(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179005
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20231212BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20231212BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231212BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231212BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B24B55/06
B24B27/06 M
B23Q17/00 E
H01L21/78 F
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091983
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】田篠 文照
(72)【発明者】
【氏名】青木 昌史
【テーマコード(参考)】
3C029
3C047
3C158
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C029FF01
3C029FF02
3C047FF06
3C047FF11
3C047FF19
3C047HH13
3C158AA03
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC03
3C158BA09
3C158BC03
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3C158DA17
5F057AA19
5F057AA21
5F057AA53
5F057CA11
5F057DA03
5F057DA11
5F057FA48
5F063AA15
5F063AA48
5F063DD01
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE38
5F063FF54
(57)【要約】
【課題】処理室の排気に異常が発生した際に、異常の発生を速やかにオペレーターに報知する。
【解決手段】被加工物を加工する加工装置であって、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該チャックテーブル及び該加工ユニットを収容する加工室と、一端が排気装置に接続され、他端が該加工室に接続されたダクトと、該ダクトの外部に配設され、該ダクトの内部を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニットと、制御ユニットと、報知ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該測定ユニットによって測定された値と、予め設定された閾値とに基づいて、該ダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、該報知ユニットは、該ダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工装置であって、
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該チャックテーブル及び該加工ユニットを収容する加工室と、
一端が排気装置に接続され、他端が該加工室に接続されたダクトと、
該ダクトの外部に配設され、該ダクトの内部を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニットと、
制御ユニットと、
報知ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該測定ユニットによって測定された値と、予め設定された閾値とに基づいて、該ダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、
該報知ユニットは、該ダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該被加工物を保持するスピンナテーブルと、
該スピンナテーブルによって保持された該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、
該スピンナテーブル及び該洗浄ユニットを収容する洗浄室と、
一端が排気装置に接続され、他端が該洗浄室に接続されたダクトと、
該ダクトの外部に配設され、該ダクトの内部を流れる気体の流速に対する値を測定する測定ユニットと、
制御ユニットと、
報知ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該測定ユニットによって測定された値と、予め設定された閾値とに基づいて、該ダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、
該報知ユニットは、該ダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発することを特徴とする加工装置。
【請求項3】
該測定ユニットは、超音波を発する送波器と、該超音波を受信する受波器とを備え、
該超音波が該送波器から該受波器に到達するまでの時間を測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該被加工物を保持するスピンナテーブルと、
該スピンナテーブルによって保持された該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、
該チャックテーブル及び該加工ユニットを収容する加工室と、
該スピンナテーブル及び該洗浄ユニットを収容する洗浄室と、
一端が第1の排気装置に接続され、他端が該加工室に接続された第1のダクトと、
一端が第2の排気装置に接続され、他端が該洗浄室に接続された第2のダクトと、
該第1のダクトの外部に配設され、該第1のダクトの内部の気体の流速に対応する値を測定する第1の測定ユニットと、
該第2のダクトの外部に配設され、該第2のダクトの内部の気体の流速に対応する値を測定する第2の測定ユニットと、
制御ユニットと、
報知ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該第1の測定ユニットによって測定された値と、予め設定された第1の閾値とに基づいて、該第1のダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定するとともに、該第2の測定ユニットによって測定された値と、予め設定された第2の閾値とに基づいて、該第2のダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、
該報知ユニットは、該第1のダクトの内部の気体の流動又は該第2のダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発生することを特徴とする加工装置。
【請求項5】
該第1の測定ユニット及び該第2の測定ユニットは、それぞれ、超音波を発する送波器と、該超音波を受信する受波器と、を備え、該超音波が該送波器から該受波器に到達するまでの時間を測定することを特徴とする、請求項4に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、ガラス基板等の被加工物を加工する際には、各種の加工装置が用いられる。加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルによって保持された被加工物を加工する加工ユニットとを備えている。
【0003】
例えば、被加工物を複数のチップに分割する際には、被加工物を切削する環状の切削ブレードが装着される加工ユニット(切削ユニット)を備えた切削装置が用いられる。また、被加工物を薄化する加工には、被加工物を研削する複数の研削砥石を含む研削ホイールが装着される加工ユニット(研削ユニット)を備えた研削装置や、被加工物を研磨する研磨パッドが装着される加工ユニット(研磨ユニット)を備えた研磨装置が用いられる。そして、被加工物は、チャックテーブルによって保持された状態で、加工装置の加工室内で加工ユニットによって加工される。
【0004】
加工装置で被加工物を加工する際には、加工ユニットと被加工物とに純水等の液体(加工液)が供給される。加工液によって、加工ユニット及び被加工物が冷却されるとともに、加工によって発生した屑(加工屑)が洗い流される。
【0005】
被加工物の加工中は、加工液が高速で回転する加工ユニットや被加工物に接触して飛散する。その結果、加工室内には加工屑を含んだミスト状の加工液が充満する。このような状態の加工室内で被加工物の加工を続行すると、被加工物に加工屑を含む加工液が付着して被加工物が汚染され、被加工物の加工によって製造される製品(デバイスチップ等)の品質が低下するおそれがある。また、ミスト状の加工液が加工室から漏れて加工装置の構成要素(アクチュエーター、電気配線等)に付着し、構成要素の劣化や動作不良が発生する可能性がある。
【0006】
そこで、加工装置には加工室を排気するためのダクトが接続される。例えば特許文献1には、ダクトを介して切削装置と接続された排気装置が開示されている。この排気装置によって、加工室内に残存するミスト状の加工液がダクトを介して排出される。
【0007】
しかしながら、ダクトに連結された排気装置の動作不良、ダクト内で気流を発生させるファンの劣化等の様々な原因によって、加工室の排気が正常に行われなくなることがある。また、加工装置に設けられた洗浄室内において、被加工物が洗浄液によって洗浄される際にも、同様の原因によって洗浄室の排気が不十分になることがある。
【0008】
加工装置の処理室(加工室、洗浄室等)の排気が適切に行われていないことが認識されないまま加工装置が稼働し続けると、処理室内に残存する異物(加工屑の塵等)によって汚染された被加工物が大量に生成されたり、ミスト状の加工液や洗浄液が加工装置の構成要素に付着して構成要素の劣化が早まったりする等、様々な不都合が生じ得る。その結果、加工装置によって加工された被加工物の品質低下や加工装置の故障が生じやすくなる。
【0009】
そこで、処理室の内部の気体の流速に対応する値を測定する測定ユニットを処理室の内部に設け、測定ユニットで測定される値に基づいて気体の流動の異常を検知し、オペレーターに速やかに異常の発生を報知する加工装置が開発された(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-188568号公報
【特許文献2】特開2022-41448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、稼働する加工装置の処理室の内部では、常に様々な構造物が動き続けているため、処理室の排気が正常に実施されているか否かに関わらず流量、流速、及び方向等の要素が不定な複雑な気流が発生する。この複雑な気流の流速に対応する値を測定し、測定値に基づいて処理室の排気の異常の発生を迅速、高精度、かつ高感度に検出するのは容易ではない。
【0012】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、処理室の排気に異常が発生した際に、異常の発生を迅速、高精度、かつ、高感度に検出し、速やかにオペレーターに報知することが可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、被加工物を加工する加工装置であって、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該チャックテーブル及び該加工ユニットを収容する加工室と、一端が排気装置に接続され、他端が該加工室に接続されたダクトと、該ダクトの外部に配設され、該ダクトの内部を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニットと、制御ユニットと、報知ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該測定ユニットによって測定された値と、予め設定された閾値とに基づいて、該ダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、該報知ユニットは、該ダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発することを特徴とする加工装置が提供される。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該被加工物を保持するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルによって保持された該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、該スピンナテーブル及び該洗浄ユニットを収容する洗浄室と、一端が排気装置に接続され、他端が該洗浄室に接続されたダクトと、該ダクトの外部に配設され、該ダクトの内部を流れる気体の流速に対する値を測定する測定ユニットと、制御ユニットと、報知ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該測定ユニットによって測定された値と、予め設定された閾値とに基づいて、該ダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、該報知ユニットは、該ダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発することを特徴とする加工装置が提供される。
【0015】
なお、好ましくは、該測定ユニットは、超音波を発する送波器と、該超音波を受信する受波器とを備え、該超音波が該送波器から該受波器に到達するまでの時間を測定する。
【0016】
さらに、本発明の他の一態様によれば、被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルによって保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該被加工物を保持するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルによって保持された該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、該チャックテーブル及び該加工ユニットを収容する加工室と、該スピンナテーブル及び該洗浄ユニットを収容する洗浄室と、一端が第1の排気装置に接続され、他端が該加工室に接続された第1のダクトと、一端が第2の排気装置に接続され、他端が該洗浄室に接続された第2のダクトと、該第1のダクトの外部に配設され、該第1のダクトの内部の気体の流速に対応する値を測定する第1の測定ユニットと、該第2のダクトの外部に配設され、該第2のダクトの内部の気体の流速に対応する値を測定する第2の測定ユニットと、制御ユニットと、報知ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該第1の測定ユニットによって測定された値と、予め設定された第1の閾値とに基づいて、該第1のダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定するとともに、該第2の測定ユニットによって測定された値と、予め設定された第2の閾値とに基づいて、該第2のダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定し、該報知ユニットは、該第1のダクトの内部の気体の流動又は該第2のダクトの内部の気体の流動が異常であると判定された場合にエラーを発生することを特徴とする加工装置が提供される。
【0017】
なお、好ましくは、該第1の測定ユニット及び該第2の測定ユニットは、それぞれ、超音波を発する送波器と、該超音波を受信する受波器と、を備え、該超音波が該送波器から該受波器に到達するまでの時間を測定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る加工装置では、ダクトの内部を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニットがダクトの外側に設けられる。そして、測定ユニットによって測定された値に基づいて、ダクトの内部の気体の流動が正常であるか異常であるかが判定され、気体の流動が異常である場合には報知ユニットからエラーが発信される。
【0019】
処理室の排気に異常が発生したとき、ダクトの内部の気体の流動が直接的に影響を受ける。その上、処理室の内部に配置された各種の機構が稼働することによるダクトの内部の気体の流動が受ける影響は極めて小さい。そのため、測定ユニットで測定された値により処理室の排気の異常を迅速、高精度、かつ高感度に検出でき、オペレーターが排気の異常を速やかに認識することが可能となる。
【0020】
したがって、本発明の一態様によると、処理室の排気に異常が発生した際に、異常の発生を迅速、高精度、かつ、高感度にオペレーターに報知することが可能な加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】ダクトを部分的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る加工装置の構成例について説明する。
図1は、被加工物に切削加工を施す加工装置(切削装置)2を示す斜視図である。なお、
図1において、X軸方向(加工送り方向、前後方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、左右方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0023】
加工装置2は、加工装置2を構成する各構成要素を支持及び収容する直方体状の基台4を備える。基台4の前方の角部には、矩形状の開口4aが設けられている。開口4aの内側には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面上には、加工装置2による加工の対象となる複数の被加工物11を収容可能なカセット8が配置される。なお、
図1ではカセット8の輪郭を二点鎖線で示している。
【0024】
被加工物11は、例えばシリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、表面及び裏面を備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、被加工物11の表面側の、分割予定ラインによって区画された複数の領域にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイスが形成されている。
【0025】
被加工物11の裏面側には、被加工物11よりも径の大きい円形のテープ13が貼付される。テープ13は、フィルム状の基材と、基材上の粘着剤(糊層)とを含む。例えば、基材はポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着剤はエポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤でなる。また、粘着剤として、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の樹脂を用いてもよい。
【0026】
テープ13の外周部は、金属等でなる環状のフレーム15に貼付される。フレーム15は、中央部に被加工物11よりも直径が大きい円形の開口を備え、被加工物11はフレーム15の開口の内側に配置される。テープ13の中央部を被加工物11に貼付し、テープ13の外周部をフレーム15に貼付すると、被加工物11がテープ13を介してフレーム15によって支持される。
【0027】
被加工物11は、フレーム15によって支持された状態でカセット8に収容され、加工装置2によって加工される。例えば、加工装置2によって被加工物11を分割予定ラインに沿って切削して分割することにより、デバイスをそれぞれ含む複数のデバイスチップが得られる。
【0028】
ただし、被加工物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、サファイア、セラミックス、樹脂、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。また、被加工物11は樹脂パッケージ基板であってもよい。例えば樹脂パッケージ基板は、ベース基板と、ベース基板上に実装された複数のデバイスチップと、複数のデバイスチップを覆って封止する樹脂層とを備える。
【0029】
基台4の上面側のうち開口4aの側方に位置する領域には、長手方向がX軸方向に沿うように形成された平面視で矩形状の開口4bが設けられている。開口4bの内側には、ボールねじ式の移動ユニット(移動機構)10が設けられている。移動ユニット10は、移動ユニット10の上部を覆うように配置された平板状の移動テーブル12を備える。また、移動テーブル12の前後には、移動ユニット10の上部を覆う蛇腹状の防塵防滴カバー14が設けられている。
【0030】
移動テーブル12上には、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)16が設けられている。チャックテーブル16の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行に形成された平坦面であり、被加工物11を保持する保持面16aを構成している。保持面16aは、チャックテーブル16の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0031】
移動ユニット10は、チャックテーブル16を移動テーブル12とともにX軸方向に沿って移動させる。また、チャックテーブル16にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、回転駆動源はチャックテーブル16をZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。さらに、チャックテーブル16の周囲には、被加工物11を支持するフレーム15を把持して固定する複数のクランプ18が設けられている。
【0032】
開口4a,4bの近傍には、被加工物11をカセット8とチャックテーブル16との間で搬送する搬送ユニット(不図示)が設けられている。被加工物11は、搬送ユニットによってカセット8から引き出され、チャックテーブル16に搬送される。このとき被加工物11は、テープ13を介してチャックテーブル16の保持面16a上に配置される。また、フレーム15が複数のクランプ18によって把持される。この状態で、保持面16aに吸引源の負圧を作用させると、被加工物11がテープ13を介してチャックテーブル16によって吸引保持される。
【0033】
チャックテーブル16の上方には、被加工物11を加工する一対の加工ユニット(切削ユニット)20a,20bが設けられている。加工ユニット20a,20bにはそれぞれ、被加工物11を切削する環状の切削ブレード60(
図2参照)が装着される。
【0034】
基台4の上面上には、加工ユニット20a,20bを支持する門型の支持構造22が、開口4bを跨ぐように配置されている。支持構造22の前面側の両側端部には、加工ユニット20aをY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる移動ユニット(移動機構)24aと、加工ユニット20bをY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる移動ユニット(移動機構)24bと、が設けられている。移動ユニット24a,24bは、支持構造22の前面側にY軸方向に沿って配置された一対のガイドレール26に装着されている。
【0035】
移動ユニット24aは、平板状の移動プレート28aを備える。移動プレート28aは、一対のガイドレール26にスライド可能に装着されている。また、移動プレート28aの裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、ガイドレール26と概ね平行に配置されたボールねじ30aが螺合されている。ボールねじ30aの端部には、パルスモータ32が連結されている。パルスモータ32によってボールねじ30aを回転させると、移動プレート28aがガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。
【0036】
移動プレート28aの表面(前面)側には、一対のガイドレール34aがZ軸方向に沿って固定されている。一対のガイドレール34aには、平板状の移動プレート36aがスライド可能に装着されている。また、移動プレート36aの裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、ガイドレール34aと概ね平行に配置されたボールねじ38aが螺合されている。ボールねじ38aの端部には、パルスモータ40が連結されている。パルスモータ40によってボールねじ38aを回転させると、移動プレート36aがガイドレール34aに沿ってZ軸方向に移動する。
【0037】
一方、移動ユニット24bは、平板状の移動プレート28bを備える。移動プレート28bは、一対のガイドレール26にスライド可能に装着されている。また、移動プレート28bの裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、ガイドレール26と概ね平行に配置されたボールねじ30bが螺合されている。ボールねじ30bの端部には、パルスモータ32が連結されている。パルスモータ32によってボールねじ30bを回転させると、移動プレート28bがガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。
【0038】
移動プレート28bの表面(前面)側には、一対のガイドレール34bがZ軸方向に沿って固定されている。一対のガイドレール34bには、平板状の移動プレート36bがスライド可能に装着されている。また、移動プレート36bの裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、ガイドレール34bと概ね平行に配置されたボールねじ38bが螺合されている。ボールねじ38bの端部には、パルスモータ40が連結されている。パルスモータ40によってボールねじ38bを回転させると、移動プレート36bがガイドレール34bに沿ってZ軸方向に移動する。
【0039】
加工ユニット20a,20bはそれぞれ、移動プレート36a,36bの下部に固定されている。また、加工ユニット20aに隣接する位置には、チャックテーブル16によって保持された被加工物11等を撮像する撮像ユニット42が設けられている。
【0040】
例えば撮像ユニット42は、可視光を受光して電気信号に変換する撮像素子を備える可視光カメラや、赤外線を受光して電気信号に変換する撮像素子を備える赤外線カメラを備える。撮像ユニット42によって取得された画像は、チャックテーブル16によって保持された被加工物11と加工ユニット20a,20bとの位置合わせ等に用いられる。
【0041】
基台4の上面側のうち開口4bの開口4aとは反対側の側方には、平面視で円形の開口4cが設けられている。開口4cの内側には、被加工物11を保持して回転するスピンナテーブル(チャックテーブル)44と、スピンナテーブル44によって保持された被加工物11を洗浄する洗浄ユニット46とが設けられている。
【0042】
開口4b,4cの近傍には、被加工物11をチャックテーブル16と洗浄ユニット46との間で搬送する搬送ユニット(不図示)が設けられている。被加工物11は、加工ユニット20a,20bによって加工された後、搬送ユニットによってチャックテーブル16からスピンナテーブル44に搬送され、洗浄ユニット46によって洗浄される。なお、スピンナテーブル44及び洗浄ユニット46の構成及び機能の詳細については後述する(
図4参照)。
【0043】
基台4の上側には、基台4上に搭載された構成要素を覆うカバー48が設けられている。
図1では、カバー48の輪郭を二点鎖線で示している。カバー48の側面側には、加工装置2に関する各種の情報を表示する表示ユニット(表示部、表示装置)50が設けられている。
【0044】
例えば表示ユニット50は、タッチパネル式のディスプレイによって構成される。この場合、表示ユニット50は、加工装置2に各種の情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)としても機能し、オペレーターは表示ユニット50のタッチ操作によって加工装置2に加工条件等の情報を入力できる。すなわち、表示ユニット50がユーザーインターフェースとして機能する。
【0045】
カバー48の上面側には、オペレーターに所定の情報を報知する報知ユニット(報知部、報知装置)52が設けられている。例えば、報知ユニット52として表示灯(警告灯)が設けられ、表示灯は加工装置2で異常が発生した際に点灯又は点滅してオペレーターにエラーを報知する。
【0046】
ただし、報知ユニット52に制限はない。例えば報知ユニット52は、加工装置2で異常が発生した際にエラーを報知する音(警告音)を発するスピーカーであってもよい。また、表示ユニット50に異常の発生を知らせる情報(メッセージ等)を表示させることにより、表示ユニット50を報知ユニットとして機能させることもできる。
【0047】
加工装置2を構成する構成要素(カセット支持台6、移動ユニット10、チャックテーブル16、クランプ18、加工ユニット20a,20b、移動ユニット24a,24b、撮像ユニット42、スピンナテーブル44、洗浄ユニット46、表示ユニット50、報知ユニット52等)は、制御ユニット(制御部、制御装置)54に接続されている。制御ユニット54は、加工装置2の各構成要素の動作を制御する。
【0048】
例えば制御ユニット54は、コンピュータによって構成され、加工装置2の稼働に必要な演算を行う演算部56と、各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部58とを含む。演算部56は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部58は、主記憶装置、補助記憶装置等として機能する各種のメモリを含んで構成される。
【0049】
カセット8に収容された被加工物11は、搬送ユニット(不図示)によって1枚ずつチャックテーブル16に搬送される。そして、被加工物11は、チャックテーブル16によって吸引保持された状態で、加工ユニット20a,20bによって加工される。その後、被加工物11は搬送ユニット(不図示)によってスピンナテーブル44に搬送され、洗浄ユニット46によって洗浄される。そして、洗浄後の被加工物11が再度カセット8に収容される。
【0050】
図2は、被加工物11を加工する加工装置2を示す一部断面側面図である。
図2には一例として、チャックテーブル16によって保持された被加工物11が加工ユニット20aによって加工される際の加工装置2を示す。なお、
図2では加工装置2の一部の構成要素の図示を省略している。また、以下では主に加工ユニット20aの構成及び機能について説明するが、加工ユニット20bも加工ユニット20aと同様に構成できる。
【0051】
加工ユニット20aは、Y軸方向に沿って配置された円筒状のスピンドル(不図示)を備える。スピンドルの先端部(一端側)には、被加工物11を切削する環状の切削ブレード60が装着される。また、スピンドルの基端部(他端側)には、スピンドルを回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源からスピンドルを介して伝達される動力により、切削ブレード60がY軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0052】
切削ブレード60としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とが一体となって構成される。また、ハブタイプの切削ブレードの切刃は、ダイヤモンド等でなる砥粒がニッケルめっき層等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される。ただし、切削ブレード60として、ワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなる結合材によって固定された環状の切刃によって構成される。
【0053】
また、加工ユニット20aは、スピンドルの先端部に装着された切削ブレード60を覆うブレードカバー62を備える。ブレードカバー62は、純水等の液体(加工液)が供給されるチューブと接続される接続部64と、接続部64に接続された一対のノズル66とを備える。
【0054】
一対のノズル66は、切削ブレード60の下端部を切削ブレード60の表裏面側から挟むように配置される。また、一対のノズル66の切削ブレード60と対向する位置には、切削ブレード60に向かって加工液を供給する供給口(不図示)が設けられている。チューブから接続部64を介して一対のノズル66に供給された加工液が、一対のノズル66の供給口から切削ブレード60の表面側及び裏面側に向かって噴射される。
【0055】
また、ブレードカバー62は、純水等の液体(加工液)が供給されるチューブと接続される接続部68と、接続部68に接続されたノズル70とを備える。ノズル70の先端は、切削ブレード60の外周部に向かって開口している。チューブから接続部68を介してノズル70に供給された加工液が、ノズル70の先端から切削ブレード60の外周部に向かって噴射される。
【0056】
被加工物11の加工は、チャックテーブル16及び加工ユニット20a、20bを覆うように形成された加工室(処理室)80の内側で実施される。例えば加工室80は、上壁80aと、上壁80aに接続された側壁80bとを備える直方体状に形成され、チャックテーブル16及び加工ユニット20a、20bを収容する。加工室80の内部は、加工ユニット20a、20bによる被加工物11の切削加工が実施される処理空間82に相当する。
【0057】
加工室80の上壁80aには、加工室80の内部と外部とを連通させる開口80cが設けられている。加工ユニット20a及び撮像ユニット42は、開口80cを介して加工室80の内部に挿入され、処理空間82に配置される。また、加工室80の内側の開口80c近傍には、保護カバー84が開口80cと重畳するように設けられている。保護カバー84は、被加工物11の加工中に加工室80内で飛散する加工屑や加工液が、開口80cを介して加工室80の外部に散乱することを防止する。
【0058】
加工ユニット20aの前方側(
図2における右側)には、加工室80の内側(処理空間82)を加工領域82aと搬送領域82bとに仕切る仕切部材86が設けられている。被加工物11の加工は加工領域82aにおいて行われ、被加工物11のチャックテーブル16上への搬送、及び被加工物11のチャックテーブル16上からの搬出は搬送領域82bにおいて行われる。また、仕切部材86によって、加工領域82a内で飛散する加工屑や加工液の、搬送領域82bへの拡散がブロックされる。
【0059】
なお、仕切部材86の下端部には、開口86aが設けられている。チャックテーブル16は、開口86aを介して加工領域82aと搬送領域82bとの間をX軸方向に沿って移動する。
【0060】
加工ユニット20aに装着された切削ブレード60を回転させて、チャックテーブル16によって保持された被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11が切削される。また、被加工物11の切削中は、ノズル66、70から切削ブレード60及び被加工物11に向かって純水等の加工液が供給される。加工液によって、切削ブレード60及び被加工物11が冷却されるとともに、切削によって発生した加工屑が洗い流される。
【0061】
なお、切削ブレード60によって被加工物11が切削される際、加工屑や加工液が高速で回転する切削ブレード60に接触して飛散する。その結果、加工室80の内部は、加工屑の塵やミスト状の加工液を含む雰囲気で満たされる。このような雰囲気下で被加工物11の加工が続行されると、被加工物11が加工屑を含む加工液によって汚染されるおそれがある。また、ミスト状の加工液が加工室80の隙間(例えば、開口80c等)から流出して、加工室80の外側に配置されている加工装置2の構成要素に付着し、構成要素の劣化や動作不良を引き起こすおそれがある。
【0062】
そのため、被加工物11の加工中は、加工室80の内部が排気される。具体的には、加工室80の内部にはダクト口88が設けられている。そして、ダクト口88に、加工室80の内部の気体を排出するダクト90の一端側が接続される。また、ダクト90の他端側は、ダクト90を介して加工室80内の気体を吸引する排気装置(排気設備)92に接続される。
【0063】
例えば、ダクト90の内部には、加工室80の内部からダクト90を介して排気装置92に向かう気流を発生させるファン94が設けられている。排気装置92を稼働させつつファン94を回転させると、加工室80の内部に残存する加工屑の塵やミスト状の加工液が、加工室80内の雰囲気とともにダクト90に吸い込まれて除去される。
【0064】
しかしながら、排気装置92の不具合やファン94の故障等の様々な原因によって、加工室80が正常に排気されなくなることがある。そして、加工室80の排気が適切に行われていないことが認識されないまま加工装置2が稼働し続けると、加工屑等によって汚染された被加工物11が大量に生成されたり、加工室80から漏れたミスト状の加工液が加工装置2の構成要素に付着して、構成要素の劣化が早まったりする。
【0065】
そこで、本実施形態においては、ダクト90の内部を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニットをダクト90の外側に配設し、加工装置2の稼働中に測定ユニットを用いて加工室80が正常に排気されているか否かを監視する。そして、加工室80の排気に異常があることが検出されると、加工装置2からエラーが発信される。これにより、加工装置2で排気の異常が発生した際、オペレーターは速やかに異常を認識して適切な処置をとることが可能となり、排気の異常による被害を最小限に抑えられる。
【0066】
図3は、ダクト90を模式的に示す一部断面側面図である。具体的には、
図3に示すように、ダクト90の内部の気体の流速に対応する値を測定する測定ユニット100a,100bがダクト90の外面に設けられている。
図3には、上流側の測定ユニット100aと、下流側の測定ユニット100bと、がダクト90の外部壁面に設けられている例を示している。測定ユニット100a,100bはそれぞれ、制御ユニット54(
図1参照)に接続されており、測定した値を制御ユニット54に出力する。
【0067】
測定ユニット100a,100bは、超音波の伝播時間に基づいて、ダクト90の内部の気体の流速に対応する値を測定する。具体的には、測定ユニット100a,100bは、それぞれ、超音波を発する送波器102と、超音波を受信する受波器104とを備える。送波器102及び受波器104は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む圧電素子を備える。各測定ユニット100a,100bでは、一つの圧電素子が送波器102及び受波器104の機能を兼ねてもよい。
【0068】
上流側の測定ユニット100aの送波器102が発した超音波106は、ダクト90の内部を流れる気体中を伝播して下流側の測定ユニット100bの受波器104に到達して受信される。そして、制御ユニット54は、超音波106が上流側の測定ユニット100aから下流側の測定ユニット100bに到達するまでの時間(到達時間)を測定する。この到達時間は、ダクト90を流れる気体の流速によって変化する。
【0069】
また、下流側の測定ユニット100bの送波器102が発した超音波108は、ダクト90の内部を流れる気体中を伝播して上流側の測定ユニット100aの受波器104に到達して受信される。そして、制御ユニット54は、超音波108が下流側の測定ユニット100bから上流側の測定ユニット100aに到達するまでの時間(到達時間)を測定する。この到達時間は、ダクト90を流れる気体の流速によって変化する。
【0070】
具体的には、下流側に向かう超音波106の送波器102から受波器104への到達時間は、上流側に向かう超音波108の送波器102から受波器104への到達時間よりも短くなる。この二つの到達時間の差は、ダクト90を流れる気体の流速に依存する。
【0071】
そのため、測定ユニット100a,100bによって超音波106,108の到達時間を継続的に測定することにより、ダクト90の内部において気体が適切な流速で流動しているか否かを監視することができる。特に、測定ユニット100a,100bを加工室80に設置するよりもダクト90に設置する方が、排気装置92及びファン94の細かな状態を直接的に評価できる。
【0072】
なお、測定ユニット100a,100bによって測定される値は、超音波106,108の到達時間に限られない。例えば測定ユニットは、超音波106,108の到達時間に基づいて、超音波106,108の速度を測定してもよい。
【0073】
加工室80の排気が正常に行われている場合には、測定ユニット100a,100bによって測定された値(超音波106,108の到達時間、気体の流速等)が所定の許容範囲内に維持される。一方、何らかの原因で加工室80の排気に異常が発生すると、測定ユニット100a,100bによって測定される値が許容範囲から外れる。
【0074】
そこで、制御ユニット54(
図1参照)は、測定ユニット100a,100bによって測定された値と、予め設定された閾値とに基づいて、ダクト90の内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定する。
【0075】
以下、加工装置2の具体的な動作の詳細について説明する。まず、制御ユニット54の記憶部58(
図1参照)には、測定ユニット100a,100bによって測定された値の許容範囲を定義する閾値(基準値)が記憶されている。例えば記憶部58には、正常な値の範囲の下限値及び上限値が記憶されている。
【0076】
なお、閾値の設定方法に制限はない。例えば、予め加工装置2を試験的に稼働させ、加工室80の排気が適切に行われている状態を維持しつつ、測定ユニット100a,100bによって気体の流速に対応する値を測定する。そして、その際に測定された値が許容範囲内に含まれるように、許容範囲の下限値及び上限値が設定される。
【0077】
切削ブレード60によって被加工物11を切削する際は、
図2に示す排気装置92及びファン94を稼働させ、加工室80の排気を行う。そして、排気装置92及びファン94の稼働中(切削加工中)は、ダクト90の内部の気体の流速に対応する値が測定ユニット100a,100bによって継続的に測定される。
【0078】
例えば測定ユニット100a,100bは、超音波106,108の到達時間Tを測定し、到達時間Tに基づいて超音波106の速度Vを算出する。なお、速度Vは、送波器102と受波器104との距離をL(既知値)とすると、V=L/Tで表される。
【0079】
そして、測定ユニット100aから測定ユニット100bに伝播する超音波106の速度Vaと、測定ユニット100bから測定ユニット100aに伝播する超音波108の速度Vbと、の平均値から、流れのない気体中の超音波の速度Vaveを算出できる。そして、VaからVaveを差し引くと、または、VaveからVbを差し引くと、ダクト90を流れる気体の速度Vgasを算出できる。
【0080】
測定ユニット100a,100bによって測定された値は、制御ユニット54(
図1参照)に入力される。そして、制御ユニット54は、測定ユニット100a,100bから入力された値からダクト90を流れる気体の速度Vgasを算出し、記憶部58に記憶されている閾値と比較する。例えば、制御ユニット54は、ダクト90を流れる気体の速度Vgasと、速度Vaveの許容範囲の上限値V
tha及び下限値V
thbとを比較することにより、速度Vaveが許容範囲内であるか否かを判定する。
【0081】
なお、測定ユニット100a,100bを利用した判定の方法は適宜変更できる。例えば、制御ユニット54は、測定ユニット100a,100bによって測定された下流に向けて伝播した超音波106の速度Vaと、予め設定された超音波106の速度の基準値Vref(理想的な速度Vの値等)との差分を算出し、その差分と閾値と比較してもよい。
【0082】
また、例えば、制御ユニット54は、測定ユニット100a,100bによって測定された上流に向けて伝播した超音波108の速度Vbと、予め設定された超音波108の速度の基準値Vrefとの差分を算出し、その差分と閾値と比較してもよい。これらの場合、Vrefは予め制御ユニット54の記憶部58に登録されるとよい。
【0083】
測定ユニット100によって測定された値が許容範囲内である場合には、制御ユニット54は加工室80の内部の気体の流動が正常であると判定する。一方、測定ユニット100によって測定された値が許容範囲から外れている場合には、制御ユニット54は加工室80の内部の気体の流動が異常であると判定する。
【0084】
加工室80の内部の気体の流動が異常であると判定されると、制御ユニット54は、表示ユニット50及び報知ユニット52に制御信号を出力し、表示ユニット50及び報知ユニット52にエラーを発信させる。例えば、表示ユニット50は排気の異常を報知するメッセージや画像を表示する。また、報知ユニット52は、排気の異常を報知する色で点灯し、又は、排気の異常を報知するパターンで点滅する。これにより、加工装置2で排気の異常が発生している旨がオペレーターに報知される。
【0085】
上記のように、制御ユニット54は、ダクト90を流れる気体の流速に対応する値に基づいて、ダクト90の排気状態を監視する。そして、ダクト90で気体の流動の異常が発生すると、表示ユニット50又は報知ユニット52によって排気状態の異常がオペレーターに報知される。
【0086】
本実施形態に係る加工装置2では、ダクト90の内部を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニット100a,100bがダクト90の外側に設けられる。そして、測定ユニット100a,100bによって測定された値に基づいて、ダクト90の内部の気体の流動が正常であるか異常であるかが判定され、気体の流動が異常である場合には報知ユニット52からエラーが発信される。
【0087】
加工室80の排気に異常が発生したとき、ダクト90の内部の気体の流動は直接的にこの異常の影響を受ける。その一方で、加工室80の内部に配置された各種の機構が稼働することによるダクト90の内部の気体の流動が受ける影響は極めて小さい。そのため、測定ユニット100a,100bで測定された値により、加工室80に配設された各種の機構の稼働状況に影響されることなく加工室80の排気の異常を迅速、高精度、かつ高感度に検出でき、オペレーターが排気の異常を速やかに認識することが可能となる。
【0088】
なお、上記の実施形態においては、加工室80に接続されたダクト90の排気状態が監視される例について説明したが、排気状態の監視対象となるダクト90の接続先は、加工室80に限定されない。例えば、加工室80に代えて、又は加工室80に加えて、被加工物11の洗浄が行われる洗浄室に接続されたダクト90の排気状態が監視されてもよい。
【0089】
図4は、被加工物11の洗浄が行われる洗浄室(処理室)110を示す一部断面正面図である。洗浄室110は、加工装置2の基台4(
図1参照)に形成された開口4cによって画定される処理室である。すなわち、洗浄室110は、開口4cの内壁によって囲まれた円柱状の領域に相当する。
【0090】
洗浄室110には、スピンナテーブル44及び洗浄ユニット46が収容されている。スピンナテーブル44の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行に形成された平坦面であり、被加工物11を保持する保持面44aを構成している。保持面44aは、スピンナテーブル44の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、スピンナテーブル44の周囲には、被加工物11を支持するフレーム15を把持して固定する複数のクランプ112が設けられている。
【0091】
スピンナテーブル44の下部は、スピンナテーブル44をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源114に連結されている。回転駆動源114は、Z軸方向に沿って配置された円筒状の出力軸(回転軸)116を備え、出力軸116をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。なお、回転駆動源114には、回転駆動源114をZ軸方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)が連結されていてもよい。
【0092】
スピンナテーブル44は、中空の円筒状に形成された液受け部材118に覆われている。液受け部材118は、スピンナテーブル44及びクランプ112を囲むように配置された環状の外壁118aと、外壁118aの下端部から液受け部材118の半径方向内側に向かって突出する環状の底面118bと、底面118bの半径方向内側の端部から上方に向かって突出する環状の内壁118cとを備える。
【0093】
液受け部材118の内壁118cの内側の領域は、回転駆動源114の出力軸116が挿入される貫通孔118dに相当する。貫通孔118dに挿入された出力軸116の上端部に、スピンナテーブル44の下面側が固定される。
【0094】
また、液受け部材118の内部には、内壁118cの上端部を覆う環状のカバー120が設けられている。カバー120は、回転駆動源114の出力軸116を囲み、貫通孔118dの出力軸116が設けられていない領域を塞ぐように配置される。カバー120は、液受け部材118の内部の液体が貫通孔118dを介して外部に流出することを防止する。また、液受け部材118の底部には、液受け部材118に貯留された洗浄液を排出する廃液口(不図示)が設けられている。
【0095】
洗浄ユニット46は、L字状のアーム122と、アーム122の先端部に装着されたノズル124とを備える。ノズル124は、スピンナテーブル44の保持面44aに向かって洗浄液を供給する。洗浄液としては、純水等の液体や、液体(純水等)と気体(エアー等)とが混合された混合流体等を用いることができる。
【0096】
洗浄ユニット46のアーム122には、モータ等の回転駆動源126が接続されている。回転駆動源126によってアーム122を回転させることにより、ノズル124を、スピンナテーブル44と重なる位置(供給位置)と、スピンナテーブル44と重ならない位置(退避位置)とに位置付けることができる。
【0097】
加工ユニット20a,20b(
図1参照)によって加工された被加工物11は、搬送ユニット(不図示)によってスピンナテーブル44に搬送され、テープ13(
図1参照)を介してスピンナテーブル44の保持面44a上に配置される。この状態で、保持面44aに吸引源の負圧を作用させると、被加工物11がテープ13を介してスピンナテーブル44によって吸引保持される。
【0098】
そして、被加工物11を保持したスピンナテーブル44を回転駆動源114によって回転させつつ、ノズル124から洗浄液を滴下して被加工物11に供給する。これにより、洗浄液が被加工物11の上面側を伝って流動し、被加工物11に付着した異物(加工屑等)が洗い流される。
【0099】
なお、洗浄ユニット46によって被加工物11の洗浄が行われると、被加工物11に供給された洗浄液や被加工物11に付着している加工屑が、被加工物11の回転によって飛散する。その結果、洗浄室110の内部は、加工屑の塵やミスト状の洗浄液を含む雰囲気で満たされる。そのため、被加工物11の洗浄中は、洗浄室110の内部が排気される。
【0100】
具体的には、洗浄室110の内部には、ダクト口128が設けられている。ダクト口128には、洗浄室110の内部の気体を排出するダクト130の一端側が接続される。また、ダクト130の他端側は、ダクト130を介して洗浄室110内の気体を吸引する排気装置(排気設備)132に接続される。
【0101】
ダクト130の内部には、洗浄室110からダクト130を介して排気装置132に向かう気流を発生させるファン134が設けられている。排気装置132を稼働させつつファン134を回転させると、洗浄室110の内部に残存する加工屑の塵やミスト状の洗浄液が、洗浄室110内の雰囲気とともにダクト130に吸い込まれて除去される。
【0102】
そして、洗浄室110に接続されたダクト130には、
図3に示す通り、ダクト130を流れる気体の流速に対応する値を測定する測定ユニット100a,100bが設けられる。そして、測定ユニット100a,100bは、測定した値を制御ユニット54(
図1参照)に出力する。
【0103】
制御ユニット54は、洗浄室110に接続されたダクト130に設けられた測定ユニット100a,100b(第2の測定ユニット)によって測定された値と閾値(第2の閾値)とを比較することにより、洗浄室110の内部の気体の流動が正常であるか異常であるかを判定する。この判定の手法は、加工室80(
図2参照)に接続されたダクト90に設けられた測定ユニット100a,100b(第1の測定ユニット)によって測定された値が制御ユニット54に入力された場合と同様である。
【0104】
そして、ダクト130の気体の流動が異常であると判定されると、制御ユニット54は、表示ユニット50及び報知ユニット52に制御信号を出力し、表示ユニット50及び報知ユニット52にエラーを発信させる。
【0105】
測定ユニット100a,100bをダクト90(第1のダクト)及びダクト130(第2のダクト)にそれぞれ設置した場合には、各測定ユニット100a,100bによって測定された値と、対応する閾値(第1の閾値、第2の閾値)と、が比較される。そして、ダクト90及びダクト130の少なくとも一方で気体の流動が異常であると判定されると、表示ユニット50及び報知ユニット52からエラーが発信される。
【0106】
この場合、ダクト90(第1のダクト)に接続された排気装置92(第1の排気装置)と、ダクト130(第2のダクト)に接続された排気装置132(第2の排気装置)と、のいずれかの調整が必要となる。そこで、例えば表示ユニット50には、排気の異常が発生している処理室を特定する情報(処理室の名称、位置等)が表示される。
【0107】
また、上記の実施形態では、被加工物11に切削加工を施す切削装置の排気状態が判定される例について説明したが、測定ユニット100a,100bを用いた排気状態の判定が行われる加工装置の種類に制限はない。
【0108】
切削装置以外の加工装置は、例えば、複数の研削砥石を備える研削ホイールで被加工物11を研削する加工ユニット(研削ユニット)を備える研削装置、または、研磨パッドで被加工物11を研磨する加工ユニット(研磨ユニット)を備える研磨装置でもよい。または、レーザービームの照射によって被加工物11を加工する加工ユニット(レーザー照射ユニット)を備えるレーザー加工装置でもよい。
【0109】
上記の各種の加工装置も、被加工物11の加工が実施される加工室や、被加工物11の洗浄が実施される洗浄室を備えていることがある。この場合には、その加工室や洗浄室の内部に測定ユニット100a,100bを設けることにより、加工装置2と同様に排気状態の判定を実施できる。
【0110】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0111】
11 被加工物
13 テープ
15 フレーム
2 加工装置(切削装置)
4 基台
4a,4b,4c 開口
6 カセット支持台
8 カセット
10 移動ユニット(移動機構)
12 移動テーブル
14 防塵防滴カバー
16 チャックテーブル(保持テーブル)
16a 保持面
18 クランプ
20a,20b 加工ユニット(切削ユニット)
22 支持構造
24a,24b 移動ユニット(移動機構)
26 ガイドレール
28a,28b 移動プレート
30a,30b ボールねじ
32 パルスモータ
34a,34b ガイドレール
36a,36b 移動プレート
38a,38b ボールねじ
40 パルスモータ
42 撮像ユニット
44 スピンナテーブル(チャックテーブル)
44a 保持面
46 洗浄ユニット
48 カバー
50 表示ユニット(表示部、表示装置)
52 報知ユニット(報知部、報知装置)
54 制御ユニット(制御部、制御装置)
56 演算部
58 記憶部
60 切削ブレード
62 ブレードカバー
64 接続部
66 ノズル
68 接続部
70 ノズル
80 加工室(処理室)
80a 上壁
80b 側壁
80c 開口
82 処理空間
82a 加工領域
82b 搬送領域
84 保護カバー
86 仕切部材
86a 開口
88 ダクト口
90 ダクト
92 排気装置(排気設備)
94 ファン
100a,100b 測定ユニット
102 送波器
104 受波器
106 超音波
110 洗浄室(処理室)
112 クランプ
114 回転駆動源
116 出力軸(回転軸)
118 液受け部材
118a 外壁
118b 底面
118c 内壁
118d 貫通孔
120 カバー
122 アーム
124 ノズル
126 回転駆動源
128 ダクト口
130 ダクト
132 排気装置(排気設備)
134 ファン