上側の図からハッチングを取り除いた図である。
図3の実施例では、
図2aのTMPベース65から上方に、(つまり、
図2aに図示のBの高さの位置で上方に)見た図である。
図2a-
図2cの場合に排気空間を仕切板55で6つに分けたのとは異なり、
図3のステージおよび排気部取付ベース64’は、ステージ2の外周で12個の排気円筒57を設けて、排気空間とした。チャンバー3からのガスを引き込むための排気孔52を有する排気板51(図示せず)を
図2a-
図2cと同様に排気円筒57の上部に設けてもよい。要は、被加工物1の軸対象で、排気口が設けてあることには変わりはない。回転駆動機器56’からの回転駆動軸をこの排気円筒57の穴に直交するように設けている。排気円筒57よりわずかに径の小さい12個のフラップ旋回板(回転翼)62fを回転駆動軸に取り付けて、いわゆるフラッパータイプの圧力制御弁(圧力調整弁とも言う)を排気円筒57内に形成した。そして、排気経路の上流から下流に向かうガス流れの方向に、圧力調整弁の回転翼62fの翼面が、一致する位置(全開)から垂直となる遮蔽する位置(全閉)まで、略90度旋回するようにした。排気円筒57の圧力制御弁より上方(紙面奥)には、
図2a-
図2cと同様に、圧力計68を設けてもよい。つまり、試料が載置される試料台2の外周に配置された排気口としての排気円筒57および排気円筒57に対応した排気経路を有し圧力制御弁(圧力調整弁)とされるフラップ旋回板(回転翼)62fが排気経路内に配置されている。
図3では、全閉、15°開、30°開、45°開、60°開、75°開、および全開におけるフラップ旋回板62fの旋回位置を12個のフラップ旋回板(回転翼)62fで模式的に示した。
【0052】
この
図3における圧力制御の方法も、
図2a-
図2cの場合と同様に制御することができる。
【0053】
図4a、
図4bに、他の実施例を示した。
図4aは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状と位置、さらにその構成を示す図であり、回転翼の全開時の状態を示す。
図4bは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状と位置、さらにその構成を示す図であり、回転翼の全閉時の状態を示す。
図4aには、12個のフラップ旋回板62f1が全て開いている状態を、また
図4bには、12個のフラップ旋回板62f1が全て閉じている状態を示した。
図4a、
図4bは、高さ方向はでは
図3と同じように、
図2aのTMPベース65から上方に、図示Bの高さの位置で上方に見た図である。2zは、ステージ2のステージ底面で、その周囲に開口部63が設けられている。開口部63は12個で、
図3のような円筒形状ではない。
図4のステージおよび排気部取付ベース64oは、ターボ分子ポンプ(TMP)(図示せず)の上部取付フランジ径より大きくなっており、フラップ旋回板62f1は、その大きくなった外周側に退避できるようになっている。つまり、試料が載置される試料台2の外周に配置された排気口としての開口部63および開口部63に対応した排気経路を有し圧力制御弁(圧力調整弁)とされるフラップ旋回板(回転翼)62f1が排気経路内に配置されている。ステージ底面2zとターボ分子ポンプ(TMP)(図示せず)の上部取付フランジ径との間の有効な排気空間を、できるだけ大面積で開口できる形状にした。開口部63は紙面の奥側に空間でそれぞれ互いに仕切られており、チャンバー3からのガスを引き込むための排気孔を有する排気板(図示せず)を
図2a-
図2cと同様に開口部63の上部に設けてもよい。また開口部63の圧力制御弁より上方(紙面奥)には、
図2a-
図2cと同様に、圧力計68を設けてもよい。フラップ旋回板62f1は、支点部69の軸を中心に旋回できる構造で、回転駆動部56aに接触して旋回する構造とした。回転駆動部56aとステージおよび排気部取付ベース64oの裏側の大気圧側からフランジ面を貫通して回転させるために、回転駆動機構(モータや旋回型エアーシリンダー等)と、必要に応じては減速機(ハーモニック・ギア等)、および大気および真空間のシール機構を有しているのは言うまでもない。つまり、圧力調整弁の旋回駆動用動力機器である回転駆動部56aが、処理室2の下部の排気経路の外側大気側に、に配置されている構成である。さらに、回転駆動部56aは、フラップ旋回板62f1の外側外周部に直接接触する方法で図示したが、リンク式でフラップ旋回板62f1を旋回させる方法でも良い。
【0054】
この
図4a、
図4bにおける圧力制御の方法も、
図2a-
図2cの場合と同様に制御することができる。
【0055】
図5a-
図5cは、本発明の別の他の実施例を示す圧力制御部を示す。
図5aは、他の実施例に係る単一の排気経路を有する表面処理装置の縦断面略図である。
図5bは、
図5aの回転翼の全開の位置を示す図である。
図5cは、
図5aの回転翼の全閉の位置を示す図である。上記までに記載した本発明の実施例と異なるのは、被加工物1の周囲の円筒空間が排気経路で共通だが、複数の圧力制御弁がステージおよび排気部取付ベース64iのステージ2の下側に設けられていることである。試料台2と処理室3の側壁との間の略円筒形状の空間を共通の排気経路とし、試料台2の構造体の下部で周回状に複数の独立に制御される圧力調整弁である12個のフラップ旋回板62f2を設けたものである。また回転翼と、旋回方向にある他の旋回翼とが上下方向で順に重なり合う点が異なる。つまり、圧力調整弁どうしの回転翼(12個のフラップ旋回板62f2)が、ガス流れ方向に部分的に重なり、互いが干渉せず、独立して開度設定できるように構成されている。
図5aは、その縦断面略図で、
図5aに示したC-Cから上方を見上げた場合の平面図が
図5bおよび
図5cである。
図5bは、12個のフラップ旋回板62f2が全て開いている状態(開度60°)を、また
図5aと
図5cは、12個のフラップ旋回板62f2が全て閉じている(ガス流れの抵抗になっている:開度0°)状態を示した。
図5bに示すように、全開時には旋回板62f2はステージ底面2zの下面に退避できる。また旋回板62f2は、回転力駆動および導入機器56iの真空側の先端に取り付けられており、取付位置からの距離にしたがってだんだん垂れる形状にしてある。このため上下方向で重なるとなりあう旋回板62f2が互いに干渉することがないようにした。つまり、試料が載置される試料台2の外周に配置された排気経路を有し、圧力制御弁(圧力調整弁)とされる旋回板62f2が排気経路内に配置されている。図示していないが、
図2aに記載したのと同じように、圧力計68を配設してもよい。なお、図が煩雑になるため旋回板62f2は12個の内1個だけに符号を付したが、残りも同等に構成されている。
【0056】
さらにステージおよび排気部取付ベース64iには、複数のガス配管71が接続されてもよい。このガス配管71の上流側には、最終段のガス供給用バルブ73、流量制御器(図示せず)などが取り付けられていて、アルゴン(Ar)などの希ガスや窒素(N2)や二酸化炭素(CO2)などの不活性ガスが単ガス、あるいは混合ガスで流せるようにした。つまり、処理室3内の被加工物1より下流の排気経路内にプロセスガスの流出とは異なり、別途独立してガス(アルゴン(Ar)などの希ガスや窒素(N2)や二酸化炭素(CO2)などの不活性ガスが単ガス、あるいは混合ガス)を流出できる機能(71、73、流量制御器等)を設け、そのガスを流すか流さないか、もしくはそのガスのガス流量を可変して、被加工物1の周辺のガスの排気に変化を与えることも可能である。
【0057】
図5a-
図5cに示す圧力制御について説明する。個々の回転力駆動および導入機器56iはそれぞれ独立にフラップ旋回板62f2の開度を制御できる。回転力駆動および導入機器56iはプログラム制御、もしくはAI制御によって、それぞれフラップ旋回板62f2の開度を制御する。それによって、被加工物1の周囲から均等なガス流れで排気したり、偏心排気したり、プログラマブルにもしくはランダムにガス流れを変更させたりすることができる。
【0058】
さらに、被加工物1の処理中に、すべてのガス配管71からのガス流量を一定に保ったまま、それぞれのガス配管71の上流の複数のガス供給バルブ73の開閉を、もしくは流量制御器(図示せず)のガス流量をプログラム制御、もしくはAI制御する。全体のチャンバー3の被加工物1近傍の圧力は、対向するチャンバー上部構造5のガス供給部からのプロセスガスのガス流量とこのガス配管71からのガス流量、および本
図5a-
図5cの旋回板62f2の開度で決まるガスコンダクタンスと、ポンプ(ターボ分子ポンプ(TMP)23もしくはドライポンプ26’)、それと排気経路上の排気配管などのガスコンダクタンスで決定される。しかしながら、例えば1ヶ所を残し、他のガス配管71はガス供給バルブ73を閉じてガス供給を遮断することで、1ヶ所のみからガス供給となるため、被加工物1へ供給されたプロセスガスは、この1ヶ所の排出が弱まり、結果としてプロセスガスの被加工物1に対する偏心排気が実現できる。これを利用してプロセスガスの排出、被加工物1に対するガス流れの方向やガス流量を制御できる。
【0059】
次に
図6a、
図6bを用いて、本発明の他の実施例を説明する。
図6aは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の形状、設置位置、およびその構成を示す図で、回転翼の全閉時の状態を示す。
図6bは、
図6aのE-E方向から見た回転翼の断面図である。
図6aにおいて、上側の図はハッチングを施した図である、下側の図は上側の図からハッチングを取り除いた図である。
図6aでは、
図5aのTMPベース65から上方に、図示Dの高さの位置で上方に見た図である。
図5aの場合と同じように、排気空間は被加工物1を搭載するステージ2の周囲全体で共通である。
図5aの回転力駆動および導入機器56iは、ステージ2の底部で旋回するように取り付けられていたが、
図6aではステージ2の側面に取り付けられている。79が旋回駆動軸である。旋回駆動軸79に取り付けられた扇形のフラップ旋回板(回転翼)62f3は、隣りあうフラップ旋回板62f3と重なり合うことはない。
図6aでは、全閉(開度0°)におけるフラップ旋回板62f3の位置を示した。
図6bには、
図6aに図示したE-E方向から見たフラップ旋回板62f3の断面を含む図を示した。フラップ旋回板62f3の旋回範囲を矢印で示したが、外周支持リング77は、ステージおよび排気部取付ベース64fの内側に嵌め込まれているが、フラップ旋回板62f3が水平となる全閉時に生じる隙間を減じて排気抵抗を大きくするために、突出部を設けた。つまり、試料が載置される試料台2の外周に配置された排気経路を有し、圧力制御弁(圧力調整弁)とされるフラップ旋回板62f3が排気経路内に配置されている。
【0060】
図6a、
図6bに示した実施例での圧力制御の方法は、
図5a-
図5cの制御の場合と同様で、おなじように圧力制御、ガス流の制御ができる。
【0061】
次に
図7a、
図7b、および
図7cを用いて、本発明の他の実施例を説明する。
図7aは、他の実施例に係り、その圧力調整のための回転翼の位置、さらにその構成を示す縦断面略図である。
図7bは、
図7aの回転翼の全開時の状態を示す。
図7cは、
図7aの回転翼の全閉時の状態を示す。
図7aは、縦断面略図であるが、
図5a~
図5cの実施例と異なるのは、回転力駆動および導入機器56oが、ステージ2の内部ではなく、ステージおよび排気部取付ベース56oの大気側のフランジに取り付けられており、先端に取り付けられたフラップ旋回板62f4が、全開時にステージ2の下部ではなく、排気経路の外側に退避することである。圧力調整弁であるフラップ旋回板62f4の旋回駆動用動力機器56oが、処理室の下部の排気経路の外側大気側に、周回するように配置されている構成とされている。
図7aに示したF-Fから上方を見上げた場合の平面図が
図7bおよび
図7cである。
図7bは、12個のフラップ旋回板62f4が全て開いている状態(開度30°)を、また
図7aと
図7cは、12個のフラップ旋回板62f4が全て閉じている(ガス流れの抵抗になっている:開度0°)状態を示した。12個のフラップ旋回板62f4が互いに干渉することがないように、先端に向けて垂れ下がっている。図示していないが、
図2aに記載したのと同じように、圧力計68を配設してもよい。なお、図が煩雑になるためフラップ旋回板62f4は12個の内1個だけに符号を付したが、残りも同等に構成されている。つまり、試料が載置される試料台2の外周に配置された排気経路を有し、圧力制御弁(圧力調整弁)とされるフラップ旋回板62f4が排気経路内に配置されている。
【0062】
図7a、
図7b、および
図7cに示した実施例での圧力制御の方法は、
図5a~
図5cの制御の場合と同様で、おなじように圧力制御、ガス流の制御ができる。
【0063】
図8a、
図8b、
図8c、および
図8dで、本発明の他の実施例を説明する。
図8aは、他の実施例に係り、横方向に排気経路を有する表面処理装置の縦断面略図である。
図8bは、
図8aの排気路の断面図である。
図8bにおいて、上側の図はハッチングを施した図である、下側の図は上側の図からハッチングを取り除いた図である。
図8cは、
図8aの排気経路の構成を示す略図である。
図8dは、
図8aの排気経路の他の構成を示す略図である。
図8aは、
図8bでG-O-Hで示した線で切った、縦方向の断面略図である。設置する架台や、チャンバー上部構造5の内部収納品、およびステージ2’の内部収納品は図示していない。また真空のためのシール材やその取付けるための構造、および小さいボルトおよびナット類も省略した。ステージ2’は、チャンバー3’の内部で昇降できる。昇降機構2mの細部部品も省略した。
図8aのG-O断面(左側半分)は、被加工物の搬入完了時(もしくは搬出直前時)のステージリフトピン2pで、被加工物1をステージ2’のステージ上面2yの上方に捧げ持った状態を示した。プロセス処理時には、O-H断面(右側半分)のように、ステージ2’の外周に設置されたシールド101といっしょにステージ2’がせり上がり、チャンバー小空間3bを形成する。次にガスの排出経路について説明する。ステージ上部構造5から供給されたガスは、このチャンバー小空間3bに達して、被加工物1に対してプロセス処理が実施される。処理後のガスは、処理室3の内壁に排気リング91を設け、その排気リング91に設けられた複数の排気孔92から、対応する周回排気路93に至る。複数の周回排気路93は、スペーサ100で4カ所に隔てられているために、2個ずつの排気孔92から流入したガスは、他の排気孔92からのガスと混じることはない。1つの周回排気路93内のガスは、その周回排気路93に繋がった1つの対応する横排気路94、つづいて1つの対応する縦排気路95へと、それぞれがチャンバー3’の四角を貫通して排出される。チャンバー3’に取り付けられた排出フランジ97に圧力調整弁98が、またその下流に排出管99が取り付けられている。また横排気路94と縦排気路95の交点部分に、真空計96がコーナー側から挿入されている。つまり、試料が載置される試料台2’の外周に配置された排気経路(複数の排気孔92、複数の周回排気路93、複数の横排気路94、複数の縦排気路95、複数の排出フランジ97、複数の排出管99)を有し、圧力調整弁98が排気経路内に配置されている。また、プロセス処理時の被加工物1の側方の処理室3の内壁に排気口(排気孔92)を設け、排気口から処理室3を縦方向に貫通する排気経路(縦排気路95)を複数設けて、それぞれの排気経路(縦排気路95)に独立に制御できる圧力調整弁98を配置した。
【0064】
その後のガスの排出経路は、
図8cで説明する。
図8aで縦排気路95の入口にE1~E4の地点記号を付した。
図8cでは、その後の排気を模式的に示している。圧力調整弁98は、チャンバー3’の下面四角の排出フランジ97に取り付けられている。圧力調整弁98の下流はチャンバー3’の反搬入口から見て右側のE1とE2が、左側のE3とE4がそれぞれで統合されている。今回の実施例では、E1~E4の配管の内側の断面積の2倍の断面積の配管で統合した。さらに下流の排気配管は、左側と右側で統合された2本の排気配管をさらに1本に統合した。この排気配管の内側の断面積は、さらに2倍の断面積に、つまりE1~E4の内側断面積を足し合わせた面積と同じにした。
【0065】
図8dは、
図8cと異なり、排気チャンバー102を設けて、それの近傍に均等に配置した4つの圧力調整弁98を設け、それぞれの圧力調整弁98からチャンバー3’の下部の複数の排出フランジ97に排気配管を接続した。チャンバー3’の下部の機器配置が込み合う場合にはこの排気系の構成を採用した方がレイアウトに余裕がでる。
【0066】
図8a、
図8b、
図8c、および
図8dに示した横方向に排気する場合においても、その圧力制御の方法も、
図2a-
図2cの場合と同様に制御することができる。被加工物1に対して、周回方向に均等に排気することも、またプログラマブルにもしくはAI制御による偏心排気することも可能である点は同じである。
図2a-
図2cの場合と同じように、ステージ上部構造5から供給されるガスの流出位置を、主に排気される方向と略対角位置で制御して、まんべんなく被処理物1に対してガス流れ方向や流量を変化させてもよい。また圧力計96を設けずに、かわりに単なる封止のためのフランジ付スペーサにして、圧力を測定しないで予測制御としても問題ない。さらに、排気孔92の数や形状、圧力調整弁の種類や取り付け位置を変更しても本発明の目的は達成できる。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例および実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例および実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1: 被加工物
2、2’: ステージ
2a、2b: ステージ導入部
2c:サセプタ
2m: 昇降機構
2p: ステージリフトピン
2w: ステージの被加工物搭載面
2y: ステージ上面
2z: ステージ底面
3、3’: チャンバー
3a: チャンバー開口部
3b: チャンバー小空間
4a、4b、4c: ガス分散室
5: チャンバー上部構造
6a、6b、6c: スペーサ
7a、7b: ガス分散板
8: シャワープレート
9: ノズル
10: ハロゲンランプ
11: 透過窓
15: ゲートバルブ
16: ゲートバルブ駆動軸
18: 排気口
20a、20b: 排気配管
21: 圧力調整弁
22: メインバルブ
22a: メインバルブ駆動軸
23: ターボ分子ポンプ(TMP)
24: 搬送室
25: ハンド(エンドエフェクター)
26、26’: ドライポンプ
27: 排出配管
28: 圧力計(チャンバー用)
29: 圧力計(排気配管用)
30: ガスボックス(MFCユニット)
31: 排気手段
G1C: 供給最終バルブ(チャンバーに向かうプロセスガスライン)
G1E: 排出最終バルブ(排気配管20aに向かう捨てガスライン)
51: 排気板
52: 排気孔
55: 排気部仕切板
56、56i: 回転力駆動および導入機器
56’: 回転駆動機器
56a: 回転駆動部
57: 排気円筒
58: 上部開口板
59: 上部開孔
60: 下部開口板
61: 下部開孔
62: 旋回板
62f、62f1、62f2、62f3、62f4: フラップ旋回板(回転翼)
63: 開口部
64、64'、64o、64i、64f: ステージおよび排気部取付ベース
65: TMPベース
66: 旋回および上下機構
67: 固定架台
68: 圧力計
69: 支点部
71: ガス配管
73: ガス供給バルブ
77: 外周支持リング
78: 突出部
78’: 突出部
79: 旋回駆動軸
81: 真空ベローズ
82: 支柱
83: 上下駆動機器
84: ベース
85: 移動ベース
91: 排気リング
92: 排気孔
93: 周回排気路
94: 横排気路
95: 縦排気路
96: 圧力計
97: 排出フランジ
98: 圧力調整弁
99: 排出管
100: スペーサ
101: シールド
102: 排気チャンバー
110: 表面処理装置