(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178642
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】疲労寿命に優れた軸受用鋼
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20231211BHJP
C22C 38/18 20060101ALI20231211BHJP
C21D 1/32 20060101ALN20231211BHJP
C21D 8/06 20060101ALN20231211BHJP
C21D 9/40 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/18
C21D1/32
C21D8/06 A
C21D9/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091441
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】藤松 威史
【テーマコード(参考)】
4K032
4K042
【Fターム(参考)】
4K032AA06
4K032AA07
4K032AA11
4K032AA12
4K032AA16
4K032AA26
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032BA02
4K032CA02
4K032CF03
4K042AA22
4K042BA03
4K042BA04
4K042CA06
4K042CA15
4K042DA01
4K042DA02
4K042DA03
4K042DA04
4K042DA06
4K042DB01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD02
4K042DD05
4K042DE02
(57)【要約】
【課題】 軸受用鋼の表面に非金属介在物の一部が露出した軸受用鋼において、非金属介在物を起点としたはく離が短期間で発生することを抑制し、実用上必要とされる疲労寿命を確保する。
【解決手段】 軸受用鋼の表面における非金属介在物が露出した領域のサイズである露出径√areaが200μm以下である。露出径√area[μm]と、軸受用鋼の表面から非金属介在物の最も深い位置までの深さD[μm]とが、下記式(I)に示す関係を満たす。
【数1】
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受用鋼の表面において非金属介在物の一部が露出した領域のサイズである露出径√areaが200μm以下であり、
前記露出径√area[μm]と、前記表面から前記非金属介在物の最も深い位置までの深さD[μm]とが、下記式(I)に示す関係を満たすことを特徴とする軸受用鋼。
【数1】
【請求項2】
硬さが58HRC以上であることを特徴とする請求項1に記載の軸受用鋼。
【請求項3】
軸受用鋼中の酸素含有量が8ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の軸受用鋼。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の軸受用鋼で形成された軸受。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の軸受用鋼で形成された軸受部品。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1つに記載の軸受用鋼で形成された転動疲労が負荷される部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労寿命に優れた軸受用鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受が適正な潤滑条件下で使用されているにも関わらず、軸受が想定よりも早期にはく離する現象(以下、「短寿命はく離」という)が起こる場合がある。この短寿命はく離は、軸受の鋼に含まれる非金属介在物によって引き起こされる。非金属介在物は、鋼の精錬過程で不可避的に形成され、その後の鋳造や凝固の過程で除去しきれないものが後処理(圧延や鍛造等)を経た軸受用鋼の中に含まれることになる。
【0003】
非金属介在物を起点としたはく離は、通常、軸受の部品の表面ではなく、表面よりも若干内部の位置から発生する。この理由は、軸受の軌道輪と転動体(球、ころ等)が転がり接触する際に軌道輪の若干内部で高いせん断応力が生じることによるものである。また前述した表層付近の高いせん断応力作用領域深さ内に存在する介在物のなかでも試験片の表面に一部が露出した非金属介在物が特に疲労寿命に悪影響を与えていることを見出している。
【0004】
特許文献1には、例えば、HUBや電動機用軸受などの、他の部品と潤滑油を共有しない軸受において、表層起点型のはく離を抑制することができる、転がり軸受の製造方法が開示されている。この製造方法は、最大径が100μm以下の範囲の介在物を有する転がり軸受において、内輪及び外輪の軌道面の表面から介在物の最大径(100μm以下)の40%以上60%以下の深さに、圧縮残留応力が最大となるピークが位置するように、圧縮残留応力を付与することで寿命が向上した転がり軸受となることを特徴とする特許である。ただし、上記特許は、表面に露出した介在物の有害性を直接検証したものではなく、さらに100μmを超える介在物が存在する場合については検査で取り除くことが前提となっており、そもそも圧縮残留応力を付与する必要がない程度のものまで一律に圧縮残留応力を付与することになるので、介在物の有害性が過剰に見積もられている可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、軸受用鋼の表面に一部が露出した非金属介在物について、その露出した領域のサイズと露出部分下の非金属介在物の深さに着目し、それらが転がり疲れによる疲労寿命に及ぼす影響を調査したところ、非金属介在物を起点としたはく離が短期間で発生することを抑制し、実用上必要とされる疲労寿命を確保できる条件を見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明である軸受用鋼は、軸受用鋼の表面において非金属介在物の一部が露出した領域のサイズである露出径√areaが200μm以下であり、露出径√area[μm]と、軸受用鋼の表面に一部が露出した非金属介在物の最も深い位置までの深さD[μm]とが、下記式(I)に示す関係を満たす。
【0008】
【0009】
軸受用鋼の硬さは、58HRC以上とすることができる。軸受用鋼中の酸素含有量は、8ppm以下とすることができる。
【0010】
本発明である軸受用鋼によって、軸受、軸受部品、転動疲労が負荷される部品を製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸受用鋼の表面に非金属介在物の一部が露出した軸受用鋼において、非金属介在物を起点としたはく離が短期間で発生することを抑制し、実用上必要とされる疲労寿命を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】軸受用鋼の表面に一部が露出した非金属介在物についての露出径及び深さを説明する図である。
【
図2】実施例の試験片表面をバフ研磨した後の露出Al
2O
3の観察事例(顕微鏡写真)である。
【
図3】実施例1~11及び比較例1~5について、露出径及び深さの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態である軸受用鋼は、軸受の全体で用いたり、軸受を構成する一部の部品(軸受部品)で用いたり、転動疲労が負荷される部品で用いたりすることができる。
【0014】
本実施形態である軸受用鋼の鋼種としては、様々な鋼種が用いられ、例えばJIS G4805に規定されているSUJ2、SUJ3、SUJ5等の焼入れ・焼戻しにより全体を硬くして用いる高炭素鋼、浸炭・高周波焼入れで表面付近を硬くして用いる中炭素鋼、浸炭焼入れで表面付近を硬くして用いる低炭素鋼等が挙げられる。
【0015】
(非金属介在物の露出径√area)
本実施形態の軸受用鋼では、
図1に示すように、軸受用鋼BSの表面Sに非金属介在物NMIが存在しており、非金属介在物NMIの一部が表面Sで露出している。非金属介在物NMIの露出径√areaは、軸受用鋼BSの表面Sで非金属介在物NMIの一部が露出している場合において、この非金属介在物NMIの露出領域のサイズである。
【0016】
露出径√areaを求めるためには、まず、光学顕微鏡等を用いて軸受用鋼BSの表面Sにおいて非金属介在物NMIの露出領域を特定し、この露出領域において、長径a及び短径bを測定する。そして、下記式(1)に基づいて、露出径√areaを求める。
【0017】
【0018】
露出領域の長径aは、露出領域において、端と端を結んだ最大の辺である。露出領域の短径bは、長径aの辺と平行な一対の線によって露出領域を挟んだときの最大幅である。本実施形態において、露出径√areaは200μm以下である。
【0019】
(非金属介在物の深さD)
非金属介在物の深さDは、
図1に示すように、軸受用鋼BSの表面Sで一部が露出している非金属介在物NMIについて、表面Sから非金属介在物NMIの最も深い位置までの距離である。非金属介在物の深さDは、例えば測定顕微鏡(JIS B7153)を用いて求めることができる。本実施形態の軸受用鋼において対象となるAl
2O
3などの介在物は、光(可視光)を透過する性質があるため、可視光線の波長域の光を利用した光学顕微鏡により、介在物表面(下記実施例ではバフ研磨された試験片上に表出した介在物の断面としているが、軸受部品として適用が可能な程度の粗さの鋼材表面に現れた介在物表面であればよい)と介在物底の母相にピントを合わせることができる。測定顕微鏡は、光学顕微鏡の特徴に加えて、介在物表面にピントを合わせた位置から介在物底の母材にピントを合わせた位置までのレンズの移動量を記録することが可能であり、上記のレンズの移動量に対して、介在物の屈折率を掛けることで非金属介在物の深さDが求められる。
【0020】
(露出径√area及び深さDの関係)
露出径√area[μm]及び深さD[μm]は、下記式(2)に示す関係を満たす。
【0021】
【0022】
露出径√area及び深さDが上記式(2)に示す関係を満たさない場合には、非金属介在物を起点としたはく離(以下、「介在物起点型はく離」という)が短期間で発生しやすくなり、軸受用鋼の寿命が低下しやすくなる。一方、露出径√area及び深さDが上記式(2)に示す関係を満たす場合には、介在物起点型はく離が発生することがあるものの、実用上必要とされる疲労寿命を確保することができる。
【0023】
軸受用鋼を製造したときには、光学顕微鏡等を用いた検査を行うことにより、軸受用鋼の表面に非金属介在物が露出しているか否かを確認することができる。軸受用鋼の表面に非金属介在物が露出している場合には、上述したように露出径√area及び深さDを測定すれば、上記式(2)に示す関係を満たしているか否かを判断することができる。そして、上記式(2)に示す関係を満たす軸受用鋼は製品として採用することができる。
【0024】
(硬さ)
軸受として使用するときの軸受用鋼の硬さは58HRC以上であることが好ましい。この硬さは、ロックウェル硬さ試験(JIS Z2245)による硬さである。軸受用鋼の硬さが58HRC未満である場合には、転動疲労寿命が大きく低下してしまう。軸受用鋼の硬さは、60HRC以上であることがより好ましい。軸受用鋼の硬さは、ロックウェル硬さ試験以外の試験方法によって求めた硬さをロックウェル硬さ試験による硬さに換算したものでも良い。
【0025】
(酸素含有量)
軸受用鋼中に不純物として含まれる酸素含有量は8ppm以下であることが好ましい。酸素含有量は、JIS G1239の規定に準じて測定することができる。酸素含有量を8ppm以下にすることで、鋼材中において、疲労寿命に悪影響を与える大型の非金属介在物の存在頻度を低減することができる。酸素含有量は、5ppm以下であることがより好ましい。
【実施例0026】
(試験片の用意)
実施例1~11及び比較例1~5として、下記表1に示す化学組成と、残部としてFeならびに不可避不純物を有する鋼を用意した。この鋼は、JIS G4805に規定されている鋼種SUJ2であり、本実施形態の軸受用鋼の一例である。
【0027】
【0028】
上述した鋼(100kg)を真空溶解炉で溶製し、その鋼を1150℃に加熱してから直径65mmの丸棒に鍛伸した。この鋼材に対して、865℃で1時間保持した後に空冷する焼ならしと、最高点加熱温度(800℃)で保持した後に徐冷を行う球状化焼なましを行った。次に、機械加工によって、鋼材を外径60mm、内径20mm及び厚さ8mmに粗加工し、鋼材の片面をバフ研磨仕上げすることにより、スラスト型転動疲労試験で用いられる試験片を作製した。
【0029】
次に、先端直径0.4mmのマイクロドリルを用いることにより、試験片のバフ研磨面に直径0.4mmで深さ1.5mmのドリルホールを加工した。このドリルホールに、非金属介在物を模擬して人工の球形状Al2O3粒子を投入した。ここで、Al2O3粒子の直径は75~327μmとした。
【0030】
次に、HIP(Hot Isostatic Pressing)加工によって、試験片の母相とAl2O3粒子との密着化を行った。具体的には、まず、Al2O3粒子の抜け止めを施して、低炭素鋼製のケースに試験片を収容し、試験片の内径穴部に芯金を入れてからケースを密閉した。そして、ケースの内部を真空脱気した後、147MPa及び1170℃で5時間保持した後に徐冷することにより、Al2O3粒子と母相とを密着化させた。これにより、Al2O3粒子と母相との界面に隙間の無い状態を意図的に作りだした。
【0031】
HIP加工を行った後、上述と同様に焼ならしと球状化焼なましを施してから、引張加工を付与するための形状(外径φ54mm、厚さ6.2mm)を有する中間材に加工し、引張加工により埋設したAl2O3粒子と母相の間に隙間を形成させた。この隙間は実鋼材において介在物周囲に見られることがある隙間を模擬したものである。このような隙間を意図的に形成することにより、Al2O3粒子(非金属介在物)の周囲の応力集中によるき裂の発生と、き裂の発生箇所からのき裂の進展が促進される。この試験片を用いることにより、非金属介在物がはく離に対して及ぼす影響を明らかにすることができる。上述した隙間を形成した後、焼入焼戻しを行う(835℃で0.5時間保持後に油冷する焼入れと、その後の180℃で1.5時間保持後に空冷する焼戻しからなる)ことにより、鋼材の硬さを62HRCに調整した。
【0032】
次に、熱処理中表面に形成された酸化スケールを平面研削によって除去した後、周波数が50MHzである超音波を用いた超音波探傷(UT)により、試験片中のAl2O3粒子について、その試験片表面からの深さ、および試験片面内の座標を特定した。この深さに基づいて試験片の片面全体に対して研削及びバフ研磨仕上げを行い、次工程の局所研削のための介在物の深さの調整を行った。
【0033】
次に、先の工程での介在物位置特定にもとづき、バフ研磨面上で試験片の局所研削箇所の目印を付与し、それをターゲットとして局所研削を行った。この局所研削手段として、研削と同時に研削箇所からの元素を高感度に検出する手段を利用することにより、Al
2O
3粒子が試験片の表面に露出するタイミングを特定した。ここでは、上記手段の一例として、グロー放電によるスパッタを利用した。市販されている装置として、Arガスなどをグロー放電でプラズマ化させ、それをさまざまな試料の表面に照射し、スパッタにより試料表面を除去しながら、スパッタによって取り除かれた原子のプラズマ内の発行を分光分析することによって、同時化学分析を行うことが可能なものがある。このような装置を用いることで、埋設箇所上のスパッタによる局所加工とその領域内に介在物が露出したことの検知とを同時に達成することができる。続いて、Al
2O
3粒子が露出している局所加工面(スパッタ面)の深さを、局所加工面の周辺に位置する非加工面を基準として計測した。そして、局所加工面の深さと、露出Al
2O
3粒子の露出径√areaとその露出下の深さDの調整を考慮の上、所定の仕上げ研磨量まで試験片の表面をバフ研磨した。なお、上記の仕上げ研磨にはバフ研磨を用いているが、実用上は軸受部品としての適用が可能な程度の粗さとすれば良い。
図2は、バフ研磨後の露出Al
2O
3の観察事例である。上記方法により、実施例1~11及び比較例1~5の試験片を得た。
【0034】
下記表2には、実施例1~11及び比較例1~5について、Al2O3粒子の直径、露出径√area及び深さDと、試験片の硬さをまとめた。
【0035】
【0036】
(スラスト型転動疲労試験)
スラスト型転動疲労試験を行うにあたり、下板として試験片(実施例1~11及び比較例1~5)を用い、上板として、SUJ2製単式スラスト軸受のレース(型番51305)を用いた。また、上板及び下板の間に3個の転動体(直径3/8インチのSUJ2製の鋼球)を120°ピッチで等分に配置した。ここで、試験片(下板)においては、Al2O3粒子の埋設位置の直上を転動体が通過するように、転動体の軌道位置に埋設位置を合わせる。
【0037】
転動体及び試験片の接触部分に4.5GPaの最大ヘルツ接触応力が加わるように荷重を付与した。また、負荷サイクル速度を1800サイクル/minとし、潤滑をISO VG68油浴への浸漬方式とした。この条件において、スラスト型転動疲労試験を常温で実施した。
【0038】
上述したスラスト型転動疲労試験において、はく離が発生するまでの応力繰り返し数を測定し、この応力繰り返し数をはく離寿命として求めた。ここで、実施例1~11及び比較例1~5の試験片では、試験片中のAl2O3粒子を起点としたはく離(介在物起点型はく離)が発生した。
【0039】
下記表3には、実施例1~11及び比較例1~5について、Al2O3粒子の露出径√area及び深さDと、基準となるはく離寿命Lrefに対する各試験片のはく離寿命Lnの比(以下、「寿命比」という)Ln/Lrefと、各試験片のはく離要因とを示す。実施例1の試験片については、はく離寿命が実用上必要とされる転動疲労寿命以上であったため、実施例1におけるはく離寿命をはく離寿命Lrefとした。
【0040】
【0041】
図3には、実施例1~11及び比較例1~5について、露出径√area及び深さDの関係を示す。
図3において、縦軸は露出径√area[μm]であり、横軸は深さD[μm]である。
図3に示す点線Eは、実施例1~11及び比較例1~5を区画する境界線であり、下記式(3)で表される。
【0042】
【0043】
上記表3及び
図3によれば、露出径√areaが上記式(3)の右辺に示す値以下であれば、言い換えれば、上記式(2)に示す関係を満たせば、寿命比Ln/Lrefが1.0以上となり、介在物起点型はく離が短期間に発生することを抑制できる。ここで、露出径√area及び深さDが大きいほど、介在物起点型はく離が短期間に発生しやすくなる。
【0044】
実施例1及び比較例2については、深さDがほぼ同じ(98,100μm)であるが、露出径√areaが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。実施例2及び比較例5については、深さDが同一(50μm)であるが、露出径√areaが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。実施例3,4及び比較例3については、深さDがほぼ同じ(75,72,70μm)であるが、露出径√areaが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。実施例5及び比較例4については、深さDがほぼ同じ(88,90μm)であるが、露出径√areaが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。
【0045】
図1から理解できるように、深さDが同一であるとき、Al
2O
3粒子の直径が大きいほど、露出径√areaが大きくなる。そして、Al
2O
3粒子の直径が大きいほど、き裂を進展させやすくなる。したがって、上述したように、深さDが同等であるときには、露出径√areaを小さくするほど、寿命比Ln/Lrefを高くすることができる。
【0046】
実施例2,8及び比較例1については、露出径√areaがほぼ同じ(70,70,60μm)であるが、深さDが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。実施例6及び比較例2については、露出径√areaがほぼ同じ(124,120μm)であるが、深さDが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。実施例9,10及び比較例3については、露出径√areaがほぼ同じ(144,140,140μm)であるが、深さDが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。実施例11及び比較例5については、露出径√areaが同一(180μm)であるが、深さDが小さいほど、寿命比Ln/Lrefが高くなる。
【0047】
上述したように、露出径√areaが同等であるときには、深さDを小さくするほど、寿命比Ln/Lrefを高くすることができる。