(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017918
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20230131BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230131BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20230131BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20230131BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 501
C09D11/54
C09D11/40
B41M5/00 100
B41M5/00 112
B41M5/00 120
B41M5/00 132
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177335
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2018067621の分割
【原出願日】2018-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 直博
(72)【発明者】
【氏名】中村 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕貴依
(72)【発明者】
【氏名】濱口 昌也
(72)【発明者】
【氏名】山下 宏之
(57)【要約】
【課題】優れた画像品質及びラミネート強度が得られる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】ラインヘッド型の液体吐出装置であって、非浸透性基材に処理液を付与する処理液付与手段と、前記処理液が付与された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第1のインクを吐出する第1の吐出手段と、前記第1のインクが吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する第1の加熱手段と、前記加熱された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第2のインクを吐出する第2の吐出手段と、を有し、前記第1のインクに含有される有機溶剤の含有割合は、前記第2のインクに含有される有機溶剤の含有割合よりも多く、前記第1のインクは画像を形成するインクであり、前記第2のインクは白インクであり、前記第1のインクに重ねるインクである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインヘッド型の液体吐出装置であって、
非浸透性基材に処理液を付与する処理液付与手段と、
前記処理液が付与された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第1のインクを吐出する第1の吐出手段と、
前記第1のインクが吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する第1の加熱手段と、
前記加熱された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第2のインクを吐出する第2の吐出手段と、を有し、
前記第1のインクに含有される有機溶剤の含有割合は、前記第2のインクに含有される有機溶剤の含有割合よりも多く、
前記第1のインクは画像を形成するインクであり、
前記第2のインクは白インクであり、前記第1のインクに重ねるインクであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1のインクはカラーインクであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2のインクが吐出された非浸透性基材を加熱する第2の加熱手段を備え、
前記第2の加熱手段は、表面温度を調整可能なドラムと、前記非浸透性基材を介して前記ドラムと対向する温風吹き付け手段とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記温風吹き付け手段の温度が、前記ドラムの表面温度よりも高いことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記処理液が付与された非浸透性基材に対し、前記第1のインクが吐出される前に加熱する第3の加熱手段を備え、
前記第3の加熱手段は、赤外線で加熱することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1のインクとして、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのインクを有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記処理液は1,2-プロパンジオールを含み、
前記第1のインク及び前記第2のインクは有機溶剤として1,2-プロパンジオールを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記処理液は、ノニオン系水性エマルジョンを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
ラインヘッド方式による液体吐出方法であって、
非浸透性基材に処理液を付与する処理液付与工程と、
前記処理液が付与された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第1のインクを吐出する第1の吐出工程と、
前記第1のインクが吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する第1の加熱工程と、
前記加熱された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第2のインクを吐出する第2の吐出工程と、を有し、
前記第1のインクに含有される有機溶剤の含有割合は、前記第2のインクに含有される有機溶剤の含有割合よりも多く、
前記第1のインクは画像を形成するインクであり、
前記第2のインクは白インクであり、前記第1のインクに重ねるインクであることを特徴とする液体吐出方法。
【請求項10】
前記非浸透性基材上に形成された前記第1のインク及び前記第2のインクからなる印刷画像上にフィルム材でラミネートするラミネート工程を有することを特徴とする請求項9に記載の液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用途の印刷では、フィルムなどの非浸透性基材に対し、水性インクをインクジェット記録方式で吐出して画像を形成する方法が知られている。産業用途における非浸透性基材を用いて袋を製作する軟包装と呼ばれる分野では、例えば透明フィルム基材上にカラーインク及び白インクを順次重ねて印字し、更に白インク上にラミネートフィルムの貼り合わせを行うことで袋を製作することが広く行われている。
【0003】
特許文献1には、インクジェット方式で色彩の印刷行い、その後でグラビア印刷又はフレキソ印刷方式で白色印刷を行うことが開示されている。特許文献1では、インクジェット印刷方式とグラビア印刷方式又は、フレキソ印刷方式を連結して印刷する印刷方式としており、このことにより、印刷品質を落とすことなく、カラー印刷部の製版と印刷段取り替えを不要とし、有機溶剤の使用を無くして白濃度をグラビア印刷方式で印刷可能としている。
【0004】
しかしながら、軟包装印刷において、袋に加工した際に内容物が見えるように、印刷を行わない透明部分を設ける等の制約があることから、印刷画像に応じて、白インク用の版の製作が必要となるため、白インクについてもインクジェット方式で印刷を行うことが望まれている。
更に、カラーインク上にインクジェット方式で白インクを重ねる場合、白インク上にラミネートフィルムを貼り合わせた際の、印刷基材とラミネートフィルム間の貼り合わせ強度(以下、ラミネート強度)が低下しやすくなり、袋の開封性能が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた画像品質及びラミネート強度が得られる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ラインヘッド型の液体吐出装置であって、非浸透性基材に処理液を付与する処理液付与手段と、前記処理液が付与された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第1のインクを吐出する第1の吐出手段と、前記第1のインクが吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する第1の加熱手段と、前記加熱された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第2のインクを吐出する第2の吐出手段と、を有し、前記第1のインクに含有される有機溶剤の含有割合は、前記第2のインクに含有される有機溶剤の含有割合よりも多く、前記第1のインクは画像を形成するインクであり、前記第2のインクは白インクであり、前記第1のインクに重ねるインクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた画像品質及びラミネート強度が得られる液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る液体吐出装置の一例を示す概略側面図である。
【
図2】本発明に係る液体吐出装置の他の例を示す概略側面図である。
【
図3】本発明に係る液体吐出装置の他の例を示す概略側面図である。
【
図4】比較例における液体吐出装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る液体吐出装置及び液体吐出方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
(液体吐出装置及び液体吐出方法)
本発明の液体吐出装置は、ラインヘッド型の液体吐出装置であって、非浸透性基材に処理液を付与する処理液付与手段と、前記処理液が付与された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第1のインクを吐出する第1の吐出手段と、前記第1のインクが吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する第1の加熱手段と、前記加熱された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第2のインクを吐出する第2の吐出手段と、を有し、必要に応じて、その他の手段・工程を有していてもよい。例えば、コロナ処理手段、非浸透性基材を搬送する搬送手段、非浸透性基材の供給、搬送、排出に係わる手段、上述の加熱手段以外の加熱手段等を有していてもよい。この他にも、前処理装置、後処理装置などを有していてもよい。
【0011】
本発明の液体吐出方法は、ラインヘッド方式による液体吐出方法であって、非浸透性基材に処理液を付与する処理液付与工程と、前記処理液が付与された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第1のインクを吐出する第1の吐出工程と、前記第1のインクが吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する第1の加熱工程と、前記加熱された非浸透性基材に、有機溶剤を含む第2のインクを吐出する第2の吐出工程と、を有し、必要に応じて、その他の手段・工程を有していてもよい。例えば、コロナ処理工程、非浸透性基材を搬送する搬送工程、非浸透性基材の供給、搬送、排出に係わる工程、上述の加熱工程以外の加熱工程等を有していてもよい。この他にも、前処理工程、後処理工程などを有していてもよい。
【0012】
本発明によれば、優れた画像品質及びラミネート強度を得ることができ、特に本発明は軟包装印刷に好適に用いられる。
【0013】
本発明において、ラインヘッド型の液体吐出装置とは、ノズルの配列方向と非浸透性基材の搬送方向とが直交する液体吐出装置を意味する。また、ラインヘッド方式の液体吐出方法とは、ノズルの配列方向と非浸透性基材の搬送方向とが直交する液体吐出方法を意味する。
【0014】
本発明に係る液体吐出装置の一実施形態について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る液体吐出装置を示す概略側面図である。本実施形態の液体吐出装置100は、ラインヘッド型のインクジェット記録装置であり、フルライン型(以降、「ライン型」とも称することがある)としている。
本実施形態では、第1のインクはカラーインクであり、第2のインクは白インクである。
【0015】
液体吐出装置100は、巻き出し装置101、非浸透性基材102、コロナ処理装置103、処理液付与装置104(処理液付与手段)、処理液乾燥装置105、カラーインク用インクジェット吐出ヘッド106(第1のインク吐出手段)、白インク用インクジェット吐出ヘッド107(第2のインク吐出手段)、赤外線ヒーター111(第1の加熱手段)、プラテン108、インク乾燥装置109、巻き取り装置110を有する。
以下、各手段、各工程について説明する。
【0016】
<巻き出し手段・巻き出し工程、巻き取り手段・巻き取り工程>
本実施形態における非浸透性基材102の巻き出し、巻き取りには、巻き出し装置101、巻き取り装置110を用いている。
巻き出し装置101は、回転駆動することにより、ロール状に収納された非浸透性基材102を記録装置100内の搬送経路に供給する。
巻き取り装置110は、インクを付与することで画像が形成された非浸透性基材102を、回転駆動することにより、巻き取ってロール状に収納する。
【0017】
本実施形態における非浸透性基材102は、液体吐出装置の搬送方向に連続するフィルム状の基材であり、巻き出し装置101と巻き取り装置110の間の搬送経路に沿って搬送される。また、非浸透性基材102の搬送方向における長さは、少なくとも巻き出し装置101と巻き取り装置110の間の搬送経路より長い。このように記録装置の搬送方向に連続する基材を用いることで、連続して長時間の印刷を行うことができる。
【0018】
<コロナ処理手段・コロナ処理工程>
コロナ処理手段は、非浸透性基材102に対してコロナ放電によりコロナ処理を行い、非浸透性基材102の表面を改質するものであり、本実施形態のコロナ処理手段として、コロナ処理装置103が図示されている。
コロナ処理工程は、非浸透性基材102を巻き出す工程を経て搬送されてきた非浸透性基材102に対し、コロナ放電によりコロナ処理を行い、表面改質を行う工程である。
【0019】
コロナ処理は必須ではなく、実施しなくてもよいが、処理液付与工程の前にコロナ処理を行うことにより、非浸透性基材102に対する表面処理層の密着性が向上するため好ましい。また、コロナ処理に変えて、大気圧プラズマ処理、フレーム処理、紫外線照射処理等を行ってもよい。
【0020】
コロナ処理を行う手段としては、各種公知の手段を用いることができる。また、コロナ処理を行う場合の各種条件(放電量等)は、特に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0021】
<処理液付与手段・処理液付与工程>
処理液付与手段は、非浸透性基材102に処理液を付与する手段である。本実施形態の処理液付与手段として処理液付与装置104が図示されており、処理液付与装置104は処理液を付着させたローラを非浸透性基材102と接触するように回転駆動させて、非浸透性基材102の表面に処理液を付与する。
なお、以下、処理液を表面処理液などとも称することがある。
【0022】
処理液を付与する手段としては、処理液を付着させたローラを非浸透性基材102に接触させる手段が挙げられるが、これに限られるものではない。その他にも例えば、スピンコート、スプレーコート、グラビアロールコート、リバースロールコート、バーコート、インクジェット等の各種公知の手段を用いることができる。
【0023】
処理液付与工程は、非浸透性基材102に処理液を付与する工程である。本実施形態では、非浸透性基材を巻き出す工程を経て搬送されてきた非浸透性基材102に対し、処理液を付与している。
【0024】
非浸透性基材102に処理液が付与されることにより、非浸透性基材102上に処理層(表面処理層などとも称する)が形成される。なお、処理液を付与した後に加熱を行うことで処理層の形成が促される。
【0025】
処理液を付与することにより、カラーインクにより形成される画像の色境界滲み等の発生を抑制することができ、良好な画像が得られる。また、処理液中に凝集剤が含まれる場合、カラーインクに含まれる色材と凝集剤とが反応し、処理層上で色材を凝集させることができるため、カラーインクにより形成される画像の色境界滲み等の発生を更に抑制することができ、優れた画像が得られる。
【0026】
非浸透性基材102に対する処理液の付与量は、特に限定されるものではないが、0.01g/m2以上2.0g/m2以下であることが好ましく、0.02g/m2以上1.6g/m2以下であることがより好ましい。0.01g/m2以上であることで、色材が一層凝集しやすくなる。また、2.0g/m2以下であることで、処理液の乾燥時間を短くできるので、記録の高速化を図ることができる。
【0027】
<第1の吐出手段及び第2の吐出手段・第1の吐出工程及び第2の吐出工程>
第1の吐出手段・第1の吐出工程は、処理液が付与された非浸透性基材に、第1のインク(カラーインク)を吐出する手段・工程である。
第2の吐出手段・第2の吐出工程は、第1のインク(カラーインク)が吐出された非浸透性基材を加熱した後に、第2のインク(白インク)を吐出する手段・工程である。
なお、第1の吐出手段及び第2の吐出手段をインク付与手段と称することがあり、第1の吐出工程及び第2の吐出工程をインク付与工程と称することがある。
【0028】
本実施形態では、
図1に示されるように、第1の吐出手段としてカラーインク用インクジェット吐出ヘッド106が用いられ、第2の吐出手段として白インク用インクジェット吐出ヘッド107が用いられている。
【0029】
カラーインク用インクジェット吐出ヘッド106は、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有しており、ノズルからのインクの吐出方向が非浸透性基材102に向くように設けられている。これにより、インクジェット吐出ヘッド106は、非浸透性基材102上の表面処理層に、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色の液体を順次吐出する。なお、吐出の順番は適宜変更することができる。
【0030】
白インク用インクジェット吐出ヘッド107は、インクジェット吐出ヘッド106より下流側に配置される。白インクをカラーインクの上に重ねることで、透明の非浸透性基材面から、印刷物の視認性を向上させる役割を有する。
【0031】
本実施形態のインクジェット吐出ヘッド106、107は、ライン型(フルライン型)のインクジェット吐出ヘッドとしている。「ライン型のインクジェット吐出ヘッド」とは、非浸透性基材102の搬送方向の全幅にわたってインクを吐出するノズルが配置され、ノズルの配列方向と非浸透性基材102の搬送方向とが直交するようにノズルが配置されたインクジェット吐出ヘッドである。なお、インクジェット吐出ヘッドの幅は、本発明の効果が損なわれない範囲で変更してもよい。
【0032】
産業用途の印刷では、大量の印刷を高速で行う必要があるため、
図1に示されるようなライン型のインクジェット吐出ヘッドを用いたインクジェット記録方式が好ましい。一方で、産業用途の印刷は、長時間連続して印刷が行われるため、ライン型のヘッドを用いた場合、長時間インクの吐出が行われない一部のノズルにおいてインクが乾燥し、吐出不良が生じることがある。
【0033】
そのため、インク付与工程では、インクを吐出しないノズルにおいて、ノズル内のインクの界面を振動させることが好ましい。ノズル内のインクの界面を振動させることにより、ノズル内のインクと、ノズルに連通する圧力室などのインクジェット吐出ヘッドにおけるインク流路内のインクと、を均一な状態にすることができ、ノズル内におけるインクの乾燥を抑制することができる。これにより、吐出不良による異常画像の発生をより抑制することができる。なお、ノズル内のインクの界面とは、大気又は気体と接するインクの界面である。
【0034】
インクジェット吐出ヘッド106、107において、インクに刺激を印加してインクを吐出させる手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、特に、インクジェット吐出ヘッド内のインク流路内にある圧力室(液室などとも称する)と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小することで圧力室中のインクが加圧され、インクジェット吐出ヘッドのノズルからインクを液滴として吐出させる手段が好ましい。
【0036】
また、このようなインクを吐出することができる複数のノズルにおいて、形成する画像の形状に起因してインクが吐出されない一部のノズルでは、圧電素子に吐出しない微小電圧を印加し、ノズル内のインクの界面を振動させることが好ましい。
【0037】
処理液を付与した後にカラーインクを吐出することにより、画像の色境界滲み等の発生を抑制することができ、良好な画像が得られる。処理液が凝集剤を含む場合、処理液を付与した後にカラーインクを吐出することにより、カラーインクが濡れ広がりながら処理層中の凝集剤とカラーインク中の色材が凝集するため、画像中のスジの発生を抑制するとともに画像の色境界滲み等の発生を更に抑制することができ、更に優れた画像が得られる。
【0038】
他の工程にも関連するが、本実施形態における液体吐出装置、液体吐出方法における印刷速度としては、30m/分~100m/分であることが好ましい。この場合、高速印刷が求められる産業用途において好適に用いることができる。
【0039】
<搬送手段・搬送工程>
プラテン108は、非浸透性基材102を、搬送経路に沿って搬送されるようにガイドする。また、符号のつけられていない搬送ローラ等も搬送手段として用いている。
【0040】
<第1の加熱手段・第1の加熱工程>
第1の加熱手段は、第1のインク(カラーインク)が吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する手段であり、第1の加熱工程は、第1のインク(カラーインク)が吐出された非浸透性基材を赤外線で加熱する工程である。
なお、第1の加熱手段、第1の加熱工程は、第1のインク(カラーインク)の吐出後、第2のインク(白インク)の吐出前に加熱を行うものであるため、色間乾燥手段、色間乾燥工程とも称することがある。
【0041】
図1に示されるように、本実施形態の第1の加熱手段としては赤外線ヒーター111(色間乾燥装置)を用いている。赤外線ヒーター111は、カラーインクが吐出された非浸透性基材102を赤外線により加熱する。赤外線ヒーター111は、カラーインク用インクジェット吐出ヘッド106と白インク用インクジェット吐出ヘッド107の間に配置されている。
【0042】
本発明においては、処理液が付与された非浸透性基材にカラーインクを吐出した後、白インクを重ねる前に、赤外線による加熱を行うことで、非浸透性基材とラミネートフィルム間のラミネート強度の低下を抑制することが可能となった。
【0043】
その要因としては、以下のことが推定される。非浸透性基材102上の処理層は、カラーインクの凝集機能に加え、非浸透性基材102とインク成分の密着性を向上させるための機能を有している。しかし、カラーインク中に含まれる溶剤成分が多量に残っている状態で白インクを重ねる場合、白インク中の溶剤成分も加わり、溶剤成分が処理層中まで浸透し、表面処理層を溶解させやすくなってしまう。
【0044】
そのため、本実施形態においては、白インクを吐出する前に赤外線ヒーター111により、カラーインク中に残っている溶剤を加熱乾燥させる。これにより、非浸透性基材102に形成された表面処理層上でカラーインク及び白インクを重ねて印字した際に表面処理層の溶解を防止することが可能となり、ラミネート強度を得ることができるものと推定される。
【0045】
赤外線による加熱は非浸透性基材102上のインク面に対して輻射加熱が可能であり、温風乾燥等に比べ、インクジェット吐出ヘッド内のインクの乾燥を促進する等の影響を及ぼすことがなく、好ましい。
なお、赤外線ヒーター111における放射赤外線の最大出力波長としては、特に制限されるものではないが、例えば2.5~3.5μmであることが好ましい。
【0046】
一方、赤外線による加熱を行わない場合、所望のラミネート強度が得られない。また、赤外線による加熱ではなく、赤外線以外の加熱手段を用いた場合、所望のラミネート強度が得られないことに加え、インクジェット吐出ヘッド内のインクに影響を及ぼし、ヘッド内のインクの乾燥を促進させ、良好な画像が得られにくくなる。なお、
図4は、第1の加熱手段として赤外線ヒーターではなく、温風吹き付け装置111aを用いた場合の例を示す図である。
【0047】
<第2の加熱手段・第2の加熱工程>
第2の加熱手段は、第2のインク(白インク)が吐出された非浸透性基材を加熱する手段であり、第2の加熱工程は、第2のインク(白インク)が吐出された非浸透性基材を加熱する工程である。
なお、第2の加熱手段、第2の加熱工程をインク乾燥手段、インク乾燥工程とも称する。
【0048】
図1に示されるように、本実施形態の第2の加熱手段としてはインク乾燥装置109を用いている。インク乾燥装置109は、白インクが吐出された非浸透性基材102を加熱するものであり、白インク用インクジェット吐出ヘッド107の下流に配置される。
【0049】
第2の加熱工程では、加熱温度、加熱時間等の条件を適宜変更することができるが、例えば、非浸透性基材にベタつきが感じられない程度に行うことが好ましい。
【0050】
本実施形態のインク乾燥装置109は、非浸透性基材102に温風を吹き付けて乾燥させる。第2の加熱手段としては、温風を吹き付ける手段に限られるものではなく、例えば、非浸透性基材102の裏面を加熱ローラ、フラットヒータ等に接触させて乾燥させる手段や、裏面の加熱と印刷面側から温風を吹き付ける手段を組み合わせた手段等を用いることができる。
【0051】
本発明に係る他の実施形態を
図2に示す。
図2は
図1と同様の図であるが、
図2における例では、インク乾燥装置109a(第2の加熱手段)として、表面温度を調整可能なドラム120と、非浸透性基材102を介してドラム120と対向する温風吹き付け装置121を用いている。本例によれば、非浸透性基材102のノビを抑制するとともに、処理層にインクの溶剤成分が浸透することを効果的に抑制することが可能となり、特に好ましい。これにより、ラミネート強度を更に向上させることができる。
【0052】
本例では、ドラム120は非浸透性基材102の裏面、すなわち処理液、インクが付与される面とは反対側の面と接触して加熱している。
また、本例の温風吹き付け装置121は、ドラム120と対向する位置に複数設けられ、印刷面、すなわち処理液、インクが付与される面に対して温風を吹き付けて加熱している。なお、温風吹き付け装置121の位置や個数等は適宜変更することができる。
【0053】
本例において、温風吹き付け装置121の温度は、ドラム120の表面温度よりも高いことが好ましい。この場合、経時におけるラミネート強度をより向上させることができる。
【0054】
<第3の加熱手段・第3の加熱工程>
第3の加熱手段は、処理液が付与された非浸透性基材102に対し、カラーインクが吐出される前に加熱する手段であり、第3の加熱工程は、処理液が付与された非浸透性基材102に対し、カラーインクが吐出される前に加熱する工程である。
なお、第3の加熱手段、第3の加熱工程を処理液加熱手段、処理液加熱工程とも称する。
【0055】
本実施形態の第3の加熱手段としては、温風吹き付け手段105を用いている。処理液乾燥手段により加熱することで、非浸透性基材102の表面に付与された処理液を加熱乾燥させ、処理層の形成を促す。
【0056】
本実施形態では、温風を吹き付けることにより加熱しているが、これに限られるものではなく、例えば、赤外線を照射する手段や、非浸透性基材102の裏面を加熱ローラ、フラットヒータ等に接触させて乾燥させる手段等を用いることができる。また、特別な乾燥手段を用いず、自然乾燥させてもよい。
【0057】
本発明に係る他の実施形態を
図3に示す。
図3は
図1と同様の図であるが、
図3における例では第3の加熱手段として赤外線ヒーター105aを用いている。赤外線による加熱手段を用いることで、処理層の内部まで十分に溶剤を除去することが可能となる。これにより、処理層上にインクを付与した際に、インク中に含まれる溶剤に対して処理層の成分が溶出することを防止でき、特に有効である。
【0058】
(非浸透性基材)
非浸透性基材とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する基材を指し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない基材も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材を指す。
【0059】
非浸透性基材の中でも、特にポリプロピレンフィルムフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムは、インクが良好に密着するため好ましい。
ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡社製P-2002、P-2161、P-4166、SUNTOX社製PA-20、PA-30、PA-20W、フタムラ化学社製FOA、FOS、FORなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、東洋紡社製E-5100、E-5102、東レ社製P60、P375、帝人デュポンフィルム社製G2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
ナイロンフィルムとしては、例えば、東洋紡社製ハーデンフィルムN-1100、N-1102、N-1200、ユニチカ社製ON、NX、MS、NKなどが挙げられる。
【0060】
(処理液)
非浸透性基材に付与されることで処理層を形成する処理液(表面処理液と称することもある)は、少なくとも有機溶剤を含み、必要に応じて多価金属化合物、樹脂、水、界面活性剤等を含み、更に他の成分を含んでいてもよい。
【0061】
<有機溶剤>
処理液に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0062】
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
【0063】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0064】
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0065】
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0066】
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
【0067】
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0068】
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
【0069】
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0070】
有機溶剤の処理液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0071】
<多価金属化合物>
多価金属化合物としては、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、及びニッケル化合物、並びにこれらの塩(多価金属塩)が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、及びニッケル化合物、並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。特に、多価金属化合物がカルシウム化合物の塩(カルシウム塩)である場合、処理液の安定性がより良好となる。
【0073】
多価金属化合物の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、酢酸カルシウムが好ましい。
【0074】
多価金属化合物の処理液全量に対する濃度は、0.05モル/kg以上0.5モル/kg以下であることが好ましい。濃度がこの範囲内であることにより、優れた貯蔵安定性を得ることができ、優れたインク凝集機能が得られる。
【0075】
<樹脂>
樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、及びこれらの樹脂の共重合体から選ばれる少なくとも1つであるとき、処理層が様々な非浸透性基材に対して強固な密着性を得られるため好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂、オレフィン変性ウレタン樹脂であることが更に好ましい。また、樹脂は、水に分散可能な樹脂粒子の形態であることが好ましい。また、ノニオン系水性エマルジョンを含むことが好ましい。
【0076】
樹脂の添加量は、処理液の全量に対して固形分として0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。0.5質量%以上であると、樹脂が十分に非浸透性基材を被覆することができるため、処理層の非浸透性基材に対する密着性が向上し、インク滴の滲みを抑制することができる。また、20質量%以下であると処理層の膜厚が厚くなりすぎないため密着性の低下が抑制される。
【0077】
<水>
表面処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
【0078】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0079】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0080】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0081】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0082】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0083】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0085】
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0086】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0087】
【0088】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0089】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0090】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
【0091】
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0092】
【0093】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0094】
【0095】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH2-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0096】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0097】
処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0098】
(第1のインク及び第2のインク)
第1のインク(カラーインク)及び第2のインク(白インク)は、少なくとも有機溶剤を含み、その他に色材、水を含んでいてもよく、必要に応じて樹脂粒子、界面活性剤、その他の成分を含む。なお、インクに用いる界面活性剤については、処理液で用いる界面活性剤と同様のものを用いることができるので説明を省略する。
以下、インクと表記した場合には、第1のインク(カラーインク)と第2のインク(白インク)を区別せず、両者に共通する事項を説明するものである。
【0099】
<有機溶剤>
インクにおける有機溶剤の種類としては、処理液と同様のものを用いることができる。
本発明において、第1のインク(カラーインク)に含有される有機溶剤の含有割合は、第2のインク(白インク)に含有される有機溶剤の含有割合よりも多いことを特徴とする。
【0100】
カラーインクに含有される有機溶剤の含有量が、白インク中に含有される有機溶剤の含有量よりも多いことにより、白インク中の有機溶剤成分が処理層、及びカラーインク層の溶解を促進することを防止し、高いラミネート強度を得ることが可能となる。
【0101】
なお、「第1のインクに含有される有機溶剤の含有割合」とあるのは、第1のインク全量に対する第1のインクに含有される有機溶剤の含有量(質量%)であり、「第2のインクに含有される有機溶剤の含有割合」とあるのは、第2のインク全量に対する第2のインクに含有される有機溶剤の含有量(質量%)である。
【0102】
カラーインクの有機溶剤の含有量は、乾燥性及び吐出信頼性の点から、カラーインク全量に対して5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
白インクの有機溶剤の含有量は、乾燥性及び吐出信頼性、ラミネート強度の点から、白インク全量に対して2質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上35質量%以下がより好ましい。
【0103】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用してもよい。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料の他、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0104】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0105】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0106】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0107】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等が挙げられる。
【0108】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0110】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0111】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0112】
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
【0113】
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0114】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
【0115】
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0116】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
【0117】
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
【0118】
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0119】
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0120】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0121】
<樹脂粒子>
インク中に含有する樹脂粒子の樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられ、単独でも併用して用いることも可能である。また、これらの中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0122】
樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販の樹脂粒子としては、例えば、マイクロジェルE-1002、E-5002(スチレン-アクリル系樹脂粒子、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂粒子、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン-アクリル系樹脂粒子、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE-1014(スチレン-アクリル系樹脂粒子、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK-200(アクリル系樹脂粒子、サイデン化学株式会社製)、プライマルAC-22、AC-61(アクリル系樹脂粒子、ローム・アンド・ハース製)、ナノクリルSBCX-2821、3689(アクリルシリコーン系樹脂粒子、東洋インキ製造株式会社製)、#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂粒子、御国色素株式会社製)などが挙げられる。
【0123】
樹脂粒子の含有量としては、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0124】
樹脂粒子のガラス転移温度としては、-50℃以上100℃以下が好ましい。
本発明では、カラーインクに含まれる樹脂粒子のガラス転移温度に比べ、白インクに含まれる樹脂粒子のガラス転移温度が高いことが好ましい。この場合、乾燥性や基材密着性に優れる。特に、白インクに含まれる樹脂粒子のガラス転移温度が、カラーインクに含まれる樹脂粒子のガラス転移温度よりも、10℃以上高いことがより好ましい。
【0125】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【実施例0126】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以降の説明において「部」は「質量部」を意味する。
【0127】
(処理液の作製例)
以下の処方混合物を5μmのフィルター(商品名:ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過し、処理液を得た。
・1,2-プロパンジオール 10部
・エマルゲンLS-106(界面活性剤、花王社製) 1部
・酢酸カルシウム1水和物 1.76部
・酢酸ビニル-アクリル樹脂粒子(商品名:ビニブラン1225、日信化学社製) 10部(固形分濃度45%)
・プロキセルLV(防腐剤、アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 77.14部
【0128】
(顔料分散体の作製例)
<ブラック顔料分散体の作製例>
Cabot Corporation社製のカーボンブラック(Black Pearls1000)100gを、2.5N(規定)の次亜塩素酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行い、カーボンブラックの表面にカルボン酸基が付与された顔料を含む反応液を得た。得られた反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過して分散体を得た。次いで、分散体とイオン交換水とを用いて透析膜による限外濾過を行い、更に、超音波分散を行って、顔料固形分濃度が20質量%である濃縮したブラック顔料分散体を得た。
【0129】
<シアン顔料分散体の作製例>
ブラック顔料分散体の作製において、カーボンブラックの代わりにピグメントブルー15:4(商品名:SMART Cyan 3154BA、SENSIENT社製)を用いた以外は、ブラック顔料分散体の作製と同様にして顔料固形分濃度が20質量%であるシアン顔料分散体を得た。
【0130】
<マゼンタ顔料分散体の作製例>
ブラック顔料分散体の作製において、カーボンブラックの代わりにピグメントレッド122(商品名:Pigment Red 122、サンケミカル社製)を用いた以外は、ブラック顔料分散体の作製と同様にして顔料固形分濃度が20質量%であるマゼンタ顔料分散体を得た。
【0131】
<イエロー顔料分散体の作製例>
ブラック顔料分散体の作製において、カーボンブラックの代わりにピグメントイエロー74(商品名:SMART Yellow 3074BA、SENSIENT社製)を用いた以外は、ブラック顔料分散体の作製と同様にして顔料固形分濃度が20質量%であるイエロー顔料分散体を得た。
【0132】
(白色顔料分散体の作製例)
酸化チタンSTR-100W(堺化学工業株式会社製)20g、顔料分散剤TEGO Dispers651(エボニック社製)5g、水75gを混合し、ビーズミル(リサーチラボ、株式会社シンマルエンタープライゼス製)にて、0.3mmΦのジルコニアビーズを充填率60%、8m/sにて5分間分散し、顔料固形分濃度が20質量%である白色顔料分散体を得た。
【0133】
(インクの作製例)
<ブラックインクB1の作製例>
以下の原料を順次分散、攪拌し、メンブランフィルターでろ過を行い、ブラックインクを作製した。
・ブラック顔料分散体 15部
・樹脂エマルジョン(商品名:ビニプランADH-893D、日信化学社製) 5部
・界面活性剤(商品名:ソフタノールEP-5035、日本触媒社製) 2部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.1部
・1,2-プロパンジオール 30部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール 10部
・イオン交換水 37.9部
【0134】
<シアンインクC1の作製例>
ブラックインクの作製において、ブラック顔料分散体の代わりにシアン顔料分散体を用いた以外は、ブラックインクの作製と同様にしてシアンインクを作製した。
【0135】
<マゼンタインクM1の作製例>
ブラックインクの作製において、ブラック顔料分散体の代わりにマゼンタ顔料分散体を用いた以外は、ブラックインクの作製と同様にしてマゼンタインクを作製した。
【0136】
<イエローインクY1の作製例>
ブラックインクの作製において、ブラック顔料分散体の代わりにイエロー顔料分散体を用いた以外は、ブラックインクの作製と同様にしてイエローインクを作製した。
【0137】
<ブラックインクB2の作製例>
ブラックインクB1の作製において、有機溶剤、水の含有比率を変更した以外は同様にして、ブラックインクB2を作製した。
【0138】
<シアンインクC2の作製例>
シアンインクC1の作製において、有機溶剤、水の含有比率を変更した以外は同様にして、シアンインクC2を作製した。
【0139】
<マゼンタインクM2の作製例>
マゼンタインクM1の作製において、有機溶剤、水の含有比率を変更した以外は同様にして、マゼンタインクM2を作製した。
【0140】
<イエローインクY2の作製例>
イエローインクY1の作製において、有機溶剤、水の含有比率を変更した以外は同様にして、イエローインクY2を作製した。
【0141】
<白インクW-1の作製例>
以下の原料を順次分散、攪拌し、メンブランフィルターでろ過を行い、白インクW-1を作製した。
・白色顔料分散体 40部
・樹脂エマルジョン(商品名:ビニプランADH-893D、日信化学社製) 2部
・界面活性剤(商品名:ソフタノールEP-5035、日本触媒社製) 2部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.1部
・1,2-プロパンジオール 25部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール 7部
・イオン交換水 23.9部
【0142】
<白インクW-2の作製例>
以下の原料を順次分散、攪拌し、メンブランフィルターでろ過を行い、白インクW-2を作製した。
・白色顔料分散体 40部
・樹脂エマルジョン(商品名:ビニプランADH-893D、日信化学社製) 2部
・界面活性剤(商品名:ソフタノールEP-5035、日本触媒社製) 2部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.1部
・1,2-プロパンジオール 20部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール 5部
・イオン交換水 30.9部
【0143】
<白インクW-3の作製例>
以下の原料を順次分散、攪拌し、メンブランフィルターでろ過を行い、白インクW-3を作製した。
・白色顔料分散体 40部
・樹脂エマルジョン(商品名:ビニプランADH-893D、日信化学社製) 2部
・界面活性剤(商品名:ソフタノールEP-5035、日本触媒社製) 2部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.1部
・1,2-プロパンジオール 30部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール 10部
・イオン交換水 15.9部
【0144】
<白インクW-4の作製例>
以下の原料を順次分散、攪拌し、メンブランフィルターでろ過を行い、白インクW-4を作製した。
・白色顔料分散体 40部
・樹脂エマルジョン(商品名:ビニプランADH-893D、日信化学社製) 2部
・界面活性剤(商品名:ソフタノールEP-5035、日本触媒社製) 2部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.1部
・1,2-プロパンジオール 35部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール 15部
・イオン交換水 5.9部
【0145】
上記カラーインク、白インクの処方を表1、表2、表3に示す。なお、表中の数値は質量部を表す。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
(実施例1~6、比較例1~5)
作製したブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを、それぞれインクジェット記録装置(商品名:VC-60000、リコー社製)の改造機のインク収容容器に充填し印刷を行った。インクジェット記録装置の改造機は、
図1と同様の各構成に改造を行った。このインクジェット記録装置の改造機を用い、以下の印刷条件で連続印刷を行った。
各実施例、比較例における印刷条件を以下に示す。また、あわせて表4に示す。
【0150】
<印刷条件>
・印刷長さ:2000m
・印刷速度:50m/分
・解像度:1200×1200dpi
・印刷画像:ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタ画像の上に、白インクを重ねて形成した
・非浸透性基材:OPP 20μmフィルム(商品名:パイレンP2161、東洋紡社製)
・コロナ処理装置:放電量20W・min/m2
・処理液付与手段:ロールコーター
・処理液:前記作製例の処理液
・インクジェットヘッド:ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、白の各インクに対応するインクジェットヘッド
・非吐出のノズルにおける微駆動条件(ノズル内におけるインク界面の振動条件):2kHz(吐出時のピエゾ電圧に対し20%の出力)
・処理液後、カラーインク前の加熱手段(第3の加熱手段):以下のいずれか
[1]温風乾燥(温風温度80℃)
[2]遠赤外線ヒーター(発熱部表面容量密度4W/m2、商品名:ハイレックスヒーターHHS1275、八光電機社製)
・カラーインク後、白インク前の加熱手段(第1の加熱手段):以下のいずれか
[1]遠赤外線ヒーター(発熱部表面容量密度4W/m2、商品名:ハイレックスヒーターHHS1275、八光電機社製)
[2]温風乾燥(温風温度80℃)
・白インク後の加熱手段(第2の加熱手段):以下のいずれか
[1]温風乾燥(温風温度80℃)
[2]温度制御可能なドラム(ドラム温度80℃)とドラムに対向させた温風乾燥(温風温度80℃)
[3]温度制御可能なドラム(ドラム温度70℃)とドラムに対向させた温風乾燥(温風温度100℃)
・カラーインク:前記作製例のブラック、シアン、マゼンタ、イエローインク
・白インク:前記作製例の白インクW-1~W-4のいずれか
【0151】
(評価)
次に、上記実施例1~6、比較例1~5の印刷を行った後、印刷開始時の印刷画像及びラミネート強度特性、並びに、2000m分の印刷終了時の印刷画像及びラミネート強度特性を、下記の方法及び評価基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0152】
<画像評価>
印刷開始時の印刷画像、及び2000m分の印刷終了時の印刷画像を目視で観察し、以下の基準で評価した。評価がB以上である場合を実用可能であると判断した。
【0153】
[評価基準]
A:異常は確認されない。
B:目視では異常を観察できないが、ルーペであれば印刷スジを観察できる。
C:目視で画像の一部にスジを観察できる。
D:目視で画像の全体にスジや濃度ムラを観察できる。
【0154】
<ラミネート強度評価>
印刷画像上にドライラミネート用接着剤(主剤TM-320/硬化剤CAT-13B、東洋モートン社製)をバーコーターで塗工し、CPP(東洋紡社製パイレンP1128)を貼り合わせた後、40℃で48時間エージングした。貼り合わせたフィルムを15mm幅にカットした後、剥離強度を測定し、以下の基準で評価した。Bまでが許容範囲である。
【0155】
[評価基準]
A:5N/15mm以上の強度が得られる。
B:3N/15mm以上5N/15mm未満の強度が得られる。
C:1N/15mm以上3N/15mm未満の強度が得られる。
D:1N/15mm未満の強度しか得られない。
【0156】