(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179725
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】管理方法、測定方法、測定装置、水晶振動子センサ、および、セット
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179053
(22)【出願日】2023-10-17
(62)【分割の表示】P 2021567163の分割
【原出願日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019237725
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(57)【要約】
【課題】より簡便に有機溶媒を含む薬液の純度を管理する管理方法、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットを提供。
【解決手段】有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知して、薬液の純度を管理する管理方法であって、有機溶媒を含む対象薬液を用意する工程1と、不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと対象薬液とを接触させ、対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を得る工程2と、得られた共振周波数の変化量が、予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるか否かを比較して、薬液の純度を管理する工程3と、を有し、工程2において、対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、管理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する測定装置であって、
前記有機溶媒を含む対象薬液が接触される、前記不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと、
前記水晶振動子を共振周波数で振動させる発振部と、
前記水晶振動子センサに接続され、前記対象薬液の接触による前記水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部と、
前記対象薬液を前記水晶振動子センサに供給して、前記対象薬液を前記水晶振動子センサに接触させる供給部と、を有し、
前記対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、
測定装置。
【請求項2】
さらに、前記共振周波数の変化量を表示する表示部を有する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記供給部は、前記対象薬液を前記水晶振動子センサに一方向に流して供給する、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記供給部は、前記対象薬液を前記水晶振動子センサに循環して供給するものであり、前記対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sである、請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記水晶振動子センサが、複数の前記吸着層を有し、
前記検出部は、複数の前記吸着層について、それぞれ前記共振周波数の変化量を検出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
複数の前記吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記水晶振動子センサ上に配置されたシール部と、
前記シール部を介して前記水晶振動子センサ上に配置され、前記対象薬液を前記水晶振動子センサに供給する供給路、および、前記対象薬液を前記水晶振動子センサから排出する排出路が設けられたブロックと、
前記供給路に接続した第1のチューブおよび前記排出路に接続した第2のチューブからなる送液部と、をさらに有し、
前記シール部の前記対象薬液と接する接液部、前記ブロックの前記対象薬液と接する接液部、および、前記送液部の前記対象薬液と接する接液部の少なくとも1つが、フッ素系樹脂で構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記ブロックの前記対象薬液と接する接液部が、引張強度20~60MPaを示し、かつ、ショアD硬度60~80を示すフッ素系樹脂で構成されている、請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記ブロックの前記対象薬液と接する接液部が、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択されるフッ素系樹脂で構成されている、請求項8または9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記送液部の前記対象薬液と接する接液部が、フッ素原子、炭素原子、並びに、フッ素原子および炭素原子以外の他の原子を含む繰り返し単位を有するフッ素系樹脂で構成されている、請求項8に記載の測定装置。
【請求項12】
前記送液部の前記対象薬液と接する接液部が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの三元共重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、および、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群から選択されるフッ素系樹脂で構成されている、請求項8または11に記載の測定装置。
【請求項13】
前記シール部の前記対象薬液と接する接液部が、引張強度が20~40MPaを示し、ショアD硬度が56~70を示し、かつ、曲げ弾性率が0.5~3GPaを示すフッ素系樹脂で構成されている、請求項8に記載の測定装置。
【請求項14】
前記シール部の前記対象薬液と接する接液部が、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択されるフッ素系樹脂で構成されている、請求項8または13に記載の測定装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の測定装置に用いられる水晶振動子センサであって、
水晶振動子と、前記水晶振動子上に配置された吸着層とを有し、
前記吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、水晶振動子センサ。
【請求項16】
前記水晶振動子上に、少なくとも2つの前記吸着層が配置されている、請求項15に記載の水晶振動子センサ。
【請求項17】
複数の前記吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、請求項16に記載の水晶振動子センサ。
【請求項18】
薬液と、
前記薬液の共振周波数情報を表示または記憶する情報表示部とを有し、
前記薬液中の不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサに前記薬液を接触させることによる前記水晶振動子の共振周波数の変化量を求め、得られた前記共振周波数の変化量と、予め設定された前記薬液の純度に基づく共振周波数の変化量とを比較して、得られた前記共振周波数の変化量に対する前記薬液の純度の評価が与えられ、前記評価に基づく、得られた前記共振周波数の変化量と前記薬液の純度とが対応付けられて、前記薬液の前記共振周波数情報として記録されており、
前記薬液の前記共振周波数情報は、前記薬液の純度の情報を得るために用いられる、セット。
【請求項19】
前記薬液を貯留する容器を有し、前記情報表示部は前記容器に設けられる、請求項18に記載のセット。
【請求項20】
前記薬液の前記共振周波数情報は、文字、記号およびバーコードのうち、少なくとも1つを用いて前記情報表示部に表示される、請求項18または19に記載のセット。
【請求項21】
有機溶媒を含む対象薬液を用意する工程1と、
前記対象薬液中の不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと前記対象薬液とを接触させ、前記対象薬液の接触による前記水晶振動子の共振周波数の変化量を得る工程2と、を有し、
前記工程2において、前記対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、薬液の測定方法。
【請求項22】
前記対象薬液を前記水晶振動子センサに送液して、前記対象薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる、請求項21に記載の測定方法。
【請求項23】
前記対象薬液を前記水晶振動子センサに一方向に流して、前記対象薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる、請求項21または22に記載の測定方法。
【請求項24】
前記対象薬液を前記水晶振動子センサに循環して供給し、前記対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sである、請求項21~23のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項25】
前記吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、請求項21~24のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項26】
前記水晶振動子センサが、複数の前記吸着層を有し、
前記工程2が、複数の前記吸着層について、それぞれ前記共振周波数の変化量を得る工程である、請求項21~25のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項27】
複数の前記吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、請求項26に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理方法、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、および、剥離工程等の様々な工程が含まれている。このような半導体デバイスの製造工程において使用される現像液、リンス液、プリウェット液、および、剥離液等の各種薬液は、高純度であることが求められる。
【0003】
高純度の薬液の特性を評価する方法の一つとして、高純度の薬液を基板上に塗布して、基板上の欠陥数を測定することにより、その薬液の特性を評価する方法がある。
例えば、特許文献1においては、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、上記評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、特許文献1に記載される表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いた測定は、測定手順自体が煩雑であり、かつ、作業時間も長く、汎用性に欠ける。
そのため、薬液を製造するたびに、上記測定を行い、薬液の純度を測定することが、工業的な点から好ましくなく、より簡便に製造される薬液の純度を管理する方法が求められていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、より簡便に有機溶媒を含む薬液の純度を管理する管理方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知して、薬液の純度を管理する管理方法であって、
有機溶媒を含む対象薬液を用意する工程1と、
不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと対象薬液とを接触させ、対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を得る工程2と、
得られた共振周波数の変化量が、予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるか否かを比較して、薬液の純度を管理する工程3と、を有し、
工程2において、対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、管理方法。
(2) 対象薬液を水晶振動子センサに送液して、対象薬液と水晶振動子センサとを接触させる、(1)に記載の管理方法。
(3) 対象薬液を水晶振動子センサに一方向に流して、対象薬液と水晶振動子センサとを接触させる、(1)または(2)に記載の管理方法。
(4) 対象薬液を水晶振動子センサに循環して供給し、対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sである、(1)~(3)のいずれかに記載の管理方法。
(5) 吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、(1)~(4)のいずれかに記載の管理方法。
(6) 水晶振動子センサが、複数の吸着層を有し、
工程2が、複数の吸着層について、それぞれ共振周波数の変化量を得る工程であり、
工程3が、複数の吸着層のそれぞれの共振周波数の変化量の差分を算出して、得られた値が予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるか否かを比較して、薬液の純度を管理する工程である、(1)~(5)のいずれかに記載の管理方法。
(7) 複数の吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、(6)に記載の管理方法。
(8) 有機溶媒を含む対象薬液を用意する工程1と、
対象薬液中の不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと対象薬液とを接触させ、対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を得る工程2と、を有し、
工程2において、対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、薬液の測定方法。
(9) 対象薬液を水晶振動子センサに送液して、対象薬液と水晶振動子センサとを接触させる、(8)に記載の測定方法。
(10) 対象薬液を水晶振動子センサに一方向に流して、対象薬液と水晶振動子センサとを接触させる、(8)または(9)に記載の測定方法。
(11) 対象薬液を水晶振動子センサに循環して供給し、対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sである、(8)~(10)のいずれかに記載の測定方法。
(12) 吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、(8)~(11)のいずれかに記載の測定方法。
(13) 水晶振動子センサが、複数の吸着層を有し、
工程2が、複数の吸着層について、それぞれ共振周波数の変化量を得る工程である、(8)~(12)のいずれかに記載の測定方法。
(14) 複数の吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、(13)に記載の測定方法。
(15) 有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する測定装置であって、
有機溶媒を含む対象薬液が接触される、不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと、
水晶振動子を共振周波数で振動させる発振部と、
水晶振動子センサに接続され、対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部と、
対象薬液を水晶振動子センサに供給して、対象薬液を水晶振動子センサに接触させる供給部と、を有し、
対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、
測定装置。
(16) さらに、共振周波数の変化量を表示する表示部を有する、(15)に記載の測定装置。
(17) 供給部は、対象薬液を水晶振動子センサに一方向に流して供給する、(15)または(16)に記載の測定装置。
(18) 供給部は、対象薬液を水晶振動子センサに循環して供給するものであり、対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sである、(15)~(17)のいずれかに記載の測定装置。
(19) 吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、(15)~(18)のいずれかに記載の測定装置。
(20) 水晶振動子センサが、複数の吸着層を有し、
検出部は、複数の吸着層について、それぞれ共振周波数の変化量を検出する、(15)~(19)のいずれかに記載の測定装置。
(21) 複数の吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、(20)に記載の測定装置。
(22) 水晶振動子センサ上に配置されたシール部と、
シール部を介して水晶振動子センサ上に配置され、対象薬液を水晶振動子センサに供給する供給路、および、対象薬液を水晶振動子センサから排出する排出路が設けられたブロックと、
供給路に接続した第1のチューブおよび排出路に接続した第2のチューブからなる送液部と、をさらに有し、
シール部の対象薬液と接する接液部、ブロックの対象薬液と接する接液部、および、送液部の対象薬液と接する接液部の少なくとも1つが、フッ素系樹脂で構成される、(15)~(21)のいずれかに記載の測定装置。
(23) ブロックの対象薬液と接する接液部が、引張強度20~60MPaを示し、かつ、ショアD硬度60~80を示すフッ素系樹脂で構成されている、(22)に記載の測定装置。
(24) ブロックの対象薬液と接する接液部が、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択されるフッ素系樹脂で構成されている、(22)または(23)に記載の測定装置。
(25) 送液部の対象薬液と接する接液部が、フッ素原子、炭素原子、並びに、フッ素原子および炭素原子以外の他の原子を含む繰り返し単位を有するフッ素系樹脂で構成されている、(22)に記載の測定装置。
(26) 送液部の対象薬液と接する接液部が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの三元共重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、および、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群から選択されるフッ素系樹脂で構成されている、(22)または(25)に記載の測定装置。
(27) シール部の対象薬液と接する接液部が、引張強度が20~40MPaを示し、ショアD硬度が56~70を示し、かつ、曲げ弾性率が0.5~3GPaを示すフッ素系樹脂で構成されている、(22)に記載の測定装置。
(28) シール部の対象薬液と接する接液部が、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択されるフッ素系樹脂で構成されている、(22)または(27)に記載の測定装置。
(29) (15)~(28)のいずれかに記載の測定装置に用いられる水晶振動子センサであって、
水晶振動子と、水晶振動子上に配置された吸着層とを有し、
吸着層は、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される、水晶振動子センサ。
(30) 水晶振動子上に、少なくとも2つの吸着層が配置されている、(29)に記載の水晶振動子センサ。
(31) 複数の吸着層のうち、少なくとも1つはAu層である、(30)に記載の水晶振動子センサ。
(32) 薬液と、
薬液の共振周波数情報を表示または記憶する情報表示部とを有し、
薬液中の不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサに薬液を接触させることによる水晶振動子の共振周波数の変化量を求め、得られた共振周波数の変化量と、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量とを比較して、得られた共振周波数の変化量に対する薬液の純度の評価が与えられ、評価に基づく、得られた共振周波数の変化量と薬液の純度とが対応付けられて、薬液の共振周波数情報として記録されており、
薬液の共振周波数情報は、薬液の純度の情報を得るために用いられる、セット。
(33) 薬液を貯留する容器を有し、情報表示部は容器に設けられる、(32)に記載のセット。
(34) 薬液の共振周波数情報は、文字、記号およびバーコードのうち、少なくとも1つを用いて情報表示部に表示される、(32)または(33)に記載のセット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より簡便に有機溶媒を含む薬液の純度を管理する管理方法を提供できる。
また、本発明によれば、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の測定装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第1の例を示す模式的断面図である。
【
図3】不純物量と水晶振動子の共振周波数との関係を示す検量線の一例を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態の測定装置のフローセルユニットの一例を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式的断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式的断面図である。
【
図9】本発明の実施形態のセットの一例を示す模式的斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態のセットの情報表示部の一例を示す模式図である。
【
図11】共振周波数の変化量を横軸に、欠陥数を縦軸にした直交座標に、例Aの結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の管理方法、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットを詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α~数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
【0012】
[測定装置]
図1は本発明の実施形態の測定装置の一例を示す模式図であり、
図2は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第1の例を示す模式的断面図である。
図1に示す測定装置10は、有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する装置である。測定装置10は、対象薬液の純度の管理に利用できる。
測定装置10は、フローセルユニット12と、発振部14と、検出部15と、算出部16と、メモリ18と、供給部20と、制御部22とを有する。測定装置10は、さらに、表示部23と、出力部24と、入力部25とを有する。
制御部22は、フローセルユニット12、発振部14、検出部15、算出部16、メモリ18、および、供給部20の動作を制御するものである。また、制御部22は、表示部23および出力部24の動作の制御、ならびに、入力部25からの入力情報に基づき、測定装置10の各構成部を制御する。
【0013】
フローセルユニット12は、不純物を吸着する吸着層34(
図2参照)および水晶振動子27(
図2参照)を含む水晶振動子センサ26と、フローセルユニット12に供給された対象薬液の液温を維持するための温度調整部28とを有する。フローセルユニット12については、後に詳細に説明する。
【0014】
水晶振動子センサ26に発振部14が電気的に接続されている。発振部14は、水晶振動子27を共振周波数で振動させるものである。発振部14は、水晶振動子センサ26に、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加するものであり、発振回路(図示せず)を有する。
また、発振部14に検出部15が電気的に接続されている。検出部15は、水晶振動子27の共振周波数を測定し、かつ対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出するものである。なお、検出部15は、後述する、複数の吸着層を用いることによって得られる複数の共振周波数の変化量の差分を検出してもよい。
【0015】
検出部15は、発振部14の周波数信号を取り込み、周波数信号を、例えば、1秒毎にサンプリングして、時系列データとしてメモリ18に記憶させる。なお、メモリ18には、測定時間および周波数許容値が記憶される。検出部15は、測定時間および周波数許容値に基づき、水晶振動子27の共振周波数を測定し、かつ対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する。
測定時間とは、吸着層34に不純物が接触したことによる共振周波数の変化量を得るために必要な時間である。測定時間は、特に限定されるものではなく、対象薬液の供給流量等に応じて適宜決定されるものであり、例えば、10分以上が好ましく、30分以上が好ましい。上限は特に制限されないが、生産性の点から、3時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。
周波数許容値は、周波数が安定したかどうかを判断する時に、周波数の安定化の指標となる値が安定化に相当する十分小さな値になったか否かを判定するためのしきい値である。周波数許容値は、例えば、設定された測定感度に応じて適宜設定されるものであり、例えば、共振周波数が30MHzの場合、測定感度が5Hzの時に測定時間において許容される誤差範囲は、例えば、0.5Hzに設定される。これは、0.0167ppmに相当する。この誤差範囲に対応する許容値は1.67×10-8(0.0167ppm)以下となる。
【0016】
検出部15では、例えば、公知の回路である周波数カウンターにより周波数を検出する。これ以外に、例えば、特開2006-258787号に記載されているように、周波数信号をアナログデジタル変換し、キャリアムーブにより処理して周波数信号の周波数で回転する回転ベクトルを生成し、この回転ベクトルの速度を求めるといった手法を利用した周波数を検出してもよい。検出部15においては、このようなディジタル処理を利用した方が周波数の検出精度が高いため好ましい。
【0017】
算出部16は、メモリ18に記憶された予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲を読み出し、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量の許容範囲と、検出部15で得られた共振周波数の変化量とを比較して、薬液の純度を管理する。例えば、上述の比較により、許容範囲内であれば、薬液の純度が許容範囲内であることを表示部23に表示する。一方、許容範囲を超えていれば、薬液の純度が許容範囲を超えていることを表示部23に表示する。これ以外に、許容範囲内であれば、薬液の純度が許容範囲内であることを出力部24に出力してもよい。一方、許容範囲を超えていれば、薬液の純度が許容範囲を超えていることを出力部24に出力してもよい。
【0018】
メモリ18は、上述の、予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量およびその許容範囲が記憶されるものである。メモリ18は、これ以外に、水晶振動子の共振周波数等が記憶されていてもよい。後述のように、水晶振動子に複数の電極を設けた構成において、電極毎の共振周波数、および電極間の共振周波数の差分が記憶されていてもよい。
なお、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量は、例えば、
図3に示すように、特定の対象薬液の不純物量と、水晶振動子27の共振周波数との関係を示す検量線Lを求めておき、この検量線Lに基づいて、特定の対象薬液の不純物量と、共振周波数の変化量との関係を得ることができる。また、検量線Lに対して許容範囲を設定することにより、共振周波数の変化量の許容範囲を設定することができる。
図3に示す検量線Lの不純物量は、例えば、表面検査装置を用いて測定された不純物量である。より具体的には、所定量の対象薬液と所定の基板(例えば、シリコンウエハ)上に塗布した後、対象薬液が塗布された基板上にある欠陥の数を表面検査装置を用いて計測して、得られる欠陥数を不純物量とすることができる。
なお、表面検査装置としては、対象薬液が塗布された基板上にレーザー光線を照射し、基板上に存在する欠陥によって散乱されたレーザー光線を検出して、基板上に存在する不純物を検知する装置が挙げられる。レーザー光線の照射の際に、基板を回転させながら測定することにより、基板の回転角度と、レーザー光線の半径位置から、欠陥の座標位置を割り出すことができる。このような装置としては、KLA Tencor製の「SP-5」が挙げられるが、それ以外にも「SP-5」の分解能以上の分解能を有する表面検査装置(典型的には「SP-5」の後継機等)であってもよい。
【0019】
表示部23は、算出部16で得られた共振周波数の変化量を表示するものであり、例えば、ディスプレイで構成される。ディスプレイは、文字、および画像を表示することができれば、特に限定されるものではなく、液晶表示装置等が用いられる。また、表示部23に表示されるものは、得られた共振周波数の変化量に限定されるものではなく、共振周波数でもよく、後述するように複数の吸着層を用いることによって得られる複数の共振周波数の変化量の差分でもよく、測定装置10で設定される各種の設定項目および入力情報等を表示してもよい。
出力部24は、得られた共振周波数の変化量または共振周波数等を媒体に表示するものである。より具体的には、例えば、文字、記号およびバーコードのうち、少なくとも1つを用いて表示するものである。出力部24は、プリンタ等で構成される。出力部24により、後述のセットの薬液の共振周波数情報が表示された情報表示部を得ることができる。
入力部25は、マウスおよびキーボード等の各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。入力部25を介して、例えば、測定装置10の設定、メモリ18からデータの呼び出し等がなされる。
なお、入力部25には、メモリ18に記憶させる情報を入力するためのインターフェースも含まれ、外部記憶媒体等を通してメモリ18に情報が記憶される。
なお、測定装置10は、得られた共振周波数の変化量を得ることができればよく、共振周波数の変化量を得ることと以外の構成は必ずしも必要ではない。このことから、例えば、算出部16は管理方法では必要であるが、共振周波数の変化量を得る測定装置10では必ずしも必要ではない。
【0020】
フローセルユニット12は、有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する感知部である。フローセルユニット12は、供給部20に第1のチューブ29aと、第2のチューブ29bとを用いて接続されている。供給部20により、第1のチューブ29a内を対象薬液が通過して、水晶振動子に対象薬液が供給され、対象薬液を第2のチューブ29b内を通過させて、対象薬液を回収する。供給部20は対象薬液に接触することなく、対象薬液を第1のチューブ29a内および第2のチューブ29b内を通過させるものであり、例えば、ペリスタルティック方式のポンプが用いられる。供給部20は対象薬液に接触することなく送液できれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリンジポンプを用いることができる。
温度調整部28は、例えば、ペルチェ素子を有する。ペルチェ素子により対象薬液の液温が維持される。これにより、対象薬液の温度を一定に保持することができ、対象薬液の粘度を一定の範囲とすることができる。純度の測定条件の変動を小さくすることができる。なお、対象薬液の液温を維持することができれば、温度調整部28の構成は特に限定されない。
【0021】
[水晶振動子センサ]
上述のように水晶振動子センサ26は水晶振動子27を有するが、水晶振動子27は、例えば、円盤状であり、水晶振動子27の表面27aに電極30が設けられ、裏面27bに電極31が設けられている。
水晶振動子27の表面27aに電極30の表面30aに、不純物を吸着する吸着層34が設けられている。吸着層34に有機溶媒を含む対象薬液が接触される。
水晶振動子27には、例えば、ATカット型の水晶振動子が用いられる。ATカット型の水晶振動子とは、人工水晶のZ軸から35°15′の角度で切り出した振動子のことである。水晶振動子センサ26は、
図2に示す構成に限定されるものではない。
【0022】
発振部14は電極30と電極31とに電気的に接続されている。発振部14は、電極30と電極31とに、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加するものであり、例えば、発振回路を有する。発振部14により水晶振動子27が共振周波数で振動する。水晶振動子27の共振周波数としては、例えば、27MHzまたは30MHzである。
吸着層34は、例えば、Si、Au、SiO2、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaNおよび感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される。吸着層を構成する材料によって、吸着しやすい不純物の種類が異なる。よって、例えば、対象薬液中の不純物量を上述した表面検査装置で求めて、その欠陥数と共振周波数の変化量とを関連づける場合には、表面検査装置で欠陥数を測定するために使用される薬液が塗布される基板と吸着層とは、同じ材料で構成されることが好ましい。つまり、吸着層としてSi層を用いた際には、基板としてはSi基板(シリコンウエハ)を使用することが好ましい。
吸着層34は、スパッタ法、CVD(chemical vapor deposition)法等の気相法、または塗布法等により形成することができる。
なお、感光性樹脂組成物の種類は特に制限されず、公知の感光性樹脂組成物が挙げられる。感光性樹脂組成物に含まれる成分としては、例えば、酸の作用により極性基を生じる基を有する樹脂、および、光酸発生剤が挙げられる。上記感光性樹脂組成物は、さらに、塩基性化合物、疎水性樹脂等を含んでいてもよい。
【0023】
水晶振動子センサ26では、吸着層34に吸着した不純物の量により、水晶振動子27の共振周波数が変化する。対象薬液と接触する前後の共振周波数を測定することにより、共振周波数の変化量を得ることができる。なお、水晶振動子27の共振周波数の変化量ΔFは、Sauerbrey式と呼ばれる下記式により表すことができる。下記式において、F0は共振周波数、Δmは質量変化量、ρは水晶の密度、μは水晶のせん断応力、Aは電極の面積である。下記式から、水晶振動子の共振周波数F0を大きくすることにより、質量検出感度を大きくすること、すなわち、不純物の測定精度を高くすることができる。
【0024】
【0025】
[フローセルユニット]
図4は本発明の実施形態の測定装置のフローセルユニットの一例を示す模式図である。
フローセルユニット12は、例えば、温度調整部28上にシール部43を介して水晶振動子センサ26が配置されている。水晶振動子センサ26上に、水晶振動子27の周囲に沿ってシール部42が設けられている。シール部42上にブロック40が配置される。ブロック40には、対象薬液を水晶振動子センサ26に供給する供給路40aが設けられている。供給路40aは第1のチューブ29aに接続されている。また、ブロック40には、対象薬液を水晶振動子センサ26から排出する排出路40bが設けられている。排出路40bは第2のチューブ29bに接続されている。つまり、フローセルユニット12は、水晶振動子センサ26上に配置されたシール部42と、シール部42を介して水晶振動子センサ26上に配置され、対象薬液を水晶振動子センサ26に供給する供給路40a、および、対象薬液を水晶振動子センサ26から排出する排出路40bが設けられたブロック40と、供給路40aに接続した第1のチューブ29aおよび排出路40bに接続した第2のチューブ29bからなる送液部と、をさらに有する。
水晶振動子センサ26とシール部42とブロック40とにより囲まれて形成された領域44に、第1のチューブ29aと供給路40aとを通過した対象薬液が供給される。つまり、領域44の外側にシール部42が配置されている。これにより、対象薬液が水晶振動子センサ26の水晶振動子27の電極30の表面30a上の吸着層34に接触する。また、対象薬液は、排出路40bと第2のチューブ29bとを通過して、領域44から排出される。第1のチューブ29aおよび排出路40b、ならびに第2のチューブ29bおよび排出路40bにより循環ラインが構成される。
【0026】
第1のチューブ29aおよび供給路40aと第2のチューブ29bおよび排出路40bとにおける対象薬液の移動は、上述のように供給部20(
図1参照)によりなされる。
例えば、シール部42と、シール部43とは同じ大きさであり、例えば、Oリングで構成される。なお、水晶振動子センサ26とシール部43と温度調整部28とにより囲まれて形成された領域45には対象薬液が供給されない。
また、フローセルユニット12において、対象薬液と接する接液部の少なくとも一部をフッ素系樹脂で構成することにより、対象薬液への溶出が抑制され、純度の測定精度の低下を抑制できるため好ましい。
測定装置10において、上述の水晶振動子センサ26とシール部42とブロック40とにより囲まれて形成され、対象薬液を水晶振動子センサ26上に保持するための領域44を構成する面は、対象薬液と接する接液部の一部に該当する。領域44以外に、対象薬液を水晶振動子センサ26に接触させる供給部において、対象薬液を水晶振動子センサに送液する送液部中の対象薬液と接する部分も接液部である。これら接液部の少なくとも一部をフッ素系樹脂で構成することが好ましい。つまり、有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する測定装置(上述した水晶振動子センサを有する測定装置)中の対象薬液と接触する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成されることが好ましい。なお、上記接液部としては、吸着層および水晶振動子以外の接液部が好ましい。送液部としては、一方向に送液する供給ライン、対象薬液を水晶振動子センサに循環して供給する循環ラインが挙げられる。
より具体的には、
図4において、接液部は、フローセルユニット12のブロック40の領域44に接する面40c、水晶振動子センサ26上に配置される対象薬液を領域44に留めるシール部42の領域44に接する部分である面42a、ブロック40の供給路40a、およびブロック40の排出路40bである。また、第1のチューブ29a内、および第2のチューブ29b内も対象薬液と接する接液部であり、第1のチューブ29aおよび第2のチューブ29bにおいて対象薬液と接する部分はフッ素系樹脂で構成することが好ましい。
なかでも、シール部42の対象薬液と接する接液部、ブロック40の対象薬液と接する接液部、および、送液部の対象薬液と接する接液部の少なくとも一部がフッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
【0027】
フッ素系樹脂は、フッ素原子を含む樹脂であればよい。
フッ素系樹脂としては、フッ素原子を含有する樹脂(ポリマー)であれば特に制限されず、公知のフッ素系樹脂を用いることができる。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、引張強度:20~35MPa、ショアD硬度:50~55)、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、および、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体(サイトップ(登録商標))等が挙げられる。
【0028】
なかでも、フローセルユニット12のブロック40の対象薬液を接する接液部(対象薬液と接する部分)がフッ素系樹脂で構成される場合、上記フッ素系樹脂の引張強度は、20~60MPaであることが好ましい。また、上記フッ素系樹脂のショアD硬度は、60~80であることが好ましい。
ブロック40の対象薬液と接する接液部を構成するフッ素系樹脂としては、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA、引張強度:25~35MPa、ショアD硬度:62~66)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE、引張強度:38~42MPa、ショアD硬度:67~78)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP、引張強度:20~30MPa、ショアD硬度:60~65)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、引張強度:31~41MPa、ショアD硬度:75~80)、または、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、引張強度:30~60MPa、ショアD硬度:64~79)が好ましい。
なお、引張強度の測定方法は、JIS K 7161に準じて行う。
ショアD硬度の測定方法は、JIS K 7215に準じて行う。
【0029】
また、領域44に対象薬液を送液する送液部の対象薬液を接する接液部(対象薬液を接する部分)を構成するフッ素系樹脂は、フッ素原子、炭素原子、並びに、フッ素原子および炭素原子以外の他の原子を含む繰り返し単位(以下、単に「特定繰り返し単位」ともいう。)を有することが好ましい。上記他の原子としては、例えば、水素原子、および、塩素原子が挙げられる。つまり、特定繰り返し単位は、フッ素原子、炭素原子、並びに、水素原子および塩素原子からなる群から選択される少なくとも1つの他の原子を含むことが好ましい。
上記送液部の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの三元共重合体(THV軟質フッ素樹脂)、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、または、ポリクロロトリフルオロエチレンが好ましい。
引張強度およびショアD硬度の測定方法は、上述した通りである。
【0030】
水晶振動子センサ26上に配置される対象薬液を領域44に留めるシール部42の対象薬液と接する部分(領域44に接する部分である面42a)は、フッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
上記シール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂の引張強度は、20~40MPaであることが好ましい。また、上記シール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂のショアD硬度は、56~70であることが好ましい。また、上記シール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂の曲げ弾性率は、0.5~3GPaであることが好ましい。
上記シール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂が上記引張強度、ショアD硬度、および、曲げ弾性率を満たす場合、水晶振動子センサ26の振動を阻害せず、より安定した測定を実施することができる。
引張強度およびショアD硬度の測定方法は、上述した通りである。
曲げ弾性率の測定方法は、JIS K 7171に準じて行う。
上記シール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂としては、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、または、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0031】
供給部20は、第1のチューブ29aと、第2のチューブ29bとを用いて、対象薬液を循環させているが、これに限定されるものではなく、対象薬液を一方向に流す方式でもよい。この場合、例えば、シリンジポンプを用いることができる。
水晶振動子27に対して、対象薬液を循環させて供給する場合、対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sであることが好ましい。循環流量が0.01~1000ml/sであれば、検出するのに十分な量の不純物を吸着層34の表面に付着させることができる。
対象薬液を1時間循環させた際の不純物の上昇量が1000質量ppt以下であれば、純度の測定精度が低下しないため好ましい。
フローセルユニット12における水晶振動子センサ26の配置は、特に限定されるものではない。
【0032】
[管理方法]
次に、有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知して、薬液の純度を管理する管理方法について説明する。
管理方法では、有機溶媒を含む対象薬液を用意する工程1と、(有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する測定装置中の)不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサと対象薬液とを接触させ、対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を得る工程2と、得られた共振周波数の変化量が、予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるか否かを比較して、薬液の純度を管理する工程3とを有する。
上述の測定装置10に示すように、工程2において、測定装置10中の対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される。
なお、管理方法においては、上述の測定装置と同様に、対象薬液は、対象薬液を水晶振動子センサに送液して接触させる。対象薬液は、対象薬液を水晶振動子センサに一方向に流して付着させてもよい。また、対象薬液を水晶振動子に循環して供給し、対象薬液の循環流量を0.01~1000ml/sとしてもよい。
【0033】
以下、管理方法について、上述の
図1に示す測定装置10を例にして、より具体的に説明する。管理方法では、例えば、対象薬液を循環して供給する。
上述のように、純度を管理する有機溶媒を含む対象薬液を用意し(工程1)、測定装置10の供給部20に対象薬液を貯留する。対象薬液には、不純物が含まれる。
次に、供給部20からフローセルユニット12に対象薬液を第1のチューブ29aおよびブロック40の供給路40aを通過させて領域44に供給し、ブロック40の排出路40bおよび第2のチューブ29bを通過させて供給部20に戻し、再度第1のチューブ29aおよびブロック40の供給路40aを通過させて、領域44に供給することを繰り返し実施する。これにより、水晶振動子27に対象薬液を循環供給して、水晶振動子27の吸着層34に接触させる。
【0034】
発振部14から、水晶振動子センサ26に正弦波の高周波信号を周波数信号として印加し、対象薬液の供給前に、水晶振動子27を共振周波数で振動させておき、対象薬液の供給前の共振周波数を検出部15で得る。その後、例えば、水晶振動子27に対象薬液を所定時間供給した後、検出部15で、共振周波数を得た後、共振周波数の変化量を得る(工程2)。つまり、工程1および工程2を有する薬液の測定方法を実施することにより、共振周波数の変化量を得ることができる。検出部15で得られた共振周波数の変化量を、算出部16に出力し、算出部16で記憶する。
算出部16は、メモリ18に記憶された予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲を読み出し、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量の許容範囲と、検出部15で得られた共振周波数の変化量とを比較して、薬液の純度を管理する(工程3)。例えば、上述の比較により、許容範囲内であれば、薬液の純度が許容範囲内であることを表示部23に表示する。一方、許容範囲を超えていれば、薬液の純度が許容範囲を超えていることを表示部23に表示する。
管理方法においては、薬液の純度を容易に得ることができ、この得られた純度に基づき、対象薬液の純度を管理することができる。これにより、薬液の品質を管理することができる。
なお、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量、およびその許容範囲は、例えば、上述のように
図3に示す検量線Lに基づいて得ることができる。
なお、上記管理方法は、クリーンルーム内で実施することが好ましい。より具体的には、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルーム内で、実施することが好ましい。
【0035】
[水晶振動子センサの他の例]
図5は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式図であり、
図6は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式的断面図である。
図7は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式図であり、
図8は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式的断面図である。
図4~
図8に示す水晶振動子センサ26において、
図2に示す水晶振動子センサ26と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図2に示す水晶振動子センサ26は、水晶振動子27の表面27aに電極30を1つ設ける構成であるが、これに限定されるものではない。
図5および
図6に示すように、水晶振動子27の表面27aに、第1の電極50と第2の電極51とを設ける構成でもよい。第1の電極50と第2の電極51とは、例えば、長方形状の導電層で構成されており、間隔をあけて互いに平行に配置されている。第1の電極50と、第2の電極51とは、互いに電気的に絶縁された状態である。第1の電極50の表面50aに第1の吸着層35が設けられ、第2の電極51の表面51aに第2の吸着層36が設けられている。
【0036】
第1の電極50と電極31とが第1発振ユニット14aに電気的に接続されている。第2の電極51と電極31とが第2発振ユニット14bに電気的に接続されている。第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとは発振部14に設けられたものであり、互いに独立して、第1の電極50および電極31と、第2の電極51および電極31とに、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加することができ、これにより、水晶振動子27を共振周波数で振動させることができる。
また、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bは、それぞれ検出部15に電気的に接続されている。検出部15は、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとの接続を切換えるスイッチ部(図示せず)を有する。スイッチ部により、第1発振ユニット14aの周波数信号と、第2発振ユニット14bの周波数信号とが交互に検出部15に取り込まれる。これにより、検出部15では、第1の電極50における共振周波数と、第2の電極51における共振周波数とを、互いに独立して得ることができる。
【0037】
第1の電極50の表面50a上の第1の吸着層35および第2の電極51の表面51aに第2の吸着層36は、同じでもよく、互いに異なってもよい。第1の吸着層35と第2の吸着層36とが異なる場合、第1の電極50と第2の電極51との共振周波数の差分を利用し、差分が予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるか否かによって、純度を容易に推定することができる。これにより、より簡便に薬液の純度を容易に得ることができ、純度の管理が容易になり、薬液の品質を容易に管理することができる。第1の吸着層35および第2の吸着層36のうち、少なくとも1つをAu層とすることが好ましい。Au層とすることにより、第1の電極50と第2の電極51とのうち、一方を参照電極として利用することができる。
【0038】
また、
図7および
図8に示すように、水晶振動子27の表面27aに、電極52を設ける構成でもよい。電極52は、第1の電極部52aと、第2の電極部52bと、第1の電極部52aと第2の電極部52bとを一方の端で連結する連結部52cとを有する。第1の電極部52aと、第2の電極部52bとは、例えば、長方形状の導電層で構成されており、間隔をあけて互いに平行に配置されている。第1の電極部52aと、第2の電極部52bとは電気的に接続されている。電極52上に吸着層34が設けられている。
【0039】
第1の電極部52aと電極31とが第1発振ユニット14aに電気的に接続されている。第2の電極部52bと電極31とが第2発振ユニット14bに電気的に接続されている。第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとは発振部14に設けられたものであり、互いに独立して、第1の電極50および電極31と、第2の電極51および電極31とに、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加することができ、これにより、水晶振動子27を共振周波数で振動させることができる。
また、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bは、それぞれ検出部15に電気的に接続されている。検出部15は、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとの接続を切換えるスイッチ部(図示せず)を有する。スイッチ部により、第1発振ユニット14aの周波数信号と、第2発振ユニット14bの周波数信号とが交互に検出部15に取り込まれる。これにより、検出部15では、第1の電極部52aにおける共振周波数と、第2の電極部52bにおける共振周波数とを、互いに独立して得ることができる。
【0040】
図8に示す水晶振動子センサ26においても、第1の電極部52aおよび第2の電極部52b上に吸着層34が設けられているが、第1の電極部52aと第2の電極部52bとで互いに異なっていてもよい。異なる場合、第1の電極部52aと第2の電極部52bとの共振周波数の差分を利用することにより、純度を容易に推定することができる。これにより、より簡便に薬液の純度を容易に得ることができ、純度の管理が容易になり、薬液の品質を容易に管理することができる。第1の電極部52aおよび第2の電極部52bのうち、少なくとも1つにAu層を形成することが好ましい。Au層を形成することにより、第1の電極部52aと第2の電極部52bとのうち、一方を参照電極として利用することができる。
【0041】
[セット]
薬液の品質を示す方法として、上述の測定装置10等により測定された純度と、薬液とを対応つけて示すことにより、薬液の品質を容易に管理することができる。このような薬液と、薬液の純度とを対応つけたものをセットという。
セットは、薬液と、薬液の共振周波数情報を表示または記憶する情報表示部とを有する。薬液中の不純物を吸着する吸着層および水晶振動子を含む水晶振動子センサに薬液を接触させることによる水晶振動子の共振周波数の変化量を求め、得られた共振周波数の変化量と、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量とを比較して、得られた共振周波数の変化量に対する薬液の純度の評価が与えられている。評価に基づく、得られた共振周波数の変化量と薬液の純度とが対応付けられて、薬液の共振周波数情報として記録されている、薬液の共振周波数情報は、薬液の純度の情報を得るために用いられるものである。薬液の共振周波数情報により、薬液の純度の情報を得ることができる。
なお、上述の評価は、上述の測定装置10を用いて薬液の純度を測定することにより、与えられるものである。
【0042】
以下、より具体的に、セットについて説明する。
図9は本発明の実施形態のセットの一例を示す模式的斜視図であり、
図10は本発明の実施形態のセットの情報表示部の一例を示す模式図である。
図9に示すように、セット60は、例えば、薬液62を、内部64aに貯留する容器64を有する。容器64は、例えば、円筒状であり、側面64bに情報表示部66が設けられている。なお、情報表示部66は上面64cに設けてもよい。情報表示部66は薬液の共振周波数情報を表示または記憶するものである。
情報表示部66としては、例えば、
図10に示すように、文字を用いて、薬液の共振周波数情報が示される。しかしながら、これに限定されるものではなく、文字、記号およびバーコードのうち、少なくとも1つを用いて情報表示部66に、薬液の共振周波数情報を表示することができる。バーコードは、特に限定されるものではなく、2次コードでもよい。
【0043】
情報表示部66としては、
図10に示すような文字による表示に限定されるものではなく、例えば、IC(integrated circuit)タグのような情報記録媒体でもよい。ICタグの場合、薬液の共振周波数情報は、ICタグリーダーを用いて、非接触で読み取ることができる。情報表示部66を、バーコードまたはICタグとすることにより、例えば、読み取り機を用いて薬液の品質を管理することができる。
出力部24により、薬液の共振周波数情報が表示された情報表示部66は、測定装置10の出力部24により得ることができる。
【0044】
本発明の管理方法、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットは、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の管理方法、測定方法、測定装置、水晶振動子センサおよびセットについて詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【0045】
本発明で使用される対象薬液(以下、単に「薬液」ともいう。)は、有機溶媒を含む。
本明細書において、有機溶媒とは、上記薬液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記薬液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶媒に該当する。
また、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意味する。
【0046】
薬液中における有機溶媒の含有量としては特に制限されないが、薬液の全質量に対して、98.0質量%以上が好ましく、99.0質量%超がより好ましく、99.90質量%以上がさらに好ましく、99.95質量%超が特に好ましい。上限は、100質量%未満である。
有機溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を使用してもよい。2種以上の有機溶媒を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0047】
有機溶媒の種類としては特に制限されず、公知の有機溶媒を使用できる。有機溶媒は、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、ジアルキルスルホキシド、環状スルホン、ジアルキルエーテル、一価アルコール、グリコール、酢酸アルキルエステル、および、N-アルキルピロリドン等が挙げられる。
【0048】
有機溶媒は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、炭酸プロピレン(PC)、イソプロパノール(IPA)、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)、酢酸ブチル(nBA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、および、2-ヘプタノンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
有機溶媒を2種以上使用する例としては、PGMEAとPGMEの併用、および、PGMEAとPCの併用が挙げられる。
なお、薬液中における有機溶媒の種類および含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。
【0049】
薬液は、有機溶媒以外に不純物を含む場合がある。上述したように、不純物が吸着層に吸着されることにより共振周波数が変化する。
不純物としては、金属不純物および有機不純物が挙げられる。
金属不純物とは、金属イオン、および、固体(金属単体、粒子状の金属含有化合物等)として薬液中に含まれる金属不純物を意図する。
金属不純物に含まれる金属の種類は特に制限されず、例えば、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Li(リチウム)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、および、Zn(ジルコニウム)が挙げられる。
金属不純物は、薬液に含まれる各成分(原料)に不可避的に含まれている成分でもよいし、薬液の製造、貯蔵、および/または、移送時に不可避的に含まれる成分でもよいし、意図的に添加してもよい。
薬液が金属不純物を含む場合、その含有量は特に制限されず、薬液の全質量に対して、0.01~500質量pptが挙げられる。
【0050】
本明細書において、有機不純物とは、薬液に含まれる主成分である有機溶媒とは異なる化合物であって、上記薬液の全質量に対して、10000質量ppm以下の含有量で含まれる有機物を意図する。つまり、本明細書においては、上記薬液の全質量に対して10000質量ppm以下の含有量で含まれる有機物は、有機不純物に該当し、有機溶媒には該当しないものとする。
なお、複数種の化合物からなる有機不純物が薬液に含まれる場合、各化合物が上述した10000質量ppm以下の含有量で含有される有機物に該当していれば、それぞれが有機不純物に該当する。
なお、水は、有機不純物には含まれない。
【0051】
有機不純物は、薬液中に添加されてもよいし、薬液の製造工程において不可避的に薬液中に混合されるものであってもよい。薬液の製造工程において不可避的に混合される場合としては、例えば、有機不純物が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶媒)に含まれる場合、および、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられるが、上記に制限されない。
上記薬液中における有機不純物の合計含有量は特に制限されないが、薬液の全質量に対して、0.1~5000質量ppmが挙げられる。
有機不純物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の有機不純物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0052】
有機不純物としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTP)、4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、および、特開2015-200775号公報に記載されている酸化防止剤等の酸化防止剤;未反応の原料;有機溶媒の製造時に生じる構造異性体および副生成物;有機溶媒の製造装置を構成する部材等からの溶出物(例えば、Oリング等のゴム部材から溶出した可塑剤);等が挙げられる。
【0053】
薬液は、水を含んでいてもよい。水の種類は特に制限されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、および、純水を用いることができる。
水は、薬液中に添加されてもよいし、薬液の製造工程において不可避的に薬液中に混合されるものであってもよい。薬液の製造工程において不可避的に混合される場合としては例えば、水が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶媒)に含まれる場合、および、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられる。
【0054】
薬液中における水の含有量は特に制限されないが、一般に、薬液の全質量に対して、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%未満がさらに好ましい。
薬液中における水の含有量が1.0質量%以下であると、半導体チップの製造歩留まりがより優れる。
なお、下限は特に制限されないが、0.01質量%程度の場合が多い。製造上、水の含有量を上記以下にするのが難しい。
【0055】
上記薬液を準備する方法は特に制限されず、例えば、有機溶媒を購入等により調達する、および、原料を反応させて有機溶媒を得る等の方法が挙げられる。なお、薬液としては、すでに説明した不純物の含有量が少ないもの(例えば、有機溶媒の含有量が99質量%以上のもの)を準備することが好ましい。そのような有機溶媒の市販品としては、例えば、「高純度グレード品」と呼ばれるものが挙げられる。
なお、必要に応じて、薬液に対しては、精製処理を施してもよい。
精製方法としては、例えば、蒸留、および、ろ過が挙げられる。
【実施例0056】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0057】
<例A>
[薬液の製造]
まず、後述する例にて用いる薬液を準備した。具体的には、まず、純度99質量%以上の高純度グレードの有機溶媒試薬を購入した。その後、購入した試薬に対して、以下のフィルターを適宜組み合わせたろ過処理を施して、不純物量が異なる薬液(A1~A20、B1~B7、C1~C5、D1~D5、E1~E7)をそれぞれ調製した。
・IEX-PTFE(15nm):Entegris社製の15nm IEX PTFE
・PTEE(12nm):Entegris社製の12nm PTFE
・UPE(3nm):Entegris社製の3nm PEフィルター
なお、後述する薬液中の不純物量を調整するために、適宜、有機溶媒試薬の購入元を変更したり、純度グレードを変更したり、上記ろ過処理の前に蒸留処理を実施したりした。
【0058】
[水晶振動子センサを用いた評価(その1)]
電極部上に吸着層としてSi層が形成された水晶振動子センサ(
図2参照)を用意して、後述する表1に示す薬液中に60分間にわたって上記水晶振動子センサを浸漬させて、最終的な水晶振動子の共振周波数の変化量(Hz)を求めた。なお、薬液中に浸漬する前の水晶振動子の共振周波数は27MHzであった。
結果を表1にまとめて示す。
【0059】
[表面検査装置を用いた評価(その1)]
まず、直径約300mm(12インチ)のシリコンウエハを準備した。
次に、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、上記シリコンウエハ上に存在する欠陥の数を計測した(これを初期値とする。)。
次に、東京エレクトロン社製「CLEAN TRACK LITHIUS(商品名)」を用いて、各薬液をシリコンウエハ上に1500rpmで回転塗布し、その後、シリコンウエハをスピン乾燥した。
次に、上記表面検査装置を用いて、薬液塗布後のシリコンウエハに存在する欠陥の数を計測した(これを計測値とする。)。次に、初期値と計測値の差を(計測値-初期値)を計算し、欠陥数とした。この欠陥数は、シリコンウエハ上に残った薬液の不純物の量を表しており、数値が小さいほど薬液中の不純物の量が少ないことを意味する。
結果を表1にまとめて示す。
なお、上記評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
【0060】
表1中、「薬液」欄は各例で使用した薬液を表し、例えば、例1ではnBA(酢酸ブチル)を含む薬液A1~A20を使用しており、薬液A1~A20では不純物の量が異なる。
表1中の薬液の記号は、以下の薬液を表す。
nBA:酢酸ブチル
MIBC:4-メチル-2-ペンタノール
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
IPA:イソプロパノール
CHN:シクロヘキサノン
【0061】
【0062】
表1に示すように、共振周波数の変化量と欠陥数とは相関性があり、共振周波数の変化量が大きい場合、欠陥数が大きくなる傾向があった。
また、
図3に示すように、共振周波数の変化量を横軸に、欠陥数を縦軸にした直交座標に、例1~5の全ての薬液の共振周波数の変化量(水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz)))および欠陥数(表面検査装置評価(欠陥数))に対する点をプロットして、プロットされた点を通る検量線を最小二乗法により作成して、決定係数(R
2)を算出したところ、0.8004と算出された(
図11参照)。決定係数が1.000に近いほど、優れた結果に該当するが、表1の結果は共振周波数の変化量と欠陥数との間の相関関係が高いことを示していた。
【0063】
また、[水晶振動子センサを用いた評価(その1)]を実施する際に、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った点、および、薬液の温度を23℃に調整して評価を実施した点以外は、上記例1~5と同様の手順に従って、共振周波数の変化量を測定した。
得られた共振周波数の変化量の結果と、上記で得られた[表面検査装置を用いた評価]とを表2に示す。
【0064】
【0065】
共振周波数の変化量を横軸に、欠陥数を縦軸にした直交座標に、例6~10の全ての薬液の共振周波数の変化量(水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz)))および欠陥数(表面検査装置評価(欠陥数))に対する点をプロットして、プロットされた点を通る検量線を最小二乗法により作成して、決定係数(R2)を算出したところ、0.9626と算出された。表2の結果は、表1の結果よりもより優れたものとなった。
【0066】
<例B>
上記例Aと同様の手順に従って、各例で使用する薬液(A21~A40、B8~B14、C6~C10、D6~D10、E8~E14)を準備した。なお、各薬液中の不純物量は異なっていた。薬液中の不純物濃度はLC/MSにて薬液の主薬液を除く全成分のピークを積分値として入手し、その濃度をn-ヘキサン換算として入手した。
【0067】
[水晶振動子センサを用いた評価(その2)]
図2に示す吸着層が表3に示す各層(Si層、SiO
2層、SiOC層、Cu層、Co層、Ti層、W層、TiN層、Ta層、TaN層)である水晶振動子センサを用意して、上記水晶振動子センサを有する
図4に示すフローセルユニットを有する測定装置(
図1参照)を用いて、各薬液(A21~A40、B8~B14、C6~C10、D6~D10、E8~E14)を水晶振動子センサと接触させて、水晶振動子の共振周波数の変化量の評価を実施した。具体的には、薬液温度は23℃となるように温度調整部で調整して、フローセルユニット中にて各薬液を循環流量20ml/sで60分間にわたって循環させた際の水晶振動子の共振周波数の変化量(Hz)を得た。なお、薬液と接触させる前の水晶振動子の共振周波数は27MHzであった。
結果を表3~7にまとめて示す。
なお、上記評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
また、上記共振周波数の測定装置中におけるフローセルユニットの各部材の接液部(ブロックの接液部、シール部の接液部、送液部の接液部)は、後述する例24と同様のフッ素系樹脂で構成されていた。
【0068】
[表面検査装置を用いた評価(その2)]
まず、各種基板(Si基板、SiO2基板、SiOC基板、Cu基板、Co基板、Ti基板、W基板、TiN基板、Ta基板、TaN基板)を用意した。
次に、ウェハ上表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、各基版上に存在する欠陥の数を計測した(これを初期値とする。)。
次に、東京エレクトロン社製「CLEAN TRACK LITHIUS(商品名)」を用いて、各薬液(A21~A40、B8~B14、C6~C10、D6~D10、E8~E14)を基板上に1500rpmで回転塗布し、その後、基板をスピン乾燥した。
次に、上記装置(SP-5)を用いて、薬液塗布後の基板に存在する欠陥の数を計測した(これを計測値とする。)。次に、初期値と計測値の差を(計測値-初期値)を計算し、欠陥数とした。
結果を表3~7にまとめて示す。
なお、上記評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
【0069】
表3~7においては、同種の金属種の吸着層および基板を用いた結果を並べて示す。例えば、表3中の「Si」欄においては、吸着層として「Si層」を用いた[水晶振動子センサを用いた評価(その2)]の結果と、Si基板を用いた[表面検査装置を用いた評価(その2)]の結果とを示す。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
上記表に示すように、同じ種類の金属種からなる吸着層と基板とを用いた場合には、共振周波数の変化量と欠陥数とは相関性が高く、共振周波数の変化量が大きい場合、欠陥数が大きくなる傾向があった。
【0076】
<例C>
Si層の代わりAu層を用いた以外は、[水晶振動子センサを用いた評価(その2)]
と同様の手順に従って、共振周波数の変化量を測定した。
次に、Si層を用いて得られた共振周波数の変化量からAu層を用いて得られた共振周波数の変化量を引き、差分を求めた。
結果を表8に示す。
【0077】
表8中、「Si層-Au層」欄は、「Si層」欄の「水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz))」から「Au層」欄の「水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz))」を引いた差分を表す。
【0078】
【0079】
共振周波数の変化量を横軸に、欠陥数を縦軸にした直交座標に、例16~20の「Si層」欄の共振周波数の変化量(水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz)))および欠陥数(表面検査装置評価(欠陥数))に対する点をプロットして、プロットされた点を通る検量線を最小二乗法により作成して、決定係数(R2)を算出したところ、0.9915と算出された。
また、例16~20の「Si層-Au層」欄の共振周波数の変化量の差分および「Si層」欄の欠陥数(表面検査装置評価(欠陥数))に対する点をプロットして、プロットされた点を通る検量線を最小二乗法により作成して、決定係数(R2)を算出したところ、0.996と算出された。
上記結果より、Au層を参照として使用した場合、共振周波数の変化量と欠陥数とは相関性がより高いことが確認された。
【0080】
<例D>
上記例Aと同様の手順に従って、各例で使用する薬液(A41~A140)を準備した。
【0081】
図2に示す吸着層がSi層である水晶振動子センサを用意して、上記水晶振動子センサを有する
図4に示すフローセルユニットを有する測定装置(
図1参照)を用いて、薬液(A41~A140)を水晶振動子センサと接触させて、水晶振動子の共振周波数の変化量の評価を実施した。具体的には、薬液温度は23℃となるように温度調整部で調整して、フローセルユニット中にて各薬液を循環流量20ml/sで60分間にわたって循環させた際の水晶振動子の共振周波数の変化量(Hz)を得た。なお、薬液と接触させる前の水晶振動子の共振周波数は27MHzであった。
なお、使用した測定装置においては、接液部の少なくとも一部がフッ素系樹脂で構成されていた。
具体的には、フローセルユニットの
図4に示すブロックの接液部(対象薬液と接する部分)がパーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP、引張強度:20~30MPa、ショアD硬度:60~65、曲げ弾性率:0.55~0.67GPa)で構成される場合には表9~10中の「フローセル」欄を「あり」と表記し、フッ素系樹脂で構成されない場合には「-」と表記する。
また、送液部の接液部(対象薬液と接する部分)がTHV軟質フッ素樹脂で構成される場合には表9~10中の「送液部」欄を「あり」と表記し、フッ素系樹脂で構成されていない場合には「-」と表記する。
また、
図4に示す、対象薬液を領域に留めるシール部の接液部(対象薬液と接する部分)がポリフッ化ビニリデン(PVDF、引張強度:30~60MPa、ショアD硬度:64~79)で構成される場合には表9~10中の「シール部A」欄を「あり」と表記し、上記フッ素系樹脂で構成されていない場合には「-」と表記する。
さらに、
図4に示す、対象薬液を領域に留めるシール部の接液部(対象薬液と接する部分)がパーフルオロアルコキシアルカン(PFA、引張強度:25~35MPa、ショアD硬度:62~66)で構成される場合には表9~10中の「シール部B」欄を「あり」と表記し、上記シール部の接液部がフッ素系樹脂で構成されていない場合には「-」と表記する。
【0082】
また、上記共振周波数の変化量を測定する際に、対象薬液中に測定装置から溶出する不純物量をLC/MS(Thermo LC/MS QE plus)を用いて測定した。
【0083】
【0084】
【0085】
上記表9および10に示すように、測定装置中の対象薬液との接液部の少なくとも一部がフッ素系樹脂で構成されている例21~24においては、フッ素系樹脂が用いられていない例25と比較して、測定装置から溶出する不純物の量が少なく、結果として、共振周波数の変化量と欠陥数とは相関性がより高いことが確認された。
共振周波数の変化量を横軸に、欠陥数を縦軸にした直交座標に、例21の共振周波数の変化量(水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz)))および欠陥数(表面検査装置評価(欠陥数))に対する点をプロットして、プロットされた点を通る検量線を最小二乗法により作成して、決定係数(R2)を算出したところ、0.7318と算出された。例22~25に関しても決定係数を算出したところ、それぞれ0.8086、0.9843、0.9936、0.3297であった。この結果より、測定装置の接液部がフッ素系樹脂で構成されていない例25に対して、接液部の少なくとも一部がフッ素系樹脂で構成されている例21~24はより優れた相関性を示すことが確認された。
【0086】
例23において、上記フローセルユニットの
図4に示すブロックの接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂を、パーフルオロエチレンプロペンコポリマーから、パーフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、または、ポリフッ化ビニリデンに変更した場合、いずれも相関係数0.95を超える相関性を示すことが確認できた。しかしながら、これらの結果は、例23の結果(0.984)と比べてやや劣る結果となった。
また、例23において、送液部の接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂を、THV軟質フッ素樹脂から、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、または、ポリクロロトリフルオロエチレンに変更した場合、いずれも相関係数0.95を超える相関性を示すことが確認できた。しかしながら、これらの結果は、例23の結果(0.984)と比べてやや劣る結果となった。
また、例23において、
図4に示す、対象薬液を領域に留めるシール部の接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂を、ポリフッ化ビニリデンから、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、または、ポリクロロトリフルオロエチレンに変更した場合、いずれも相関係数0.95を超える相関性を示すことが確認できた。しかしながら、これらの結果は、例23の結果(0.984)と比べてやや劣る結果となった。
【0087】
また、例23において、上記フローセルユニットの
図4に示すブロックの接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂、送液部の接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂、および、
図4に示す、対象薬液を領域に留めるシール部の接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂のいずれかをポリテトラフルオロエチレンに変更した場合、相関係数が0.85超0.95未満の値が得られた。これらの結果より、上述したポリテトラフルオロエチレン以外の他のフッ素系樹脂で接液部を構成する樹脂として使用した場合により優れた効果が得られることが確認できた。
なお、上記フローセルユニットの
図4に示すブロックの接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂、送液部の接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂、および、
図4に示す、対象薬液を領域に留めるシール部の接液部(対象薬液と接する部分)を構成する樹脂の全てをポリテトラフルオロエチレンにした場合、例22よりは優れるが、0.85以下の相関係数となった。
【0088】
<例E>
[薬液の製造]
純度99質量%以上の高純度グレードのnBAを購入し、以下のフィルターを適宜組み合わせてろ過処理を施して、不純物量が異なる薬液を2種調製(薬液Xおよび薬液Y)した。
・IEX-PTFE(15nm):Entegris社製の15nm IEX PTFE
・PTEE(12nm):Entegris社製の12nm PTFE
・UPE(3nm):Entegris社製の3nm PEフィルター
【0089】
次に、上記<例D>において例24の共振周波数の変化量(水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz)))および欠陥数(表面検査装置評価(欠陥数))の結果より求められた共振周波数の変化量を横軸に、欠陥数を縦軸にした直交座標のデータより、共振周波数の変化量が2000Hz以下である場合を許容範囲と設定した。
次に、上記薬液Xおよび薬液Yを用いて、例24と同様の手順に従って、「水晶振動子センサ評価(共振周波数変化量(Hz))」を求めた。
その後、測定装置のメモリに上記で予め設定した共振周波数の変化量の許容範囲(2000Hz以下)を設定して、薬液Xおよび薬液Yを用いて得られた共振周波数の変化量が上記許容範囲であるか否かを算出部が判断したところ、薬液Xは許容範囲内であり、薬液Yは許容範囲外であった。
この薬液Xおよび薬液Yを用いて、<例A>で実施した[表面検査装置を用いた評価(その1)]を実施したところ、薬液Xの欠陥数は20以下程度であり欠陥数が少ないのに対して、薬液Yの欠陥数は20超であり欠陥数が多いことが確認された。この結果からも、薬液の共振周波数の変化量を測定することにより、その薬液の純度を管理することができることが確認された。