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特開2023-179316基板、プリント配線板及び半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179316
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】基板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231212BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231212BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231212BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L21/00
C08K3/36
H05K1/03 630H
H05K1/03 610R
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092571
(22)【出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬良 祐介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 康晴
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA02W
4J002AA02Y
4J002AC00X
4J002BG02X
4J002BH02W
4J002BP01X
4J002BP02X
4J002CF10X
4J002CK02X
4J002CL00X
4J002CP03X
4J002DE146
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002FD016
4J002FD140
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】誘電特性に優れる基板、並びに該基板を用いたプリント配線板及び半導体パッケージを提供する。
【解決手段】(A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率が、75%以上であり、前記硬化物(H)の比重をG、前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率をV%、前記(B)成分の比重をG、式(1)から計算される基準比重をGとしたとき、前記基準比重Gに対する前記硬化物(H)の比重Gの比〔G/G〕が、0.9以下である基板、及び、(A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、前記硬化物(H)の断面において、空隙の面積が占める比率が、1%以上である基板である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、
前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率が、75%以上であり、
前記硬化物(H)の比重をG、前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率をV%、前記(B)成分の比重をG、下記式(1)から計算される基準比重をGとしたとき、前記基準比重Gに対する前記硬化物(H)の比重Gの比〔G/G〕が、0.9以下である、基板。
=G×(V/100)+0.7×〔(100-V)/100〕 (1)
【請求項2】
前記比〔G/G〕が、0.1以上である、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
(A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、
前記硬化物(H)の断面において、空隙の面積が占める比率が、1%以上である、基板。
【請求項4】
前記空隙の面積が占める比率が、30%以下である、請求項3に記載の基板。
【請求項5】
前記(A)成分が、(A1)数平均分子量(Mn)10,000以上のエラストマーを含有する、請求項1又は3に記載の基板。
【請求項6】
前記(A1)成分の含有量が、前記(A)成分の総量基準で、30質量%以上である、請求項5に記載の基板。
【請求項7】
前記(A1)成分が、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項5に記載の基板。
【請求項8】
前記(A)成分が、さらに、(A2)数平均分子量(Mn)10,000未満のエラストマーを含有する、請求項5に記載の基板。
【請求項9】
前記(A)成分が、(A3)熱硬化性樹脂を含有する、請求項1又は3に記載の基板。
【請求項10】
前記(B)成分が、シリカである、請求項1又は3に記載の基板。
【請求項11】
さらに、金属箔を含む、請求項1又は3に記載の基板。
【請求項12】
請求項1又は3に記載の基板を有するプリント配線板。
【請求項13】
請求項12に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピューターなどの電子機器では、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。信号の高速化及び大容量化に伴い、電子機器に搭載するプリント配線板の基板材料には、高周波信号の伝送損失を低減できる誘電特性、すなわち、低比誘電率及び低誘電正接が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低伝送損失を達成し得る基板材料として、N-置換マレイミド基を少なくとも2個有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上(A)と、ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上(B)と、スチレン系化合物由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位及びN-置換マレイミド由来の構造単位を有する共重合体(C)と、を含有する、樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-169276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によると、10GHz帯以上の高周波数帯において優れた誘電特性を発現することが可能である。しかしながら、近年、益々強まりつつある低比誘電率化及び低誘電正接化の要求に対応するためには、より一層優れた誘電特性を発現するための技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記状況に鑑み、誘電特性に優れる基板、並びに該基板を用いたプリント配線板及び半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記目的を達成すべく検討を進めた結果、本開示により当該目的を達成できることを見出した。
本開示は、下記[1]~[13]を含む。
[1](A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、
前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率が、75%以上であり、
前記硬化物(H)の比重をG、前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率をV%、前記(B)成分の比重をG、下記式(1)から計算される基準比重をGとしたとき、前記基準比重Gに対する前記硬化物(H)の比重Gの比〔G/G〕が、0.9以下である、基板。
=G×(V/100)+0.7×〔(100-V)/100〕 (1)
[2]前記比〔G/G〕が、0.1以上である、上記[1]に記載の基板。
[3](A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、
前記硬化物(H)の断面において、空隙の面積が占める比率が、1%以上である、基板。
[4]前記空隙の面積が占める比率が、20%以下である、上記[3]に記載の基板。
[5]前記(A)成分が、(A1)数平均分子量(Mn)10,000以上のエラストマーを含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の基板。
[6]前記(A1)成分の含有量が、前記(A)成分の総量基準で、30質量%以上である、上記[5]に記載の基板。
[7]前記(A1)成分が、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含む、上記[5]又は[6]に記載の基板。
[8]前記(A)成分が、さらに、(A2)数平均分子量(Mn)10,000未満のエラストマーを含有する、上記[5]~[7]のいずれかに記載の基板。
[9]前記(A)成分が、(A3)熱硬化性樹脂を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の基板。
[10]前記(B)成分が、シリカである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の基板。
[11]さらに、金属箔を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の基板。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載の基板を有するプリント配線板。
[13]上記[12]に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、誘電特性に優れる基板、並びに該基板を用いたプリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られた基板の断面SEM像(a)及び二値化画像(b)である。
図2】実施例2で得られた基板の断面SEM像(a)及び二値化画像(b)である。
図3】実施例3で得られた基板の断面SEM像(a)及び二値化画像(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本明細書においてB-ステージ化及びC-ステージ化とは、JIS K6900(1994年)で定義されるB-ステージ及びC-ステージの状態にすることを意味する。
【0012】
本明細書において、「固形分」とは、水分、有機溶剤等の揮発する物質以外の樹脂組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本開示及び本実施形態に含まれる。
【0013】
[基板]
本開示は、以下の第一態様の基板及び第二態様の基板を提供する。
【0014】
第一態様の基板は、
(A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、
前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率が、75%以上であり、
前記硬化物(H)の比重をG、前記硬化物(H)中における前記(B)成分の体積含有率をV%、前記(B)成分の比重をG、下記式(1)から計算される基準比重をGとしたとき、前記基準比重Gに対する前記硬化物(H)の比重Gの比〔G/G〕が、0.9以下である、基板。
=G×(V/100)+0.7×〔(100-V)/100〕 (1)
【0015】
第二態様の基板は、
(A)樹脂成分と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物の硬化物(H)を含む基板であって、
前記硬化物(H)の断面において、空隙の面積が占める比率(以下、「空隙の面積比率」ともいう)が、1%以上である。
【0016】
第一態様及び第二態様の基板は、誘電特性に優れるため、特にプリント配線板用の基板として有用である。
なお、以下の説明において、特に断らない限り、「本実施形態の基板」に関する説明は、第一態様の基板及び第二態様の基板の両者に関する説明である。
【0017】
<比〔G/G〕>
第一態様の基板において、上記式(1)から計算される基準比重Gに対する、硬化物(H)の比重Gの比〔G/G〕は0.9以下である。
第一態様の基板は、比〔G/G〕が、上記範囲であることによって、優れた誘電特性を発現する。
基準比重Gは、硬化物(H)において、(B)成分以外の成分の平均比重を0.7と仮定した最低理論比重に相当する。比〔G/G〕が0.9以下である硬化物(H)は、比重Gが最低理論比重よりも低いことから、空隙を含んでいると考えられる。第一態様の基板は空隙を含むことによって、優れた誘電特性を発現していると推測される。
第二態様の基板においても、上記比〔G/G〕は、0.9以下であることが好ましい。
比〔G/G〕は、基板の誘電特性の観点から、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.7以下である。また、比〔G/G〕は、基板の機械強度及び基板を製造する際の樹脂シートの取り扱い性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.6以上である。
【0018】
硬化物(H)の比重Gは、特に限定されないが、低熱膨張性、耐熱性、導体接着性等の観点から、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.3~2.2、さらに好ましくは1.5~2.0である。
なお、硬化物(H)の比重Gは、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0019】
<空隙の面積比率>
第二態様の基板は、樹脂組成物の硬化物(H)の断面において、空隙の面積比率が、1%以上である。第二態様の基板は、上記範囲の空隙を含むことによって、優れた誘電特性を発現する。
なお、第一態様の基板においても、空隙の面積比率は、1%以上であることが好ましい。
空隙の面積比率は、誘電特性の観点から、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。また、空隙の面積比率は、基板の機械強度及び基板を製造する際の樹脂シートの取り扱い性の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0020】
空隙の面積比率は、例えば、硬化物(H)に含有される(B)無機充填材の含有量を高める方法等によって、上記範囲に調整することが可能である。
なお、空隙の面積比率は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0021】
<空隙の形状等>
硬化物(H)の断面において観察される空隙の形状は、特に限定されず、不定形、円状等であってもよいが、不定形であることが好ましい。
また、硬化物(H)の断面において観察される空隙は、樹脂によって被覆された粒子状の(B)無機充填材同士の間に存在する空隙であることが好ましく、樹脂によって被覆された球状の(B)無機充填材同士の間に存在する空隙であることがより好ましい。
【0022】
<樹脂組成物の硬化物(H)>
次に、本実施形態の基板が含む硬化物(H)及びその形成に用いられる樹脂組成物について説明する。なお、以下の説明において、単に「樹脂組成物」と称する場合、硬化物(H)の形成に用いられる樹脂組成物を意味するものとする。
【0023】
本実施形態の基板に用いられる樹脂組成物は、硬化性を有するものであり、熱硬化性を有するものが好ましい。
以下、樹脂組成物が含有する各成分について詳述する。
【0024】
((A)樹脂成分)
樹脂組成物は、(A)成分として樹脂成分を含有する。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(A)成分としては、例えば、エラストマー、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
樹脂組成物は、(A)成分として、エラストマー及び熱硬化性樹脂からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましく、(A1)数平均分子量(Mn)10,000以上のエラストマー、(A2)数平均分子量(Mn)10,000未満のエラストマー及び(A3)熱硬化性樹脂からなる群から選択される1種以上を含有することがより好ましい。
また、樹脂組成物は、(A1)数平均分子量(Mn)10,000以上のエラストマーと共に、(A2)数平均分子量(Mn)10,000未満のエラストマーを含有することがさらに好ましく、(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分を含有することが特に好ましい。
【0026】
〔(A1)数平均分子量(Mn)10,000以上のエラストマー〕
樹脂組成物が(A1)成分を含有することによって、基板の誘電特性がより良好になる傾向にある。さらに、樹脂組成物が(A1)成分を含有することによって、樹脂組成物を樹脂シートにする際、支持体が無い状態で取り扱うことが可能な自立性が得られる傾向にある。
(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(A1)成分の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。
(A1)成分の数平均分子量(Mn)の上限値に特に制限はなく、300,000以下であってもよく、250,000以下であってもよく、220,000以下であってもよく、180,000以下であってもよい。
さらに、(A1)成分の数平均分子量(Mn)は、10,000以上100,000未満であってもよいし、10,000~500,000であってもよいし、又は、100,000~300,000であってもよいし、130,000~230,000であってもよい。
本明細書において、数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレン換算で求めた値である。
【0028】
(A)成分中における(A1)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分の総量基準で、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35~90質量%、さらに好ましくは40~70質量%、特に好ましくは45~60質量%である。
【0029】
(A1)成分は、誘電特性の観点から、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましく、スチレン系エラストマー、マレイミド系エラストマーを含有することがより好ましく、スチレン系エラストマーを含有することがさらに好ましい。
【0030】
(A1)成分は、上記各エラストマーの分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものであってもよい。当該反応性官能基としては、例えば、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。
【0031】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体等のスチレン-ブタジエン共重合体;スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体等のスチレン-イソプレン共重合体;上記スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物;上記スチレン-イソプレン共重合体の水素添加物;などが挙げられる。これらのコポリマーは、ジビニルベンゼン等のビニル基含有芳香族化合物由来の構造単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0032】
スチレン系エラストマーのスチレン含有率は、特に限定されないが、好ましくは5~70質量%、より好ましくは8~50質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。ここで、スチレン含有率とは、全構造単位に対するスチレン構造単位の含有率のことである。スチレン含有率が上記下限値以上であると、耐熱性がより良好になる傾向にある。また、スチレン含有率が上記上限値以下であると、ゴム弾性に優れ、樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性が良好になる傾向にある。
【0033】
スチレン系エラストマーが、ブタジエン等に由来する脂肪族不飽和結合を含み得る構造単位を有する場合、スチレン系エラストマーは、未水添であってもよいし、水素添加物であってもよい。水素添加物である場合、スチレン系エラストマーの水素添加率は、特に限定されないが、脂肪族不飽和結合の総量(100モル%)に対して、好ましくは80~100モル%、より好ましくは85~100モル%、さらに好ましくは90~100モル%、特に好ましくは95~100モル%である。
【0034】
スチレン系エラストマーとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、「タフプレン(登録商標)」、「アサプレン(登録商標)T」、「タフテック(登録商標)H1043」、「タフテック(登録商標)MP10」、「タフテック(登録商標)H1221」、「タフテック(登録商標)M1911」、「タフテック(登録商標)M1913」(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、「エポフレンド(登録商標)AT501」、「エポフレンド(登録商標)CT310」(以上、株式会社ダイセル製)、「セプトン(登録商標)2063」(株式会社クラレ製)等が挙げられる。
【0035】
〔(A2)数平均分子量(Mn)10,000未満のエラストマー〕
樹脂組成物が(A2)成分を含有することによって、基板の誘電特性がより良好になる傾向にある。さらに、樹脂組成物が(A2)成分を含有することによって、(A1)成分と(A3)成分との相容性を高められる傾向にある。
(A2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(A2)成分の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、(A1)成分と(A3)成分との相容性を高める観点から、好ましくは300以上10,000未満、より好ましくは400~9,000である。また、(A2)成分の数平均分子量(Mn)は、500~6,000であってもよく、500~4,000であってもよく、500~2,500であってもよく、700~2,500であってもよく、850~2,000であってもよい。
【0037】
(A2)成分としては、(A1)成分で例示されたエラストマーにおいて、数平均分子量(Mn)が10,000未満であるものが挙げられる。これらの中でも、誘電特性、及び(A1)成分と(A3)成分との相容性を高める観点から、ポリブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好ましく、ポリブタジエン系エラストマーがより好ましい。
【0038】
ポリブタジエン系エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエンジオール、ポリブタジエンジカルボン酸、マレイン化ポリブタジエン、ブタジエンホモポリマー、ブタジエンと共重合可能なコポリマー、ポリブタジエンジオールとイソシアネート基を有する化合物とを反応させて得られる化合物、ポリブタジエンジオールとカルボキシル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物、ポリブタジエンジカルボン酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られる化合物、ポリブタジエンジカルボン酸とエポキシ基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等が挙げられる。これらの中でも、ブタジエンホモポリマーが好ましい。
ポリブタジエン系エラストマーは、市販品を使用してもよい。
【0039】
スチレン系エラストマーとしては、(A1)成分として例示されたスチレン系エラストマーにおいて、数平均分子量(Mn)が10,000未満であるものが挙げられる。
【0040】
(A)成分中における(A2)成分の含有量は、特に限定されないが、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、(A)成分の総量基準で、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。
【0041】
(A)成分中における、(A1)成分と(A2)成分の合計含有量は、特に限定されないが、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、(A)成分の総量基準で、好ましくは60~95質量%、より好ましくは70~90質量%、さらに好ましくは75~85質量%である。
(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が上記下限値以上であると、誘電正接(Df)が十分に低くなり、かつ、樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性がより良好になる傾向にある。(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が上記上限値以下であると、(A3)成分を含有する余地が十分に得られ、低熱膨張性、耐熱性及び導体接着性等を付与し易くなる傾向にある。
【0042】
((A3)熱硬化性樹脂)
樹脂組成物が(A3)成分を含有することによって、樹脂組成物に熱硬化性を付与することができ、基板の低熱膨張性、耐熱性、導体接着性等が向上する傾向にある。
(A3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また、特にこれらに制限されず、公知の熱硬化性樹脂を使用できる。これらの中でも、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点から、不飽和イミド樹脂が好ましい。
不飽和イミド樹脂としては、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点から、マレイミド化合物が好ましい。マレイミド化合物としては、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上が挙げられる。なお、ここでいうマレイミド化合物は、上記マレイミド系エラストマーを含まない。
上記「N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物の誘導体」としては、上記N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物と、ジアミン化合物等のアミン化合物との付加反応物などが挙げられる。
【0044】
マレイミド化合物としては、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点から、
N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物、及び
マレイミド化合物由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを有するアミノマレイミド化合物、
からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0045】
N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド等の分子内に1つのN-置換マレイミド基を有する芳香族マレイミド化合物;ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の分子内に2つのN-置換マレイミド基を有する芳香族ビスマレイミド化合物;ポリフェニルメタンマレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド等の分子内に3つ以上のN-置換マレイミド基を有する芳香族ポリマレイミド化合物;1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、ピロリン酸バインダ型長鎖アルキルビスマレイミド等の脂肪族マレイミド化合物などが挙げられる。
アミノマレイミド化合物が有するマレイミド化合物由来の構造単位としては、上記N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物由来の構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド化合物が有するジアミン化合物由来の構造単位は、後述のジアミン化合物由来の構造単位と同じである。
【0046】
なお、本実施態様では、誘電特性、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点から、マレイミド化合物としては、下記(i)及び(ii)からなる群から選択される1種以上の化合物であることがより好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
(i)分子構造中に芳香族環と脂肪族環との縮合環を含み、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物(x1)[以下、「マレイミド化合物(x1)」又は「(x1)成分」と称する場合がある。]
(ii)マレイミド化合物(x1)由来の構造単位とジアミン化合物(x2)由来の構造単位とを有するアミノマレイミド化合物[以下、「アミノマレイミド化合物(X1)」と称する場合がある。]
以下、上記(i)及び(ii)からなる群から選択される1種以上の化合物について詳述する。
【0047】
(マレイミド化合物(x1))
(x1)成分としては、誘電特性、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点から、分子構造中に芳香族環と脂肪族環との縮合環を含み、芳香族環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個以上有する芳香族マレイミド化合物が好ましく、分子構造中に芳香族環と脂肪族環との縮合環を含み、芳香族環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する芳香族ビスマレイミド化合物がより好ましい。
【0048】
(x1)成分が含む縮合環は、誘電特性、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点、さらには製造容易性の観点から、縮合二環式構造を有するものが好ましく、インダン環であることがより好ましい。
なお、本明細書中、インダン環とは芳香族6員環と飽和脂肪族5員環の縮合二環式構造を意味する。インダン環を形成する環形成炭素原子のうち少なくとも1個の炭素原子は、(x1)成分を構成する他の基に結合するための結合基を有する。該結合基を有する環形成炭素原子及びその他の環形成炭素原子は上記結合基以外に、結合基、置換基等を有していてもよく、有していなくてもよい。
(x1)成分において、インダン環は、下記一般式(x1-1)で表される2価の基として含まれることが好ましい。
【0049】
【化1】

(式中、Rx1は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又はメルカプト基であり、n1は0~3の整数である。Rx2~Rx4は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基である。*は結合部位を表す。)
【0050】
上記一般式(x1-1)中のRx1で表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
x1で表される炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基に含まれるアルキル基としては、上記炭素数1~10のアルキル基と同じものが挙げられる。
x1で表される炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
x1で表される炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基に含まれるアリール基としては、上記炭素数6~10のアリール基と同じものが挙げられる。
x1で表される炭素数3~10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
上記一般式(x1-1)中のn1が1~3である場合、Rx1は、有機溶剤への溶解性及び反応性の観点から、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0051】
x2~Rx4で表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。これらの中でも、Rx2~Rx4は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
上記一般式(x1-1)中のn1は、0~3の整数であり、n1が2又は3である場合、複数のRx1同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
以上の中でも、上記一般式(x1-1)で表される2価の基は、製造容易性の観点から、n1が0であり、Rx2~Rx4がメチル基である、下記式(x1-1’)で表される2価の基が好ましく、下記式(x1-1’’)で表される2価の基及び下記式(x1-1’’’)で表される2価からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0053】
【化2】

(式中、*は結合部位を表す。)
【0054】
上記一般式(x1-1)で表される2価の基を含む(x1)成分としては、誘電特性、低熱膨張性及び耐熱性の観点、並びに導体接着性の観点、さらには製造容易性の観点から、下記一般式(x1-2)で表されるものが好ましい。
【0055】
【化3】

(式中、Rx1~Rx4及びn1は、上記一般式(x1-1)中のものと同じである。Rx5は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基又はメルカプト基であり、n2は0~4の整数であり、n3は、0.95~10.0の数である。)
【0056】
上記一般式(x1-2)中、複数のRx1同士、複数のn1同士、複数のRx5同士、複数のn2同士は、各々について、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、n3が1を超える場合、複数のRx2同士、複数のRx3同士及び複数のRx4同士は、各々について、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
上記一般式(x1-2)中のRx5が表す炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基についての説明は、上記Rx1が表す炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基についての説明と同じである。
これらの中でも、Rx5は、有機溶剤への溶解性及び製造容易性の観点から、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0058】
上記一般式(x1-2)中のn2は、0~4の整数であり、他の樹脂成分との相容性、誘電特性、導体接着性及び製造容易性の観点から、好ましくは1~3の整数、より好ましくは2又は3、さらに好ましくは2である。
なお、n2が1以上であることにより、ベンゼン環とN-置換マレイミド基とがねじれた配座を有するものになり、分子間のスタッキング抑制によって有機溶剤への溶解性がより向上する傾向にある。分子間のスタッキングを抑制するという観点から、n2が1以上である場合、Rx5の置換位置は、N-置換マレイミド基に対してオルト位であることが好ましい。
上記一般式(x1-2)中のn3は、誘電特性、導体接着性、有機溶剤への溶解性、ハンドリング性及び耐熱性の観点から、好ましくは0.98~8.0の数、より好ましくは1.0~7.0の数、さらに好ましくは1.1~6.0の数である。
【0059】
上記一般式(x1-2)で表される(x1)成分は、誘電特性、導体接着性、有機溶剤への溶解性及び製造容易性の観点から、下記一般式(x1-3)で表されるもの、下記一般式(x1-4)で表されるものがより好ましい。
【0060】
【化4】
【0061】
【化5】

(式中、Rx1~Rx5、n1及びn3は、上記一般式(x1-2)中のものと同じである。)
【0062】
(x1)成分の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、他の樹脂との相容性、導体接着性及び耐熱性の観点から、好ましくは200~3,000、より好ましくは400~2,000、さらに好ましくは500~1,000である。
【0063】
(アミノマレイミド化合物(X1))
アミノマレイミド化合物(X1)は、マレイミド化合物(x1)由来の構造単位とジアミン化合物(x2)由来の構造単位とを有するアミノマレイミド化合物である。アミノマレイミド化合物(X1)は、マレイミド化合物(x1)の誘導体に相当する。
アミノマレイミド化合物(X1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
〔マレイミド化合物(x1)由来の構造単位〕
(x1)成分由来の構造単位としては、例えば、(x1)成分が有するN-置換マレイミド基のうち、少なくとも1つのN-置換マレイミド基が、ジアミン化合物(x2)が有するアミノ基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド化合物(X1)中に含まれる(x1)成分由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0065】
アミノマレイミド化合物(X1)中における(x1)成分由来の構造単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5~95質量%、より好ましくは30~93質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。アミノマレイミド化合物(X1)中における(x1)成分由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、誘電特性及びフィルムハンドリング性がより良好になる傾向にある。
【0066】
〔ジアミン化合物(x2)由来の構造単位〕
(x2)成分由来の構造単位としては、例えば、(x2)成分が有する2個のアミノ基のうち、一方又は両方のアミノ基が、マレイミド化合物(x1)が有するN-置換マレイミド基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド化合物(X1)中に含まれる(x2)成分由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0067】
(x2)成分としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン化合物;第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物などが挙げられる。
なお、本明細書中、「芳香族ジアミン化合物」とは、芳香環に直接結合するアミノ基を2個有する化合物を意味する。
【0068】
(A)成分中における(A3)成分の含有量は、特に限定されないが、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、(A)成分の総量基準で、好ましくは2~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0069】
樹脂組成物中における(A)成分の合計含有量は、特に限定されないが、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、樹脂組成物の固形分全量基準で、好ましくは6~50質量%、より好ましくは7~33質量%、さらに好ましくは9~25質量%である。
【0070】
((B)無機充填材)
樹脂組成物が(B)成分を含有することによって、本実施形態の基板は、優れた低熱膨張性を有するものになると共に、誘電特性を向上させ易くなる傾向にある。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(B)無機充填材としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。
【0072】
シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。
【0073】
(B)無機充填材の形状に特に制限はなく、球状、針状、燐片状、板状等の形状であってもよいが、高充填する観点からは、球状であることが好ましい。
但し、本実施形態では、(B)成分にガラスクロス等の繊維基材は含まれず、さらに、ガラス繊維も含まれない。樹脂組成物がガラスクロス等の繊維基材又はガラス繊維を含有する場合は、(B)成分としてではなく、その他の成分として含有していることになるが、それらの含有量は、樹脂組成物の固形分全量基準で、好ましくは10体積%以下、より好ましくは7体積%以下、さらに好ましくは5体積%以下、特に好ましくは3体積%以下である。
【0074】
(B)無機充填材は、カップリング剤で表面処理されていないものであってもよいが、樹脂組成物中における分散性を向上させる観点から、シランカップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであってもよいし、シランカップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであることが好ましい。シランカップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
【0075】
(B)無機充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.2~5μm、よりさらに好ましくは0.3~3μm、特に好ましくは0.3~1.5μmである。
ここで、本明細書において、平均粒子径は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたときの、体積50%に相当する点の粒子径のことである。(B)無機充填材の粒径は、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができ、以下、同様である。
【0076】
(B)無機充填材としては、平均粒子径の異なる数種類を併用してもよい。平均粒子径の異なる数種類を併用することによって、樹脂組成物に(B)無機充填材を高充填し易い傾向にある。
例えば、平均粒子径0.1~0.8μmの無機充填材aと、平均粒子径0.08超~1.5μmの無機充填材bと、平均粒子径1.5超~3.5μmの無機充填材cとを併用する態様等が挙げられる。この場合、これらの混合比率は、質量比で、無機充填材a/(無機充填材b+無機充填材c)=5/5~9/1となることが好ましく、6/4~8/2となることがより好ましい。その上、無機充填材bと無機充填材cの混合比率は、質量比で、無機充填材b/無機充填材c=5/5~8/2となることが好ましく、6/4~8/2となることがより好ましい。
【0077】
樹脂組成物中における(B)無機充填材の含有量は、基板の誘電特性、並びに樹脂組成物を樹脂シートにする際の自立性及び可撓性の観点から、樹脂組成物の固形分全量基準で、好ましくは50~94質量%、より好ましくは67~93質量%、さらに好ましくは75~91質量%である。
【0078】
第一態様の基板において、硬化物(H)中における(B)成分の体積含有率は、75%以上である。
硬化物(H)中における(B)成分の体積含有率が、上記下限値以上であると、硬化物(H)中に空隙が十分に形成され、誘電特性に優れる基板が得られる。また、得られる基板は、低熱膨張性及び耐熱性に優れるものになる。
なお、第二態様の基板においても、樹脂組成物の硬化物(H)中における(B)成分の体積含有率は、75%以上であることが好ましい。
樹脂組成物の硬化物(H)中における(B)成分の体積含有率は、低熱膨張性及び誘電特性の観点から、好ましくは78%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは92%以上である。樹脂組成物の硬化物(H)中における(B)成分の体積含有率は、基板の機械強度及び基板を製造する際の樹脂シートの取り扱い性の観点から、好ましくは98%以下、より好ましくは97%以下、さらに好ましくは96%以下である。
【0079】
((C)熱重合開始剤)
樹脂組成物は、さらに、(C)成分として、熱重合開始剤を含有していてもよい。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
(C)熱重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系化合物;α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のジアルキルパーオキサシド系化合物;ケトンパーオキサイド系化合物;n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール系化合物;ジアシルパーオキサイド系化合物;パーオキシジカーボネート系化合物;パーオキシエステル化合物等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチルニトリル、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;などが挙げられる。これらの中でも、α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが好ましい。
【0081】
樹脂組成物が(C)熱重合開始剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、適度な反応性が得られ易いという観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部である。
【0082】
(その他の成分)
樹脂組成物は、さらにその他の成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、接着性向上剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤、有機充填材等が挙げられる。
その他の成分は、各々について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物がその他の成分を含有する場合、その含有量は、1種につき、樹脂組成物の固形分全量基準で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0083】
<硬化物(H)の比誘電率(Dk)>
硬化物(H)の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、特に限定されないが、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.95以下、さらに好ましくは2.9以下である。上記比誘電率(Dk)は小さい程好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.0以上であってもよく、2.3以上であってもよい。
上記の比誘電率(Dk)は、空洞共振器摂動法に準拠した値であり、より詳細には、実施例に記載する方法によって測定された値である。
【0084】
<硬化物(H)の誘電正接(Df)>
硬化物(H)の10GHzにおける誘電正接(Df)は、特に限定されないが、好ましくは0.00070以下、より好ましくは0.00065以下、さらに好ましくは0.00060以下である。上記誘電正接(Df)は小さい程好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.00010以上であってもよく、0.00020以上であってもよい。
上記の誘電正接(Df)は、空洞共振器摂動法に準拠した値であり、より詳細には、実施例に記載する方法によって測定された値である。
【0085】
<硬化物(H)以外の構成部材>
本実施形態の基板は、樹脂組成物の硬化物(H)のみからなる基板であってもよく、硬化物(H)以外の構成部材を含む基板であってもよい。
硬化物(H)以外の構成部材としては、例えば、硬化物(H)以外の樹脂組成物の硬化物、金属箔等が挙げられる。
本実施形態の基板が、硬化物(H)と、硬化物(H)以外の樹脂組成物の硬化物と、を含む場合の態様としては、例えば、硬化物(H)からなる樹脂層と、硬化物(H)以外の硬化物からなる樹脂層と、を含む態様が挙げられる。各々の樹脂層は、1層又は2層以上であってもよく、その積層順序は特に限定されない。また、樹脂層同士の間には、金属箔又は金属箔を加工してなる回路等の導体層が含まれていてもよい。
本実施形態の基板が、樹脂組成物の硬化物(H)と、金属箔と、を含む場合の態様としては、例えば、樹脂組成物の硬化物(H)からなる樹脂層を含む樹脂基板の一方又は両方の面に金属箔を有する態様、樹脂層同士の間に金属箔を有する態様等が挙げられる。
【0086】
金属箔の金属としては、例えば、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素を1種以上含有する合金等が挙げられる。これらの中でも、銅、アルミニウムが好ましく、銅がより好ましい。
【0087】
<基板の形状等>
本実施形態の基板の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.04~3mmであってもよく、0.05~0.5mmであってもよく、0.08~0.2mmであってもよい。
本実施形態の基板は、穴開け加工、回路形成加工等が施されたものであってもよい。
【0088】
<基板の製造方法>
本実施形態の基板は、例えば、樹脂組成物を用いて樹脂シートを形成し、これを硬化させる方法によって製造することができる。
樹脂シートは、樹脂組成物を支持体に塗工してから、加熱乾燥させてB-ステージ化することによって作製することができる。
【0089】
樹脂組成物を塗工する方法に特に制限はなく、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置を用いて塗工することができる。
樹脂組成物の塗工後の乾燥温度及び乾燥時間に特に制限はないが、乾燥温度は、好ましくは70~135℃、より好ましくは80~130℃であり、乾燥時間は、好ましくは5~12分である。
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)等の公知の支持体を使用することができる。
【0090】
樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、基板の薄型化及び樹脂シートの取り扱い性の観点から、好ましくは40~150μm、より好ましくは60~130μm、さらに好ましくは80~120μmである。
【0091】
樹脂シートの硬化は、例えば、樹脂シート1枚の片面又は両面に金属箔を配置するか、又は樹脂シート2枚以上(好ましくは2~10枚)を重ねて得られる積層シートの片面又は両面に金属箔を配置し、次いで加熱加圧成形することによって製造することができる。
【0092】
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度は、好ましくは100~300℃、より好ましくは150~250℃、さらに好ましくは180~230℃である。圧力は、好ましくは0.2~10MPa、より好ましくは2~6MPaである。加圧時間は、好ましくは0.1~5時間、より好ましくは1~3時間である。
また、加熱加圧成形は、真空プレス等を用いて、真空状態を好ましくは0.5~5時間保持する方法を採用できる。
【0093】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の基板を有するものである。
本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の基板に対して、穴開け加工、金属めっき加工等による回路形成加工を施し、必要に応じて、さらに多層化加工を行うことによって製造することができる。
【0094】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージである。本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造することができる。
【0095】
本実施形態の基板、プリント配線板及び半導体パッケージは、10GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができる。特に、プリント配線板は、ミリ波レーダー用プリント配線板として有用である。
【0096】
以上、好適な実施形態を説明したが、これらは本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することも含む。
【実施例0097】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
(数平均分子量(Mn)の測定)
数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
〔GPCの測定条件〕
装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC
検出器:紫外吸光検出器 UV-8320[東ソー株式会社製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn SuperHZ-L+カラム;TSKgel SuperHZM-N+TSKgel SuperHZM-M+TSKgel SuperH-RC(全て東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/5mL
注入量:25μL
流量:1.00mL/分
測定温度:25℃
【0099】
(硬化物の比重Gの測定)
各例で得られた両面銅張積層板の銅箔をエッチング除去して得られた樹脂板を、50mm×80mmに切り出したものを試験片とした。この試験片の比重を、比重計(ALFA MiRAGE Co., LTd製、製品名「電子比重計 MDS-300」)を用いて、25℃で水中置換法によって測定した。また、上記式(1)に基づいて基準比重Gを求め、基準比重Gに対する硬化物の比重Gの比〔G/G〕を算出した。
【0100】
(空隙の面積比率の測定)
(1)試験片の作製
各例で得られた両面銅張積層板の銅箔をエッチング除去して得られた樹脂板を、イオンミリング装置(株式会社日立ハイテク製、商品名「E-3500 ION MILIING SYSTEM」)によって加工して、断面を形成した。該断面を白金蒸着処理したものを試験片とした。
(2)走査型電子顕微鏡による観察
上記で得た試験片の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(JEOL社製、商品名「JSM-7800F Prime」)を用いて、加速電圧5kV、傾斜角度0℃、下方二次電子検出器(LED)、倍率8,000倍の条件で観察することによって、断面SEM像を取得した。
(3)断面SEM像の二値化処理
上記で取得した断面SEM像を、オープンソースの画像処理ソフトウェア「ImageJ」(アメリカ国立衛星研究所製)にて表示し、表示された画像をグレースケール(8ビット)に変換してから、空隙の領域が一方の値、空隙以外の領域が他方の値となる条件で二値化することによって、二値化画像を取得した。
(4)硬化物中の空隙の面積比率の算出
上記の二値化画像の全領域に対する、二値化画像の空隙の領域の面積比率(空隙の面積×100/二値化画像の全領域の面積)を計算した。
図1に実施例1で得られた基板、図2に実施例2で得られた基板、図3に実施例3で得られた基板の断面SEM像及び二値化画像を示す。図1~3において、(a)は断面SEM像であり、(b)は(a)に示される断面SEM像の二値化画像である。(b)において、白の領域が樹脂組成物の硬化物の断面、黒の領域が空隙の断面に相当する。
【0101】
実施例1~3、比較例1~2
(樹脂シートの作製)
表1に記載の各成分を表1に記載の配合量に従って室温(25℃)でトルエンと共に撹拌及び混合することによって、固形分濃度68質量%の樹脂組成物を調製した。
調製した樹脂組成物を厚さ38μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:ピューレックス(登録商標)A5300)に塗工した後、130℃で10分間加熱乾燥することによって、樹脂組成物をB-ステージ化し、PETフィルム付きの樹脂シート(樹脂シートの厚さ:100μm)を得た。
【0102】
(銅張積層板の作製)
上記方法によって得られた樹脂シートを4枚重ね、その上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:SI VSP AM 3R)をM面(マット面)が積層シートに接する状態で配置し、温度200℃、圧力4MPa、時間120分間の条件で加熱加圧成形することによって樹脂シートをC-ステージ化させることによって、両面銅張積層板を作製した。
【0103】
(比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定)
各例で得た両面銅張積層板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、2mm×50mmの評価基板を作製した。
当該評価基板を用いて、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を備えた「PNA Network Analyzer N5227A」(Agilent Technologies社製)を用いて、10GHz帯で25℃にて比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
なお、表1に記載の各成分は、以下の通りである。
[(A)成分]
((A1)Mnが10,000以上のエラストマー)
・エラストマー1:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン含有率12質量%、水素添加率100モル%、Mn=150,000
【0106】
((A2)Mnが10,000未満のエラストマー)
・エラストマー2:1,2-ポリブタジエンホモポリマー、Mn=1,200
【0107】
((A3)熱硬化性樹脂)
・ビスマレイミド化合物:下記構造を有する、インダン環を含む芳香族ビスマレイミド化合物
【化6】

(上記式中、n3は、0.95~10.0の数である。)
【0108】
[(B)成分]
・シリカ:アミノシラン系カップリング剤で処理された平均粒子径0.6μmのシリカaと、アミノシラン系カップリング剤で処理された平均粒子径1.0μmのシリカbと、アミノシラン系カップリング剤で処理された平均粒子径2.4μmのシリカcを、a/b/c=7/2/1(質量比)の割合で混合したシリカ。
[(C)成分]
・熱重合開始剤1:α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン
【0109】
表1に示された結果から明らかなように、本実施形態の実施例1~3の基板は、比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)が低く、誘電特性に優れていた。一方、比〔G/G〕又は空隙の面積比率を充足しない比較例1及び2の基板は、比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)に劣っていた。
図1
図2
図3