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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178700
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】機能膜の転写方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091530
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】西田 昭二
(72)【発明者】
【氏名】北村 広行
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AB26
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB02
2H149FB01
2H149FB05
2H149FB06
(57)【要約】
【課題】 基材に形成した機能膜を、適正に粘着層を有するフィルムに転写することができる、新規な機能膜の転写方法の提供を課題とする。
【解決手段】 機能膜に膜を破断しやすく処理した剥離開始領域を形成し、剥離開始領域で機能膜を破断して、機能膜をフィルムに転写することにより、課題を解決する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成された機能膜を、前記基材から剥離して粘着層を有するフィルムに転写するに際し、
前記機能膜に膜を破断しやすく処理した剥離開始領域を形成し、
前記剥離開始領域において前記機能膜を破断して、前記機能膜を前記フィルムに転写する、機能膜の転写方法。
【請求項2】
前記基材からの前記機能膜の剥離を一方向に行うものであり、
前記剥離開始領域が、前記フィルムに転写される前記機能膜における、前記剥離を行う一方向の最上流部となる、請求項1に記載の機能膜の転写方法。
【請求項3】
前記機能膜が液晶膜である、請求項1または2に記載の機能膜の転写方法。
【請求項4】
前記基材が、ガラス板と、前記ガラス板の表面に形成された配向膜とを有するものであり、前記液晶膜が前記配向膜に形成される、請求項3に記載の機能膜の転写方法。
【請求項5】
前記剥離開始領域が、前記基材からの前記機能膜の剥離方向に、複数の被破断線を有する、請求項1または2に記載の機能膜の転写方法。
【請求項6】
前記被破断線が、前記機能膜を切断した切断線、または、前記機能膜を厚さ方向の途中まで切断した半切断線である、請求項5に記載の機能膜の転写方法。
【請求項7】
前記基材を貼合位置まで搬送し、
前記貼合位置において、前記機能膜の前記剥離開始領域と前記フィルムとを貼着し、
その後、前記基材と前記フィルムとを離間することにより、前記機能膜を前記フィルムに転写する、請求項1または2に記載の機能膜の転写方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に形成された機能膜を、粘着層を有するフィルムに転写する機能膜の転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野において、所望の機能を発現する機能膜を基材に形成し、この基材から機能膜を剥離して、フィルムなどの別の基材に転写することが行われている。
これに応じて、基材に形成した機能膜を、別の基材に剥離転写する機能膜の転写方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、支持体と転写層とからなる転写シートの転写層を、被転写基材に転写する曲面転写方法として、
凹凸表面を有する被転写基材の凹凸表面側に、転写シートの転写層側を対向させ、転写シートの支持体側から弾性体ローラで加圧して、被転写基材の少なくとも凸部に転写シートを圧接し、転写シートを被転写基材に接着させる工程、
転写シートの支持体側に固体粒子を衝突させ、その衝突圧を利用して、被転写基材の凹凸表面へ転写シートを圧接して、転写層を被転写基材の凹凸表面のうち、凸部を含む所望の領域に接着させる工程、および、
転写シートの支持体を剥離除去する工程、を有する転写方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭10-211799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような基材に形成された機能膜を、基材から剥離して他の基材に転写する剥離転写では、機能膜が基材の全面に形成されない場合もある(図7参照)。
この場合に、適正な剥離転写を行うためには、機能膜と、機能膜が転写される部材との位置合わせが重要になる。
【0006】
例えば、基材に形成された機能膜を、粘着層を有するフィルムに転写する場合には、フィルムの粘着層に機能膜を貼着し、フィルムを基材から引き剥がすように剥離することで、フィルムの粘着層に貼着した機能膜を、フィルムに転写する。
この際において、フィルムが有する粘着層の粘着力等によっては、基材にフィルム(粘着層)を接触させない方が良い場合がある。従って、この際には、フィルムを機能膜に対して位置合わせして積層する必要がある。
【0007】
すなわち、図7の左側に概念的に示すように、機能膜102を基材106から適正に剥離するためには、機能膜102の端部と、フィルム104の端部とを、ある程度の精度で一致させる必要がある。機能膜102の端部とフィルム104の端部とが一致していれば、機能膜102の端部に剥離の応力が集中するので、機能膜102を端部から適正に剥離して、フィルム104に転写できる。
なお、図中の符号106は、機能膜102が形成された基材である。
【0008】
これに対して、図7の右側に示すように、機能膜102の端部に対して、フィルム104の端部が内側に位置する場合には、図中に下方に向かう6本の矢印で示すように、機能膜102にかかる応力が、剥離方向に分散する。その結果、機能膜102を適正に基材106から剥離できず、機能膜102を適正にフィルム104に転写できなくなる。
【0009】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、基材に形成した機能膜を、適正に粘着層を有するフィルムに転写することができる、新規な機能膜の転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 基材の表面に形成された機能膜を、基材から剥離して粘着層を有するフィルムに転写するに際し、
機能膜に膜を破断しやすく処理した剥離開始領域を形成し、
剥離開始領域において機能膜を破断して、機能膜をフィルムに転写する、機能膜の転写方法。
[2] 基材からの機能膜の剥離を一方向に行うものであり、
剥離開始領域が、フィルムに転写される機能膜における、剥離を行う一方向の最上流部となる、[1]に記載の機能膜の転写方法。
[3] 機能膜が液晶膜である、[1]または[2]に記載の機能膜の転写方法。
[4] 基材が、ガラス板と、ガラス板の表面に形成された配向膜とを有するものであり、液晶膜が配向膜に形成される、[3]に記載の機能膜の転写方法。
[5] 剥離開始領域が、基材からの機能膜の剥離方向に、複数の被破断線を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の機能膜の転写方法。
[6] 被破断線が、機能膜を切断した切断線、または、機能膜を厚さ方向の途中まで切断した半切断線である、[5]に記載の機能膜の転写方法。
[7] 基材を貼合位置まで搬送し、
貼合位置において、機能膜の剥離開始領域とフィルムとを貼着し、
その後、基材とフィルムとを離間することにより、機能膜をフィルムに転写する、[1]~[6]のいずれかに記載の機能膜の転写方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材に形成した機能膜を、粘着層を有するフィルムに適正に転写することができる、新規な機能膜の転写方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の転写方法を利用する転写装置の一例を概念的に示す図である。
図2】本発明の転写方法を利用する転写装置の別の例を概念的に示す図である。
図3】本発明の転写方法の一例を示す概念図である。
図4図3に示す本発明の転写方法を図1に示す転写装置に利用した一例を説明するための概念図である。
図5】本発明の転写方法の一例を示す概念図である。
図6図5に示す本発明の転写方法を図1に示す転写装置に利用した一例を説明するための概念図である。
図7】従来の転写方法の一例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の機能膜の転写方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0014】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0015】
また、以下に示す図は、いずれも本発明を説明するための概念的な図である。従って、各部材の形状、大きさ、および、位置関係等は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0016】
図1に、本発明の機能膜の転写方法を利用する転写装置の一例を概念的に示す。
図1に示す転写装置10は、基材12の表面に形成された機能膜14を、粘着層18を有するフィルム16に剥離転写するものである。
【0017】
なお、図1においては、図面を簡略化して、基材12からフィルム16への機能膜14の剥離転写の作用を簡潔に示すために、後述する機能膜14に設けられる剥離開始領域50は省略している。剥離開始領域50とは、膜が破断しやすくなるように処理した領域である。
本発明の転写方法においては、この剥離開始領域50で機能膜14を破断して、この破断部を剥離開始位置として機能膜14を基材12から剥離して、フィルム16(粘着層18)に転写する。
この点に関しては、後に詳述する。
【0018】
図1に示す転写装置10において、フィルム16は長尺なフィルムである。フィルム16は、フィルム16を巻回する図示しないフィルムロールから送り出された後、剥離転写ローラ30に巻き掛けられて搬送され、次いで、ローラ34aとローラ34bとからなる貼合ローラ対34で搬送される。
フィルム16の粘着層18の表面には、保護フィルム(セパレートフィルム)26が積層されている。フィルム16は、長手方向に搬送されつつ、剥離ローラ32によって保護フィルム26を剥離され、剥離転写ローラ30に搬送される。
【0019】
一方、表面に機能膜14を形成された基材12も、剥離転写ローラ30の位置まで搬送される。
なお、基材12の搬送は、搬送ローラおよびベルトコンベア等の公知のシート状物(板状物、フィルム、層、膜)の搬送方法で行えばよい。
【0020】
フィルム16と機能膜14とは、剥離転写ローラ30によって積層され、両者が貼着される。次いで、フィルム16と基材12とを同期して搬送する。
図示例においては、基材12の搬送方向は図中横方向である。他方、フィルム16は、剥離転写ローラ30に巻き掛けられて、貼合ローラ対34によって基材12に対して図中右上方に向かって搬送される。これにより、粘着層18に貼着された機能膜14が基材12から剥離して、フィルム16(粘着層18)に転写される。
【0021】
図1に示す転写装置10において、機能膜14を転写されたフィルム16は、一例として、次いで、貼合ローラ対34によって挟持搬送されつつ、貼合ローラ対34のローラ34bによって、PSAフィルム40を積層される。これにより、フィルム16(機能膜14)の表面に、PSAフィルム40が貼着される。
なお、PSAとは、Pressure Sensitive Adhesive(粘着剤)の略である。
ここで、PSAフィルム40の両面には保護フィルム26が貼着されている。PSAフィルム40は、剥離ローラ38によってフィルム16と対面する側の保護フィルム26を剥離された後、フィルム16に積層される。
【0022】
PSAフィルム40を貼着されたフィルム16は、ロール状に巻回され、あるいは、次の工程に搬送される。
【0023】
図1に示す転写装置10は、1つの剥離転写ローラ30によって、機能膜14とフィルム16(粘着層18)とを積層、貼着し、基材12から機能膜14を剥離し、フィルム16(粘着層18)に貼着しているが、本発明は、これに制限はされない。
例えば、本発明の転写方法を利用する転写装置は、図2に概念的に示すように、フィルム16と機能膜14とを積層して貼着する貼合ローラ42と、基材12から機能膜14を剥離してフィルム16に転写する剥離ローラ46と、を用いるものであってもよい。
貼合ローラ42と剥離ローラ46とを用いた構成においては、剥離ローラ46は、基材12と共に機能膜14を挟持するように配置してもよい。あるいは、貼合ローラ42と剥離ローラ46とを用いた構成においては、剥離ローラ46を、基材12とによる機能膜14の挟持に対して、若干、機能膜14から浮いた位置に配置してもよい。
【0024】
図示例において、機能膜14は、一例として、液晶レンズ(液晶回折素子)等が形成された液晶膜である。
また、基材12は、一例として、ガラス板20と、ガラス板20の表面に形成された配向膜24とを有する。配向膜24は、液晶膜に含まれる液晶化合物を配向するための、液晶膜の形成に用いられる公知の配向膜である。従って、機能膜14は、基材12の表面となる配向膜24の表面に形成される。
【0025】
本発明の転写方法において、機能膜14には、制限はなく、各種の機能を発現する、公知の各種の膜(層)が利用可能である。
一例として、機能膜14が図示例のような液晶膜である場合には、機能膜14としては、液晶レンズ、および、位相差膜(波長板)等が例示される。これらの液晶膜においては、目的とする機能を発現する領域は、液晶膜の全面に形成されてもよく、部分的に形成されてもよい。さらに、液晶膜に形成される目的とする機能を発現する領域は、液晶膜の面方向に複数が形成されてもよい。
また、機能膜14は、液晶膜に制限はされない。例えば、無機材料で形成される位相差膜(無機波長板)、偏光子、ハーフミラー、モスアイフィルムなど反射防止膜、バンドパスフィルタなどの各種のフィルター等の光学的な機能を発現する光学膜(光学フィルム)も利用可能である。さらに、機能膜14は、光学膜以外にも、配向膜、保護膜、加飾膜、および、ガスバリア膜等が例示される。
【0026】
上述のように、基材12は、ガラス板20と、配向膜24とを有する。機能膜14である液晶膜は、配向膜24の表面に形成される。
すなわち、本発明において、基材12とは、1つの表面に機能膜14を形成されるものである。従って、基材12は、図示例のような積層体でも、単層でもよい。
【0027】
基材12は、ガラス板20と配向膜24とからなるものに制限はされず、各種のものが利用可能である。
単層の基材12としては、ガラス板、および、樹脂製のシート状物等が例示される。
また、基材12として図示例のような積層体を用いる場合には、単層の基材として例示したものを支持体として、この支持体の上に、図示例のような配向膜、および、上述の機能膜14で例示した膜等を形成した物が例示される。本発明に用いられる基材12において、支持体に設けられる膜は、1層でも、複数層でもよい。
【0028】
また、機能膜14が転写されるフィルム16にも制限はなく、公知の各種のフィルムが利用可能である。なお、フィルム16は、損傷することなく巻き取りおよび巻き戻しが可能な程度の可撓性を有するのが好ましい。
一例として、低レタデーションフィルム、高光透過フィルム、偏光子、位相差膜(波長板)、ハーフミラー、各種のフィルター、および、反射防止フィルム等の、光学的な特性を有する、いわゆる光学フィルムが好適に例示される。
また、フィルム16としては、光学フィルム以外にも、保護フィルム、加飾フィルム、および、ガスバリアフィルム等も好適に利用可能である。
【0029】
上述のように、本発明の転写方法においては、機能膜14は、剥離開始領域を有する。
剥離開始領域とは、機能膜14を破断しやすく処理した領域である。
本発明の転写方法は、機能膜14が、このような剥離開始領域を有することにより、機能膜14を基材12から剥離して、フィルム16に転写する際に、剥離開始領域において機能膜14を破断できる。そのため、この破断部を剥離開始位置として、機能膜14を基材12から剥離できるので、機能膜14を適正にフィルム16に転写できる。
【0030】
具体的には、図3に概念的に示すように、基材12に形成された機能膜14に、例えばフィルム16の端部が剥離開始領域50に位置するように、フィルム16を積層する。
次いで、基材12とフィルム16との積層体から、フィルム16の端部を開始点として、一方向に基材12からフィルム16すなわち機能膜14を剥離するように、基材12とフィルム16とを離間する。これにより、剥離開始領域50におけるフィルム16の端部の位置で機能膜14が破断する。さらに、この破断部を剥離開始位置として、基材12からの機能膜14の剥離が開始され、機能膜がフィルム16(粘着層18)に転写される。すなわち、剥離開始領域50が、フィルム16に転写された機能膜14における、剥離方向の最上流部となる。
【0031】
図4に、上述した図1に示す転写装置10において、図3に示す本発明の転写方法を応用した一例を概念的に示す。
まず、図4の左上段に示すように、機能膜14を形成した基材12を、機能膜14の剥離開始領域50が剥離転写ローラ30に対応する位置すなわち貼合位置となる場所まで搬送する。この状態では、フィルム16は停止している。
次いで、図4の左中段に示すように、基材12を上昇して、機能膜14の剥離開始領域50と、フィルム16の粘着層18とを積層して貼着し、剥離転写ローラ30によって剥離開始領域とフィルム16(粘着層18)とを密着する。なお、この際におけるフィルム16と粘着層18との積層は、剥離転写ローラ30すなわちフィルム16の降下によって行ってもよい。この点に関しては、後述する図6に示す態様も同様である。
【0032】
次いで、図4の左下段に示すように、剥離転写ローラ30および上述した貼合ローラ対34を駆動して、基材12とフィルム16とを、同期して搬送する。
上述のように、基材12の搬送方向は図中横方向である。他方、フィルム16は、剥離転写ローラ30に巻き掛けられて、貼合ローラ対34によって基材12に対して図中右上方に向かって搬送される。
これにより、図4の右上段に示すように、粘着層18に貼着した機能膜14が基材12から離間からするように図中上方向に搬送される。この搬送によって、剥離開始領域50における剥離転写ローラ30による最初の密着部において、機能膜14が破断する。基材12およびフィルム16が、さらに搬送されると、図4の右上段から右下段に示すように、この破断部を剥離開始位置として、機能膜14が基材12から剥離され、フィルム16に転写される。
【0033】
なお、本例においては、基材12とフィルム16とを停止した状態で、機能膜14とフィルム16とを積層して貼着しているが、本発明は、これに制限はされない。
例えば、基材12の搬送に応じて、タイミングを合わせてフィルム16の搬送を開始し、基材12とフィルム16とを同期して搬送した状態で機能膜14とフィルム16とを貼着し、以下、同様に、フィルム16への機能膜14の剥離および転写を行ってもよい。
この点に関して、後述する図6に示す態様も同様である。
【0034】
以上のように、本発明の転写方法では、基材12の表面に形成された機能膜14を、粘着層18を有するフィルム16に転写する際に、機能膜14に、機能膜14を破断しやすく処理した剥離開始領域50を設ける。
本発明の転写方法は、機能膜14が剥離開始領域50を有することにより、機能膜14を容易に破断し、かつ、この破断部を機能膜14の剥離開始位置とできるので、基材12からの機能膜14の剥離開始性および剥離性を向上することができる。その結果、本発明によれば、安定して適正に機能膜14をフィルム16に剥離転写できる。
また、粘着層18の粘着力によっては、フィルム16の粘着層18が基材12に接触すると、フィルム16が基材12に貼着して剥離できなくなる、および、フィルム16を基材12から剥離した際に粘着層18が基材12に残ってしまう等の不都合が生じる可能性がある。従って、この場合には、上述のように、基材12にフィルム16(粘着層18)を付着するのが好ましくなく、フィルム16の端部と機能膜14との位置合わせを精度よく行う必要がある。これに対し、本発明によれば、このように、基材12にフィルム16(粘着層18)を付着するのが好ましくなく、フィルム16の端部と機能膜14との位置合わせが必要な場合にも、位置合わせを容易に行うことが可能になる。言い換えれば、本発明によれば、基材12にフィルム16を付着するのが好ましくない場合に、基材12とフィルム16とが接触することを、容易かつ好適に防止できる。
【0035】
このような本発明は、製造工程上および/または最終的に、機能膜を可撓性を有するフィルム状物に設ける必要が有るが、機能膜14の作製は、可撓性を有さない基材に行わざるを得ない場合に、好適に利用される。一例として、図示例のように、ガラス板に形成した配向膜に機能膜14として液晶膜、特に液晶レンズを形成し、この液晶膜を可撓性を有するフィルムに設ける必要が有る用途には、好適に利用される。
【0036】
機能膜14を破断しやすくするための剥離開始領域50における処理には、制限はなく、機能膜14の形成材料等に応じた、公知の各種の方法が利用可能である。
一例として、機能膜14が図示例のような液晶膜である場合には、剥離開始領域50とその他の領域とで液晶化合物の配向方向を変える方法、および、剥離開始領域50のみ無配向とする方法等が例示される。
また、機能膜14が熱に弱い材料で形成される場合には剥離開始領域50に熱処理を行う方法、および、剥離開始領域50の全域に二次元的に微細な貫通孔を設ける方法等も利用可能である。
【0037】
図5に、本発明の転写方法の別の例を概念的に示す。
本発明の3および図4に示す例は、剥離開始領域50の熱処理等によって、剥離開始領域50において機能膜14を破断しやすくしたものである。これに対して、図5に示す例は、機能膜14に、剥離方向と直交する方向に機能膜14を切断した切断線を設けることにより、剥離開始領域50を形成したものである。
具体的には、図5に示す例では、剥離方向と直交する方向に機能膜14を切断した切断線50a、切断線50b、切断線50c、切断線50d、切断線50eおよび切断線50fの6つの切断線を有する。切断線50a~切断線50fは、切断線50aを最上流として、機能膜14の剥離方向に配列して設けられている。
なお、切断線は、剥離方向と直交する方向に制限はされず、必要に応じて、剥離方向と直交する方向に対して角度を有してもよい。
【0038】
図5に示す例では、この切断線50a~切断線50fが設けられた領域が、本発明における剥離開始領域である。また、各切断線が、本発明における被破断線である。
【0039】
図5に示す例においても、図3に示す例と同様、例えばフィルム16の端部が、切断線50a~切断線50fが設けられた剥離開始領域に位置するように、基材12に形成された機能膜14にフィルム16を積層する。
次いで、基材12とフィルム16との積層体から、フィルム16の端部を開始点として一方向に基材12からフィルム16すなわち機能膜14を剥離するように、基材12とフィルム16とを離間する。これにより、フィルム16の端部の直上流の切断線、図示例では切断線50cが破断部となって機能膜14が破断する。さらに、破断部である切断線50cを剥離開始位置として、基材12からの機能膜14の剥離を開始して、機能膜14がフィルム16(粘着層18)に剥離転写される。すなわち、剥離開始領域50が、フィルム16に転写された機能膜14における、剥離方向の最上流部となる。
【0040】
図6に、上述した図1に示す転写装置10において、図5に示す本発明の転写方法を応用した一例を概念的に示す。
まず、図6の左上段に示すように、機能膜14を形成した基材12を、機能膜14において切断線50a~切断線50fが設けられた剥離開始領域が剥離転写ローラ30に対応する位置すなわち貼合位置となる場所まで搬送する。この状態では、フィルム16は停止している。
次いで、図6の左中段に示すように、基材12を上昇して、機能膜14の剥離開始領域と、フィルム16の粘着層18とを積層して貼着し、剥離転写ローラ30によって剥離開始領域とフィルム16(粘着層18)とを密着する。
【0041】
次いで、図6の下段に示すように、剥離転写ローラ30および上述した貼合ローラ対34を駆動して、基材12とフィルム16とを、同期して搬送する。
上述のように、基材12の搬送方向は図中横方向である。他方、フィルム16は、剥離転写ローラ30に巻き掛けられて、貼合ローラ対34によって基材12に対して図中右上方に向かって搬送される。
これにより、図6の右上段に示すように、粘着層18に貼着した機能膜14が基材12から離間からするように図中上方向に搬送される。この搬送によって、切断線50a~切断線50fが設けられた剥離開始領域における、フィルム16(粘着層18)が最初の接触した位置の直上流の切断線が破断部となって、機能膜14が破断する。図示例においては、切断線50cが破断部となって、機能膜14が破断する。なお、此処でいう直上流とは、基材12からの機能膜14の剥離方向における直上流である。
基材12およびフィルム16が、さらに搬送されると、図6の右上段から右下段に示ように、この破断部すなわち切断線50cを剥離開始位置として、機能膜14が基材12から剥離され、フィルム16に転写される。
【0042】
本例においても、上述の例と同様、粘着層18を有するフィルム16への基材12からの機能膜14の剥離転写において、機能膜14を容易に破断して剥離開始性を向上することができ、その結果、安定して、適正に機能膜14をフィルム16に剥離転写できる。
また、本発明によれば、同様に、フィルム16の端部と機能膜14との位置合わせが必要な場合にも、位置合わせを容易に行うことができ、基材12とフィルム16とが接触することを、容易かつ好適に防止できる。
【0043】
図5および図6示す例では、機能膜14を完全に切断した切断線を被破断線として剥離開始領域を形成していたが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、機能膜14を厚さ方向の途中まで切断した半切断線、いわゆるハーフカット線を、被破断線として機能膜14の剥離方向に複数設けることで、剥離開始領域を形成してもよい。あるいは、機能膜14を連続的に切断した切断線に変えて、切手の目打のような連続的な孔による破線または点線を、被破断線として機能膜14の剥離方向に複数設けることで、剥離開始領域を形成してもよい。
【0044】
また、本発明においては、機能膜14において、図3および図4に示すような熱処理による剥離開始領域と、切断線などの被破断線による剥離開始領域とを併用してもよい。
さらに、本発明においては、熱処理等によって破断しやすくした部分によって線を形成し、この線を被破断線としてもよい。
【0045】
本発明の転写方法において、基材12からの機能膜14の剥離方向における剥離開始領域の長さには制限はなく、フィルム16への機能膜14の転写の位置精度等に応じて、適宜、設定すればよい。基材12からの機能膜14の剥離方向における剥離開始領域の長さは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
また、図5および図6に示すような、切断線(被破断線)を設ける場合において、機能膜14の剥離方向における切断線の間隔にも、制限はなく、同様に、フィルム16への機能膜14の転写の位置精度等に応じて、適宜、設定すればよい。機能膜14の剥離方向における切断線の間隔は、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0046】
以上の例は、機能膜14以外の領域にフィルム16(粘着層18)を接触させていないが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明の転写方法では、例えばフィルム16の粘着層18の粘着力が弱く、基材12等に貼着しても問題なく剥離できる場合には、機能膜14のみならず、基材12の機能膜14が形成されていない領域に、フィルム16を積層して貼着してもよい。
この場合でも、機能膜14が剥離開始領域を有することで、フィルム16を剥離する際に、剥離開始領域において機能膜14は破断して、この破断部を剥離開始位置として、適正に、基材12から機能膜14を剥離して、フィルム16に転写できる。また、この際には、必要に応じて、剥離開始領域において、フィルム16(粘着層18)を、機能膜14に押圧してもよい。
【0047】
以上、本発明の機能膜の転写方法について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
光学部品の製造等の各種の部品および製品の製造に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 転写装置
12,106 基材
14,102 機能膜
16,104 フィルム
18 粘着層
20 ガラス板
24 配向膜
26 保護フィルム
30 剥離転写ローラ
32,38 剥離ローラ
34 貼合ローラ対
34a,34b ローラ
40 PSAフィルム
42 貼合ローラ
46 剥離ローラ
50 剥離開始領域
50a,50b,50c,50d,50e,50f 切断線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7