(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179285
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ろ過装置、ディスプレイ用ガラス基板の製造装置、ろ過方法およびディスプレイ用ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20231212BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20231212BHJP
B01D 35/14 20060101ALI20231212BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D65/10
B01D35/14
H01L21/304 648F
H01L21/304 648K
H01L21/304 648G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092529
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安達 潤一郎
【テーマコード(参考)】
4D006
4D116
5F157
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA07
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5F157DC21
(57)【要約】
【課題】フィルターの異常の判定精度を向上する、技術を提供すること。
【解決手段】ろ過装置は、フィルターと、上流ラインと、ポンプと、下流ラインと、圧力検出器と、判定部と、を備える。前記フィルターは、原水をろ過することで透過水を生成する。前記ポンプは、前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出す。前記下流ラインは、前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる。前記圧力検出器は、前記下流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する。前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第1閾値を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定する。前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第2期間内に第2閾値を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定する。前記第2閾値は前記第1閾値よりも高く、前記設定回数は複数回である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をろ過することで透過水を生成するフィルターと、
前記フィルターに前記原水を供給する上流ラインと、
前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出すポンプと、
前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる下流ラインと、
前記下流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する圧力検出器と、
前記フィルターの異常の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第1閾値を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定し、且つ前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第2期間内に第2閾値を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定し、
前記第2閾値は前記第1閾値よりも高く、前記設定回数は複数回である、ろ過装置。
【請求項2】
原水をろ過することで透過水を生成するフィルターと、
前記フィルターに前記原水を供給する上流ラインと、
前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出すポンプと、
前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる下流ラインと、
前記下流ラインにおいて前記透過水の流量を検出する流量検出器と、
前記フィルターの異常の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記流量検出器の検出値が第1閾値を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定し、且つ前記ポンプの作動中における前記流量検出器の検出値が第2期間内に第2閾値を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定し、
前記第2閾値は前記第1閾値よりも高く、前記設定回数は複数回である、ろ過装置。
【請求項3】
原水をろ過することで透過水を生成するフィルターと、
前記フィルターに前記原水を供給する上流ラインと、
前記上流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する第1圧力検出器と、
前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出すポンプと、
前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる下流ラインと、
前記下流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する第2圧力検出器と、
前記フィルターの異常の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記第1圧力検出器の検出値と前記第2圧力検出器の検出値との差(>0)が第1閾値を第1期間連続して上回る場合に第1異常が有ると判定し、前記ポンプの作動中における前記差が第2期間内に第2閾値を上回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定し、
前記第2閾値は前記第1閾値よりも小さく、前記設定回数は複数回である、ろ過装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1異常が有ると判定した場合には前記ポンプの作動を禁止すると共に警報を報知する制御を行い、前記第2異常が有ると判定した場合には前記ポンプの作動を許容すると共に警報を報知する制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記第2期間は前記第1期間よりも長く設定される、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記第1異常と前記第2異常の少なくとも一方が有ると判定した回数が所定期間に設定回数に達した場合に、前記フィルターの交換を促す警報を報知する制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装置を備える、ディスプレイ用ガラス基板の製造装置。
【請求項8】
ろ過装置を用いて原水をろ過することを有する、ろ過方法であって、
前記ろ過装置は、前記原水をろ過することで透過水を生成するフィルターと、前記フィルターに前記原水を供給する上流ラインと、前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出すポンプと、前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる下流ラインと、前記下流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する圧力検出器と、を備え、
前記ろ過方法は、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第1閾値を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定することと、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第2期間内に第2閾値を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定することと、を有し、
前記第2閾値は前記第1閾値よりも高く、前記設定回数は複数回である、ろ過方法。
【請求項9】
ろ過装置を用いて原水をろ過することを有する、ろ過方法であって、
前記ろ過装置は、前記原水をろ過することで透過水を生成するフィルターと、前記フィルターに前記原水を供給する上流ラインと、前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出すポンプと、前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる下流ラインと、前記下流ラインにおいて前記透過水の流量を検出する流量検出器と、を備え、
前記ろ過方法は、前記ポンプの作動中における前記流量検出器の検出値が第1閾値を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定することと、前記ポンプの作動中における前記流量検出器の検出値が第2期間内に第2閾値を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定することと、を有し、
前記第2閾値は前記第1閾値よりも高く、前記設定回数は複数回である、ろ過方法。
【請求項10】
ろ過装置を用いて原水をろ過することを有する、ろ過方法であって、
前記ろ過装置は、前記原水をろ過することで透過水を生成するフィルターと、前記フィルターに前記原水を供給する上流ラインと、前記上流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する第1圧力検出器と、前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出すポンプと、前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる下流ラインと、前記下流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する第2圧力検出器と、を備え、
前記ろ過方法は、前記ポンプの作動中における前記第1圧力検出器の検出値と前記第2圧力検出器の検出値との差(>0)が第1閾値を第1期間連続して上回る場合に第1異常が有ると判定することと、前記ポンプの作動中における前記差が第2期間内に第2閾値を上回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定することと、を有し、
前記第2閾値は前記第1閾値よりも小さく、前記設定回数は複数回である、ろ過方法。
【請求項11】
前記第1異常が有ると判定した場合には前記ポンプの作動を禁止すると共に警報を報知することと、前記第2異常が有ると判定した場合には前記ポンプの作動を許容すると共に警報を報知することと、を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載のろ過方法。
【請求項12】
前記第2期間は前記第1期間よりも長く設定される、請求項8~10のいずれか1項に記載のろ過方法。
【請求項13】
前記第1異常と前記第2異常の少なくとも一方が有ると判定した回数が所定期間に設定回数に達した場合に、前記フィルターの交換を促す警報を報知することを有する、請求項8~10のいずれか1項に記載のろ過方法。
【請求項14】
請求項8~10のいずれか1項に記載のろ過方法で得られる前記透過水を用いて、ディスプレイ用ガラス基板を製造することを有する、ディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ろ過装置、ディスプレイ用ガラス基板の製造装置、ろ過方法およびディスプレイ用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過装置は、フィルターと、上流ラインと、ポンプと、下流ラインと、各種検出器と、制御部と、を備える。フィルターは、原水を浄化することで透過水を生成する。上流ラインは、フィルターに向けて原水を供給する。ポンプは、上流ラインにおいてフィルターに向けて原水を送り出す。下流ラインは、フィルターを通過した透過水を流通させる。各種検出器は、上流ラインまたは下流ラインにおいて原水または透過水の物理量(例えば圧力、流量または温度)を検出する。制御部は、ポンプなどを制御する。
【0003】
特許文献1には、フィルターの異常、具体的には、フィルターを構成する逆浸透膜の詰まり又は劣化を判断する方法が記載されている。特許文献1の方法は、流量センサ、温度センサ、および圧力センサの検出値に基づいて透過水の流束を算出し、算出した透過流束と初期透過流束を比較することで、逆浸透膜の詰まり又は劣化を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様は、フィルターの異常の判定精度を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るろ過装置は、フィルターと、上流ラインと、ポンプと、下流ラインと、圧力検出器と、判定部と、を備える。前記フィルターは、原水をろ過することで透過水を生成する。前記上流ラインは、前記フィルターに前記原水を供給する。前記ポンプは、前記上流ラインにおいて前記フィルターに向けて前記原水を送り出す。前記下流ラインは、前記フィルターを通過した前記透過水を流通させる。前記圧力検出器は、前記下流ラインにおいて前記透過水の圧力を検出する。前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第1閾値を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定する。前記判定部は、前記ポンプの作動中における前記圧力検出器の検出値が第2期間内に第2閾値を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定する。前記第2閾値は前記第1閾値よりも高く、前記設定回数は複数回である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、外乱に起因する検出値の変動を排除して異常の有無を判定でき、異常の判定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るディスプレイ用ガラス基板の製造装置を示す図である。
【
図2】
図2は、第2ポンプの作動中における第2圧力検出器の検出値の経時変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において同一のまたは対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
図1を参照して、一実施形態に係るディスプレイ用ガラス基板の製造装置1について説明する。
図1において、「P」はポンプを表し、「PD」は圧力検出器を表し、「FD」は流量検出器を表す。
【0011】
製造装置1は、ろ過装置2と、洗浄装置3と、研磨装置4と、を備える。ろ過装置2は、原水をろ過することで透過水を生成する。透過水は、原水よりも低い不純物濃度を有する。透過水は、例えば洗浄装置3または研磨装置4で使用される。洗浄装置3は、透過水を用いてディスプレイ用ガラス基板を洗浄する。研磨装置4は、透過水を用いてディスプレイ用ガラス基板を研磨する。
【0012】
ディスプレイ用ガラス基板には、例えばTFT(Thin Film Transistor)またはカラーフィルターが形成される。ディスプレイ用ガラス基板には、高い品質が安定して求められる。それゆえ、透過水にも、高い品質が安定して求められる。なお、ろ過装置2の用途は、ディスプレイ用ガラス基板の製造装置1には限定されない。
【0013】
ろ過装置2は、例えば、上流側から下流側に向けて、原水タンク11と、第1ライン12と、保安フィルター13と、第2ライン14と、第1フィルター15と、第3ライン16と、第2フィルター17と、第4ライン18と、透過水タンク19と、をこの順番で備える。
【0014】
原水タンク11は、不純物を含む原水を貯留する。透過水タンク19は、保安フィルター13と第1フィルター15と第2フィルター17をこの順番で通過した透過水を貯留する。保安フィルター13は、第1フィルター15の目詰まりを抑制すべく、第1フィルター15よりも上流で固体粒子などを捕集する。第1フィルター15と第2フィルター17は、例えば逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜であって、水分子よりも僅かに大きい通水孔を多数有する。RO膜は、水に溶解した溶質をも除去できる。
【0015】
RO膜の代わりに、ナノろ過(NF:Nano Filtraion)膜を用いることも可能である。RO膜およびNF膜は、原水を透過水と濃縮水に分離する。透過水は、原水よりも低い不純物濃度を有する。濃縮水は、原水よりも高い不純物濃度を有する。濃縮水は、ろ過装置2の外部に排出される。濃縮水の一部は、原水タンク11に還流されてもよい。
【0016】
第1ライン12は、原水タンク11と保安フィルター13を接続する。第2ライン14は、保安フィルター13と第1フィルター15を接続する。第3ライン16は、第1フィルター15と第2フィルター17を接続する。第4ライン18は、第2フィルター17と透過水タンク19を接続する。透過水タンク19は、液面レベル検出器19aを有する。液面レベル検出器19aは、透過水タンク19の貯水量を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。
【0017】
ろ過装置2は、制御部90を備える。制御部90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備える。記憶部には、ろ過装置2において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部90は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部に実行させることにより、ろ過装置2の動作を制御する。
【0018】
制御部90は、液面レベル検出器19aの検出値が下限値を下回る場合に、透過水の貯水量を増やすべく、第1ポンプ21と第2ポンプ22と第3ポンプ23を作動させる。第1ポンプ21は、第1ライン12において保安フィルター13に向けて水を送り出す。第2ポンプ22は、第2ライン14において第1フィルター15に向けて水を送り出す。第3ポンプ23は、第3ライン16において第2フィルター17に向けて水を送り出す。
【0019】
制御部90は、上記の通り、液面レベル検出器19aの検出値が下限値を下回る場合に、第1ポンプ21と第2ポンプ22と第3ポンプ23を作動させる。これにより、透過水の貯水量を一定レベル以上に維持でき、透過水の安定供給が可能になる。制御部90は、液面レベル検出器19aの検出値が上限値を上回る場合に、第1ポンプ21と第2ポンプ22と第3ポンプ23を停止させる。これにより、透過水のオーバーフローを防止できる。
【0020】
ろ過装置2は、例えば、第1インバータ31と第2インバータ32と第3インバータ33を備える。第1インバータ31は、制御部90から送られる制御信号に応じた周波数の交流電流を第1ポンプ21に供給する。第1ポンプ21の回転数は、第1ポンプ21に供給する交流電流の周波数で制御される。
【0021】
同様に、第2インバータ32は、制御部90から送られる制御信号に応じた周波数の交流電流を第2ポンプ22に供給する。第2ポンプ22の回転数は、第2ポンプ22に供給する交流電流の周波数で制御される。また、第3インバータ33は、制御部90から送られる制御信号に応じた周波数の交流電流を第3ポンプ23に供給する。第3ポンプ23の回転数は、第3ポンプ23に供給する交流電流の周波数で制御される。
【0022】
ところで、時間の経過とともに、第1フィルター15の目詰まりが進行する。第1フィルター15の目詰まりが進行するほど、第1フィルター15によって生成される透過水の流量が低下する。透過水の流量が低下するほど、透過水の圧力も低下する。そこで、ろ過装置2は、第1フィルター15の目詰まりの程度を判定すべく、第1フィルター15の上流側または下流側に圧力検出器と流量検出器の少なくとも1つを備える。
【0023】
第1圧力検出器41は、第2ライン14において、第2ポンプ22と第1フィルター15の間に設けられる。第2ライン14は、第1フィルター15の上流に設けられる上流ラインである。第2ライン14は、第1フィルター15に原水を供給する。第1圧力検出器41は、第1フィルター15に対する原水の供給圧を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。
【0024】
第2圧力検出器42は、第3ライン16において、第1フィルター15と第3ポンプ23の間に設けられる。第3ライン16は、第1フィルター15の下流に設けられる下流ラインである。第3ライン16は、第1フィルター15を通過した透過水を流通させる。第2圧力検出器42は、第1フィルター15を通過した透過水の圧力を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。
【0025】
第1流量検出器51は、第3ライン16において、第1フィルター15と第3ポンプ23の間に設けられる。第1流量検出器51は、第1フィルター15を通過した透過水の流量を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。
【0026】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における圧力検出器または流量検出器の検出値に基づき第1フィルター15の異常の有無を判定する判定部を兼ねる。第1フィルター15の異常は、第1フィルター15の目詰まりを含む。制御部90は、目詰まりの程度を段階的に評価してもよい。なお、制御部90と判定部は、別々に設けられ、互いに各種信号を送受信してもよい。
【0027】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における圧力検出器または流量検出器の検出値を、異常の有無の判定に使用する。制御部90は、第2ポンプ22の停止中における圧力検出器または流量検出器の検出値を、異常の有無の判定に使用しない。第2ポンプ22の停止中は、透過水の生成が行われず、検出値が異常を示すからである。第2ポンプ22の停止は、上記の通り、透過水タンク19の液面レベル検出器19aの検出値が上限値を上回る場合に行われる。
【0028】
図2に、第2ポンプ22の作動中における第2圧力検出器42の検出値の経時変化の一例を示す。時間の経過とともに、第1フィルター15の目詰まりが進行する。第1フィルター15の目詰まりが進行するほど、第1フィルター15によって生成される透過水の流量が低下し、第2圧力検出器42の検出値が低下する。
【0029】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における第2圧力検出器42の検出値を設定時間ごとに取得する。
【0030】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における第2圧力検出器42の検出値が第1閾値PTH1を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定する。第1閾値PTH1と第1期間は、それぞれ、第1異常の種類、例えば第1異常が有ると判定されたときの制御部90の対応などに応じて設定される。第1閾値PTH1と第1期間は、それぞれ、予め行われる実験結果などに基づき設定され、制御部90の記憶部に記憶される。
【0031】
第2ポンプ22の作動中に第2圧力検出器42の検出値が第1閾値PTH1を下回ると、制御部90はタイマーで経過時間を計測し、経過時間が第1期間に達すると、制御部90は第1異常が有ると判定する。経過時間が第1期間に達する前に、第2圧力検出器42の検出値が第1閾値PTH1以上になると、制御部90は第1異常が無いと判定する。第2ポンプ22の脈動などの外乱に起因する検出値の変動を排除して第1異常の有無を判定でき、第1異常の判定精度を向上できる。
【0032】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における第2圧力検出器42の検出値が第2期間内に第2閾値PTH2を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定する。第2閾値PTH2と第2期間は、それぞれ、第2異常の種類、例えば第2異常が有ると判定されたときの制御部90の対応などに応じて設定される。第2閾値PTH2と第2期間は、それぞれ、予め行われる実験結果などに基づき設定され、制御部90の記憶部に記憶される。
【0033】
第2閾値PTH2は、第1閾値PTH1よりも高い。それゆえ、検出値が第2閾値PTH2を下回る回数は、外乱の影響を受けやすい。そこで、第2期間は、第1期間よりも長く設定されてもよい。第2期間は、特に限定されないが、例えば1時間、1日および1月から選択される。
【0034】
第2異常の有無の判定で用いられる設定回数は、第2期間に応じて設定される。第2期間が短いほど、設定回数が少ない。設定回数は、複数回であればよい。設定回数が複数回であれば、第2ポンプ22の脈動などの外乱に起因する検出値の変動を排除して第2異常の有無を判定でき、第2異常の判定精度を向上できる。
【0035】
次に、第1異常または第2異常が有ると判定された場合の対応について説明する。本実施形態では、第1異常が有ると判定された場合と、第2異常が有ると判定された場合とで、異なる対応が行われる。なお、第1異常が有ると判定された場合と、第2異常が有ると判定された場合とで、同じ対応が行われてもよい。
【0036】
制御部90は、第1異常が有ると判定した場合には、例えばろ過装置2の運転を禁止すべく第2ポンプ22の作動を禁止する制御を行う。制御部90は、ろ過装置2の運転を禁止する場合、第2ポンプ22だけではなく、第1ポンプ21および第3ポンプ23の作動も禁止する制御を行う。この場合、透過水タンク19の液面レベル検出器19aの検出値が下限値を下回っても、各ポンプは停止したままである。
【0037】
また、制御部90は、第1異常が有ると判定した場合には、警報を報知する制御をも行う。警報の報知は、報知装置61を用いて行う。報知装置61は、例えば表示装置、警告灯、またはブザーなどである。第1異常が有ると判定した場合に報知する警報は、例えば、第2ポンプ22の回転数の上昇を促す警報である。
【0038】
ろ過装置2の管理者は、警報を受けて、第2ポンプ22の設定回転数を実際に上昇するか否かを判断する。その判断材料としては、例えば、第2ポンプ22の現在の設定回転数、第1フィルター15の交換からの経過時間、または第1フィルター15の交換からの透過水の生成量が用いられる。
【0039】
ろ過装置2の管理者は、第2ポンプ22の設定回転数を上昇すると判断した場合、新しい設定回転数を制御部90に入力すると共に、ろ過装置2の運転禁止を解除する指令を制御部90に入力する。その後、制御部90は、入力された新しい設定回転数で第2ポンプ22を回転させる制御を行う。
【0040】
制御部90は、第2異常が有ると判定した場合には、第1異常が有ると判定した場合とは異なり、ろ過装置2の運転(つまり、第2ポンプ22の作動)を禁止せずに第2ポンプ22の作動を許容する。また、制御部90は、第2異常が有ると判定した場合には、第1異常が有ると判定した場合と同様に警報を報知する制御を行う。
【0041】
図2に示すように、第2閾値P
TH2は第1閾値P
TH1よりも高い。それゆえ、通常、第1異常が有ると判定される前に、第2異常が有ると判定される。ろ過装置2の運転を禁止する前に警報を報知でき、ろ過装置2の管理者に対応(例えば第2ポンプ22の設定回転数の上昇)を促すことができる。
【0042】
図2に示すように、時刻t1で第2ポンプ22の設定回転数を上昇させると、第1フィルター15によって生成される透過水の流量が上昇し、第2圧力検出器42の検出値が上昇する。このように、第2ポンプ22の設定回転数を上昇させることで、第1フィルター15を交換しなくても透過水の流量を確保できる。
【0043】
ろ過装置2の運転が禁止されると、透過水の生産がストップし、洗浄装置3および研磨装置4に対する透過水の供給がストップする。ろ過装置2の運転を禁止する前にろ過装置2の管理者に対応を促すことで、透過水の安定供給が可能になる。
【0044】
なお、第2異常が有ると判定される前に、第1異常が有ると判定されることがあってもよい。そのような場合としては、例えば原水の不純物濃度が高く、第1フィルター15の目詰まりが短時間で急激に進む場合が挙げられる。第1期間は第2期間よりも短いので、短時間で急激に目詰まりが進む場合であっても、異常を検知できる。
【0045】
制御部90は、第1異常と第2異常の少なくとも一方が有ると判定した回数が所定期間に設定回数(n回)に達した場合に、第1フィルター15の交換を促す警報を報知する制御を行う。異常の頻度が高く、目詰まりの程度がひどくなっている。そこで、第1フィルター15の交換を促す警報を報知する。nは2以上の整数であってよい。所定期間は、第1期間および第2期間よりも長く設定される。
【0046】
第1異常と第2異常の判定の有無には、第1流量検出器51の検出値を用いることも可能である。制御部90は、第2ポンプ22の作動中における第1流量検出器51の検出値を設定時間ごとに取得する。第1フィルター15の目詰まりが進行するほど、第1フィルター15によって生成される透過水の流量が低下し、第1流量検出器51の検出値が低下する。
【0047】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における第1流量検出器51の検出値が第1閾値FTH1を第1期間連続して下回る場合に第1異常が有ると判定する。制御部90は、第2ポンプ22の作動中における第2圧力検出器42の検出値が第2期間内に第2閾値FTH2を下回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定する。第2閾値FTH2は第1閾値FTH1よりも高く、設定回数は複数回である。
【0048】
あるいは、第1異常と第2異常の判定の有無には、第1圧力検出器41の検出値と第2圧力検出器42の検出値の差D(>0)が用いられてもよい。第2ポンプ22の作動中、第1圧力検出器41の検出値は第2圧力検出器42の検出値よりも大きい。制御部90は、第2ポンプ22の作動中に差Dを設定時間ごとに取得する。第1フィルター15の目詰まりが進行するほど、第1フィルター15によって生成される透過水の流量が低下し、差Dが大きくなる。
【0049】
制御部90は、第2ポンプ22の作動中における差Dが第1閾値DTH1を第1期間連続して上回る場合に第1異常が有ると判定する。制御部90は、第2ポンプ22の作動中における差Dが第2期間内に第2閾値DTH2を上回る回数が設定回数以上である場合に第2異常が有ると判定する。第2閾値DTH2は第1閾値DTH1よりも小さく、設定回数は複数回である。
【0050】
第1異常と第2異常の判定の有無には、(1)第2圧力検出器42の検出値、(2)第1流量検出器51の検出値、および(3)第1圧力検出器41の検出値と第2圧力検出器42の検出値との差D(>0)から選ばれる2つ以上が組み合わせて用いられてもよい。組み合わせは、任意である。
【0051】
本願発明の内容は第2フィルター17の異常の有無の判定にも適用できる。第2フィルター17の異常の有無の判定には、(1)第4圧力検出器44の検出値、(2)第2流量検出器52の検出値、および(3)第3圧力検出器43の検出値と第4圧力検出器44の検出値との差(>0)から選ばれる1つ以上が用いられる。
【0052】
第3圧力検出器43は、第3ライン16において、第3ポンプ23と第2フィルター17の間に設けられる。第3ライン16は、第2フィルター17の上流に設けられる上流ラインである。第3圧力検出器43は、第2フィルター17に対する原水(第1フィルター15を通過した透過水)の供給圧を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。第3ポンプ23の作動中、第3圧力検出器43の検出値は第4圧力検出器44の検出値よりも大きい。
【0053】
第4圧力検出器44は、第4ライン18に設けられる。第4ライン18は、第2フィルター17の下流に設けられる下流ラインである。第4ライン18は、第2フィルター17を通過した透過水を流通させる。第4圧力検出器44は、第2フィルター17を通過した透過水の圧力を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。
【0054】
第2流量検出器52は、第4ライン18に設けられる。第2流量検出器52は、第2フィルター17を通過した透過水の流量を検出し、検出値を示す信号を制御部90に送信する。
【0055】
また、本願発明の内容は保安フィルター13の異常の有無の判定にも適用できる。
【0056】
以上、本開示に係るろ過装置、ディスプレイ用ガラス基板の製造装置、ろ過方法およびディスプレイ用ガラス基板の製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0057】
2 ろ過装置
14 第2ライン(上流ライン)
15 第1フィルター(フィルター)
16 第3ライン(下流ライン)
22 第2ポンプ(ポンプ)
41 第1圧力検出器
42 第2圧力検出器
51 第1流量検出器
90 制御部(判定部)