(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178622
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法、アライメント装置及びアライメント方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20231211BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231211BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091416
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 毅
(72)【発明者】
【氏名】川畑 奉代
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG54
4K029AA02
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029AA25
4K029BA01
4K029BA43
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029CA05
4K029DA03
4K029DA12
4K029DB06
4K029DB17
4K029DB23
4K029EA00
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA06
4K029KA01
(57)【要約】
【課題】基板及びマスクのより多くの箇所を測定することにより高精度のアライメントを行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置であって、マスク及び基板の成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、成膜面に沿う方向でマスク及び基板を相対的に移動させることで、マスク及び基板の位置合わせを行うアライメント手段と、アライメントマークの位置を測定可能な測定手段と、測定手段を、測定対象のアライメントマークを有するマスク又は基板に対し、成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動手段と、を備え、測定手段は、測定対象の第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行うアライメント手段と、
前記アライメントマークの位置を測定可能な測定手段と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記測定手段は、前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記移動手段により前記相対的に移動される前後でそれぞれ前記アライメントマークの測定を行うことで、前記測定対象の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記測定手段を、前記基板に対して前記第1方向で相対的に移動させ、
前記測定手段は、前記基板に設けられた複数のアライメントマークである前記第1方向の複数の基板マークの位置を測定する請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板を保持して前記基板を前記成膜装置に対し前記第1方向に搬送する基板キャリアを有し、
前記測定手段は、前記成膜装置に対し固定されている請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記基板キャリアにより前記成膜装置に搬入された前記基板が前記第1方向に搬送される際に、前記移動手段は前記測定手段を前記基板に対し前記第1方向で相対的に移動させ、前記測定手段は前記複数の基板マークの位置を測定する請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記マスクは、前記基板の成膜面に複数の測定用マークを形成するための開口パターンを有し、
前記成膜装置において成膜が行われ、前記基板キャリアにより前記成膜装置から搬出される前記基板が前記第1方向に搬送される際に、前記移動手段は前記測定手段を前記基板に対し前記第1方向で相対的に移動させ、前記測定手段は前記複数の測定用マークの位置を測定する請求項4に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記測定手段は、前記成膜面に沿う面内で前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の撮像手段を有する請求項3~6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記測定手段は、前記撮像手段により撮像された画像データに基づき前記基板の前記第2方向に沿う辺の検査を行う請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記移動手段は、前記測定手段を、前記マスクに対して前記第1方向で相対的に移動させ、
前記測定手段は、前記マスクに設けられた複数のアライメントマークである前記第1方向の複数のマスクマークの位置を測定する請求項2に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記基板を保持して前記基板を前記成膜装置に対し前記第1方向に搬送する基板キャリアを有し、
前記測定手段は、前記基板キャリアに対し固定されている請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基板キャリアにより前記成膜装置に搬入された前記基板が前記第1方向に搬送される際に、前記移動手段は前記測定手段を前記マスクに対し前記第1方向で相対的に移動させ、前記測定手段は前記複数のマスクマークの位置を測定する請求項10に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記測定手段は、前記成膜面に沿う面内で前記第1方向に交差する第2方向に配列された複数の撮像手段を有する請求項9~11のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記マスクは、マスクフレームと、前記マスクフレームに固定されたマスク箔と、を有し、
前記マスクマークは、前記マスク箔に設けられたマスク箔マークを含み、
前記測定手段は、前記撮像手段により前記マスク箔マークの位置を測定する請求項12に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記マスク箔には、前記基板の前記成膜面に形成する薄膜に対応する開口パターンが形成されたパターン領域が前記第2方向に沿って複数、配列され、
前記アライメント手段は、前記測定手段により測定された前記マスク箔マークの位置に基づき、前記複数のパターン領域の位置の目標の位置からのずれ量の前記複数のパターン領域の間でのばらつきが小さくなるように、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行う請求項13に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記測定手段と、前記測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板と、の前記第1方向の相対的な移動を制御するためのエンコーダを有する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記基板キャリアを前記第1方向に搬送する搬送装置は、磁力を発生する磁力発生手段を有し、前記磁力発生手段の磁力により前記基板キャリアを浮上させることにより前記基板キャリアを搬送する請求項4又は10に記載の成膜装置。
【請求項17】
マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜方法であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行うアライメント工程と、
前記アライメントマークの位置を測定手段により測定する測定工程と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動工程と、
を有し、
前記測定工程では、前記移動工程において前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とする成膜方法。
【請求項18】
マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置においてマスクと基板の位置合わせを行うアライメント装置であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行うアライメント手段と、
前記アライメントマークの位置を測定可能な測定手段と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記測定手段は、前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とするアライメント装置。
【請求項19】
マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置におけるマスクと基板の位置合わせを行うアライメント方法であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行う工程と、
前記アライメントマークの位置を測定手段により測定する測定工程と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動工程と、
を有し、
前記測定工程では、前記移動工程において前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とするアライメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法、アライメント装置及びアライメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置等のフラットパネル表示装置が用いられている。例えば有機EL表示装置は、2つの向かい合う電極の間に、発光を起こす有機物層である発光層を有する機能層が形成された、多層構成の有機EL素子を含んでいる。有機EL素子の機能層や電極層は、成膜装置のチャンバ内で、ガラス等の基板にマスクを介して成膜材料を付着させることで形成される。製造されるパネルの品質を向上させるためには、成膜材料を基板に付着させる前に、基板とマスクを精度良くアライメント(位置調整)して密着させることが求められる。例えば、特許文献1には、基板とマスクを密着させる前に、カメラを用いて基板とマスクそれぞれのマークを撮影することで、基板とマスクをアライメントすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の成膜装置では、基板及びマスクをアライメントを行うための所定のアライメント測定位置に配置し、その状態で基板に設けられたアライメントマークとマスクに設けられたアライメントマークの位置をカメラで測定し、測定結果に基づき基板とマスクの相対的な位置を調整することによりアライメントが行われる。したがって、基板及びマスクにおいてカメラで測定可能な箇所は、アライメント測定位置に配置された状態の基板及びマスクとカメラとの相対的な位置関係並びにカメラの設置台数で決まる特定の箇所に限られる。例えば、特許文献1の成膜装置の場合は、大まかな位置合わせを行うラフアライメント用に基板及びマスクの短辺中央にアライメントマークを設け、精密な位置合わせを行うファインアライメント用に基板及びマスクの4隅にアライメントマークを設けている。これらのマークに対応して、ラフアライメント用のマークを撮影するためのカメラを2台、ファインアライメント用のマークを撮影するためのカメラを4台用いている。
【0005】
しかしながら、より精密なアライメントを行うために、基板及びマスクのより多く箇所を測定することが求められる場合がある。例えば、マスクフレームとそれに固定されたマスク箔とから構成されるマスクを使用する場合、マスクフレームの歪み等の影響で、マスクフレームと基板とを位置合わせしてもマスク箔の成膜パターン形成領域の位置と基板の成膜対象領域の位置とがずれることがある。このような位置ずれをも考慮した高精度のアライメントを行うために、マスク箔の位置をも測定することが求められる。このような要請に応えるためには、従来の成膜装置では追加のカメラを設置する必要があり、コストや装置サイズ等の点で課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基板及びマスクのより多くの箇所を測定することにより高精度のアライメントを行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行うアライメント手段と、
前記アライメントマークの位置を測定可能な測定手段と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記測定手段は、前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とする成膜装置である。
【0008】
本発明は、マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜方法であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行うアライメント工程と、
前記アライメントマークの位置を測定手段により測定する測定工程と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動工程と、
を有し、
前記測定工程では、前記移動工程において前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とする成膜方法である。
【0009】
本発明は、マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置においてマスクと基板の位置合わせを行うアライメント装置であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行うアライメント手段と、
前記アライメントマークの位置を測定可能な測定手段と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記測定手段は、前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とするアライメント装置である。
【0010】
本発明は、マスクを介して基板の成膜面に成膜を行う成膜装置におけるマスクと基板の位置合わせを行うアライメント方法であって、
前記マスク及び前記基板の前記成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、前記成膜面に沿う方向で前記マスク及び前記基板を相対的に移動させることで、前記マスク及び前記基板の位置合わせを行う工程と、
前記アライメントマークの位置を測定手段により測定する測定工程と、
前記測定手段を、測定対象のアライメントマークを有する前記マスク又は前記基板に対し、前記成膜面に沿う第1方向で相対的に移動させる移動工程と、
を有し、
前記測定工程では、前記移動工程において前記測定対象の前記第1方向の複数のアライメントマークの位置を測定することを特徴とするアライメント方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板及びマスクのより多くの箇所を測定することにより高精度のアライメントを行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図10】アライメント及び成膜処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例について詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明の実施例に係る成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法について説明する。本実施例の成膜装置は、基板の表面にマスクを介して成膜材料を堆積させて薄膜を形成する装置である。成膜方法としては真空蒸着やスパッタリングを例示できる。基板とマスクを位置合わせして成膜を行うことで、基板にはマスクの開口パターンに応じたパターンの薄膜が形成される。基板に複数の層を形成する場合、一つ前の工程までに既に形成されている層も含めて「基板」と称する場合がある。本実施例に係る成膜装置は、マスクを介した薄膜形成を高精度に行うために、基板とマスクとの相対的な位置を調整するアライメントを行う。
【0015】
基板の材料としては、ガラス、シリコン等の半導体、高分子材料のフィルム、金属等を例示できる。また、基板としては、シリコンウエハや基板上にポリイミド等のフィルムが積層されたものを例示できる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物)等を例示できる。マスクとしては、基板に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンを有するメタルマスクを例示できる。本実施例の製造方法で製造される電子デバイスとしては、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品等の各種電子デバイス、光学部品、発光素子、光電変換素子、タッチパネル、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)、照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)等を例示できる。特に、OLED等の有機発光素子や、有機薄膜太陽電池等の有機光電変換素子の製造に好適である。
【0016】
以下、基板の成膜面に沿う方向のうち搬送方向と平行の方向をX方向、X方向と垂直のY方向、基板の成膜面に交差する方向をZ方向、Z軸周りの回転をθ方向とする。本実施例ではXY平面は水平面と平行であり、Z方向は鉛直方向に平行であるとする。なお、搬送方向が水平方向に平行でない場合、X方向は水平方向と平行ではなく、Z方向は鉛直方向と平行ではない。
【0017】
<成膜装置>
図1は、成膜装置1の構成を模式的に示す断面図である。成膜装置1は、マスク103を介して基板102の成膜面に成膜を行う。成膜装置1では、外部から成膜装置1に基板102及びマスク103を搬入する搬送装置との基板102やマスク103の受け渡し、基板102とマスク103の相対位置の調整(アライメント)、マスク103と基板10
2の固定、成膜など等の一連の成膜プロセスが行われる。
【0018】
成膜装置1は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気、又は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気に維持されている。真空チャンバ200の内部には、基板支持ユニット210、マスク103、マスク台215、冷却板230、及び蒸発源240が設けられる。
【0019】
基板支持ユニット210は、後述する搬送装置から受け取った基板102を支持する基板支持手段である。マスク103は、基板102の成膜面に形成する薄膜に対応する開口パターンを持つ。マスク103として例えば、剛性の高いフレームに、開口パターンが設けられた金属箔が張架された構成のメタルマスクが用いられる。枠状の構造を持つマスク台215は、その上にマスク103が設置されるマスク支持手段である。本実施例では、基板102とマスク103がアライメントされた後、マスク103上に基板102が載置されて、成膜が行われる。
【0020】
冷却板230は、成膜時には、基板102の、マスク103と接触する面とは反対側の面に接触し、成膜時の基板102の温度上昇を抑える板状部材である。冷却板230が基板102を冷却することにより、有機材料の変質や劣化が抑制される。冷却板230はまた、基板102を介して基板102に接触しているマスク103を冷却することもできる。冷却板230はさらに、磁力によってマスク103を引き付けることで、成膜時の基板102とマスク103の密着性を高めるためのマグネット板を兼ねていてもよい。なお、基板102とマスク103の密着性を高めるために、基板支持ユニット210が基板102とマスク103を両方とも保持してもよい。
【0021】
蒸発源240は、蒸着材料を収容する容器である坩堝、坩堝を加熱するヒータ、蒸着材料の飛散状況を制御するための開閉可能なシャッタ、蒸発レートモニタ等から構成される。成膜装置1は、蒸発源240を移動させる駆動機構を備えていてもよい。駆動機構の動作により、蒸発源240が移動しながら成膜を行うことで、基板102上の膜厚を均質にできる。駆動機構は、成膜時以外は蒸発源240を所定位置(ホームポジション)に退避させておき、成膜が開始されると蒸発源240を移動させるような構成であってもよい。本実施例の成膜装置1は蒸着装置であるため、蒸発源として成膜材料(蒸着材料)を加熱して蒸発させる蒸発源240が用いられる。ただし、蒸発源は蒸発源240には限定されず、例えばスパッタリングターゲットを用いるスパッタリング装置であってもよい。蒸発源240は、基板102とマスク103が密着した後、マスク103を介して基板102上に成膜を行う、成膜手段である。
【0022】
真空チャンバ200の外側上部には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252が設けられる。各アクチュエータは例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイド等で構成される。真空チャンバ200の外側上部にはさらに、アライメントステージ280が設けられている。
【0023】
基板Zアクチュエータ250は、基板支持ユニット210全体をZ軸方向に昇降させる駆動手段である。クランプZアクチュエータ251は、基板支持ユニット210の挟持機構を開閉させる駆動手段である。冷却板Zアクチュエータ252は、冷却板230を昇降させる駆動手段である。
【0024】
アライメントステージ280は、基板102をXY方向に移動させ、またθ方向に回転させてマスク103との位置を変化させる。アライメントステージ280は、基板102とマスク103の位置合わせであるアライメント工程を行うアライメント手段である。アライメントステージ280は、真空チャンバ200に接続されて固定されるチャンバ固定
部281、XYθ移動を行うためのアクチュエータ部282、基板支持ユニット210と接続される接続部283を備える。なお、アライメントステージ280と基板支持ユニット210を合わせてアライメント手段と考えてもよい。
【0025】
アクチュエータ部282としては、Xアクチュエータ、Yアクチュエータ及びθアクチュエータを積み重ねられたアクチュエータを用いてもよい。また、複数のアクチュエータが協働するUVW方式のアクチュエータを用いてもよい。いずれの方式のアクチュエータ部282であっても、後述の制御装置3から送信される制御信号に従って駆動し、基板102をX方向及びY方向に移動させ、θ方向に回転させる。制御信号は、積み重ね方式のアクチュエータであればXYθ各アクチュエータの動作量を示し、UVW方式のアクチュエータであればUVW各アクチュエータの動作量を示す。
【0026】
アライメントステージ280は基板支持ユニット210をXYθ移動させる。なお、本実施例では基板102の位置を調整する構成としたが、XY面内における基板102とマスク103の相対的な位置関係を調整できればよい。したがって、マスク103の位置を調整する構成や、基板102とマスク103両方の位置を調整する構成でもよい。
【0027】
図2の斜視図を参照して、基板支持ユニット210の構成例を説明する。基板支持ユニット210は、基板102の各辺を支持する複数の支持具700が設けられた支持枠体701と、複数の押圧具702が設けられたクランプ部材703を有する。複数の押圧具702と複数の支持具700は、間に基板102を挟み込んで固定する。一対の支持具700と押圧具702が1つの挟持機構305を構成する。ただし、挟持機構305の数や配置はこれに限られない。また、挟持方式ではなく、基板102を支持具に載置する方式でも良い。あるいは、静電気力により基板102を吸着する静電チャックを用いてもよい。
【0028】
アライメントステージ280が、基板102を保持した状態の基板支持ユニット210に駆動力を伝達することにより、基板102のマスク103に対する相対位置が微調整される。基板102のZ方向移動においては、基板Zアクチュエータ250が駆動して基板支持ユニット210を移動させ、基板102を昇降させる。これにより、基板102とマスク103が接近又は離間する。さらに基板102を降下させることで、基板102とマスク103を密着させることができるので、基板Zアクチュエータ250は、基板102とマスク103の密着工程を行う密着手段である。基板102のXYθ移動においては、アライメントステージ280が基板102をXY方向に並進移動、又はθ方向に回転移動させる。アライメント時に基板102が移動するのは、基板102が配置されたXY平面内であり、当該XY平面はマスク103が配置された平面と略平行である。すなわち、基板102のXYθ移動のときには基板102とマスク103のZ方向の距離は変化せず、XY平面内において基板102の位置が変化する。これにより、基板102とマスク103がXY面内で位置合わせされる。
【0029】
以上のように構成された成膜装置1は、基板102及びマスク103を保持可能な基板キャリア101を磁力発生手段により発生する磁力により浮上させて非接触で搬送する磁気浮上方式の搬送装置を有する。この搬送装置により基板102及びマスク103の成膜装置1への搬入及び成膜装置1内での搬送が行われる。以下、本実施例の成膜装置1の搬送装置について説明する。
【0030】
<搬送装置>
図3は本実施例の搬送装置を模式的に示した図である。
図3(A)は搬送装置2をY方向に見た図である。
図3(B)は搬送装置2をX方向に見た図である。搬送装置2は、可動磁石型リニアモータ、ムービング永久磁石型リニアモータ、又は可動界磁型リニアモータを用いた磁気浮上方式の搬送装置である。搬送装置2は、可動子である基板キャリア1
01に対して固定子として機能し、リニアガイド等の案内装置を持たず、非接触で基板キャリア101を搬送する。なお、
図3(A)では搬送装置2において1つの基板キャリア101が搬送されている例を示しているが、搬送装置2において複数の基板キャリア101が搬送されることも可能である。
【0031】
搬送装置2は、基板キャリア101を搬送することにより、基板キャリア101に保持された基板102を、基板102に対して成膜処理を行う成膜装置1へ搬送する。基板キャリア101は、静電チャックを備え、電圧印加されることにより生じる静電引力により基板102を保持する。基板102を保持する方法はこの例に限定されず、例えばクランプ機構や吸着ゴムを用いて基板102を保持してもよい。また、基板キャリア101はマスク103を保持するマスク保持手段を有し、マスク103を保持して搬送することができる。
【0032】
図3(B)は基板キャリア101の搬送方向Xに垂直の面による断面を模式的に示す図である。基板キャリア101は、基板102を基板キャリア101上に保持する基板保持手段を有し、上面又は下面に搬送対象物である基板102を載置又は装着した状態で基板102を搬送する。
【0033】
基板キャリア101の上面のY方向端部には、基板キャリア101のY方向の中心に対して対称の位置に、複数の永久磁石104a、104bが取り付けられている。なお、以下では、永久磁石104a、104bを区別する必要がない場合は単に永久磁石104と称する。永久磁石104は、搬送装置2の上部に対向する側の磁極の極性が交互に異なるように複数の永久磁石がY方向に沿って並べられて構成される。
図3(B)では永久磁石104は2個の永久磁石からなるが、複数個であれば個数は限定されない。また、永久磁石104を構成する複数の永久磁石が並ぶ方向は、
図3(B)に示すY方向に限定されず、X方向(搬送方向)と交差する方向であればよい。言い換えると、永久磁石104は、磁極の極性が交互になるようにX方向(搬送方向)と交差する方向に沿って配置された複数の永久磁石からなる磁石群である。
図3(B)では、磁石群は基板キャリア101の上面におけるY方向端部のそれぞれにおいてX方向に沿って2列配置されている。
【0034】
基板キャリア101の上面のY方向端部にはヨーク108が設けられ、永久磁石104はヨーク108に取り付けられている。ヨーク108は、透磁率の大きな物質、例えば鉄で構成されている。
【0035】
搬送装置2の上部2011のY方向端部には、基板キャリア101の上面に設けられた永久磁石104に対向するように、基板キャリア101の搬送方向であるX方向に沿って所定の間隔で並べられた複数のコイル202が取り付けられている。各コイル202は、その中心軸がY方向を向くように取り付けられている。なお、コイル202はコアに巻線が巻かれた構成であり、本実施例においてコイル202の位置とはコアの位置を示す。
【0036】
複数のコイル202は、所定数のコイル202の組を単位として電流制御される。電流制御の単位となる所定数のコイル202の組をコイルユニット203と称する。1又は複数のコイルユニット203をコイルボックスに収納し、コイルボックスを搬送装置2の上部2011にX方向に沿って配置してもよい。
【0037】
コイル202に通電することにより、搬送装置2に配置されたコイル202と基板キャリア101に配置された永久磁石104との間に磁力が生じ、この磁力により基板キャリア101は姿勢制御されつつX方向の推進力が提供される。
【0038】
基板キャリア101の下面には、リニアスケール105、Yターゲット106及びZタ
ーゲット107がX方向に沿って設けられている。Zターゲット107は、リニアスケール105及びYターゲット106を挟んでY方向の両側にそれぞれ取り付けられている。
【0039】
搬送装置21bの下部2012には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205及び複数のZセンサ206が設けられている。
【0040】
複数のリニアエンコーダ204は、それぞれ基板キャリア101のリニアスケール105と対向可能なようにX方向に沿って搬送装置2に取り付けられている。各リニアエンコーダ204は、基板キャリア101に取り付けられたリニアスケール105を読み取ることで、リニアエンコーダ204に対する基板キャリア101の相対的な位置を検出して出力することができる。
【0041】
複数のYセンサ205は、それぞれ基板キャリア101のYターゲット106と対向可能なようにX方向に沿って搬送装置2に取り付けられている。各Yセンサ205は、基板キャリア101に取り付けられたYターゲット106との間のY方向の相対距離を検出して出力することができる。
【0042】
複数のZセンサ206は、それぞれ基板キャリア101のZターゲット107と対向可能なようにX方向に沿って搬送装置2に2列に取り付けられている。各Zセンサ206は、基板キャリア101に取り付けられたZターゲット107との間のZ方向の相対距離を検出して出力することができる。
【0043】
複数のリニアエンコーダ204は、基板キャリア101が搬送中もそのうちの1つが必ず1台の基板キャリア101の位置を測定できるような間隔で搬送装置2に取り付けられている。また、複数のYセンサ205は、そのうちの2つが必ず1台の基板キャリア101のYターゲット106を測定できるような間隔で搬送装置2に取り付けられている。また、複数のZセンサ206は、その2列のうちの3つが必ず1台の基板キャリア101のZターゲット107を測定できるような間隔で搬送装置2に取り付けられている。
【0044】
基板キャリア101の下面には第1磁石である複数の永久磁石207が設けられ、搬送装置2の下部2012には第1磁石の下方に位置する第2磁石である複数の永久磁石211が設けられている。複数の永久磁石207の配置方向と複数の永久磁石211の配置方向は互いに同じであり、永久磁石207と永久磁石211とはZ方向において互いに対向する。永久磁石207と永久磁石211との間に生じる磁力による反発力により基板キャリア101は浮上し、鉛直方向に支持される。搬送装置21bに設けられた永久磁石211が磁力発生手段を構成する。なお、基板キャリア101を磁気浮上させるための磁力を発生する磁力発生手段は永久磁石ではなく電磁石でもよい。更に、基板キャリア101の上面の永久磁石104a、104bだけで基板キャリア101が浮上する場合は、永久磁石207、211を設けないで構成してもよい。
【0045】
図4、
図5、
図6は、成膜装置1で行われる基板102とマスク103のアライメントのためのアライメントマークの測定方法を説明する図である。
【0046】
図4、
図5は、基板キャリア101とは別系統の搬送経路で予め成膜装置1に搬入されたマスク103が、成膜装置1内の搬送装置2の下部2012に設けられたマスク台215に載置された状態を示す。
図4は、成膜装置1に成膜対象の基板102を保持した基板キャリア101が搬入された状態を示し、
図5は基板キャリア101がマスク103に向けてX方向に搬送されている様子を示している。
図6は、成膜装置1において成膜処理が完了した基板102が搬送装置2によって成膜装置1から外部へ搬出するために-X方向に搬送されている様子を示している。
【0047】
<マスク、マスクマーク、マスク箔マーク>
図4(A)に示すように、マスク103は、枠状のマスクフレーム31と、マスクフレーム31に固定された複数のマスク箔32と、を有する。マスク箔32は、X方向に沿って複数配置される。マスク箔32は、数μm~数十μm程度の厚さであり、そのY方向の両端部がマスクフレーム31のX方向に沿う辺に溶接固定されている。マスクフレーム31は、マスク箔32をその面方向(X方向及びY方向)に引っ張った状態で、マスク箔32が撓まないように支持する。各マスク箔32には、基板102の成膜面に形成する薄膜に応じた開口パターンが形成されたパターン領域33がY方向(第2方向)に沿って複数、配列され、パターン領域33の周囲には成膜パターンが形成されない非パターン領域34が存在する。マスク103は、アライメントにおける位置測定対象となるアライメントマークとして、マスクフレーム31の4隅に設けられるマスクマーク43と、マスク箔32の非パターン領域34のY方向の両端部に設けられるマスク箔マーク44と、を有する。
【0048】
<第1基板マーク、第2基板マーク>
本実施例では、
図4(C)に示すように、基板102の成膜対象面に下層パネルパターン25が既に形成されている場合を例に説明する。なお、基板102の成膜対象面に下層パネルパターンが形成されていない場合(第1層のパネルパターンを成膜する場合)にも本発明は適用可能である。基板102とマスク103のアライメントが完了した後、下層パネルパターン25の上に次の層が成膜される。したがって下層パネルパターン25が形成されている領域が成膜対象領域である。以下、下層パネルパターン25を成膜対象領域25とも称する。
【0049】
基板102は、X方向及びY方向に沿って複数の成膜対象領域25を有する。基板102は、アライメントにおける位置測定対象となるアライメントマークとして、基板102の4隅に設けられる第1基板マーク41と、成膜対象領域25のY方向の両端部に設けられる第2基板マーク42と、を有する。第1基板マーク41は、マスクマーク43と位置合わせするためのアライメントマークである。第2基板マーク42は、マスク箔マーク44と位置合わせするためのアライメントマークである。第2基板マーク42は、下層パネルパターン25の成膜時に形成されることにより基板102に設けられる。基板102に第1層のパネルパターンを成膜する場合で、下層パネルパターンの成膜が行われていない場合は、下層パネルパターンの成膜による第2基板マーク42の形成ができない。この場合には、第1基板マーク41と同様の方法で予め基板102の成膜対象面に第2基板マーク42を設けておいてもよい。また、後述するように第2基板マーク42の測定結果を利用しないアライメントを行ってもよい。その場合、第2基板マーク42を設ける必要はない。
【0050】
<第3基板マーク>
本実施例では、マスク103は、基板102の成膜面に測定用マークを形成するための開口パターンを有し、
図6(C)に示すように、マスク103を介した基板102への成膜処理により、下層パネルパターン25上に形成されるパネルパターン22に加えて、測定用マークとして第3基板マーク45が形成される。第3基板マーク45は、X方向及びY方向に複数形成される。
【0051】
<第1カメラ>
搬送装置2の下部2012には、+Z方向を撮像可能な第1カメラ51が設けられる。搬送装置2によって基板キャリア101がX方向に移動することにより、基板102と第1カメラ51とはX方向に相対移動する。第1カメラ51は、基板102に対して相対移動しながら+Z方向を撮像することにより、撮像時に第1カメラ51に対向する位置にお
いて基板102を撮像することができる。本実施例では、第1カメラ51は、基板102の成膜面に沿う面内(XY面内)でX方向(第1方向)に交差するY方向(第2方向)に沿って複数配列された撮像手段である。複数の第1カメラ51は、少なくとも基板キャリア101に保持された基板102の第1基板マーク41、第2基板マーク42及び第3基板マーク45を撮像範囲に含み、また、基板102のX方向に沿う辺23及びY方向に沿う辺24を撮像範囲に含むように配置される。したがって、第1カメラ51は、基板102に対してX方向(第1方向)で相対的に移動しながら、基板102に設けられたアライメントマークである第1基板マーク41、第2基板マーク42及び第3基板マーク45の位置を測定する測定手段である。本実施例の場合、この相対的な移動は、基板102を保持して基板102を成膜装置1に対してX方向(第1方向)に搬送する基板キャリア101によって基板102が移動し、測定手段である第1カメラ51が成膜装置1に対して固定されることにより、実現している。
【0052】
<第2カメラ>
基板キャリア101には、-Z方向を撮像可能な第2カメラ52が設けられる。搬送装置2によって基板キャリア101がX方向に移動することにより、マスク103と第2カメラ52とはX方向に相対移動する。第2カメラ52は、マスク103に対して相対移動しながら-Z方向を撮像することにより、撮像時に第2カメラ52に対向する位置においてマスク103を撮像することができる。本実施例では、第2カメラ52は、基板102の成膜面に沿う面内(XY面内)でX方向(第1方向)に交差するY方向(第2方向)に沿って複数配列された撮像手段である。複数の第2カメラ52は、少なくともマスク箔マーク44を撮像範囲に含むように配置される。したがって、第2カメラ52は、マスク103に対してX方向(第1方向)で相対的に移動しながら、マスク103に設けられたアライメントマークであるマスク箔マーク44の位置を測定する測定手段である。本実施例の場合、この相対的な移動は、基板102を保持して基板102を成膜装置1に対してX方向(第1方向)に搬送する基板キャリア101によって基板102が移動し、測定手段である第2カメラ52が基板キャリア101に固定されていることにより、実現している。
【0053】
<第3カメラ>
基板キャリア101には、-Z方向を撮像可能な第3カメラ53が設けられる。搬送装置2によって基板キャリア101がX方向に移動することにより、マスク103と第3カメラ53とはX方向に相対移動する。第3カメラ53は、マスク103に対して相対移動しながら-Z方向を撮像することにより、撮像時に第3カメラ53に対向する位置においてマスク103を撮像することができる。本実施例では、第3カメラ53は基板キャリア101の4隅に設けられる。4個の第3カメラ53は、少なくともマスクマーク43を撮像範囲に含むように配置される。
【0054】
なお、基板102及びマスク103に設けられるアライメントマークの個数及び位置、並びに、第1カメラ51、第2カメラ52及び第3カメラ53の個数、位置及び撮像範囲は、上記の例に限定されない。少なくとも、基板102とマスク103とのアライメントを目標の精度で行うことができるように、コストや装置サイズ等の条件に応じて適宜決定される。
【0055】
例えば、マスク箔マーク44が非パターン領域34のY方向の両端部に設けられる例を示したが、
図7に示すように、隣り合うパターン領域33の間の非パターン領域34にマスク箔マーク46を設けてもよい。
【0056】
<制御装置>
図8は本実施例の成膜装置1の制御装置を模式的に示す図である。制御装置3は、統合
コントローラ301、コイルコントローラ302及びセンサコントローラ304を有し、成膜装置1及び搬送装置2を制御する。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302、センサコントローラ304、第1カメラ51、第2カメラ52、第3カメラ53、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、アクチュエータ部282が通信可能に接続されている。
【0057】
コイルコントローラ302には、複数の電流コントローラ303が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302及びこれに接続された複数の電流コントローラ303は、コイル202のそれぞれの列に対応して設けられている。各電流コントローラ303には、コイルユニット203が接続されている。電流コントローラ303は、接続されたコイルユニット203の各々のコイル202に印加する電流を制御する。
【0058】
コイルコントローラ302は、接続された各々の電流コントローラ303に対して目標となる電流値を指令する。電流コントローラ303は接続されたコイル202に印加する電流を目標の電流値に基づき制御する。コイル202及び電流コントローラ303は、基板キャリア101が搬送されるX方向に沿って搬送装置2の上部2011のY方向の両側に取り付けられている。
【0059】
センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205及び複数のZセンサ206が通信可能に接続されている。統合コントローラ301は、リニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206からの出力に基づき、複数のコイル202に印加する電流値を決定し、コイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301から取得した目標の電流値に基づき、電流コントローラ303に対して電流値を指令する。
【0060】
制御装置3は、第1カメラ51、第2カメラ52、第3カメラ53の各カメラにより撮像された画像データを解析することにより、第1基板マーク41、第2基板マーク42、マスクマーク43、マスク箔マーク44の各アライメントマークの位置情報を取得する。制御装置3は、取得したアライメントマークの位置情報に基づき、アクチュエータ部282のX方向、Y方向、θ方向の移動量を算出し、アクチュエータ部282を駆動する。これにより、基板102をXY面内で移動させて、基板102とマスク103のアライメントを行う。また、制御装置3は、各カメラにより撮像された画像データを解析することにより、基板102やマスク103の検査や、成膜結果のチェック等を行う。また、制御装置3は、蒸発源240の動作制御、基板Zアクチュエータ250による基板支持ユニット210の昇降制御、クランプZアクチュエータ251による基板支持ユニット210の挟持機構の開閉制御、冷却板Zアクチュエータ252による冷却板230の昇降制御、搬送装置2による基板キャリア101の搬送制御と姿勢制御等を行う。
【0061】
制御装置3は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/O等を有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御装置3の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御装置3の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御装置3が設けられていてもよいし、1つの制御装置3が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0062】
<マスクフレームの歪みの影響>
図9は、マスク103のマスクフレーム31の歪みによって成膜精度が低下する場合を模式的に説明する図である。
図9(A)及び
図9(B)はマスクフレーム31に歪みが生
じない理想的な場合を示し、
図9(C)及び
図9(D)はマスクフレーム31に歪みが生じ、その歪みに起因して複数のマスク箔32の間でY方向の位置にずれが生じた場合を示す。
図9(A)及び
図9(C)はマスク103を示し、
図9(B)及び
図9(D)は基板102の成膜対象面を示す。
【0063】
基板102の成膜対象面には、マスク箔32の複数のパターン領域33に対応する位置に複数のパネルパターン22が形成される。マスクフレーム31に歪みが生じない理想的な場合、
図9(B)に示すように、第1基板マーク41に対するパネルパターン22の位置ΔYは、X方向の位置が異なる複数のパネルパターン22の間で同一である。しかし、マスクフレーム31に
図9(C)に示すような歪みが生じた場合、
図9(D)に示すように、X方向の位置が異なる複数のパネルパターン22a、22bの間で、第1基板マーク41に対するパネルパターン22a、22bの位置ΔYa、ΔYbは等しくならない。
【0064】
したがって、第1基板マーク41とマスクマーク43とを正確に位置合わせして成膜処理を行ったとしても、例えばパネルパターン22aと下層パネルパターン25(
図4(C)等を参照)との重ね合わせの精度(PPA:Pixel Position Accuracy)は高いが、パネルパターン22bと下層パネルパターン25(
図4(C)等を参照)との重ね合わせの精度は低いということになり、結果として高精度の成膜を行えない。このようなパネルパターンの重ね合わせ精度の低下の要因となるマスクフレーム31の歪みは、マスク103のサイズが大きくなるほど生じやすい。
【0065】
<搬入時:マスク箔マーク+第2基板マーク>
本実施例では、マスクフレーム31に歪みが生じたとしても高精度の成膜を可能とするために、マスクマーク43及び第1基板マーク41の位置測定に加えて、マスク箔マーク44及び第2基板マーク42の位置測定を行い、これらの測定結果に基づき、基板102とマスク103のアライメントを行うようにした。
【0066】
具体的には、基板キャリア101の成膜装置1への搬入時に、第1カメラ51と基板キャリア101とを相対的に移動させながら、第1カメラ51によって第1基板マーク41及び第2基板マーク42を撮像し、第1基板マーク41及び第2基板マーク42の位置を測定する。また、基板キャリア101の搬入時に、第2カメラ52とマスク103とを相対的に移動させながら、第2カメラ52によってマスク箔マーク44を撮像し、マスク箔マーク44の位置を測定する。また、基板キャリア101の搬入時に、第3カメラ53とマスク103とを相対的に移動させながら、第3カメラ53によってマスクマーク43を撮像し、マスクマーク43の位置を測定する。本実施例では、測定手段である第1カメラ51は、基板キャリア101により成膜装置1に搬入された基板102がX方向(第1方向)搬送される際に、基板102に対しX方向(第1方向)で相対的に移動しながら第1基板マーク41及び第2基板マーク42の位置を測定する。また、測定手段である第2カメラ52は、基板キャリア101により成膜装置1に搬入された基板102がX方向(第1方向)搬送される際に、マスク103に対しX方向(第1方向)で相対的に移動しながらマスク箔マーク44の位置を測定する。
【0067】
<相対移動の前後で撮像>
第1カメラ51と基板キャリア101とを相対移動させながら第1カメラ51により撮像する方法としては、例えば、X方向で第1カメラ51に最も近い位置にある第2基板マーク42が第1カメラ51の撮像範囲に入ったと判定した場合に、基板キャリア101を停止させ、第1カメラ51による撮像を行う。撮像後、基板キャリア101の搬送を再開し、X方向で第1カメラ51に次に近い位置にある第2基板マーク42が第1カメラ51の撮像範囲に入ったと判定した場合に、基板キャリア101を停止させ、第1カメラ51による撮像を行う。このように、第1カメラ51と基板キャリア101とを相対的に移動
させる動作の前後でそれぞれ第1カメラ51による撮像を複数回行うことで、相対移動の方向であるX方向(第1方向)に複数設けられた第2基板マーク42を同一の第1カメラ51により撮像することができる。本実施例では、測定手段である第1カメラ51を、測定対象のアライメントマーク(第2基板マーク42)を有する基板キャリア101に対し、成膜面に沿う第1方向(X方向)で相対的に移動させる移動手段は、基板キャリア101を搬送する搬送装置2である。この場合、実際に移動させられている対象は基板キャリア101であるが、相対的に移動させるという観点で見れば、基板キャリア101が移動させられることにより、第1カメラ51が基板キャリア101に対し相対的に移動させられていると考えることができる。第2カメラ52及び第3カメラ53とマスク103とを相対移動させながら第2カメラ52及び第3カメラ53で撮像する方法も同様である。
【0068】
基板キャリア101と第1カメラ51とのX方向(第1方向)の相対的な移動や、マスク103と第2カメラ52及び第3カメラ53との相対的な移動の制御は、リニアエンコーダ204の出力から取得した基板キャリア101の位置情報に基づいて行うことができる。
【0069】
<アライメント>
このようにして基板キャリア101を成膜装置1に搬入する過程で第1カメラ51、第2カメラ52及び第3カメラ53により撮像して得られた画像データに基づき、制御装置3は各アライメントマークの位置を測定する。成膜装置1に搬入された基板キャリア101は、基板102を基板支持ユニット210に受け渡し、制御装置3は、測定した各アライメントマークの位置情報に基づき基板102とマスク103のアライメントを行う。このようなアライメントを実行する制御装置3は、マスク103及び基板102の成膜面に沿う面内に設けられたアライメントマークの位置に基づき、成膜面に沿う方向でマスク103及び基板102を相対的に移動させることで、マスク103及び基板102の位置合わせを行うアライメント手段である。第1カメラ51、第2カメラ52及び第3カメラ53はアライメントマークの位置を測定可能な測定手段であり、上記のように、測定対象のアライメントマークを有するマスク103又は基板102に対し、成膜面に沿う第1方向(本実施例ではX方向)で相対的に移動しながら、当該測定対象のアライメントマークの位置を測定する。
【0070】
制御装置3は、マスクマーク43と第1基板マーク41の測定した位置情報からマスク103と基板102の位置ずれ量を算出し、位置ずれ量を低減するために必要なアクチュエータ部282のXYθ方向の移動量を算出する。制御装置3は、算出したXYθ方向の移動量に基づきアクチュエータ部282を駆動し、基板102をXY面内でマスク103に対し相対移動させる。
【0071】
次に、制御装置3は、マスク箔マーク44及び第2基板マーク42の測定した位置情報に基づき基板102とマスク103のアライメントを行う。マスク箔マーク44及び第2基板マーク42の測定した位置情報に基づくアライメントの方法としては、例えば、マスク箔マーク44と第2基板マーク42との複数の組み合わせについて、マスク箔マーク44と第2基板マーク42との位置ずれ量のばらつきが最小になるようにする。
【0072】
これにより、マスクフレーム31に歪みが生じたとしても、
図9(D)に例示したような、あるパネルパターン22aは下層パネルパターン25に対して重ね合わせ精度が著しく高く、別のパネルパターン22bは下層パネルパターン25に対して重ね合わせ精度が著しく低い、といった精度のばらつきを抑えることができる。したがって、いずれのパネルパターン22においても下層パネルパターン25に対する同程度の重ね合わせ精度で成膜を行うことができ、基板102全体として見た場合の成膜精度を高めることができる。
【0073】
なお、本実施例では第3カメラ53が基板キャリア101の4隅に配置されているため、従来と同様、基板102とマスク103がアライメント位置に静止している状態でマスクマーク43と第1基板マーク41の撮像を行うことができる。したがって、上記のように基板キャリア101の搬入の過程で測定したマスクマーク43と第1基板マーク41の位置に基づくアライメントを行った後、アライメント位置に静止している状態で測定したマスクマーク43と第1基板マーク41の位置に基づくアライメントをさらに行ってもよい。これによりマスクマーク43と第1基板マーク41の位置を複数回測定してアライメントを行うことができるのでより精度良く位置合わせをすることができる。
【0074】
<搬入時:マスク箔マークのみ>
なお、上記の例では、マスク箔マーク44及び第2基板マーク42の測定した位置情報に基づくアライメントを例示したが、マスク箔マーク44の測定した位置情報のみに基づくアライメント方法も考えられる。例えば、マスク箔マーク44の位置の測定値と、マスクフレーム31に歪みが生じていない理想的な場合のマスク箔マーク44の位置の理論値と、の位置ずれ量の複数のマスク箔マーク44についてのばらつきが最小になるようにしてもよい。この場合の理論値は、マスク103の設計情報から算出される。
【0075】
以上のように、第2カメラ52によって測定されたマスク箔マーク44の位置に基づき、マスク箔32に設けられた複数のパターン領域33の位置の目標の位置からのずれ量の複数のパターン領域33の間でのばらつきが小さくなるように、マスク103及び基板102の位置合わせを行うことができる。
【0076】
<搬出時:第3基板マーク>
また、本実施例では、第3基板マーク45の位置測定を行い、この測定結果に基づき、アライメントにおける基板102の移動量を補正するオフセット量を算出してもよい。
【0077】
具体的には、成膜装置1において基板102に対する成膜が行われ、成膜処理の完了後に、基板支持ユニット210から基板キャリア101に基板102を受け渡し、搬送装置2によって基板キャリア101が成膜装置1から搬出される。搬出される基板102が-X方向(第1方向)に搬送される際に、第1カメラ51は、基板102に対しX方向(第1方向)で相対的に移動しながら測定用マークとしての第3基板マーク45の位置を測定する。すなわち、第1カメラ51と基板キャリア101とを相対的に移動させながら、第1カメラ51によって第3基板マーク45を撮像し、第3基板マーク45の位置を測定する。第1カメラ51と基板キャリア101とを相対的に移動させながら第1カメラ51によって撮像する方法は、上記の方法と同様、相対移動させる動作の前後で第1カメラ51により複数回の撮像を行う。相対移動の動作は、第3基板マーク45の位置の予測値とリニアエンコーダ204の出力から取得した基板キャリア101の位置情報に基づいて制御することができる。第3基板マーク45の位置の予測値は、マスク103のパターン領域33における第3基板マーク45に対応するパターンの位置の設計値から求められる。
【0078】
第3基板マーク45の測定された位置情報と、第3基板マーク45の位置の予測値とのずれ量から、搬入時に測定した位置情報に基づくアライメント結果の適否を判定することができる。例えば、複数の第3基板マーク45について、測定された位置情報と予測値とのずれ量のばらつきが閾値より大きい場合、ずれ量のばらつきを最小にするように、オフセット量を算出し、次回のアライメントにおけるアクチュエータ部282の動作量をオフセットさせる。このように、基板キャリア101の搬出時に基板キャリア101と第1カメラ51とを相対移動させながら第3基板マーク45を撮像することで、成膜結果を次回のアライメントにフィードバックすることができ、より高精度の成膜を行うことが可能になる。
【0079】
<基板、マスクの検査>
また、本実施例では、第1カメラ51がY方向に複数配置され、基板102のX方向に沿う辺23及びY方向に沿う辺24が撮像範囲に含まれる。したがって、基板キャリア101の搬入時又は搬出時に、第1カメラ51と基板キャリア101を相対移動させながら第1カメラ51により辺23又は辺24を撮像することにより得られた画像データに基づき、基板102の端部における割れの発生の有無を検査することができる。同様に、第2カメラ52がY方向に複数配置されているため、基板キャリア101の搬入時又は搬出時に、第2カメラ52とマスク103を相対移動させながら第2カメラ52によりマスク103を撮像することにより、マスク103の異常の有無を検査することができる。
【0080】
<変形例>
なお、本実施例ではマスク103及び第1カメラ51が成膜装置2に固定された状態で、基板102を保持した基板キャリア101並びにそれに設けられた第2カメラ52及び第3カメラ53が移動することで、マスク103及び第1カメラ51と基板キャリア101並びにそれに設けられた第2カメラ52及び第3カメラ53とが相対移動する構成を例示したが、マスク103及び第1カメラ51が移動し、基板キャリア101並びにそれに設けられた第2カメラ52及び第3カメラ53が固定されることで両者が相対移動する構成でもよいし、マスク103及び第1カメラ51が移動し、基板キャリア101並びにそれに設けられた第2カメラ52及び第3カメラ53も移動することで両者が相対移動する構成でもよい。
【0081】
また、本実施例ではマスク103に対して相対移動するカメラとして基板キャリア101にY方向に複数設けられた第2カメラ52及び基板キャリア101の4隅に設けられた第3カメラ53と、の両者を有する構成を例示したが、第2カメラ52をマスクマーク43及びマスク箔マーク44の両方を測定可能なように配置すれば、第3カメラ53は設けなくてもよい。
【0082】
<フローチャート>
アライメント及び成膜処理の流れについて、
図10のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートに示す処理は制御装置3が成膜装置1及び搬送装置2の各部の動作を制御することにより実行される。
【0083】
ステップS101において、搬送装置2により基板キャリア101を成膜装置1へ搬入する。
【0084】
ステップS102において、基板キャリア101と第1カメラ51を相対移動させながら第1カメラ51により第1基板マーク41及び第2基板マーク42を撮像する。また、第2カメラ52及び第3カメラ53とマスク103を相対移動させながら第2カメラ52によりマスク箔マーク44を撮像し第3カメラ53によりマスクマーク43を撮像する。
【0085】
ステップS103において、ステップS102の撮像により得られた画像データに基づき第1基板マーク41、第2基板マーク42、マスクマーク43及びマスク箔マーク44の位置情報を取得する。
【0086】
ステップS104において、基板キャリア101が所定のアライメント位置に到達し、基板キャリア101から基板支持ユニット210へ基板102を受け渡す。
【0087】
ステップS105において、ステップS103で取得したマスクマーク43と第1基板マーク41の位置情報に基づき、マスク103と基板102を位置合わせするためのアクチュエータ部282によるXYθ方向の基板102の移動量を算出し、アクチュエータ部
282を駆動して基板102をXY面内で移動させ、アライメントを行う。
【0088】
ステップS106において、ステップS105のアライメント後の第1基板マーク41及びマスクマーク43を第3カメラ53により撮像する。
【0089】
ステップS107において、ステップS106の撮像により得られた画像データに基づき第1基板マーク41及びマスクマーク43の位置情報を取得する。
【0090】
ステップS108において、第1基板マーク41とマスクマーク43の位置ずれ量が閾値以下であるか判定する。閾値より大きい場合、ステップS105に戻り、閾値以下の場合、ステップS109へ進む。
【0091】
ステップS109において、ステップS103で取得したマスク箔マーク44と第2基板マーク42の位置情報に基づき、マスク103と基板102を位置合わせするためのアクチュエータ部282によるXYθ方向の基板102の移動量を算出し、アクチュエータ部282を駆動して基板102をXY面内で移動させ、アライメントを行う。
【0092】
ステップS110において、ステップS109のアライメント後の基板102とマスク103を密着させ、蒸発源240から成膜材料を蒸発させ、マスク103を介して基板102の成膜対象面に成膜を行う。
【0093】
ステップS111において、成膜完了後の基板102をマスク103から取り外し、基板支持ユニット210から基板キャリア101に基板102を受け渡し、搬送装置2により成膜装置1から基板キャリア101を搬出する。
【0094】
ステップS112において、基板キャリア101と第1カメラ51を相対移動させながら第1カメラにより第3基板マーク45並びに基板102の辺23及び辺24を撮像する。
【0095】
ステップS113において、ステップS112の撮像により得られた画像データに基づき第3基板マーク45の位置情報を取得し、第3基板マーク45の位置情報に基づきアライメントにおけるアクチュエータ部282の動作量の算出に用いるオフセット量を算出する。算出したオフセット量は制御装置3の有する記憶装置に記憶し、次回のアライメント実行時に参照し、アクチュエータ部282の動作量の算出に適用する。
【0096】
ステップS114において、ステップS112の撮像により得られた画像データに基づき基板102の辺23及び辺24における割れ等の異常の有無を検査する。検査結果に応じて、異常を報知する所定の制御等を実行する。
【0097】
<電子デバイスの製造方法>
本実施例の成膜装置によって基板上に有機膜を形成し電子デバイスを製造する方法について説明する。ここでは、電子デバイスとして有機ELディスプレイに用いられる有機EL素子を製造する方法を例に説明する。なお、電子デバイスはこれに限定はされない。例えば、薄膜太陽電池や有機CMOSイメージセンサの製造にも本発明は適用できる。本実施例の電子デバイスの製造方法においては、上記の実施例の成膜装置を用いて、基板に有機膜を成膜する工程を有する。また、基板に有機膜を成膜した後に、金属膜又は金属酸化物膜を成膜する工程を有する。このような工程により製造される有機EL素子を用いた有機EL表示装置600の構造について、以下に説明する。
【0098】
図11(A)は有機EL表示装置600の全体図、
図11(B)は有機EL表示装置6
00一つの画素の断面構造を表している。
図11(A)に示すように、有機EL表示装置600の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示が可能な最小単位を指している。有機EL表示装置600は、互いに異なる色で発光する第1発光素子62R、第2発光素子62G、及び第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。第1発光素子62R、第2発光素子62G、及び第3発光素子62Bはそれぞれ、赤色発光素子、緑色発光素子、及び青色発光素子である。なお、画素当たりの発光素子の数や発光色の組み合わせはこの例に限られない。例えば、黄色発光素子、シアン発光素子、及び白色発光素子の組み合わせや、少なくとも1色以上であればよい。また、各発光素子は複数の発光層が積層されて構成されていてもよい。
【0099】
画素62を同じ色で発光する複数の発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように異なる色変換素子が配置されたカラーフィルタを用いて、1つの画素62が所望の色を表示可能としてもよい。例えば、画素62を3つの白色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、及び青色の色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。また、画素62を3つの青色発光素子で構成し、それぞれの発光素子に対応するように、赤色、緑色、及び無色の色変換素子が配列されたカラーフィルタを用いてもよい。なお、画素当たりの発光素子の数や発光色の組み合わせはこれら例に限られない。後者の場合には、カラーフィルタを構成する材料として量子ドット(QD:Quantum Dot)材料を用いた量子ドットカラーフィルタ(QD-CF)を用いることで、量子ドットカラーフィルタを用いない有機EL表示装置よりも表示色域を広くすることができる。
【0100】
図11(B)は、
図11(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板102に、第1電極(陽極)64、正孔輸送層65、発光層66R、66G、又は66B、電子輸送層67、及び第2電極(陰極)68が形成された有機EL素子を有する。正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、及び電子輸送層67が有機層である。発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。なお、カラーフィルタ又は量子ドットカラーフィルタを用いる場合には、各発光層の光出射側、すなわち、
図11(B)の上部又は下部にカラーフィルタ又は量子ドットカラーフィルタが配置される。
【0101】
発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子である有機EL素子である。発光層66R、66G、66Bは発光素子62R、62G、62Bの配列のパターンにしたがって形成されている。第1電極64は、発光素子毎に形成されており、互いに分離している。正孔輸送層65、電子輸送層67、及び第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bで共有するように形成されていてもよいし、発光素子毎に分離して形成されていてもよい。第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層Pが設けられている。
【0102】
電子デバイスとしての有機EL表示装置の製造方法について説明する。
【0103】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極64が形成された基板102を準備する。
【0104】
次に、第1電極64が形成された基板102の上にアクリル樹脂やポリイミド等の樹脂層をスピンコートで形成し、樹脂層をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された
部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0105】
次に、絶縁層69がパターニングされた基板102を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各層の成膜において用いられる成膜装置は、上記各実施例のいずれかに記載された蒸着装置を用いた成膜装置である。
【0106】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板102を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板102とマスク103とのアライメントを行い、基板102をマスク103の上に載置し、基板102の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本実施例の成膜装置を用いることにより、マスク103と基板102のアライメントを高精度で行うことができ、マスク103と基板102とを良好に密着させることができるため、高精度な成膜を行うことができる。
【0107】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。発光層66R、66G、66Bのそれぞれは単層であってもよいし、複数の異なる層が積層された層であってもよい。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。本実施例では、電子輸送層67、発光層66R、66G、66Bは真空蒸着により成膜される。
【0108】
続いて、電子輸送層67の上に第2電極68を成膜する。第2電極は真空蒸着によって形成してもよいし、スパッタリングによって形成してもよい。その後、第2電極68が形成された基板102を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層Pを成膜する封止工程が行われ、有機EL表示装置600が完成する。なお、ここでは保護層PをCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0109】
絶縁層69がパターニングされた基板102を成膜装置に搬入してから保護層Pの成膜が完了するまでの間に、基板102が水分や酸素を含む雰囲気に曝される、発光層が水分や酸素によって劣化する可能性がある。本実施例において、成膜装置間の基板102の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0110】
1:成膜装置、2:搬送装置、3:制御装置、41:第1基板マーク、42:第2基板マーク、43:マスクマーク、44:マスク箔マーク、51:第1カメラ、52:第2カメラ、53:第3カメラ、102:基板、103:マスク、282:アクチュエータ部