IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特開2023-178859有機エレクトロニクス材料及び有機エレクトロニクス素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178859
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】有機エレクトロニクス材料及び有機エレクトロニクス素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/15 20230101AFI20231211BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231211BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231211BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231211BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20231211BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20231211BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/14 A
H01L27/32
G09F9/30 365
G02F1/13357
C08L101/02
C08K5/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091811
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】加茂 和幸
(72)【発明者】
【氏名】福島 伊織
(72)【発明者】
【氏名】宮 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 悟史
【テーマコード(参考)】
2H391
3K107
4J002
5C094
【Fターム(参考)】
2H391AA01
2H391AB07
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB03
3K107CC45
3K107DD73
3K107DD79
3K107DD87
4J002CE001
4J002CH031
4J002EY016
4J002FD206
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ00
4J002GT00
5C094AA43
5C094BA27
5C094BA43
5C094FB01
(57)【要約】
【課題】低温で硬化させることができる有機エレクトロニクス材料を提供する。
【解決手段】ジフェニルメチルアンモニウムを含むイオン性化合物と、オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーとを含有する、有機エレクトロニクス材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェニルメチルアンモニウムを含むイオン性化合物と、オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーとを含有する、有機エレクトロニクス材料。
【請求項2】
前記イオン性化合物が、置換又は非置換のテトラキス(アリール)ホウ素アニオンを含む、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項3】
前記イオン性化合物が、ジフェニルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項4】
前記電荷輸送性ポリマーが、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、フラン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位を有する、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項5】
前記電荷輸送性ポリマーが、芳香族アミン構造を含む構造単位を有する、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項6】
前記電荷輸送性ポリマーが、フルオロ基により置換された芳香族アミン構造を含む構造単位を有する、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項7】
前記電荷輸送性ポリマーが、分岐ポリマーを含む、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項8】
請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料と、溶媒とを含有する、インク組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料に記載のインク組成物を用いて形成された、有機層。
【請求項10】
請求項9に記載の有機層を有する、有機エレクトロニクス素子。
【請求項11】
請求項9に記載の有機層を有する、有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項12】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を有する、表示素子。
【請求項13】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を有する、照明装置。
【請求項14】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を有する、表示装置。
【請求項15】
請求項13に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロニクス材料、インク組成物、有機層、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロニクス素子は、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性等の特長を発揮できると期待されている。有機エレクトロニクス素子の例として、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。
【0003】
これらの有機エレクトロニクス素子は、各種素子特性において更なる改善が望まれている。例えば、有機EL素子の高性能化の一手段として、有機層を多層化し、各層における機能を分離する試みがなされている。湿式プロセスによって多層化する際には、上層の成膜時に用いる塗布液の溶媒に対する、下層の耐溶剤性が求められる。
【0004】
有機層を多層化するため、例えば、重合性基を少なくとも1つ有する化合物を利用する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-279007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、低温で硬化させることができる有機エレクトロニクス材料及び前記有機エレクトロニクス材料を含有するインク組成物を提供する。また、本開示は、耐溶剤性に優れた有機層、並びに、前記有機層を含む有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示には、本発明の様々な実施形態が含まれる。実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0008】
(1)ジフェニルメチルアンモニウムを含むイオン性化合物と、オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーとを含有する、有機エレクトロニクス材料。
(2)前記イオン性化合物が、置換又は非置換のテトラキス(アリール)ホウ素アニオンを含む、上記(1)に記載の有機エレクトロニクス材料。
(3)前記イオン性化合物が、ジフェニルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む、上記(1)又は(2)に記載の有機エレクトロニクス材料。
(4)前記電荷輸送性ポリマーが、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、フラン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位を有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
(5)前記電荷輸送性ポリマーが、芳香族アミン構造を含む構造単位を有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
(6)前記電荷輸送性ポリマーが、フルオロ基により置換された芳香族アミン構造を含む構造単位を有する、上記(1)~(5)のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
(7)前記電荷輸送性ポリマーが、分岐ポリマーを含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料と、溶媒とを含有する、インク組成物。
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料、又は、上記(8)に記載のインク組成物を用いて形成された、有機層。
(10)上記(9)に記載の有機層を有する、有機エレクトロニクス素子。
(11)上記(9)に記載の有機層を有する、有機エレクトロルミネセンス素子。
(12)上記(11)に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を有する、表示素子。
(13)上記(11)に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を有する、照明装置。
(14)上記(11)に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を有する、表示装置。
(15)上記(13)に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを有する、表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低温で硬化させることができる有機エレクトロニクス材料及び前記有機エレクトロニクス材料を含有するインク組成物を得ることができる。また、本開示によれば、耐溶剤性に優れた有機層、並びに、前記有機層を含む有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下の実施形態は、単独で又は組み合わせて実施することが可能である。複数の実施形態の組み合わせも本発明に含まれる。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、別の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本開示中に段階的に記載されている上限の数値と下限の数値とから、それぞれある数値を選択し、段階的な数値範囲としてもよい。また、本開示中に記載されている上限の数値と下限の数値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、ポリマー中の各構造には、該当する構造が複数種含まれていてもよい。ポリマー中に各構造に該当する構造が複数種存在する場合、各構造の含有率又は含有量は、特に断らない限り、ポリマー中に存在する当該複数種の構造の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」には、連続する層と不連続な層とが含まれる。「層」の厚さは、均一であっても不均一であってもよい。「層」の面方向の外縁及び厚さ方向の外縁は、それぞれ、明確である場合と不明確である場合があり得る。「膜」についても同様である。
【0012】
<有機エレクトロニクス材料>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス材料は、ジフェニルメチルアンモニウムを含むイオン性化合物と、オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーとを含有する。
【0013】
[イオン性化合物]
イオン性化合物は、ジフェニルメチルアンモニウムとアニオンとを含む。イオン性化合物は、通常、ジフェニルメチルアンモニウムとアニオンとを、それらの電荷がつりあうように含む。重合開始剤としてジフェニルメチルアンモニウムを含むイオン性化合物を用いると、オキセタニル基のプロトン付加体の生成が容易に進行するために、電荷輸送性ポリマーを低温で硬化させることが可能となると考えられる。
【0014】
ジフェニルメチルアンモニウムは、下記式で表されるカチオンである。
【0015】
【化1】
【0016】
アニオンとしては、例えば、下記式(1A)~(5A)で表されるアニオンが挙げられる。
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、Eは酸素原子、Eは窒素原子、Eは炭素原子、Eはホウ素原子又はガリウム原子、Eはリン原子又はアンチモン原子を表し、Y~Yは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、R~R16は、それぞれ独立に電子求引性の1価の基(R及びR、R~Rから選択される少なくとも2つの基、R~R10から選択される少なくとも2つの基、及び、R11~R16から選択される少なくとも2つの基は、それぞれ互いに結合していてもよい。)を表す。]
【0019】
式(1A)~(5A)において、R~R16は、それぞれ独立に電子求引性の1価の基を表す。電子求引性の1価の基とは、水素原子と比べて、結合する原子側から電子を引きつけやすい置換基をいう。R~R16は、有機基であることが好ましい。有機基とは、炭素原子を1つ以上有する原子団をいう。有機基について、以下同様である。R及びR、R~Rから選択される少なくとも2つの基、R~R10から選択される少なくとも2つの基、及び、R11~R16から選択される少なくとも2つの基は、それぞれ互いに結合していてもよい。結合した基は、環状になっていてもよい。
【0020】
電子求引性の1価の基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基(例えば炭素数1~12、好ましくは炭素数1~6);トシル基等のアリールスルホニル基(例えば炭素数6~18、好ましくは炭素数6~12);メトキシスルホニル基等のアルキルオキシスルホニル基(例えば炭素数1~12、好ましくは炭素数1~6);フェノキシスルホニル基等のアリールオキシスルホニル基(例えば炭素数6~18、好ましくは炭素数6~12);ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基(例えば炭素数1~12、好ましくは炭素数1~6);ホルミルオキシ基、アセトキシ基等のアシルオキシ基(例えば炭素数1~20、好ましくは炭素数1~6);メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(例えば炭素数2~10、好ましくは炭素数2~7);フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の「アリールオキシカルボニル基又はヘテロアリールオキシカルボニル基」(例えば炭素数4~25、好ましくは炭素数5~15);トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の「アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基」にハロゲン原子が置換した「ハロアルキル基、ハロアルケニル基又はハロアルキニル基」(例えば炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6);ペンタフルオロフェニル基等のアリール基にハロゲン原子が置換したハロアリール基(例えば炭素数6~20、好ましくは炭素数6~12);ペンタフルオロフェニルメチル基等のアリールアルキル基にハロゲン原子が置換したハロアリールアルキル基(例えば炭素数7~19、好ましくは炭素数7~13)等が挙げられる。
【0021】
式(1A)~(5A)において、Y~Yは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。Y~Yが単結合の場合、EとRとが直接結合していることを意味する。2価の連結基として、例えば、下記式(1c)~(11c)のいずれかで表される連結基が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
[式中、Rは、それぞれ独立に水素原子又は1価の基を表す。]
【0024】
Rは、有機基であることが好ましい。Rは、電子受容性の向上、溶媒への溶解性等の観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基であることがより好ましい。これらの基は置換基を有していても、ヘテロ原子を有していてもよい。また、Rは、電子求引性の1価の基であることが好ましく、電子求引性の1価の基として、例えば、前記電子求引性の1価の基の例等が挙げられる。
【0025】
アニオンとしては、負電荷が主として酸素原子、窒素原子、炭素原子、ホウ素原子又はガリウム原子上にあるアニオンが好ましく、酸素原子、窒素原子、炭素原子又はホウ素原子上にあるアニオンがより好ましい。例えば、式(6A)~(9A)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0026】
【化4】
【0027】
[式中、R~R10は、それぞれ独立に電子求引性の1価の基(R及びR、R~Rから選択される少なくとも2つの基、及び、R~R10から選択される少なくとも2つの基は、それぞれ互いに結合していてもよい。)を表す。]
【0028】
~R10は、有機基であることが好ましい。電子求引性の1価の基としては、前記電子吸引性の1価の基の例等が挙げられる。
【0029】
アニオンは、電荷輸送性の観点から、式(9A)で表されるアニオンを含むことが好ましく、テトラキス(アリール)ホウ素アニオンを含むことが好ましい。テトラキス(アリール)ホウ素アニオンにおけるアリール基は、それぞれ独立に、置換又は非置換であってよい。
【0030】
アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ここでの芳香族炭化水素は、単環、縮合環、並びに、単環及び縮合環から選択される2個以上が化学結合により結合した多環からなる群から選択される。芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、9,10-ジヒドロフェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレン、トリフェニレン、ペンタセン、及びベンゾピレンからなる群から選択される。芳香族炭化水素は、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、又はフェナントレンであってよく、ベンゼン又はナフタレンであってよく、ベンゼンであってよい。
【0031】
置換のアリール基が有してよい「置換基」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、シリル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、及びアルキルオキシカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらの「置換基」は、置換又は非置換の「置換基」であってよく、置換の「置換基」が有してよい『置換基』は、例えば、前記群から選択される少なくとも1種を含んでよい。置換のアリール基は、ハロゲン置換アリール基であることが好ましく、フルオロアリール基であることがより好ましく、パーフルオロアリール基であることが更に好ましい。本開示において、ハロゲン基の例として、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0032】
イオン性化合物は、低温硬化性及び素子特性の観点から、下記式で表されるジフェニルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含むことが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
[電荷輸送性ポリマー]
電荷輸送性ポリマーは、オキセタニル基を有する。電荷輸送性ポリマーは、オキセタニル基(オキセタン基)を有することにより硬化性を示す。電荷輸送性ポリマーを含有する塗布膜を硬化させ、有機層を形成することで、有機層に、湿式プロセスにより上層を積層するために必要な耐溶剤性を付与することができる。本開示において、有機エレクトロニクス材料を用いて形成された、電荷輸送性ポリマーとイオン性化合物とを含有する硬化前の層を、塗布膜という場合がある。本開示において、「ポリマー」には、構造単位の数が小さい、いわゆる「オリゴマー」も含まれる。オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーと、ジフェニルメチルアンモニウムを含むイオン性化合物とを含有する有機エレクトロニクス材料によれば、低温領域で硬化させた場合であっても良好な耐溶剤性を有する有機層を形成できる。また、低温領域で硬化させた場合であっても、得られる有機層は高い導電性を有する傾向がある。
【0035】
例えば、正孔輸送層の形成に、オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーを用いた場合、正孔輸送層が耐溶剤性を有する層となる。これによって、その上層として発光層を、正孔輸送層の溶解を防止しつつ、インク組成物等を用いて形成することが可能となる。一般に、発光層は芳香族炭化水素系溶媒で塗布されることが多い。そのため、この例では、オキセタニル基を有する電荷輸送性ポリマーは、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒に浸漬しても溶解しにくい電荷輸送層を形成できる電荷輸送性ポリマーであることが好ましい。
【0036】
オキセタニル基は、置換又は非置換のオキセタニル基であってよく、オキセタニル基が有することができる置換基として、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0037】
電荷輸送性ポリマーは、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、フラン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位を含むことが好ましい。これらのいずれかの構造を含むことにより、電荷輸送性、特に正孔輸送性が向上する。好ましい実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、芳香族アミン構造を含む構造単位を含む。より好ましくは、電荷輸送性ポリマーは、フルオロ基により置換された芳香族アミン構造を含む構造単位を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、芳香族アミン構造を含む構造単位は、下記式(1)で表される構造単位、下記式(2-1)で表される構造単位、及び下記式(2-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む。本開示において、「式(1)で表される構造単位」を、「構造単位(1)」という場合がある。「式(2-1)で表される構造単位及び式(2-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位」を、「構造単位(2)」という場合がある。
【0039】
【化6】
【0040】
式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基であってもよい。
【0041】
芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素については、前記イオン性化合物における芳香族炭化水素に関する説明を適用することができる。
【0042】
Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換のベンゼン基、置換又は非置換のナフタレン基、又は、置換又は非置換のアントラセン基であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン基、又は、置換又は非置換のナフタレン基であることがより好ましい。
【0043】
芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、-R、-OR、-SR、-OCOR、-COOR、-SiR、及び、ハロゲン基からなる群から選択される置換基(以下、「置換基Ra」と記す場合がある。)が挙げられる。
【0044】
は、例えば、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される。R~Rは、例えば、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される。アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基について、上述のとおりである。
【0045】
アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は置換基を有してもよい。アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が置換基を有する場合の置換基の例として、前記置換基Raが挙げられ、好ましくは-Rである。置換基を有するアルキル基の例として、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、フルオロアルキル基等が挙げられる。置換基を有するアリール基の例として、アルキルアリール基、フルオロアリール基等が挙げられる。置換基を有するヘテロアリール基の例として、アルキルヘテロアリール基等が挙げられる。
【0046】
構造単位(1)おいて、少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基であってよい。フルオロアルキル基の炭素数は、1~4であってよく、1又は2であることが好ましい。フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0047】
例えば、深いHOMOレベルとHOMO-LUMO間の大きなエネルギーギャップとを両立する観点からは、構造単位(1)おいて、少なくとも1つのArがフルオロ基を有する芳香族炭化水素基であり、かつ、全てのArがフルオロアルキル基を有しない芳香族炭化水素基であってよい。
【0048】
例えば、より深いHOMOレベルを得る観点からは、構造単位(1)おいて、少なくとも1つのArがフルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素基であってよい。
【0049】
構造単位(1)に含まれるフルオロ基又はフルオロアルキル基の合計の個数は、例えば、1~8個、1~6個、1~4個、又は1~3個である。前記の個数である場合、HOMOレベルを深くする効果が得られやすい傾向がある。前記の個数である場合、電荷輸送性ポリマーの溶解性が低くなりすぎることを防止しやすい傾向がある。
【0050】
構造単位(1)は、例えば、下記式(1a)で表される構造単位を含む。
【0051】
【化7】
【0052】
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つのRは、フルオロ基又はフルオロアルキル基である。
【0053】
フルオロアルキル基の炭素数は、例えば1~4であり、1又は2であることが好ましい。フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。式中、フルオロ基又はフルオロアルキル基であるRの個数は、例えば、1~8個、1~6個、1~4個、又は1~3個である。
【0054】
フルオロ基又はフルオロアルキル基ではないRは、水素原子又は置換基である。置換基の例として、前記置換基Ra(ただし、ここではフルオロ基及びフルオロアルキル基を除く。)が挙げられる。置換基による影響を抑える観点から、フルオロ基又はフルオロアル
キル基ではないRの全てが水素原子であってもよい。
【0055】
【化8】
【0056】
式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基であってもよい。
【0057】
【化9】
【0058】
式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基であってもよい。
【0059】
置換又は非置換の芳香族炭化水素基については、前記構造単位(1)における置換又は非置換の芳香族炭化水素基に関する説明を適用することができる。Arは、非置換の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0060】
構造単位(2-1)中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換のベンゼン基、置換又は非置換のナフタレン基、又は、置換又は非置換のアントラセン基であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン基、又は、置換又は非置換のナフタレン基であることがより好ましく、置換又は非置換のベンゼン基であることが更に好ましい。
【0061】
構造単位(2-2)中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換のベンゼン基、置換又は非置換のナフタレン基、又は、置換又は非置換のアントラセン基であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン基、又は、置換又は非置換のナフタレン基であることがより好ましく、置換又は非置換のベンゼン基であることが更に好ましい。
【0062】
構造単位(2)は、例えば、下記式(2-1a)で表される及び下記式(2-2a)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む。
【0063】
【化10】
【0064】
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の例として、前記置換基Raが挙げられる。
【0065】
【化11】
【0066】
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の例として、前記置換基Raが挙げられる。
【0067】
電荷輸送性ポリマーは、オキセタニル基を含む末端基Pを有してよい。末端基Pは、オキセタニル基以外に任意の基を含んでもよい。末端基Pの例として、「オキセタニル基」、「オキセタニル基を含む基により置換された芳香環基」等が挙げられる。
【0068】
「芳香環基」は、例えば、炭素数2~30の芳香環基である。芳香環の例には、芳香族炭化水素及び芳香族複素環化合物が含まれる。芳香環の例には、単環、縮合多環式芳香族炭化水素、及び縮合多環式芳香族複素環化合物が含まれる。芳香族炭化水素は、上述のとおりである。芳香族複素環化合物は、例えば、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、フラン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、及びベンゾチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。芳香環は、独立した単環又は縮合環から選択される2個以上が結合した構造であってもよい。該構造としては、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼン、ビチオフェン等が挙げられる。芳香環基は置換基を有してもよく、置換基の例として、置換基Raが挙げられる。
【0069】
芳香環は、末端基Pを導入するためのモノマーの商業的な入手のしやすさ及び合成のしやすさの観点から、芳香族炭化水素であることが好ましく、ベンゼンであることがより好ましい。
【0070】
末端基Pの例として、下記式(P)で表される末端基が挙げられる。
【0071】
【化12】
【0072】
式中、Arは、置換又は非置換の芳香環基を表し、PGGは、オキセタニル基を含む基を表す。aは、0又は1を表し、zは、1以上の整数を表す。
【0073】
zの上限は、Arの構造によって定められる。例えば、Arがベンゼン環である場合、zは5以下であり、2以下であってよい。
【0074】
末端基Pの例として、下記式(P1)で表される末端基が挙げられる。式(P1)で表される末端基は、良好な耐熱性を得る観点から好ましい基である。
【0075】
【化13】
【0076】
式中、Arは、置換又は非置換の芳香環基を表し、Lは、連結基を表し、PGは、置換又は非置換のオキセタニル基を表す。a及びxは、それぞれ独立に0又は1を表し、yは、1以上の整数を表す。
【0077】
式(P1)で表される末端基の例として、下記式(P2)で表される末端基が挙げられる。式(P2)で表される末端基は、良好な耐熱性を得る観点から好ましい基である。
【0078】
【化14】
【0079】
式中、Arは、置換又は非置換の炭素数2~30の芳香環基を表し、Xは、下記式(X1)~(X10)のいずれかで表される2価の基を表し、Yは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、PGは、置換又は非置換のオキセタニル基を表す。a~cは、それぞれ独立に0又は1を表し、dは、1又は2を表す。ただし、dが2であるとき、aは1である。
【0080】
【化15】
【0081】
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~22の直鎖状、環状若しくは分岐
状のアルキル基、又は、炭素数2~30のアリール基若しくはヘテロアリール基を表す。
【0082】
電荷輸送性ポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐構造を有する分岐状であってもよい。電荷輸送性ポリマーは、例えば、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと1価の構造単位Tとを少なくとも含み、分岐部に含まれる3価以上の構造単位Bを更に含んでもよい。電荷輸送性ポリマーは、例えば、電荷輸送性を有し、分岐部に含まれる3価以上の構造単位Bと1価の構造単位Tとを少なくとも含み、2価の構造単位を更に含んでもよい。分子鎖は、2価の構造単位及び3価の構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を含む鎖状構造を有する。分岐状の電荷輸送性ポリマーは、耐熱性に優れ、さらに、末端基を多く導入することができることから、良好な溶解性及び硬化性を示す。電荷輸送性ポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。電荷輸送性ポリマーにおいて、各構造単位は、1個~3個以上の結合部位において互いに結合している。
【0083】
電荷輸送性ポリマーは、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、フラン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位を、例えば、構造単位L、構造単位B、又は構造単位Lと構造単位Bの両方に含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、1つの構造単位Bと、該1つの構造単位Bに結合する3つ以上の構造単位Lとを少なくとも有する分岐構造を含む。例えば、電荷輸送性ポリマーは、1つの構造単位Bと、該1つの構造単位Bに結合する3つ以上の構造単位Lとを有し、更に、前記3つ以上の構造単位Lのそれぞれにつき、該構造単位Lに結合する別の1つの構造単位Bと、該別の1つの構造単位Bに結合する別の2つ以上の構造単位Lとを少なくとも有する多重分岐構造を含む。
【0085】
電荷輸送性ポリマーに含まれる多重分岐構造の例として、以下が挙げられる。構造中、「L」は2価の構造単位を、「B」は3価以上の構造単位を、「T」は1価の構造単位を表す。以下の構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。複数のBは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。複数のTは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。なお、電荷輸送性ポリマーは、以下の構造を有するポリマーに限定されない。
【0086】
【化16】
【0087】
(構造単位L)
構造単位Lは、電荷輸送性を有する2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ビフェニレン構造、ターフェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、N-アリールフェノキサジン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
【0088】
いくつかの実施形態において、構造単位Lは、優れた正孔輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、フラン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される1種以上の構造を含むことが好ましく、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フラン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される1種以上の構造を含むことがより好ましく、置換又は非置換の、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造からなる群から選択される1種以上の構造を含むことがより好ましい。他の実施形態において、構造単位Lは、優れた電子輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、フルオレン構造、ベンゼン構造、フェナントレン構造、ピリジン構造、及びキノリン構造からなる群から選択される1種以上の構造を含むことが好ましい。
【0089】
(構造単位B)
構造単位Bは、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合に、分岐部に含まれる3価以上の構造単位である。構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、例えば6価以下であり、好ましくは3価又は4価である。構造単位Bは、電荷輸送性を有する単位であってよい。例えば、構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。例えば、構造単位Bは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。
【0090】
(構造単位T)
構造単位Tは、電荷輸送性ポリマーの末端部に含まれる1価の構造単位であり、末端基を含む構造単位である。構造単位Tは、少なくとも、末端基Pを含む構造単位TPと、構造単位TPとは異なる任意の構造単位TOとを含んでもよい。構造単位TOは、末端基Pを含まない。
【0091】
構造単位TPは、末端基Pを含む構造単位である。上記において説明した末端基Pが構造単位TPであってもよく、構造単位TPの例として、式(P1)で表される基が挙げられる。
【0092】
構造単位TOは、特に限定されず、例えば、置換又は非置換の、芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。一実施形態において、構造単位TOは、電荷の輸送性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。価数を除き、構造単位TOが構造単位Lと同じ構造を有していてもよい。一実施形態において、構造単位Tは、電荷の輸送性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。
【0093】
構造単位TOの具体例として、下記式(3)で表される構造単位が挙げられる。構造単位TOは、以下に限定されない。
【0094】
【化17】
【0095】
Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。例えば、Rは、それぞれ独立に、-R、-OR、-SR、-OCOR、-COOR、-SiR、及び、ハロゲン基からなる群から選択される。R~Rは、構造単位(1)において説明したとおりである。
【0096】
構造単位TOは、例えば、下記式(3-1)で表される構造単位及び(3-2)で表さ
れる構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む。
【0097】
【化18】
【0098】
式中、n及びmは、それぞれ独立に1~4の整数を表す。nとmは、互いに同じであっ
ても異なってもよく、同じであることが好ましい。
【0099】
【化19】
【0100】
式中、nは、4~20の整数を表す。nは、例えば4~16であり、4~12であるこ
とが好ましい。
【0101】
電荷輸送性ポリマーにおいて、オキセタニル基は、少なくとも電荷輸送性ポリマーの末端部(すなわち、構造単位T)に導入されていることが好ましい。オキセタニル基は、末端以外の部分(すなわち、構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外の部分の両方に導入されていてもよい。硬化性及び電荷輸送性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合、オキセタニル基は、電荷輸送性ポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖の両方に導入されていてもよい。
【0102】
電荷輸送性ポリマーは、オキセタニル基以外の重合性官能基を有してもよい。例えば、電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、十分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上、3個以上、5個以上、10個以上、又は20個以上であってよい。重合性官能基数は、電荷輸送性を保つ観点から、1,000個以下、800個以下、700個以下、600個以下、又は500個以下であってよい。
【0103】
電荷輸送性ポリマーが末端にオキセタニル基を有する場合、良好な硬化性を得る観点から、構造単位TPの比率は、末端の構造単位の合計を基準として、例えば、5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、又は40モル%以上であってよい。構造単位TPの比率は、良好な電荷輸送性を得るという観点から、例えば、末端の構造単位の合計を基準として、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、65モル%以下、又は60モル%以下であってよい。
【0104】
電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基の含有量及び比率は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、重合性官能基の仕込み量(例えば、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量×該モノマーあたりの重合性官能基数)、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量、電荷輸送性ポリマーの質量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。重合性官能基の含有量は、電荷輸送性ポリマーのH NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、電荷輸送性ポリマーの質量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
【0105】
(数平均分子量)
直鎖状の電荷輸送性ポリマーの場合、電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶媒への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、例えば、500以上、1,000以上、2,000以上、又は3,000以上であってよい。数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、例えば、200,000以下、100,000以下、50,000以下、又は20,000以下であってよい。
【0106】
分岐状の電荷輸送性ポリマーの場合、電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶媒への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、例えば、500以上、1,000以上、2,000以上、又は5,000以上であってよい。数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、例えば、1,000,000以下、100,000以下、50,000以下、又は30,000以下であってよい。
【0107】
(質量平均分子量)
直鎖状の電荷輸送性ポリマーの場合、電荷輸送性ポリマーの質量平均分子量は、溶媒への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。質量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、例えば、1,000以上、3,000以上、5,000以上、又は10,000以上であってよい。質量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、例えば、500,000以下、300,000以下、150,000以下、100,000以下、又は50,000以下であってよい。
【0108】
分岐状の電荷輸送性ポリマーの場合、電荷輸送性ポリマーの質量平均分子量は、溶媒への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。質量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、例えば、1,000以上、5,000以上、10,000以上、又は30,000以上であってよい。質量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、例えば、1,000,000以下、700,000以下、400,000以下、200,000以下、又は100,000以下であってよい。
【0109】
数平均分子量及び質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて求めることができる。
【0110】
(構造単位の比率)
電荷輸送性ポリマーが構造単位Lを含む場合、構造単位Lの比率は、十分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、例えば、10モル%以上、20モル%以上、又は30モル%以上であってよい。構造単位Lの比率は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、例えば、97モル%以下、92モル%以下、又は85モル%以下であってよい。
【0111】
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Tの比率は、溶解性及び硬化性の観点から、全構造単位を基準として、例えば、3モル%以上、8モル%以上、又は15モル%以上であってよい。前記範囲は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点からも好ましい範囲である。構造単位Tの比率は、十分な電荷輸送性を得る観点から、例えば、60モル%以下、55モル%以下、又は50モル%以下であってよい。
【0112】
電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位Bの比率は、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、例えば、1モル%以上、5モル%以上、又は10モル%以上であってよい。構造単位Bの比率は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な電荷輸送性を得る観点から、例えば、50モル%以下、40モル%以下、又は30モル%以下であってよい。
【0113】
電荷輸送性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、構造単位L及び構造単位Tの比率(モル比)は、例えば、L:T=100:1~70、100:3~50、又は100:5~30であってよい。電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの比率(モル比)は、例えば、L:T:B=100:10~200:10~100、100:20~180:20~90、又は100:40~160:30~80であってよい。
【0114】
構造単位の比率は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。構造単位の比率は、電荷輸送性ポリマーのH NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。前述の末端基に関する比率も、仕込み量又はH NMRスペクトルを利用する方法により求めることができる。
【0115】
電荷輸送性ポリマーの重合度(構造単位の単位数)は、塗布膜の膜質を安定化させる観点から、例えば、5以上、10以上、又は20以上であってよい。重合度は、溶媒への溶解性の観点から、例えば、1,000以下、700以下、又は500以下であってよい。
【0116】
重合度は、電荷輸送性ポリマーの質量平均分子量、構造単位の分子量、及び構造単位の比率を利用し、平均値として求めることができる。
【0117】
(製造方法)
電荷輸送性ポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、薗頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物の間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせる。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
【0118】
カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。電荷輸送性ポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第2010/140553号の記載を参照できる。
【0119】
[任意成分]
有機エレクトロニクス材料は、前記イオン性化合物及び前記電荷輸送性ポリマー以外のドーパント、重合開始剤、イオン性化合物、電荷輸送性ポリマー、添加剤等の任意の成分を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0120】
[含有量]
イオン性化合物の含有量は、有機エレクトロニクス材料の硬化性を向上させる観点から、電荷輸送性ポリマーに対して、例えば、1質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよい。成膜性を良好に保つ観点から、電荷輸送性ポリマーに対して、例えば、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。
【0121】
電荷輸送性ポリマーの含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の質量に対して、例えば、50質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよい。電荷輸送性ポリマーとイオン性化合物の合計の含有量は、有機エレクトロニクス材料の質量に対して、100質量%とすることも可能である。
【0122】
<インク組成物>
インク組成物は、前記有機エレクトロニクス材料と該材料を溶解又は分散し得る溶媒とを含有する。インク組成物を用いることによって、塗布法といった簡便な方法によって有機層を容易に形成できる。
【0123】
[溶媒]
溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、フェニルシクロヘキサン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、3-フェノキシトルエン等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、及び芳香族エーテルであり、より好ましくは、芳香族炭化水素、芳香族エーテル、及び芳香族エステルであり、更に好ましくは、芳香族炭化水素である。
【0124】
[添加剤]
インク組成物は、更に、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0125】
[含有量]
インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの含有量が、例えば、0.1質量%以上となる量、0.2質量%以上となる量、又は0.5質量%以上となる量であってよい。溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの含有量が、例えば、20質量%以下となる量、15質量%以下となる量、又は10質量%以下となる量であってよい。
【0126】
<有機層>
有機層は、前記有機エレクトロニクス材料又は前記インク組成物を用いて形成された層であって、前記電荷輸送性ポリマーの硬化物を含む。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた硬化前の塗布膜を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
【0127】
塗布膜に、光照射、加熱処理等の処理を加えることにより、電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させ、塗布膜の溶解度を変化させることができる。変化後に得られる硬化した有機層(硬化膜)の上に他の層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。有機層の形成方法については、例えば、国際公開第2010/140553号の記載を参照できる。塗布膜の加熱処理は、大気雰囲気下又は窒素雰囲気下で行うことができる。電荷輸送性の向上の観点からは、窒素雰囲気下で塗布膜を加熱処理することが好ましい。前記イオン性化合物は、窒素雰囲気下で塗布膜を加熱処理する場合に、特に有機層の耐溶剤性を向上させることができる。
【0128】
硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、例えば、0.1nm以上、1nm以上、又は3nm以上である。有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、例えば、300nm以下、200nm以下、又は100nm以下である。
【0129】
<有機エレクトロニクス素子>
有機エレクトロニクス素子は、少なくとも前記有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機発光ダイオード(OLED)等の有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。
【0130】
[有機EL素子]
有機EL素子は、少なくとも前記有機層を有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。各層の形成には、公知の材料を用いることができる。公知の材料について、例えば、国際公開第2010/140553号の記載を参照できる。有機EL素子は、好ましくは、有機層を発光層又は機能層として有し、より好ましくは機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。有機ELの構造及び製造方法については、例えば、国際公開第2010/140553号の記載を参照できる。
【0131】
前記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として使用することが好ましく、少なくとも正孔注入層として使用することが一層好ましい。上記のとおり、有機エレクトロニクス材料を含むインク組成物を用いることにより、これらの層を容易に形成することができる。
【0132】
有機EL素子が、前記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を正孔輸送層として有し、更に正孔注入層を有する場合、正孔注入層には公知の材料を使用できる。有機EL素子が、前記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を正孔注入層として有し、更に正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層には公知の材料を使用できる。有機エレクトロニクス材料を、正孔注入層及び正孔輸送層の両方に用いることも好ましい。
【0133】
<表示素子、照明装置、表示装置>
表示素子は、前記有機EL素子を備えている。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
【0134】
照明装置は、前記有機EL素子を備えている。表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えている。例えば、表示装置は、バックライトとして前記照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とできる。
【実施例0135】
本発明の実施形態について実施例により具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の
実施例に限定されない。
【0136】
<イオン性化合物の合成>
(イオン性化合物1の合成)
N,N-ジフェニルメチルアミン5.497g(30mmol)にアセトン75gと純水15gを加え撹拌し、N,N-ジフェニルメチルアミンを含む液体を得た。得られた液体に、10質量%塩化水素水溶液11.0gをゆっくりと滴下し、滴下終了後、1時間にわたり撹拌した。撹拌後の液体から溶媒を減圧溜去した。次いで、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(10質量%水溶液)231.7g(33mmol)を混合し、1時間にわたり撹拌した。析出物を5回水洗し、乾燥させ、イオン性化合物1を得た。イオン性化合物1の化学構造を下記式に示す。
【0137】
【化20】
【0138】
(イオン性化合物2の合成)
N,N-ジメチルオクタデシルアミン8.927g(30mmol)にアセトン75gと純水15gを加え撹拌し、N,N-ジメチルオクタデシルアミンを含む液体を得た。得られた液体に、10質量%塩化水素水溶液11.0gをゆっくりと滴下し、滴下終了後、1時間にわたり撹拌した。撹拌後の液体から溶媒を減圧溜去した。次いで、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(10質量%水溶液)231.7g(33mmol)を混合し、1時間にわたり撹拌した。析出物を5回水洗し、乾燥させ、イオン性化合物2を得た。イオン性化合物2の構造式を以下に示す。
【0139】
【化21】
【0140】
<電荷輸送性ポリマーの合成>
(Pd触媒の調製)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、ガラス製のサンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム73.2mg(80μmol)を秤取り、トルエンを15mL加え、30分間撹拌した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製のサンプル管にトリス(t-ブチル)ホスフィン129.6mg(640μmol)を秤取り、トルエンを5mL加え、5分間撹拌した。これらの液体を混合し、80℃で2時間撹拌し、得られた液体から孔径0.2μmのメンブレンフィルターで不溶物を除去した後の液体を触媒とした。全ての溶媒は30分間以上にわたり窒素バブルにより脱気した後に使用した。
【0141】
(電荷輸送性ポリマー1の合成)
200mLの三口丸底フラスコ(ガラス製)に、下記モノマー1を5.15g(10.0mmol)、下記モノマー2を1.93g(4.0mmol)、下記モノマー3を1.08g(4.0mmol)、下記モノマー4を1.17g(4.0mmol)及びトルエンを90mL加え、1質量%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液を7.8mL及び3M水酸化カリウム水溶液を14.2mL加えた。全ての溶媒は30分以上窒素バブルにより脱気した後に使用した。反応液が入ったフラスコに還流冷却管及び窒素ガスフロー管取り付け、60℃に加熱したオイルバスにフラスコを浸し30分間撹拌した。続けて上記調整したPd触媒液を2.0mL加え、オイルバスの温度を120℃にして反応を行った。反応液を、2時間、加熱還流した。ここまでの操作は窒素気流下で行った。
【0142】
【化22】
【0143】
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール-水(9:1)混合液に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール-水(9:1)混合液で洗浄した。得られた沈殿を酢酸エチルで洗浄し、溶出している固形物を真空乾燥した。乾燥した固形物をトルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、一晩撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物とをろ過して取り除き、得られた液体をメタノールに注いだ。沈殿物を吸引ろ過して、得られた沈殿物をメタノールで洗浄した後、固形物を真空乾燥し、電荷輸送性ポリマー1を得た。電荷輸送性ポリマー1の数平均分子量は18,000、質量平均分子量は55,000であった。電荷輸送性ポリマー1は、300℃加熱時の熱質量減少が、加熱前の質量に対し5質量%以下であった。
【0144】
(数平均分子量及び質量平均分子量の測定)
数平均分子量及び質量平均分子量は、GPCにより測定した。検量線は、標準ポリスチレンのサンプルを用いて近似した。測定条件は以下のとおりである。
装置 :高速液体クロマトグラフ Prominence 株式会社島津製作所
送液ポンプ(LC-20AD)
脱気ユニット(DGU-20A)
オートサンプラ(SIL-20AHT)
カラムオーブン(CTO-20A)
PDA検出器(SPD-M20A)
示差屈折率検出器(RID-20A)
カラム :Gelpack(登録商標)昭和電工マテリアルズ・テクノサービス株式会社
GL-A160S(製造番号:686-1J27)
GL-A150S(製造番号:685-1J27)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)(HPLC用、安定剤含有)富士フイルム和光純薬工業株式会社
試料濃度 :ポリマー20mg/THF18mL
注入量 :20μL
流速 :1mL/min
カラム温度 :40℃
検出波長 :254nm
分子量標準物質:PStQuick A/B/C 東ソー株式会社
【0145】
[実施例1]
[耐溶剤性評価]
有機エレクトロニクス材料を用いて有機層を形成し、残膜率測定により耐溶剤性(すなわち、電荷輸送性ポリマーの硬化性)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0146】
(有機層の形成)
20mLスクリュー管に、イオン性化合物1(10mg)を量り取り、クロロベンゼン(5mL)を加えて撹拌し、重合開始剤溶液を得た。次いで、9mLスクリュー管に、電荷輸送性ポリマー1(10mg)及びクロロベンゼン(738μL)を加え、電荷輸送性ポリマーを溶解させた。その後、前記9mLスクリュー管に、重合開始剤溶液155μLを加え、撹拌し、インク組成物を調製した。インク組成物を、大気下で石英基板(縦22mm×横29mm×厚0.7mm)上に滴下し、スピンコーター(回転数3,000min-1)により塗布膜を成膜した。続いて、各温度条件で30分間、窒素雰囲気下で加熱による硬化を実施し、石英基板上に膜厚40nmの有機層を形成した。
【0147】
(残膜率の測定)
分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2700」)を用いて、石英基板上に形成した有機層の吸光度Aを測定した。続いて、測定後の有機層が上面になるように、25℃の環境下で、トルエン(10mL、25℃)に浸漬し、10分静置した。トルエン浸漬後の有機層の吸光度Bを測定し、形成した有機層の吸光度Aとトルエン浸漬後の有機層の吸光度Bから、以下の式を用いて、残膜率を算出した。なお、吸光度の値は、有機層の極大吸収波長における値を用いた。残膜率が大きいほど、耐溶剤性が優れている。
【0148】
【数1】
【0149】
[実施例2]
[電荷輸送性評価]
有機エレクトロニクス材料を用いてHOD(ホールオンリーデバイス)を作製し、導電性及び耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
【0150】
(HODの作製)
20mLスクリュー管に、イオン性化合物1(10mg)を量り取り、クロロベンゼン(5mL)を加えて撹拌し、重合開始剤溶液を得た。次いで、9mLスクリュー管に、電荷輸送性ポリマー1(30mg)及びクロロベンゼン(723μL)を加え、電荷輸送性ポリマーを溶解させた。その後、前記9mLスクリュー管に、重合開始剤溶液152μLを加え、撹拌し、インク組成物を調製した。インク組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタ(孔径0.2μm)にてろ過した後に、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板(縦22mm×横29mm×厚0.7mm)上に滴下し、スピンコーターにより塗布膜を成膜した。続いて、表2に示す温度において30分間、窒素雰囲気下で加熱硬化を実施し、石英基板上に膜厚100nmの有機層を形成した。ガラス基板を、真空蒸着機中に移し、有機層上にAl(100nm)を蒸着法で成膜し、封止処理を行ってHODを作製した。
【0151】
HODに電圧を印加し、電流密度300mA/cm時の電圧を測定した。電圧の値が小さいほど、正孔注入機能が優れている。
【0152】
[比較例1及び2]
イオン性化合物1をイオン性化合物2に変更した以外は、実施例1と同じ方法で耐溶剤性と電荷輸送性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】