(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179644
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】フェライト磁心、並びにそれを用いたコイル部品及び電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20231212BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20231212BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20231212BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20231212BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01F27/24 P
H01F27/24 E
H01F27/255
H01F30/10 S
H01F30/10 E
H01F30/10 F
H01F30/10 J
H01F30/10 A
H01F27/22
H01F27/28 176
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175343
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2020501054の分割
【原出願日】2019-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018030240
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】銭谷 亮治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱を考慮しつつ小型・軽量化するフェライト磁心、コイル部品及び電子部品を提供する。
【解決手段】フェライト磁心1は、柱状の中脚部40、中脚部の軸方向と直交する方向に、中脚部の両側に離間して配置された第1外脚部52及び第2外脚部53、中脚部と第1外脚部を連結する第1連結部並びに中脚部と第2外脚部を連結する第2連結部を有し、中脚部の軸方向をz軸方向、z軸と直交する第1外脚部及び第2外脚部どうしの対向方向をy軸方向、y軸及びz軸と直交する方向をx軸方向とし、各脚部の基部を下側にしてフェライト磁心をz軸方向上側から見たとき、第1外脚部のx軸方向の幅w1が第2外脚部のx軸方向の幅w2よりも大きく、第1外脚部の、中脚部の中心を通るy軸方向の直線に沿った幅d1が、第2外脚部の、中脚部の中心を通るy軸方向の直線に沿った幅d2より小さく、中脚部のx軸方向の両側面に、z軸方向に連続するくびれを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の中脚部と、
前記中脚部の軸方向と直交する方向に、前記中脚部を中心として両側に離間して配置された第1外脚部及び第2外脚部と、
前記中脚部と前記第1外脚部とをそれらの基部で連結する第1連結部と、
前記中脚部と前記第2外脚部とをそれらの基部で連結する第2連結部と
を有するフェライト磁心であって、
前記中脚部の軸方向をz軸方向、z軸と直交する前記第1外脚部及び第2外脚部どうしの対向方向をy軸方向、y軸及びz軸と直交する方向をx軸方向とし、前記各脚部の基部を下側にして前記フェライト磁心をz軸方向上側から見たとき、
前記第1外脚部のx軸方向の幅w1が前記第2外脚部のx軸方向の幅w2よりも大きく、
前記第1外脚部の、前記中脚部の中心を通るy軸方向の直線に沿った幅d1が、前記第2外脚部の、前記中脚部の中心を通るy軸方向の直線に沿った幅d2よりも小さく、
前記中脚部のx軸方向の両側面に、z軸方向に連続するくびれを備えているフェライト磁心。
【請求項2】
請求項1に記載のフェライト磁心において、
前記中脚部が円柱状であるフェライト磁心。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフェライト磁心において、
前記第1外脚部及び第2外脚部は、前記中脚部と対向する側の反対側に外側面を有し、
前記中脚部の中心軸から前記第1外脚部の外側面までの距離h1と、前記中脚部の中心軸から前記第2外脚部の外側面までの距離h2とが、h1<h2の関係にあるフェライト磁心。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のフェライト磁心において、
前記中脚部の中心軸を通るy-z平面に対して対称形であるフェライト磁心。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のフェライト磁心において、
前記第1外脚部及び第2外脚部は、前記中脚部と対向する側に円弧状の内側面を有するフェライト磁心。
【請求項6】
請求項5に記載のフェライト磁心において、
前記中脚部の中心軸を通るy軸方向の直線に沿って測定したとき、前記中脚部の中心軸から前記第1外脚部の内側面までの距離と前記中脚部の中心軸から前記第2外脚部の内側面までの距離とが同じであるフェライト磁心。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のフェライト磁心において、
前記第1外脚部の外側面が平坦な面であるフェライト磁心。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のフェライト磁心において、
z軸方向上側から見たときに、前記第1外脚部のz軸方向端面の面積S1と、前記第2外脚部のz軸方向端面の面積S2とがほぼ同じであるフェライト磁心。
【請求項9】
請求項8に記載のフェライト磁心において、
前記面積S1と前記面積S2とが、
S1×0.8≦S2≦S1×1.2
の関係を満たすフェライト磁心。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のフェライト磁心と、前記フェライト磁心の前記中脚部に配置される巻線とを備えたコイル部品。
【請求項11】
請求項10に記載のコイル部品において、
一対の前記フェライト磁心の前記中脚部を挿入しかつ巻線が巻回された胴部を備えたボビンを有するコイル部品。
【請求項12】
請求項11に記載のコイル部品において、
前記巻線の両端部は前記フェライト磁心の前記第2外脚部側に引き出されているコイル部品。
【請求項13】
請求項10~12のいずれかに記載のコイル部品を用いた電子部品であって、
前記コイル部品が、前記フェライト磁心よりも熱伝導率が高い金属製の被装着体に、前記フェライト磁心の前記第1外脚部の外側面を前記被装着体に接触又は近接させて固定された電子部品。
【請求項14】
請求項13に記載の電子部品において、
熱伝導用フィラーを含む樹脂で埋設された電子部品。
【請求項15】
請求項14に記載の電子部品において、
前記樹脂の表面は前記被装着体に接触している面を除いて露出している電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用されるフェライト磁心、並びにそれを用いたコイル部品及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年急速に普及するEV(Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の電動輸送機器の一つである電気自動車には大出力の電気モータや充電器等の機器が設けられていて、それらに用いられる電源装置には高電圧・大電流に耐えるトランス、チョーク巻線等のコイル部品及びそれを用いた電子部品が要求される。コイル部品は、巻線の抵抗損失及びフェライト磁心の磁気エネルギー損失によって発熱する。特に巻線の発熱が著しい。そのため、晒される環境最高温度よりも僅かに高い温度に安定させ、フェライト磁心が磁性を失う熱暴走を防ぐとともに、巻線自体及びコイル部品を構成する部材に熱的な損傷が生じないことが求められる。
【0003】
コイル部品の発熱の対処として、実装する基板、金属ケース等の被装着体を介して、冷却器として機能するヒートシンク、熱容量の大きなフレーム等に逃がす方法が一般的である。特開2013-131540号及び特開2015-141918号は、
図9に示すようにフェライト磁心102に放熱性部材(被装着体300)を接触させてコイル部品201の発熱を放熱することが記載されている。放熱性部材は、銅板、アルミニウム板等の熱伝導率の大きな金属部材で構成される。
【0004】
コイル部品に使用されるフェライト磁心として、所謂E型のフェライト磁心が知られている(TDK株式会社、Mn-Zn系スイッチング電源用フェライトコア、[平成30年2月15日検索]、インターネット<URL: https://product.tdk.com/info/ja/catalog/datasheet/ferrite_mz_sw_e_ja.pdf>)。E型のフェライト磁心は、
図10に示すように、長方形状の平板部160と、その平板部160の両端に突出して設けられた一対の外脚部152、153と、その間に設けられた中脚部140とを有する。E型のフェライト磁心101は平板部160の中央に立設する中脚部140の中心に対して回転対称の位置に外脚部152、153が設けられた対称形であるのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9に示すように、コイル部品201と被装着体300との接触をフェライト磁心102の平板部160の背面で行うことは接触面積を広くとれるといった点で有利である。しかしながら、巻線120の径方向や幅方向(y軸方向)の熱経路には導線を保護する絶縁体により熱的なギャップが形成されるため、巻線120の径方向や幅方向の熱伝導は、巻回する周方向よりも劣ったものとなり易い。
【0006】
また、コイル部品201は一対のフェライト磁心102,102を組み合わせてなる構成であるので、被装着体300から見て、フェライト磁心102,102間の熱経路(図中矢印で示す)に、組み合わせ面による熱伝導性を下げる熱的なギャップ210が形成される。そのため、被装着体300からy軸方向に遠い側の巻線やフェライト磁心の放熱が不十分になりやすいため、コイル部品に熱損傷が生じないように追加の対策を施すことが必要となる場合があった。
【0007】
さらに回路基板の高密度化に伴い、複数の電子部品を限られた空間内に密に配置できるように、またバッテリー消費を抑える観点からも電子部品の小型・軽量化が強く求められており、個々の電子部品は配置可能な面積が制限される傾向にある。コイル部品を小型・軽量化するためにフェライト磁心を小型化すると、発熱量が増加するとともに、放熱性部材との接触面積が減少することによって放熱性能が低下するといった問題が生じる。
【0008】
従って本発明の目的は、放熱を考慮しながらコイル部品の小型・軽量化を可能とするフェライト磁心、並びにそれを用いたコイル部品及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のフェライト磁心は、柱状の中脚部と、
前記中脚部の軸方向と直交する方向に、前記中脚部を中心として両側に離間して配置された第1外脚部及び第2外脚部と、
前記中脚部と前記第1外脚部とをそれらの基部で連結する第1連結部と、
前記中脚部と前記第2外脚部とをそれらの基部で連結する第2連結部と
を有するフェライト磁心であって、
前記中脚部の軸方向をz軸方向、z軸と直交する前記第1外脚部及び第2外脚部どうしの対向方向をy軸方向、y軸及びz軸と直交する方向をx軸方向とし、前記各脚部の基部を下側にして前記フェライト磁心をz軸方向上側から見たとき、
前記第1外脚部のx軸方向の幅w1が前記第2外脚部のx軸方向の幅w2よりも大きく、
前記第1外脚部の、前記中脚部の中心を通るy軸方向の直線に沿った幅d1が、前記第2外脚部の、前記中脚部の中心を通るy軸方向の直線に沿った幅d2よりも小さく、
前記中脚部のx軸方向の両側面に、z軸方向に連続するくびれを備えているフェライト磁心である。
【0010】
前記中脚部は円柱状であるのが好ましい。
【0011】
本発明のフェライト磁心において、前記第1外脚部及び第2外脚部は、前記中脚部と対向する側の反対側に外側面を有し、
前記中脚部の中心軸から前記第1外脚部の外側面までの距離h1と、前記中脚部の中心軸から前記第2外脚部の外側面までの距離h2とは、h1<h2の関係にあるのが好ましい。
【0012】
本発明のフェライト磁心は、前記中脚部の中心軸を通るy-z平面に対して対称形であるのが好ましい。
【0013】
本発明のフェライト磁心において、前記第1外脚部及び第2外脚部は、前記中脚部と対向する側に円弧状の内側面を有するのが好ましい。
【0014】
本発明のフェライト磁心において、前記中脚部の中心軸を通るy軸方向の直線に沿って測定したとき、前記中脚部の中心軸から前記第1外脚部の内側面までの距離と前記中脚部の中心軸から前記第2外脚部の内側面までの距離とは同じであるのが好ましい。
【0015】
本発明のフェライト磁心において、前記第1外脚部の外側面は平坦な面であるのが好ましい。
【0016】
本発明のフェライト磁心において、z軸方向上側から見たときに、前記第1外脚部のz軸方向端面の面積S1と、前記第2外脚部のz軸方向端面の面積S2とはほぼ同じであるのが好ましい。前記面積S1と前記面積S2とは、S1×0.8≦S2≦S1×1.2の関係を満たすのが好ましい。
【0017】
本発明のコイル部品は、本発明の前記フェライト磁心と、前記フェライト磁心の前記中脚部に配置される巻線とを備えたコイル部品である。
【0018】
本発明のコイル部品において、一対の前記フェライト磁心の前記中脚部を挿入しかつ巻線が巻回された胴部を備えたボビンを有するのが好ましい。
【0019】
本発明のコイル部品において、前記巻線の両端部は前記フェライト磁心の前記第2外脚部側に引き出されているのが好ましい。
【0020】
本発明の電子部品は、本発明の前記コイル部品を用いた電子部品であって、
前記コイル部品が、前記フェライト磁心よりも熱伝導率が高い金属製の被装着体に、前記フェライト磁心の前記第1外脚部の外側面を前記被装着体に接触又は近接させて固定された電子部品である。本発明の電子部品において、熱伝導用フィラーを含む樹脂で埋設されているのが好ましく、前記樹脂の表面は前記被装着体に接触している面を除いて露出しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放熱を考慮しながらコイル部品の小型・軽量化を可能とするフェライト磁心、並びにそれを用いたコイル部品及び電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフェライト磁心の構造を示す正面図である。
【
図2】
図1から寸法の記載を取り除いてフェライト磁心の構造を示す正面図である。
【
図3】
図2で示したフェライト磁心の右側面図である。
【
図4】
図2で示したフェライト磁心の背面図である。
【
図5】
図2で示したフェライト磁心の平面図である。
【
図6】
図2で示したフェライト磁心の底面図である。
【
図7】
図2で示したフェライト磁心の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るフェライト磁心を組み合わせ構成された本発明のコイル部品が被装着体の面上に配置された状態を示す斜視図である。
【
図9】被装着体の面上に配置された従来のコイル部品の斜視図である。
【
図10】従来のフェライト磁心の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るフェライト磁心、並びにそれを用いたコイル部品及び電子部品について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論可能である。また説明に使用した図面は、発明の要旨の理解が容易なように要部を主に記載し、細部については適宜省略するなどしている。本発明のフェライト磁心、コイル部品及び電子部品について、同一機能を有する部分については図面全体を通して共通した番号・記号を付与している。
【0024】
[1] フェライト磁心
図1~
図8は、本発明の一実施形態に係るフェライト磁心1の構造を示す。本発明のフェライト磁心1は、柱状の中脚部40と、前記中脚部40の軸方向と直交する方向に、前記中脚部40を中心として両側に離間して配置された第1外脚部52及び第2外脚部53と、前記中脚部40と前記第1外脚部52とをそれらの基部で連結する第1連結部61と、前記中脚部40と前記第2外脚部53とをそれらの基部で連結する第2連結部62とを有する。
【0025】
すなわち、フェライト磁心1は、一列に並んで配置された第1外脚部52、中脚部40、及び第2外脚部53が、それらの基部で第1連結部61及び第2連結部62により連結され、同一の方向に突出するように構成されている。なお、第1外脚部52と第2外脚部53とを一対の外脚部ともいう。
【0026】
中脚部40の軸方向(各脚部が突出する方向)をz軸方向、z軸と直交する第1外脚部52及び第2外脚部53どうしの対向方向をy軸方向、y軸及びz軸と直交する方向をx軸方向とし、各脚部(中脚部40、第1外脚部52及び第2外脚部53)の基部を下側にしてフェライト磁心1をz軸方向上側から見たとき、第1外脚部52及び第2外脚部53は、x軸方向の幅が異なるとともに、中脚部40の中心Oを通るy軸方向の直線(以下、「中脚部40の中心軸を通るy軸方向の直線」を単に「y軸方向の直線」とも記載する)に沿った幅が異なる非対称形をなし、第1外脚部52のx軸方向の幅w1が第2外脚部53のx軸方向の幅w2よりも大きく、第1外脚部52のy軸方向の直線に沿った幅d1が第2外脚部53のy軸方向の直線に沿った幅d2よりも小さく形成されている。本発明において、中脚部40は、z軸方向視の形状(各脚部の基部を下側にしてフェライト磁心1をz軸方向上側から見たときの形状)が円形である、すなわち中脚部40は円柱状であるのが好ましい。
【0027】
なお、本願において、中脚部40の中心Oとは、中脚部のz軸方向視の形状に外接する円の中心と定義する。例えば、中脚部のz軸方向視の形状が円形(すなわち、中脚部が円柱状)である場合、その円形の中心が中心Oとなる。また例えば、中脚部のz軸方向視の形状が正方形(すなわち、中脚部が正四角柱状)である場合、その正方形の2つの対角線の交点が中心Oとなる。また中脚部の中心軸とは中脚部の中心Oを通るz軸方向の軸と定義する。
【0028】
中脚部40に配置された、導線を所定の巻数及び巻径に巻いた巻線120の外形に沿うように、中脚部40と対向する側の第1外脚部52の内側面52d1と、中脚部40と対向する側の第2外脚部53の内側面53dとを円弧状の曲面としている。またy軸方向の直線に沿って測定したときの、中脚部40の中心軸(中心O)から第1外脚部52の内側面52d1までの距離と、中脚部40の中心軸(中心O)から第2外脚部53の内側面53dまでの距離とは同じとしている。
【0029】
第1外脚部52及び第2外脚部53は、中脚部40と対向する側(内側面52d1,53dの側)の反対側にそれぞれ外側面52c及び外側面53cを有し、中脚部40の中心軸(中心O)から第1外脚部52の外側面52cまでの距離h1と、中脚部40の中心軸(中心O)から第2外脚部53の外側面53cまでの距離h2とがh1<h2の関係にある。すなわち、中脚部40は、フェライト磁心1のy軸方向の一方端(外側面52c)と他方端(外側面53c)とを結ぶ線分の中点に対して、中心O(中心軸)が第1外脚部52側へ偏倚した位置に配置されている。中脚部40は、使用時に磁気飽和を起こさないような断面積を有していればよく、図示した例ではz軸方向上側から見た形状が円形状であるが、他の形状であってもよい。
【0030】
図示した例では、z軸方向上側から見たときに、第1外脚部52のz軸方向端面の面積S1と第2外脚部53のz軸方向端面の面積S2とがほぼ同じで、かつ中脚部40のz軸方向端面の面積S3は面積S1と面積S2との和とほぼ同じとしている。中脚部40は巻線120が配置され磁気飽和を起こしやすい部分であるので、面積S3は、面積S1と面積S2との和よりも大きく設定してもよいし、第1外脚部52、第2外脚部53は漏れ磁束が生じ易いので、逆に中脚部40の面積S3が面積S1と面積S2との和よりも小さくなるようにしても良い。その場合は当然に中脚部40の面積S3は磁気飽和を生じない設定であることが必要である。また磁気飽和を生じさせない設定であれば面積S1と面積S2とを異ならせても良いが、フェライト磁心1の小型化を考慮すれば同じとするのが望ましい。
【0031】
ここで「面積S1と面積S2とがほぼ同じ」とは面積S1と面積S2とが実質的に同じであることを示し、同様に「面積S3は面積S1と面積S2との和とほぼ同じ」とは、面積S3が面積S1と面積S2との和と実質的に同じであることを示す。具体的には、面積S1と面積S2とは、S1×0.8≦S2≦S1×1.2の関係を満たすのが好ましく、S1×0.9≦S2≦S1×1.1の関係を満たすのがより好ましい。面積S3と面積S1+面積S2とは、(S1+S2)×0.8≦S3≦(S1+S2)×1.2の関係を満たすのが好ましく、(S1+S2)×0.9≦S3≦(S1+S2)×1.1の関係を満たすのがより好ましい。
【0032】
フェライト磁心1のx軸方向側面は、中脚部40の側面40aに連続する、くびれ71,72を備えている。フェライト磁心1は通常フェライト顆粒を圧縮して形成し、その成形体を焼結して得られるが、くびれ71,72を設けることにより、成形の際に生じる成形体内での密度差を低減して焼結時の中脚部40での変形やクラック等の発生を低減することができる。また、くびれ71,72はフェライト磁心1に組み合わせるボビンの位置決めにも利用することができる。
【0033】
くびれ71,72から第2外脚部53へ向かう第2連結部62の側面62aは、y軸方向と平行で直線状となっていて、第2外脚部53のx軸方向の側面53a、53bに連続している。また第1外脚部52へ向かう第1連結部61の側面61aは、第1外脚部52側が広幅となるように、y軸方向に対して所定の角度で傾斜している。
【0034】
第1連結部61が広幅となって第1外脚部52に接続する部分において、第1外脚部52のx軸方向の幅は第1連結部61のx軸方向の幅よりも大きく、すなわち、x軸方向に段差をもって突き出ていて、第1外脚部52の円弧状の内側面52d1とx軸方向の側面52a、52bとをつなぐ面52d2、52d3を形成する。
【0035】
第1及び第2外脚部52,53の各側面、中脚部40の側面、並びに第1及び第2連結部61,62の各側面は、いずれも各脚部又は各連結部のz軸方向の上端面側から背面80に至るまで連続している。
【0036】
図示した例では、フェライト磁心1は中脚部40の中心軸を通るy-z平面に対して対称形である、すなわち、
図1において、中脚部40の中心Oを通るy軸方向の直線に対して対称形であるが、多少の異同はあってもかまわない。
【0037】
第1外脚部52の外側面52c、第2外脚部53の外側面53c、及び背面80(第1及び第2外脚部52,53、中脚部40、並びに第1及び第2連結部61,62の背面)はいずれも平坦な面である。成形の際の金型から成形体の型離れや、稜角部における欠けや破損の防止を考慮して、背面80の端縁には片几帳の面取を、各部の稜角部には曲面の面取を設けている。
【0038】
[2] コイル部品
本発明のフェライト磁心1と、その中脚部40に配置される巻線120とでコイル部品を構成する。
図8はコイル部品200の外観を示す斜視図である。コイル部品200は、さらにボビン(図示せず)を有するのが好ましい。ボビンは、中脚部40を挿入し、かつ巻線120が巻回された胴部を有していて、胴部に一対のフェライト磁心1の中脚部40を挿入して組み合わせてコイル部品200を構成する。コイル部品200は、組み合わせたフェライト磁心1,1の外周にテープ(図示せず)を貼り付けて、又は接着により固定するのが好ましい。
【0039】
ボビンは、優れた絶縁性、耐熱性及び成形性を有する樹脂により形成するのが好ましく、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、それらを射出成形法等の公知の方法で成形したものを用いることができる
【0040】
巻線120に用いる導線は、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体に絶縁被覆を備える被覆線が用いられる。一般的には導線にポリアミドイミドで絶縁被覆したエナメル線が用いられ、複数のエナメル線を縒って作成したリッツ線を用いるのが好ましい。巻線120の巻数は、要求されるインダクタンスに基づいて適宜設定し、また線径も通電される電流により適宜選択することができる。
【0041】
コイル部品200は、フェライト磁心1,1の第1外脚部52の外側面52cを金属製の被装着体300に接触又は近接させて使用する。被装着体300はアルミニウム又はその合金、マグネシウム又はその合金、銅又はその合金等のような熱伝導率に優れた非磁性金属を用いることができる。被装着体300とフェライト磁心1との間に密着性を向上させるため、高耐熱の放熱グリースを塗付して用いても良い。
【0042】
図1及び
図8に示すように、コイル部品200の高さ(y軸方向の寸法)はフェライト磁心1のサイズによって規定され、コイル部品200の幅(x軸方向の寸法)は巻線120の巻径によって規定される。本発明のフェライト磁心1では、第1外脚部52のx軸方向の幅w1を巻線120の外形を超えない程度で第2外脚部53のx軸方向の幅w2よりも大きくし、被装着体300との対向面積を大きくしている。好ましくは1.2×w2≦w1であり、より好ましくは1.4×w2≦w1である。
【0043】
そして第1外脚部52のy軸方向の直線に沿った幅d1を第2外脚部53のy軸方向の直線に沿った幅d2よりも小さくし、前記第1外脚部52の幅d1を薄くすることで、巻線120と被装着体300との間隔を少なくして熱経路を短くしている。好ましくは0.3×d2≦d1≦0.7×d2であり、より好ましくは0.4×d2≦d1≦0.6×d2である。また中脚部40の中心軸から第1外脚部52の外側面52cまでの距離h1と、第2外脚部53の外側面53cとの距離h2とをh1<h2の関係とすることで、中脚部40を第1外脚部52側へ偏倚させて配置している。さらに第1外脚部52のz軸方向端面の面積S1と第2外脚部53のz軸方向端面の面積S2とをほぼ同じとすることで、従来のE型のフェライト磁心よりもy軸方向の幅Hを小さくし、もってコイル部品200を低背化している。
【0044】
またフェライト磁心1,1の組み合わせ面の位置を、従来のような熱経路の途中に熱的なギャップ210が形成される位置を避けて設定している。
【0045】
このような構成によれば、フェライト磁心1を通じて巻線120の発熱を効率よく被装着体300へ逃がすことができ、被装着体300から遠い部分(y軸方向に離れた部分)の巻線120やフェライト磁心1の発熱も、熱的なギャップを介さない熱経路及び巻線120自体の周方向の熱経路によって放熱性が確保されているため、すみやかに外部へ逃がすことができる。
【0046】
また巻線120の両端部(図示せず)をフェライト磁心1,1の第2外脚部53側(
図8において矢印Aの方向)に引き出すことで、コイル部品200の幅方向の寸法を増加させることなく、フェライト磁心1,1で規定される高さを減じることができるのでコイル部品200の小型化が図れる。
【0047】
[3] 電子部品
コイル部品200を、金属製の被装着体300に固定し、熱伝導用フィラーを含む樹脂で埋設して電子部品とする。樹脂はシリコーン樹脂が好ましく、熱伝導用フィラーは、Al2O3、ZrO2、SiO2、Si3N4、MgO等の熱伝導性に優れたセラミックから選択するのが好ましい。シリコーン樹脂に対するセラミックフィラーの混合量は、所望の放熱性、変形能、強度が得られるように調整するのが望ましい。熱伝導用フィラーを含む樹脂によってコイル部品200の放熱性を一層高めることができる。