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特開2023-179402解重合性共重合ポリマーの再利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179402
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】解重合性共重合ポリマーの再利用方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20231212BHJP
   C08F 212/04 20060101ALI20231212BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08F220/10
C08F212/04
C08F214/26
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128513
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2022092563の分割
【原出願日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】八木 稔
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB03P
4J100AC26P
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100FA21
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA57
(57)【要約】
【課題】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱や光によって重合体(ポリマー)が単量体(モノマー)に分解する解重合性を有し、再利用することが容易な共重合ポリマーを提供する。
【解決手段】 本発明の解重合性共重合ポリマーは、加熱や光などでモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマーを2種又は3種以上共重合したものである。解重合性ホモポリマーは、加熱や光などでモノマーに分解して、モノマー回収率90%以上と極めて高い回収率を有すものであり、ポリメタクリル酸メチル、ポリα-メチルスチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。これらのホモポリマーを構成するモノマーは、メタクリル酸メチル(MMA)、α-メチルスチレン(AMS)、テトラフルオロエチレン(TFE)である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱や光などでモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマーを2種又は3種以上共重合させた、解重合性共重合ポリマー。
【請求項2】
前記解重合性共重合ポリマーの解重合後のモノマーの回収率が90重量%以上である、請求項1に記載の解重合性共重合ポリマー。
【請求項3】
前記解重合性共重合ポリマーの加熱による残渣が、該解重合性共重合ポリマー全量に対して10重量%以下である、請求項1に記載の解重合性共重合ポリマー。
【請求項4】
前記解重合性のホモポリマーが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリα-メチルスチレン(PAMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれる2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の解重合性共重合ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱や光によって重合体(ポリマー)が単量体(モノマー)に分解する解重合性を有する共重合ポリマーに関し、特に熱により解重合した際に残渣が残りにくい解重合性を有する共重合ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック(ポリマー)は耐久性や耐熱性に優れる素材としての技術開発が進み様々な素材が市場で使用されている。一方、これらプラスチック材料は環境では分解されないことから環境への影響が指摘されているが、再利用が難しく廃棄することも多い。特に金属とプラスチックが複合化された製品が多くなってきているが、このような複合材料は、それぞれに分離することが難しく埋め立て処理しかないのが現状である。
【0003】
このため、生分解性ポリマーなどプラスチックを分解可能としたり、プラスチックを回収して再利用したりする様々な取り組みが進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生分解性ポリマーは、生分解途中の物質の環境における安全性や、分解途中の物質がマイクロプラスチックとなり、これらを環境生物・海洋生物が摂取した時の影響などが明確になっていない。さらに、生分解性ポリマーは、廃棄物削減に対しては一定の効果があるものの、再利用という課題に関しては、何ら解決するものではない。さらに、廃棄物削減に限ってみても、分解するまでの時間が数カ月以上かかる場合もある、という問題点がある。
【0005】
また、ペットボトルなどは、リサイクルして再利用されているが、再利用するためには特殊な化学薬品などを使用してモノマーにまで分解する必要があり、多大な手間とエネルギーを必要とする、という問題点がある。さらに再利用の用途も限定される、という問題点もある。
【0006】
そこで、熱や光などの簡単な方法でプラスチックを分解し、再利用できる素材や方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱や光によって重合体(ポリマー)が単量体(モノマー)に分解する解重合性を有し、再利用することが容易な共重合ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、加熱や光などでモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマーを2種又は3種以上共重合させた、解重合性共重合ポリマーを提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、解重合性の高いホモポリマーを構成するモノマー同士を2成分以上で共重合させることにより、リサイクルしやすく、加熱時の残渣も少なく、利便性の高い解重合性共重合ポリマーとすることができる。これは以下のような理由による。すなわち、これまで解重合性を有するホモポリマーについては知られているが、解重合性を有するホモポリマーを構成するモノマー同士を共重合したポリマーについてはその特性が明らかではなかった。そこで、本発明者らが、解重合性を有するホモポリマーを構成するモノマー同士の共重合ポリマーについて、熱分解特性を確認した結果、これらの共重合ポリマーも解重合性を有し、さらに熱分解による残渣がほとんど残らないポリマーであることを確認した。しかも、解重合性を有するホモポリマーを構成するモノマー同士を共重合することにより、元となる各解重合性ホモポリマーの特性(解重合開始温度、柔軟性、機械的強度など)を調整することができることも見出したのである。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記解重合性共重合ポリマーの解重合後のモノマーの回収率が90重量%以上であることが好ましい(発明2)。
【0011】
かかる発明(発明2)によれば、解重合性の高いホモポリマーの解重合後のモノマーの回収率は90%を超えることも多く、このようなホモポリマーのモノマー同士を2成分以上共重合させた共重合体においても、加熱などにより解重合させた際にそれぞれのモノマーを高い回収率で回収することが可能となる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記解重合性共重合ポリマーの加熱による残渣が、該解重合性共重合ポリマー全量に対して10重量%以下であることが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明3)によれば、解重合性の高いホモポリマーを解重合した際の残渣は10重量%以下となることも多く、このようなホモポリマーのモノマー同士を2成分以上共重合させた共重合体においても、加熱などにより解重合させた際の残渣を少なくすることができる。
【0014】
上記発明(発明1~3)においては、前記解重合性のホモポリマーが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリα-メチルスチレン(PAMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選ばれる2種以上であることが好ましい(発明4)。
【0015】
かかる発明(発明4)によれば、これらの解重合性のホモポリマーを構成するメタクリル酸メチル(MMA)、α-メチルスチレン(AMS)、テトラフルオロエチレン(TFE)などのモノマーを組み合わせて共重合体とすることにより、解重合性のホモポリマーの有する各種性状を相互に調整して、所望の性状の解重合性共重合ポリマーとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、解重合性の高いホモポリマーを構成するモノマー同士を2成分以上で共重合させた解重合性共重合ポリマーであり、加熱による簡単な方法でモノマーを高収率で回収できるので、リサイクルが容易となっている。また、加熱分解後の残渣が少ないため、金属などの異種材料とこのポリマーとを組み合わせて複合材料としても、加熱するだけでポリマーを分解してモノマーを回収できるため素材の分別回収が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の本発明の解重合性共重合ポリマーについて、詳細に説明する。
【0018】
(解重合性ホモポリマー及びモノマー)
本発明においては、原材料として加熱や光などでモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマーを用いる。
【0019】
この解重合性ホモポリマーは、所定の単量体(モノマー)を単独で重合させたものであり、加熱や光などでモノマーに分解して、モノマー回収率90%以上と極めて高い回収率を有するものが好ましい。このようなモノマー回収率の高い解重合性ホモポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリα-メチルスチレン(PAMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが知られている(例えば、大谷肇ら:「高分子の熱分解特性」 高分子, 46, 394 (1997)、大澤善次郎ら:「高分子の熱劣化」 Materials Life,8[4], 165 (1996)など)。これらのホモポリマーを構成するモノマー(単量体成分)は、メタクリル酸メチル(MMA)、α-メチルスチレン(AMS)、テトラフルオロエチレン(TFE)である。
【0020】
(解重合性共重合ポリマー)
本発明の解重合性共重合ポリマーは、上述したようなモノマー(単量体成分)を2種又は3種以上共重合したものである。
【0021】
この解重合性共重合ポリマーにおけるモノマーの配合割合は特に制限はないが、例えば、解重合性共重合ポリマーが2種のモノマーからなる場合、第一のモノマー20~80重量部、好ましくは40~60重量部と、第二のモノマー80~20重量部、好ましくは60~40重量部とを配合して共重合させればよい。また、3種のモノマーからなる場合、第一のモノマー20~80重量部と、第二のモノマー20~80重量部と、第三のホモポリマー20~80重量部とを配合して共重合させればよい。
【0022】
このように2種又は3種以上の解重合性のホモポリマーを構成するモノマーを共重合させることにより、元となる各解重合性のホモポリマーの特性を調整することができる。この特性としては、例えば、解重合開始温度、柔軟性、機械的強度などであり、モノマーの配合比に応じて適宜調整することが可能となる。
【0023】
この解重合性共重合ポリマーは、解重合により解重合性ホモポリマーを構成するモノマーの90重量%以上と極めて高い回収率を有し、リサイクル効率に優れたものが好ましい。さらに、解重合性共重合ポリマーの加熱による残渣が、解重合性共重合ポリマー全量に対して10重量%以下であり、取扱い性にも優れていることが好ましい。
【0024】
上述したような2種又は3種以上の解重合性のホモポリマーを構成するモノマーを共重合させた解重合性共重合ポリマーとしては、メタクリル酸メチル(MMA)と、α-メチルスチレン(AMS)とを共重合したものが好ましく、特にメタクリル酸メチル(MMA):α-メチルスチレン(AMS)が20:80~80:20(重量比)、好ましくは40:60~60:40(重量比)で構成される共重合ポリマーが好ましい。この解重合性共重合ポリマーは、その配合割合により200~300℃程度の範囲で解重合開始温度を変動させることができるので、ポリマーの回収が容易である。さらに、その配合割合により得られる解重合性共重合ポリマーの柔軟性や機械的強度を調整することもできる。
【0025】
上記解重合性共重合ポリマーには、必要に応じて、任意の適切な添加剤を配合してもよい。この添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0026】
(解重合性共重合ポリマーの製造方法)
上記解重合性共重合ポリマーの製造方法に特に制限はないが、例えば、ラジカル重合反応により共重合させればよい。具体的には、原材料となるモノマーをラジカル重合開始剤、架橋剤などを混合した溶媒とともに不活性ガス雰囲気下に密封し、長時間攪拌を継続して共重合させ、貧溶媒に析出させて回収することにより製造することができる。
【0027】
以上、本発明の解重合性共重合ポリマーについて説明してきたが、本発明は、2種以上の解重合性のホモポリマーを構成するモノマーを共重合させたものであり、高い解重合性を有していればよく、種々の解重合性のホモポリマーを原材料として用いることができる。上述したような解重合性共重合ポリマーは、従来はリサイクルが困難であった金属などの異種材料との成形体としても加熱により容易にモノマーを回収することができるので、リサイクル性に優れており、その産業上の利用性は極めて大きい。
【実施例0028】
以下の具体的な実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
(解重合性共重合ポリマーの合成)
5Lの4つ口フラスコにイオン交換水2152.97g、炭酸ナトリウム2.20g、KSソープ(固形分90%)を投入し、攪拌しながら溶解させた。溶解後、α-メチルスチレン(AMS)795.08g、メタクリル酸メチル(MMA)274.12gを加えて150rpmで攪拌しながら系内をアルゴンガスで置換した。
【0030】
フラスコ内の温度が3~4℃になったことを確認したら、亜ニチオン酸ナトリウム0.6437g、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム三水和物0.1107g、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物0.2751g、ナトリウムホルムアルデヒドスホキシレート0.4179g、及びクメンハイドロパーオキサイド(80%)2.1615gを順次添加して、3~4℃にフラスコ内の温度を保持しながら63時間攪拌を行った。
【0031】
63時間の攪拌後、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール5.50gを添加し、反応を停止させた。
【0032】
上記反応液を15Lのメタノールに滴下し、析出した白色固体をろ過により回収した。得られた白色固体を簡易乾燥後、テトラヒドロフラン(THF)に溶解した(溶液総重量1500g)。この溶液を17Lのメタノールに滴下し、析出した固体をろ過により回収した。得られた白色固体を50℃で48時間減圧乾燥し最終物を得た(収量:259.16g)。
【0033】
得られた共重合ポリマーのモノマー比をNMRにより分析したところ、AMS:MMA=58:42(モル比)であった。また、この共重合ポリマーに分子量をGPC分析したところ、数平均分子量(Mn):116427、重量平均分子量(Mw):262908、分子量分布(Mw/Mn):2.3であった。さらに、得られた共重合ポリマーを画像観察可能な熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)で分析(N環境、昇温速度10℃/分)したところ、分解開始温度は約200℃、分解終了温度は約350℃であった。一般的なポリマーは継続的な加熱により、ポリマー分子の末端から徐々に分解していくために変色が起こり最終的には黒色の残渣が残るが、実施例1の共重合ポリマーはそのような分解に伴う変色がなく、モノマーに完全に分解していく様子が確認され、解重合性が高いことが確認された。
【0034】
[比較例1]
(ポリカーボネートのTG-DTA分析
解重合性が低いポリマーの一例として、ポリカーボネートのTG-DTA分析(N環境、昇温速度10℃/分)を行った結果、分解開始温度は約400℃であり徐々に黒色に変化し、分解終了温度は約550℃で、分解は約70%まで進むが約30%は分解されずに残渣として残ることが観察された。
【0035】
[実施例2]
実施例1で得られたAMSとMMAの共重合ポリマーに対し、以下の条件で熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(PY-GC/MS)を行った。その結果、加熱により気化する成分として、AMSとMMAが主成分として検出された。以下、PY-GC/MS分析の条件を下記表1~3に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
[実施例3]
実施例1で得られたAMSとMMAの共重合ポリマーを、N環境下、昇温速度10℃/分で400℃まで温度上昇させ、気化した成分を室温に冷却して液体成分が得た。この液体成分を実施例1と同様にしてポリマー合成した結果、実施例1と同様のAMSとMMAの共重合ポリマーが得られ、反復利用が可能であることが確認できた。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によりモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマー2種を共重合させた解重合性共重合ポリマーの再利用方法であって、
前記2種のモノマーが、メタクリル酸メチル(MMA)及びα-メチルスチレン(AMS)で、前記メタクリル酸メチル(MMA)及び前記α-メチルスチレン(AMS)の重量比が20:80~80:20であり、前記解重合性のホモポリマーが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びポリα-メチルスチレン(PAMS)であり、
前記解重合性共重合ポリマーを200~300℃の解重合開始温度に加熱して解重合し、
この解重合により得られる液体成分から前記解重合性共重合ポリマーを再度合成する、解重合性共重合ポリマーの再利用方法。
【請求項2】
前記解重合性共重合ポリマーの加熱による解重合における温度の上限が約350℃であり、この解重合性共重合ポリマーの加熱による残渣が、該解重合性共重合ポリマー全量に対して10重量%以下である、請求項1に記載の解重合性共重合ポリマーの再利用方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱によって重合体(ポリマー)が単量体(モノマー)に分解する解重合性を有する共重合ポリマーの再利用方法に関し、特に熱により解重合した際に残渣が残りにくい解重合性を有する共重合ポリマーの再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック(ポリマー)は耐久性や耐熱性に優れる素材としての技術開発が進み様々な素材が市場で使用されている。一方、これらプラスチック材料は環境では分解されないことから環境への影響が指摘されているが、再利用が難しく廃棄することも多い。特に金属とプラスチックが複合化された製品が多くなってきているが、このような複合材料は、それぞれに分離することが難しく埋め立て処理しかないのが現状である。
【0003】
このため、生分解性ポリマーなどプラスチックを分解可能としたり、プラスチックを回収して再利用したりする様々な取り組みが進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生分解性ポリマーは、生分解途中の物質の環境における安全性や、分解途中の物質がマイクロプラスチックとなり、これらを環境生物・海洋生物が摂取した時の影響などが明確になっていない。さらに、生分解性ポリマーは、廃棄物削減に対しては一定の効果があるものの、再利用という課題に関しては、何ら解決するものではない。さらに、廃棄物削減に限ってみても、分解するまでの時間が数カ月以上かかる場合もある、という問題点がある。
【0005】
また、ペットボトルなどは、リサイクルして再利用されているが、再利用するためには特殊な化学薬品などを使用してモノマーにまで分解する必要があり、多大な手間とエネルギーを必要とする、という問題点がある。さらに再利用の用途も限定される、という問題点もある。
【0006】
そこで、熱により簡単な方法でプラスチックを分解し、再利用できる素材や方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱によって重合体(ポリマー)が単量体(モノマー)に分解する解重合性を有し、再利用することが容易な解重合性共重合ポリマーの再利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、加熱によりモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマー2種を共重合させた解重合性共重合ポリマーの再利用方法であって、前記2種のモノマーが、メタクリル酸メチル(MMA)及びα-メチルスチレン(AMS)で、前記メタクリル酸メチル(MMA)及び前記α-メチルスチレン(AMS)の重量比が20:80~80:20であり、前記解重合性のホモポリマーが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びポリα-メチルスチレン(PAMS)であり、前記解重合性共重合ポリマーを200~300℃の解重合開始温度に加熱して解重合し、この解重合により得られる液体成分から前記解重合性共重合ポリマーを再度合成する、解重合性共重合ポリマーの再利用方法を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記解重合性共重合ポリマーの加熱による解重合における温度の上限が約350℃であり、この解重合性共重合ポリマーの加熱による残渣が、該解重合性共重合ポリマー全量に対して10重量%以下であることが好ましい(発明2)。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、解重合性の高いホモポリマーを構成するモノマー同士を2成分以上で共重合させた解重合性共重合ポリマーであり、加熱による簡単な方法でモノマーを高収率で回収できるので、リサイクルが容易となっている。また、加熱分解後の残渣が少ないため、金属などの異種材料とこのポリマーとを組み合わせて複合材料としても、加熱するだけでポリマーを分解してモノマーを回収できるため素材の分別回収が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の本発明の解重合性共重合ポリマーの再利用方法について、詳細に説明する。
【0012】
(解重合性ホモポリマー及びモノマー)
本発明においては、原材料として加熱によりモノマーに分解する解重合性ホモポリマーを構成するモノマーを用いる。
【0013】
この解重合性ホモポリマーは、所定の単量体(モノマー)を単独で重合させたものであり、加熱によりモノマーに分解して、モノマー回収率90%以上と極めて高い回収率を有するものが好ましい。このようなモノマー回収率の高い解重合性ホモポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリα-メチルスチレン(PAMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが知られている(例えば、大谷肇ら:「高分子の熱分解特性」 高分子, 46, 394 (1997)、大澤善次郎ら:「高分子の熱劣化」 Materials Life,8[4], 165 (1996)など)。これらのホモポリマーを構成するモノマー(単量体成分)は、メタクリル酸メチル(MMA)、α-メチルスチレン(AMS)、テトラフルオロエチレン(TFE)である。
【0014】
(解重合性共重合ポリマー)
本発明の解重合性共重合ポリマーは、上述したようなモノマー(単量体成分)を2種又は3種以上共重合したものである。
【0015】
この解重合性共重合ポリマーにおけるモノマーの配合割合は特に制限はないが、例えば、解重合性共重合ポリマーが2種のモノマーからなる場合、第一のモノマー20~80重量部、好ましくは40~60重量部と、第二のモノマー80~20重量部、好ましくは60~40重量部とを配合して共重合させればよい
【0016】
このように2種の解重合性のホモポリマーを構成するモノマーを共重合させることにより、元となる各解重合性のホモポリマーの特性を調整することができる。この特性としては、例えば、解重合開始温度、柔軟性、機械的強度などであり、モノマーの配合比に応じて適宜調整することが可能となる。
【0017】
この解重合性共重合ポリマーは、解重合により解重合性ホモポリマーを構成するモノマーの90重量%以上と極めて高い回収率を有し、リサイクル効率に優れたものが好ましい。さらに、解重合性共重合ポリマーの加熱による残渣が、解重合性共重合ポリマー全量に対して10重量%以下であり、取扱い性にも優れていることが好ましい。
【0018】
上述したような2種の解重合性のホモポリマーを構成するモノマーを共重合させた解重合性共重合ポリマーとしては、メタクリル酸メチル(MMA)と、α-メチルスチレン(AMS)とを共重合したものであり、好ましくはメタクリル酸メチル(MMA):α-メチルスチレン(AMS)が20:80~80:20(重量比)、特に40:60~60:40(重量比)で構成される共重合ポリマーである。この解重合性共重合ポリマーは、その配合割合により200~300℃程度の範囲で解重合開始温度を変動させることができるので、ポリマーの回収が容易である。さらに、その配合割合により得られる解重合性共重合ポリマーの柔軟性や機械的強度を調整することもできる。
【0019】
上記解重合性共重合ポリマーには、必要に応じて、任意の適切な添加剤を配合してもよい。この添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0020】
(解重合性共重合ポリマーの製造方法)
上記解重合性共重合ポリマーの製造方法に特に制限はないが、例えば、ラジカル重合反応により共重合させればよい。具体的には、原材料となるモノマーをラジカル重合開始剤、架橋剤などを混合した溶媒とともに不活性ガス雰囲気下に密封し、長時間攪拌を継続して共重合させ、貧溶媒に析出させて回収することにより製造することができる。
【0021】
以上、本発明の解重合性共重合ポリマーの再利用方法について説明してきたが、本発明は、特定の種の解重合性のホモポリマーを構成するモノマーを共重合させたものである。上述したような解重合性共重合ポリマーは、従来はリサイクルが困難であった金属などの異種材料との成形体としても加熱により容易にモノマーを回収することができるので、リサイクル性に優れており、その産業上の利用性は極めて大きい。
【実施例0022】
以下の具体的な実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
(解重合性共重合ポリマーの合成)
5Lの4つ口フラスコにイオン交換水2152.97g、炭酸ナトリウム2.20g、KSソープ(固形分90%)を投入し、攪拌しながら溶解させた。溶解後、α-メチルスチレン(AMS)795.08g、メタクリル酸メチル(MMA)274.12gを加えて150rpmで攪拌しながら系内をアルゴンガスで置換した。
【0024】
フラスコ内の温度が3~4℃になったことを確認したら、亜ニチオン酸ナトリウム0.6437g、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム三水和物0.1107g、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物0.2751g、ナトリウムホルムアルデヒドスホキシレート0.4179g、及びクメンハイドロパーオキサイド(80%)2.1615gを順次添加して、3~4℃にフラスコ内の温度を保持しながら63時間攪拌を行った。
【0025】
63時間の攪拌後、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール5.50gを添加し、反応を停止させた。
【0026】
上記反応液を15Lのメタノールに滴下し、析出した白色固体をろ過により回収した。得られた白色固体を簡易乾燥後、テトラヒドロフラン(THF)に溶解した(溶液総重量1500g)。この溶液を17Lのメタノールに滴下し、析出した固体をろ過により回収した。得られた白色固体を50℃で48時間減圧乾燥し最終物を得た(収量:259.16g)。
【0027】
得られた共重合ポリマーのモノマー比をNMRにより分析したところ、AMS:MMA=58:42(モル比)であった。また、この共重合ポリマーに分子量をGPC分析したところ、数平均分子量(Mn):116427、重量平均分子量(Mw):262908、分子量分布(Mw/Mn):2.3であった。さらに、得られた共重合ポリマーを画像観察可能な熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)で分析(N環境、昇温速度10℃/分)したところ、分解開始温度は約200℃、分解終了温度は約350℃であった。一般的なポリマーは継続的な加熱により、ポリマー分子の末端から徐々に分解していくために変色が起こり最終的には黒色の残渣が残るが、実施例1の共重合ポリマーはそのような分解に伴う変色がなく、モノマーに完全に分解していく様子が確認され、解重合性が高いことが確認された。
【0028】
[比較例1]
(ポリカーボネートのTG-DTA分析
解重合性が低いポリマーの一例として、ポリカーボネートのTG-DTA分析(N環境、昇温速度10℃/分)を行った結果、分解開始温度は約400℃であり徐々に黒色に変化し、分解終了温度は約550℃で、分解は約70%まで進むが約30%は分解されずに残渣として残ることが観察された。
【0029】
[実施例2]
実施例1で得られたAMSとMMAの共重合ポリマーに対し、以下の条件で熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(PY-GC/MS)を行った。その結果、加熱により気化する成分として、AMSとMMAが主成分として検出された。以下、PY-GC/MS分析の条件を下記表1~3に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
[実施例3]
実施例1で得られたAMSとMMAの共重合ポリマーを、N環境下、昇温速度10℃/分で400℃まで温度上昇させ、気化した成分を室温に冷却して液体成分が得た。この液体成分を実施例1と同様にしてポリマー合成した結果、実施例1と同様のAMSとMMAの共重合ポリマーが得られ、反復利用が可能であることが確認できた。