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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179001
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/302 201
H01L21/316 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091976
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 一将
(72)【発明者】
【氏名】戸根川 大和
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 有紀
【テーマコード(参考)】
5F004
5F058
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA19
5F004BB18
5F004BB19
5F004BB24
5F004BB26
5F004BB29
5F004BC01
5F004BC03
5F004BC06
5F004BD07
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA20
5F004DA24
5F004DA26
5F004DB00
5F004EA34
5F004FA01
5F004FA08
5F058BA20
5F058BC12
5F058BF55
5F058BF60
5F058BF62
5F058BG01
5F058BG02
5F058BG03
5F058BG04
5F058BH12
(57)【要約】
【課題】対象膜のエッチング量を制御できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による基板処理方法は、珪素と炭素と窒素とを含む対象膜を表面に有する基板を準備する工程と、前記対象膜に水素ガス及び酸素ガスを供給し、前記対象膜の表層を酸化させて酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜をエッチングする工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素と炭素と窒素とを含む対象膜を表面に有する基板を準備する工程と、
前記対象膜に水素ガス及び酸素ガスを供給し、前記対象膜の表層を酸化させて酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜をエッチングする工程と、
を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチングする工程は、
前記対象膜にフッ素含有ガス及び塩基性ガスを含むガスを供給し、前記対象膜の少なくとも一部を反応生成物に変質させる工程と、
前記基板を加熱して前記反応生成物を昇華させる工程と、
を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスであり、
前記塩基性ガスは、アンモニアガスである、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチングする工程は、前記酸化膜を形成する工程と同じ処理容器内で行われる、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記処理容器は、前記基板を棚状に複数収容する、
請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記対象膜は、珪素、炭素及び窒素とは異なる元素を更に含む、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記元素は、酸素、ホウ素又はこれらの組み合わせである、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記対象膜は、SiCN膜である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
処理容器と、
前記処理容器にガスを供給するガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
珪素と炭素と窒素とを含む対象膜を表面に有する基板を準備する工程と、
前記対象膜に水素ガス及び酸素ガスを供給し、前記対象膜の表層を酸化させて酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜をエッチングする工程と、
を実行するように構成される、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的酸化物除去処理によりシリコン窒化膜をエッチングする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-343094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、対象膜のエッチング量を制御できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理方法は、珪素と炭素と窒素とを含む対象膜を表面に有する基板を準備する工程と、前記対象膜に水素ガス及び酸素ガスを供給し、前記対象膜の表層を酸化させて酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜をエッチングする工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、対象膜のエッチング量を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
図2図2は、実施形態に係る基板処理方法を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係る基板処理方法を示すタイムチャートである。
図4図4は、実施形態に係る基板処理装置を示す概略図である。
図5図5は、エッチング量を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔基板処理方法〕
図1図3を参照し、実施形態に係る基板処理方法について説明する。図1に示されるように、実施形態に係る基板処理方法は、準備工程S10と、酸化工程S20と、エッチング工程S30とを有する。
【0010】
準備工程S10では、図2(a)に示されるように、対象膜102を表面に有する基板101を準備する。基板101は、例えばシリコンウエハであってよい。対象膜102は、例えば珪素(Si)と炭素(C)と窒素(N)とを含む膜であってよい。対象膜102は、例えばSiCN膜であってよい。対象膜102は、例えば珪素、炭素及び窒素とは異なる元素を更に含んでもよい。異なる元素は、例えば酸素(O)、ホウ素(B)又はこれらの組み合わせであってよい。
【0011】
酸化工程S20は、準備工程S10の後に行われる。酸化工程S20では、図2(b)に示されるように、対象膜102の表層を酸化させて酸化膜103を形成する。酸化工程S20は、例えば図3に示されるように、基板101の温度を第1温度T1に維持した状態で、対象膜102に水素ガス及び酸素ガスを供給し、対象膜102の表層を酸化させて酸化膜103を形成することを含む。第1温度T1は、例えば700℃以上800℃以下であってよい。酸化工程S20は、水素ガス及び酸素ガスと同時に不活性ガスを供給することを含んでもよい。
【0012】
エッチング工程S30は、酸化工程S20の後に行われる。エッチング工程S30では、図2(c)に示されるように、酸化膜103を選択的にエッチングする。エッチング工程S30は、例えば図3に示されるように、降温工程S31と、COR工程S32と、昇温工程S33と、PHT工程S34とを含む。
【0013】
降温工程S31は、図3に示されるように、基板101の温度を第1温度T1から第2温度T2に低下させることを含む。第2温度T2は、例えば第1温度T1よりも低い温度であってよい。第2温度T2は、例えば50℃以上100℃以下であってよい。
【0014】
COR工程S32は、降温工程S31において基板101の温度が第2温度T2に安定した後に行われる。COR工程S32は、プラズマを生成することなく、化学的にエッチングを行う化学的酸化物除去処理(COR:chemical oxide removal)により、対象膜102の表層を含む少なくとも一部を反応生成物に変質させることを含む。COR工程S32は、例えば基板101の温度を第2温度T2に維持することを含んでよい。COR工程S32は、例えば図3に示されるように、対象膜102にフッ素含有ガス及び塩基性ガスを供給し、フッ素含有ガス及び塩基性ガスを酸化膜103と反応させて珪フッ化アンモニウム[(NHSiF]を生成することを含む。フッ素含有ガスは、例えばフッ化水素(HF)ガスであってよい。塩基性ガスは、例えばアンモニア(NH)ガスであってよい。COR工程S32は、フッ素含有ガス及び塩基性ガスと同時に、不活性ガスを供給することを含んでもよい。
【0015】
昇温工程S33は、COR工程S32の後に行われる。昇温工程S33は、基板101の温度を第2温度T2から第3温度T3に上昇させることを含む。第3温度T3は、例えば第1温度T1よりも低く、かつ第2温度T2よりも高い温度であってよい。第3温度T3は、第1温度T1よりも高い温度であってもよい。第3温度T3は、例えば300℃以上であってよい。
【0016】
PHT工程S34は、昇温工程S33の後に行われる。PHT工程S34は、例えば図3に示されるように、基板101の温度を第3温度T3に維持した状態で加熱を行うPHT(post heat treatment)により、反応生成物、例えば珪フッ化アンモニウムを昇華させることを含む。
【0017】
エッチング工程S30がCOR工程S32とPHT工程S34とを含む場合、対象膜102を残存させて、酸化膜103を選択的にエッチングして除去できる。このため、酸化工程S20において対象膜102の表層に形成する酸化膜103の厚さを調整することにより、対象膜102のエッチング量を制御できる。酸化膜103の厚さは、例えば酸化工程S20において対象膜102に水素ガス及び酸素ガスを供給する時間を制御することで調整できる。酸化膜103の厚さは、例えば酸化工程S20において第1温度T1を制御することで調整できる。
【0018】
エッチング工程S30は、例えば酸化工程S20と同じ処理容器内で行われてよい。この場合、1つの処理容器内で対象膜をエッチングできる。エッチング工程S30は、例えば酸化工程S20と異なる処理容器内で行われてもよい。この場合、降温工程S31及び昇温工程S33を省略できる。
【0019】
エッチング工程S30は、例えば基板101を棚状に複数収容する処理容器内で行われてもよい。この場合、複数の基板101に対して一度に対象膜102のエッチングを行うことができる。このため、生産性が向上する。
【0020】
〔基板処理装置〕
図4を参照し、実施形態に係る基板処理装置1について説明する。図4に示されるように、基板処理装置1は、複数の基板Wに対して一度に処理を行うバッチ式の装置である。
【0021】
基板処理装置1は、処理容器10と、ガス供給部30と、排気部40と、加熱部50と、制御部80とを備える。
【0022】
処理容器10は、内部を減圧可能であり、基板Wを収容する。処理容器10は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管11と、下端が開放されて内管11の外側を覆う有天井の円筒形状の外管12とを有する。内管11及び外管12は、石英等の耐熱材料により形成される。内管11及び外管12は、同軸状に配置された2重管構造を有する。
【0023】
内管11の天井は、例えば平坦であってよい。内管11の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガスノズルを収容する収容部13が形成される。例えば、内管11の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部14を形成し、凸部14内を収容部13として形成している。
【0024】
収容部13に対向させて内管11の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って矩形状の開口15が形成される。
【0025】
開口15は、内管11内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口15の長さは、ボート16の長さと同じであるか、又は、ボート16の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成される。
【0026】
処理容器10の下端は、円筒形状のマニホールド17によって支持される。マニホールド17は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド17の上端には、フランジ18が形成される。フランジ18は、外管12の下端を支持する。フランジ18と外管12との下端との間には、Oリング等のシール部材19が設けられる。これにより、外管12内が気密に維持される。
【0027】
マニホールド17の上部の内壁には、円環状の支持部20が設けられる。支持部20は、内管11の下端を支持する。マニホールド17の下端の開口には、蓋体21がOリング等のシール部材22を介して気密に取り付けられる。これにより、処理容器10の下端の開口、すなわち、マニホールド17の開口が気密に塞がれる。蓋体21は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0028】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール23を介して回転軸24が貫通させて設けられる。回転軸24の下部は、ボートエレベータよりなる昇降機構25のアーム25Aに回転自在に支持される。
【0029】
回転軸24の上端には、回転プレート26が設けられる。回転プレート26上には、石英製の保温台27を介して基板Wを保持するボート16が載置される。ボート16は、回転軸24を回転させることにより回転する。ボート16は、昇降機構25を昇降させることによって蓋体21と一体として上下動する。これにより、ボート16は処理容器10内に対して挿脱される。ボート16は、処理容器10内に収容可能である。ボート16は、複数(例えば50~150枚)の基板Wを上下方向に間隔を有して略水平に保持する。
【0030】
ガス供給部30は、前述した基板処理方法で用いられる各種の処理ガスを内管11内に導入可能に構成される。ガス供給部30は、水素供給部31と、酸素供給部32と、フッ化水素供給部33と、アンモニア供給部34とを含む。
【0031】
水素供給部31は、処理容器10内に水素供給管31aを備えると共に、処理容器10の外部に水素供給経路31bを備える。水素供給経路31bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、水素源31c、マスフローコントローラ31d、バルブ31eが設けられる。これにより、水素源31cの水素ガスは、バルブ31eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ31dにより所定の流量に調整される。水素ガスは、水素供給経路31bから水素供給管31aに流入して、水素供給管31aから処理容器10内に吐出される。
【0032】
酸素供給部32は、処理容器10内に酸素供給管32aを備えると共に、処理容器10の外部に酸素供給経路32bを備える。酸素供給経路32bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、酸素源32c、マスフローコントローラ32d、バルブ32eが設けられる。これにより、酸素源32cの酸素ガスは、バルブ32eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ32dにより所定の流量に調整される。酸素ガスは、酸素供給経路32bから酸素供給管32aに流入して、酸素供給管32aから処理容器10内に吐出される。
【0033】
フッ化水素供給部33は、処理容器10内にフッ化水素供給管33aを備えると共に、処理容器10の外部にフッ化水素供給経路33bを備える。フッ化水素供給経路33bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、フッ化水素源33c、マスフローコントローラ33d、バルブ33eが設けられる。これにより、フッ化水素源33cのフッ化水素ガスは、バルブ33eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ33dにより所定の流量に調整される。フッ化水素ガスは、フッ化水素供給経路33bからフッ化水素供給管33aに流入して、フッ化水素供給管33aから処理容器10内に吐出される。フッ化水素ガスは、フッ素含有ガスの一例である。
【0034】
アンモニア供給部34は、処理容器10内にアンモニア供給管34aを備えると共に、処理容器10の外部にアンモニア供給経路34bを備える。アンモニア供給経路34bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、アンモニア源34c、マスフローコントローラ34d、バルブ34eが設けられる。これにより、アンモニア源34cのアンモニアガスは、バルブ34eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ34dにより所定の流量に調整される。アンモニアガスは、アンモニア供給経路34bからアンモニア供給管34aに流入して、アンモニア供給管34aから処理容器10内に吐出される。アンモニアガスは、塩基性ガスの一例である。
【0035】
各ガス供給管(水素供給管31a、酸素供給管32a、フッ化水素供給管33a、アンモニア供給管34a)は、マニホールド17に固定される。各ガス供給管は、例えば石英により形成される。各ガス供給管は、内管11の近傍位置を鉛直方向に沿って直線状に延在すると共に、マニホールド17内においてL字状に屈曲して水平方向に延在することで、マニホールド17を貫通する。各ガス供給管同士は、内管11の周方向に沿って並んで設けられ、互いに同じ高さに形成される。
【0036】
水素供給管31aにおいて内管11内に位置する部位には、複数の水素吐出口31fが設けられる。酸素供給管32aにおいて内管11内に位置する部位には、複数の酸素吐出口32fが設けられる。フッ化水素供給管33aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のフッ化水素吐出口33fが設けられる。アンモニア供給管34aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のアンモニア吐出口34fが設けられる。
【0037】
各吐出口(水素吐出口31f、酸素吐出口32f、フッ化水素吐出口33f、アンモニア吐出口34f)は、それぞれのガス供給管の延在方向に沿って所定の間隔ごとに形成される。各吐出口は、水平方向に向けてガスを放出する。各吐出口同士の間隔は、例えばボート16に保持される基板Wの間隔と同じに設定される。各吐出口の高さ方向の位置は、上下方向に隣り合う基板W間の中間位置に設定されている。これにより、各吐出口は隣り合う基板W間の対向面にガスを効率的に供給できる。
【0038】
ガス供給部30は、複数種類のガスを混合して1つの供給管から混合したガスを吐出してもよい。各ガス供給管(水素供給管31a、酸素供給管32a、フッ化水素供給管33a、アンモニア供給管34a)は、互いに異なる形状や配置であってもよい。また、基板処理装置1は、水素ガス、酸素ガス、フッ化水素、アンモニアガスの他に、別のガスを供給する供給管を更に備えてもよい。
【0039】
排気部40は、内管11内から開口15を介して排出され、内管11と外管12との間の空間P1を介してガス出口41から排出されるガスを排気する。ガス出口41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成される。ガス出口41には、排気通路42が接続される。排気通路42には、圧力調整弁43及び真空ポンプ44が順次介設されて、処理容器10内を排気できるようになっている。
【0040】
加熱部50は、外管12の周囲に設けられている。加熱部50は、例えばベースプレート28上に設けられている。加熱部50は、外管12を覆うように円筒形状を有する。加熱部50は、例えば発熱体を含み、処理容器10内の基板Wを加熱する。
【0041】
制御部80は、基板処理装置1の各部の動作を制御する。制御部80は、例えばコンピュータであってよい。基板処理装置1の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体90に記憶されている。記憶媒体90は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0042】
〔基板処理装置の動作〕
基板処理装置1において実施形態に係る基板処理方法を実施する場合の動作について説明する。
【0043】
まず、制御部80は、昇降機構25を制御して、複数枚の基板Wを保持したボート16を処理容器10内に搬入し、蓋体21により処理容器10の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。各基板Wは、表面に対象膜102を有する基板101である。
【0044】
続いて、制御部80は、酸化工程S20を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部80は、排気部40を制御して処理容器10内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して基板Wの温度を第1温度T1に調整して維持する。次いで、制御部80は、ガス供給部30を制御して処理容器10内に水素ガス及び酸素ガスを供給する。これにより、対象膜102の表層が酸化されて酸化膜103が形成される。
【0045】
続いて、制御部80は、エッチング工程S30を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部80は、排気部40を制御して処理容器10内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して基板Wの温度を第2温度T2に調整して維持する。次いで、制御部80は、ガス供給部30を制御して処理容器10内にフッ化水素ガス及びアンモニアガスを供給する。これにより、フッ化水素ガス及びアンモニアガスが酸化膜103と反応して珪フッ化アンモニウム[(NHSiF]が生成される。次いで、制御部80は、加熱部50を制御して基板Wの温度を第3温度T3に加熱し、珪フッ化アンモニウムを昇華させる。これにより、対象膜102を残存させて、酸化膜103を選択的にエッチングして除去できる。このため、酸化工程S20において対象膜102の表層に形成する酸化膜103の厚さを調整することにより、対象膜102のエッチング量を制御できる。
【0046】
続いて、制御部80は、処理容器10内を大気圧に昇圧すると共に、処理容器10内を搬出温度に降温させた後、昇降機構25を制御してボート16を処理容器10内から搬出する。
【0047】
〔実施例〕
実施形態に係る基板処理方法により対象膜102のエッチング量を制御できることを確認した実施例について説明する。
【0048】
実施例では、SiCN膜を表面に有する基板を準備し、準備した基板を前述の基板処理装置1の処理容器10内に収容し、以下に示される条件1~6によりSiCN膜をエッチングした。該SiCN膜をエッチングする前後の膜厚を分光エリプソメータで測定し、両者の差分を求めることにより、該SiCN膜のエッチング量を算出した。SiCN膜は、対象膜102の一例である。
【0049】
(条件1)
条件1では、準備した基板に対して酸化工程S20を実施することなく、エッチング工程S30を実施した。エッチング工程S30では、降温工程S31、COR工程S32、昇温工程S33及びPHT工程S34をこの順番で実施した。COR工程S32では、基板の温度を75℃に維持した状態で5分間加熱した。
【0050】
(条件2)
条件2では、条件1に対し、COR工程S32の時間を10分に変更した。その他の条件は、条件1と同じである。
【0051】
(条件3)
条件3では、準備した基板に対して酸化工程S20及びエッチング工程S30をこの順番で実施した。酸化工程S20では、処理容器10内に水素ガス及び酸素ガスを供給する時間を10分に設定した。エッチング工程S30の条件は、条件1のエッチング工程S30の条件と同じである。
【0052】
(条件4)
条件4では、条件3に対し、COR工程S32の時間を10分に変更した。その他の条件は、条件3と同じである。
【0053】
(条件5)
条件5では、条件3に対し、酸化工程S20の時間を30分に変更した。その他の条件は、条件3と同じである。
【0054】
(条件6)
条件6では、条件5に対し、COR工程S32の時間を10分に変更した。その他の条件は、条件5と同じである。
【0055】
比較のために、SiN膜を表面に有する基板を準備し、準備した基板を前述の基板処理装置1の処理容器10内に収容し、以下に示される条件7,8によりSiN膜をエッチングした。該SiN膜をエッチングする前後の膜厚を分光エリプソメータで測定し、両者の差分を求めることにより、該SiN膜のエッチング量を算出した。
【0056】
(条件7)
条件7は、条件1と同じ条件である。
【0057】
(条件8)
条件8は、条件2と同じ条件である。
【0058】
比較のために、SiO膜を表面に有する基板を準備し、準備した基板を前述の基板処理装置1の処理容器10内に収容し、以下に示される条件9,10によりSiO膜をエッチングした。該SiO膜をエッチングする前後の膜厚を分光エリプソメータで測定し、両者の差分を求めることにより、該SiO膜のエッチング量を算出した。
【0059】
(条件9)
条件9は、条件1と同じ条件である。
【0060】
(条件10)
条件10は、条件2と同じ条件である。
【0061】
図5は、エッチング量を評価した結果を示す図である。図5は、条件1~6によりエッチングされたSiCN膜のエッチング量[nm]と、条件7,8によりエッチングされたSiN膜のエッチング量[nm]と、条件9,10によりエッチングされたSiO膜のエッチング量[nm]とを示す。
【0062】
図5に示されるように、条件1,2ではエッチング量が略0nmであるのに対し、条件3~6ではエッチング量が20nm~60nmの範囲であることが分かる。この結果から、SiCN膜は、酸化工程S20を実施しない場合にはほとんどエッチングされないが、酸化工程S20を実施することでエッチング可能となることが示された。
【0063】
図5に示されるように、条件3,4ではいずれもエッチング量が20nm~30nmの範囲であり、条件5,6ではいずれもエッチング量が50nm~60nmの範囲であることが分かる。この結果から、SiCN膜のエッチング量は酸化工程S20の時間に依存し、COR工程S32の時間に依存しないことが示された。すなわち、酸化工程S20の時間を変更することにより、SiCN膜のエッチング量を制御できることが示された。具体的には、酸化工程S20の時間を長くすることにより、SiCN膜のエッチング量を増やすことができる。
【0064】
図5に示されるように、条件7~10ではエッチング量が15nm~30nmの範囲であることが分かる。この結果から、SiN膜及びSiO膜はSiCN膜と異なり、酸化工程S20を実施しなくても、エッチング工程S30を実施することにより、エッチング可能であることが示された。
【0065】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0066】
上記の実施形態では、基板処理装置が複数の基板に対して一度に処理を行うバッチ式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、基板処理装置は基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
S10 準備工程
S20 酸化工程
S30 エッチング工程
図1
図2
図3
図4
図5