(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179377
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】基材処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20231212BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/318 B
C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091783
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】63/349,672
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スンヒョン・イ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA29
4K030BA41
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4K030JA05
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4K030JA11
4K030JA16
4K030JA18
4K030LA02
4K030LA15
5F058BA09
5F058BA20
5F058BC10
5F058BD13
5F058BF07
5F058BF24
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5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BF39
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】基材処理方法を提供する。
【解決手段】導電層を酸化物膜と接触させるギャップを充填する時に、活性化酸素ガスによって導電層が酸化されることを防止するための基材処理方法が提供される。一実施形態では、高周波RF電力および低周波RF電力は、ギャップの下側部分に密度の高い保護層を形成し、保護層上に絶縁層を形成するときに活性化酸素ガスが導電層と反応してそれを酸化することを防止するために、印加され得る。別の実施形態では、膜変換ガスおよび阻害ガスは、保護層の段差被覆、およびギャップの表面に沿った導電層への活性化酸素ガスに対する均一な遮断を、改善するために供給されてもよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材のギャップを充填するための方法であって、
ギャップの表面上に保護層を形成する工程と、
前記保護層上に絶縁層を形成し、前記ギャップを充填する工程と、を含み、
前記ギャップの一部分が、前記基材内に形成された導電層と接触する、方法。
【請求項2】
前記ギャップの前記表面上に保護層を形成する前記工程が、
ケイ素含有ガスを供給する工程と、
二周波数RF電力を印加する工程と、を含むケイ素含有層を形成する工程を含み、
前記ギャップの壁上に保護層を形成する工程中に不活性ガスが連続的に供給され、
前記二周波数RF電力が、高周波RF電力および低周波RF電力を含み、
ケイ素含有層を形成する前記工程が、複数回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケイ素含有層が、前記ギャップの前記表面に沿って前記ギャップの最上部分から最下部分まで形成され、前記活性化不活性ガスによって分解および/または高密度化され、
前記ケイ素含有層が、ケイ素、炭素、および窒素、またはそれらの混合物の要素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケイ素含有層がSiCNを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ギャップの下側部分での前記ケイ素含有層の膜成長速度および段差被覆が、前記低周波RF電力の強度が増加するにつれて、増大する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記高周波RF電力の周波数が10MHz~80MHzであり、前記低周波RF電力の周波数が200kHz~600kHzである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
膜変換ガスおよび阻害ガスを供給する工程であって、前記膜変換ガスが窒素を含み、前記阻害ガスが水素を含む、工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ケイ素含有層が窒素を豊富に含み、さらに高密度化される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ギャップの最上部分における前記ケイ素含有層の膜成長が阻害される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
プラズマ処理のためのRF電力を前記基材に印加する工程であって、前記活性化不活性ガスが、前記ギャップの最上部分上に形成された前記ケイ素含有層の少なくとも一部分を衝撃して、除去する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記基材へのプラズマ処理のための前記RF電力が、高周波RF電力を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基材へのプラズマ処理のための前記RF電力の強度が、二周波数RF電力を印加する前記工程中に印加される前記高周波RF電力の強度よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜変換ガスが、N2、N2O、NO2、NH3、N2H2、N2H4、またはそれらの混合物のうちの少なくとも一つを含み、前記阻害ガスが水素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ素含有ガスが、TSA、(SiH3)3N;DSO、(SiH3)2;DSMA、(SiH3)2NMe;DSEA、(SiH3)2NEt;DSIPA、(SiH3)2N(iPr);DSTBA、(SiH3)2N(tBu);DEAS、SiH3NEt2;DTBAS、SiH3N(tBu)2;BDEAS、SiH2(NEt2)2;BDMAS、SiH2(NMe2)2;BTBAS、SiH2(NHtBu)2;BITS、SiH2(NHSiMe3)2;DIPAS、SiH3N(iPr)2;TEOS、Si(OEt)4;3DMAS、SiH(N(Me)2)3;BEMAS、SiH2[N(Et)(Me)]2;AHEAD、Si2(NHEt)6;TEAS、Si(NHEt)4、またはそれらの混合物のうち少なくとも一つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ギャップの前記表面上に保護層を形成する前記工程が、スーパーサイクルを含んで複数回繰り返され、
前記ケイ素含有層を形成する前記工程が複数回繰り返され、前記RF電力をプラズマ処理のために供給する工程が実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記保護層上に絶縁層を形成し、前記ギャップを充填する前記工程が、
ケイ素含有ガスを供給する工程と、
酸素含有ガスを供給する工程と、
RF電力を印加する工程であって、前記RF電力が、高周波RF電力および低周波RF電力を含む、工程と、を含み、
前記保護層上に絶縁層を形成する前記工程が、複数回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ケイ素含有ガスが、TSA、(SiH3)3N;DSO、(SiH3)2;DSMA、(SiH3)2NMe;DSEA、(SiH3)2NEt;DSIPA、(SiH3)2N(iPr);DSTBA、(SiH3)2N(tBu);DEAS、SiH3NEt2;DTBAS、SiH3N(tBu)2;BDEAS、SiH2(NEt2)2;BDMAS、SiH2(NMe2)2;BTBAS、SiH2(NHtBu)2;BITS、SiH2(NHSiMe3)2;DIPAS、SiH3N(iPr)2;TEOS、Si(OEt)4;SiCl4;HCD、Si2Cl6;3DMAS、SiH(N(Me)2)3;BEMAS、SiH2[N(Et)(Me)]2;AHEAD、Si2(NHEt)6;TEAS、Si(NHEt)4;Si3H8;DCS、SiH2Cl2;SiHI3;SiH2I2;またはそれらの混合物もしくは誘導体のうちの一つのうちの少なくとも一つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酸素含有ガスが、O2、O3、CO2、H2O、NO2、N2O、またはそれらの混合物もしくは誘導体のうちの少なくとも一つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ギャップの前記表面上に形成される前記保護層が、前記導電層の酸化を防止する、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記導電層が、タングステン、アルミニウム、銅、ポリシリコン、もしくは導電性材料をドープした層、またはそれらの混合物のうちの少なくとも一つを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ギャップを充填する絶縁層とギャップに接触する導電層との間に保護層を形成するための方法、より具体的には、ギャップの最下部で形成する保護層を促進して、その中の保護層の段差被覆を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、相互接続プロセスのために、複数の金属層(例えば、銅、タングステン、またはアルミニウムを含む)が半導体デバイス構造上に形成されてもよく、絶縁層(例えば、酸化ケイ素を含む)が金属層間に形成されて、金属層間に分離絶縁を提供してもよい。酸化ケイ素層は、通常、化学蒸着(CVD)法によって形成され得るが、半導体デバイスの線幅が縮小すると、酸化ケイ素膜は、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)法によって形成され得る。PEALD法は、低温での膜の形成および膜厚の正確な制御を可能にする。
【0003】
酸化ケイ素層がPEALD法によって形成される時、ケイ素含有ガスおよび活性化酸素含有ガスが順次に供給され、基材の表面上で互いに化学的に反応し、その上に膜を形成する。しかし、活性化酸素含有ガスは、酸化ケイ素層を囲む導電性下層または導電層を酸化し、電気特性などのデバイス性能を劣化させ得る。したがって、保護層は、酸化ケイ素層を形成する前に、導電層、例えば金属層上に導入される。
【0004】
一方、半導体デバイスの集積度が増大するにつれて、相互接続プロセスおよび絶縁層プロセスもそれらのデバイス構造上で実行されるため、3次元構造、パターン構造、およびギャップ構造上で実行されるプロセスの数も増加する。しかし、ギャップ構造のアスペクト比が増加すると、保護層は、ギャップの最下部で滑らかに形成されないのであり、導電層の酸化をもたらし得る。
図1では、保護層3は、導電層1と絶縁層2との間に形成され得る。導電層1は、(1)タングステン、アルミニウム、もしくは銅などの金属層、(2)ポリシリコン、または(3)導電性材料をドープした層のうちの一つであってもよい。絶縁層2は、酸化ケイ素層であってもよい。
【0005】
図2は、底面と側壁のアスペクト比が1:25であるギャップ構造上に形成されたSiO
2膜のTEM(透過型電子顕微鏡)写真画像、およびギャップ上の位置によるSiO
2膜の相対的厚さを示す。例えば、ギャップの最上部および下側部分上に形成される膜厚の比率は、1:0.25であり得る。すなわち、最下部に形成される膜厚は、最上部上に形成される膜厚の約25%であり、ギャップの下側部分を囲む導電層、例えば、タングステン層が、酸素ガスに曝露され、酸化される可能性が高いのであり得ることを示す。したがって、ギャップのアスペクト比が増加するにつれて、導電層が酸化される可能性がより高くなり得る。
【0006】
図3は、保護層およびその上にSiO
2絶縁層を形成するための既存の処理方法のタイミンググラフを示す。
【0007】
図3の第一の工程では、保護層は、ケイ素含有原料ガスおよび高周波RF電力(HRF)を順次にかつ断続的に供給することによって形成され得る。第一の工程の間、Arガスは連続的に供給される。ケイ素含有原料ガスは、アミノシランであってもよい。基材上に吸着されたケイ素含有原料ガスは、RF電力によって活性化されたArラジカルによって衝撃され、アミノシランの成分であるケイ素、窒素、炭素、水素、およびリガンドの断片を含む膜へ物理的に分解され得る。例えば、SiCN保護層が形成されてもよい。第一の工程は、例えば、M回など、複数回繰り返されてもよい。
【0008】
図3の第二の工程では、SiO
2絶縁層は、第一の工程で形成された保護層上に形成されてもよい。より詳細には、ケイ素含有ガス、酸素含有ガス、およびRF電力は、SiO
2絶縁層を形成するために順次にかつ断続的に供給される。第二の工程は、例えば、N回など、複数回繰り返されてもよい。
【0009】
しかし、保護層が
図3に従ってギャップ上に形成される時、保護層は、下側部分で、特にギャップの最下部で形成されにくい場合があり、SiO
2絶縁層の形成中に、酸素ラジカルとギャップを囲む導電層(例えば、金属層)との間の相互作用、および導電層の酸化を引き起こし得る。これは、導電層およびデバイスの電気特性を劣化させ得る。
【0010】
図4は、ギャップの下側部分で酸素ラジカルによって酸化されたタングステン層の図である。
【0011】
図4では、SiCN保護層はギャップの内壁上に形成されるが、下側部分には形成されていない。結果として、酸化タングステンは、SiO
2絶縁層が形成されている間に供給される酸素ラジカルによってその中に形成される。酸化導電層は、前述のように半導体デバイスの電気特性を劣化させ得る。
【発明の概要】
【0012】
一つ以上の実施形態では、ギャップ充填プロセスは、プラズマ強化原子層堆積によって行われてもよい。より詳細には、ギャップ充填プロセスは、保護層およびその上に絶縁層を形成することを含み得る。
【0013】
一つ以上の実施形態では、保護層の形成中に基材上に吸着された原料は、RF電力によって分解され、原料分子の成分の混合物を含む層に変換されてもよい。
【0014】
一つ以上の実施形態では、ギャップ充填プロセスは、保護層の膜成長速度を改善し、ギャップの少なくとも一部分に接触する導電層の酸化を防止するために実施されてもよい。より詳細には、ギャップ充填プロセスは、保護層の形成中に二周波数RF電力を印加することを含み得る。
【0015】
一つ以上の実施形態では、ギャップ充填プロセスは、保護層の段差被覆および密度を改善することをさらに含んでもよい。より詳細には、一つ以上の実施形態は、膜変換ガスとして窒素、および阻害ガスとして水素を提供することを含んでもよく、保護層は窒素富化層に変換されてもよく、最上部での膜成長は阻害されてもよい。
【0016】
一つ以上の実施形態では、ギャップ充填プロセスは、保護層の段差被覆をさらに改善することを含んでもよい。より詳細には、プラズマ処理は、保護層を形成した後にRF電力を印加して、最上部に形成された保護層を衝撃し、かつギャップの最上部での保護層の膜成長を制御することによって実施されてもよく、RF電力の強度は、保護層の形成中に供給されるRF電力よりも大きくてもよい。
【0017】
一つ以上の実施形態では、ギャップ充填プロセスは、保護層上に絶縁層を形成することをさらに含み得る。より詳細には、原料ガス、酸素含有ガス、およびRF電力は、順次にかつ断続的に供給されてもよい。
【0018】
本開示の特定の実施形態の上記およびその他の態様、特徴、および利点は、添付図面と併せて以下の説明からより明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、導電層と絶縁層との間に形成された保護層の図である。
【
図2】
図2は、高アスペクト比のギャップ内の側壁上の保護層の段差被覆の図である。
【
図3】
図3は、保護層を形成するためのタイミンググラフであり、その後、既存の基材処理方法の酸化物層形成が続く。
【
図4】
図4は、ギャップの下側部分で酸素ラジカルによって酸化されたタングステン層の図である。
【
図5】
図5は、一実施形態による基材処理方法のフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態の保護層の形成と、それに続く絶縁層形成のタイミンググラフである。
【
図7】
図7は、低周波RF電力(LRF電力)の強度に従って、ギャップの最下部に形成された保護層の段差被覆である。
【
図8】
図8は、LRF電力の強度に従う、最上部に対する相対的膜厚およびギャップの最下部に形成された保護層の成長速度である。
【
図9】
図9(A)~(D)は、LRF電力の強度に従って最下部に形成された保護層のTEM画像の図を示す。
【
図10】
図10は、別の実施形態による基材処理方法のフローチャートである。
【
図11】
図11は、別の実施形態の保護層の形成と、それに続く絶縁層形成のタイミンググラフである。
【
図12】
図12は、別の実施形態による基材処理方法のフローチャートである。
【
図13】
図13は、別の実施形態の保護層の形成と、それに続く絶縁層形成のタイミンググラフである。
【
図14】
図14(A)~(D)は、本開示の実施形態による保護層を形成しギャップを充填するプロセス、およびデバイスの導電層の酸化の抑制の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態は、本開示の実施形態が概略的に図示されている図面を参照して、下記に記載される。図面では、例えば、製造技術および/または許容差の理由で、図示された形状からの変形が予想され得る。したがって、本開示の実施形態は、本明細書に例証される領域の特定の形状に限定されるものとして解釈されるべきではなく、例えば、製造工程によって生じる形状の偏差を含み得る。
【0021】
下記に、本開示の実施形態は、添付図面を参照して詳細に説明される。
【0022】
本開示は、ギャップの少なくとも一部分が導電層と接触し得る、高アスペクト比のギャップの最上部から最下部までの保護層を形成するための方法、および、ギャップの下側部分での保護層の膜成長速度を増加させる方法を提供する。
【0023】
図5は、本開示の一実施形態による基材処理方法を図示したフローチャートである。
図5の基材処理方法の各工程について、下記のとおり、より詳細に説明する。
【0024】
第一に、ギャップ構造を有する基材が提供され得る(S1)。ギャップ構造の一部分は、導電層に接触するか、または導電層を貫通し得る。導電層は、(1)タングステン、アルミニウム、もしくは銅などの金属層、(2)ポリシリコン、または(3)導電性材料でドープされた層のうちの一つを含み得る。
【0025】
第一の工程101では、ケイ素含有原料ガスが基材に供給されてもよい。ケイ素含有ガスは、アミノシランであってもよく、ギャップの表面に沿ってギャップの上側、側壁、および底側に吸着され、ケイ素原料層を形成してもよい。
【0026】
第二の工程201では、二周波数RF電力が印加されてもよい。より詳細には、低周波RF電力(LRF)および高周波RF電力(HRF)が同時に印加されてもよい。不活性ガスは、第一の工程101中および第二の工程201中に連続的に供給されてもよい。一つの例示的な実施形態では、不活性ガスは、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)のうちの少なくとも一つであってもよい。不活性ガスは、第二の工程201で活性化されてもよい。一実施形態では、低周波RF電力の周波数は、200kHz~600kHz、より好ましくは、300kHz~500kHzであってもよく、高周波RF電力の周波数は、10MHz~80MHz、より好ましくは、13MHz~60MHzであってもよい。低周波RF電力の強度は、30W~300W、より好ましくは50W~200Wであってもよく、高周波RF電力の強度は、100W~1,500W、より好ましくは300W~1,000Wであってもよい。
【0027】
活性化不活性ガスは、基材上に吸着されたケイ素原料層をイオン衝撃し、その結果、ケイ素原料層が分解および/または高密度化され得る。高密度化ケイ素原料層は、ケイ素原料分子の成分を含んでもよい。例えば、原料ガスがアミノシランである場合、活性化不活性ガスによってイオン衝撃を受けるケイ素原料層は、原料分子(例えば、ケイ素、窒素、炭素、または水素)およびリガンドの断片の混合物であってもよい。高密度化ケイ素原料層は、後述する絶縁層を形成する工程において、酸素ラジカルから導電性下層を保護する保護層として作用し得る。
【0028】
第二の工程201では、高周波RF電力が印加されてもよく、より多くの不活性ガス分子が活性化されてもよい。したがって、高周波RF電力は、ケイ素原料層のイオン衝撃、分解、および高密度化を強化する技術的利益を提供し得る。
【0029】
第二の工程201では、低周波RF電力も印加されてもよく、より多くの不活性ガスラジカルがギャップの下側部分により深く移動してもよい。結果として、低周波RF電力は、ギャップの下側部分に形成されたケイ素原料層のイオン衝撃、分解および高密度化を強化する技術的利益を提供し得る。第一の工程101および第二の工程201は、保護層を形成する工程として定義されてもよく、複数回繰り返されてもよい。例示的な実施形態では、保護層はSiCNであってもよい。
【0030】
第三の工程301では、ケイ素含有原料ガスが、第一の工程101および第二の工程201を通して形成される保護層上に供給されてもよい。例示的な実施形態では、第三の工程301で供給されるケイ素含有原料ガスは、第一の工程101で供給されるケイ素含有原料ガスと同じであってもよい。
【0031】
第四の工程401では、酸素含有ガスが供給されてもよい。第四の工程401では、酸素含有ガスは、第三の工程301で保護層上に形成されたケイ素原料層と実質的に反応しない場合がある。したがって、第四の工程401で供給される酸素含有ガスは、パージガスとして作用し得る。酸素含有ガスは、第三の工程、第四の工程、および後述する第五の工程501を通して連続的に供給されてもよい。不活性ガスはまた、第三の工程301、第四の工程401、および第五の工程501を通して、酸素含有ガスと共に連続的に供給してもよい。
【0032】
第五の工程501では、RF電力が印加されてもよく、酸素含有ガスが活性化されてもよい。活性化酸素含有ガスは、保護層上に吸着されたケイ素原料層と化学的に反応し、酸化ケイ素層を形成し得る。第五の工程501では、高周波RF電力のみが印加されてもよく、または高周波RF電力と低周波RF電力の両方が同時に印加されてもよい。別の実施形態では、第四の工程401および第五の工程501は、同時に実施されてもよい。第三の工程301、第四の工程401および第五の工程501は、ギャップを充填するために複数回繰り返されてもよい。第三の工程301から第五の工程501までは、絶縁層を形成する工程として定義されてもよい。
【0033】
保護層は、第一の工程101と第二の工程102の実施中に、ギャップの最上部から側壁を経て最下部に形成され得る。結果として、絶縁層の形成中の活性化酸素種による導電性下層の酸化が防止され得る。
【0034】
図6は、
図5のプロセスフローによる基材処理方法を示すタイミンググラフである。
【0035】
図6では、第一の工程は保護層を形成する工程であってもよく、第一の工程101および第二の工程201に対応してもよい。
図6の第二の工程は、絶縁層を形成する工程であってもよく、第三の工程301および第四の工程401に対応してもよい。
図6の第一の工程および第二の工程は、複数回繰り返されてもよい。
【0036】
図7は、低周波RF電力の強度に従って、ギャップの下側部分に形成された保護層の段差被覆を示す。
図7では、保護層の段差被覆は、低周波RF電力の強度が増加するにつれて、改善される。活性不活性ガスは下側部分の奥深くまで移動し得るため、その中に形成されるケイ素原料層は、物理的にかつ弱く結合した構造を有し得、より高密度化され得、かつよりはっきりした膜プロファイルを有し得る。したがって、保護層の段差被覆が改善し得る。
【0037】
図8は、ギャップの下側部分における保護層の膜成長速度と、その中に形成された保護層の相対的厚さを最上部での膜厚と比較したものとを、印加された低周波RF電力の強度に従って示す。
【0038】
図8では、下側部分において形成される保護層の膜成長速度は、低周波RF電力の強度が増加するにつれて、増大し得、最下部に形成される保護層の相対的厚さは、低周波RF電力の強度が増加するにつれて、最上部で形成される保護層の膜厚と比較して、37%から73%に増加し得る。
【0039】
図7および
図8に示すように、低周波RF電力は、活性種がギャップの下側部分に深く移動することを可能にし、ギャップの下側部分における保護層の形成をより容易にし得る。したがって、低周波RF電力は、ギャップの下側部分に接触する導電層が活性化酸素種によって酸化されることを防止する技術的利益を提供し得る。
【0040】
図9(A)~(D)は、印加された低周波RF電力の強度(ここで、高周波RF電力の強度は一定に維持され得る)に従って、ギャップの最下部(側面最下部を含む)で導電層に接触する保護層を示す、TEM(透過型電子顕微鏡)画像の図を示す。
【0041】
図9(A)では、保護層は、低周波RF電力が印加されていない時には、最下部に形成されないことがある。しかしながら、
図9(B)~(D)では、保護層が形成され得、低周波RF電力の強度が増加するにつれて厚さが増大し得る。したがって、低周波RF電力を印加することによって、下側部分での保護層の形成がより促進される。
【0042】
本開示はさらに、より効果的に導電層が酸化されるのを防止するための基材処理方法を開示する。保護層がギャップの表面に沿ってより均一に形成され得、かつ保護層の段差被覆が改善され得る時、導電層への酸素ラジカルの浸透および導電層の酸化は、その後の絶縁層を形成する工程でより効果的に防止され得る。すなわち、活性酸素種の導電層への浸透は、保護層の段差被覆を向上させることによって、ギャップの表面に沿ってより均一に防止され得る。
【0043】
例えば、絶縁層を形成する工程で活性化酸素が供給される時、保護層の段差被覆が不良である可能性がある、すなわち、段差被覆保護層がより良好である可能性のあるギャップの他の位置での保護層の厚さよりも保護層の厚さが薄いのであり得る、ギャップの位置で、導電層の酸化が発生し得る。
【0044】
したがって、本開示の別の実施形態は、ギャップ上に形成された保護層の段差被覆を改善するための方法を開示している。
【0045】
図10は、本開示の別の実施形態による基材処理方法を示すフローチャートである。
【0046】
図10では、膜変換ガスおよび阻害ガスは、第二の工程202で、基材に印加される二周波数RF電力と共に供給されてもよい。例えば、ギャップ上にSiCN保護層を形成する例示的な実施形態では、活性化窒素(N2)(膜変換ガスとして)が供給されてもよく、活性化水素(阻害ガスとして)が供給されてもよい。
【0047】
活性化窒素は、SiCN保護層と化学的に反応し、結合し得る。したがって、原料ガス成分の断片の物理的に結合された混合物である、SiCN保護層の少なくとも一部分は、窒素富化SiCN保護層に変換されてもよい。
【0048】
窒素富化SiCN保護層は、化学的に結合された混合物を含み得る。したがって、SiCN層の硬度、密度、および段差被覆は、ギャップの最上部から側壁を経て最下部まで、ギャップの表面に沿って均一に改善され得る。結果として、導電層の酸化は、ギャップの最上部から側壁を経て最下部まで、ギャップの表面に沿って、より均一かつ効果的に防止され得る。
【0049】
活性化水素は、ギャップの最上部で堆積阻害剤として作用し、SiCN保護層の成長を阻害し得る。例えば、活性化水素は、SiCN保護層と反応してもよく、SiCN層の一部分は、ガス状アンモニア(NH
3)の形態の副生成物として除去されてもよく、したがって、最上部分でのSiCN保護層の形成および成長を阻害する。
図10の第三の工程302、第四の工程402、および第五の工程502は、それぞれ、
図5の第三の工程301、第四の工程401、および第五の工程501と同一であってもよい。
【0050】
図11は、
図10の基材処理方法によるタイミンググラフを示す。
図11では、保護層を形成する第一の工程を複数回(M回)繰り返して、ケイ素含有ガスおよび二周波数RF電力を順次にかつ断続的に供給してもよく、絶縁層を形成する第二の工程の工程を複数回(N回)繰り返して、ケイ素含有ガスおよび酸素含有ガスを順次にかつ断続的に供給してもよい。不活性ガス、例えば、Arは、プロセス全体を通して連続的に供給され、SiCN保護層の形成中に基材上に吸着された原料層を衝撃してもよい。活性化窒素が供給されると、SiCN保護層は窒素を豊富に含み得る。
【0051】
一方で、
図10および
図11の実施形態による保護層を形成する第一の工程は、例えば、M回など、複数回繰り返されてもよい。しかし、ギャップの上側部分で形成される保護層の厚さは、繰返し数が増加するにつれてギャップの下側部分で形成される保護層の厚さよりも厚くなる場合があり、ギャップの表面に沿った導電層への活性酸素種の浸透に対して不均一な遮断をもたらす場合がある。したがって、本開示はさらに、ギャップの表面に沿って形成される保護層の段差被覆を改善する基材処理方法を開示する。
【0052】
図12は、本開示の別の実施形態による基材処理方法のフローチャートである。
【0053】
図12では、プラズマ処理303のためのRF電力を印加する工程は、保護層103および203を形成する工程の後にさらに提供されてもよい。プラズマ処理は、ギャップの上側部分内に形成された保護層をイオン衝撃し物理的に除去し得る。したがって、それは、上側部分における膜形成が抑制および制御され得るという、技術的利益を有し得る。
【0054】
図12の別の例示的な実施形態では、Arなどの活性化された重い不活性ガスが、イオン衝撃効果を増大させるために供給されてもよく、高周波RF電力(HRF)が、活性種の移動距離が高周波RF電力の下で比較的短いのであり得るため、活性不活性ガスをギャップの上側部分へ集中させるために印加されてもよい。
【0055】
図12の別の例示的な実施形態では、プラズマ処理303の工程において、印加されるRF電力の強度は、保護層203を形成する工程において印加されるRF電力の強度より大きくてもよい。例えば、プラズマ処理303の工程では、印加されるRF電力の強度は、500W~1,500W、またはより好ましくは700W~1,000Wであってもよい。保護層203を形成する工程において、印加されるRF電力の強度は、100W~1,000W、またはより好ましくは300W~800Wであってもよい。
【0056】
図12の別の例示的な実施形態では、プラズマ処理303の工程において、RF電力は、保護層203を形成する工程で印加されるRF電力よりも長く印加されてもよい。例えば、プラズマ処理303の工程では、RF電力は、0.1秒~4秒、またはより好ましくは0.2秒~2秒の間、印加され得る。保護層203を形成する工程において、RF電力は、0.1秒~1秒、またはより好ましくは0.2秒~0.8秒の間、印加され得る。したがって、それは、脱着した種がギャップの上側部分内に形成された保護層に再結合するのを、防止してもよく、それゆえ、ギャップの表面に沿った保護層の段差被覆を改善してもよい。
【0057】
図13は、
図12の基材処理方法によるタイミンググラフを示す。
【0058】
図13では、RF電力は、保護層を形成する工程T3で印加されるRF電力よりも、プラズマ処理の工程T5での方が長く印加されてもよい。別の例示的な実施形態では、プラズマ処理の工程T5で印加されるRF電力の強度は、保護層を形成する工程T3で印加されるRF電力よりも大きくてもよい。
【0059】
図13の保護層形成およびその後のプラズマ処理は、保護層を形成する工程(すなわち、T1~T3)が複数回(例えば、M回)繰り返され得かつプラズマ処理の工程が実施され得る、スーパーサイクルを実行することによって実施されてもよい。その後、保護層を形成する工程(すなわち、T1~T3)、およびプラズマ処理の工程T5をグループで、例えば、X回など、複数回繰り返してもよい。スーパーサイクルが完了した後、絶縁層を形成する工程(すなわち、T6~T9)が実施されてもよい。絶縁層を形成する工程の詳細は、
図5~
図10の説明で既に提供されたため、詳細な説明は省略する。
【0060】
図12および
図13では、保護膜の段差被覆を改善するために窒素ガスおよび水素ガスが提供されてもよく、その後にプラズマ処理が続く。しかし、別の例示的な実施形態では、保護層は、
図5および
図6に示す窒素ガスおよび水素ガスを供給することなく形成されてもよく、その後にプラズマ処理が続く。
【0061】
図14(A)~(D)は、本開示の実施形態による保護層を形成しギャップを充填するプロセス、およびデバイスの導電層の酸化の抑制の図を示す。
【0062】
図14(A)では、ギャップ6は、酸化物層4および導電層5を含む、基材内に形成され得る。ギャップは、10:1より大きいアスペクト比を有してもよい。導電層は、基材の深部に形成されてもよく、ギャップ6の下側部分は、導電層5と接触してもよい。しかし、導電層5の位置は、それに限定されるものではない。別の実施形態では、導電層は、基材の任意の部分(例えば、基材の最上部分または中間部分)に形成されてもよい。
【0063】
図14(B)では、ケイ素含有ガスが基材に供給されてもよく、ケイ素原料層7がギャップの最上部から最下部までのギャップの表面上に形成されてもよい。
【0064】
図14(C)では、低周波RF電力および高周波RF電力を含む二周波数RF電力が印加されてもよく、不活性ガスが同時に供給されてもよい。不活性ガスは、RF電力によって活性化されてもよく、ケイ素原料層7を分解しイオン衝撃してもよい。結果として、ケイ素原料層7は、ギャップの最上部から最下部まで高密度化されてもよく、保護層8に変換されてもよい。
図14(A)および
図14(B)は、複数回繰り返されてもよい。
【0065】
別の実施形態では、ギャップの表面上に形成された保護膜の段差被覆を改善するために、保護層を形成した後にプラズマ処理がさらに実施されてもよい。
【0066】
図14(D)では、ケイ素含有ガスおよび酸素含有ガスは、SiO
2膜を形成し、ギャップを充填するために、順次にかつ断続的に供給されてもよい。任意的に、酸素含有ガスは、RF電力によって活性化されてもよい。一実施形態では、この工程(
図14(D))を複数回繰り返してもよい。
【0067】
図14では、本開示の基材処理方法を適用することによって、半導体デバイスの導電層の酸化を防止する。導電層は、(1)タングステン、アルミニウム、もしくは銅、(2)ポリシリコン、または(3)導電性材料をドープした層のうちの一つであってもよい。半導体デバイスは、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)デバイス、NANDフラッシュメモリデバイス、非メモリ論理デバイス、またはTSV(Si貫通電極)デバイスであってもよい。
【0068】
表1は、本開示の実施形態に対するプロセス条件を示す。
【表1】
【0069】
本開示の実施形態および表1に従って保護層を形成するためのケイ素含有原料ガスは、TSA、(SiH3)3N、DSO、(SiH3)2;DSMA、(SiH3)2NMe、DSEA、(SiH3)2NEt、DSIPA、(SiH3)2N(iPr)、DSTBA、(SiH3)2N(tBu)、DEAS、SiH3NEt2;DTBAS、SiH3N(tBu)2;BDEAS、SiH2(NEt2)2;BDMAS、SiH2(Nme2)2;BTBAS、SiH2(NhtBu)2;BITS、SiH2(NHSiMe3)2;DIPAS、SiH3N(iPr)2;TEOS、Si(Oet)4;3DMAS、SiH(N(Me)2)3;BEMAS、SiH2[N(Et)(Me)]2;AHEAD、Si2(NHEt)6;TEAS、Si(NHEt)4のうち少なくとも一つ、またはそれらの混合物もしくは誘導体であってもよい。
【0070】
本開示の実施形態および表1に従って絶縁層を形成するためのケイ素含有原料ガスは、TSA、(SiH3)3N、DSO、(SiH3)2;DSMA、(SiH3)2Nme、DSEA、(SiH3)2NEt、DSIPA、(SiH3)2N(iPr)、DSTBA、(SiH3)2N(tBu)、DEAS、SiH3NEt2;DTBAS、SiH3N(tBu)2;BDEAS、SiH2(NEt2)2;BDMAS、SiH2(Nme2)2;BTBAS、SiH2(NhtBu)2;BITS、SiH2(NHSiMe3)2;DIPAS、SiH3N(iPr)2、TEOS、Si(Oet)4;SiCl4;HCD、Si2Cl6;3DMAS、SiH(N(Me)2)3;BEMAS、SiH2[N(Et)(Me)]2;AHEAD、Si2(NHEt)6;TEAS、Si(NHEt)4;Si3H8、DCS、SiH2Cl2;SiHI3;SiH2I2のうち少なくとも一つ、またはそれらの混合物もしくは誘導体であってもよい。
【0071】
本開示の実施形態および表1に従って絶縁層を形成するための酸素含有ガスは、O2、O3、CO2、H2O、NO2、N2O、またはそれらの混合物もしくは誘導体のうちの少なくとも一つであってもよい。
【0072】
本開示の実施形態および表1に従って保護層を形成するための窒素含有ガスは、N2、N2O、NO2、NH3、N2H2、N2H4、またはそれらの混合物もしくは誘導体のうちの少なくとも一つであってもよい。
【0073】
当然のことながら、本明細書に記述される実施形態は、限定の目的でではなく、記述的な意味でのみ考慮されるべきである。各実施形態内の特徴または態様の記述は、典型的に、他の実施形態における他の類似の特徴または態様のために使用可能なものとして考慮されるべきである。図面を参照しながら一つ以上の実施形態が記述されているが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が、その中でなされてもよいことを理解するであろう。
【外国語明細書】