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特開2023-179238合成ガス製造用触媒、合成ガス製造用触媒の製造方法、及び、合成ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179238
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】合成ガス製造用触媒、合成ガス製造用触媒の製造方法、及び、合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20231212BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20231212BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231212BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20231212BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20231212BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20231212BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20231212BHJP
【FI】
B01J23/83 M
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/03 A
B01J23/63 M
C01B3/40
C01B32/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092432
(22)【出願日】2022-06-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前野 禅
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 眞太
(72)【発明者】
【氏名】李 咨睿
(72)【発明者】
【氏名】中島 靖
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
4G140EB43
4G140EC02
4G140EC03
4G140EC04
4G140EC08
4G146JA01
4G146JB02
4G146JB04
4G146JC01
4G146JC22
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA21C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB04C
4G169BB06B
4G169BB20C
4G169BC29A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC43C
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC68C
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BD06C
4G169BE20C
4G169CB81
4G169DA06
4G169EC25
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB08
4G169FB27
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC03
(57)【要約】
【課題】 低温でも、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することを可能とする合成ガス製造用触媒を提供すること。
【解決手段】 メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するケミカルループドライリフォーミング法に用いられる合成ガス製造用触媒であって、セリアと、セリアに担持された金属とを備え、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上である合成ガス製造用触媒。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するケミカルループドライリフォーミング法に用いられる合成ガス製造用触媒であって、
セリアと、
前記セリアに担持された金属とを備え、
反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上であることを特徴とする合成ガス製造用触媒。
【請求項2】
前記金属が、遷移金属及び/又は貴金属であることを特徴とする請求項1に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項3】
前記遷移金属が、ニッケルであることを特徴とする請求項2に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項4】
前記ニッケルの担持量が0.95質量%以上1.04質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項5】
X線回折法により測定されるNiO(111)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.03以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項6】
沈殿剤として尿素を用いた析出沈殿法により製造されることを特徴とする請求項5に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項7】
前記貴金属が、ルテニウム、白金、及び、パラジウムからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項2に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項8】
前記貴金属の担持量が0.46質量%以上1.04質量%以下であることを特徴とする請求項7に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項9】
X線回折法により測定される酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項10】
X線回折法により測定される酸化白金(311)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項11】
X線回折法により測定される酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.24以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の合成ガス製造用触媒。
【請求項12】
請求項3に記載の合成ガス製造用触媒の製造方法であって、
担体となる酸化セリウムを分散した液に、ニッケルを含む塩を添加して混合溶液を得る工程Aと、
前記混合溶液に沈殿剤を加え、沈殿物を生じさせることにより前駆体を得る工程Bと、
前記前駆体を熱処理して合成ガス製造用触媒を得る工程Cと
を含み、
前記沈殿剤が尿素であることを特徴とする合成ガス製造用触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の合成ガス製造用触媒に、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する工程X
を含むことを特徴とする合成ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガス製造用触媒、合成ガス製造用触媒の製造方法、及び、合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と一酸化炭素とを含む合成ガスは、各種石油化学製品の原料(基幹物質)として広く利用されている。合成ガスの製造方法としては、従来、メタンドライリフォーミング反応が知られている。メタンドライリフォーミング反応では、下記式1に示されるように、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素及び水素が製造される。
式1 : CO+CH→2CO+2H
【0003】
非特許文献1には、ドライリフォーミング反応用の触媒として、PVP(ポリビニルピロリドン)を用いて製造したニッケル担持酸化セリウム触媒が開示されている。非特許文献1には、当該触媒を使用し、900℃の条件下にてドライリフォーミング反応を行うことが開示されている。
【0004】
非特許文献2には、ドライリフォーミング反応用の触媒として、ニッケル担持酸化セリウム触媒が開示されている。非特許文献2には、ニッケル担持量が8.8~10.5%であり、600℃以上の条件下にてドライリフォーミング反応を行うことが開示されている。
【0005】
特許文献1には、酸化ニッケルを含む酸化セリウム触媒に対して、炭化水素と、500ppm以上の硫化水素と、水蒸気または二酸化炭素の少なくともいずれか一方と、を含む被処理ガスを接触させ、前記被処理ガス中の前記炭化水素を、水蒸気改質反応またはドライ改質反応の少なくともいずれか一方の反応で反応させて水素を製造する、水素の製造方法が開示されている。特許文献1には、炭化水素の水蒸気改質反応及びドライ改質反応は、双方ともに吸熱反応であり、反応温度が高くなければ十分な反応速度が得られないことが記載されており、反応温度は、650℃以上であることが開示されている。
【0006】
特許文献2には、ドライリフォーミング反応用の触媒として、M/Ce1-x2-δで示される触媒(Mは、Ni、Co、Pd、Ptから選択される1つまたは複数の金属、Bは、Ti、Zr、Mn、およびLaから選択される1または複数のドーパント;xは、0.05から0.5の範囲から選択される数δは、酸素欠乏を表す)が開示されている。
特許文献2には、当該触媒を使用し、650℃以上の条件下にてドライリフォーミング反応を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ACS Sustainable Chemistry & Engineering(2021),9(51),17276-17288
【非特許文献2】Chemical Engineering & Processing: Process Intensification 122 (2017)523-529
【特許文献1】特開2018-135262号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0121854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メタンドライリフォーミング反応は、温室効果ガスであるCOとCHから有用なCOとHを合成できるが、吸熱反応である本反応の進行には高温(例えば、700℃以上)が必要である。また、下記式2に示されるように、生成したHによるCOの還元反応(逆シフト反応)が併発しうる(式2)。逆シフト反応が起こると水素の収量が少なくなる点で好ましくない。また、失活の原因となる触媒表面へのコーキング(炭素析出)の抑制が必要となる。
式2: CO+H→CO+H
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温でも、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することを可能とする合成ガス製造用触媒を提供することにある。また、当該合成ガス製造用触媒の製造方法を提供することにある。また、当該合成ガス製造用触媒を用いた合成ガスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、合成ガス製造用触媒について鋭意研究を行った。その結果、下記構成を有する合成ガス製造用触媒は、低温でも、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するケミカルループドライリフォーミング法に用いられる合成ガス製造用触媒であって、
セリアと、
前記セリアに担持された金属とを備え、
反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上であることを特徴とする合成ガス製造用触媒。
【0012】
前記構成によれば、当該合成ガス製造用触媒は、ケミカルループドライリフォーミング法に用いられる。ケミカルループドライリフォーミング法では、反応を2段階に分離するため、熱力学的に優位となり、低温での反応を可能とすることができる。また、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させるため、触媒表面への炭素析出を抑制することができる。
また、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上であるため、400℃という低温においても反応を充分に進行させることができる。
このように、前記構成によれば、当該合成ガス製造用触媒を熱力学的に優位となるケミカルループドライリフォーミング法に用い、且つ、反応温度400℃におけるその1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上であるため、400℃という低温においても反応を充分に進行させることができる。
【0013】
[2]前記金属が、遷移金属及び/又は貴金属である[1]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0014】
[3]前記遷移金属が、ニッケルである[2]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0015】
前記遷移金属がニッケルである場合、ケミカルループドライリフォーミング法に使用すると、特に高い選択性(触媒機能)を示す。
【0016】
[4]前記ニッケルの担持量が0.95質量%以上1.04質量%以下である[3]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0017】
本発明者らは、ニッケルの担持量について、従来と比較しニッケルを高分散させることで、1.04質量%以下の少ない量にしてもメタン部分酸化反応に高い選択性(触媒機能)が維持されることを見出した。
すなわち、前記ニッケルの担持量を従来と比較して1.04質量%以下という少ない量にしても、メタン部分酸化反応に高い選択性(触媒機能)を示し、COの還元も同様に活性を示すことを確認した。
【0018】
[5]X線回折法により測定されるNiO(111)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.03以下である[3]又は[4]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0019】
比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.03以下であるということは、NiOに由来するピーク強度が弱く、NiOがセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面にNiOを均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0020】
[6]沈殿剤として尿素を用いた析出沈殿法により製造される[3]~[5]のいずれか1に記載の合成ガス製造用触媒。
【0021】
沈殿剤として尿素を用いた析出沈殿法により製造されると、セリア表面にNiOをより均一に分散させることができる。
【0022】
[7]前記貴金属が、ルテニウム、白金、及び、パラジウムからなる群から選ばれる1以上である[2]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0023】
前記貴金属が、ルテニウム、白金、及び、パラジウムからなる群から選ばれる1以上である場合、ケミカルループドライリフォーミング法に使用すると、特に高い選択性(触媒機能)を示す。
【0024】
[8]前記貴金属の担持量が0.46質量%以上1.04質量%以下である[7]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0025】
前記貴金属の担持量を従来と比較して1.0質量%以下という少ない量にすると、メタン部分酸化反応により高い選択性(触媒機能)を示す。
【0026】
[9]X線回折法により測定される酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下である[7]又は[8]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0027】
比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であるということは、ルテニウムがセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面にルテニウムを均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0028】
[10]X線回折法により測定される酸化白金(311)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下である[7]又は[8]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0029】
比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であるということは、白金がセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面に白金を均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0030】
[11]X線回折法により測定される酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.24以下である[7]又は[8]に記載の合成ガス製造用触媒。
【0031】
比[(酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.24以下であるということは、パラジウムがセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面にパラジウムを均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0032】
[12]上記[3]~上記[6]のいずれか1に記載の合成ガス製造用触媒の製造方法であって、
担体となる酸化セリウムを分散した溶液に、ニッケルを含む塩を添加して混合溶液を得る工程Aと、
前記混合溶液に沈殿剤を加え、沈殿物を生じさせることにより前駆体を得る工程Bと、
前記前駆体を熱処理して合成ガス製造用触媒を得る工程Cと
を含み、
前記沈殿剤が尿素である合成ガス製造用触媒の製造方法。
【0033】
前記構成によれば、沈殿剤として尿素を用いて沈殿物を生じさせる。沈殿剤として尿素を用いると徐々に塩基性にすることができるため、セリア表面にNiOを均一に分散させることができる。
【0034】
[13]上記[1]~上記[11]のいずれか1に記載の合成ガス製造用触媒に、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する工程X
を含む合成ガスの製造方法。
【0035】
上記[1]~上記[11]のいずれか1に記載の合成ガス製造用触媒を用いて、工程Xを行う(ケミカルループドライリフォーミング法による合成ガスの製造を行う)ため、反応を充分に進行させることができる。
【0036】
[14]前記工程Xを、300℃以上404℃以下の温度範囲にて行う[13]に記載の合成ガスの製造方法。
【0037】
上記[1]~上記[11]のいずれか1に記載の合成ガス製造用触媒を用いて、工程Xを行う(ケミカルループドライリフォーミング法による合成ガスの製造を行う)ため、300℃以上404℃以下という低温においても反応を充分に進行させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、低温でも、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することを可能とする合成ガス製造用触媒を提供することができる。また、当該合成ガス製造用触媒の製造方法を提供することができる。また、当該合成ガス製造用触媒を用いた合成ガスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】(a)は金属の担持なし(担体としてのセリアのみ)、(b)は実施例1の触媒、(c)は比較例1の触媒のX線回折スペクトルである。
図2図1のX線回折スペクトルの2θ=35°~40°部分の拡大図である。
図3】実施例2~実施例4の触媒のX線回折スペクトルである。
図4】実施例1の触媒を使用してケミカルドライリフォーミングした際のCO生成量の経時変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0041】
[合成ガス製造用触媒]
本実施形態に係る合成ガス製造用触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するケミカルループドライリフォーミング法に用いられる合成ガス製造用触媒であって、
セリアと、
前記セリアに担持された金属とを備え、
反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上である。
【0042】
上述の通り、本実施形態に係る触媒は、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するケミカルループドライリフォーミング法に用いられる。
【0043】
ケミカルループドライリフォーミング法は、酸素貯蔵能を有する金属酸化物(MO)を利用し、CHの部分酸化反応(式3)とCOの還元反応(式4)とを交互に行う方法であり、本実施形態では、金属酸化物(MO)として、セリアを用いる。
式3: CH+MO→CO+2H+MOX-1
式4: CO+MOX-1→CO+MO
【0044】
具体的に、ケミカルループドライリフォーミング法では、触媒が配置されたリアクターに、まず、原料CHを導入し、上記式3の反応によりHを生成させ、生成したHをリアクターから取り出す。次に、リアクターに原料COを導入し、上記式3の反応によりCOを生成する。
【0045】
ケミカルループドライリフォーミング法によれば、生成したHをリアクターから取り出した後、リアクターに原料COを導入するため、生成したHと原料COとがリアクター内で接触することはない。そのため、上記式2で示したような、逆シフト反応が起こることはない。その結果、水素の収量が少なくなるといったことは起こらない。
【0046】
また、ケミカルループドライリフォーミング法によれば、仮にコークが生成したとしても、COと反応させることにより消費して、その発生量を少なくすることができるとともに、COの収量を確保することが可能となる(下記式5参照)。
式5: C+CO→2CO
【0047】
また、ケミカルループドライリフォーミング法によれば、反応を2段階に分離するため、リアクター内にCOとCHとを同時に供給する一般的なドライリフォーミング法と比較して熱力学的に優位となり、低温での反応を可能とすることができる。
具体的に、一般的なドライリフォーミング反応では、CH+CO→2CO+2Hの反応の結合解離エネルギーが247kJ/molの吸熱反応であり、高温条件が必要となる。また、725℃以下であると、メタンの分解(CH→C+2H)と比較して熱力学的に不利である。
また、ケミカルループドライリフォーミング法によれば、CO+H→CO+HOの反応を防止し、高選択的に反応を進行させることができる。
【0048】
前記触媒は、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上である。反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量が0.3mmol/g以上であるため、400℃という低温においても上記ケミカルループドライリフォーミング法による反応を充分に進行させることができる。
なお、前記触媒は、400℃という低温においても上記ケミカルループドライリフォーミング法による反応を充分に進行させることができるのであり、当然、400℃よりも高い温度で使用すれば、400℃の場合と同等、又は、それ以上に反応を促進することができる。
【0049】
反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量は、好ましくは0.3mmol/g以上であり、より好ましくは0.35mmol/g以上である。
また、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量は、多いほど好ましいが、例えば、0.67mmol/g以下、0.7mmol/g以下等である。
【0050】
特に、前記金属がニッケルの場合、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量は、好ましくは0.35mmol/g以上であり、より好ましくは0.36mmol/g以上である。
前記金属がルテニウムの場合、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量は、好ましくは0.65mmol/g以上であり、より好ましくは0.66mmol/g以上である。
前記金属が白金の場合、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量は、好ましくは0.55mmol/g以上であり、より好ましくは0.58mmol/g以上である。
前記金属がパラジウムの場合、反応温度400℃における、メタンとの接触及び二酸化炭素との接触1サイクルにおける全一酸化炭素生成量は、好ましくは0.30mmol/g以上であり、より好ましくは0.33mmol/g以上である。
【0051】
前記触媒は、セリアと、前記セリアに担持された金属とを備える。
【0052】
前記金属は、遷移金属及び/又は貴金属であることが好ましい。前記金属が、遷移金属及び/又は貴金属であると、触媒として好適に機能する。
【0053】
前記遷移金属は、ニッケルであることが好ましい。前記遷移金属がニッケルであると、ケミカルループドライリフォーミング法に使用すると、特に高い選択性(触媒機能)を示す。なお、ニッケル以外の遷移金属は、ニッケルと同様の触媒特性を示す。
【0054】
前記遷移金属は、金属酸化物の形態で前記セリアに担持されていることが好ましい。具体的に、前記遷移金属がニッケルである場合、前記金属は、酸化ニッケル(NiO)の形態で前記セリアに担持されていることが好ましい。
【0055】
前記ニッケルの担持量は、0.95質量%以上1.04質量%以下であることが好ましい。本発明者らは、ニッケルの担持量について、従来と比較して1.04質量%以下という少ない量にすると、驚くべきことに、メタン部分酸化反応に選択性(触媒機能)を示すことを見出した。
すなわち、前記ニッケルの担持量を従来と比較して1.04質量%以下という少ない量にしても、メタン部分酸化反応に高い選択性(触媒機能)を示し、COの還元も同様に活性を示すことを確認した。
また、前記ニッケルの担持量を0.95質量%以上とすることにより、触媒としての機能を確保することができる。
【0056】
前記ニッケルの担持量は、より好ましくは1.03質量%以下、さらに好ましくは1.02質量%以下である。
前記ニッケルの担持量は、より好ましくは0.96質量%以上、さらに好ましくは0.97質量%以上である。
【0057】
前記遷移金属がニッケルである場合、X線回折法により測定されるNiO(111)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.03以下であることが好ましい。
【0058】
比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.03以下であるということは、NiOに由来するピーク強度が弱く、NiOがセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面にNiOを均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0059】
前記比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]は、小さいほど好ましいが、例えば、0.01以上、0.02以上等である。
【0060】
前記合成ガス製造用触媒は、特に、セリアにニッケルを担持させる場合、沈殿剤として尿素を用いた析出沈殿法により製造されることが好ましい。沈殿剤として尿素を用いた析出沈殿法により製造されると、セリア表面にNiOをより均一に分散させることができる。
【0061】
前記貴金属は、ルテニウム、白金、及び、パラジウムからなる群から選ばれる1以上であることが好ましい。前記貴金属が、ルテニウム、白金、及び、パラジウムからなる群から選ばれる1以上である場合、ケミカルループドライリフォーミング法に使用すると、特に高い選択性(触媒機能)を示す。なお、ルテニウム、白金、パラジウム以外の貴金属は、ルテニウム、白金、パラジウムと同様の触媒特性を示す。
【0062】
前記貴金属は、金属酸化物の形態で前記セリアに担持されていることが好ましい。具体的に、前記貴金属がルテニウムである場合、前記金属は、酸化ルテニウム(RuO)の形態で前記セリアに担持されていることが好ましい。前記貴金属が白金である場合、前記金属は、酸化白金(PtO)の形態で前記セリアに担持されていることが好ましい。前記貴金属がパラジウムである場合、前記金属は、酸化パラジウム(PdO)の形態で前記セリアに担持されていることが好ましい。
【0063】
前記貴金属の担持量は、0.46質量%以上1.04質量%以下であることが好ましい。本発明者らは、前記貴金属の担持量について、従来と比較して1.04質量%以下という少ない量にすると、驚くべきことに、メタン部分酸化反応に、より高い選択性(触媒機能)を示すことを見出した。
すなわち、前記貴金属の担持量を従来と比較して1.04質量%以下という少ない量にすると、メタン部分酸化反応に、より高い選択性(触媒機能)を示す。
また、前記貴金属の担持量を1.04質量%以上とすることにより、触媒としての機能を確保することができる。
【0064】
前記貴金属の担持量は、より好ましくは1.03質量%以下、さらに好ましくは1.02質量%以下である。
前記貴金属の担持量は、より好ましくは0.47質量%以上、さらに好ましくは0.48質量%以上である。
【0065】
前記貴金属がルテニウムである場合、X線回折法により測定される酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であることが好ましい。
【0066】
比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であるということは、ルテニウムがセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面にルテニウムを均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0067】
前記比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]は、より好ましくは0.044以下、さらに好ましくは0.042以下である。
前記比[(酸化ルテニウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]は、小さいほど好ましいが、例えば、0.015以上、0.018以上等である。
【0068】
前記貴金属が白金である場合、X線回折法により測定される酸化白金(311)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であることが好ましい。
【0069】
比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.06以下であるということは、白金がセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面に白金を均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0070】
前記比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]は、より好ましくは0.024以下、さらに好ましくは0.022以下である。
前記比[(酸化白金(311)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]は、小さいほど好ましいが、例えば、0.015以上、0.018以上等である。
【0071】
前記貴金属がパラジウムである場合、X線回折法により測定される酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度とセリア(111)面の回折ピーク強度との比[(酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.24以下であることが好ましい。
【0072】
比[(酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.24以下であるということは、パラジウムがセリア表面に均一に薄く存在していることを示している。セリア表面にパラジウムを均一に分散させることで触媒部位の数を増やすことができ、低温での活性を高くすることができる。
【0073】
前記比[(酸化パラジウム(101)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]は、小さいほど好ましいが、例えば、0.235以上、0.238以上等である。
【0074】
前記合成ガス製造用触媒は、セリア、前記金属以外の他の組成を含んでいても構わない。前記他の組成としては、W、Mo、Nbが挙げられる。W、Mo、Nbを含む場合、W、Mo、Nbもセリア同様に価数変化でき、触媒活性の向上に寄与するため好ましい。
【0075】
以上、合成ガス製造用触媒について説明した。
【0076】
[ニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法]
本実施形態に係るニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法は、
担体となる酸化セリウムを分散した液に、ニッケルを含む塩を添加して混合溶液を得る工程Aと、
前記混合溶液に沈殿剤を加え、沈殿物を生じさせることにより前駆体を得る工程Bと、
前記前駆体を熱処理して合成ガス製造用触媒を得る工程Cと
を含む。
ニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒を製造する場合、本実施形態のように、析出沈殿法(混合溶液に沈殿剤を加えて前駆体を得る方法)を用いることが好ましい。
以下、工程ごとに詳細に説明する。
【0077】
<工程A>
本実施形態に係るニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法では、まず、担体となる酸化セリウムを分散した液に、ニッケルを含む塩を添加して混合溶液を得る。
【0078】
原料となる前記酸化セリウムとしては、特に限定されないが、平均粒径3~7μm、比表面積50~100m/gものを用いることができる。前記酸化セリウムは、市販品を用いることができる。
【0079】
前記酸化セリウムを分散させるための液としては、特に限定されないが、例えば、水(純水、イオン交換水)、メタノール、エタノール等が挙げられる。中でも、ニッケル塩や沈殿剤の溶解の観点から、水が好ましい。
【0080】
前記酸化セリウムは、前記溶媒100mLに対して、0.5g以上20g以下の範囲で分散させることが好ましく、0.95g以上1.04g以下の範囲で分散させることより好ましい。前記数値範囲内で分散させることにより、後述の工程にて好適にニッケルを酸化セリウムに担持させることができる。
【0081】
原料となる前記ニッケルを含む塩としては、特に限定されないが、例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩酸塩等の無機塩;炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。中でも硝酸塩反応が容易であることから硝酸塩が好ましい。
【0082】
前記ニッケルを含む塩の添加量としては、酸化セリウムに対して0.97質量%以上1.04質量%以下の範囲となるようにすることが好ましく、0.98質量%以上1.02質量%以下の範囲となるようにすることがより好ましい。
【0083】
前記ニッケルを含む塩は、固体のまま酸化セリウムを分散させた液に添加してもよく、水溶液にしてから酸化セリウムを分散させた液に添加してもよい。
【0084】
前記ニッケルを含む塩を水溶液にしてから酸化セリウムを分散させる場合、前記ニッケルを含む塩の濃度としては、好ましくは1mmol/L以上5mmol/L以下、より好ましくは3mmol/L以上4mmol/L以下である。
【0085】
<工程B>
次に、前記混合溶液に沈殿剤を加え、沈殿物を生じさせることにより前駆体を得る。
【0086】
前記沈殿剤は、特に限定されないが、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基などを使用することができる。なかでも、より均一な前駆体を得ることができる観点から尿素が好ましい。尿素を用いることにより、混合溶液を徐々に塩基性にすることができ、その結果、セリア表面にNiOをより均一に分散させることができる。
なお、ニッケルをセリア表面に均一に分散させることは、これまで困難であったが、本発明者らの鋭意研究の結果、混合溶液を徐々に塩基性にすることによりこれを可能とすることが見出され、さらに、尿素を沈殿剤として使用すれば、好適に、セリア表面にNiOを均一に分散させることができることが見出された。
沈殿剤として尿素以外、例えば、アンモニアを用いる場合、非常に希薄な溶液とし、且つ、混合溶液に滴下することにより、混合溶液を徐々に塩基性にし得る。しかしながら、滴下速度の厳密な調整等が必要となる。一方、尿素を用いる場合は、滴下という操作が不要であり、混合溶液に混合するだけでよく、生産性に優れる。
【0087】
前記沈殿剤の添加量としては、ニッケル1molに対して19mol以上200mol以下が好ましく、19.5mol以上196mol以下がより好ましい。前記沈殿剤の添加量を前記数値範囲内とすることにより、高い収率で前駆体を得ることができる。
【0088】
その後、必要に応じて、生成した前駆体を取り出すために固液分離を行う。固液分離にはろ過、遠心分離等を用いることができ、固液を分離できる方法であれば特に限定されない。回収した前駆体は、さらに乾燥させてもよい。乾燥方法は特に限定されず、ロータリーエバポレーターを用いた乾燥や、一般的な箱型乾燥機、真空乾燥機も使用した乾燥が挙げられる。乾燥温度としては、特に限定されず、例えば、50℃以上100℃以下の範囲内とすることができる。乾燥時間としては、特に限定されず、例えば、5時間以上24時間以下の範囲内とすることができる。
【0089】
<工程C>
次に、得られた前記前駆体を熱処理して合成ガス製造用触媒を得る。
【0090】
熱処理温度としては、特に限定されないが、490℃以上510℃以下が好ましく、495℃以上504℃以下がより好ましい。
熱処理時間としては、特に限定されないが、2時間以上5時間以下が好ましく、3時間以上4時間以下がより好ましい。
熱処理には電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0091】
以上、ニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法について説明した。
【0092】
なお、ニッケル以外の遷移金属を担持させた合成ガス製造用触媒についても、上記のニッケルを担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法と同様の方法にて製造することができる。
【0093】
[貴金属を担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法]
本実施形態に係る貴金属を担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法は、
担体となる酸化セリウムを分散した液に、貴金属を含む塩を添加して混合溶液を得る工程Dと、
前記混合溶液を乾燥させ、前記貴金属を前記酸化セリウム上に析出させて前駆体を得る工程Eと、
前記前駆体を熱処理して合成ガス製造用触媒を得る工程Fと
を含む。
貴金属を担持させた合成ガス製造用触媒を製造する場合、本実施形態のように、含浸法(混合溶液を乾燥させて貴金属を担体である酸化セリウムに析出させて前駆体を得る方法)を用いることが好ましい。
以下、工程ごとに詳細に説明する。
【0094】
<工程D>
本実施形態に係る貴金属を担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法では、まず、担体となる酸化セリウムを分散した液に、貴金属を含む塩を添加して混合溶液を得る。
【0095】
原料となる前記酸化セリウムとしては、前記工程Aにて説明したものと同様のものを用いることができる。
【0096】
前記酸化セリウムを分散させるための液としては、前記工程Aにて説明したものと同様のものを用いることができる。
【0097】
前記酸化セリウムは、前記溶媒100mLに対して、0.5g以上10g以下の範囲で分散させることが好ましく、0.95g以上1.04g以下の範囲で分散させることより好ましい。前記数値範囲内で分散させることにより、後述の工程にて好適に貴金属を酸化セリウムに担持させることができる。
【0098】
原料となる前記貴金属を含む塩としては、特に限定されないが、例えば硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩酸塩等の無機塩;炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。中でも扱いが容易であることから塩化物や硝酸塩が好ましい。
【0099】
前記貴金属を含む塩の添加量としては、酸化セリウムに対して0.45質量%以上1.04質量%以下の範囲となるようにすることが好ましく、0.46質量%以上1.04質量%以下の範囲となるようにすることがより好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下の範囲となるようにすることが特に好ましい。
【0100】
前記貴金属を含む塩は、固体のまま酸化セリウムを分散させた液に添加してもよく、水溶液にしてから酸化セリウムを分散させた液に添加してもよい。
【0101】
前記貴金属を含む塩を水溶液にしてから酸化セリウムを分散させる場合、前記貴金属を含む塩の濃度としては、好ましくは0.1mmol/L以上500mmol/L以下、より好ましくは0.16mmol/L以上200mmol/L以下である。
【0102】
<工程E>
次に、前記混合溶液を乾燥させ、前記貴金属を前記酸化セリウム上に析出させて前駆体を得る。
【0103】
乾燥温度としては、特に限定されないが、20℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上90℃以下がより好ましい。
乾燥時間としては、特に限定されないが、3時間以上24時間以下が好ましく、10
時間以上16時間以下がより好ましい。
乾燥は大気圧下でおこなってもよく、減圧下で行ってもよいが、減圧下で行うことが好ましい。減圧下で行うことにより、すみやかに乾燥を行うことができる。
減圧下で行う場合、圧力(絶対圧力)は、20hPa以上40hPa以下が好ましく、26hPa以上34hPa以下がより好ましい。
【0104】
乾燥方法は特に限定されず、ロータリーエバポレーターを用いた乾燥や、減圧乾燥できる機器を使用した乾燥が挙げられる。
【0105】
その後、必要に応じて、生成した前駆体をさらに乾燥させてもよい。乾燥方法は特に限定されず、ロータリーエバポレーターを用いた乾燥や、一般的な箱型乾燥機、真空乾燥機も使用した乾燥が挙げられる。乾燥温度としては、特に限定されず、例えば、60℃以上90℃以下の範囲内とすることができる。乾燥時間としては、特に限定されず、例えば、10時間以上16時間以下の範囲内とすることができる。減圧する場合は40hPa~30hPaが好ましい。さらにエバポレーターのように常時回転させながら乾燥させる方法が好ましい。
【0106】
<工程F>
次に、得られた前記前駆体を熱処理して合成ガス製造用触媒を得る。この工程は、前記工程Cと同様とすることができる。
【0107】
なお、ニッケル等の遷移金属の場合、含浸法では遷移金属をセリア表面に均一に分散させることができず、沈殿析出法(特に、沈殿剤として尿素を用いた沈殿析出法)でなければ遷移金属をセリア表面に均一に分散させることができなかったが、貴金属の場合は、均一になるようにロータリーエバポレーターを用い常時回転しながら、段階的に所定圧まで減圧、これを10時間以上かけて行うことで含浸法により貴金属をセリア表面に均一に分散させることができる。一気に減圧(例えば、30hPaにまで減圧)すると突沸するため、突沸しないように段階的に減圧を行うことが好ましい。ニッケルについては、このような方法を用いても均一にすることができないため、尿素沈殿法を用いることが好ましい。
【0108】
以上、貴金属を担持させた合成ガス製造用触媒の製造方法について説明した。
【0109】
[合成ガスの製造方法]
本実施形態に係る合成ガスの製造方法は、
前記にて説明した合成ガス製造用触媒に、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する工程X
を含む。
【0110】
<工程X>
本実施形態に係る合成ガスの製造方法では、前記にて説明した合成ガス製造用触媒に、メタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する。
【0111】
触媒にメタン及び二酸化炭素を交互に接触させる間隔としては、特に限定されないが、反応速度の観点から、3分間隔~10分間隔(メタンとの接触3分~10分と二酸化炭素との接触3分~10分とを繰り返す)であることが好ましく、より好ましくは3分間隔~6分間隔である。前記間隔で触媒にメタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより、好適に合成ガスが得られる。
【0112】
触媒にメタン及び二酸化炭素を接触させる際のSV値(Space Velocity)については特に限定されない。SVは、350000~450000が好ましく、380000~430000がより好ましい。前記SVで触媒にメタン及び二酸化炭素を交互に接触させることにより、好適に合成ガスが得られる。
【0113】
触媒とメタンとの接触は、メタン(ガス)を単体で触媒に接触させてもよく、不活性ガス(ヘリウム等の希ガスや窒素等)との混合ガスを接触させてもよい。
混合ガスとする場合、混合ガス中のメタン濃度としては、不活性ガスに対して0.5%~2%が好ましく、0.96%~1.04%がより好ましい。濃度を前記数値範囲内とすることにより、より好適に合成ガスが得られる。
【0114】
触媒と二酸化炭素との接触は、二酸化炭素(ガス)を単体で触媒に接触させてもよく、不活性ガス(ヘリウム等の希ガスや窒素等)との混合ガスを接触させてもよい。
混合ガスとする場合、混合ガス中の二酸化炭素濃度としては、不活性ガスに対して0.5%~2%が好ましく、0.96%~1.04%がより好ましい。濃度を前記数値範囲内とすることにより、より好適に合成ガスが得られる。
【0115】
触媒にメタン及び二酸化炭素を交互に接触させる際の温度は、特に限定されず、300℃以上600℃以下の範囲内とすればよい。
ここで、ケミカルループドライリフォーミング法による反応は、温度が高いほど進行しやすいが、反応を高温で行うために、熱を加える必要がある。例えば、リアクター内を昇温させるために、原料ガス(メタン、二酸化炭素)に空気や酸素を共存させ、リアクター内で燃焼させて燃焼熱を得たり、リアクターに電気加熱炉を用いたりする等する必要がある。
一方、本実施形態では、前記触媒を使用するため、低温においても上記ケミカルループドライリフォーミング法による反応を充分に進行させることができる。
従って、本実施形態では、触媒にメタン及び二酸化炭素を交互に接触させる際の温度は、例えば、300℃以上404℃以下という低温とすることができる。
つまり、前記工程Xを、300℃以上404℃以下の温度範囲という低温にて行えば、高温にする必要がないため、無駄エネルギー消費が抑えられ、低コストで容易に反応を行うことができる。また、プラント建設等も低コスト、且つ、容易となる。
【0116】
工程Xを行うリアクターの材質としては、反応温度に耐え、使用ガスが漏洩しない材質であれば特に制限はされず、例えば、石英、CTE33(耐熱ガラス管)、SUS310Sを用いることができる。
【0117】
リアクター内にメタン及び二酸化炭素を交互に流す方法としては、特に限定されないが、例えば、リアクターと原料ガス供給源に接続されているガス配管とを四方弁で接続し、四方弁の操作によりリアクター内にメタン及び二酸化炭素を交互に流すことができる。
前記ガス配管、前記四方弁の材質は、ガスの漏洩の無い材質であれば特に制限されず、例えば、SUS316、SUS316L、Cr-Mo鋼、耐熱鋼等を用いることができる。
【0118】
流量の制御は、例えば、従来公知のマスフローコントローラを用いることができる。
【0119】
リアクター内の加熱には、例えば、セラミック電気管状炉等の電気炉等を用いることができる。例えば、加熱温度可能な温度範囲が150℃~1000℃であり、温度制御が設定温度に対して1%以内であることが好ましい。
【0120】
リアクター内の圧力は、特に制限さない。すなわち、前記触媒を用いれば、圧力は反応に大きな影響を与えない。一例として、リアクター内の圧力は、101KPa~102KPaの範囲内とすればよい。
【0121】
メタンと触媒とを接触させた際のCO生成量とH生成量との比[H生成量(mmol/g)]/[CO生成量(mmol/g)]は、1.5以上2.5以下が好ましく、1.6以上2.4以下がより好ましい。メタンと触媒とを接触させた際のCO生成量とH生成量との比[H生成量(mmol/g)]/[CO生成量(mmol/g)]が1.5以上2.5以下であると、反応が理論的に起こっていると判断できる。
【0122】
1サイクル(触媒とメタン及び二酸化炭素との接触)で得られる合成ガスの比[H(mmol/g)]/[CO(mmol/g)]は、0.5以上1.5以下が好ましく、0.96以上1.04以下がより好ましい。1サイクル(触媒とメタン及び二酸化炭素との接触)で得られる合成ガスの比[H(mmol/g)]/[CO(mmol/g)]が0.5以上1.5以下であると、各反応が理論的に起こっていると判断できる。
【0123】
以上、本実施形態に係る合成ガスの製造方法について説明した。
【実施例0124】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0125】
以下の実施例で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、本発明の好ましい最小値、好ましい最大値と考慮されるべきである。
また、以下の実施例で示される測定値の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、本発明の好ましい最小値、最大値であると考慮されるべきである。
【0126】
[合成ガス製造用触媒の作製]
(実施例1)
Ni(NO・6HO(KANTO Chemical Co.INC, AR 98%)250mgを250mLのイオン交換水に溶解することで3.44mmol/LのNi硝酸塩溶液を調製した。
100mLのイオン交換水にCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.99gを分散させた。次に、調整したNi硝酸塩溶液49.5mLを添加して混合溶液を得た。その後、尿素(CHO,FUJIFILM WAKO Pure Chemical corporation, AR 99%)0.2gを加え、90℃で24時間撹拌した。
室温に放冷した後、沈殿物の遠心分離を行い、5回イオン交換水にて洗浄したものをロータリーエバポレーターにて乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、実施例1に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0127】
(実施例2)
RuCl・3HO(FUJIFILM WAKO Pure Chemical corporation, AR >99.9%)25.9mgとCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.99gとを100mLのイオン交換水に混合した。次に、ロータリーエバポレーターを用いて70hPa、50℃にて減圧乾燥し、十分に乾燥した後に、更に圧力を30hPaにまで下げ、30分間減圧乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、実施例2に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0128】
(実施例3)
(NHPt(NO溶液(KFK Factory, Japan,50g/L,4.6wt%)0.2016gとCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.99gとを100mLのイオン交換水に混合した。次に、ロータリーエバポレーターを用いて70hPa、50℃にて減圧乾燥し、十分に乾燥した後に、更に圧力を30hPaにまで下げ、30分間減圧乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、実施例3に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0129】
(実施例4)
Pd(NH(NO溶液(Kojima Chemicals 50.4g/L)0.2032gとCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.99gとを100mLのイオン交換水に混合した。次に、ロータリーエバポレーターを用いて70hPa、50℃にて減圧乾燥し、十分に乾燥した後に、更に圧力を30hPaにまで下げ、30分間減圧乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、実施例4に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0130】
(比較例1)
Ni(NO・6HO(KANTO Chemical Co.INC, AR 98%)250mgを250mLのイオン交換水に溶解することで3.44mmol/LのNi硝酸塩溶液を調製した。
次に、調整したNi硝酸塩溶液49.5mLとCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.99gとを100mLのイオン交換水に混合した。次に、ロータリーエバポレーターを用いて70hPa、50℃にて減圧乾燥し、十分に乾燥した後に、更に圧力を30hPaにまで下げ、30分間減圧乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、比較例1に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0131】
(比較例2)
Ni(NO・6HO(KANTO Chemical Co.INC, AR 98%)250mgを250mLのイオン交換水に溶解することで3.44mmol/LのNi硝酸塩溶液を調製した。
100mLのイオン交換水にCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.999gを分散させた。次に、調整したNi硝酸塩溶液4.95mLを添加して混合溶液を得た。その後、尿素(CHO,FUJIFILM WAKO Pure Chemical corporation, AR 99%)0.2gを加え、90℃で24時間撹拌した。
室温に放冷した後、沈殿物の遠心分離を行い、5回イオン交換水にて洗浄したものをロータリーエバポレーターにて乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、比較例3に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0132】
(比較例3)
Ni(NO・6HO(KANTO Chemical Co.INC, AR 98%)250mgを250mLのイオン交換水に溶解することで3.44mmol/LのNi硝酸塩溶液を調製した。
100mLのイオン交換水にCeO(JRC-CEO-3(Type B), AR 99.97%)0.995gを分散させた。次に、調整したNi硝酸塩溶液24.75mLを添加して混合溶液を得た。その後、尿素(CHO,FUJIFILM WAKO Pure Chemical corporation, AR 99%)0.2gを加え、90℃で24時間撹拌した。
室温に放冷した後、沈殿物の遠心分離を行い、5回イオン交換水にて洗浄したものをロータリーエバポレーターにて乾燥し、前駆体を得た。得られた前駆体を90℃の乾燥機にて12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、比較例3に係る合成ガス製造用触媒を得た。
【0133】
[X線回折スペクトル]
各触媒について、X線回折装置(「MiniFlex II/AP」リガク製)を用い、X線回折スペクトルを得た。測定条件は下記の通りとした。得られたX線回折スペクトルを図1図3に示す。図1中(a)は金属の担持なし(担体としてのセリアのみ)、(b)は実施例1の触媒、(c)は比較例1の触媒のX線回折スペクトルである。図2は、図1のX線回折スペクトルの2θ=35°~40°部分の拡大図である。図3中、Ru(1)CeOは実施例2の触媒、Pt(1)CeOは実施例3の触媒、Pd(0.5)CeOは実施例4の触媒のX線回折スペクトルである。
得られた結果から算出した比[NiOピーク強度]/[CeOピーク強度]を、表1に示す。また、得られた結果から算出した比[RuOピーク強度]/[CeOピーク強度]、比[PtOピーク強度]/[CeOピーク強度]、比[PdOピーク強度]/[CeOピーク強度]を表2に示す。
なお、NiOピーク強度は、2θ=37.17°付近に観測されるものを使用した。
CeOピーク強度は、2θ=28.52°付近に観測されるものを使用した。
RuOピーク強度は、2θ=34.70°付近に観測されるものを使用した。
PtOピーク強度は、2θ=61.50°付近に観測されるものを使用した。
PdOピーク強度は、2θ=33.30°付近に観測されるものを使用した。
<測定条件>
測定装置:X線回折装置(「MiniFlex II/AP」リガク製)
線源:CuKα線源
管電圧:30kV
管電流:10mA
走査速度:2θ=20~80°:1°/分
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
X線回折スペクトルの結果から、実施例1の触媒は、金属が担持されているにも関わらず、比[(NiO(111)面の回折ピーク強度)/(セリア(111)面の回折ピーク強度)]が0.03以下であり、NiOの回折ピーク強度が小さいことから、担体としてのセリア表面に薄く均一に担持されていることが推察された。
実施例2-実施例4も同様に、X線回折スペクトルの結果から、実施例2-4の触媒は、金属(ニッケル、ルテニウム、白金、パラジウム)が担体としてのセリア表面に薄く均一に担持されていると推察された。
【0137】
[触媒評価(ケミカルドライリフォーミング、1サイクル)]
石英管(内径4mm)にグラスウールを詰めたリアクターに、評価試料(実施例1~4、比較例1~3の触媒)40mgを充填し、1%CH/Heガス(1質量%のCHを含むHeガス)及び1%CO/Heガス(1質量%のCOを含むHeガス)を100ml/minの流速(空間速度(SV)=443200)で、5分間隔で交互に流した。ガスの切替は4方バルブ(GLサイエンス AR-CF-4)を用い、流速制御には表示器付マスフローコントローラ/マスフローメータ 8500(コフロック株式会社製)を用いた。生成したガスCO及び未反応のCO、CHを赤外分光器(SHIMADU IR Spirit)で定量し、生成ガスHを質量分析器(JEOL JMS-Q1500GC)で定量した。
【0138】
赤外分光器の測定条件は次の通りである。
測定波数CO:1995-2227cm-1
測定波数CH:2992-3026cm-1
測定波数CO:2235-2395cm-1
分解能:8cm-1
積算回数:5回
測定間隔:10秒
ガスセルの長さ:18cm
【0139】
質量分析器の測定条件は以下の通りである。
リペラ電圧:12V
イオン化エネルギー:18eV
イオン源温度:150℃
時間間隔:3349.21ms
【0140】
リアクターの加熱には電気炉(アサヒ理化製作所製)を用い、400℃にて測定を行った。表3に、CHとの接触5分(300秒)を行い、その後、COとの接触5分(300秒)を行った1サイクルでのCO生成量を示す。具体的に、CHとの接触5分(300秒)を行った間に発生したCO生成量を、表3の「CO生成量」の「CH」の欄に、COとの接触5分(300秒)を行った間に発生したCO生成量を、表3の「CO生成量」の「CO」の欄に、1サイクルでの全一酸化炭素生成量(前記「CH」欄と前記「CO」欄との合計)を表3の「CO生成量」の「合計量」の欄に示す。さらに、CHとの接触5分(300秒)を行った間に発生したCOの生成濃度を、表3の「CO生成濃度」の「CH」の欄に、COとの接触5分(300秒)を行った間に発生したCOの生成濃度を、表3の「CO生成濃度」の「CO」の欄に示す。また、図4に、実施例1のCO生成量の経時変化のグラフを示す。
なお、表3には、仕込み量から計算される触媒の担持量も合わせて示す。ここには記載しないが、組成分析により、触媒の担持量は、仕込み量から計算される組成比率と同等(誤差範囲レベル)であることが確認された。
【0141】
また、表4には、実施例1の触媒について、CHとの接触5分(300秒)を行った際のCO生成量とH生成量とを示す。また、CO生成量とH生成量との比[(H生成量)/(CO生成量)]を合わせて表4に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
[耐久試験(ケミカルドライリフォーミング、複数サイクル)]
上記触媒評価と同じ試験条件で、実施例1の触媒については10サイクル、比較例1の触媒については6サイクルの試験を行った。その際の各サイクルでのCO生成量とCO生成濃度を表5に示す。
【0145】
【表5】
図1
図2
図3
図4