(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179376
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】化合物半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20231212BHJP
H01L 33/44 20100101ALI20231212BHJP
H01L 33/30 20100101ALI20231212BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L33/44
H01L33/30
H01L31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091205
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2022092524
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 允喜
(72)【発明者】
【氏名】安田 大貴
【テーマコード(参考)】
5F149
5F241
【Fターム(参考)】
5F149AA04
5F149AB07
5F149AB17
5F149BA04
5F149CB14
5F149DA02
5F149DA05
5F149DA30
5F149EA02
5F149EA07
5F149EA18
5F149FA05
5F149FA13
5F149GA06
5F149HA12
5F149HA13
5F149LA01
5F149XB03
5F149XB18
5F149XB37
5F241AA21
5F241CA34
5F241CA46
5F241CA66
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】SNRの高い化合物半導体装置が提供される。
【解決手段】化合物半導体装置(1)は、絶縁性基板(10)と、絶縁性基板の一方の主面上に形成された、第1導電型を有する第1の化合物半導体層(21)と、化合物半導体材料からなる活性層(23)と、第2導電型を有する第2の化合物半導体層(25)と、がこの順に積層された複数のメサ型化合物半導体積層部(20)と、メサ型化合物半導体積層部の側面と直接に接するように形成された第1保護膜(31)と、第1保護膜上に形成された、第1保護膜より膜密度が大きい材料からなる第2保護膜(32)と、凹部側面(40a)と凹部底面(40b)とを有し、複数のメサ型化合物半導体積層部を分離する凹部(40)と、を備え、凹部側面及び凹部底面が第1保護膜及び第2保護膜に覆われている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の一方の主面上に形成された、第1導電型を有する第1の化合物半導体層と、化合物半導体材料からなる活性層と、第2導電型を有する第2の化合物半導体層と、がこの順に積層された複数のメサ型化合物半導体積層部と、
前記メサ型化合物半導体積層部の側面と直接に接するように形成された第1保護膜と、
前記第1保護膜上に形成された、前記第1保護膜より膜密度が大きい材料からなる第2保護膜と、少なくとも一部が前記第1の化合物半導体層の側面の一部と対向する凹部側面と少なくとも一部が前記絶縁性基板の前記第1の化合物半導体層側の表面の一部と対向する凹部底面とを有し、前記複数のメサ型化合物半導体積層部を分離する凹部と、を備え、
前記凹部側面及び前記凹部底面が前記第1保護膜及び前記第2保護膜に覆われている、化合物半導体装置。
【請求項2】
前記活性層は少なくともIII族元素を含む、請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記活性層は300Kにおいて4.1×1016cm―3以下のキャリア濃度である、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記活性層はIn及びSb又はAsを少なくとも含む、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記活性層の層内の全III族元素に占めるAl組成の割合がn[%](0≦n<18)である、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記活性層の層内の全III族元素に占めるAl組成の割合がn[%](0≦n<9.8)である、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記第1保護膜は膜密度が2.25g/cm3よりも小さい材料からなる、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
前記第1保護膜は酸化シリコンである、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項9】
前記第2保護膜は窒化シリコンである、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項10】
前記第2保護膜の膜厚が第1保護膜の膜厚より大きい、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項11】
前記第2保護膜の膜厚が第1保護膜の膜厚の2倍以上である、請求項10に記載の化合物半導体装置。
【請求項12】
前記第1保護膜の膜厚が前記凹部の深さより薄い、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項13】
前記第1保護膜と前記第2保護膜の総膜厚が前記凹部の深さより薄い、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項14】
前記凹部底面に対向する前記絶縁性基板の表面の一部は、前記絶縁性基板の一部が削られて構成される、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項15】
前記第1保護膜と前記第2保護膜の総膜厚が、前記絶縁性基板の削られた部分と削られていない部分との最大の深さより薄い、請求項14に記載の化合物半導体装置。
【請求項16】
前記絶縁性基板の他方の主面が光入射面又は光出射面である、請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は化合物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体装置は化合物半導体を用いた各種デバイスである。化合物半導体装置としては、例えば、特許文献1に記載の量子型の赤外線検出素子がある。特許文献1に記載の化合物半導体装置は、センサ部分の化合物半導体の積層構造及び素子構造により拡散電流を抑制する。さらに信号増幅用IC(Integrated Circuit)とセンサのパッケージを改良することにより、室温動作が可能であり、かつ小型の赤外線検出素子が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、化合物半導体装置の特性改良のための研究開発がなされているが、さらなるSNR(Signal to Noise Ratio)特性の向上が望まれている。
【0005】
上記に鑑みてなされた本開示の目的は、SNRの高い化合物半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る化合物半導体装置は、
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の一方の主面上に形成された、第1導電型を有する第1の化合物半導体層と、化合物半導体材料からなる活性層と、第2導電型を有する第2の化合物半導体層と、がこの順に積層された複数のメサ型化合物半導体積層部と、
前記メサ型化合物半導体積層部の側面と直接に接するように形成された第1保護膜と、
前記第1保護膜上に形成された、前記第1保護膜より膜密度が大きい材料からなる第2保護膜と、少なくとも一部が前記第1の化合物半導体層の側面の一部と対向する凹部側面と少なくとも一部が前記絶縁性基板の前記第1の化合物半導体層側の表面の一部と対向する凹部底面とを有し、前記複数のメサ型化合物半導体積層部を分離する凹部と、を備え、
前記凹部側面及び前記凹部底面が前記第1保護膜及び前記第2保護膜に覆われている。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記活性層は少なくともIII族元素を含む。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記活性層は300Kにおいて4.1×1016cm―3以下のキャリア濃度である。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記活性層はIn及びSb又はAsを少なくとも含む。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記活性層の層内の全III族元素に占めるAl組成の割合がn[%](0≦n<18)である。
【0011】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記活性層の層内の全III族元素に占めるAl組成の割合がn[%](0≦n<9.8)である。
【0012】
(7)本開示の一実施形態として、(1)から(6)のいずれかにおいて、
前記第1保護膜は膜密度が2.25g/cm3よりも小さい材料からなる。
【0013】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(7)のいずれかにおいて、
前記第1保護膜は酸化シリコンである。
【0014】
(9)本開示の一実施形態として、(1)から(8)のいずれかにおいて、
前記第2保護膜は窒化シリコンである。
【0015】
(10)本開示の一実施形態として、(1)から(9)のいずれかにおいて、
前記第2保護膜の膜厚が第1保護膜の膜厚より大きい。
【0016】
(11)本開示の一実施形態として、(10)において、
前記第2保護膜の膜厚が第1保護膜の膜厚の2倍以上である。
【0017】
(12)本開示の一実施形態として、(1)から(11)のいずれかにおいて、
前記第1保護膜の膜厚が前記凹部の深さより薄い。
【0018】
(13)本開示の一実施形態として、(1)から(12)のいずれかにおいて、
前記第1保護膜と前記第2保護膜の総膜厚が前記凹部の深さより薄い。
【0019】
(14)本開示の一実施形態として、(1)から(13)のいずれかにおいて、
前記凹部底面に対向する前記絶縁性基板の表面の一部は、前記絶縁性基板の一部が削られて構成される。
【0020】
(15)本開示の一実施形態として、(14)において、
前記第1保護膜と前記第2保護膜の総膜厚が、前記絶縁性基板の削られた部分と削られていない部分との最大の深さより薄い。
【0021】
(16)本開示の一実施形態として、(1)から(15)のいずれかにおいて、
前記絶縁性基板の他方の主面が光入射面又は光出射面である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、SNRの高い化合物半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1及び実施例2の化合物半導体装置に関する断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1及び実施例2の化合物半導体装置を表す断面図である。
【
図3】
図3は、実施例3の化合物半導体装置を表す断面図である。
【
図4】
図4は、比較例1の化合物半導体装置を表す断面図である。
【
図5】
図5は、比較例2の化合物半導体装置を表す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1~3及び比較例1~2の化合物半導体装置の無バイアス近傍における電気抵抗を示すグラフである。
【
図7】
図7は、複数のメサ型化合物半導体積層部の配置を例示する図である。
【
図8A】
図8Aは、第1保護膜と第2保護膜の膜厚の構成例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、第1保護膜と第2保護膜の膜厚の別の構成例を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、第1保護膜と第2保護膜の膜厚の別の構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、化合物半導体装置の別の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[化合物半導体装置]
本開示の一実施形態に係る化合物半導体装置は、絶縁性基板と、メサ型化合物半導体積層部と、第1保護膜と、第2保護膜と、を備える。メサ型化合物半導体積層部は、絶縁性基板上に形成され、第1導電型を有する第1の化合物半導体層と、第1の化合物半導体層上に形成され、化合物半導体材料からなる活性層と、活性層上に形成され、第2導電型を有する第2の化合物半導体層と、を備える。メサ型化合物半導体積層部は、第1の化合物半導体層と、活性層と、第2の化合物半導体層と、がこの順に積層されている。ここで、「第1の化合物半導体層と、活性層と、第2の化合物半導体層と、がこの順に積層される」とは、これらの層の関係において、第1の化合物半導体層、活性層、第2の化合物半導体層の積層順であればよい。「第1の化合物半導体層と、活性層と、第2の化合物半導体層と、がこの順に積層される」構成の形態には、例えば第1の化合物半導体層と活性層との間に他の層が挿入される場合が含まれる。また、「第1の化合物半導体層と、活性層と、第2の化合物半導体層と、がこの順に積層される」構成の形態には、活性層と第2の化合物半導体層との間に他の層が挿入される場合が含まれる。また、メサ型化合物半導体積層部は、絶縁性基板の一方の主面上に配置される。ここで、主面とは、絶縁性基板の板厚方向に垂直な表面であって、絶縁性基板を形成する6面の中で面積が最大である面である。本実施形態において、第1保護膜はメサ型化合物半導体積層部の側面と直接接するように形成される。第2保護膜は、第1保護膜よりも膜密度が大きい(高い)材料からなり、第1保護膜上に形成される。本実施形態に係る化合物半導体装置は、絶縁性基板の一部が少なくとも底面となる凹部を有する。換言すると、化合物半導体装置は凹部を有し、凹部の底面の少なくとも一部が絶縁性基板に接する。凹部の側面及び底面は第1保護膜及び第2保護膜に覆われる。
【0025】
[メサ型化合物半導体積層部]
メサ型化合物半導体積層部は、メサ構造を有している。メサ型化合物半導体積層部の構成は、PN接合又はPIN接合によるダイオード構造を含むものであれば特に制限されない。第1導電型半導体層と第2導電型半導体層は反対の導電型を有する。例えば第1導電型半導体層がp型であれば第2導電型半導体層はn型である。例えば第1導電型半導体層がn型であれば第2導電型半導体層はp型である。第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層の材料としては、InSb、InAsSb、AlInSb等があるがこれらに制限されない。また、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層は複数の材料による積層構造で構成されてよい。
【0026】
ここで化合物半導体装置のSNRは、赤外線がメサ型化合物半導体積層部に入射したときに発生する光電流Ipと化合物半導体装置の素子抵抗R0の平方根の積に比例する。すなわち、SNRは式(1)のように表される。
【0027】
【0028】
したがって、光電流Ipを低下させることなく、素子抵抗R0を大きくすることで、化合物半導体装置のSNR特性が向上する。
【0029】
化合物半導体装置の素子抵抗R0は、エッチング工程によって電気的に分離されたメサ型化合物半導体積層部の間のリーク電流によって劣化することが知られている。
図7は複数のメサ型化合物半導体積層部の配置を例示する図である。一般に、化合物半導体装置は複数のメサ型化合物半導体積層部を含んで構成される。化合物半導体装置における複数のメサ型化合物半導体積層部間のリーク電流を抑制することで、素子抵抗R0を大きくすることができる。本実施形態に係る化合物半導体装置は、後述する構造によってリーク電流を抑制することができる。
【0030】
活性層は、受光層又は発光層である。活性層の材料としては、化合物半導体材料からなり、光を受光又は発光し光電流を生じる材料であれば特に制限されない。特に2.5~6.0μmの波長の赤外線を受光又は発光し光電流を生じる材料であることが好ましい。また、活性層は複数の材料による積層構造であってよい。活性層は、少なくともIII族元素を含むことが好ましく、特性及び量産性の観点からAlxIn1-xSb(0≦x≦18)を用いることが好ましい。つまり、活性層の層内の全III族元素に占めるAl組成の割合が0~18%であることが好ましい。より好ましくはAlxIn1-xSb(0≦x≦9.8)を用いるのが良い。つまり、活性層の層内の全III族元素に占めるAl組成の割合が0~9.8%であることがより好ましい。また、Sbの代わりにAsが用いられてよい。つまり、活性層はIn及びSb又はAsを少なくとも含んでよい。また、素子抵抗R0の低下を防ぐ観点から、活性層中のキャリア濃度はZn、Snなどのドーピングによって十分小さくなるように調整されていることが望ましい。具体的には、300Kにおいて4.1×1016cm―3以下のキャリア濃度であることが望ましい。
【0031】
メサ型化合物半導体積層部は、第1導電型半導体層と活性層の間に、第1導電型半導体層よりもバンドギャップの大きい第1ワイドバンドギャップ層をさらに備えていてよい。また、メサ型化合物半導体積層部は、第2導電型半導体層と活性層の間に、第2導電型半導体層よりもバンドギャップの大きい第2ワイドバンドギャップ層をさらに備えていてよい。ワイドバンドギャップ層は活性層からの拡散電流を防ぐ層として機能する。ワイドバンドギャップ層は活性層に対し、十分なバンドオフセットが取れればよく、バンドギャップが広い材料を選択することが好ましい。ワイドバンドギャップ層の材料は、特に限定されないが、AlInAsSb、AlInSbなどが一例として挙げられる。
【0032】
(Al組成の測定方法)
メサ型化合物半導体積層部の各層のAl組成は、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)法によって求めることができる。測定には、CAMECA社製の磁場型SIMS装置「IMS 7f」を用いてよい。この手法は、固体表面にビーム状の一次イオン種を照射することで、スパッタリング現象により深さ方向に掘り進めながら、同時に発生する二次イオンを検出することで、組成分析を行う手法である。ここで、各層のAl組成とは、各層に含まれる全III族元素(13族元素)に対するAl元素の比率を指す。
【0033】
具体的には、一次イオン種をセシウムイオン(Cs+)、一次イオンエネルギーを2.5keV、ビーム入射角を67.2°とし、検出二次イオン種としてマトリックス効果が小さいMCs+(Mは、Al、Ga、In、As、Sb等)を検出することができる。
【0034】
ここで、目的とする層の深さまでスパッタリングを行うことで、目的とする層の組成分析を行うことができる。目的とする層の深さは、後述の断面TEM測定によって得られる各層の厚さから求めることができる。SIMS分析におけるスパッタリングの時間は、目的とする層までの深さと、スパッタレートに基づいて求められる。スパッタレートは、例えば試料(後述の標準資料など)の測定時のスパッタリング時間と、触針式の段差計を用いて測定した試料における深さなどを用いて求めることができる。
【0035】
各層におけるAl組成は、上記のMCs+の信号強度から求められる。例えばAlInSb層の場合、Al組成は(AlCs+の信号強度)÷((AlCs+の信号強度)+(InCs+の信号強度))から求めることができる。ここで、各層が深さ方向に均一な組成であっても、スパッタリングの影響により信号強度が深さ方向に分布を生じる場合がある。深さ方向の分布が生じる場合に、最大の信号強度が各層の信号強度の代表値とされてよい。
【0036】
ここで、分析で求められるAl組成定量値は真値からのずれを伴い得る。この真値からのずれを補正するために、X線回折(XRD:X-ray Diffracton)法から得られる格子定数値を求めた別サンプルが用意されて、Al組成値が既知である標準試料として用いられる。そして、第1の化合物半導体層が有する各層のAl組成についての測定条件を用いてSIMS分析を行うことで、信号強度に対するAl組成の感度係数を求めることができる。第1の化合物半導体層が有する各層のAl組成は、各層におけるSIMS信号強度に感度係数を乗じることでより正確に求めることができる。
【0037】
標準試料用の別サンプルとして、GaAs基板上に積層された膜厚800nmのAlxIn1-xSbを用いることができる。このサンプルについて格子定数を求めて、標準試料としてのAl組成xが求められてよい。格子定数は、例えばスペクトリス株式会社製のX線回折装置「X’Pert MPD」を用いて、X線回折(XRD:X-ray Diffaction)法によって求めることができる。
【0038】
X線回折による2θ-ωスキャンを行うことにより、基板表面の面方位に対応する面の面指数の2θ-ωスキャンにおけるピーク位置から、メサ型化合物半導体積層部の各層の基板表面に対する法線方向の格子定数が求められる。そして、AlxIn1-xSb層の異方的な歪みはないものとして、法線方向の格子定数からベガード則を用いてAl組成xを決定することができる。ベガード則は具体的には以下の式(2)で表される。
【0039】
【0040】
ここで、aAlSbはAlSbの格子定数である。aInSbはInSbの格子定数である。また、aAlInSbは上記のX線回折により求まるAlxIn1-xSb層の格子定数である。aAlSbには6.1355Åを使用してよい。また、aInSbには6.4794Åを使用してよい。
【0041】
SIMS測定で用いられる標準試料として、Al組成xが0.10<x<0.15のものを用いてよい。
【0042】
[第1保護膜]
第1保護膜は、メサ型化合物半導体積層部の側面と直接に接するように形成された絶縁材料からなる保護膜であり、メサ型化合物半導体積層部の側面を覆う。本実施形態の化合物半導体装置における第1保護膜は、側面だけでなく、隣接するメサ型化合物半導体積層部の間に設けられた凹部も覆う。第1保護膜の材料としては、メサ型化合物半導体積層部へのストレスを最小化し特性劣化を抑制する観点から、膜密度が第2保護膜より小さい材料を用いる必要がある。第1保護膜は、膜密度が2.25g/cm3より小さい材料からなることが望ましい。具体的には、第1保護膜が酸化シリコン(Silicon Oxide)であることが望ましい。また、第1保護膜として膜密度が小さい(低い)材料、つまり吸湿性の高い材料を用いる場合に、吸湿による体積膨張によって第1保護膜上に形成された第2保護膜にクラックが生じるおそれがある。そのため第1保護膜の吸湿を抑制する観点から、第1保護膜は凹部に埋め込まれた構造であること、つまり第1保護膜の膜厚が凹部の深さより薄いことが望ましい。
【0043】
[第2保護膜]
第2保護膜は、第1保護膜上に形成された絶縁材料からなる保護膜であり、第1保護膜の材料より吸湿性が低い。つまり第2保護膜は、第1保護膜より膜密度が大きい材料からなることを特徴とする。具体的には、膜密度が2.35g/cm3より大きいことが望ましい。第2保護膜として、例えば窒化シリコン(Silicon Nitride)又は酸窒化シリコン(Silicon Oxinitride)などを選択することができる。材料特性の制御性及び量産性の観点から、第1保護膜を酸化シリコンとした場合に、第2保護膜は、酸化シリコンと同様にプラズマCVD装置で容易に形成が可能な窒化シリコンであることが望ましい。また、第1保護膜が吸湿膨張した場合でもクラックが生じにくく、高品質な化合物半導体装置を実現する観点から、第2保護膜の膜厚が第1保護膜の膜厚の2倍以上であることが望ましい。
【0044】
(保護膜の膜厚の測定方法)
保護膜の膜厚は断面TEM(TEM:Transmission Electron Spectroscopy)法により測定することが可能である。具体的には、日立ハイテクノロジーズ社製のFIB装置「FB-2100」を用いることができる。FIB法によって測定しながら作製された500nm以下の厚みの試料に対し、日立製のSTEM装置「HD-2300A」を用いて加速電圧200kVにて透過像で断面観察を行い、保護膜の膜厚が測定された。
【0045】
[絶縁性基板]
本実施形態の化合物半導体装置は、メサ型化合物半導体積層部が絶縁性基板の一方の主面上に配置され、絶縁性基板の他方の主面が光入射面又は光出射面であることが好ましい。絶縁性基板の一例としては、半導体基板が挙げられ、具体的にはGaAs基板、Si基板、InP基板、InSb基板、InAs基板が挙げられるがこの限りではなくそれ以外の絶縁性基板であってよい。一例としては、セラミックなどが挙げられる。
【0046】
メサ型化合物半導体積層部の上面には電流を外部に取り出すための電極が設けられる。電極が設けられない他方の主面を光入射面又は光射出面にすることにより、効率的に赤外線をメサ型化合物半導体積層部に入射すること又は効率的に赤外線をメサ型化合物半導体積層部から射出することが可能になる。このとき、絶縁性基板側から光を入射すること又は絶縁性基板側から光を射出することになるため、活性層よりもバンドギャップが大きな材料の絶縁性基板を用いることが好ましい。この場合、活性層よりもバンドギャップが大きく、かつ、化合物半導体の結晶成長が容易であることから、GaAs基板が好ましい。
【0047】
絶縁性基板はドナー不純物又はアクセプター不純物によるドーピングの制限がない。
【0048】
絶縁性基板上に形成した複数のメサ型化合物半導体積層部を直列又は並列に接続するためには、各メサ型化合物半導体積層部を電気的に分離する必要がある。電気的に分離するためには各メサ型化合物半導体積層部が他のメサ型化合物半導体積層部と電気的かつ物理的につながらないように各メサ型化合物半導体積層部間の導電材料をエッチング等により除去すればよい。また、エッチング不足による導通を防ぐために、各メサ型化合物半導体積層部間に絶縁性基板を少なくとも底面とする凹部を形成することが好ましい。導電材料の除去及び凹部を形成する方法としては、例えばドライエッチング法を用いればよい。その後、第1保護膜として、PCVD等を用いて全面に均一な絶縁材料からなる保護膜が成膜される。さらに、第1保護膜の吸湿による変質及び破壊を防ぐため、第2保護膜が成膜される。そのため、本実施形態の化合物半導体装置は凹部を備え、凹部の側面(凹部側面)及び底面(凹部底面)が第1保護膜及び第2保護膜に覆われている。ここで、本実施形態において、凹部の深さよりも第1保護膜の膜厚が薄くなっており、第1保護膜は凹部内に埋め込まれている。
【0049】
[バンドパスフィルタ]
本実施形態の化合物半導体装置は、少なくとも2.5~6.0μmの波長の範囲に含まれる任意の波長帯の光を50%以上透過するバンドパスフィルタをさらに備えていてよい。バンドパスフィルタを備えることで、化合物半導体装置の感度波長域を制限することができ、ガスセンサとして利用するときに他の波長域に吸収帯をもつ干渉ガスの影響を受けづらくなる。
【0050】
[電極部]
本実施形態の化合物半導体装置は、さらにメサ型化合物半導体積層部の第1導電型半導体層に電気的に接続される第1の電極と、メサ型化合物半導体積層部の第2導電型半導体層に電気的に接続される第2の電極を備える。電極の構成材料としては、化合物半導体積層部とのコンタクト抵抗が低いもの、電気抵抗が低いものであることが好ましい。具体的にはTi、Ni、Pt、Cr、Al、Cuなどがあげられる。また電極は複数の電極材料の積層体で構成されていてよい。
【0051】
以下、図面を参照しながら、本実施形態の化合物半導体装置の構成例が説明される。本実施形態の化合物半導体装置の具体的な構成例として、実施例1、実施例2及び実施例3が以下に説明される。また、本実施形態の化合物半導体装置の効果を確認するために、一部が異なる比較形態の構成例として、比較例1及び比較例2が以下に説明される。
【0052】
図1及び
図2は、実施例1及び実施例2の化合物半導体装置1の断面模式図である。
図1は、第1保護膜31及び第2保護膜32を部分的に除去して電極部50が設けられる前の状態を示す。つまり、
図1の状態から、メサ型化合物半導体積層部20の頂部の一部及び第1導電型半導体層21の下部21bの上面の一部においてコンタクトホールが形成され、電極部50が設けられて、実施例1及び実施例2の化合物半導体装置1の断面(
図2)となる。ここで、
図2に示すように、第1導電型半導体層21を段差部分で分けて、上部21tと下部21bとを区別することがある。
【0053】
化合物半導体装置1は、絶縁性基板10と、第1導電型半導体層21と、第1ワイドバンドギャップ層22と、活性層23と、第2ワイドバンドギャップ層24と、第2導電型半導体層25と、を備える。第1導電型半導体層21と、第1ワイドバンドギャップ層22と、活性層23と、第2ワイドバンドギャップ層24と、第2導電型半導体層25とがメサ型化合物半導体積層部20となる。また、実施例1及び実施例2の化合物半導体装置1は、メサ型化合物半導体積層部20の側面と直接接触するように第1保護膜31をさらに備える。第1保護膜31はメサ型化合物半導体積層部20の最上面及び第1導電型半導体層21の下部21bの上面とも直接に接している。実施例1及び実施例2の化合物半導体装置1は凹部40を有する。凹部40は凹部側面40aと凹部底面40bとを有する。凹部側面40aは、少なくとも一部が第1導電型半導体層21(第1の化合物半導体層)の側面21aの一部と対向する。凹部底面40bは、少なくとも一部が絶縁性基板10の第1導電型半導体層21側の表面10bの一部と対向する。また、凹部底面40bは、凹部40の2つの凹部側面40aを接続する底面である。凹部40は複数のメサ型化合物半導体積層部を分離する(
図7参照)。実施例1及び実施例2の化合物半導体装置1は、第1保護膜31の上面に第2保護膜32をさらに備える。別の例として、化合物半導体装置1は、第2保護膜32を備えずに、凹部底面40bに第1保護膜31が直接接する構成であってよい。凹部40の凹部側面40a及び凹部底面40bを酸化シリコンの第1保護膜31で覆うことで、凹部40を介して隣接するメサ型化合物半導体積層部20との間でリーク電流の発生を抑制することができる。さらに、第1保護膜31を膜密度が大きく、吸湿性の低い窒化シリコンの第2保護膜32で覆うことで、第1保護膜31の吸湿膨張を抑制することができる。すなわち、凹部側面40a及び凹部底面40bが第1保護膜31及び第2保護膜32に覆われていることがさらに好ましい。
【0054】
また、凹部40の深さ(
図1のd)より第1保護膜31の膜厚(
図1のt1)が薄く、第1保護膜31は凹部40内に埋め込まれており、第1保護膜31の上面が凹部40の上面(上端)より低くなっている。つまり、凹部底面40bに対向する絶縁性基板10の表面の一部は、絶縁性基板10の一部が削られて構成される。
図1のdsは、絶縁性基板10の削られた部分と削られていない部分との最大の深さを示す。dsは、0以上であるが、第1保護膜31が凹部40内に埋め込まれる構成の場合に0より大きい値となる。このような構成により、第1保護膜31の吸湿膨張が抑制される。さらに、長期間の多湿環境に置かれたことによって第1保護膜31が吸湿してしまった場合であっても、凹部40の第1保護膜31が設けられていない空間が緩衝領域として機能し、第1保護膜31の膜剥がれを防止でき、絶縁性が良い状態が保たれる。ここで、第2保護膜の膜厚(
図1のt2)が第1保護膜の膜厚より大きくてよい。例えば
図8Aに示すように、第2保護膜の膜厚(t2)が第1保護膜31の膜厚(t1)の2倍以上の場合に、電極部50の亀裂(c)の数が1で、亀裂深さを113nmに抑えることができた。また、例えば
図8Bに示すように、第2保護膜の膜厚(t2)が第1保護膜31の膜厚(t1)の1倍以上で2倍未満の場合に、電極部50の亀裂(c)の数が2に増えたが、亀裂深さを121nmに抑えることができた。一方、例えば
図8Cに示すように、第2保護膜の膜厚(t2)が第1保護膜31の膜厚(t1)より小さい場合に、電極部50の亀裂(c)の数が2であって、亀裂深さも316nmになった。
図8A~
図8Cの実験例の比較から明らかなように、第1保護膜31の膜厚(t1)が第2保護膜の膜厚(t2)より薄いほど、電極被膜性が向上し、高品質の化合物半導体装置1が得られるとの結果が得られた。ここで、
図8A~
図8Cは、
図2のrで示される領域に対応する。
【0055】
さらに、凹部40の深さより、第1保護膜31と第2保護膜32を足した膜厚(t1+t2)が薄いように構成されてよい。つまり、凹部40において、第2保護膜32も凹部40内に埋め込まれて、第2保護膜32の上面が凹部40の上面より低くなっていてよい。また、
図9に示すように、第1保護膜と第2保護膜の総膜厚(t1+t2)が、絶縁性基板10の削られた部分と削られていない部分との最大の深さ(ds)より薄くてよい。つまり、第2保護膜32の上面が絶縁性基板10と第1導電型半導体層21の境界より低くなっているように構成されてよい。
【0056】
図3は、実施例3の化合物半導体装置1の断面模式図である。実施例3の化合物半導体装置1は、実施例1及び実施例2の化合物半導体装置1と比較して、第1ワイドバンドギャップ層22を備えていない。
【0057】
図4は、比較例1の化合物半導体装置1の断面模式図である。実施例3の化合物半導体装置1と比較して、比較例1の化合物半導体装置1は凹部40に第1保護膜31を備えていない。
【0058】
図5は、比較例2の化合物半導体装置1の断面模式図である。実施例3の化合物半導体装置1と比較して、比較例2の化合物半導体装置1は凹部40だけでなく、全体として第1保護膜31を備えていない。
【0059】
以下、実施例1~3及び比較例1~2のそれぞれの詳細が説明される。
【0060】
[実施例1]
絶縁性基板10としてのGaAs基板上に、MBE装置を用いて、第1導電型半導体層21、第1ワイドバンドギャップ層22、活性層23、第2ワイドバンドギャップ層24、第2導電型半導体層25、が順次積層された。この積層工程では、第1導電型半導体層21として、Snを7×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのn型InSb層及びSnを7×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのn型Al0.098In0.902Sb層が形成された。また、第1ワイドバンドギャップ層22として、Snを7×1018[cm-3]ドーピングした0.02μmのn型Al0.30In0.70Sb層が形成された。また、活性層23として、2.0μmのノンドープのAl0.098In0.902Sb層が形成された。また、第2ワイドバンドギャップ層24として、Znを3×1018[cm-3]ドーピングした0.02μmのp型Al0.30In0.70Sb層が形成された。また、第2導電型半導体層25として、Znを3×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのp型Al0.098In0.902Sb層が形成された。
【0061】
次いで、上記の化合物半導体の積層構造の上にレジストパターンが形成され、エッチングを施すことで、メサ型化合物半導体積層部20が作製された。さらに複数のメサ型化合物半導体積層部20のそれぞれが電気的に独立になるように、再びレジストパターンが形成されて、素子分離のためのエッチングを行うことで、凹部40が形成された。レジストパターンの除去後、全面(GaAs基板及びGaAs基板上に形成されたメサ型化合物半導体積層部20)にPCVDを用いて第1保護膜31として70nmの酸化シリコン層が形成された。この酸化シリコン層上にPCVDを用いて第2保護膜32として200nmの窒化シリコン層が形成された。第1保護膜31及び第2保護膜32の膜密度は、それぞれ2.18g/cm
3と2.61g/cm
3であった。この2層の保護膜の一部にコンタクトホールが形成され、コンタクトホールを覆うようにチタン(Ti)、白金(Pt)及び金(Au)をこの順に堆積して電極部50が形成されて、63個の直列接続された化合物半導体装置1が得られた。得られた化合物半導体装置1は、
図2に示した断面模式図のような構造となる。凹部40の深さが約800nmであったのに対し、第1保護膜31の酸化シリコン層の膜厚は70nmであった。
【0062】
[実施例2]
絶縁性基板10としてのGaAs基板上に、MBE装置を用いて、第1導電型半導体層21、第1ワイドバンドギャップ層22、活性層23、第2ワイドバンドギャップ層24、第2導電型半導体層25、が順次積層された。この積層工程では、第1導電型半導体層21として、Snを7×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのn型InSb層及びSnを7×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのn型Al0.062In0.938Sb層が形成された。また、第1ワイドバンドギャップ層22として、Snを7×1018[cm-3]ドーピングした0.02μmのn型Al0.22In0.78Sb層が形成された。また、活性層23として、2.0μmのノンドープのAl0.062In0.938Sb層が形成された。また、第2ワイドバンドギャップ層24として、Znを3×1018[cm-3]ドーピングした0.02μmのp型Al0.22In0.78Sb層が形成された。また、第2導電型半導体層25として、Znを3×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのp型Al0.062In0.938Sb層が形成された。これらの層以外は、実施例1と同様の方法で化合物半導体装置1が得られた。
【0063】
[実施例3]
活性層23として、Znを3×1017[cm-3]ドーピングした2.0μmのInSb層が形成され、第1ワイドバンドギャップ層22を形成せず、第1保護膜31の酸化シリコン層の膜厚が170nmであるように形成された。これらの違い以外は、実施例1と同様の方法で化合物半導体装置1が得られた。
【0064】
[比較例1]
絶縁性基板10としてのGaAs基板上に、MBE装置を用いて、第1導電型半導体層21、活性層23、第2ワイドバンドギャップ層24、第2導電型半導体層25、が順次積層された。この積層工程では、第1導電型半導体層21として、Snを7×1018[cm-3]ドーピングした1μmのn型InSb層が形成された。また、活性層23として、Znを3×1017[cm-3]ドーピングした2.0μmのInSb層が形成された。また、第2ワイドバンドギャップ層24として、Znを3×1018[cm-3]ドーピングした0.02μmのp型Al0.18In0.82Sb層が形成された。また、第2導電型半導体層25として、Znを3×1018[cm-3]ドーピングした0.5μmのp型InSb層が形成された。
【0065】
次いで、上記の化合物半導体の積層構造の上にレジストパターンが形成され、エッチングを施すことで、メサ型化合物半導体積層部20が作製された。さらに複数のメサ型化合物半導体積層部20のそれぞれが電気的に独立になるように、酸化シリコンのハードマスクが350nmの厚さで形成されて、素子分離のためのエッチングが行われた。素子分離のためのエッチングによって、200nm程度までエッチングされた酸化シリコンのハードマスクは、そのまま第1保護膜31となる。その後、全面(GaAs基板及びメサ型化合物半導体積層部20上に形成されている酸化シリコン層)にPCVDを用いて、第2保護膜32として窒化シリコン層が200nmの厚さで形成された。第1保護膜31及び第2保護膜32の膜密度は、それぞれ2.25g/cm
3と2.35g/cm
3であった。この2層の保護膜の一部にコンタクトホールが形成され、コンタクトホールを覆うようにチタン(Ti)、白金(Pt)及び金(Au)をこの順に堆積して電極部50が形成されて、63個の直列接続された化合物半導体装置1が得られた。得られた化合物半導体装置1は、
図4に示した断面模式図のような構造となり、凹部40に第1保護膜31を備えていない。
【0066】
[比較例2]
第1保護膜31を形成せず、窒化シリコンの第2保護膜32がメサ型化合物半導体積層部20の側面と直接接するようにした以外は、比較例1と同様の方法で化合物半導体装置1が得られた。
【0067】
<評価>
実施例1~3及び比較例1~2で得られた化合物半導体装置1の無バイアス近傍領域における電気抵抗が測定された。化合物半導体装置1の無バイアス近傍領域における電気抵抗は、上記の式(1)における化合物半導体装置1の素子抵抗R0に対応するため、以下において「R0」と表記される。
【0068】
図6は、実施例1~3及び比較例1~2の測定結果に基づいて、得られた化合物半導体装置1の無バイアス近傍領域における電気抵抗(R0)を示す。
【0069】
図6に示すように、実施例1~3の化合物半導体装置1の無バイアス近傍領域における電気抵抗は、比較例1~2に比べて大きい。すなわち、上記の実施形態で説明した化合物半導体装置1の構造を有することによって、SNR特性を高めることができることが示された。
【0070】
ここで、本開示における化合物半導体装置1は、主に受光素子であるとして説明されたが、同一の構造で発光素子を作製することができる。同一の構造を有する発光素子としての化合物半導体装置1は、受光素子の場合と同じようにメサ型化合物半導体積層部20の間のリーク電流抑制効果を奏する。発光素子としての化合物半導体装置1においては、リーク電流抑制によって、活性層23への電荷注入効率が改善される。すなわち発光効率の高い化合物半導体装置1を実現することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 化合物半導体装置
10 絶縁性基板
10b 表面
20 メサ型化合物半導体積層部
21 第1導電型半導体層
21a 側面
22 第1ワイドバンドギャップ層
23 活性層
24 第2ワイドバンドギャップ層
25 第2導電型半導体層
31 第1保護膜
32 第2保護膜
40 凹部
40a 凹部側面
40b 凹部底面
50 電極部