(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179457
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】抗原性エプスタインバーウイルスポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/38 20060101AFI20231212BHJP
C07K 14/05 20060101ALI20231212BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20231212BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20231212BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20231212BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231212BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20231212BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231212BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C12N15/38
C07K14/05 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/31
A61K39/245
A61P31/22
A61P37/04
A61K47/65
A61K39/39
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145164
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2020554517の分割
【原出願日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】62/652,201
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ジェイ・ナーベル
(72)【発明者】
【氏名】チィ-ジェン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・ニュエン
(72)【発明者】
【氏名】カート・スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】テ-フイ・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・コースター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】免疫原性が増大したエプスタインバーウイルス(EBV)ポリペプチドを提供する。
【解決手段】エプスタインバーウイルス(EBV)gLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドであって、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーが該EBV gLポリペプチドと該EBV gHポリペプチドとを隔てている、前記抗原性EBVポリペプチドである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプスタインバーウイルス(EBV) gLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドであって、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーが該EBV gLポリペプチドと該EBV gHポリペプチドとを隔てている、前記抗原性EBVポリペプチド。
【請求項2】
エプスタインバーウイルス(EBV) gLポリペプチド、EBV gHポリペプチド、およびEBV gp42ポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドであって、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーが該EBV gLポリペプチドと該EBV gHポリペプチドとを隔てている、前記抗原性EBVポリペプチド。
【請求項3】
フェリチンをさらに含む、請求項1または2に記載の抗原性EBVポリペプチド。
【請求項4】
EBVポリペプチドおよびフェリチンタンパク質を含む抗原性EBVポリペプチドであって、フェリチンタンパク質が表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含む、前記抗原性EBVポリペプチド。
【請求項5】
EBVポリペプチドがEBV gLポリペプチド、EBV gHポリペプチド、またはEBV gp220ポリペプチドを含む、請求項4に記載の抗原性EBVポリペプチド。
【請求項6】
EBVポリペプチドがgLポリペプチドを含み、該ポリペプチドがEBV gHポリペプチドをさらに含む、請求項5に記載の抗原性EBVポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドがEBV gp42ポリペプチドをさらに含む、請求項1または3~6のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチド。
【請求項8】
第1の抗原性EBVポリペプチドおよび第2の抗原性EBVポリペプチドを含む組成物であって、該第1の抗原性EBVポリペプチドがフェリチン重鎖および第1のEBVポリペプチドを含み、該第2の抗原性EBVポリペプチドがフェリチン軽鎖および第2のEBVポリペプチドを含み、該第1および第2のEBVポリペプチドが異なる、前記組成物。
【請求項9】
第1のEBVポリペプチドまたは第2のEBVポリペプチドがgp220ポリペプチドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i)第1の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびgHポリペプチドの一方または両方を含み、第2の抗原性EBVポリペプチドがgp220ポリペプチドを含むか、または(ii)第1の抗原性EBVポリペプチドがgp220ポリペプチドを含み、第2の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびgHポリペプチドの一方または両方を含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
第1の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびgHポリペプチドを含むか、または第2の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
gLポリペプチドおよび/またはgHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドがgp42ポリペプチドをさらに含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
gHおよびgLポリペプチドを含み、該gHポリペプチドが、場合によりgp42ポリペプチドを含む該gLポリペプチドに対してC末端側であり、gp42ポリペプチドが該
gHポリペプチドに対してC末端側である、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項14】
gp42ポリペプチドを含み、該gp42ポリペプチドが配列番号239または240と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項15】
EBV gHポリペプチドおよびEBV gp42ポリペプチドを含み、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーが該EBV gHポリペプチドと該EBV g42ポリペプチドとを隔てており、場合により該リンカーが15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、または40~50アミノ酸の長さを有し、さらに場合により該リンカーが配列番号234と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項16】
リンカーを含み、該リンカーが少なくとも15アミノ酸の長さを有し、場合により該リンカーが第1のEBVポリペプチドと第2のEBVポリペプチドとを隔てている、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項17】
リンカーが15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、または40~50アミノ酸の長さを有する、請求項16に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項18】
EBVポリペプチドが配列番号36と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項19】
EBVポリペプチドが配列番号37と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項20】
ポリペプチドが配列番号30と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むリンカーを含み、場合により該リンカーが第1のEBVポリペプチドと第2のEBVポリペプチドとを隔てている、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項21】
EBVポリペプチドが配列番号38と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項22】
EBVポリペプチドとフェリチンとを隔てるさらなるリンカーをさらに含む、請求項3~21のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項23】
フェリチンに対してN末端側、gHポリペプチドに対してC末端側に位置するEBV gp42ポリペプチドを含み、リンカーがEBV gp42ポリペプチドとフェリチンとを隔てており、場合により該リンカーが少なくとも15アミノ酸の長さを有するか、または15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸
、30~50アミノ酸、もしくは40~50アミノ酸の長さを有し、さらに場合により該リンカーが配列番号233、234、235、236、237、または238のうちいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3~22のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項24】
リンカーがシステインを含む、請求項22または23に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項25】
リンカーが配列番号33と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項26】
システインが免疫刺激性部分にコンジュゲートされており、場合により該免疫刺激性部分がTLR2、TLR7/8、TLR9、またはSTINGのアゴニストである、請求項24または25に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項27】
フェリチンがH.ピロリフェリチンのE12C、S26C、S72C、A75C、K79C、S100C、およびS111C変異の1つもしくはそれ以上、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける1つもしくはそれ以上の対応する変異を含む、請求項3~26のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項28】
フェリチンが表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含み、場合により該アスパラギンがH.ピロリフェリチンの19位、またはペアワイズまたは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの類似の位置にある、請求項3~27のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項29】
フェリチンが内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含み、場合により、該内部システインがH.ピロリフェリチンの31位、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置にある、請求項3~28のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項30】
フェリチンが配列番号201~207または211~215のうちいずれか1つと80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3~29のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項31】
抗原性EBVポリペプチドが配列番号226のアミノ酸23~1078と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物
【請求項32】
抗原性EBVポリペプチドが配列番号226~231または241~242のうちいずれかと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、場合によりリーダー配列を欠除する、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物。
【請求項33】
請求項3~32のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは第1および第2のポリペプチドを含むフェリチン粒子。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたはフェリチン粒子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項35】
フェリチン粒子がEBV gLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含み、組成物がgp220ポリペプチドを含む第2のフェリチン粒子を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
インフルエンザに対する免疫応答を誘発する方法における、またはEBVによる感染からの対象の保護における使用のための、請求項1~35のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか1項に記載の任意の1つまたはそれ以上の抗原性EBVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物を対象に投与する工程を含む、EBVに対する免疫応答を誘発し、またはEBVによる感染から対象を保護する方法。
【請求項38】
対象がヒトである、請求項36または37に記載の抗原性EBVポリペプチド、フェリチン粒子、組成物、または方法。
【請求項39】
請求項1~32のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドをコードする核酸であって、場合によりmRNAである核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、2018年4月3日に提出された米国仮特許出願第62/652,201号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本出願は、配列表を含有し、それらはASCIIフォーマットで電子提出されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。前記ASCIIコピーは、2019年3月27日に作成され、名称は2019-03-27_01121-0032-00PCT_SL_ST25.txtであり、サイズは377,803バイトである。
【背景技術】
【0003】
ワクチン学の分野での多くの成功にも関わらず、生命を脅かす多くの感染疾患からヒトを保護するために、新規打開策が必要である。現在認可されている多くのワクチンは、何十年も前の技術に依存して生弱毒化または不活化死菌ワクチンを産生しているが、これらは固有の安全性の懸念を有し、多くの場合、ごく短命な弱い免疫応答を刺激するに過ぎず、複数回用量の投与を必要とする。遺伝子工学および生化学工学の進歩により、難題である疾患標的に対する治療薬を開発することが可能となっているが、ワクチン学の分野へのこれらの応用は、まだ十分に実現されていない。組換えタンパク質技術により、現在では最適な抗原の設計が可能となっている。加えて、ナノ粒子は、最適な抗原提示および標的化薬物送達に関する潜在性をますます証明している。多数の抗原が結合したナノ粒子は、その分子積み荷を多価で呈示することによって得られる結合アビディティの増加およびその微視的なサイズによってより効率的に生物学的障壁を通過する能力を有していることが示されている。インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)タンパク質に融合したヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori(H.pylori))フェリチンナノ粒子は、マウスインフルエンザモデルにおいて抗原の安定性の改善および免疫原性の増大を可能にした(非特許文献1を参照されたい)。この融合タンパク質は、8面体の対称性ナノ粒子へと自己集合して8個の3量体HAスパイク構造を提示し、アジュバントと共に使用する場合、様々な前臨床モデルにおいて強力な免疫応答を与える。
【0004】
エプスタインバーウイルス(EBV)は世界の成年人口の約95%に感染し、2つのB細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫およびホジキンリンパ腫に関連していることが知られている。このウイルスは上皮細胞にも感染することがあり、鼻咽頭がんに関連している。さらに、EBVは先進国において伝染性単核球症の大部分の症例を惹起し、主として小児および若年成人を侵している。伝染性単核球症は1か月にも及ぶ長い回復期間をもたらすことがある。現在のところ市場には承認済みのワクチンはなく、したがって予防用ワクチンへの強いニーズがある。
【0005】
本明細書では、EBVポリペプチドが関与する1組の新たなポリペプチド、ナノ粒子、組成物、方法、および使用を提示する。新規なEBV一本鎖gLおよびgH(gL/gHまたはgH/gLと表記することもある)ポリペプチドを、これらの新規なEBVポリペプチドおよびフェリチンを含む抗原性ポリペプチドと同様に産生した。一本鎖gLおよびgHポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドおよびナノ粒子は、gLおよびgHの配列の間に比較的長いリンカーを含むことができ、これは免疫原性の増大を提供することが観察された。EBV gp220ポリペプチドを含む抗原性フェリチンポリペプチドおよびナノ粒子も産生した。さらに、アジュバントのような免疫刺激性部分が抗原性ポリペプチドに直接化学的に結合した、記載したEBVポリペプチドおよびフェリチンを含む自己アジュバント性抗原性ポリペプチドを開発した。免疫刺激性部分を、抗原ポリペプチドと直接コンジュゲートすると、免疫刺激性部分とEBVポリペプチドとを単一の高分子実体とし
て標的化同時送達することが可能となり、これによって抗原およびアジュバントのような免疫刺激性部分を個別の分子として含む従来のワクチンに関して懸念される全身毒性の可能性を大きく減少させることができる。免疫刺激性部分をEBVポリペプチドと共に高分子実体として同時送達すること、およびそれが多価で提示されることもまた、保護を誘発するのに必要な全体的な用量を低減させ、製造負荷およびコストを低減させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kanekiyoら、Nature 499:102~106頁(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、上記の利点の1つまたはそれ以上を提供することができる、または有用な選択を公共に少なくとも提供する組成物、キット、方法、および使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態1は、エプスタインバーウイルス(EBV) gLポリペプチドおよびEBV
gHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドであって、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーがEBV gLポリペプチドとEBV gHポリペプチドとを隔てている、抗原性EBVポリペプチドである。
【0009】
実施形態2は、エプスタインバーウイルス(EBV) gLポリペプチド、EBV gHポリペプチド、およびEBV gp42ポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドであって、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーがEBV gLポリペプチドとEBV gHポリペプチドとを隔てている、抗原性EBVポリペプチドである。
【0010】
実施形態3は、フェリチンをさらに含む、実施形態1または2に記載の抗原性EBVポリペプチドである。
【0011】
実施形態4は、EBVポリペプチドおよびフェリチンタンパク質を含む抗原性EBVポリペプチドであって、フェリチンタンパク質が表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含む、抗原性EBVポリペプチドである。
【0012】
実施形態5は、EBVポリペプチドがEBV gLポリペプチド、EBV gHポリペプチド、またはEBV gp220ポリペプチドを含む、実施形態4に記載の抗原性EBVポリペプチドである。
【0013】
実施形態6は、EBVポリペプチドがgLポリペプチドを含み、ポリペプチドがEBV
gHポリペプチドをさらに含む、実施形態5に記載の抗原性EBVポリペプチドである。
【0014】
実施形態7は、ポリペプチドがEBV gp42ポリペプチドをさらに含む、実施形態1または3~6のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドである。
【0015】
実施形態8は、第1の抗原性EBVポリペプチドおよび第2の抗原性EBVポリペプチドを含む組成物であって、第1の抗原性EBVポリペプチドがフェリチン重鎖および第1のEBVポリペプチドを含み、第2の抗原性EBVポリペプチドがフェリチン軽鎖および
第2のEBVポリペプチドを含み、第1および第2のEBVポリペプチドが異なる、組成物である。
【0016】
実施形態9は、第1のEBVポリペプチドまたは第2のEBVポリペプチドがgp220ポリペプチドを含む、実施形態8に記載の組成物である。
【0017】
実施形態10は、(i)第1の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびgHポリペプチドの一方または両方を含み、第2の抗原性EBVポリペプチドがgp220ポリペプチドを含むか、または(ii)第1の抗原性EBVポリペプチドがgp220ポリペプチドを含み、第2の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびgHポリペプチドの一方または両方を含む、実施形態8または9に記載の組成物である。
【0018】
実施形態11は、第1の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびgHポリペプチドを含むか、または第2の抗原性EBVポリペプチドがgLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含む、実施形態8~10のいずれか1項に記載の組成物である。
【0019】
実施形態12は、gLポリペプチドおよび/またはgHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドがgp42ポリペプチドをさらに含む、実施形態10または11に記載の組成物である。
【0020】
実施形態13は、gHおよびgLポリペプチドを含み、gHポリペプチドが場合によりgp42ポリペプチドを含むgLポリペプチドに対してC末端側であり、gp42ポリペプチドがgHポリペプチドに対してC末端側である、実施形態1~12のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0021】
実施形態14は、gp42ポリペプチドを含み、gp42ポリペプチドが配列番号239または240と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~13のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0022】
実施形態15は、EBV gHポリペプチドおよびEBV gp42ポリペプチドを含み、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーがEBV gHポリペプチドとEBV gp42ポリペプチドとを隔てており、場合によりリンカーが15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、または40~50アミノ酸の長さを有し、さらに場合によりリンカーが配列番号234と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~14のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0023】
実施形態16は、リンカーを含み、リンカーが少なくとも15アミノ酸の長さを有し、場合によりリンカーが第1のEBVポリペプチドと第2のEBVポリペプチドとを隔てている、実施形態1~15のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0024】
実施形態17は、リンカーが15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、または40~50アミノ酸の長さを有する、実施形態16に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0025】
実施形態18は、EBVポリペプチドが配列番号36と少なくとも80%、85%、9
0%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0026】
実施形態19は、EBVポリペプチドが配列番号37と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~18のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0027】
実施形態20は、ポリペプチドが配列番号30と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むリンカーを含み、場合によりリンカーが第1のEBVポリペプチドと第2のEBVポリペプチドとを隔てている、実施形態1~19のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0028】
実施形態21は、EBVポリペプチドが配列番号38と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~20のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0029】
実施形態22は、EBVポリペプチドとフェリチンとを隔てるさらなるリンカーをさらに含む、実施形態3~21のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0030】
実施形態23は、フェリチンに対してN末端側、gHポリペプチドに対してC末端側に位置するEBV gp42ポリペプチドを含み、リンカーがEBV gp42ポリペプチドとフェリチンとを隔てており、場合によりリンカーが少なくとも15アミノ酸の長さを有するか、または15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、もしくは40~50アミノ酸の長さを有し、さらに場合によりリンカーが配列番号233、234、235、236、237、または238のうちいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態3~22のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0031】
実施形態24は、実施形態22または23に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物であって、リンカーがシステインを含む、抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0032】
実施形態25は、リンカーが配列番号33と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態22~24のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0033】
実施形態26は、実施形態24または25に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物であって、システインが免疫刺激性部分にコンジュゲートされており、場合により免疫刺激性部分がTLR2、TLR7/8、TLR9、またはSTINGのアゴニストである、抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0034】
実施形態27は、フェリチンがH.ピロリフェリチンのE12C、S26C、S72C、A75C、K79C、S100C、およびS111C変異の1つもしくはそれ以上、ま
たはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける1つもしくはそれ以上の対応する変異を含む、実施形態3~26のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成である。
【0035】
実施形態28は、フェリチンが表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含み、場合によりアスパラギンがH.ピロリフェリチンの19位、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの類似の位置にある、実施形態3~27のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0036】
実施形態29は、フェリチンが内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含み、場合により、内部システインがH.ピロリフェリチンの31位、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置にある、実施形態3~28のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0037】
実施形態30は、フェリチンが配列番号201~207または211~215のうちいずれか1つと80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態3~29のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0038】
実施形態31は、抗原性EBVポリペプチドが配列番号226のアミノ酸23~1078と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~30のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0039】
実施形態32は、抗原性EBVポリペプチドが配列番号226~231または241~242のうちいずれかと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、場合によりリーダー配列を欠如する、実施形態1~31のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは組成物である。
【0040】
実施形態33は、実施形態3~32のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたは第1および第2のポリペプチドを含むフェリチン粒子である。
【0041】
実施形態34は、実施形態1~33のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチドまたはフェリチン粒子および薬学的に許容される担体を含む組成物である。
【0042】
実施形態35は、実施形態34に記載の組成物であって、フェリチン粒子がEBV gLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含み、組成物がgp220ポリペプチドを含む第2のフェリチン粒子をさらに含む、組成物である。
【0043】
実施形態36は、インフルエンザに対する免疫応答を誘発する方法における、またはEBVによる感染からの対象の保護における使用のための実施形態1~35のいずれか1項に記載の抗原性EBVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物である。
【0044】
実施形態37は、EBVに対する免疫応答を誘発する、またはEBV感染に対して対象を保護する方法であって、実施形態1~36いずれか1つに記載の1つまたはそれ以上の抗原性EBVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物を対象に投与する工程を含む方法である。
【0045】
実施形態38は、対象がヒトである、実施形態36または37に記載の抗原性EBVポリペプチド、フェリチン粒子、組成物、または方法である。
【0046】
実施形態39は、場合により核酸がmRNAである、実施形態1~32のいずれか1つに記載の抗原性EBVポリペプチドをコードする核酸である。
【0047】
追加の目的および利点は、以下の説明に記載され、および/または説明から明白であり、または実践により学ぶことができるであろう。目的および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組合せによって実現および達成される。
【0048】
前述の一般的説明および以下の詳細な説明は、単なる例示および説明であり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0049】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する以下の図面は、特定の実施形態を例証し、説明と共に本明細書に記載する原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1-1】
図1A-1Bは、クーマシーおよびウエスタンブロット分析によるHis-タグの除去の有無に関わらず、一本鎖gLおよびgH単量体(
図1A)(配列番号6)および三量体(
図1B)(配列番号11)を示す図である。
図1Bはまた、サイズ排除カラム(Superose(登録商標)6)精製からの画分のUV吸光度トレースを示す。
【
図2-1】
図2A-2Eは、一本鎖gL/gH-フェリチンナノ粒子(配列番号14)の精製および特徴付けを示す図である。Superose(登録商標)6精製画分のUV吸光度トレース(
図2A)、ならびに精製から選択された画分のクーマシー(
図2B)およびウエスタンブロット(
図2C)分析(Lは、分子量ラダーを示し、150および250kDaのバンドの位置は、
図2Bの右に示される)。また、一本鎖ナノ粒子の動的光散乱(
図2D)および電子顕微鏡(
図2E)分析を提示する。
【
図3】異なる代表的な一本鎖gL/gH-フェリチン構築物を示す図である。
【
図4】スクアレンエマルジョンベースのアジュバントである、AF03アジュバントと混合した一本鎖gL/gH三量体またはナノ粒子(NP)でマウスを免疫した後の抗体力価を示す図である。
*NP構築物をその対応する三量体構築物と比較した場合のp値=<0.05。左から右に、構築物は、配列番号16、10、11、13、12、および14であった。
【
図5】
図5A-5Bは、一本鎖gL/gHナノ粒子および陰性対照の裸のフェリチン(すなわち、いずれの非フェリチンポリペプチドまたは免疫刺激性部分にも結合していないフェリチン)と比較した、gp220ナノ粒子(配列番号1)と一本鎖gL/gHナノ粒子(「gL_gH_C5 NP」、配列番号19)の両方を含む二価組成物に対するマウスの抗gL/gH抗体応答を示す図である。結果は、二価組成物を使用しても、陰性対照の裸のフェリチンによる一本鎖gL/gHの結果と比較して、抗gL/gH抗体応答との干渉をもたらさないことを示す。両組成物は、AF03アジュバントを含んだ。個々の希釈液(
図5A)および結合力価(
図5B)におけるELISAの結果を示す。
【
図6】
図6A-6Bは、
図5A~
図5Bについて記載されるように、gp220ナノ粒子と一本鎖gL/gHナノ粒子の両方を含む二価組成物に対する抗gp220抗体応答を示す図である。結果は、二価組成物を使用しても、陰性対照の裸のフェリチンを用いたgp220ナノ粒子の結果と比較して、抗gp220抗体応答との干渉をもたらさないことを示す。両組成物は、AF03アジュバントを含んだ。個々の希釈液(
図6A)および結合力価(
図6B)におけるELISAの結果を示す。
【
図7】
図7Aは、Toll様受容体(TLR)アゴニストなどの免疫刺激性部分へコンジュゲーションのために、表面露出アミノ酸をシステインで置き換える変異を含む、EBVポリペプチドおよびフェリチンを含むナノ粒子の設計を示す図である。この設計に対応する例示的な配列については、配列番号14を参照されたい。ここで、一本鎖gL/gH抗原は、可撓性46アミノ酸リンカーによってフェリチンに結合される。
図7Bは、
図7Aによる構築物へのコンジュゲーションに適した代表的なトール様受容体アゴニスト(PEG4-マレイミドリンカーを有するSM7/8a)を示す。
図7Cは、フェリチン表面上のシステインおよびPEG4-マレイミドリンカーを介してコンジュゲートされたSM7/8aを有するgL/gHナノ粒子の電子顕微鏡写真(EM)画像を示す。
【
図8A】
図8Aは、表面露出アミノ酸をシステインで置き換える変異を含むフェリチンの一部の構造を示す図であり、システインの位置が示される。
【
図8B】
図8Bは、フェリチン、リンカー、およびCpGアジュバントを隣接させることによる、フェリチンへのCpGアジュバント(配列番号247)のコンジュゲーションを示し、これらは、互いに近接して結合するようになる各部分の一部を示すように配向される。
【
図9A】gL/gH-フェリチンをコンジュゲートしていない形態(
図9A)およびSM7/8aをコンジュゲートした形態(
図9B)の質量分析(MS)スペクトルを示す図である。主ピークの質量の差は711Daであり、これはSM7/8aとリンカーとのコンジュゲートから予測された差にほぼ対応する。
【
図9B】gL/gH-フェリチンをコンジュゲートしていない形態(
図9A)およびSM7/8aをコンジュゲートした形態(
図9B)の質量分析(MS)スペクトルを示す図である。主ピークの質量の差は711Daであり、これはSM7/8aとリンカーとのコンジュゲートから予測された差にほぼ対応する。
【
図10A】gp220-フェリチンのコンジュゲートしていない形態(
図10A)およびSM7/8aをコンジュゲートした形態(
図10B)の質量分析(MS)スペクトルを示す図である。主ピークの質量の差は714.7Daであり、これはSM7/8aとリンカーとのコンジュゲーションから予測された差にほぼ対応する。
【
図10B】gp220-フェリチンのコンジュゲートしていない形態(
図10A)およびSM7/8aをコンジュゲートした形態(
図10B)の質量分析(MS)スペクトルを示す図である。主ピークの質量の差は714.7Daであり、これはSM7/8aとリンカーとのコンジュゲーションから予測された差にほぼ対応する。
【
図11】
図11A-11Dは、コンジュゲートしていない(
図11A、C)およびコンジュゲートした(
図11B、D)一本鎖gL/gH(
図11A、B)およびgp220(
図11C、D)フェリチンナノ粒子の電子顕微鏡(EM)画像を示し、これらのナノ粒子へのSM7/8aのコンジュゲーションは、ナノ粒子構造を破壊しなかったことを示す。
【
図12】
図12A-12Bは、コンジュゲートしたSM7/8aまたは他のアジュバントを含まない一本鎖gL/gH、別個の分子としてのAF03アジュバント、またはコンジュゲートSM7/8aを含むフェリチンナノ粒子で処置した後のマウスにおける抗体応答を示す図である。ELISAの結果は、個々の希釈(
図12A)および結合力価(
図12B)として示される。
【
図13】
図13A-13Bは、単独、別個の分子としてのAF03アジュバント、またはコンジュゲートしたSM7/8aのいずれかを含むナノ粒子での処置後のマウスにおける抗体応答を示す図である。ELISAの結果は、個々の希釈(
図13A)および結合力価(
図13B)として示される。
【
図14】
図14A-14Bは、ELISAにより測定した、SM7/8aにコンジュゲートした一本鎖gL/gHフェリチンナノ粒子および裸のフェリチンでの処置と比較した、SM7/8aにコンジュゲートしたgp220ナノ粒子およびSM7/8aにコンジュゲートした一本鎖gL/gHフェリチンナノ粒子での処置後のマウスにおける抗gL/gH抗体応答を示す図である。結果は、混合したAF03を用いない(
図14A)または混合したAF03を用いた(
図14B)実験について示される。
【
図15】
図15A-15Bは、ELISAにより測定した、SM7/8aにコンジュゲートしたgp220ナノ粒子および裸のフェリチンでの処置と比較した、SM7/8aにコンジュゲートしたgp220ナノ粒子およびSM7/8aにコンジュゲートした一本鎖gL/gHナノ粒子での処置後のマウスにおける抗gp220抗体応答を示す図である。結果は、混合したAF03を用いない(
図15A)または混合したAF03を用いた(
図15B)実験について示される。
【
図16】ELISAエンドポイント力価によって測定した、ELISAにより測定した、一本鎖gL/gHナノ粒子にコンジュゲートした混合したAF03アジュバントおよび/またはSM7/8aのいずれかまたは両方を伴うまたは伴わない、一本鎖gL/gHナノ粒子(gL/gH_C5、配列番号19)および裸のフェリチンでの処置後のマウスにおける抗gL/gH抗体応答を示す図である。
【
図17】gp220ナノ粒子にコンジュゲートした混合AF03アジュバントおよび/またはSM7/8aのいずれかまたは両方を伴うまたは伴わない、gp220ナノ粒子および裸のフェリチンでの処置後のマウスにおける抗gp220抗体応答を示す図である。
【
図18】gp220ナノ粒子および一本鎖gL/gHナノ粒子を含む二価組成物での処置後のマウスにおける抗gL/gH抗体応答を示す図である。凡例に示されるように、いくつかのナノ粒子はSM7/8aにコンジュゲートされ、いくつかのナノ粒子はAF03と混合された。鍵となる上から下へのシンボルの順序は、グラフの左から右へのシンボルの順序と一致する。
【
図19】一本鎖gL/gHナノ粒子およびgp220ナノ粒子および/または裸のフェリチンを含む二価組成物での処置後のマウスにおける抗gp220抗体応答を示す。凡例に示されように、いくつかのナノ粒子はSM7/8aにコンジュゲートされ、いくつかのナノ粒子はAF03と混合された。キーの上から下へのシンボルの順序は、グラフの左から右へのシンボルの順序と一致する。
【
図20-1】
図20A-20Dは、混合AF03および/またはSM7/8a(
図20A、20C、または20D)もしくはCpGオリゴデオキシヌクレオチド(
図20B)へのコンジュゲーションを伴うまたは伴わない、gL_gH_C7ナノ粒子(配列番号20)での処置後のマウスにおける抗体応答を示す図である。示されているのは、ELISA(
図20A)によって測定されたプライム採血からのエンドポイント力価、ブースター採血(
図20B)からの個々の希釈でのELISA結果、ならびにブースター採血(
図20C)および最終採血(
図20D)からのELISAによって測定されたエンドポイント力価である。
【
図21】プライム、ブースト、および最終採血からのELISAにより測定されたエンドポイント力価として、混合AF03アジュバントおよび/またはSM7/8aへのコンジュゲーションを伴うまたは伴わない、gL_gH_C5ナノ粒子(配列番号19)での処置後のマウスにおける抗体応答を示す図である。
【
図22】プライム、ブースト、および最終採血からのELISAにより測定されたエンドポイント力価として、混合AF03アジュバントおよび/またはSM7/8aへのコンジュゲーションを伴うまたは伴わない、gp220ナノ粒子での処置後のマウスにおける抗体応答を示す図である。
【
図23A】
図23Aは、クーマシー染色により可視化された、gp220またはgL/gHのいずれかとの融合有りまたは無しでの、T.niフェリチンの軽鎖および重鎖を示す図である(
図23A)。
図23Aの最も右側のレーンにおける20、25、75、100、および150kDaのマーカーは標識される。
【
図23B】
図23Bは、gp220またはgL/gHのいずれかとの融合有りまたは無しでの、T.niフェリチンの軽鎖および重鎖を含む構築物の例を提供する。
【
図24-1】
図24A-24Dは、gp220-T.niフェリチンのイオン交換(Qカラム)クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)精製を実証する図である。pH7でのQカラム(
図24A)およびSEC Superose(登録商標)6,16/600(
図24B)からの吸光度トレース、pH7でのQカラムからの画分のクーマシー染色(
図24C)(左からのレーンは入力(「In」)、フロースルー(「FT」)、分子量ラダー(左にkDで表示されたサイズ)、および選択された画分)、およびSEC Superose(登録商標) 6,16/600からの画分のクーマシー染色(
図24D)(左からのレーンは分子量ラダーであり(左にkDで表示されたサイズ)および選択された画分)が示される。
図24Eは、構築物の例を示す。
【
図25-1】
図25A-25Dは、gL/gH(軽)/gp220(重)-T.niフェリチンのイオン交換(Qカラム)クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)精製を実証する図である。pH7でのQカラム(
図25A)およびSEC Superose(登録商標)6,16/600(
図25B)からの吸光度トレース、pH7でのQカラムからの画分のクーマシー染色(
図25C)(左からのレーンは入力(「In」)、フロースルー(「FT」)、分子量ラダー(左にkDで表示されたサイズ)、および選択された画分)、およびSEC Superose(登録商標) 6,16/600からの画分のクーマシー染色(
図25D)(左からのレーンは分子量ラダーであり(左にkDで表示されたサイズ)および選択された画分)が示される。
図25Eは、構築物の例を示す。
【
図26-1】
図26A-26Hは、クーマシー染色によって視覚化され(
図26Aおよび26E)、図式的に例示され(
図26Bおよび
図26F)、動的光散乱(DLS)によって特徴付けられ(
図26Dおよび26H)、および電子顕微鏡写真で可視化された(
図26Cおよび26G)、gp220-T.niフェリチンまたはgL/gH(軽鎖)/gp220(重鎖)-T.niフェリチン構築物を示す図である。
図26A~26Dは、軽鎖と重鎖の両方に融合されたgp220を用いたデータを示す(
図26Bの図)。
図26E~26Hは、重鎖に融合されたgp220および軽鎖に融合されたgL/gHを用いたデータを示す(
図26Fの図)。
【
図27-1】
図27A-27Cは、クーマシー染色によって可視化され(
図27A)、電子顕微鏡写真で可視化され(
図27B)、およびDLSによって特徴付けられた(
図27C)、裸のT.niフェリチン粒子(すなわち、非フェリチンポリペプチドに融合されていない)を示す図である。
【
図28A】
図28Aは、293のexpi細胞で発現された精製gH/gL/gp42 NP構築物(配列番号227)を用いたSDS変性クーマシー染色ゲル(左)、および(右)gH/gL/gp42 NPのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ピークを示す図である。SECクロマトグラムの水平軸の単位はmLである。
【
図28B】
図28Bは、約26.2nmの動的光散乱半径を有するようにCHOプールから精製されたgH/gL/gp42 NPを示す。
【
図29】
図29A-Bは、裸のフェリチンナノ粒子と組み合わせた一価のgH/gL/gp42ナノ粒子組成物、または二価組成物(gp220と組み合わせたgH/gL/gp42ナノ粒子)によって誘発された免疫応答の評価を示す図である。
図29Aは、B細胞中和を示す。
図29Bは、上皮細胞中和を示す。
【
図30-1】
図30A-Eは、示された抗原に対するエンドポイント結合力価を示す図である。
図30F-Gは、示されるようにワクチン接種されたフェレット由来の血清のEBVウイルス中和アッセイを示す図である。プライム=Inj.1、ブースト=Inj.2。
【
図31A】
図31Aは、Superose 6サイズ排除クロマトグラフィーを用いたgH/gL/gp42_NP_C12(配列番号228)の精製を示す図である。矢印は、変性クーマシーゲル分析および抗フェリチン抗体を用いたウエスタンブロット分析によりピークから回収した画分を示す。
【
図32A】
図32Aは、Superose 6サイズ排除クロマトグラフィーを用いたgH/gL/gp42_NP_C13(配列番号229)の精製を示す図である。矢印は、変性クーマシーゲル分析および抗フェリチン抗体を用いたウエスタンブロット分析によりピークから回収した画分を示す。
【
図33A】
図33Aは、Superose 6サイズ排除クロマトグラフィーを用いたgH/gL/gp42_NP_C14(配列番号230)の精製を示す図である。矢印は、変性クーマシーゲル分析および抗フェリチン抗体を用いたウエスタンブロット分析によりピークから回収した画分を示す。
【
図34】左側のSDS還元クーマシーゲルは、精製された一本鎖gH/gL/gp42-His産物(配列番号226)を示す図である。タンパク質をニッケルアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。右側は、一本鎖gH/gL/gp42-His産物(配列番号226)の2.9オングストローム結晶構造である。Gp42(濃い灰色であって、矢印で示す)はgH/gLヘテロ二量体と相互作用する。
【
図35】
図35A-Eは、(配列番号227~231の各々におけるように)フェリチンに融合されたgH/gL/gp42の一本鎖構築物の描画を
図35Aに示す図である。各タンパク質間の融合は、可撓性アミノ酸リンカーまたは上記に明記された堅いアミノ酸リンカーを介する。一本鎖gH/gL/gp42分子は、ナノ粒子上のヘテロ三量体形成の1:1:1の比を確証する。このヘテロ三量体の結晶構造は、一本鎖gH/gL/gp42が、天然に見られる野生型gH、gL、およびgp42タンパク質と同様のヘテロ三量体形成を採用し得ることを示すために解明されている(
図35B、
図34も参照されたい)。
図35Cは、この一本鎖gH/gL/gp42ヘテロ三量体がフェリチンとの融合を介してナノ粒子上にどのように提示されるかのモデルである。単一のナノ粒子上に提示される一本鎖gH/gL/gp42のコピーが24個ある。
図35Dは、293Expi細胞における配列番号227の発現後の精製を示す。変性SDSクーマシーゲルは、フェリチンに融合したgH/gL/gp42がグリコシル化により150kDを超えることを示す。
図35Eは、精製産物のネガティブ染色電子顕微鏡分析を示し、フェリチンに融合した一本鎖gH/gL/gp42が、表面上にgH/gL/gp42抗原を提示するナノ粒子を首尾よく形成できることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
単独で、別の分子としてのアジュバントとともに、および/または自己アジュバント性であり得るナノ粒子(例えばフェリチン粒子またはルマジンシンターゼ粒子)の一部として投与すると抗原性であり得るEBVポリペプチドが提供される。そのようなポリペプチ
ドおよびそのようなポリペプチドを含む組成物は、エプスタインバーウイルス(EBV)に対する抗体応答を誘発するために使用することができる。EBVポリペプチドはgL、gH、gL/gH、gp220、もしくはgp42ポリペプチド、またはそれらの組合せ、およびフェリチン等の多量体化ドメインを含み得る。フェリチンは表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含んでよく、これはシステインを介してフェリチンに免疫刺激性部分をコンジュゲートすることを促進することができる。そのようなコンジュゲーションは別に投与するアジュバントの必要性を除去または低減し、EBVポリペプチドに対する免疫応答を誘発するために必要なアジュバント/免疫刺激性部分の量を潜在的に低減させることもできる。一部の実施形態では、(i)EBVポリペプチド、および(ii-a)表面に露出したシステインを含むフェリチンまたは(ii-b)フェリチンおよびシステインを含むN末端もしくはC末端リンカーを含む抗原性EBVポリペプチドが提供される。本明細書に記載したEBVポリペプチドのいずれも、以下に記載するフェリチンのいずれとも組み合わせることができる。本明細書に記載したポリペプチドをコードする核酸も提供される。
【0052】
A.定義
本明細書で使用される場合、「EBVポリペプチド」は、EBVによってコードされるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドを指す。同様に、gL、gH、gp42、およびgp220ポリペプチドはそれぞれ、EBVによってコードされるgL、gH、gp42、またはgp220アミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドを指す。例えば、EBVコードポリペプチドと少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドは、必然的にEBVコードポリペプチドの一部を含む。用語「gLポリペプチド」、「gHポリペプチド」、「gp42ポリペプチド」、および「gp220ポリペプチド」はそれぞれ、「EBV gLポリペプチド」、「EBV gHポリペプチド」、「EBV gp42ポリペプチド」、および「EBV gp220ポリペプチド」と互換的に使用される。抗原性ポリペプチドの一部または全てとしてのEBVポリペプチドによる免疫は、EBVによる感染症に対する保護を付与し得る。本文がそれ以外であると述べていない限り、EBVポリペプチドを含む本明細書に開示される任意のポリペプチドは、EBV(例えば、EBVのgLおよびgHの全てもしくは一部、またはEBVのgL、gH、およびgp42の全てもしくは一部)によってコードされる複数の配列の全てまたは一部を含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「単量体」または「単量体構築物」は、一本鎖タンパク質として発現される構築物を指す。単量体は、一本鎖で発現されるEBVのgLおよびgH、または一本鎖で発現されるEBVのgL、gH、およびgp42を含み得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「三量体」または「三量体構築物」は、T4ファージフィブリチンに由来するフォルドン三量体形成ドメインのような三量体形成ドメインと共にEBVのgLおよび/またはgHを含む構築物を指す。ヒトコラーゲンXVIII三量体形成ドメイン(例えば、Alvarez-Cienfuegosら、Scientific
Reports 2016;6:28643頁を参照されたい)およびL1ORF1p三量体形成ドメイン(例えば、Khazinaら、Proc Natl Acad Sci USA 2009 Jan 12;106(3):731~36頁を参照されたい)のような他の三量体形成ドメインもまた当技術分野で公知であり、三量体構築物において使用することができる。
【0055】
「フェリチン」または「フェリチンタンパク質」は、本明細書で使用される場合、H.ピロリフェリチン(配列番号208または209)、またはP.フリオスス(P.furiosus)フェリチン、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)フェリチン、もしくはヒトフェリチンのような本明細書で考察される別のフェリチンと検出可
能な配列同一性を有し、鉄を例えば細胞内もしくは組織内で貯蔵する、または鉄を血流に運ぶ役目を果たすタンパク質を指す。重鎖および軽鎖(例えば、イラクサギンウワバおよびヒトフェリチン)として知られる2つのポリペプチド鎖として存在するフェリチンを含むそのような例示的なフェリチンを、以下で詳細に考察する。一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に、例えば表2(配列表)に開示されるフェリチン配列と少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。フェリチンは、完全長の天然に存在する配列の断片であり得る。
【0056】
「野生型フェリチン」は、本明細書で使用される場合、その配列が天然に存在する配列からなるフェリチンを指す。フェリチンはまた、完全長のフェリチン、または野生型フェリチンとはそのアミノ酸配列において1つまたはそれ以上の差を有するフェリチンの断片も含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「フェリチン単量体」は、他のフェリチン分子と集合していない単一のフェリチン分子(例えば、該当する場合、単一のフェリチン重鎖または軽鎖)を指す。「フェリチン多量体」は、複数の会合したフェリチン単量体を含む。「フェリチンタンパク質」は、単量体フェリチンおよび多量体フェリチンを含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「フェリチン粒子」は、球状形態に自己集合したフェリチンを指す。フェリチン粒子は時に、「フェリチンナノ粒子」または単に「ナノ粒子」と呼ばれる。一部の実施形態では、フェリチン粒子は、24個のフェリチン単量体(または該当する場合、全体で24個の重鎖および軽鎖)を含む。
【0059】
「ハイブリッドフェリチン」は、本明細書で使用される場合、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部を有するH.ピロリフェリチンを含むフェリチンを指す。ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部として使用される例示的な配列を、配列番号217として示す。ハイブリッドフェリチンでは、免疫刺激性部分の結合部位がフェリチン粒子表面上に均一に分布するように、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部をH.ピロリフェリチンに融合することができる。「ウシガエルリンカー」は、本明細書で使用される場合、配列番号217の配列を含むリンカーである。ハイブリッドフェリチンはまた、時に「bfpFerr」または「bfpフェリチン」と呼ばれる。ウシガエル配列を含むいずれの構築物も、ウシガエル配列がなくとも、例えばリンカーまたは代替リンカーがなくとも提供することができる。例示的なウシガエルリンカー配列を、表2に提供する。表2はウシガエルリンカーを示すが、リンカーまたは代替リンカーを有しない同じ構築物を作製してもよい。
【0060】
「N-グリカン」は、本明細書で使用される場合、タンパク質のN(アスパラギン)残基のアミド窒素でタンパク質に結合した糖質鎖を指す。そのため、N-グリカンは、Nグリコシル化のプロセスによって形成される。このグリカンは多糖類であり得る。
【0061】
「グリコシル化」は、本明細書で使用される場合、タンパク質への糖質単位の付加を指す。
【0062】
「免疫応答」は、本明細書で使用される場合、抗原またはワクチンのような刺激に対する、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、または多形核細胞のような免疫系の細胞の応答を指す。免疫応答は、例えばインターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関係する体の任意の細胞を含み得る。免疫応答は、生得のおよび/または適応免疫応答を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「保護的免疫応答」は、対象を感染から保護する(例えば、感染を防止する、または感
染に関連する疾患の発生を防止する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法は、当技術分野で周知であり、例えばリンパ球(例えば、BまたはT細胞)の増殖および/または活性、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生等を測定することを含む。「抗体応答」は、抗体が産生される免疫応答である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、生物に曝露または投与した場合に、免疫応答を誘発する作用物質、および/またはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)が結合する、もしくは抗体(例えば、B細胞によって産生される場合)に結合する作用物質を指す。一部の実施形態では、抗原は、生物において液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。あるいはまたは加えて、一部の実施形態では、抗原は、生物において細胞性応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞を含む)を誘発する。特定の抗原は、標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたはいくつかのメンバーにおいて免疫応答を誘発し得るが、標的生物種の全てのメンバーにおいて誘発するわけではない。一部の実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、抗原は、抗体および/またはT細胞受容体に結合するが、生物において特定の生理的応答を誘導しても誘導しなくてもよい。一部の実施形態では、例えば、抗原は、in vivoでそのような相互作用が起こるか否かによらず、in vitroで抗体および/またはT細胞受容体に結合し得る。一部の実施形態では、抗原は、異種免疫原によって誘導される産物を含む、特異的液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。抗原は、本明細書に記載されるフェリチン(例えば、1つまたはそれ以上の変異を含む)および非フェリチンポリペプチドを含む抗原性フェリチンタンパク質を含む。
【0064】
「免疫刺激性部分」は、本明細書で使用される場合、フェリチンまたは抗原性フェリチンポリペプチドに共有結合し、免疫系の構成要素を活性化することができる(単独で、またはフェリチンまたは抗原性フェリチンポリペプチドに結合した場合)部分を指す。例示的な免疫刺激性部分は、toll-like受容体(TLR)、例えば、TLR4、7、8、または9のアゴニストを含む。一部の実施形態では、免疫刺激性部分はアジュバントである。
【0065】
「アジュバント」は、本明細書で使用される場合、抗原に対する免疫応答を非特異的に増強する物質またはビヒクルを指す。アジュバントには、抗原を吸着させた無機質(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、またはリン酸塩)の懸濁液、抗原溶液を鉱油または水中で乳化させた油中水型または水中油型乳剤(例えば、フロイント不完全アジュバント)を挙げることができるがこれらに限定されない。時に、抗原性をさらに増強するために死菌マイコバクテリア(例えば、フロイント完全アジュバント)を含める。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ)もまた、アジュバントとして使用することができる(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;および第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントはまた、Toll-Like受容体(TLR)アゴニストおよび共刺激分子のような生物学的分子も含み得る。アジュバントは、組成物中の個別の分子として、またはフェリチンもしくは抗原性フェリチンポリペプチドに共有結合(コンジュゲート)して投与してもよい。
【0066】
「抗原性EBVポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、分子がEBVに関して抗原性であるのに十分な長さのEBVアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドを指す。抗原性は、フェリチンまたはルマジンシンターゼタンパク質のような異種
配列、および/または免疫刺激性部分をさらに含む構築物の一部としてのEBV配列の特色であり得る。すなわち、EBV配列が異種配列をさらに含む構築物の一部である場合、構築物は、異種配列を有しないEBV配列がそうすることができるか否かによらず、抗EBV抗体を生成する抗原としての役目を果たすことができれば十分である。
【0067】
「抗原性フェリチンポリペプチド」および「抗原性フェリチンタンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、分子が非フェリチンポリペプチドに関して抗原性である十分な長さのフェリチンおよび非フェリチンポリペプチド(例えばEBVポリペプチド)を含むポリペプチドを指す。抗原性フェリチンポリペプチドはさらに、免疫刺激性部分を含み得る。抗原性は、より大きい構築物の一部としての非フェリチン配列の特色であり得る。すなわち、構築物は、フェリチンを有しない非フェリチンポリペプチド(および該当する場合、免疫刺激性部分)がそうすることができるか否かによらず、非フェリチンポリペプチドに対する抗原としての役目を果たすことができれば十分である。一部の実施形態では、非フェリチンポリペプチドはEBVポリペプチドであり、この場合抗原性フェリチンポリペプチドはまた、「抗原性EBVポリペプチド」である。しかし、明白にするために、抗原性EBVポリペプチドはフェリチンを含む必要はない。「抗原性ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、抗原性フェリチンポリペプチドおよび抗原性EBVポリペプチドのいずれかまたは両方であるポリペプチドを指す。
【0068】
「自己アジュバント性」は、本明細書で使用される場合、フェリチンおよび免疫刺激性部分が同じ分子実体中にあるように、フェリチンおよびフェリチンに直接コンジュゲートされた免疫刺激性部分を含む組成物またはポリペプチドを指す。非フェリチンポリペプチドを含む抗原性フェリチンポリペプチドを、免疫刺激性部分にコンジュゲートして、自己アジュバント性ポリペプチドを生成してもよい。
【0069】
「表面に露出した」アミノ酸は、本明細書で使用される場合、該当する場合に、多量体形成後、タンパク質がその本来の三次元コンフォメーションにある場合に溶媒分子が接触することができる側鎖を有するタンパク質(例えば、フェリチン)中のアミノ酸残基を指す。このように、例えば24量体を形成するフェリチンの場合、表面に露出したアミノ酸残基は、フェリチンが24量体として、例えばフェリチン多量体またはフェリチン粒子として集合する場合に、その側鎖に溶媒が接触することができる残基である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「対象」は、動物界の任意のメンバーを指す。一部の実施形態では、「対象」はヒトを指す。一部の実施形態では、「対象」は非ヒト動物を指す。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫、および/または虫を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであり得る。本発明のある特定の実施形態では、対象は成体、青年期、または幼体である。一部の実施形態では、用語「個体」または「患者」は、「対象」と互換的に使用され、互換的であると意図される。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチン接種する」は、例えば病原体に対して免疫応答を生成することが意図される組成物の投与を指す。ワクチン接種は、病原体に対する曝露および/または1つもしくはそれ以上の症状の発生の前、間、および/または後に投与することができ、一部の実施形態では、病原体に対する曝露の前、間、および/または直後に投与することができる。一部の実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切な間隔を空けた複数回の投与を含む。
【0072】
本開示は、所定の核酸配列またはアミノ酸配列(参照配列)に対してそれぞれ、ある特
定の程度の同一性を有する核酸配列およびアミノ酸配列を記載する。
【0073】
2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同定されたヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0074】
用語「同一%」、「同一性%」、または類似の用語は、特に比較される配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指すと意図される。前記パーセンテージは、純粋に統計学的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたって分布していてもよいが、必ずしもランダムに分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアライメント後に前記配列を、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して比較することによって実行される。比較のための最適なアライメントは、手動で、またはSmith
and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482頁によるローカルホモロジーアルゴリズムの助けを借りて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443頁のローカルホモロジーアルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444頁の類似性検索アルゴリズムの助けを借りて、または前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラムの助けを借りて(GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、およびTFASTA、 in Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.)実行してもよい。
【0075】
パーセンテージ同一性は、比較される配列が対応する同一の位置の数を決定する工程、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除算する工程、およびこの結果に100を乗算する工程によって得られる。
【0076】
一部の実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%である領域に関して与えられる。例えば、参照核酸配列が200ヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200ヌクレオチド、一部の実施形態では、連続ヌクレオチドに関して与えられる。一部の実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長にわたって与えられる。
【0077】
所定の核酸配列またはアミノ酸配列に対してそれぞれ、特定の同一性の程度を有する核酸配列またはアミノ酸配列は、前記所定の配列の少なくとも1つの機能的特性を有することができ、例えば、一部の例では前記所定の配列と機能的に等価である。1つの重要な特性は、特に、対象に投与した場合にサイトカインとして作用する能力を含む。一部の実施形態では、所定の核酸配列またはアミノ酸配列に対して特定の同一性の程度を有する核酸配列またはアミノ酸配列は、前記所定の配列と機能的に等価である。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「キット」は、1つまたはそれ以上の化合物または組成物のような関連する構成要素、および溶媒、溶液、緩衝液、説明書、または乾燥剤のような1つまたはそれ以上の関連する材料の包装された組を指す。
【0079】
B.gLおよびgHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチド
EBVは3つの糖タンパク質、糖タンパク質B(gB)、gH、およびgLを含み、これらはコア膜融合装置を形成して細胞内へのウイルスの浸透を可能にする。gLおよびg
Hは、既に例えばMatsuuraら、Proc Natl Acad Sci USA.2010 Dec 28;107(52):22641~6頁に記載されている。ワクチンとしての使用のためのgLおよびgHの単量体および三量体は、例えばCuiら、Vaccine.2016 Jul 25;34(34):4050~5頁に記載されている。gHおよびgLタンパク質は会合して、ウイルスの進入に要する効率的な膜の融合および上皮細胞のレセプターへの結合のために必要と考えられるヘテロ二量体複合体を形成する。
【0080】
EBV gLおよびEBV gHを含む抗原性ポリペプチドが本明細書で開示される。一部の実施形態では、ポリペプチドは一本鎖として存在する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、例えばT4ファージフィブリチン三量体形成ドメインのような三量体形成ドメインの三量体形成によって三量体を形成する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、例えばフェリチンまたはルマジンシンターゼの多量体形成によってナノ粒子(例えばフェリチンまたはルマジンシンターゼの粒子)を形成する。一部の実施形態では、本開示による抗原性EBVポリペプチドはEBV gLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチド、ならびにEBV gLポリペプチドとEBV gHポリペプチドを隔てる少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーを含む。比較的長いリンカーが発現および/または免疫原性の改善のような提供することが見出された。
【0081】
一部の実施形態では、EBV gHおよび/またはgLポリペプチドは完全長のgHおよび/またはgLである(例示的な完全長配列については、それぞれGenBank Accession Nos.CEQ35765.1およびYP_001129472.1を参照されたい)。一部の実施形態では、EBV gHおよび/またはgLポリペプチドは、gHおよび/またはgLの断片である。一部の実施形態では、gLポリペプチドはgL C末端の終端に7アミノ酸の欠失を有するgL(D7)構築物である。一部の実施形態では、gHポリペプチドはC137にC137A変異のような変異を含む。一部の実施形態では、C137変異によって天然の不対システインが除去され、非特異的コンジュゲーションが避けられる。一部の実施形態では、gHポリペプチドはC137A変異のような、配列番号37のシステイン137に対応するシステインを除去する変異を含む。一部の実施形態では、C137変異によって天然の不対システインが除去され、非特異的コンジュゲーションが避けられる。
【0082】
一部の実施形態では、EBV gLポリペプチドは配列番号36と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、EBV gHポリペプチドは配列番号37と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、哺乳動物のリーダー配列(シグナル配列としても知られている)は、gHまたはgLポリペプチドのようなEBVポリペプチドにN末端で、例えばポリペプチドのN末端に付加されている。一部の実施形態では、哺乳動物のリーダー配列は哺乳動物細胞中で発現されるとタンパク質の分泌をもたらす。
【0084】
天然のEBV gHおよび/またはgLの配列はGenBank Accession
No.NC_009334.1(ヒトヘルペスウイルス4、完全ゲノム、日付2010年3月26日)に示されている。本明細書で開示する構築物のいくつかについては、NC_009334.1のgLアミノ酸配列のアミノ酸23~137をgLポリペプチドとして使用し、天然のシグナルペプチド(NCBI配列のアミノ酸1~22)をIgGκリーダー配列に置き換えた。構築物のいくつかについては、NC_009334.1のgHアミノ酸配列のアミノ酸19~678をgHポリペプチドとして使用した。一部の実施形態
では、gLとgHを本明細書の配列の表に示すようにリンカーを介して連結した。
【0085】
一部の実施形態では、gLおよびgHポリペプチドは一本鎖単量体として発現される。一部の実施形態では、単量体組成物は配列表に示され、「単量体」としての記載で注記された配列を含み、またはそれからなる。gLおよびgHポリペプチドを含む一本鎖は「gL/gH」と称し、これは「gH_gL」、「gL_gH」、または「gL/gH」と互換的に使用できる。
【0086】
一部の実施形態では、gLおよびgHは三量体として提供される。一部の実施形態では、三量体形成ドメインはgH配列の後(C末端)に置かれ、一部の実施形態ではこの後にHis6(配列番号243)配列が続く。本明細書で参照したコラーゲンまたはL1ORF1p三量体形成ドメインのような当技術分野で公知の任意の三量体形成ドメインが使用できるので、フォルドン三量体形成ドメインは例示的である。末梢血ヒトナイーブB細胞を使用し、gLおよびgH三量体はgLおよびgH単量体と比較してより高い血清中和力価を誘起することが示された(例えばCuiら、Vaccine.2016 Jul 25;34(34):4050~5頁を参照されたい)。
【0087】
一部の実施形態では、gL/gH三量体は配列表に示され、「三量体」としての記載で注記された配列を含み、またはそれからなるアミノ酸配列を有する。
【0088】
gL/gHポリペプチドは、本明細書で論じるフェリチンまたはルマジンシンターゼのいずれと組み合わせることもできる。例えば、一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、単量体または三量体のgL/gHポリペプチド(+/-gp42および/またはgp220)およびi)重鎖または軽鎖フェリチン(例えばT.ニイ重鎖または軽鎖フェリチン)、またはii)場合により表面に露出したシステインを含むフェリチンを含む。
【0089】
さらに、一部の実施形態では、EBV gL/gHポリペプチドおよびフェリチンを含む任意の抗原性EBVポリペプチドが、本明細書に開示した別のポリペプチドを含む組成物の中に存在してもよい。
【0090】
C.gp220ポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチド
一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドはgp220ポリペプチドを含む。gp220ハイブリッドウシガエル/H.ピロリフェリチンナノ粒子は、既にKanekiyo、Cell.2015 Aug 27;162(5):1090~100頁に記載されている。このナノ粒子は、本明細書に記載したある種のフェリチンとの他の相違の中でも、表面に露出したシステインを提供する変異またはシステインを含むリンカーを含んでいなかった。
【0091】
一部の実施形態では、gp220ポリペプチドは配列番号38と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0092】
一部の実施形態では、哺乳動物のリーダー配列(シグナル配列としても知られている)は、gp220ポリペプチドにN末端で付加されている。一部の実施形態では、哺乳動物のリーダー配列は哺乳動物細胞中で発現されるとタンパク質の分泌をもたらす。
【0093】
gp220ポリペプチドは、本明細書で論じるフェリチンまたはルマジンシンターゼのいずれと組み合わせることもできる。例えば、一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、gp220ポリペプチド(+/-gL/gHおよび/またはgp42)および
i)重鎖または軽鎖フェリチン(例えばT.ニイ重鎖または軽鎖フェリチン)、またはii)場合により本明細書に記載した表面に露出したシステインを含むフェリチンを含む。
【0094】
さらに、一部の実施形態では、gp220ポリペプチドおよびフェリチンを含む任意の抗原性EBVポリペプチドが、本明細書に開示した別のポリペプチドを含む組成物の中に存在してもよい。
【0095】
D.gp42ポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチド
一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドはgp42ポリペプチドを含む。例示的なgp42配列は、配列番号34として提供される。例えばgLおよびgHポリペプチドとの融合に含めるために適したさらなる例示的なgp42配列は、配列番号239として提供される。例えばgLおよびgHポリペプチドとの融合に含めるために適した別の例示的なgp42配列は、配列番号240として提供される。
【0096】
一部の実施形態では、gp42ポリペプチドは配列番号34と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、gp42ポリペプチドは配列番号239と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、gp42ポリペプチドは配列番号240と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0097】
一部の実施形態では、哺乳動物のリーダー配列(シグナル配列としても知られている)は、gp42ポリペプチドにN末端で付加されている。一部の実施形態では、哺乳動物のリーダー配列は哺乳動物細胞中で発現されるとタンパク質の分泌をもたらす。例示的なリーダー配列は配列番号226のアミノ酸1~22である。
【0098】
一部の実施形態では、gHおよび/またはgLポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドは、gp42ポリペプチドをさらに含む。上述のgHおよび/またはgLポリペプチドを含むEBVポリペプチドのいずれも、gp42ポリペプチドをさらに含んでよい。一部の実施形態では、gp42ポリペプチドは、配列番号21および226~231に例示するように、gHおよび/またはgLポリペプチドに対してC末端側に位置する。一部の実施形態では、gp42ポリペプチドは、これも配列番号21および227~231に例示するように、フェリチンに対してN末端側に位置する。したがって、例えば抗原性EBVポリペプチドは、N末端からC末端への配向で、gLポリペプチド、gHポリペプチド、gp42ポリペプチド、および場合によりフェリチンを含んでよい。本明細書に記載したようなリンカーは、EBVポリペプチドならびに/またはそのN末端および/もしくはC末端に位置するフェリチンからgp42ポリペプチドを隔てることができる。一部の実施形態では、リンカーは抗原性フェリチンポリペプチドの中のそれぞれのEBVポリペプチド(例えばgLポリペプチド、gHポリペプチド、およびgp42ポリペプチド)を隔て、さらにリンカーは、存在する場合にはフェリチンとそれに近接するEBVポリペプチド(例えばgp42ポリペプチド)との間に存在してもよい。
【0099】
一部の実施形態では、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーは、EBV gHポリペプチドとEBV gp42ポリペプチドとを隔てる。そのようなリンカーは15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、もしくは40~50アミノ酸の長さを有してよい。一部の実施形態では、リンカーは配列番号234と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
一部の実施形態では、gp42およびフェリチンがポリペプチドの中に存在する場合には、リンカーはEBV gp42ポリペプチドとフェリチンとを隔てる。そのようなリンカーは少なくとも15アミノ酸の長さを有してよく、または15~60アミノ酸、20~60アミノ酸、30~60アミノ酸、40~60アミノ酸、30~50アミノ酸、もしくは40~50アミノ酸の長さを有する。一部の実施形態では、そのようなリンカーは配列番号233、234、235、236、237、または238のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0101】
gp42ポリペプチドは、本明細書で論じるフェリチンまたはルマジンシンターゼのいずれと組み合わせることもできる。例えば、一部の実施形態では、ポリペプチドは、gp42ポリペプチド(+/-gL/gHおよび/またはgp220)およびi)重鎖または軽鎖フェリチン(例えばT.ニイ重鎖または軽鎖フェリチン)、またはii)場合により本明細書に記載した表面に露出したシステインを含むフェリチンを含む。
【0102】
一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、配列番号226のアミノ酸23~1078と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、配列番号226のアミノ酸1~1078と80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、配列番号226、227、228、229、230、または231のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、場合によりリーダー配列を欠如する(例えば、これらの配列のアミノ酸1~22のいずれかまたは全てを欠如する)。
【0103】
さらに、一部の実施形態では、gp42ポリペプチドおよびフェリチンを含む任意の抗原性EBVポリペプチドが、本明細書に開示した別のポリペプチドを含む組成物の中に存在してもよい。
【0104】
E.リンカー
一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、gLおよびgHポリペプチドの間にリンカーを含む。一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、EBVポリペプチドとフェリチンまたはルマジンシンターゼとの間にリンカーを含む。そのようなリンカーのいずれかに関して以下の特徴が記述されるが、本発明はgLおよびgH配列の間の比較的長いリンカーが免疫原性を増大させ得ることを提供する。任意のリンカーを使用してよく、例えば一部の実施形態では、リンカーの長さは2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーの長さは約2~4、2~6、2~8、2~10、2~12、または2~14アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーはペプチドリンカーであり、これは融合タンパク質としての抗原性フェリチンポリペプチドの発現(例えば単一のオープンリーディングフレームからの)を促進することができる。一部の実施形態では、リンカーはグリシン-セリンリンカーである。一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーはGS、GGGS(配列番号244)、2×GGGS(すなわち、GGGSGGGS)(配列番号245)、または5×GGGS(配列番号246)である。一部の実施形態では、EBVポリペプチドとフェリチンとの間のリンカーはGS、GGGS(配列番号244)、2×GGGS(すなわち、GGGSGGGS)(配列番号245)、または5×GGGS(配列番号246)である。
【0105】
一部の実施形態では、リンカーの長さは少なくとも15アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーの長さは少なくとも25アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーの長さは少なくとも30アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーの長さは少な
くとも35アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーの長さは少なくとも40アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーの長さは60アミノ酸以下である。一部の実施形態では、リンカーの長さは50アミノ酸以下である。一部の実施形態では、リンカーの長さは約16、28、40、46、または47アミノ酸である。一部の実施形態では、リンカーは可撓性である。一部の実施形態では、リンカーは例えば免疫刺激性部分(例えばアジュバント)のコンジュゲーションのための部位としての使用のためにシステインを含み、システインを含む例示的なリンカーは配列番号225として提供される。一部の実施形態では、リンカーは配列番号225と少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する配列を含み、配列番号225におけるシステインに対応するシステインをさらに含む。一部の実施形態では、リンカーは少なくとも25アミノ酸(例えば25~60アミノ酸)を含み、システインはN末端から8番目のアミノ酸からC末端から8番目のアミノ酸までの範囲または中央残基の10アミノ酸の中またはリンカーの結合の場所に位置している。
【0106】
一部の実施形態では、リンカーはグリシン(G)および/またはセリン(S)アミノ酸を含む。一部の実施形態では、リンカーはグリシン(G)、セリン(S)、アスパラギン(N)、および/またはアラニン(A)アミノ酸、ならびに場合により上で論じたシステインを含むか、これらからなる。一部の実施形態では、リンカーは配列番号222と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーはGGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号28)、GGSGSGSNSSASSGASSGGASGGSGGSG(配列番号29)、GGSGSASSGASASGSSNGSGSGSGSNSSASSGASSGGASGGSGGSG(配列番号30)、またはGSを含む。一部の実施形態では、リンカーはFR1(配列番号31)またはFR2(配列番号32)を含む。一部の実施形態では、リンカーは配列番号233~238を含む。
【0107】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分のためのコンジュゲーション部位としてシステインを含むリンカーは、表面に露出した不対システインを欠如するフェリチン分子を含む構築物、または表面に露出した不対システインを含むフェリチン分子を含む構築物において使用される。
【0108】
一部の実施形態では、リンカーはシステイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーである。一部の実施形態では、このリンカーはクリックケミストリーを介してEBVポリペプチドをフェリチンに直接コンジュゲートするために使用される。システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを含む例示的な配列は配列番号39である。システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーが関与するコンジュゲーション反応に好適なクリックケミストリーを本明細書で論じる。
【0109】
一部の実施形態では、構築物はリンカーを含まない。一部の実施形態では、構築物は1つのリンカーを含む。一部の実施形態では、構築物は2つ以上のリンカーを含む。
【0110】
一部の実施形態では、構築物はgHとgLとの間にリンカーを含むが、ポリペプチドとフェリチンとの間にはリンカーを含まず、逆もそうである。一部の実施形態では、構築物はポリペプチドとフェリチンとの間にのみリンカーを含む。
【0111】
F.EBVポリペプチドおよびフェリチンまたはルマジンシンターゼを含む抗原性EBVポリペプチド
一部の実施形態では、EBVポリペプチドおよびフェリチンを含む抗原性EBVポリペプチドが提供される。EBVポリペプチドはgL、gH、gL/gH、gp220、gp42ポリペプチド、またはそれらの組合せのような、本明細書に記載したEBVポリペプ
チドのいずれであってもよい。ポリペプチドのフェリチン成分は任意の種からのフェリチンであってよく、本明細書に記載した表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異のような変異を有しても有しなくてもよい。一部の実施形態では、ポリペプチドは配列番号1~27のいずれか1つのアミノ酸を含む。
【0112】
一部の実施形態では、ポリペプチド中のフェリチンは野生型フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンは細菌、昆虫、真菌、鳥類、または哺乳動物由来である。一部の実施形態では、フェリチンはヒト由来である。一部の実施形態では、フェリチンは細菌由来である。
【0113】
一部の実施形態では、フェリチンは軽鎖および/または重鎖フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンはトリコプルシア・ニイ(Trichoplusia ni)重鎖フェリチン(配列番号211)またはトリコプルシア・ニイ軽鎖フェリチン(配列番号212)のような昆虫フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンはヒト重鎖フェリチン(配列番号214またはFTH1、GENE ID No:2495)またはヒト軽鎖フェリチン(配列番号215またはFTL、GENE ID No:2512)のようなヒトフェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンナノ粒子は、ヒトまたはトリコプルシア・ニイのフェリチンナノ粒子のような、重鎖フェリチンおよび軽鎖フェリチンの24個の全サブユニットを含む。T.ニイフェリチンナノ粒子は重鎖フェリチンの12個のサブユニットおよび軽鎖フェリチンの12個のサブユニットを含み得る。
【0114】
一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは軽鎖フェリチンおよびEBVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは重鎖フェリチンおよびEBVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、軽鎖フェリチンおよびEBVポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドは、EBVポリペプチドに連結されていない重鎖フェリチンと集合することができる。一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびEBVポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドは、EBVポリペプチドに連結されていない軽鎖フェリチンと集合することができる。EBVポリペプチド(またはより一般的に非フェリチンポリペプチド)に連結されていないフェリチンは「裸のフェリチン」と称してよい。
【0115】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよびEBVポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドと集合して、単一のフェリチンナノ粒子上に同一のまたは異なる非フェリチンポリペプチドの2つの提示を可能にする。一部の実施形態では、2つの異なる非フェリチンポリペプチドはEBVポリペプチドである。一部の実施形態では、2つの異なる非フェリチンポリペプチドは、EBVおよび異なる感染性作用物質によってコードされる。一部の実施形態では、異なる感染性作用物質からの異なる非フェリチンポリペプチドは、ウイルスまたは細菌由来である。
【0116】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよび非フェリチンポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよび非フェリチンポリペプチドを含むポリペプチドと集合して、二価組成物を生成することができる。
【0117】
一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンならびにgp220および/またはgp42ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、重鎖フェリチンならびにgp220および/またはgp42ポリペプチドを含む。
【0118】
一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンならびに一本鎖gLおよびgHポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、重鎖フェリチンならびに一本鎖gLおよびgHポリペプチドを含む。
【0119】
一部の実施形態では、軽鎖フェリチンならびにgp220および/またはgp42ポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、重鎖フェリチンならびに一本鎖gLおよびgHポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドと集合する。
【0120】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンならびにgp220および/またはgp42ポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンならびに一本鎖gLおよびgHポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドと集合する。一部の実施形態では、集合したT.ニイフェリチンナノ粒子の場合のように、12個のgp220および/またはgp42ポリペプチドならびに12個の一本鎖gLおよびgHポリペプチドが、集合したフェリチンナノ粒子の中に含まれる。
【0121】
gp220および/またはgp42ならびに一本鎖gLおよびgHポリペプチドの両方を含むいずれの型のフェリチンナノ粒子も、「二価」または「二価EBV」の粒子もしくは構築物と称し得る。gp220および/またはgp42を含むフェリチンとともにgLおよびgH三量体を含む組成物も、二価EBV組成物であろう。
【0122】
一部の実施形態では、フェリチンは、場合により本明細書に記載したような1つまたはそれ以上の変異を有するH.ピロリフェリチンである(例示的なH.ピロリフェリチンの配列については配列番号208または209を参照されたい)。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチン(または他の細菌フェリチン)とヒトフェリチンとの間の配列相同性がより低いことにより、ワクチンプラットフォームとして使用した場合に自己免疫の可能性を減少させ得る(Kanekiyoら、Cell 162,1090~1100頁(2015)を参照されたい)。
【0123】
一部の実施形態では、EBVポリペプチドおよびフェリチンを含む本明細書に開示した抗原性EBVポリペプチドを含むナノ粒子が提供される。
【0124】
1.フェリチン変異
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の変異を含むフェリチンを本明細書に開示する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の変異は、例えば野生型フェリチンのアミノ酸配列の変化、および/またはNもしくはC末端での挿入を含む。一部の実施形態では、1、2、3、4、5、またはそれより多くの異なるアミノ酸が、野生型フェリチンと比較してフェリチンにおいて変異している(一部の実施形態では、任意のN末端挿入に加えて)。1つまたはそれ以上の変異は、例えば以下で詳細に考察するように、フェリチンの機能的特性を変化させることができる。一般的に、変異は単に、対応する野生型フェリチンと比較した配列の差(置換された、付加された、または欠失されたアミノ酸残基または複数の残基のような)を指す。
【0125】
2.コンジュゲーションのためのシステイン
一部の実施形態では、フェリチンを、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチドのコンジュゲーションのための化学ハンドルを提供するように変異させる。これは、表面に露出した非システインアミノ酸をシステインに置き換える変異によって達成することができる。誤解を避けるため、「表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える」のような表現は、野生型または変異前配列における表面に露出したアミノ酸がシステインではないことを必然的に暗示している。免疫刺激性部分またはEBVポリペプチドのコンジュゲーションのための化学ハンドルを提供する別のアプローチは、リンカーのようなアミノ酸のセグメントをフェリチンのNまたはC末端に含めることであり、アミノ酸のセグメントはシステインを含む。一部の実施形態では、このシステイン(表面に露出したアミノ酸を置き換えるか、またはNもしくはC末端リンカーにある)は不対であり、このことは
、これがジスルフィド結合を形成するために適切なパートナーシステインを有していないことを意味する。一部の実施形態では、このシステインは、フェリチンの二次構造を変化させない。一部の実施形態では、このシステインは、フェリチンの三次構造を変化させない。
【0126】
一部の実施形態では、このシステインを使用して、免疫刺激性部分のような作用物質をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、このシステインは、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン上のこのシステインにコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン粒子の表面上で露出する。一部の実施形態では、このシステインは、投与後にフェリチン粒子が集合する間、対象の分子および細胞と相互作用することができる。
【0127】
一部の実施形態では、このシステインの存在により、1つまたはそれ以上の免疫刺激性部分、例えばアジュバントのコンジュゲーションが可能となる。一部の実施形態では、免疫刺激性部分のコンジュゲーションは、このシステインの非存在下では起こらない。
【0128】
一部の実施形態では、システインに置き換えられる非システインアミノ酸は、H.ピロリフェリチンのE12、S72、A75、K79、S100、およびS111から選択される。このように、一部の実施形態では、システインのために置き換えられる表面に露出したアミノ酸は、H.ピロリフェリチンのE12、S26、S72、A75、K79、S100、またはS111に対応するアミノ酸残基である。類似のアミノ酸を、ペアワイズまたは構造アライメントによって、非H.ピロリフェリチンにおいて見出すことができる。一部の実施形態では、システインに置き換えられる非システインアミノ酸は、ヒト軽鎖フェリチンのS3、S19、S33、I82、A86、A102、およびA120に対応するアミノ酸から選択することができる。一部の実施形態では、システインに置き換えられる表面に露出したアミノ酸は、本来のアミノ酸がシステインに置き換えられた場合、これは集合したフェリチン多量体もしくは粒子において反応性である、および/またはこのシステインはフェリチン多量体もしくは粒子の安定性を妨害しない、および/またはこのシステインがフェリチンの発現レベルの低減をもたらさないという理解に基づいて選択される。
【0129】
一部の実施形態では、フェリチンはE12C変異を含む。一部の実施形態では、E12C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、E12C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のE12C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のE12C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0130】
一部の実施形態では、フェリチンは、S26C変異を含む。一部の実施形態では、S26C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S26C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS26C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS26C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0131】
一部の実施形態では、フェリチンは、S72C変異を含む。一部の実施形態では、S72C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S72C
残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS72C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS72C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0132】
一部の実施形態では、フェリチンは、A75C変異を含む。一部の実施形態では、A75C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、A75C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のA75C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のA75C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0133】
一部の実施形態では、フェリチンは、K79C変異を含む。一部の実施形態では、K79C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、K79C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のK79C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のK79C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0134】
一部の実施形態では、フェリチンは、S100C変異を含む。一部の実施形態では、S100C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S100C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS100C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS100C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0135】
一部の実施形態では、フェリチンは、S111C変異を含む。一部の実施形態では、S111C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはEBVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S111C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS111C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS111C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0136】
3.内部システインの除去
一部の実施形態では、フェリチンは、内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含む。本来の内部システイン残基を除去することによって、フェリチン単量体あたり1つのみの不対システインが存在することを確実にし、ジスルフィド形成のような望ましくない反応を回避することができ、より安定かつ効率的な結果(例えば、アジュバントの提示)をもたらし得る。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチンのC31が非システインアミノ酸に置き換えられる。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチンのC31がセリンに置き換えられる(C31S)が、任意の非システイン残基、例えばアラニン、グリシン、トレオニン、またはアスパラギンを使用してもよい。類似のアミノ酸を、ペアワイズまたは構造アライメントによって、非H.ピロリフェリチンにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、非システインのために置き換えられる内部システインは、H.ピロリフェリチンのC31と整列するアミノ酸残基である。C31S変異を示す例示的なフェリチン配列を、配列番号201~207に示す。一部の実施形
態では、1つより多くの内部システインがフェリチンに存在する場合、2つまたはそれより多く(例えば、各々の)内部システインは、セリン、またはセリン、アラニン、グリシン、トレオニン、もしくはアスパラギンから選択されるアミノ酸のような非システインアミノ酸に置き換えられる。
【0137】
4.グリコシル化
ヒト適合性のグリコシル化は、組換え薬物製品における安全性および効能に関与し得る。規制当局の承認は、極めて重要な品質属性として適切なグリコシル化を証明することを条件とし得る(Zhangら、Drug Discovery Today 21(5):740~765頁(2016)を参照されたい)。N-グリカンは、アスパラギン側鎖のグリコシル化に起因することができ、ヒトと、細菌および酵母のような他の生物との間で構造が異なり得る。このように、本開示に従うフェリチンにおいて、非ヒトグリコシル化および/またはNグリカン形成を低減または除去することが望ましいであろう。一部の実施形態では、フェリチンのグリコシル化を制御することにより、特にヒトワクチン接種に使用する場合、組成物の効能および/または安全性が改善される。
【0138】
一部の実施形態では、フェリチンを、N-グリカンの形成を阻害するように変異させる。一部の実施形態では、変異したフェリチンは、その対応する野生型フェリチンと比較して低減されたグリコシル化を有する。
【0139】
一部の実施形態では、フェリチンは、表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含む。一部の実施形態では、表面に露出したアスパラギンは、H.ピロリフェリチンのN19、またはペアワイズまたは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置である。一部の実施形態では、そのようなアスパラギン、例えばH.ピロリフェリチンのN19を変異させることは、フェリチンのグリコシル化を減少させる。一部の実施形態では、変異は、アスパラギンをグルタミンに置き換える。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異を含むH.ピロリフェリチンである。配列番号201~207は、N19Q変異を含む例示的なフェリチン配列である。
【0140】
細菌または酵母において産生されたグリコシル化タンパク質に曝露された哺乳動物は、細菌または酵母における所定のタンパク質のグリコシル化パターンが、哺乳動物における同じタンパク質のグリコシル化パターンとは異なり得ることから、グリコシル化タンパク質に対する免疫応答を生じ得る。このように、いくつかのグリコシル化治療タンパク質は、細菌または酵母における産生にとって適切ではないことがあり得る。
【0141】
一部の実施形態では、アミノ酸変異によるフェリチンのグリコシル化の減少は、細菌または酵母におけるタンパク質の産生を促進する。一部の実施形態では、フェリチンのグリコシル化の減少は、細菌または酵母において発現された変異フェリチンの投与時の哺乳動物における副作用の可能性を低減させる。一部の実施形態では、細菌または酵母において産生された変異フェリチンのヒト対象における反応原性は、グリコシル化が減少していることから低い。一部の実施形態では、ヒト対象における過敏応答の発生率は、野生型フェリチンと比較して低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンによる処置後では低い。
【0142】
一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物の対象における分解は、野生型フェリチンを含む組成物、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較して遅い。一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物は、野生型フェリチン、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較して、対象において低減され
たクリアランスを有する。一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物は、野生型フェリチン、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較してより長い血清中半減期を有する。
【0143】
5.変異の組合せ
一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に記載される変異の1つより多くのタイプを含む。一部の実施形態では、フェリチンは、グリコシル化を減少させる変異、内部システインを除去する変異、および表面に露出したシステインを生成する変異から独立して選択される1つまたはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、グリコシル化を減少させる変異、内部システインを除去する変異、および表面に露出したシステインを生成する変異を含む。
【0144】
一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、および表面に露出したシステインを生成する変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびE12C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS72C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびA75C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびK79C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS100C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS111C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、前述の変異の組のいずれかに対応する変異を含み、対応する変異は、フェリチンアミノ酸配列とH.ピロリフェリチンアミノ酸配列(配列番号208または209)とのペアワイズアライメントによって決定した位置で、NをQに、CをSに、および非システインの表面に露出したアミノ酸をシステインに変化させる。
【0145】
1つより多くのタイプの変異を含む例示的なフェリチンを、配列番号201~207に提供する。
【0146】
6.構造アライメント
本明細書で考察したように、所定のポリペプチド(例えば、H.ピロリフェリチン)に関して記載した変異に対応する変異の位置は、ペアワイズまたは構造アライメントによって同定することができる。構造アライメントは、タンパク質がかなりの配列変動にも関わらず類似の構造を共有し、ファミリーの多くのメンバーが構造的に特徴付けされている、フェリチンのような大きいタンパク質ファミリーにとって適切であり、これもまた、EBVポリペプチド(例えば、gL、gH、gp220、またはgp42)のような、本明細書に記載される他のポリペプチドの異なる形態における対応する位置を同定するために使用することができる。タンパク質データバンク(PDB)は、その受託番号と共に以下に列挙するフェリチンを含む、多くのフェリチンに関する3D構造を含む。
【0147】
2jd6,2jd7-PfFR-ピュロコックス・フリオスス。2jd8-PfFR+Zn。3a68-遺伝子SferH4由来のsoFR-ダイズ。3a9q-遺伝子SferH4(変異体)由来のsoFR。3egm,3bvf,3bvi,3bvk,3bvl-HpFR-ヘリコバクター・ピロリ。5c6f-HpFR(変異体)+Fe。1z4a,1vlg-FR-テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritime)。1s3q,1sq3,3kx9-FR-アルカエオグロブス・フルギダス(Archaeoglubus fulgidus),1krq-FR-カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)。1eum-EcFR-大腸菌(Escherichia coli)。4reu-EcFR+Fe。4xgs-EcFR(変異体)+Fe2O2。4ztt-EcFR(変異体)+Fe2O+Fe2+Fe+O2
。1qgh-LiFR-リステリア・イノキュア(Listeria innocua)。3qz3-VcFR-ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)。3vnx-FR-アナアオサ(Ulva pertusa)。4ism,4isp,4itt,4itw,4iwj,4iwk,4ixk,3e6s-PnmFR-プセウドニッチア(Pseudo-nitschia multiseries)。4zkh,4zkw,4zkx,4zl5,4zl6,4zlw,4zmc-PnmFR(変異体)+Fe。1z6o-FR-イラクサギンウワバ。4cmy-FR+Fe-緑色硫黄細菌(Chlorobaculum tepidum)。フェリチン軽鎖(FTL)。1lb3,1h96-mFTL-マウス。1rcc,1rcd,1rci-bFTL+タルトレート+Mg。1rce,1rcg-bFTL+タルトレート+Mn。3noz,3np0,3np2,3o7r-hoFTL(変異体)-ウマ。3o7s,3u90-hoFTL。4v1w-hoFTL-cryo EM。3rav,3rd0-hoFTL+バルビツレート。フェリチン軽鎖+重鎖:5gn8-hFTH+Ca。
【0148】
構造アライメントは、(i)第2の配列の公知の構造を使用して第1の配列の構造をモデリングする工程、または(ii)両方が公知である第1および第2の配列の構造を比較する工程、ならびに第2の配列における目的の残基に最も類似に位置する第1の配列中の残基を同定する工程によって、2つ(またはそれより多く)のポリペプチド配列を超えて対応する残基を同定する工程を伴う。対応する残基は、重ねた構造におけるアルファ炭素の距離の最小化(例えば、どの組のアルファ炭素対がアライメントに関する最小平均二乗偏差を提供するか)に基づいて一部のアルゴリズムにおいて同定される。H.ピロリフェリチンに関して記載された位置に対応する非H.ピロリフェリチンにおける位置を同定する場合、H.ピロリフェリチンは、「第2の」配列であり得る。目的の非H.ピロリフェリチンが利用可能な公知の構造を有しないが、公知の構造を有する別の非H.ピロリフェリチンに、H.ピロリフェリチンより密接に関連する場合、密接に関連する非H.ピロリフェリチンの公知の構造を使用して目的の非H.ピロリフェリチンをモデリングし、次にそのモデルをH.ピロリフェリチン構造と比較して、目的のフェリチンにおける所望の対応する残基を同定することが最も有効であり得る。構造モデリングおよびアライメントに関して広範囲の文献が存在し、代表的な開示には、米国特許第6859736号;米国特許第8738343号;およびAslamら、Electronic Journal of Biotechnology 20(2016)9~13頁において引用される開示が挙げられる。公知の関連する構造または複数の構造に基づく構造のモデリングの考察に関して、例えば、Bordoliら、Nature Protocols 4(2009)1~13頁、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0149】
7.ルマジンシンターゼ
一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドはルマジンシンターゼタンパク質を含む。ルマジンシンターゼは高次構造、例えば60サブユニットのルマジンシンターゼ粒子を形成し得る。例示的なルマジンシンターゼはアクイフェックス・エオリクス(Aquifex
aeolicus)ルマジンシンターゼ(配列番号40)および大腸菌(E.coli)ルマジンシンターゼ(配列番号41)である。一部の実施形態では、ルマジンシンターゼは配列番号40または41の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する。ルマジンシンターゼはEBVポリペプチドに対してC末端側に位置することができ、本明細書で論じるようにリンカーによってEBVポリペプチドから隔てることができる。
【0150】
G.起こり得る酸化、脱アミド化、またはイソアスパルテート形成部位を除去するためのgL、gH、gp42、リンカー、および/またはフェリチンの配列における変異
一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、以下の表1で説明する例示的な変異のような起こり得る酸化、脱アミド化、またはイソアスパルテート形成部位を除去する
ための1つまたはそれ以上の変異を含む。
【0151】
例えば、一部の実施形態では、gL配列は、起こり得るスクシンイミド/イソアスパルテートまたは脱アミド化部位を除去するための1つまたはそれ以上の変異を含む。例えば、gL配列は、配列番号227の36位に対応する位置にGからAへの変異、配列番号227の47位に対応する位置にNからQへの変異、または配列番号227の105位に対応する位置にNからQへの変異を含み得る。デフォルトパラメータを用いるSmith-Watermanアルゴリズムのような標準的な配列アライメントアルゴリズムに従ってその位置に整列すれば、アミノ酸配列における位置は配列番号227における所与の位置に「対応」する。
【0152】
一部の実施形態では、リンカーは起こり得る脱アミド化部位を除去するための1つまたはそれ以上の変異を含む。例えば、リンカー配列は配列番号227の132位または141位に対応する位置にNからGへの変異を含み得る。
【0153】
一部の実施形態では、gH配列は起こり得るスクシンイミド/イソアスパルテートまたは酸化部位を除去するための1つまたはそれ以上の変異を含む。例えば、gH配列は配列番号227の189位、401位、または729位に対応する位置にMからLへの変異、配列番号227の368位に対応する位置にDからEへの変異、配列番号227の499位または639位に対応する位置にMからIへの変異、または配列番号227の653位に対応する位置にNかQへの変異を含み得る。
【0154】
一部の実施形態では、gp42配列は起こり得る脱アミド化部位を除去するための1つまたはそれ以上の変異を含む。例えば、gp42配列は配列番号227の959位または990位に対応する位置にNからQへの変異、または配列番号227の988位に対応する位置にNからSへの変異を含み得る。
【0155】
一部の実施形態では、フェリチン配列は起こり得る脱アミド化、酸化、またはイソアスパルテート形成部位を除去するための1つまたはそれ以上の変異を含む。例えば、フェリチン配列は配列番号227の1150位に対応する位置にQからSへの変異、配列番号227の1168位に対応する位置にMからIへの変異、配列番号227の1177位に対応する位置にMからLへの変異、配列番号227の1188位に対応する位置にGからAへの変異、または配列番号227の1253位もしくは1296位に対応する位置にNからQへの変異を含み得る。
【0156】
例示的な変異を下の表1に示す。位置の番号付けは配列番号227に対応する。
【0157】
【0158】
H.免疫刺激性部分;アジュバント;コンジュゲートされたEBVポリペプチド
一部の実施形態では、EBVポリペプチドおよび/またはアジュバントのような免疫刺
激性部分は、表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、表面に露出したアミノ酸は、例えば上記で考察した変異に起因するシステインである。一部の実施形態では、表面に露出したアミノ酸は、リシン、アスパルテート、またはグルタメートである。グルタルアルデヒド(リシンをアミノ担持リンカーまたは部分にコンジュゲートするため)またはカルボジイミド(例えば、アスパルテートもしくはグルタメートをアミノ担持リンカーもしくは部分にコンジュゲートするための、またはリシンをカルボキシル担持リンカーもしくは部分にコンジュゲートするための、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリン-4-イル-エチル)カルボジイミド、または1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド(EDC;EDAC))を使用するコンジュゲーション手順は、例えばwww.springer.com.から入手可能な、Chapter 4 of Holtzhauer,M.,Basic Methods for the
Biochemical Lab,Springer 2006,ISBN 978-3-540-32785-1に記載されている。
【0159】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分は、フェリチンの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、アジュバントのような1つより多くの免疫刺激性部分が、フェリチンの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、24個の免疫刺激性部分が、フェリチン多量体または粒子(例えば、H.ピロリフェリチン粒子における各々の単量体の1つの部分)に結合する。複数の免疫刺激性部分がフェリチンナノ粒子に結合した一部の実施形態では、免疫刺激性部分は全て同一である。複数の免疫刺激性部分がフェリチンナノ粒子に結合した一部の実施形態では、免疫刺激性部分は全て同一ではない。
【0160】
1.免疫刺激性部分のタイプ;アジュバント
表面に露出したアミノ酸(例えば、システイン)に結合することができる免疫刺激性部分を、本開示に従ってフェリチンにおいて使用することができる。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、B細胞アゴニストである。
【0161】
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、疎水性ではない。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は親水性である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、極性である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、水素結合またはイオン結合することが可能であり、例えば水素結合ドナー、水素結合アクセプター、カチオン性部分またはアニオン性部分を含む。部分が、pH 6、7、7.4、または8のような生理的に関連するpHで、水溶液中でイオン化される場合、部分はカチオン性またはアニオン性であると考えられる。
【0162】
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、アジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む。一部の実施形態では、アジュバントは、toll-like受容体(TLR)アゴニストまたはインターフェロン遺伝子(STING)アゴニストの刺激剤である。一部の実施形態では、アジュバントはBおよび/またはT細胞におけるTLRシグナル伝達を活性化する。一部の実施形態では、アジュバントは、適応免疫応答を調節する。
【0163】
a)TLR2アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0164】
一部の実施形態では、TLR2アゴニストは、PAM2CSK4、FSL-1、またはPAM3CSK4である。
【0165】
b)TLR7/8アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8アゴニスト(すなわち、TLR7およびTLR8の少なくとも1つのアゴニスト)である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0166】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、一本鎖(ssRNA)である。一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、イミダゾキノリンである。一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、ヌクレオシドアナログである。
【0167】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、3M-012(3M Pharmaceuticals)のようなイミダゾキノリンアミンToll-like受容体(TLR)アゴニストである。遊離の3M-012の構造は:
【化1】
である。3M-012または本明細書で考察する任意の部分のような免疫刺激性部分は、この部分の適切な末端原子(例えば、水素)を、例えば表面に露出したシステインの硫黄での本明細書に記載されるフェリチンとの結合に置換することによって、またはそのような硫黄に結合するリンカーによってフェリチンにコンジュゲートすることができると理解される。このように、フェリチンにコンジュゲートする場合、免疫刺激性部分の構造は、遊離の分子の構造とはわずかに異なる。
【0168】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、SM7/8aである。遊離のSM7/8aの構造は:
【化2】
である。
【0169】
例えば、Nat Biotechnol.2015 Nov;33(11):1201
~10頁.doi:10.1038/nbt.3371を参照されたい。
【0170】
c)TLR9アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0171】
一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、非メチル化CpG ODNである。一部の実施形態では、CpG ODNは、通常のDNAにおいて見出される天然のホスホジエステル(PO)骨格の代わりに、部分的または完全なホスホロチオエート(PS)骨格を含む。
【0172】
一部の実施形態では、CpG ODNは、クラスB ODNであり、これは5’プリン(Pu)-ピリミジン(Py)-C-G-Py-Pu3’を含む1つまたはそれ以上の6量体CpGモチーフを含み;十分にホスホロチオエート化された(すなわち、PS改変された)骨格を有し;18~28ヌクレオチド長を有する。一部の実施形態では、CpG ODNは、配列番号210の配列を含み、場合により、骨格にホスホロチオエート結合を含む。
【0173】
一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、免疫刺激性配列(ISS)を含む。一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、ISS-1018(Dynavax)(配列番号210)である。
【0174】
d)STINGアゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STING(インターフェロン遺伝子タンパク質刺激因子、小胞体IFN刺激因子とも呼ばれる)アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGシグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGの合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGシグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0175】
一部の実施形態では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)である。例えば、Danilchankaら、Cell 154:962~970頁(2013)を参照されたい。例示的なCDNは、cdA、cdG、cAMP-cGMP、および2’-5’,3’-5’cGAMPを含む(構造に関しては、Danilchankaら、を参照されたい)。STINGアゴニストはまた、DMXAAのような合成アゴニストも含む。
【化3】
【0176】
2.コンジュゲートされたEBVポリペプチド
一部の実施形態では、EBVポリペプチドは、フェリチンの表面に露出したアミノ酸にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、EBVポリペプチドは、フェリチンタンパク質を抗原性にする。一部の実施形態では、EBVポリペプチドは、単独で抗原性であるが、一部の実施形態では、EBVポリペプチドは、フェリチンとのその会合のために抗原性である。一部の実施形態では、EBVポリペプチドは、本明細書に記載されるEBVポリペプチドのいずれか1つである。
【0177】
3.コンジュゲーション
一部の実施形態では、表面に露出したシステイン(例えば、本明細書に記載される変異に起因する)、またはフェリチン(例えば、フェリチンのN末端)に結合したペプチドリンカー中のシステインを使用して、アジュバントのような免疫刺激性部分またはEBVポリペプチドを、フェリチンにコンジュゲートする。一部の実施形態では、リンカーは、そのようなシステインにコンジュゲートされ、リンカーを次に、アジュバントのような免疫刺激性部分、またはEBVポリペプチドにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、そのようなシステインは、アジュバント、リンカー、またはEBVポリペプチドを結合させるコンジュゲーション反応のための化学ハンドルを作製する。一部の実施形態では、バイオコンジュゲートが産生され、アジュバントのような免疫刺激性部分またはEBVポリペプチドは、そのようなシステインの還元後にフェリチンに連結される。一部の実施形態では、システインは、表面に露出した不対システイン、すなわちジスルフィド結合を形成するための適切な位置にパートナーシステインを欠如するシステインである。一部の実施形態では、システインは、遊離のチオール側鎖を含む不対システインである。
【0178】
a)コンジュゲーションケミストリーのタイプ
任意のタイプのケミストリーを使用して、例えばシステインまたはLys、Glu、もしくはAspのような別のアミノ酸のような表面に露出したアミノ酸の反応を介して、アジュバントのような免疫刺激性部分またはEBVポリペプチドをフェリチンにコンジュゲートすることができる。
【0179】
一部の実施形態では、コンジュゲーションは、クリックケミストリーを使用して実施される。本明細書で使用される場合、「クリックケミストリー」は、互いに急速かつ選択的に反応する(すなわち、「クリックする」)1対の官能基間での反応を指す。一部の実施形態では、クリックケミストリーは、緩和な水性条件下で実施することができる。一部の実施形態では、クリックケミストリー反応は、表面に露出したアミノ酸の変異に起因するシステインのようなフェリチンの表面上のシステインを利用し、システインと反応することができる官能基を使用してクリックケミストリーを実施する。
【0180】
クリックケミストリーの基準を満たす多様な反応が、当技術分野で公知であり、当業者は、複数の公表された方法論のいずれかを使用することができる(例えば、Heinら、Pharm Res 25(10):2216~2230頁(2008)を参照されたい)。クリックケミストリーに関してSigma Aldrich、Jena Bioscience、またはLumiprobeの試薬のような広範囲の市販の試薬を使用することができる。一部の実施形態では、コンジュゲーションは、以下の実施例に記載されるようにクリックケミストリーを使用して実施される。
【0181】
一部の実施形態では、クリックケミストリーは、フェリチンの還元後に起こる。
【0182】
一部の実施形態では、クリックケミストリーは、1ステップクリック反応であり得る。一部の実施形態では、クリックケミストリーは、2ステップクリック反応であり得る。
【0183】
一部の実施形態では、反応は、金属フリーのクリックケミストリーを含む。一部の実施形態では、反応は、チオール-マレイミドおよび/またはジスルフィド交換を含む。
【0184】
金属フリークリックケミストリー
金属フリークリックケミストリーは、タンパク質の起こり得る酸化を回避するためにコンジュゲーション反応に関して使用することができる。金属フリークリックケミストリーは、抗体コンジュゲートを形成するために使用されている(van Geelら、Bioconjugate Chem.2015,26,2233~2242頁を参照されたい)。
【0185】
一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、アジュバントをフェリチンに結合させる反応において使用される。一部の実施形態では、アジュバントをフェリチンに結合させる反応において銅フリーコンジュゲーションを使用する。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)を使用する。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、ジベンゾアザシクロオクチン(DBCO)を使用する。一部の実施形態では、BCNまたはDBCOは、アジド基と反応する。
【0186】
DBCOは、触媒の非存在下での歪み促進型クリック反応を介してアジド基に対して高い特異性を有し、高収率の安定なトリアゾールをもたらす。一部の実施形態では、DBCOは、銅触媒の非存在下でアジドと反応する。
【0187】
一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、1ステップクリック反応において使用される。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、2ステップクリック反応において使用される。
【0188】
チオール-マレイミドおよびジスルフィド交換
本明細書で使用されるフェリチンは、スルフヒドリルとしても知られるチオールを含むシステインを含むことができ、これはスルフヒドリル反応性化学基との反応に関して利用可能である(または還元を通して利用可能となり得る)。このように、システインは、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンに付加するための化学選択的改変を可能にする。塩基性条件下では、システインは、脱プロトン化されて、チオレート求核試薬を生成し、これはマレイミドおよびヨードアセトアミドのような弱い求電子試薬と反応することができる。システインとマレイミドまたはヨードアセトアミドとの反応は、炭素-硫黄結合をもたらす。
【0189】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、表面に露出したシステインまたはフェリチンのリンカー中のシステインと反応する。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ハロアセチル、マレイミド、アジリジン、アクリロイル、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、またはTNB-チオールである。
【0190】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、アルキル化によってシステインのスルフヒドリルにコンジュゲートする(すなわち、チオエーテル結合の形成)。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ジスルフィド交換によってシステインのスルフヒドリルにコンジュゲートする(すなわち、ジスルフィド結合の形成)。
【0191】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンにコンジュゲートする反応は、チオール-マレイミド反応である。
【0192】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、マレイミドである。一部の実施形態では、マレイミドとシステインとの反応は、例えば可逆的ではない安定なチオエステル結合の形成をもたらす。一部の実施形態では、マレイミドは、フェリチン中のチロシン、ヒスチジン、またはメチオニンとは反応しない。一部の実施形態では、非反応マレイミドは、遊離のチオールを例えば過剰に添加することによって、反応終了時にクエンチされる。
【0193】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンにコンジュゲートする反応は、ジスルフィド相互交換としても知られるチオール-ジスルフィド交換である。一部の実施形態では、反応は、当初のジスルフィドの一部を含む混合ジスルフィドの形成を伴う。一部の実施形態では、当初のジスルフィドは、表面に露出したアミノ酸の変異またはN末端リンカーの付加によってフェリチンに導入されたシステインである。
【0194】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ピリジルジチオールである。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、TNB-チオール基である。
【0195】
b)リンカー
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分、またはEBVポリペプチドは、システインのような表面に露出したアミノ酸に共有結合したリンカーを介してフェリチンに結合する。一部の実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール、例えば、PEGリンカーを含む。一部の実施形態では、ポリエチレングリコール(例えば、PEG)リンカーは、アジュバントのような免疫刺激性部分に連結したフェリチンの水溶性およびライゲーション効率を増加させる。PEGリンカーは、2~18PEG長の間、例えば、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、およびPEG18である。
【0196】
一部の実施形態では、リンカーは、マレイミドを含む。一部の実施形態では、リンカーは、免疫刺激性部分(ISM)-リンカー-マレイミドの構成要素を含む。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドは、マレイミドとフェリチンのシステインとの反応によって1ステップクリックケミストリーにおいてフェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバント-リンカー-マレイミドのISMは、SM7/8aである。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドのリンカーはPEG4である。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドは、SM7/8a-PEG4-マレイミドである。
【0197】
一部の実施形態では、2ステップクリックケミストリープロトコルを、1つの末端でスルフヒドリル反応性化学基および他方の末端でアミン反応基を含むリンカーと共に使用する。そのような2ステップクリックケミストリープロトコルでは、スルフヒドリル反応性化学基は、フェリチンのシステインと反応するが、アミン反応基はISMに結合した試薬と反応する。このようにして、ISMは、1組の2クリックケミストリー試薬の組を介してフェリチンにコンジュゲートされる。
【0198】
2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基はマレイミドである。2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、マレイミドは、表面に露出したアミノ酸の変異またはN末端リンカーの付加によってフェリチンに導入されたシステインと反応する。
【0199】
2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、アミン反応基はDBCOである。2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、DB
COは、ISMに結合したアジド基と反応する。
【0200】
一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-DBCOを使用する。一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-DBCOは、フェリチンの還元後、フェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-試薬は、第1のステップでマレイミドとフェリチンのシステインとの反応によってフェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、DBCOを使用してアジドに結合したISMに連結する。一部の実施形態では、アジドに連結したISMは、ISS-1018である。一部の実施形態では、アジドにカップリングしたアジュバントは、3M-012またはCpGである。
【0201】
一部の実施形態では、反応基を有するリンカーをISMに付加する。一部の実施形態では、リンカーは、PEG4-アジドリンカー、またはPEG4-マレイミドリンカーである。
【0202】
一部の実施形態では、PEG4-アジドリンカーは、3M-012にコンジュゲートされる。PEG4-アジドリンカーにコンジュゲートされた3M-012の例示的な構造は:
【化4】
である。
【0203】
一部の実施形態では、PEG4-アジドリンカーは、SM7/8aにコンジュゲートされる。PEG4-アジドリンカーにコンジュゲートされたSM7/8aの例示的な構造は:
【化5】
である。
【0204】
一部の実施形態では、PEG4-マレイミドリンカーは、SM7/8aにコンジュゲートされる。PEG4-マレイミドリンカーにコンジュゲートされたSM7/8aの例示的な構造は:
【化6】
である。
【0205】
一部の実施形態では、アジド基は、ISS-1018にコンジュゲートされる。NHSエステル-アジドリンカーにコンジュゲートされたISS-1018の例示的な構造は:
【化7】
である。
【0206】
I.例示的な組成物、キット、核酸、使用、および方法
一部の実施形態では、本発明は、EBVによる感染に対して対象を免疫する方法を提供する。本発明は、対象におけるEBVに対する免疫応答を誘発する方法をさらに提供する。一部の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載される医薬組成物の有効量を対象に投与する工程を含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載される抗原性EBVポリペプチドまたはナノ粒子の有効量を対象に投与する工程を含む。
【0207】
一部の実施形態では、本明細書に記載した抗原性EBVポリペプチドおよび薬学的に許容されるビヒクル、アジュバント、または賦形剤のいずれか1つまたはそれ以上を含む組成物が提供される。
【0208】
一部の実施形態では、EBVによって惹起される感染に対して免疫するために、ヒトまたは以下に論じる対象のいずれかのような対象に、本明細書に記載した抗原性EBVポリ
ペプチド、ナノ粒子、または組成物が投与される。一部の実施形態では、EBVによる将来の感染に対する保護的免疫応答を生成するために、ヒトのような対象に、本明細書に記載した抗原性EBVポリペプチドまたはナノ粒子が投与される。一部の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドが投与される。一部の実施形態では、EBVポリペプチドおよびフェリチンを含む抗原性EBVポリペプチドが投与され、フェリチンは本明細書に記載した1つまたはそれ以上の変異を有し得る。一部の実施形態では、配列番号1~27のうちいずれか1つを含む抗原性EBVポリペプチドまたはナノ粒子が投与される。
【0209】
一部の実施形態では、保護的免疫応答は、入院の発生率を減少させる。一部の実施形態では、保護的免疫応答は、EBV感染症、単核球症、単核球症によって引き起こされる合併症(例えば、肝炎、脳炎、重度の溶血性貧血、または脾腫)、鼻咽頭がん、胃がん、またはBリンパ腫(バーキットまたはホジキンリンパ腫を含む)の発生率を減少させる。
【0210】
一部の実施形態では、組成物は1つの抗原性EBVポリペプチドを含む(例えば一価組成物)。一部の実施形態では、組成物はgHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物はgLポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物はgp220ポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドを含む。
【0211】
一部の実施形態では、組成物は2つ以上の抗原性EBVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物はEBVによってコードされる2つ以上のポリペプチドを含む1つまたはそれ以上の抗原性EBVポリペプチドを含む(すなわち多価組成物)。一部の実施形態では、EBVワクチンはgp220ポリペプチドを含むナノ粒子、および別にgHおよびgLポリペプチドを含むナノ粒子を含む。
【0212】
一部の実施形態では、EBVによって惹起される感染に対する免疫における使用のために、本明細書に記載した抗原性EBVポリペプチド、ナノ粒子、または組成物のいずれの1つまたはそれ以上が提供される。一部の実施形態では、EBVによる将来の感染に対する保護的免疫応答の生成における使用のために、本明細書に記載したポリペプチド、ナノ粒子、または組成物のいずれの1つまたはそれ以上が提供される。
【0213】
1.対象
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0214】
一部の実施形態では、対象は成人(年齢18歳より上または18歳に等しい)である。一部の実施形態では、対象は小児または青年(年齢18歳未満)である。一部の実施形態では、対象は高齢者(年齢60歳より上)である。一部の実施形態では、対象は、非高齢成人(年齢18歳より上またはそれに等しく、年齢60歳未満またはそれに等しい)である。
【0215】
一部の実施形態では、組成物は意図した投与経路のために好適に処方される。好適な投与経路の例には、筋肉内、経皮、皮下、鼻内、経口、または経真皮が含まれる。
【0216】
一部の実施形態では、組成物の1回より多くの投与を対象に投与する。一部の実施形態では、ブースター投与は免疫応答を改善する。
【0217】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の1つまたはそれ以上は、霊長類(例えば、サル(例えば、アカゲザルまたはカニクイザルのようなマカク)または類人猿のような非ヒト霊長類)、齧歯類(例えば、マウスまたはラット
)、または家畜哺乳動物(例えば、イヌ、ウサギ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ラクダ、またはロバ)のような哺乳動物において使用するためである。
【0218】
2.アジュバント
アジュバントは本明細書に記載した抗原性EBVポリペプチドおよび/またはナノ粒子とともに対象に投与してよく、そのような組成物の投与によって、アジュバントなしにEBVポリペプチドを投与した場合と比較して、EBVポリペプチドに対するより高い力価の抗体を対象に生成することができる。アジュバントはEBVポリペプチドに対して、より早期の、より強力な、またはより持続する免疫応答を促進することができる。
【0219】
一部の実施形態では、組成物は、1つのアジュバントを含む。一部の実施形態では、組成物は1つより多くのアジュバントを含む。一部の実施形態では、組成物は、アジュバントを含まない。
【0220】
一部の実施形態では、アジュバントはアルミニウムを含む。一部の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。一部の実施形態では、アジュバントはミョウバン(Alyhydrogel’85 2%;Brenntag-カタログ番号21645-51-2)である。
【0221】
一部の実施形態では、アジュバントは有機アジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは油基剤のアジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは水中油型ナノ乳剤を含む。
【0222】
一部の実施形態では、アジュバントはスクアレンを含む。一部の実施形態では、スクアレンを含むアジュバントは、Ribi(Sigma adjuvant systemカタログ番号S6322-1vl)、Addavax(商標)MF59、AS03、またはAF03(米国特許第9703095号を参照されたい)である。一部の実施形態では、スクアレンを含むアジュバントは、ナノ乳剤である。
【0223】
一部の実施形態では、アジュバントは、ポリアクリル酸ポリマー(PAA)を含む。一部の実施形態では、PAAを含むアジュバントはSPA09である(WO2017218819を参照されたい)。
【0224】
一部の実施形態では、アジュバントは非代謝性油を含む。一部の実施形態では、アジュバントは、フロイント不完全アジュバント(IFA)を含む。
【0225】
一部の実施形態では、アジュバントは、非代謝性油および結核死菌(Mycobacterium tuberculosis)を含む。一部の実施形態では、アジュバントはフロイント完全アジュバント(CFA)である。
【0226】
一部の実施形態では、アジュバントは、リポ多糖類である。一部の実施形態では、アジュバントは、モノホスホリルA(MPLまたはMPLA)である。
【0227】
3.医薬組成物
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗原性EBVポリペプチドおよび/または関連する実体を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、病原体に対して保護的免疫応答のような免疫応答を誘発することが可能な免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。
【0228】
例えば、一部の実施形態では、薬学的組成物は以下の1つまたはそれ以上を含んでよい
。(1)EBVポリペプチドおよび表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含むフェリチンを含む抗原性EBVポリペプチド、(2)EBVポリペプチドならびに表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異およびシステインに連結された抗原刺激性部分を含むフェリチンを含む抗原性EBVポリペプチド、(3)EBVポリペプチドおよび(i)表面に露出したシステイン、(ii)フェリチンタンパク質に対してN末端側のペプチドリンカーを含むフェリチンを含み、EBVポリペプチドがペプチドリンカーに対してN末端側にある、抗原性EBVポリペプチド、(4)EBVポリペプチドおよび(i)表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異およびシステインに連結された免疫刺激性部分、(ii)H.ピロリフェリチンの31位における内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの31位と類似の位置における内部システインの非システインアミノ酸への変異、ならびに(iii)表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含むフェリチンを含む抗原性EBVポリペプチド、または(5)上記のポリペプチドのいずれかを含むフェリチン粒子。一部の実施形態では、薬学的組成物は抗原性EBV gL/gHポリペプチドを含んでよく、例えばポリペプチドはgLおよびgHのポリペプチド配列の間に少なくとも15アミノ酸のリンカーを含む。
【0229】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに関連する抗体または他の作用物質を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに結合するおよび/またはそれと競合する抗体を含む。あるいは、抗体は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドの非フェリチンポリペプチド構成要素を含むウイルス粒子または細菌を認識し得る。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、単独で、または免疫応答を増強するための1つもしくはそれ以上の作用物質、例えば本明細書に記載されるアジュバントと組み合わせて投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、上記のアジュバントをさらに含む。
【0231】
一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「担体」は、それと共に医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。例示的な実施形態では、担体は、滅菌液体、例えば水、および石油、動物、植物、または合成起源の油を含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等を含み得る。一部の実施形態では、担体は、1つまたはそれ以上の固体構成要素であるか、またはそれらを含む。薬学的に許容される担体はまた、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびその組合せを含み得るがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、賦形剤は、例えば所望のコンシステンシーまたは安定化効果を提供するまたはそれに関与するように医薬組成物に含めることができる任意の非治療剤である。適した薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等を含むがこれらに限定されない。様々な実施形態では、医薬組成物は無菌的である。
【0232】
一部の実施形態では、医薬組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、安定化剤、緩衝剤、または保存剤のような任意の多様な添加剤を含み得る。加えて、補助剤、安定化剤、濃化剤、潤滑剤、および着色剤を含めることができる。
【0233】
様々な実施形態では、医薬組成物は、任意の所望の投与様式に適合するように製剤化す
ることができる。例えば、医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、滴剤、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体を含有するカプセル、ゼラチンカプセル、散剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、噴霧剤、懸濁剤、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、乾燥粉末の形態、または使用するために適した他の任意の形態をとることができる。薬剤の製剤化および製造における一般的検討は、例えば参照によって本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に見出すことができる。
【0234】
医薬組成物は、任意の投与経路を介して投与することができる。投与経路は、例えば経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、粘膜、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸内、気管内点滴、気管支点滴、吸入、または局所投与経路を含む。投与は局所または全身であり得る。一部の実施形態では、投与は経口で実施される。別の実施形態では、投与は非経口注射による。一部の例では、投与は、本明細書に記載される抗原性フェリチンポリペプチドの血流への放出をもたらす。投与様式は、医師の裁量に委ねることができる。
【0235】
一部の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下)にとって適している。そのような組成物は、例えば、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤等として製剤化することができる。それらは、使用直前に滅菌注射可能媒体に溶解または懸濁することができる滅菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造してもよい。例えば、非経口投与は注射によって達成することができる。そのような実施形態では、注射剤は、通常の形態、すなわち液体溶液または懸濁液、注射前に液体中の溶液または懸濁液にとって適した固体形態、または乳剤として調製される。一部の実施形態では、注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、凍結乾燥粉末、または顆粒から調製される。
【0236】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、吸入(例えば、肺および呼吸器への直接送達)による送達のために製剤化される。例えば、組成物は、点鼻用噴霧剤または他の任意の公知のエアロゾル製剤の形態をとり得る。一部の実施形態では、吸入用またはエアロゾル送達のための調製物は、複数の粒子を含む。一部の実施形態では、そのような調製物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、または約13ミクロンの平均粒子サイズを有し得る。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、例えば湿潤剤を含めることを通して湿潤粉末として製剤化される。一部の実施形態では、湿潤剤は、水、食塩水、または生理的pHの他の液体からなる群から選択される。
【0237】
一部の実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、鼻または口腔への滴剤として投与される。一部の実施形態では、用量は、複数の液滴(例えば、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5滴等)を含み得る。
【0238】
本発明の医薬組成物は、所望の転帰を達成するために適切な任意の用量で投与することができる。一部の実施形態では、所望の転帰は、組成物に存在する抗原性フェリチンポリペプチドに存在する非フェリチンポリペプチドの起源のような病原体に対する長期間持続する適応免疫応答の誘導である。一部の実施形態では、所望の転帰は、感染症の1つまたはそれ以上の症状の強度、重症度、頻度の低減、および/または発生の遅延である。一部の実施形態では、所望の転帰は、感染症の阻害または予防である。必要な用量は、対象の種、年齢、体重、および全身状態、予防または処置される感染の重症度、使用される特定の組成物、およびその投与様式に応じて対象毎に変化する。
【0239】
一部の実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、単回または複数回用量で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、異なる日に投与される複数回用量で投与される(例えば、プライム-ブーストワクチン接種戦略)一部の実施形態では、医薬組成物は、ブースターレジメンの一部として投与される。
【0240】
様々な実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の追加の治療剤と同時投与される。同時投与は、それらの投与時期が、追加の治療剤および医薬組成物中の活性成分の薬理活性が時間的に重複し、それによって組み合わせた治療効果を発揮する場合には、治療剤を同時に投与する必要はない。一般的に、各々の作用物質は、その作用物質に関して決定された用量および時間スケジュールで投与される。
【0241】
4.核酸/mRNA
同様に、本明細書に記載される抗原性EBVポリペプチドをコードする核酸も提供される。一部の実施形態では、核酸はmRNAである。ポリペプチドをもたらす翻訳を受けることが可能な任意の核酸は、本開示の目的に関してmRNAであると考えられる。
【0242】
5.キット
同様に本明細書において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の抗原性EBVポリペプチド、核酸、抗原性フェリチン粒子、抗原性ルマジンシンターゼ粒子、組成物、または医薬組成物を含むキットも提供される。一部の実施形態では、キットは、溶媒、溶液、緩衝剤、説明書、または乾燥剤の1つまたはそれ以上をさらに含む。
【0243】
***
【0244】
本説明および例示的な実施形態は、制限すると解釈すべきではない。本明細書および添付の特許請求の目的に関して、特に示していない限り、量、パーセンテージ、または割合を表記する全ての数値、ならびに本明細書および特許請求の範囲で使用される他の数値は、全ての例において、既にそのように修飾されていない程度に、用語「約」によって修飾されると理解される。「約」は、記載される主題の特性に実質的に影響を及ぼさない変動の程度、例えば10%、5%、2%、または1%以内の変動を示す。したがって、逆を示していない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で記載される数値パラメータは、得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、および特許請求の範囲と均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、報告された有効数字を検討する、および通常の四捨五入技術を適用することによると少なくとも解釈すべきである。
【0245】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その」、ならびに他の用語の任意の単数形での使用は、1つの指示対象に明白かつ明確に限定されていない限り、複数の指示対象を含むことに注意されたい。本明細書に使用される場合、用語「含む」およびその文法的変形形態は、非制限的であると意図され、リストにおける項目の引用は、列挙される項目に置換または追加することができる他の類似の項目の除外ではない。用語「または」は、包括的な意味で使用され、すなわち本文がそれ以外であることを示していない限り、「および/または」と等価である。
【0246】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【実施例0247】
以下の実施例は開示した特定の実施形態を説明するために提供され、本開示の範囲を限定するものとは決して解釈すべきでない。
【0248】
1.EBVに対する抗体を誘発するための抗原性EBVポリペプチド
EBVに対する抗体を誘発する抗原性ポリペプチドを開発した。EBVのgLおよびgHのポリペプチドを一本鎖として呈示する自己集合性フェリチンナノ粒子を開発し、これらのナノ粒子のマウスにおける免疫原性を評価した。
【0249】
単量体および三量体のgL/gH構築物を発現させ、精製した。
図1Aは、クーマシーおよびウエスタンブロット(抗His)解析による、Hisタグ切断を伴いまたは伴わない一本鎖のgLおよびgHの単量体(配列番号6)を示す。
図1BにSuperose(登録商標)SECカラム上の吸光度のトレースとして、およびクーマシーによるgLおよびgHの三量体(配列番号11)の分画を、トロンビンプロテアーゼによるHisタグの切断を確認するためのウエスタンブロットとともに示す。配列番号6の構築物について、サンプルの最終濃度は1mg/mL、全体積は15mL、エンドトキシンレベルは1.48EU/mLであった。
【0250】
一本鎖gL/gHフェリチンナノ粒子(配列番号14)を発現させ、精製した。
図2A~
図2Eは、Superose(登録商標)6 SEC分画(2A)、SEC分画のクーマシー(2B)、SEC分画の抗フェリチン一次抗体によるウエスタンブロット(2C)、動的光散乱(DLS、2D)、および電子顕微鏡(2E)による精製および特徴解析を示す。
【0251】
フェリチンに融合した一本鎖EBVのgLおよびgHの例示的な構築物を
図3に示す。トール様受容体7/8アゴニスト(TLR7/8a)等の免疫刺激性部分のためのコンジュゲート部位は、フェリチン上またはリンカー上に存在することができる(例示的な配列として例えば配列番号14、19、22、20、23、および33を参照)。
【0252】
様々なリンカーを含むgL/gH三量体またはナノ粒子をマウスに注射して、免疫血清を評価した(
図4)。マウスには3週の投与間隔で、2μgの注射を2回、スクアレンエマルジョン系のアジュバントであるアジュバントAF03とともに投与した。6週目にELISAによって抗gL/gH抗体エンドポイント力価を測定した。gH_16_gLについては、ナノ粒子(配列番号10)が三量体構築物(配列番号16)より優れていた。gL_28_gHナノ粒子(配列番13)は、三量体構築物(配列番号11)と顕著に異なる性能はなかった。gL_46_gHナノ粒子(配列番号14)は、gL_46_gH三量体(配列番号12)より優れていた。
【0253】
これらのデータは、一本鎖gL/gHナノ粒子がEBVに対して強力な免疫応答を誘発し得ることを示している。
【0254】
2.gL/gHおよびgp220に対する二価の免疫
一本鎖のgL/gHナノ粒子およびgp220ナノ粒子を含む組成物を用いて、二価の免疫を実施した。gp220ナノ粒子(配列番号1)を含ませることは、上述のようにワクチン接種したマウスの血清を用いるELISA結合アッセイによって測定して、一本鎖gL/gHナノ粒子(gL-gH_C5 NP[配列番号19])によって誘発された免疫応答に対して顕著な干渉効果を有しなかった(
図5A~
図5B、それぞれ個別の希釈および結合力価における測定を示す)。同様に、一本鎖gL/gHナノ粒子と組み合わせて投与した場合、ELISAによって測定して、gp220ナノ粒子への免疫応答に対する応答において干渉は観察されなかった(
図6A~
図6B、それぞれ個別の希釈および結合
力価における測定を示す)。
【0255】
したがって、一本鎖gL/gHナノ粒子およびgp220ナノ粒子の両方による免疫は、いずれのポリペプチドに対する免疫応答も低減しなかった。
【0256】
3.フェリチンナノ粒子へのアジュバントのコンジュゲーション
次に、フェリチンナノ粒子へのアジュバントのコンジュゲーションを評価した。
図7Aに、その中のフェリチンが表面に露出したアミノ酸をコンジュゲーションのために利用可能なシステインに置き換える変異を含む構築物を図示する。
図7Bは、PEG4リンカーおよびマレイミドに連結された例示的な免疫刺激性部分(SM7/8a、TLR-7/8アゴニスト)を示す。このマレイミドはフェリチンの表面に露出したシステインにリンカー(それ自体SM7/8aに結合している)を共有結合でコンジュゲートするために用いることができる。SM7/8aにコンジュゲートされたフェリチンに融合した一本鎖gL/gHポリペプチドを含むポリペプチドを、
図7Cの電子顕微鏡写真に示す。
【0257】
表面に露出したアミノ酸の変異に起因するシステインを、
図8Aのフェリチン分子の構造に図示する。CpGアジュバント(配列番号230)のフェリチンへのコンジュゲーションを、フェリチン、リンカー、およびCpGアジュバントを並置し、互いに近接して結合する各部分のパーツを示すように配向させて、
図8Bに図示する。
【0258】
gL/gHナノ粒子(配列番号19)を2mMのTCEPを用いて還元し、次いで1X
PBSの添加および100kDのミクロスピンカラムを用いてTCEPを除去することによって酸化した。次いでコンジュゲーションのためにSM7/8aをgL/gHナノ粒子とインキュベートした。過剰なSM7/8aを100kDのミクロスピンカラムによって反応から除去した。マススペクトロメトリー(MS)データより、コンジュゲートしていないポリペプチドのスペクトル(
図9A)に対する主要なMSピークのシフトに基づいて、一本鎖gL/gHおよびフェリチン(配列番号19)を含むポリペプチドの約100%がSM7/8aにコンジュゲートされた(
図9B)ことが示された。コンジュゲートされたポリペプチドとコンジュゲートされていないポリペプチドの質量の差はSM7/8a-リンカー-マレイミドアダクトの分子量(711Da)に相当する。
【0259】
gp220ナノ粒子(配列番号1)を2mMのTCEPを用いて還元し、次いで1X PBSの添加および100kDのミクロスピンカラムを用いてTCEPを除去することによって酸化した。次いでコンジュゲーションのためにSM7/8aをgL/gHナノ粒子とインキュベートした。過剰なSM7/8aを100kDのミクロスピンカラムによって反応から除去した。MSデータより、コンジュゲートしていないポリペプチドのスペクトル(
図10A)に対する主要なMSピークのシフトに基づいて、gp220およびフェリチン(配列番号1)を含むコンジュゲートされたポリペプチドの約100%がSM7/8aにコンジュゲートされている(
図10B)ことが示された。
【0260】
電子顕微鏡(EM)データからも、一本鎖gL/gHおよびフェリチンを含むポリペプチド(
図11Aにおけるコンジュゲートしていないサンプルと比較した
図11B)またはgp220およびフェリチンを含むポリペプチド(
図11Cにおけるコンジュゲートしていないサンプルと比較した
図11D)へのSM7/8aのコンジュゲーションがナノ粒子の集合を破壊しなかったことが確認された。
【0261】
一本鎖gL/gHを含むナノ粒子(gL_gH_C5 NP、
図12Aおよび
図12B)またはgp220を含むナノ粒子(
図13Aおよび
図13B)1μgで免疫した後のELISAによって抗体応答をアッセイした。ナノ粒子は裸のフェリチン1μgと組み合わせ、SM7/8aにコンジュゲートしたものとしないものであった。コンジュゲートして
いないナノ粒子は混合したAF03アジュバントとともに、またはそれなしに投与した。それぞれのマウスは上述のナノ粒子組成物100μLの投与を受けた。AF03アジュバントの投与を受けるマウスについては、体積比1:1でAF03とナノ粒子を混合した。BALB/cマウス(n=5/群)を3週の投与間隔で2回免疫した。5週目にELISA解析のために血液を採取した。最も強力なELISA応答はAF03アジュバント中で投与したナノ粒子で見られた。SM7/8aへのコンジュゲーションは、アジュバントなしのコンジュゲートしていないナノ粒子と比較してより強力なELISA応答を生じた。
【0262】
SM7/8aにコンジュゲートしたgL_gH_C5ナノ粒子およびSM7/8aにコンジュゲートしたgp220ナノ粒子それぞれ1μgの共投与の効果も、裸のフェリチンナノ粒子を伴ういずれかのナノ粒子の単独の投与と比較して、
図14A~
図14Bおよび
図15A~
図15Bで評価した。一本鎖gL/gH(
図14A~
図14B、それぞれAF03なしおよびあり)またはgp220(
図15A~
図15B、それぞれAF03なしおよびあり)のいずれに対する免疫応答に対しても干渉は観察されなかった。
【0263】
4.長期免疫原性の検討
一本鎖gL/gH(gL/gH_C5、配列番号19)を含むナノ粒子を投与した3か月後の免疫原性を評価する検討を実施した。BALB/cマウス(n=5/群)を3週の投与間隔で2回免疫した。裸のフェリチン(すなわち、いずれのポリペプチドまたはアジュバントにもコンジュゲートしていないフェリチン)1μgを一本鎖gL/gHを含むナノ粒子1μgと投与し、ナノ粒子は混合したAF03アジュバントの存在下または非存在下に処方した。13週目にELISA解析のために血液を採取した。AF03アジュバントの投与を受けるマウスについては、体積比1:1でAF03とナノ粒子組成物を混合した。それぞれのマウスは上述のナノ粒子組成物100μLの投与を受けた。数匹のマウスはその中のフェリチンがSM7/8aにコンジュゲートされた一本鎖のgL/gHを含むナノ粒子の投与を受けた(
図16~
図17における「7/8a」)。
【0264】
図16に示すように、SM7/8aにコンジュゲートした一本鎖gL/gHを含むナノ粒子は、AF03中で処方すると最大の免疫応答を生じた。これらのナノ粒子についても、AF03がない場合でも強力な免疫応答が見られた。
【0265】
一本鎖gL/gHを含むナノ粒子の代わりにgp220ナノ粒子(配列番号1)(SM7/8aへのコンジュゲーションありまたはなし)を用いて並行実験を実施した。これらのナノ粒子についても同様の結果が見られ、混合したAF03を含む処方は最も強力な応答を生じ、これらのナノ粒子についても、AF03がない場合でも強力な免疫応答が見られた(
図17)。
【0266】
一本鎖gL/gHを含むナノ粒子(gL/gH_C5、配列番号19)およびgp220を含むナノ粒子(配列番号1)を含む二価の組成物によって誘発される免疫応答を評価した。BALB/cマウス(n=5/群)を3週の投与間隔で免疫した。各ナノ粒子1μgを含むナノ粒子組成物100μLを投与した。AF03アジュバントの投与を受けるマウスについては、体積比1:1でAF03とワクチンを混合した。最終の13週目にELISA解析のために血液を採取した。一本鎖gL/gH(
図18)およびgp220(
図19)に対する免疫応答については、いずれかのナノ粒子を裸のフェリチンと組み合わせて投与した場合と比較して、組み合わせたナノ粒子の投与による干渉は見られなかった。
【0267】
gL/gH_C5ナノ粒子(配列番号19)を用いたさらなる実験により、ナノ粒子をSM7/8aにコンジュゲートした場合(7/8a)、またはナノ粒子をAF03中で処方した場合(
図21)に長期の免疫応答が見られることが確認された。BALB/cマウス(n=5/群)を3週の投与間隔で免疫した。ナノ粒子1μgを含むナノ粒子組成物1
00μLを投与した。AF03アジュバントの投与を受けるマウスについては、体積比1:1でAF03とワクチンを混合した。2週(プライム)、5週(ブースト)、および13週(最終)でELISA解析のために血液を採取した。gp220ナノ粒子(配列番号1)を用いて並行実験を実施し、gp220ナノ粒子についても同様の長期応答が見られた(
図22)。
【0268】
一本鎖gL/gHを含む様々なナノ粒子(gL_gH-C7、配列番号20)も評価した。gL_gH_C7構築物は、gHポリペプチドと、免疫刺激性部分のためのコンジュゲーション部位としてのシステインを含むフェリチンとの間の可撓性のリンカーを含む。リンカーは表面に露出したシステインを含まないフェリチンとともに用いてもよい(配列番号20に示すように)。SM7/8aは2mMのTCEPを用いてこのタンパク質を還元し、次いで1X PBSの添加および100kDのミクロスピンカラムを用いてTCEPを除去することによって酸化して、gL_gH_C7にコンジュゲートした。次いでSM7/8aをgL/gHナノ粒子とともにインキュベートした。コンジュゲートの後、過剰なSM7/8aを100kDのミクロスピンカラムによって反応から除去した。
【0269】
7/8aにコンジュゲートしまたはコンジュゲートしていないこれらのgL/gHナノ粒子1μgおよび裸のフェリチン1μgをマウスに投与した。ナノ粒子1μgを含むナノ粒子組成物100μLを投与した。BALB/cマウス(n=5/群)を3週の投与間隔で免疫した。AF03アジュバントの投与を受けるマウスについては、体積比1:1でAF03とナノ粒子組成物を混合した。2週(プライム)、5週(ブースター)、および13週(最終)でELISA解析のために血液を採取した。これらのナノ粒子は、プライム採血におけるELISAエンドポイント力価によって測定して、AF03中で処方した場合またはSM7/8aにコンジュゲートした場合に、免疫応答を誘発した(
図20A)。ブースター採血(
図20C)または最終採血(
図20D)のサンプルで同様の結果が見られた。これらのナノ粒子をCpGオリゴデオキシヌクレオチドにもコンジュゲートし、同様にして投与した。CpGコンジュゲートについての結果は5週においてコンジュゲートしていないナノ粒子と同様であった(
図20B)。
【0270】
5.トリコプルシア・ニイ(Trichoplusia ni)フェリチンを含むナノ粒子の特徴解析
トリコプルシア・ニイフェリチンならびにgp220および/またはgL/gHポリペプチドを含むナノ粒子も開発した。トリコプルシア・ニイフェリチンナノ粒子は1:1の比で自己集合した重鎖および軽鎖を含む。軽鎖を有する1つの非フェリチンポリペプチドと重鎖上の別の非フェリチンポリペプチドとを組み合わせることにより、個別のナノ粒子の表面上に2つの異なったポリペプチドを提示することができることが見出された。したがって、例えば自己集合したトリコプルシア・ニイフェリチンナノ粒子は、gp220とgL/gHの両方を提示することができた。
【0271】
トリコプルシア・ニイフェリチンナノ粒子は、gp220(配列番号24)または一本鎖gL/gH(配列番号25)に融合した重鎖およびgp220(配列番号26)または一本鎖gL/gH(配列番号27)に融合した軽鎖を用いて生成し精製した(構築物を
図23Bに図示し、クーマシーゲル染色によって
図23Aに可視化している。軽鎖および重鎖の単独と比較して予想される分子量の増大を示す)。それぞれgL/gHおよびgp220に融合した軽鎖および重鎖またはその逆の組合せによって、2つの異なるEBVポリペプチドを提示することができる個別の多価ナノ粒子が産生された。
【0272】
重鎖と軽鎖の両方にgp220のみを含むもの(
図24Eに示す)または重鎖にgp220、軽鎖にgH_gLを含むもの(
図25Eに示す)の2つのT.ニイフェリチンナノ粒子も生成した。精製は2つの工程に従った。最初の精製工程はイオン交換クロマトグラ
フィー工程であった(Qカラム、
図24Aおよびクーマシー結果の
図24C、ならびに
図24Aおよびクーマシー結果の
図25Cを参照)。この工程に続いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った(
図24Bおよびクーマシー結果の
図24D、ならびに
図25Bおよびクーマシー結果の
図25Dを参照)。
【0273】
gp220に融合したトリコプルシア・ニイ軽鎖および重鎖を含むナノ粒子(配列番号24および26、
図26Bに図示)は、クーマシー染色(
図26A)、裸のT.ニイフェリチン(
図27C)と比較したDLS半径の増大(
図26D)、および裸のナノ粒子と比較してナノ粒子のコアの周囲にさらに末梢の密度が現れたEM解析(
図26C)に基づいて、異種のgp220ポリペプチドを含むナノ粒子の形成と符合するプロファイルを示した(
図27B)。配列番号24および27についても、ナノ粒子中の異種のgL/gHおよびgp220ポリペプチドの存在を示す同様の結果が見られた(トリコプルシア・ニイのgL/gHポリペプチドを含む軽鎖およびgp220ポリペプチドを含む重鎖、それぞれクーマシー染色による可視化、構築物の図示、電子顕微鏡写真、およびDLSによる特徴解析について
図26E~
図26Hを参照)。比較のため、
図27A~
図27Cに裸の(すなわち、いずれのポリペプチドにもコンジュゲートしていない)T.ニイフェリチンについてのクーマシー染色(
図27A)、DLS半径(
図27B)、およびEM解析(
図27C)を示す。
【0274】
したがって、T.ニイフェリチンを用いることにより、個別のナノ粒子の上に2つのポリペプチドを提示することが可能になる。
【0275】
6.gH/gL/gp42構築物
フェリチンに融合したgH/gL/gp42の一本鎖構築物の概略図を(配列番号227~231および241~242のそれぞれにおいて)
図35Aに示す。各タンパク質の間の融合は、可撓性のアミノ酸リンカーまたは硬いアミノ酸リンカーを介している。一本鎖gH/gL/gp42分子は、ナノ粒子上で1:1:1の比のヘテロ三量体を形成する。
【0276】
gH/gL/gp42 Hisタグ付け融合(配列番号226)の結晶構造が解明され、一本鎖gH/gL/gp42は、天然に見出される野生型のgH、gL、およびgp42タンパク質と同様のヘテロ三量体コンフォメーションをとり得ることが示された(
図34および
図35B)。
図34および
図35Bにおいて、Gp42(
図34では暗灰色矢印を示す)はgH/gLヘテロ二量体と相互作用する。
図35Cは、フェリチンに融合したこの一本鎖gH/gL/gp42ヘテロ三量体がナノ粒子上にどのように呈示されるかのモデルである。単一のナノ粒子の上に呈示される一本鎖gH/gL/gp42の24個のコピーが存在する。
【0277】
gH/gL/gp42 NP構築物(配列番号227)を293expi細胞に発現させて精製した(
図28A)。CHOプールから精製したgH/gL/gp42 NPは、約26.2nmの動的光散乱半径を有していた(
図28B)。
【0278】
一価(gH/gL/gp42 NP+裸のフェリチンナノ粒子)または二価(gH/gL/gp42 NP+gp220 NP)の組成物によって誘発された免疫応答を評価した。gH/gL/gp42 NPは配列番号227の配列を有し、gp220 NPは配列番号1の配列を有していた。BALB/cマウス(n=5/群)を3週の投与間隔で免疫した。各ナノ粒子1μgを含むナノ粒子組成物100μLをAF03アジュバント(1:1の体積比でAF03をワクチンと混合)とともに投与した。ブーストは2回目の免疫の5週後に血清を採取したことを示す。5週でマウスから採取した血清を用いて、B細胞中(
図29A)および上皮細胞中(
図29B)におけるEBVウイルス中和アッセイ解析
を行った。一価形(裸のフェリチンとgH/gL/gp42)の投与と比較して、二価処方のナノ粒子の投与による干渉は見られなかった。
【0279】
アジュバントAF03の存在下の一本鎖gL/gH/ナノ粒子(gL_gH_C137A_bfp Ferrナノ粒子N19Q/C31S/S111C[配列番号22])およびgp220ナノ粒子(配列番号1)(
図30A~
図30B)またはアジュバントAF03の存在下のgL/gH/gp42 NP(配列番号227)およびgp220ナノ粒子(配列番号1)(
図30C~
図30E)を含む組成物を用いてフェレットの二価免疫を実施した。Inj.1=注射1(Inj.1の2週後に6匹のフェレットから血清を採取)。Inj.2=注射2(Inj.2の2週後に6匹のフェレットから血清を採取)。
図30A~
図30E、
図30F~
図30Gに示す抗原に対するELISA結合アッセイで測定したエンドポイント結合力価は、アジュバントAF03の存在下のgL/gH/gp42
NP(配列番号227)およびgp220ナノ粒子(配列番号1)の二価ワクチン接種を受けたフェレットの血清の(それぞれB細胞および上皮細胞における)EBVウイルス中和アッセイを示す。プライム=Inj.1、ブースト=Inj.2。
【0280】
gH/gL/gp42 NP_C12(配列番号228)を発現して、Superose6サイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した(
図31A)。
図31Aのサンプルの動的光散乱解析により、20.6nmの粒子半径が示された(
図31B)。
【0281】
gH/gL/gp42 NP_C13(配列番号229)を発現して、Superose6サイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した(
図32A)。
図32Aのサンプルの動的光散乱解析により、17.1nmの粒子半径が示された(
図32B)。
【0282】
gH/gL/gp42 NP_C14(配列番号230)を発現して、Superose6サイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した(
図33A)。
図33Aのサンプルの動的光散乱解析により、16.9nmの粒子半径が示された(
図33B)。
【0283】
図35Dに、293Expi細胞中で発現した後の配列番号227の精製を示す。変性SDSクーマシーゲルにより、フェリチンに融合したgH/gL/gp42がグリコシル化により150kDを超えることが示される。精製した生成物の陰性染色電子顕微鏡解析により、フェリチンに融合した一本鎖gH/gL/gp42がナノ粒子を形成することに成功し、表面上にgH/gL/gp42抗原を呈示することが示される(
図35E)。0日、3日、7日、または14日における温度、酸化、および/または脱アミド化のストレス試験により、配列番号227の一本鎖gH/gL/gp42ナノ粒子の配列解析またはマススペクトロメトリーから潜在的な不安定配列が同定された。ワクチンの安定性を改善するため、様々な組合せ、特に表1に列挙した部位において、このワクチン構築物の発現および/または免疫原性、保存的なアミノ酸置換変異を配列番号227に加えることになる。特定の遺伝子のそれぞれの場所における保存的なアミノ酸置換は、gp42のC末端をフェリチン配列のN末端と融合するリンカー配列のみが配列番号227と異なる配列番号228~230においても試験することになる。
エプスタインバーウイルス(EBV) gLポリペプチドおよびEBV gHポリペプチドを含む抗原性EBVポリペプチドであって、少なくとも15アミノ酸の長さを有するリンカーが該EBV gLポリペプチドと該EBV gHポリペプチドとを隔てている、前記抗原性EBVポリペプチド。